説明

海苔網洗浄装置

【課題】一人の作業者でも海苔網に付着した汚れを操作性良く、効果的に除去することが可能な海苔網洗浄機を提供する。
【解決手段】操作船の甲板1上に本体フレーム2が設けられ、この本体フレーム2の上方に回転ブラシ3が配置されている。回転ブラシ3の上方には、回転ブラシ3と対向して上下可動ブラシ7が設けられている。上下可動ブラシ7を固定するブラシ固定部7aと吊上げ用支柱8との交点には回動軸が設けられており、この回動軸によって上下可動ブラシ7は回動可能となっている。この回動の動作は、吊上げロープ10を巻き上げることによってなされる。操作船の船体上において、海苔網が引き込まれる方向に、回転ブラシ3と手繰りドラムとが並んで配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一人の作業者でも海苔網に付着した汚れを効果的に除去することが可能な海苔網洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
海苔の養殖は海中に展開した海苔網を用いて行われており、養殖の過程で、海水中の塵埃、微少な海棲動物、藻類の他、赤腐れ病菌などの病原菌が海苔網に付着すると、海苔の生育を阻害したり、収穫された海苔の品質を低下させたりするため、海苔網への付着物を除去することが必要となる。
【0003】
しかし、近年海水の汚染が進行しており、海苔の生産量の減少や、品質の低下が顕著になっている。このような状況では、海苔の採取現場において海苔網に付着した汚れをどれだけ綺麗に除去できるかが重要な課題となっている。
【0004】
このような海苔網の洗浄に関して、特許文献1には、養殖海苔に発生する病害の原因となる病原菌や雑藻を駆除する海苔養殖用殺藻殺菌処理剤とこれを用いた処理方法が開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、海苔網を操作船の上に引き揚げ、甲板上で海苔網に処理液を噴射して洗浄した後に、海苔網を海中に戻す操作を連続的に行うことを可能にした海苔網の洗浄装置が開示されている。また、特許文献3には、海苔網を海面下で動揺または振動させて、海苔網に付着した異物を分離する技術が開示されている。
【0006】
しかし、特許文献1、特許文献2に記載された方法では、付着物を完全に除去することが難しく、特別な処理剤を用いているために廃液処理が必要となる。また、特許文献3に記載された方法では、海苔網の動揺または振動によって付着物を除去するものであることから、確実に付着物を除去することは難しい。
【0007】
特許文献4には、海苔網に付着した汚れを、回転ブラシを用いて除去する装置が開示されている。この装置は、固定ブラシと回転ブラシを利用して、効果的に海苔網に付着した汚れを除去するものであるが、特許文献1、特許文献2、特許文献3に記載されたものと比較して、回転ブラシによる機械的操作により付着物を除去するものであるため、付着物を確実に除去できるという利点がある。
【0008】
しかし、固定ブラシと回転ブラシとの間に海苔網を引き込むために、複数の作業者が必要であり、海苔の収穫作業は、狭い船の上で行われるため、複数の作業者を必要とすると、作業スペースの確保が困難であり、作業効率が低下するという問題点がある。また近年、海苔網は大型化しており、海苔網の操作が難しくなってきていることから、一人の作業者でも操作性良く洗浄作業を行うことが可能な洗浄装置が求められている。
【0009】
【特許文献1】特開2007−055947号公報
【特許文献2】特開2003−274776号公報
【特許文献3】特開2000−023535号公報
【特許文献4】実公昭51−18307号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、このような事情を考慮してなされたもので、一人の作業者でも海苔網に付着した汚れを操作性良く、効果的に除去することが可能な海苔網洗浄機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
以上の課題を解決するために、本発明の海苔網洗浄装置は、操作船の甲板上に設けられた本体フレームの上方に回転ブラシが設けられ、前記回転ブラシに対向して上下可動ブラシが設けられ、前記回転ブラシと前記上下可動ブラシとの間に海苔網が挿入されて海苔網を洗浄する海苔網洗浄装置であって、海苔網を操作船の側方に移動させる手繰りドラムが前記回転ブラシの側方に設けられていることを特徴とする。
【0012】
回転ブラシと上下可動ブラシとの間に海苔網が挿入されて海苔網を洗浄するものであるため、海苔網に処理液を吹き付けて洗浄するものや、海中において海苔網を振動させて洗浄するものと比較して洗浄を確実に行うことができる。そのため、海苔生産の障害となる微少な海棲動物、藻類、赤腐れ病菌などを確実に除去することができ、海苔の品質向上、生産量の増加に大きく寄与するとともに、特別な処理液を用いないため、環境へ悪影響を及ぼすことがない。
【0013】
また、海苔網を操作船の側方に移動させる手繰りドラムが設けられているため、回転ブラシと上下可動ブラシとの間に海苔網を移動させて挿入することが容易であり、一人の作業者でも効率的に洗浄作業を行うことができる。
【0014】
本発明においては、前記上下可動ブラシの上端の一部に吊上げロープの一端が固定され、前記上下可動ブラシは前記吊上げロープを巻き上げることにより回動可能とすることができる。
【0015】
上下可動ブラシをこのような構成とすることにより、上下可動ブラシを上方に吊り上げて、回転ブラシと上下可動ブラシとの間隔を広げることができる。そのため、洗浄作業の開始時または終了時に、海苔網の出し入れを容易に行うことができる。この操作は、吊上げロープを巻き上げることで実現できるため、作業者が一人であっても充分に行うことができる。
【0016】
本発明においては、前記操作船の側方移動手段として、前記操作船の船体の舷側にサイドスラスターが設けられていることが好ましい。
操作船の船体の舷側にサイドスラスターが設けられているため、操作船を通常の進行方向に対して垂直な方向に移動させることができる。近年海苔網は大型化しており、海苔網は海面近くに固定して設置されているため、海苔網自体を移動させるのは困難な状況となっているが、サイドスラスターにより、操作船を通常の進行方向に対して垂直な方向に移動させると、海苔網を固定したままで、海苔網を回転ブラシと上下可動ブラシとの間に通して洗浄することができ、洗浄作業の効率化が図られる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によると、一人の作業者でも海苔網に付着した汚れを操作性良く、効果的に除去することが可能な海苔網洗浄機を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下に、本発明をその実施形態に基づいて説明する。
図1に、本発明の実施形態に係る海苔網洗浄装置の構成を示す。ただし、後述する手繰りドラムはここでは省略している。
図1において、操作船の甲板1上に本体フレーム2が設けられ、この本体フレーム2の上方に回転ブラシ3が配置されている。回転ブラシ3は、針金を撚り合わせた棒状の芯材に、高分子材料からなる刷毛を設けたものを複数配列して形成することができ、図示しないプーリーを介して、本体フレーム2付近に設置された駆動部4から伝達された動力により、操作船の長手方向に平行に設けられた回転軸を中心として回転するものである。本体フレーム2には散水ポンプ5と散水管6とが設けられている。この散水ポンプ5と散水管6とにより、海苔網の洗浄作業において、回転ブラシ3と後述する上下可動ブラシ7とに付着した汚れは、海水を散水して洗い流すことにより除去される。
【0019】
回転ブラシ3の上方には、回転ブラシ3と対向して上下可動ブラシ7が設けられており、この上下可動ブラシ7は、木材や鋼材からなる芯材に対して、回転ブラシ3と対向する側に、高分子材料からなる刷毛を設けたものを複数配列して形成されている。
【0020】
上下可動ブラシ7を固定するブラシ固定部7aと吊上げ用支柱8との交点には図示しない回動軸が設けられており、この回動軸によって上下可動ブラシ7は回動可能となっている。この回動の動作は、吊上げロープ10を巻き上げることによってなされる。この吊上げロープ10は、その一端が上下可動ブラシ7のブラシ固定部7aの上端の一部に固定されており、吊上げ支持アーム9の先端と吊上げ用支柱8の上端とを通って、その他端が吊上げ用支柱8の途中に固定されている。吊上げ用支柱8の上端と吊上げ支持アーム9の先端とは支持ワイヤ11で連結されている。
【0021】
図2に、本発明の実施形態に係る海苔網洗浄装置を用いて海苔網を洗浄する様子を示す。
図2に示すように、操作船の船体15上において、海苔網14が引き込まれる方向に、回転ブラシ3と手繰りドラム13とが並んで配置されている。手繰りドラム13が配置されていることにより、回転ブラシ3と上下可動ブラシ7との間に海苔網14を挿入させて洗浄する際に、海苔網14の送りを容易に行うことができる。
【0022】
回転ブラシ3と上下可動ブラシ7との間に海苔網14を挿入させて擦って洗浄することにより、有害な付着物を除去できるばかりでなく、海苔網14に付着して成長しつつある海苔の一部を除去してしまう可能性はあるが、海苔芽に対して自然での生育環境において与えられる刺激に類似する刺激を与えることができ、二次芽、三次芽の生育を促進することができる。そのため、海苔芽を丈夫に成長させる効果が得られ、海苔の一部を損傷する弊害を遙かに上回る効果を得ることができる。
【0023】
図3に、本発明の実施形態に係る海苔網洗浄装置の作業中の稼動状態を示す。図3(a)は平面図、図3(b)はその側面図、図3(c)は船尾側から見た図である。
図3(a)に示すように、操作船の船体15の長手方向に垂直な方向に、回転ブラシ3と手繰りドラム13とが並んで配置されており、船体15の舷側にはサイドスラスター16が設けられている。サイドスラスター16として船外発動機を用いても良く、あるいはスクリューのような推進装置を用いても良い。コストの点からは船外発動機を用いるのが好ましい。船体15の船尾側にはブリッジ17が設けられている。
【0024】
回転ブラシ3の軸と上下可動ブラシ7の軸は、操作船の長手方向に平行に設けられているため、船体15がサイドスラスター16により矢印の方向に移動すると、海面近くに固定されている海苔網14は、回転ブラシ3とその上方に位置する上下可動ブラシ7との間を通過して洗浄される。サイドスラスター16を設ける位置は、操作船を移動させる方向に応じて、操作船の船体15のいずれかの側が選択される。
【0025】
上下可動ブラシ7は、図3(b)に示すように、洗浄作業の開始時または終了時には、上方に吊り上げられる。これにより、海苔網14の出し入れを容易に行うことができる。
このように、海苔網14の洗浄作業と、上下可動ブラシ7の操作は、作業者18が一人のみで行うことができ、省力化に大いに寄与する。
【0026】
図3(b)においては、吊上げ用支柱8は船尾側に設置されているが、海苔養殖場の条件によっては、船尾側で洗浄作業をすることがあり、その場合には、吊上げ用支柱8を船首側に設置して、船体15上に装置全体を反転させて設けることができる。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明は、一人の作業者でも海苔網に付着した汚れを操作性良く、効果的に除去することが可能な海苔網洗浄機として利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施形態に係る海苔網洗浄装置の構成を示す図である。
【図2】本発明の実施形態に係る海苔網洗浄装置を用いて海苔網を洗浄する様子を示す図である。
【図3】本発明の実施形態に係る海苔網洗浄装置の作業中の稼動状態を示す図である。
【符号の説明】
【0029】
1 甲板
2 本体フレーム
3 回転ブラシ
4 駆動部
5 散水ポンプ
6 散水管
7 上下可動ブラシ
7a ブラシ固定部
8 吊上げ用支柱
9 吊上げ支持アーム
10 吊上げロープ
11 支持ワイヤ
13 手繰りドラム
14 海苔網
15 船体
16 サイドスラスター
17 ブリッジ
18 作業者

【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作船の甲板上に設けられた本体フレームの上方に回転ブラシが設けられ、前記回転ブラシに対向して上下可動ブラシが設けられ、前記回転ブラシと前記上下可動ブラシとの間に海苔網が挿入されて海苔網を洗浄する海苔網洗浄装置であって、海苔網を操作船の側方に移動させる手繰りドラムが前記回転ブラシの側方に設けられていることを特徴とする海苔網洗浄装置。
【請求項2】
前記上下可動ブラシの上端の一部に吊上げロープの一端が固定され、前記上下可動ブラシは前記吊上げロープを巻き上げることにより回動可能であることを特徴とする請求項1記載の海苔網洗浄装置。
【請求項3】
前記操作船の側方移動手段として、前記操作船の船体の舷側にサイドスラスターが設けられていることを特徴とする請求項1または2記載の海苔網洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−51215(P2010−51215A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−218446(P2008−218446)
【出願日】平成20年8月27日(2008.8.27)
【出願人】(000244316)
【出願人】(508260245)
【Fターム(参考)】