説明

消泡タンク

【課題】タンク本体内の被処理液の液面が上下に変動しても、被処理液の液面に対して消泡用液を比較的満遍なく散布して、所望どおりの消泡効果を得ることができ、消泡用液が腐食性を有する場合でも、タンク本体内面の腐食を抑制することのできる消泡タンク。
【解決手段】液面Lが上下に変動する状態で被処理液2を収容するタンク本体3と、被処理液2の上方から消泡用液4を拡散させて噴出する複数の消泡用ノズル5を備え、複数の消泡用ノズル5から被処理液2の液面Lに向けて消泡用液4を散布して被処理液2に含有される気泡を消泡する消泡タンク1で、複数の消泡用ノズル5の噴出方向5Aが、側面視においてタンク本体3の中心3A側に向けて傾斜されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液面が上下に変動する状態で被処理液を収容するタンク本体と、その被処理液の上方から消泡液を拡散させて噴出する複数の消泡用ノズルを備え、それら複数の消泡用ノズルから被処理液の液面に向けて消泡液を散布して被処理液に含有される気泡を消泡する消泡タンクに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の消泡タンク1では、図5に示すように、複数の消泡用ノズル5の噴出方向5Aが、側面視においてほぼ鉛直方向に向けられていた。
したがって、タンク本体3内に収容される被処理液2の液面Lがほぼ一定の場合、例えば、図5の(a)を参照して、被処理液2の液面Lが、HLで示す高さに維持されて上下にあまり変動しない場合、特に問題はなかった。
しかしながら、被処理液2の液面Lが、図5の(a)においてHLで示す最高液面から図5の(b)においてLLで示す最低液面の間で上下に変動する場合、図5の(a)に示すように、最高液面HLを基準にして消泡用ノズル5を配置すると、被処理液2の液面Lが低下したとき、図5の(b)において斜線で示す範囲の消泡用液4は、被処理液2の液面Lに直接散布されることなくタンク本体3の内面に当接して、タンク本体3の内面に沿って流下するため、消泡用液4による消泡効果が減殺されるという問題があった。
さらに、消泡用液4が腐食性を有する場合には、高流速の消泡用液4がタンク本体3の内面に勢いよく当接するため、タンク本体3の内面が比較的短期間のうちに腐食する可能性もあり、それを回避しようとすると、タンク本体3を耐腐食性に優れた材料で構成する必要があって、タンク本体3が高価になるという問題もあった。
【0003】
逆に、図6に示すように、最低液面LLを基準にして消泡用ノズル5を配置すると、被処理液2の液面Lが最高液面HLに達したとき、消泡用液4は、被処理液2の液面Lの一部にしか散布されず、この場合にも、消泡用液4による消泡効果が減殺されるという問題があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、このような従来の問題点に着目したもので、その目的は、たとえタンク本体内の被処理液の液面が上下に変動しても、被処理液の液面に対して消泡用液を比較的満遍なく散布して、所望どおりの消泡効果を得ることができ、また、たとえ消泡用液が腐食性を有する場合でも、タンク本体内面の腐食を抑制することのできる消泡タンクを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の特徴構成は、液面が上下に変動する状態で被処理液を収容するタンク本体と、その被処理液の上方から消泡用液を拡散させて噴出する複数の消泡用ノズルを備え、それら複数の消泡用ノズルから被処理液の液面に向けて消泡用液を散布して被処理液に含有される気泡を消泡する消泡タンクであって、前記複数の消泡用ノズルの噴出方向が、側面視において前記タンク本体の中心側に向けて傾斜されているところにある。
【0006】
本発明の第1の特徴構成によれば、消泡用液を拡散させて噴出する複数の消泡用ノズルの噴出方向が、側面視において被処理液を収容するタンク本体の中心側に向けて傾斜されているので、たとえタンク本体内の被処理液の液面が上下に変動しても、上述した従来の消泡タンクに比べて、被処理液の液面に対して消泡用液を比較的満遍なく散布することができ、また、消泡用液がタンク本体内面へ当接することを抑制することができる。
したがって、たとえ少量の消泡用液であっても、比較的所望どおりの消泡効果を得ることができるとともに、たとえ消泡用液が腐食性を有する場合でも、タンク本体内面の腐食を抑制することができる。
【0007】
本発明の第2の特徴構成は、上記第1の特徴構成に加えて、前記複数の消泡用ノズルの噴出方向が、平面視において前記タンク本体の中心から偏心した位置に向けて傾斜されて、前記複数の消泡用ノズルからの消泡用液の散布パターンが、平面視において巴状になるように構成されているところにある。
【0008】
本発明の第2の特徴構成によれば、複数の消泡用ノズルの噴出方向が、側面視において被処理液を収容するタンク本体の中心側に向けて傾斜されているので、各消泡用ノズルから散布される消泡用液の被処理液の液面に対する散布域は、平面視で楕円形になる。さらに、複数の消泡用ノズルの噴出方向が、平面視においてタンク本体の中心から偏心した位置に向けて傾斜されて、複数の消泡用ノズルからの消泡用液の散布パターンが、平面視において巴状になるように構成されているので、被処理液の液面が上下に変動しても、散布する消泡用液がタンク本体の内面に当接するのを避けながら、くまなく広い液面にわたって散布でき、消泡用液を被処理液の液面に対してより一層確実に満遍なく散布することができる。したがって、少量の消泡用液であっても、確実な消泡効果を得ることができる。
【0009】
本発明の第3の特徴構成は、上記第1または第2の特徴構成に加えて、前記消泡タンクが、液中に懸濁する固形物を気泡により浮上させて濃縮または分離する固形物浮上装置に接続され、その固形物浮上装置から供給される液を前記被処理液として消泡処理するところにある。
【0010】
本発明の第3の特徴構成によれば、消泡タンクが、液中に懸濁する固形物を気泡により浮上させて濃縮または分離する固形物浮上装置に接続され、その固形物浮上装置から供給される液を被処理液として消泡処理するので、本発明の消泡タンクによれば、少量の消泡用液で被処理液の液面の広い範囲にくまなく散布できるため、液中に懸濁する固形物を浮上させた気泡を確実に固形物と分離させ、同時に、確実に消泡処理することができる。
【0011】
本発明の第4の特徴構成は、上記第3の特徴構成に加えて、前記固形物浮上装置が、下方から供給される液中の溶存成分を空気の気泡により酸化してその溶存成分を気泡の表面に固形物として析出、付着させるとともに上方へ浮上させて濃縮する機能を備えているところにある。
【0012】
本発明の第4の特徴構成によれば、固形物浮上装置が、下方から供給される液中の溶存成分を空気の気泡により酸化してその溶存成分を気泡の表面に固形物として析出、付着させるとともに上方へ浮上させて濃縮する機能を備えているので、液中に含まれる溶存成分を酸化により固形化して気泡の表面に付着させて浮上させ、その固形物が付着した気泡を確実に消泡することができる。
すなわち、表面に固着物が付着した気泡は、固形物が付着していない気泡に比べて気泡が壊れ難くて、消泡が困難な場合が多い。しかし、本発明の消泡タンクによれば、従来に比べて少量の消泡用液で効率のよい消泡効果が得られるので、表面に固形物が付着した気泡であっても確実に消泡することができる。
【0013】
本発明の第5の特徴構成は、上記第4の特徴構成に加えて、前記固形物浮上装置が、前記固形物を上方へ浮上させて濃縮した濃縮液を溢流口から流出させて除去し、その濃縮液を除去した後の非濃縮液を上方に開口した気泡分離器により排出して液中の固形物を濃縮除去する浮上濃縮塔であり、前記溢流口が前記気泡分離器より上方に配置され、前記溢流口に接続された溢流管が前記消泡タンクの内部に導入されて、その溢流管の先端に濃縮液を噴出する噴出口が設けられ、その噴出口が前記溢流口より下方に配置されているところにある。
【0014】
本発明の第5の特徴構成によれば、固形物浮上装置が、固形物を上方へ浮上させて濃縮した濃縮液を溢流口から流出させて除去し、その濃縮液を除去した後の非濃縮液を上方に開口した気泡分離器により排出して液中の固形物を濃縮除去する浮上濃縮塔であるから、この浮上濃縮塔によって、液中に含まれる溶存成分を酸化により固形化して、液面近くに効率良く濃縮することができ、液面近くの濃縮液を流出させて除去する溢流口が気泡分離器より上方に配置され、その溢流口に溢流管が接続されて消泡タンクの内部に導入されているので、固形物および固形物が付着した気泡を伴う濃縮液は、溢流管を介して消泡タンクへ送入される。
そして、その溢流管の先端に濃縮液を噴出する噴出口が設けられていて、しかも、その噴出口が溢流口より下方に配置されているので、溢流口と噴出口との高低差を利用して濃縮液を勢いよく噴出させることができ、噴出口から噴出される濃縮液が、消泡タンク内の濃縮液を効果的に水理撹拌することとなる。
【0015】
以上のように、浮上濃縮塔において固形物が効果的に濃縮され、その固形物が付着した気泡を伴って濃縮液が消泡タンクに流入し、さらに、消泡タンク内で撹拌されるので、消泡タンク内においては、濃縮液の液面全体にわたって多くの固形物が付着した気泡がゆきわたることになる。
したがって、尋常な手段で消泡することはむずかしいが、本発明の消泡タンクによれば、上述したように、少量の消泡用液で被処理液の液面、つまり、濃縮液の液面の広い範囲にくまなく散布できるため、濃縮液に含有される気泡を確実に消泡し、固形物の分離をも行うことができる。
【0016】
本発明の第6の特徴構成は、上記第4または第5の特徴構成に加えて、前記液中の溶存成分が、脱硫液中の硫化水素であり、前記固形物が、硫化水素の酸化により生成する硫黄であるところにある。
【0017】
本発明の第6の特徴構成によれば、液中の溶存成分が、脱硫液中の硫化水素であり、固形物が、硫化水素の酸化により生成する硫黄であるから、硫化水素が気泡の表面で酸化されて、酸化により生成する硫黄が薄膜状になって気泡の表面に付着することが多い。この場合、薄膜状の硫黄が付着しない気泡に比べて壊れ難くなるが、本発明の消泡タンクによれば、従来に比べて少量の消泡用液で効率のよい消泡効果が得られるので、表面に薄膜状の硫黄が付着した気泡であっても確実に消泡することができる。
【0018】
本発明の第7の特徴構成は、上記第1または第2の特徴構成に加えて、前記消泡タンクが、前記被処理液としての脱硫液中に含まれる硫化水素を空気の気泡により酸化する酸化塔の機能を備え、その酸化により生成する硫黄を気泡の表面に固形物として析出させるとともに上方へ浮上させるところにある。
【0019】
本発明の第7の特徴構成によれば、消泡タンクが、被処理液としての脱硫液中に含まれる硫化水素を空気の気泡により酸化する酸化塔の機能を備え、その酸化により生成する硫黄を気泡の表面に固形物として析出させるとともに上方へ浮上させるので、この消泡タンク内において、空気の気泡により硫化水素を酸化して硫黄を析出させるとともに、その固形の硫黄が薄膜状に付着して、液面付近へ浮上する気泡を確実に消泡することができ、硫黄を分離回収しやすくなる。
【0020】
本発明の第8の特徴構成は、上記第6または第7の特徴構成に加えて、前記タンク本体が、炭素鋼で構成されているところにある。
【0021】
本発明の第8の特徴構成によれば、タンク本体が、炭素鋼で構成されているので、タンク本体の低廉化を図ることができる。
例えば、硫化水素を処理する場合の脱硫液は炭素鋼に対して腐食性があるので、当該脱硫液消泡用液として使用すると、従来の消泡タンクでは、図5の(b)に示したように、高速で散布される腐食性の液がタンク本体の内面に当接することになり、タンク本体が短期間のうちに腐食する。しかし、本発明の消泡タンクによれば、上述したように、消泡用液がタンク本体内面へ当接することを抑制することができるので、たとえ脱硫液を消泡用液として使用しても、タンク本体内面の腐食を抑制することができる。したがって、タンク本体を炭素鋼で構成することによってタンク本体の低廉化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明による消泡タンクの実施の形態を図面に基づいて説明する。
本発明の消泡タンク1は、図1および図2に示すように、その液面Lが上下に変動する被処理液2を収容する円筒状のタンク本体3と、そのタンク本体3内の上方に配置されて、タンク本体3内の被処理液2の上方から消泡用液4をほぼ円錐状に拡散させて噴出する合計4つの消泡用ノズル5を備え、それら4つの消泡用ノズル5から被処理液2の液面Lに向けて消泡用液4を散布して被処理液2に含有される気泡を消泡するように構成されている。
タンク本体3は、収容する被処理液2の特性や耐用年数などを考慮して、その材料を選択するのが好ましいが、通常、ステンレスまたは炭素鋼などにより構成される。
【0023】
そして、4つの消泡用ノズル5において、各ノズル5の噴出方向5Aが、図1に示すように、側面視においてタンク本体3の中心3A側に向けて傾斜され、かつ、図2に示すように、平面視においてタンク本体3の中心3Aから偏心した位置に向けて傾斜されて、各消泡用ノズル5からの消泡用液4の散布パターンPが、平面視において4つ巴状、つまり、タンク本体3の中心3Aの周りに円形を描くようにめぐり巻く状態になるように構成されている。
この図2に示す散布パターンPは、各消泡用ノズル5からの消泡用液4が被処理液2の液面Lに到達した状態を平面視で示しており、ほぼ楕円形を呈している。
【0024】
なお、消泡用ノズル5の数は、特に4つに限らず、複数あればよく、例えば、消泡用ノズル5が2つの場合であれば、消泡用液4の散布パターンPは2つ巴状になり、3つの場合であれば、3つ巴状になる。
いずれにせよ、平面視において、ほぼ円形の被処理液2の液面Lに対し、ほぼ楕円形の消泡用液4の散布パターンPが巴状になるので、被処理液2の液面Lが、最低液面LLから最高液面HLの間で上下に変動しても、消泡用液4は、被処理液2の液面Lに対してほぼ満遍なく散布され、したがって、被処理液2の液面Lの変動にかかわらず、常に効果的な消泡効果が得られる。
また、上述した実施形態では、各ノズル5の噴出方向5Aが、側面視においてタンク本体3の中心3A側に向けて傾斜され、さらに、平面視においてタンク本体3の中心3Aから偏心した位置に向けて傾斜されているが、各ノズル5の噴出方向5Aを平面視においてタンク本体3の中心3Aから偏心した位置に向けて傾斜させることなく、側面視においてタンク本体3の中心3A側に向けて傾斜させて実施することもできる。
【0025】
本発明による消泡タンク1は、具体的には、例えば、図3に示すように、固形物浮上装置の一例である浮上濃縮塔6に接続されて使用される。
浮上濃縮塔6は、硫化水素(H2S)を含む燃料ガスをアルカリ性の脱硫液と接触させて、アルカリ性の脱硫液の中に硫化水素を溶存成分として溶け込ませた後の脱硫液を処理対象として、脱硫液中の硫化水素を空気の気泡によって酸化し、その酸化により生成する固形物としての硫黄(S)を気泡の表面に析出、付着させるとともに上方へ浮上させて濃縮する浮上濃縮機能を備えている。
【0026】
そのため、浮上濃縮塔6には、その下方に硫化水素を含む脱硫液と空気とを一緒に供給する供給管7が接続され、上方の周壁に4つの溢流口8が周方向にほぼ等間隔に設けられ、各溢流口8にそれぞれ第一溢流管9が接続され、第一溢流管9が2本ずつ纏められて第二溢流管10に接続されている。
そして、下方の供給管7から供給される脱硫液中の硫化水素を空気によって酸化し、酸化により生成される固形の硫黄を空気の気泡と共に上方へ浮上させて分離し、その浮上させた固形の硫黄の濃縮液を溢流口8から第一と第二の溢流管9,10を介して消泡タンク1へ供給するように構成されている。
【0027】
浮上濃縮塔6の内部には、平面視において、その中央部分に上方へ開口する液吸込口11aを有する気泡分離器11が各溢流口8より下方に位置するように配置され、固形の硫黄の濃出液を除去した後の非濃出液が、液吸込口11aから気泡分離器11に連通の吸込管12を介して浮上濃縮塔6から排出されるように構成されている。
2本の第二溢流管10は、それぞれ消泡タンク1のタンク本体3の周壁を貫通してタンク本体3の内部にまで導入され、各第二溢流管10の先端には、浮上濃縮塔6からの硫黄の濃出液を斜め下方に向けて噴出する噴出口10aが設けられ、それら噴出口10aが溢流口8より下方に位置するように配置されている。
【0028】
消泡タンク1の消泡用ノズル5は、ポンプ13を備えた搬送管14を介してタンク本体3に接続され、タンク本体3内の濃縮脱硫液を消泡用液4とし、タンク本体3内の濃縮脱硫液を被処理液2として、ポンプ13の駆動により被処理液2である濃縮脱硫液の液面Lに向けて消泡用液4である濃縮脱硫液を散布し、被処理液2である濃縮脱硫液に含有される気泡を消泡するように構成されている。すなわち、この消泡タンク1は、浮上濃縮塔6から供給される濃縮脱硫液を被処理液2として、表面に固形の硫黄が付着した気泡を消泡するように構成されている。
なお、浮上濃縮塔6の上部にも散布装置15が設けられていて、その散布装置15は、別のポンプ16を備えた搬送管17を介してタンク本体3に接続され、タンク本体3内の濃縮脱硫液を浮上濃縮塔6内の濃縮脱硫液に散布するように構成されている。
【0029】
この図3に示す実施形態では、4つの溢流口8にそれぞれ第一溢流管9が接続され、さらに、第一溢流管9が2本ずつ纏められて第二溢流管10に接続されているが、4本の第一溢流管9を1本の第二溢流管10に纏めて接続することもでき、また、溢流口8をひとつだけ設け、その溢流口8に1本の溢流管を接続してタンク本体3の内部にまで導入して実施することもできる。要するに、溢流口8の個数やそれに接続する溢流管の本数については任意である。
また、固形物浮上装置の一例として浮上濃縮塔6を示したが、この浮上濃縮塔6に代えて、液中に懸濁する固形物を気泡により浮上させて分離する浮上分離装置を設け、その浮上分離装置に消泡タンク1を接続し、浮上分離装置から供給される液を被処理液2として消泡処理するように構成することもできる。さらに、液中の溶存成分を空気の気泡により酸化してその溶存成分を気泡の表面に固形物として析出させるとともに上方へ浮上させる酸化塔に消泡タンク1を接続し、酸化塔から供給される酸化後の液を被処理液2として消泡処理するように構成することもできる。
【0030】
さらに、本発明による消泡タンク1は、浮上濃縮塔6、浮上分離装置、酸化塔などに接続して使用する以外に、例えば、消泡タンク1自体に酸化塔の機能を備えさせて実施することもできる。
そのため、図4に示すように、消泡タンク1のタンク本体3には、その下方に硫化水素を含む脱硫液と空気とを供給する供給管7a,7bが接続され、供給管7aから供給される脱硫液中の硫化水素を空気によって酸化し、酸化により生成される固形の硫黄を空気の気泡と共に上方へ浮上させて分離し、酸化後の液を排出管18から図外のタンクなどへ供給するように構成されている。
この実施形態においても、消泡タンク1の消泡用ノズル5は、ポンプ13を備えた搬送管14を介してタンク本体3に接続され、タンク本体3内の液を消泡用液4として、ポンプ13の駆動によりタンク本体3内の液の液面Lに向けて消泡用液4を散布し、被処理液2に含有される気泡を消泡するように構成されている。
【0031】
〔別実施形態〕
図3と図4に示した実施形態では、タンク本体3内の被処理液2に対し、同じタンク本体2内の液を消泡用液4として散布する例を示したが、タンク本体3内の液に代えて、消泡用液4として水または消泡剤を含んだ各種の液などを散布して消泡することもできる。
また、被処理液2の一例として硫黄の濃縮脱硫液を示したが、その他、酸化鉄などの固形物が表面に析出した気泡を含有する各種の濃縮液などを被処理液として実施することも、さらに、固形物が表面に析出していない気泡を含有する各種の液を被処理液として実施することもできる。
要するに、本発明における「消泡タンク」とは、気泡を含有し、または、泡沫を伴う各種の液を被処理液2として、その気泡を消泡するタンクのすべてを総称するものである。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の消泡タンクの構成を示す縦断側面図
【図2】本発明の消泡タンクの構成を示す横断平面図
【図3】本発明の消泡タンクの実施態様を示す縦断側面図
【図4】本発明の消泡タンクの別の実施態様を示す縦断側面図
【図5】従来の消泡タンクの構成を示す縦断側面図
【図6】従来の消泡タンクの構成を示す縦断側面図
【符号の説明】
【0033】
1 消泡タンク
2 被処理液
3 タンク本体
3A タンク本体の中心
4 消泡用液
5 消泡用ノズル
5A 消泡用ノズルの噴出方向
6 浮上濃縮塔
8 溢流口
9,10 溢流管
10a 噴出口
11 気泡分離器
L 被処理液の液面
P 消泡用液の散布パターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液面が上下に変動する状態で被処理液を収容するタンク本体と、その被処理液の上方から消泡用液を拡散させて噴出する複数の消泡用ノズルを備え、それら複数の消泡用ノズルから被処理液の液面に向けて消泡用液を散布して被処理液に含有される気泡を消泡する消泡タンクであって、
前記複数の消泡用ノズルの噴出方向が、側面視において前記タンク本体の中心側に向けて傾斜されている消泡タンク。
【請求項2】
前記複数の消泡用ノズルの噴出方向が、平面視において前記タンク本体の中心から偏心した位置に向けて傾斜されて、前記複数の消泡用ノズルからの消泡用液の散布パターンが、平面視において巴状になるように構成されている請求項1に記載の消泡タンク。
【請求項3】
前記消泡タンクが、液中に懸濁する固形物を気泡により浮上させて濃縮または分離する固形物浮上装置に接続され、その固形物浮上装置から供給される液を前記被処理液として消泡処理する請求項1または2に記載の消泡タンク。
【請求項4】
前記固形物浮上装置が、下方から供給される液中の溶存成分を空気の気泡により酸化してその溶存成分を気泡の表面に固形物として析出、付着させるとともに上方へ浮上させて濃縮する機能を備えている請求項3に記載の消泡タンク。
【請求項5】
前記固形物浮上装置が、前記固形物を上方へ浮上させて濃縮した濃縮液を溢流口から流出させて除去し、その濃縮液を除去した後の非濃縮液を上方に開口した気泡分離器より排出して液中の固形物を濃縮除去する浮上濃縮塔であり、前記溢流口が前記気泡分離器より上方に配置され、前記溢流口に接続された溢流管が前記消泡タンクの内部に導入されて、その溢流管の先端に濃縮液を噴出する噴出口が設けられ、その噴出口が前記溢流口より下方に配置されている請求項4に記載の消泡タンク。
【請求項6】
前記液中の溶存成分が、脱硫液中の硫化水素であり、前記固形物が、硫化水素の酸化により生成する硫黄である請求項4または5に記載の消泡タンク。
【請求項7】
前記消泡タンクが、前記被処理液としての脱硫液中に含まれる硫化水素を空気の気泡により酸化する酸化塔の機能を備え、その酸化により生成する硫黄を気泡の表面に固形物として析出させるとともに上方へ浮上させる請求項1または2に記載の消泡タンク。
【請求項8】
前記タンク本体が、炭素鋼で構成されている請求項6または7に記載の消泡タンク。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−302264(P2008−302264A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−149312(P2007−149312)
【出願日】平成19年6月5日(2007.6.5)
【出願人】(591027444)大阪ガスエンジニアリング株式会社 (18)
【Fターム(参考)】