説明

海藻種糸巻付器及びその使用方法

【課題】発明は、コンブ、ワカメ等の海藻養殖の種糸巻き作業の省力化及び種糸の効率的利用を図るための海藻種糸巻付器及びその使用方法を提供する。
【解決手段】中空の円筒体又は多角形筒体に海藻養殖用の糸4を巻き付けた海藻種糸巻付器1を形成し、この海藻種糸巻付器1の糸4に海藻の種を付着させ、一定期間海藻の種を培養した藻種糸巻付器1を用いて、前記海藻種糸巻付器1の筒内に幹縄10を通し、種糸4の一端を幹縄10に結び、幹縄10又は海藻種糸巻付器1をスライドさせることにより、種糸4が幹縄10に自動的に螺旋状に巻かれていく。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンブ、ワカメ等の海藻養殖の種糸巻き作業の省力化及び種糸の効率的利用を図るための海藻種糸巻付器及びその使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、コンブ、ワカメ等の海藻養殖では、四角の枠に格子状に巻いた糸又は暖簾状の糸にコンブ、ワカメ等の種を付着させ、一定期間陸上水槽で管理培養した種糸を漁業者が購入し、それを海中に設置した幹縄に巻き付けてコンブ、ワカメ等の養殖に供している。
通常、種糸の巻き付け作業は、種糸を適当な長さ(約1m)に切り、幹縄に切った種糸を結びながら幹縄に巻いては付け足していく。この時、あらかじめ海に張った幹縄を船側に寄せて行うため、作業は前屈みの姿勢で長時間行うことになる。さらに、揺れ動く船上(小型船外機船)での作業であり、重労働且つ危険であり、時間も掛かる。
また、一旦切った種糸を結びながら巻いて行くため、結び目部分の種糸が無駄になるだけでなく、それらの行為により種糸が擦れ、海藻の芽の脱落が起こってしまうことがある。
【0003】
従来、幹縄に種糸を止着することによって、養殖適地が確保しにくい場所においても、比較的容易に房状のフトモズクを生産するもずくの養殖方法及び房もずくが知られている(特許文献1を参照)。
この公知技術は、もずくの種を培養し、培養したもずくの種を糸に植え付けて種糸として養成し、所定間隔で幹縄の撚り合わせ部分にプライヤーを差し込んで広げ、この広げた撚り合わせ部分に養成した種糸を止着し、この種糸を止着した幹縄を海水中に設置するもずくの養殖方法及び房もずくである。
この方法でも、あらかじめ海に張った幹縄を船側に寄せて行うため、作業は前屈みの姿勢で長時間行うことになり、さらに揺れ動く船上での作業であり、重労働且つ危険であり、時間も掛かる。
【0004】
さらに、海藻増養殖のための養成幹綱と種糸の撚りおよび解きを自動で行う装置が知られている(特許文献2を参照)。
この公知技術は、養成幹綱の巻き出しと同時にその外周に螺旋状に種糸を撚ることができるウインチを配置することで自動的に養成幹綱と種糸の展張ができると共に、その逆操作で養成幹綱の巻き込みと同時に種糸を解くことができることで効率化及び就労漁民に対する過重労働からの緩和を図った海藻増養殖のための幹綱への種糸の自動撚り装置である。
この自動撚り装置は、あらかじめ海に張った幹縄を船側に寄せて行う船上での作業を行えないものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−57823号公報
【特許文献2】特開2006−288316号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、コンブ、ワカメ等の海藻養殖の種糸巻き作業の省力化及び種糸の効率的利用を図るための海藻種糸巻付器及びその使用方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の海藻種糸巻付器は、中空の円筒体又は多角形筒体と、該円筒体又は多角形筒体の外周面の周回方向に海藻養殖用の海藻養殖用の種糸を巻き付けたものである。
さらに前記円筒体又は多角形筒体の周面に上下に貫通する縦方向の切れ目を有するものである。
本発明の海藻種糸巻付器の使用方法は、中空の円筒体又は多角形筒体に海藻養殖用の糸を巻き付けた海藻種糸巻付器を形成し、この海藻種糸巻付器の糸に海藻の種を付着させ、一定期間海藻の種を培養した海藻種糸巻付器を用いて、前記海藻種糸巻付器の筒内に幹縄を通し、種糸の一端を幹縄に結び、幹縄又は海藻種糸巻付器をスライドさせることにより、種糸が幹縄に自動的に螺旋状に巻かれていくものである。
さらに、あらかじめ海藻種糸巻付器の一方端に固定用輪ゴムを取り付けた固定用ゴム器を接続して前記海藻種糸巻付器及び固定ゴム器の筒内に幹縄を通し、種糸の一端を幹縄に結び、幹縄又は海藻種糸巻付器及び固定ゴム器をスライドさせることにより、種糸が幹縄に自動的に螺旋状に種糸巻きを行いながら、途中で固定用輪ゴムをスライドさせて前記固定用ゴム器から取り外し、種糸と幹縄を固定用輪ゴムで固定するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、円形又は多角形の筒に海藻養殖用の糸を巻き付けた海藻種糸巻付器を形成し、この海藻種糸巻付器の糸に海藻の種を付着させ、一定期間海藻の種を培養した藻種糸巻付器を用いて、前記海藻種糸巻付器に幹縄を通し、種糸の一端を幹縄に結び、幹縄又は海藻種糸巻付器をスライドさせると、幹縄に種糸が自動的に螺旋状に巻かれていくため、簡単に種糸の巻き付け作業を行うことができる。
この器具と方法を用いれば、簡単且つ短時間で種糸巻き作業ができ、労働時間の短縮、作業及び危険度の軽減が図れる。さらに、従来の方法である種糸同士の結束作業が不要となり、種糸の無駄が減ること、擦れることによる海藻の芽の脱落が減るなどの効果がある。
また、幹縄に巻き付けた種糸が、海上漂流物等により切断され、種糸がほどけてしまう懸念があるので、あらかじめ海藻種糸巻付器に固定用輪ゴムを取り付けた固定用ゴム器を用いて種糸巻きを行いながら、途中で固定用輪ゴムをスライドさせ、種糸と幹縄を固定用輪ゴムで固定する。これにより、仮に種糸が切断されてほどけても、被害を最小限に留めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の海藻種糸巻付器を分解して示す分解斜視図である。
【図2】固定用ゴム器の実施例を示す断面図である。
【図3】固定用ゴム器の他の実施例を示す一部切除斜視図である。
【図4】本発明の海藻種糸巻付器の使用状態を示す断面図である。
【図5】本発明の海藻種糸巻付器の使用終了を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の海藻種糸巻付器の一実施例を添付図面に基づいて、以下に説明する。
本発明の海藻種糸巻付器1は、図1の左側に示すように、中空の円筒体3と、該円筒体3の外周面の円周方向に海藻養殖用の種糸4を巻き付けたものである。
さらに必要に応じて、図1の右側に示すように、軸方向に伸びる複数個の押し棒5を備えた円筒状の固定用ゴム器6を設け、前記押し棒5の外側に固定用輪ゴム7を取り付け、前記海藻種糸巻付器1の一方端に前記押し棒5を前記種糸4に接触しないで被せるようにして前記固定用ゴム器6を接続する。
なお、前記固定用輪ゴム7に限らず、種糸4を固定できる円輪状伸縮体であれば何でもよい。
図2に示すように、前記固定用ゴム器6は、外周面に軸方向の複数の縦溝8を形成し、該縦溝8に前記押し棒5を嵌合させて接着剤で固定する。なお、前記押し棒5は前記種糸4に接触しないで被さる位置に形成される。
図3に示すように、前記固定用ゴム器6は、外周面の軸方向に前記押し棒5を添設し、前記押し棒5を固定するように粘着テープ9を巻きつける。なお、前記押し棒5は前記種糸4に接触しないで被さる位置に形成される。
さらに、図5に示すように、周面に縦方向の切れ目2を有する円筒体3を設け、該円筒体3の外周面の円周方向に海藻養殖用の糸を巻き付け、この糸に海藻の種を付着させ、一定期間海藻の種を培養することも可能である。
なお、図1においては円筒体3のみを表示したが、これに限らず多角形の筒体とすることができる。
【0011】
次に、本発明の海藻種糸巻付器の使用方法を添付図面に基づいて、以下に説明する。
図1に示すように、中空の円筒体3に海藻養殖用の糸を巻き付けた海藻種糸巻付器1を形成し、この海藻種糸巻付器1の糸に海藻の種を付着させ、一定期間海藻の種を培養した藻種糸巻付器1を用いて、図4に示すように、前記海藻種糸巻付器1の筒内に幹縄10を通し、種糸4の一端を幹縄10に結び、幹縄10又は海藻種糸巻付器1をスライドさせることにより、前記種糸4が前記幹縄10に自動的に螺旋状に巻かれていく。
このようにして前記藻種糸巻付器1を用いて、前記海藻種糸巻付器1に幹縄10を通し、種糸4の一端を幹縄10に結び、幹縄4又は海藻種糸巻付器1をスライドさせると、幹縄10に種糸4が自動的に螺旋状に巻かれていくため、簡単に種糸4の巻き付け作業を行うことができる。
【0012】
さらに、図4に示すように、あらかじめ海藻種糸巻付器1の一方端に固定用輪ゴム7を取り付けた固定用ゴム器6を接続して前記海藻種糸巻付器1及び固定ゴム器6の筒内に幹縄10を通し、種糸4の一端を幹縄10に結び、幹縄10又は海藻種糸巻付器1及び固定ゴム器6をスライドさせることにより、前記種糸4が前記幹縄10に自動的に螺旋状に種糸巻きを行いながら、途中で固定用輪ゴム7をスライドさせて前記固定用ゴム器6から取り外し、前記種糸4と前記幹縄10を固定用輪ゴム7で固定する。
幹縄10に巻き付けた種糸4が、海上漂流物等により切断され、種糸4がほどけてしまう懸念があるので、あらかじめ海藻種糸巻付器1に固定用輪ゴム7を取り付けた固定用ゴム器6を用いて種糸巻きを行いながら、途中で固定用輪ゴム7をスライドさせ、種糸4と幹縄10を固定用輪ゴム7で固定することにより、仮に種糸4が切断されてほどけても、被害を最小限に留めることが可能となる。
【0013】
前記種糸巻き作業が終了したら、前記幹縄10を解き、前記幹縄10から前記円筒体3を取り外すが、図5に示すように、円筒体3に切れ目2を形成している場合には、前記切れ目2を利用して前記幹縄10を解かずに前記円筒体3を取り外すことができる。
【符号の説明】
【0014】
1 海藻種糸巻付器
2 切れ目
3 円筒体
4 種糸
5 押し棒
6 固定用ゴム器
7 固定用輪ゴム
8 縦溝
9 粘着テープ
10 幹縄

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空の円筒体又は多角形筒体と、該円筒体又は多角形筒体の外周面の周回方向に海藻養殖用の海藻養殖用の種糸を巻き付けたことを特徴とする海藻種糸巻付器。
【請求項2】
前記円筒体又は多角形筒体の周面に上下に貫通する縦方向の切れ目を有することを特徴とする請求項1記載の海藻種糸巻付器。
【請求項3】
中空の円筒体又は多角形筒体に海藻養殖用の糸を巻き付けた海藻種糸巻付器を形成し、この海藻種糸巻付器の糸に海藻の種を付着させ、一定期間海藻の種を培養した藻種糸巻付器を用いて、前記海藻種糸巻付器の筒内に幹縄を通し、種糸の一端を幹縄に結び、幹縄又は海藻種糸巻付器をスライドさせることにより、種糸が幹縄に自動的に螺旋状に巻かれていくことを特徴とする海藻種糸巻付器の使用方法。
【請求項4】
あらかじめ海藻種糸巻付器の一方端に固定用輪ゴムを取り付けた固定用ゴム器を接続して前記海藻種糸巻付器及び固定ゴム器の筒内に幹縄を通し、種糸の一端を幹縄に結び、幹縄又は海藻種糸巻付器をスライドさせることにより、種糸が幹縄に自動的に螺旋状に種糸巻きを行いながら、途中で固定用輪ゴムをスライドさせて前記固定用ゴム器から取り外し、種糸と幹縄を固定用輪ゴムで固定することを特徴とする請求項3記載の海藻種糸巻付器の使用方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−103853(P2011−103853A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−265240(P2009−265240)
【出願日】平成21年11月20日(2009.11.20)
【出願人】(591108178)秋田県 (126)
【Fターム(参考)】