説明

海苔養殖資材用伸子棒

【課題】海苔養殖資材固定用のロープを簡易且つ迅速に挿通することができる海苔養殖資材用伸子棒を提供すること。
【解決手段】海苔養殖資材用伸子棒22の両端部には、端部外周面に開口する海苔養殖資材固定用の挿通孔29を形成した筒部28が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、海苔の養殖に用いる海苔網を張設して、海苔網を浮かせたり、沈めたりする為に使用する海苔養殖資材用伸子棒に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、海苔網を拡張、張設するには網を海苔網用伸子棒にロープで一定間隔に結わい固定するが、その数は非常に多く、結わい固定に要する作業の効率化が望まれている。
【0003】
この海苔網用伸子棒としては、図25に示すように、丸竹材1の両端部外周面に海苔養殖資材を固定するためのロープを挿通する挿通貫通孔2を形成したり、図26に示したように合成樹脂製の中空管3の両端部に海苔養殖資材を固定するためのロープを挿通する挿通貫通孔4を形成したりしているものがある。また、他の海苔網用伸子棒としては、図27に示すように、支持パイプ5の両端部に樹脂製の中空接手6を嵌着した中空管7がある。更に、図28,図29の中空管7では、この接手6の外周面に海苔養殖資材を固定するためのロープを挿通する挿通貫通孔8を形成すると共に、端部にロープ支持用の切欠スリット9を形成している(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
この海苔養殖資材としては、例えば図30に示したように海底に突き刺される支柱10やこの支柱10に取り付けられるロープ11、海苔網13等がある。この図28では、海苔網13(図31参照)の縁部に設けられる海苔網綱14を切欠スリット9に係合させることで、海苔網13を海水所定の位置に配置するようにしている。
【0005】
ところで、丸竹材1,中空管3に設けられる挿通貫通孔2,4はそれぞれ一対設けられていて、各一対の挿通貫通孔2,4は丸竹材1,中空管3の内外周面にそれぞれ開口している。同様に、図32に示したように接手6には一対の挿通貫通孔8,8が設けられている。
【0006】
この一対の挿通孔貫通8,8に海苔養殖資材の固定用のロープ11を結わえるには、このロープを一対の挿通貫通孔8,8にロープを挿通する必要がある(挿通孔2,4についても同様)。この際に、一対の挿通貫通孔8,8の片方に最初にロープ11の端部を挿通するのは容易である。
【特許文献1】実公昭55−2768号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、ロープ11は腰が柔らかかったり、他方の挿通貫通孔8を探す作業が必要であるために、片方の挿通貫通孔8に挿通したロープ11の端部を他方の挿通貫通孔8に挿通するのは容易でなかった。この点は、挿通貫通孔2,4についても同様である。
【0008】
このため、従来は針金等で製作した通し棒をロープの端部に取り付けて、この通し棒を一対の挿通貫通孔8,8の一方に挿通した後に他方の挿通貫通孔8から引き抜くことにより、ロープ11を一対の挿通貫通孔8,8に挿通し、次に、通し棒をロープ11の端部から取り外した後、ロープ11の端部を接手6に結わえるようにしていた。この結果、針金等で制作した通し棒を使用する方法では非効率的であった。
【0009】
そこで、この発明は、海苔養殖資材固定用のロープを簡易且つ迅速に挿通することができる海苔養殖資材用伸子棒を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的を達成するため、この発明の海苔養殖資材用伸子棒は、海苔養殖資材固定用の挿通孔が中空管の両端部外周面に開口されていて、前記挿通孔は前記中空管の外周面の互いに反対側に開口する筒部内に設けられていることを特徴とする。
する。
【発明の効果】
【0011】
この構成の海苔養殖資材用伸子棒によれば、海苔養殖資材固定用のロープを簡易且つ迅速に挿通することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、この発明の実施の形態の海苔養殖資材用伸子棒及びこれに用いる海苔養殖資材用接手を図面に基づいて説明する。図1は、図30のような支柱方式ではなく、フロートを用いた浮流し養殖法を示している。
【0013】
図1において、22は海苔養殖資材用伸子棒、23は海苔養殖用伸子棒22にロープ21を介して結わえられフロート、24は中空管としての海苔養殖資材用伸子棒22に支持される海苔網である。
【0014】
また、海苔養殖資材用伸子棒22は、樹脂製のパイプからなる支持パイプ25と、支持パイプ25の両端部に取り付ける海苔養殖資材用接手26,26を有する。
【0015】
この海苔養殖資材用接手26は、一端部27aが支持パイプ25の端部に嵌着固定された接手本体27(図1〜図3参照)を有する。この接手本体27の軸線方向の中間部内には、図4,図5に示したように、互いに対向する側部まで直径方向に延びて、両端が接手本体27の内面と一体に形成された筒部28が設けられている。しかも、この筒部28内には、図4に示したように、接手本体27の外周面の互いに反対側の部分に開口する挿通孔29が形成されている。図4において、29a,29bは、接手本体27の外周面への挿通孔29の開口部である。また、フロート23に結わえられたロープ21は、挿通孔29に挿通された後に、図9のように接手本体27に結わえられている。
【0016】
更に、図4,図5に示したように、接手本体27の一端部27a及び他端部27b内には、筒部28を挟んでパイプ嵌着受口27a1,27b1がそれぞれ形成されている。しかも、接手本体27の他端部27b内には、筒部28の軸線方向の中央部外周面と接手本体27の内周面に一体に形成された補強リブ30,30が設けられている。
【0017】
また、補強リブ30は、接手本体27の長手方向に延びていると共に、他端部27bの端面側に向かうに従って突出量が徐々に少なくなっている。そして、この補強リブ30の両側には、図6,図7に示したようにパイプ嵌着穴27a1,27b1を連通させる連通孔31が形成されている(図5参照)。
【0018】
尚、挿通孔29は、図8に示したように中央部から両端の開口部29a,29bに向かうに従って徐々に拡径している。従って、開口部29a,29bをロープ21の太さよりも僅かに大きく形成しておくことで、挿通孔29にロープ21をより通しやすくなっている。図8において、挿通孔29は、中央部の直径がd1であり、開口部29a,29b近傍の直径がd2(d2>d1)となっている。しかも、開口部29a,29bの部分には、直径d2よりも更に僅かに大きくなるように、段差29cが設けられている。
【0019】
更に、接手本体27の他端部27bの互いに反対側の部分には、図7に示したように、軸線(中心線)と平行な方向に延び且つ端面に開放する切欠スリット32,32が形成されている(図3〜,図5参照)。この切欠スリット32,32を設けることにより、接手本体27の他端部27b側は2つの半円筒部27b2,27b2に分割されている。また、切欠スリット32,32は、図4に示したように、開口部29a,29bに対応して設けられている。
【0020】
しかも、この切欠スリット32の開放端部には、図5に示したように、端面に向かってテーパ状に拡開する海苔網綱挿入用のガイド部33が形成されている。また、切欠スリット32の開放端部とは反対側の端部と中間部には海苔網綱留まり孔部34が形成されている。
【0021】
また、接手本体27の他端部27b内には、各切欠スリット32の両側に位置させて接手本体27と一体に形成した補強リブ36,36が設けられている。この補強リブ36,36の基部は、筒部28の端部側の側部と一体に形成されている。また、補強リブ36は、切欠スリット32に沿って海苔網綱留まり孔部35の側方まで延びていると共に、海苔網綱留まり孔部35に近づくに従って突出量及び幅が徐々に少なくなるように形成されている。
【0022】
そして、補強リブ30,30及び36,36は半円筒部27b2,27b2の捩れ力や半円筒部27b2,27b2を開く力等に対する強度を大きくしているので、海苔網綱留まり孔部34,35に保持される海苔網綱24aから半円筒部27b2,27b2に大きな捩れ力が作用しても、半円筒部27b2,27b2の捩れを未然に防止し、接手本体27に切欠スリット32の部分から割れが生ずるのを未然に防止する。
【0023】
そして、海苔網綱留まり孔部34には図9に示したように海苔網24の周囲の海苔網綱24aが係合させられている。
(変形例1)
また、上述した実施例では、パイプ嵌着受口27a1,27b1を連通させる連通孔31を設けた構成としているが、必ずしも連通孔31を設ける必要はない。例えば、図10,図11に示したように、接手本体27内にパイプ嵌着受口27a1,27b1を区画する隔壁部37を設けると共に、この隔壁部37のパイプ嵌着受口27b1側に筒部28を設けて、この隔壁部37と筒部28とで構成しても良い。
【0024】
この場合には、海苔養殖資材用伸子棒22の支持パイプ25の両端部が、海苔養殖資材用接手26,26により閉成されて、支持パイプ25がフロートの役割を果たすので、図12に示したようにフロートは不要となる。
(変形例2)
また、図13に示したように、挿通孔29に挿通したロープ38で海苔網綱24aを海苔養殖資材用接手26に結わえて固定することもできる。
(変形例3)
更に、実施例1の補強リブ30,36に代えて、図14,図15に示したような補強リブ39,40をパイプ嵌着受口27b1内に設けた構成としても良い。この補強リブ39は、切欠スリット32,32の略中央部に位置させて接手本体27と一体に形成されている。また、補強リブ40は、切欠スリット32に対応させて接手本体27と一体に形成されている。
【0025】
この構成でも、補強リブ39,40を設ける位置が実施例1と異なるのみで、海苔養殖資材用伸子棒22の支持パイプ25の両端部が海苔養殖資材用接手26,26により閉成されて、支持パイプ25がフロートの役割を果たすので、フロートは不要となる。
【0026】
また、補強リブ39は半円筒部27b2,27b2の捩れ力や半円筒部27b2,27b2を開く力等に対する強度を大きくしている。しかも、補強リブ40は割れが生じやすい部分(切欠スリット32に対応する部分)に設けられている。
【0027】
このため、海苔網綱留まり孔部34,35に保持される海苔網綱24aから半円筒部27b2,27b2に大きな捩れ力が作用しても、半円筒部27b2,27b2の捩れを未然に防止し、接手本体27に切欠スリット32の部分から割れが生ずるのを未然に防止する。
(変形例4)
また、変形例3の切欠スリット32を省略して、図16〜図18に示したようにしても良い。尚、この変形例4では、補強リブ39,40の長さ等が同じに形成されている。また、この変形例4でも、海苔養殖資材用伸子棒22の支持パイプ25の両端部が海苔養殖資材用接手26,26により閉成されて、支持パイプ25がフロートの役割を果たすので、フロートは不要となる。
(変形例5)
また、変形例4の補強リブ39,40を省略して図19,20に示したように構成しても良い。この変形例5でも、海苔養殖資材用伸子棒22の支持パイプ25の両端部が海苔養殖資材用接手26,26により閉成されて、支持パイプ25がフロートの役割を果たすので、フロートは不要となる。
(変形例6)
更に、変形例4構成に加えて、図21,図22に示したように、接手本体27の他端部27bにV字状の嵌着治具用切欠41を設けると共に、接手本体27の外周面に周方向に環状に延びる1〜複数の補強リブ42を設けた構成としても良い。
【0028】
この構成では、図示しない嵌着治具を用いて海苔養殖資材用接手26を支持パイプ25の端部に嵌着する際に、嵌着治具を嵌着治具用切欠41に係合させておくことで、嵌着治具により海苔養殖資材用接手26を支持パイプ25に対して軸線周りに相対回動させることができるので、支持パイプ25の両端部に嵌着される海苔養殖資材用接手26の挿通孔29の向きを簡易に一致させることができる。
(変形例7)
また、図23に示したように、海苔養殖資材用接手26は、支持パイプ25の突き当てよう環状突部43を設けると共に、この環状突部43に接するように筒部28を設けた構成とすることもできる。
(変形例8)
更に、海苔養殖資材用伸子棒22の支持パイプ25は、図24に示したように、FRP製のパイプ44とこのパイプ44の内外周面に形成された熱可塑性樹脂である塩化ビニール層45,46を設けた構成とすることができる。この構成では、FRP製のパイプ44により強度が充分確保され、塩化ビニール樹脂層45,46により海水に対する保護を充分に図ることができる。尚、塩化ビニール樹脂層45,46は、ABS,ASA等他の熱可塑性樹脂に置き替えても良い。
【0029】
以上説明したように、この構成の海苔養殖資材用伸子棒によれば、海苔養殖資材(フロート23,海苔網24)固定用のロープ(21,38)を簡易且つ迅速に挿通することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】この発明に係る海苔養殖資材用伸子棒と海苔網との関係のフロートを用いた浮流し養殖法を示す説明図である。
【図2】図1の海苔養殖資材用接手の拡大平面図である。
【図3】図1の海苔養殖資材用接手の拡大正面図である。
【図4】図3のA2−A2線に沿う断面図である。
【図5】図2のA1−A1線に沿う断面図である。
【図6】図5のA3−A3線に沿う断面図である。
【図7】図5の海苔養殖資材用接手を矢印A4方向から見た説明図である。
【図8】図4の部分拡大断面図である。
【図9】図1の一部を拡大して示した説明用の部分斜視図である。
【図10】この発明に係る海苔養殖資材用接手の変形例を示す図7と同様の説明図である。
【図11】図10のA5−A5線に沿う断面図である。
【図12】図10,図11に示した海苔養殖資材用接手を用いた海苔養殖資材用伸子棒と海苔網との関係を示す説明図である。
【図13】海苔養殖資材の海苔養殖資材用伸子棒への取り付け例を示す部分斜視図である。
【図14】この発明に係る海苔養殖資材用接手の変形例を示す説明図である。
【図15】図14のA6−A6線に沿う断面図である。
【図16】この発明に係る海苔養殖資材用接手の変形例を示す説明図である。
【図17】図16のA7−A7線に沿う断面図である。
【図18】図16の海苔養殖資材用接手を端面側から見た斜視図である。
【図19】この発明に係る海苔養殖資材用接手の変形例を示す断面図である。
【図20】図19のA8−A8線に沿う断面図である。
【図21】この発明に係る海苔養殖資材用接手の変形例を示す断面図である。
【図22】図21の海苔養殖資材用接手を端面側から見た斜視図である。
【図23】この発明に係る海苔養殖資材用接手の変形例を示す断面図である。
【図24】図23のA9−A9線に沿う断面図である。
【図25】従来の海苔養殖資材用伸子棒の一例を示す斜視図である。
【図26】従来の海苔養殖資材用伸子棒の他の例を示す斜視図である。
【図27】従来の海苔養殖資材用伸子棒の他の例を示す斜視図である。
【図28】従来の海苔養殖資材用伸子棒を示す説明図である。
【図29】図28の海苔養殖資材用伸子棒の拡大断面図である。
【図30】従来の支柱とロープを用いた海苔養殖法を示す説明図である。
【図31】図30の拡大説明図である。
【図32】図28のA10−A10線に沿う断面図である。
【符号の説明】
【0031】
21・・・ロープ
22・・・海苔養殖資材用伸子棒(中空管)
23・・・フロート(海苔養殖資材)
24・・・海苔網(海苔養殖資材)
25・・・支持パイプ
27・・・接手本体
28・・・筒部
29・・・挿通孔
30・・・補強リブ
32・・・切欠スリット
36・・・補強リブ
37・・・隔壁部
42・・・補強リブ
44・・・FRPパイプ
45,46・・・塩化ビニール樹脂層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
海苔養殖資材固定用の挿通孔が中空管の両端部外周面に開口された海苔養殖資材用伸子棒において、
前記挿通孔は前記中空管の外周面の互いに反対側に開口する筒部内に設けられていることを特徴とする海苔養殖資材用伸子棒。
【請求項2】
請求項1に記載の海苔養殖資材用伸子棒において、前記中空管は支持パイプと該支持パイプの両端部に一端部が嵌着された樹脂製接手を備えると共に、前記接手本体内に前記筒部が形成されていることを特徴とする海苔養殖資材用伸子棒。
【請求項3】
請求項2に記載の海苔養殖資材用伸子棒において、両端部から前記挿通孔の手前まで相対する切欠スリットが形成されていることを特徴とする海苔養殖資材用伸子棒。
【請求項4】
請求項3に記載の海苔養殖資材用伸子棒において、前記接手本体内両面には前記筒部に至る補強リブが形成されていることを特徴とする海苔養殖資材用伸子棒。
【請求項5】
請求項4に記載の海苔養殖資材用伸子棒において、前記補強リブは前記切欠スリットの両側に沿った補強リブと、前記筒部中央部の鉛直軸方向に設けられた補強リブとからなることを特徴とする海苔養殖資材用伸子棒。
【請求項6】
請求項2〜5のいずれか1項に記載の海苔養殖資材用伸子棒において、前記支持パイプ内を区画する各壁部が接手内に前記筒部と一体に設けられたことを特徴とする海苔養殖資材用伸子棒。
【請求項7】
請求項2〜6のいずれか一つに記載の海苔養殖資材用伸子棒において、前記支持パイプはFRP製パイプと該パイプの内外周面に形成された熱可塑性樹脂層を備えることを特徴とする海苔養殖資材用伸子棒。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【公開番号】特開2008−278831(P2008−278831A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−127627(P2007−127627)
【出願日】平成19年5月14日(2007.5.14)
【出願人】(000164379)九州積水工業株式会社 (3)
【Fターム(参考)】