説明

液体供給装置、その液体供給装置において実行されるプログラム、並びに液体噴霧装置

【課題】外部に吐出させる液体の流量を時間的な遅れなく一定にさせる。
【解決手段】液体供給装置100は、液体吐出部200から吐出される液体の流量が常時一定になるよう液体吐出部200に向かって液体を供給するものであり、電磁ポンプ10と、電磁コイル温度検出部20と、電磁ポンプ駆動部30とを備える。電磁コイル温度検出部20は、電磁ポンプ10の電磁コイル12の温度を検出するものである。電磁ポンプ駆動部30は、電磁コイル温度検出部20において検出された電磁コイル12の温度に基づいて液体吐出部200から吐出される液体の流量が一定になるよう電磁ポンプ10の電磁コイル12に上記検出された電磁コイルの温度に対応した駆動パルスを印加して電磁ポンプ10を駆動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁ポンプを含んだ液体供給装置、その液体供給装置において実行されるプログラム、並びに液体噴霧装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、石油給湯器のバーナー部に燃料を供給するのに、図5に示すような一定差圧式の燃料噴霧装置500が多く採用されていた。制御ポンプ510は、燃料の吐出圧力を駆動パルスにより変更できる電磁ポンプである。また、定差圧ポンプ520は、吐出圧力が一定の電磁ポンプである。燃料噴霧ノズル530は燃料を噴霧する(図示しない)噴霧開口を有し、その内部には噴霧開口に通じる(図示しない)開口流路と噴霧開口から戻る(図示しない)戻り流路とが設けられている。そして、噴霧開口に通じる(図示しない)開口流路には、開口流路を通過する燃料に旋回流を起こさせる溝が設けられている。このため、燃料噴霧ノズル530を通過する燃料は旋回流を起こしながら外部に噴霧される。
【0003】
制御ポンプ510と、定差圧ポンプ520と、燃料噴霧ノズル530とは、順に直列に接続されている。また、戻り流路に接続された戻り管540は、定差圧ポンプ520の入力側に接続されている。この一定差圧式の燃料噴霧装置500において燃料の噴霧量は、制御ポンプ510の吐出圧力を可変することで制御する。しかしながら、燃料が燃料噴霧ノズル530の開口流路で旋回流を起こす際、燃料の粘度に応じてその旋回流の層の厚さが変わるため、燃料噴霧装置500における燃料の噴霧量は、制御ポンプ510の吐出圧力のみならず上記旋回流の層の厚さにも影響を受ける。
【0004】
すなわち、燃料の温度が低い場合燃料の粘度は高くなるが、この場合上記燃料の旋回流の層の厚さは厚くなるため、制御ポンプ510の吐出圧力が比較的小さくても多量の燃料が外部に噴霧される。一方、燃料の温度が高い場合燃料の粘度は下がるが、この場合上記燃料の旋回流の層の厚さは薄くなるため、制御ポンプ510の吐出圧力を比較的大きくしないと多量の燃料を外部に噴霧することができない。このため、所望の量の燃料を燃料噴霧装置500に噴霧させるように制御ポンプ510を制御することは、困難であった。
【0005】
このような問題点を解決するため、従来、電磁ポンプと、この電磁ポンプを駆動する発振回路と、この電磁ポンプの電磁コイルに直列に接続した吐出量調整用抵抗とを備え、上記吐出量調整用抵抗には並列に負特性の温度検知用サーミスタを接続して検出温度が低下すれば電磁ポンプの吐出量を減少させるようにするとともに、上記吐出量調整用抵抗は電磁ポンプに一体に取り付けた燃料供給装置が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0006】
また、図6に示す燃料噴霧装置600も提案されている。この燃料噴霧装置600は、図5に示す燃料噴霧装置500に圧力センサ610およびポンプ制御部620をさらに加えたものである。圧力センサ610は、戻り管540内の圧力を検出するものである。また、ポンプ制御部620は、圧力センサ610で検出された圧力に基づいて燃料噴霧ノズル530から噴霧される燃料の噴霧流量が一定になるように制御ポンプ510を駆動させるものである。燃料噴霧装置600において戻り管540内の圧力が変化すると、その情報が圧力センサ610からポンプ制御部620へフィードバックされる。そして、ポンプ制御部620は、上記フィードバックされた情報に基づいて燃料噴霧ノズル530から噴霧される燃料の噴霧流量が一定になるような駆動パルスを制御ポンプ510に印加する。燃料噴霧装置600は、以上のような構成により液体の噴霧流量を制御している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第2646758号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本願出願人は、燃料噴霧装置500の制御ポンプ510に、パルス幅5.0(ms)、周波数50(Hz)の駆動パルスを印加して、制御ポンプ510(電磁ポンプ)における電磁コイルの温度とその温度における燃料噴霧装置500からの噴霧流量とを測定した。その結果を図7に示す。図7を考察すると、制御ポンプ510(電磁ポンプ)における電磁コイルの温度が高い場合燃料の温度が高くなるため燃料の粘度が下がり、その結果、燃料噴霧ノズル530の開口流路に生じた旋回流の層の厚さは薄くなるため燃料噴霧装置500からの噴霧流量は減少すると考えられる。逆に制御ポンプ510(電磁ポンプ)における電磁コイルの温度が低い場合燃料の温度も低くなるため燃料の粘度が上がり、その結果、燃料噴霧ノズル530の開口流路に生じた旋回流の層の厚さは厚くなるため燃料噴霧装置500からの噴霧流量は増加すると考えられる。以上の測定結果を考慮して、本願出願人は、所望の量の燃料を燃料噴霧装置500に噴霧させるように制御ポンプ510の(図示しない)電磁コイルの温度に基づいて制御ポンプ510を制御することを着想した。
【0009】
上記特許文献1の燃料供給装置は、電磁コイル直接の温度により電磁ポンプの吐出量を調整するものではなく、吐出量調整用抵抗の温度により電磁ポンプの吐出量を調整するものであり、本願出願人の上記着想とは異なる。また、後述の図4(c)において説明するが、上記特許文献1のような電磁コイル周辺の温度により電磁ポンプの吐出量を調整する燃料供給装置では、燃料の噴霧流量を一定化させるのに時間を要する。燃料の噴霧流量を一定化させるのに迅速性を要するような場合、以上のようなことは好ましくない。
【0010】
また、燃料噴霧装置600は、上記説明したように噴霧流量の制御に圧力センサという高価で複雑な構造の部品を用いているため、その分製品の価格上昇、および故障のリスクを負わなければならない。また、燃料噴霧装置600は、戻り管540内の圧力をポンプ制御部620にフィードバックして燃料噴霧ノズル530から噴霧される燃料の噴霧流量が一定になるよう制御しているため、燃料噴霧ノズル530から噴霧される燃料の噴霧流量を一定化させるのに時間的な遅れが出てくる。上記と同様に燃料の噴霧流量を一定化させるのに迅速性を要するような場合、以上のようなことは好ましくない。
【0011】
そこで、本発明は、電磁ポンプにおける電磁コイルの温度に基づいて外部に吐出させる液体の流量を時間的な遅れなく一定にさせる液体供給装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、本発明の液体供給装置は、外部に吐出する液体の流量がその液体の粘度により変化する特性を有する液体吐出手段に向かって液体を供給する液体供給装置であって、上記液体吐出手段に向かって液体を供給する電磁ポンプと、上記電磁ポンプにおける電磁コイルの温度を検出する電磁コイル温度検出手段と、上記検出された電磁コイルの温度に基づいて上記液体吐出手段が外部に吐出する液体の流量が一定になるよう上記電磁ポンプを駆動させる電磁ポンプ駆動手段とを備えたことを特徴とする。これにより、電磁ポンプにおける電磁コイルの温度に基づいて液体吐出手段から外部に吐出させる液体の流量を時間的な遅れなく一定にさせるという作用をもたらす。
【0013】
また、本発明の液体供給装置において、上記電磁ポンプ駆動手段は、上記検出された電磁コイルの温度に基づいて上記液体吐出手段が外部に吐出する液体の流量が一定になるような駆動パルスを上記電磁コイルに印加するよう指示する補正手段と、上記指示に基づいて上記電磁コイルに上記駆動パルスを印加して上記電磁ポンプを駆動させる駆動パルス印加手段とを具備することを特徴とする。これにより、液体吐出手段から外部に吐出させる液体の流量が一定になるような駆動パルスを電磁コイルに印加させるという作用をもたらす。
【0014】
また、本発明の液体供給装置において、上記補正手段は、上記液体吐出手段が外部に吐出する液体の流量と上記電磁コイルの温度とその温度の電磁コイルに印加されるべき駆動パルスとを対応付けた補正テーブルと、上記液体吐出手段が外部に吐出する液体の流量が一定になるよう上記補正テーブルに基づいて上記検出された電磁コイルの温度に対応する駆動パルスを上記電磁コイルに印加すべき旨指示する補正指示手段とを具備することを特徴とする。これにより、補正テーブルに基づいて液体吐出手段から外部に吐出させる液体の流量が一定になるような駆動パルスを電磁コイルに印加させるという作用をもたらす。
【0015】
また、本発明の液体供給装置において、上記電磁コイル温度検出手段は、上記電磁ポンプにおけるケーシング内部において上記電磁コイルに直接貼り付けられた温度検出用のサーミスタであることを特徴とする。これにより、電磁コイルの温度検出において外気温・その他の温度要因を排除して電磁コイルの温度を検出させるという作用をもたらす。
【0016】
また、本発明のプログラムは、外部に吐出する液体の流量がその液体の粘度により変化する特性を有する液体吐出手段に向かって液体を供給する電磁ポンプと、上記電磁ポンプにおける電磁コイルの温度を検出する電磁コイル温度検出手段と、上記電磁コイルに駆動パルスを印加して上記電磁ポンプを駆動させる駆動パルス印加手段と、上記液体吐出手段が外部に吐出する液体の流量と上記電磁コイルの温度とその温度の電磁コイルに印加されるべき駆動パルスとを対応付けた補正テーブルとを備えた液体供給装置において実行されるプログラムであって、上記液体吐出手段が外部に吐出する液体の流量が一定になるよう上記補正テーブルを参照して上記検出された電磁コイルの温度に対応する対応駆動パルスを探し出す手順と、上記対応駆動パルスを上記電磁コイルに印加するよう上記駆動パルス印加手段に指示する手順とを備えたことを特徴とする。これにより、補正テーブルに基づいて液体吐出手段から外部に吐出させる液体の流量が一定になるような駆動パルスを電磁コイルに印加させるという作用をもたらす。
【0017】
また、本発明の液体噴霧装置は、液体を外部に噴霧する開口である噴霧開口と、上記噴霧開口に通じる開口流路と上記噴霧開口から戻る戻り流路とを内部に有し、外部に噴霧する液体の流量がその液体の粘度により変化する特性を有する液体噴霧ノズルと、吐出圧力が一定のポンプである定差圧ポンプと、電磁ポンプと、上記電磁ポンプにおける電磁コイルの温度を検出する電磁コイル温度検出手段と、上記検出された電磁コイルの温度に基づいて上記液体噴霧ノズルが外部に噴霧する液体の流量が一定になるよう上記電磁ポンプを駆動させる電磁ポンプ駆動手段と、上記戻り流路と上記定差圧ポンプの入力側とを接続する液体戻り管と、上記電磁ポンプと上記定差圧ポンプ、および上記定差圧ポンプと上記開口流路のそれぞれを接続する液体通路管とを備えたことを特徴とする。これにより、電磁ポンプにおける電磁コイルの温度に基づいて液体噴霧装置が外部に噴霧する液体の流量を時間的な遅れなく一定にさせるという作用をもたらす。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、電磁ポンプにおける電磁コイルの温度に基づいて液体吐出手段から外部に吐出させる液体の流量を時間的な遅れなく一定にさせることができるという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施の形態における液体供給装置100の一例を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態における補正テーブル33の一例を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態における液体供給装置100を用いた液体噴霧装置300の一例を示す図である。
【図4】電磁コイルの温度と外部に噴霧される液体の流量の測定結果である。(a)は、図5における燃料噴霧装置500を所定時間動作させた際の電磁コイルの温度(℃)と燃料噴霧ノズル530から噴霧される液体の流量(L/H)の測定結果を表す図であり、(b)は、図3における燃料噴霧装置300を所定時間動作させた際の電磁コイル12の温度(℃)と液体噴霧ノズル320から噴霧される液体の流量(L/H)の測定結果を表す図であり、(c)は、図3における液体供給装置100を(図示しない)液体供給装置100´に置き換えた(図示しない)液体噴霧装置300´を所定時間動作させた際の電磁コイルの温度(℃)と液体噴霧ノズルから噴霧される液体の流量(L/H)の測定結果を表す図である。なお、上記液体供給装置100´とは液体供給装置100において、図1の電磁コイル温度検出部20を移動させてケーシング11内の電磁コイル12付近に設置した液体供給装置のことを言う。
【図5】一定差圧式の従来からある燃料噴霧装置500を示す図である。
【図6】従来からある燃料噴霧装置600を示す図である。
【図7】燃料噴霧装置500の制御ポンプ510に、パルス幅5.0(ms)、周波数50(Hz)の駆動パルスを印加して、制御ポンプ510(電磁ポンプ)における電磁コイルの温度とその温度における燃料噴霧装置500からの噴霧流量の測定結果を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0021】
図1は、本発明の実施の形態における液体供給装置100の一例を示す図である。液体供給装置100は、液体吐出部200から吐出される液体の流量が常時一定になるよう液体吐出部200に向かって液体を供給するものであり、電磁ポンプ10と、電磁コイル温度検出部20と、電磁ポンプ駆動部30とを備える。
【0022】
液体吐出部200は、他から供給された液体を外部に吐出するものであり、外部に吐出する液体の流量がその液体の粘度により変化する特性を有する。本発明において「外部に吐出する液体の流量がその液体の粘度により変化する特性」とは、例えば液体の粘度が高くなると外部に吐出するその液体の流量が増加し、液体の粘度が低くなると外部に吐出するその液体の流量が減少するような特性を挙げることができるが、これに限るものではなく、それ以外の特性であってもよい。液体吐出部200として、例えば液体を吐出する吐出開口に通じる開口流路に旋回流を起こさせる溝が設けられたノズルが挙げられるが、これに限るものではなく、その他のものであってもよい。
【0023】
本発明において電磁ポンプ10は、様々な形態・方式の電磁ポンプが想定されるが、電磁ポンプ10の一例として、電磁コイルに駆動パルスとして断続電流を印加することにより発生させた電磁力、および電磁ポンプ内に設けられたバネによりシリンダ内においてプランジャを往復動させ、そのプランジャの往復動作により液体を吐出させる電磁ポンプが挙げられる。
【0024】
図1においてケーシング11の内部に電磁コイル12が内蔵された電磁ポンプ10は、電磁コイル12における電磁力等を利用して液体を吸入口13から吸入して吐出口14から吐出することにより他に液体を供給する。
【0025】
電磁コイル温度検出部20は、電磁コイル12の温度を検出するものであり、例えば温度検出用のサーミスタを用いることが想定されるが、これに限るものではない。そして、電磁コイル温度検出部20は、例えばケーシング11の内部において電磁コイル12に接触させる態様(温度検出用のサーミスタなら電磁コイル12に貼り付ける)で設置することが好ましい。
【0026】
電磁コイル温度検出部20をケーシング11の内部に設置することが好ましいのは、ケーシング11の内部なら外気の温度変化の影響を受けにくいため、高い精度で電磁コイル12の温度を検出することができるからである。また、電磁コイル温度検出部20を電磁コイル12に接触させる態様で設置することが好ましいのは、電磁コイル12の温度変化を高い精度で検出することができるからである。なお、電磁コイル温度検出部20の設置場所は、電磁コイル12の温度を高い精度で検出できる位置であれば上記以外の場所であってもよい。
【0027】
電磁ポンプ駆動部30は、電磁コイル温度検出部20において検出された電磁コイル12の温度に基づいて液体吐出部200が外部に吐出する液体の流量が一定になるよう電磁ポンプ10を駆動させるものである。すなわち、例えば電磁コイル12の温度上昇と伴に液体の粘度が下がり、その結果液体吐出部200から吐出される液体の流量が減少しないように、電磁ポンプ駆動部30は電磁ポンプ10を駆動させる。また、例えば電磁コイル12の温度下降と伴に液体の粘度が上がり、その結果液体吐出部200から吐出される液体の流量が増えないように、電磁ポンプ駆動部30は電磁ポンプ10を駆動させる。
【0028】
さらに具体的に言うと、例えば電磁コイル12の温度上昇と伴に液体吐出部200が外部に吐出する液体の流量が減少しそうな場合、電磁ポンプ駆動部30は、例えば電磁ポンプ10の電磁コイル12に印加する駆動パルスの周波数を上げたり、駆動パルスのパルス幅を大きくしたりして液体吐出部200が外部に吐出する液体の流量が一定になるように動作する。
【0029】
また、例えば電磁コイル12の温度下降と伴に液体吐出部200が外部に吐出する液体の流量が増えそうな場合、電磁ポンプ駆動部30は、例えば電磁ポンプ10の電磁コイル12に印加する駆動パルスの周波数を下げたり、駆動パルスのパルス幅を小さくしたりして液体吐出部200が外部に吐出する液体の流量が一定になるように動作する。
【0030】
液体吐出部200は、上記説明したように外部に吐出する液体の流量がその液体の粘度により変化する特性を有しており、その液体の粘度は液体の温度により変化するものである。そして、液体の温度は、液体が接触する液体供給装置100、特に電磁コイル12の温度と密接な関係があると本願出願人は考えており、そのため、上記説明したように電磁コイル12の温度に基づいて電磁ポンプ10を電磁ポンプ駆動部30により制御させている。
【0031】
そして、上記のような機能の電磁ポンプ駆動部30は、例えば補正部31と、駆動パルス印加部32とにより構成することが想定されるが、これに限るものではない。補正部31は、電磁コイル温度検出部20において検出された電磁コイル12の温度に基づいて液体吐出部200が外部に吐出する液体の流量が一定になるような駆動パルスを電磁コイル12に印加するよう駆動パルス印加部32に指示するものであり、補正テーブル33と、補正指示部34とを備える。
【0032】
補正テーブル33は、液体吐出部200が外部に吐出する液体の流量と、電磁コイル12の温度と、その温度の電磁コイル12に印加されるべき駆動パルスとを対応付けたものであり、詳細は図2において説明する。補正指示部34は、液体吐出部200が外部に吐出する液体の流量が一定になるよう補正テーブル33に基づいて電磁コイル温度検出部20において検出された電磁コイル12の温度に対応する駆動パルスを電磁コイル12に印加すべき旨駆動パルス印加部32に指示するものである。
【0033】
駆動パルス印加部32は、補正部31(補正指示部34)からの指示に基づいて電磁コイル12に駆動パルスを印加して電磁ポンプ10を駆動させるものである。駆動パルス印加部32は、例えば直流電圧を供給する直流電圧供給部、およびトランジスタ等を用いたスイッチング回路により構成することができるが、これに限るものではない。そして、直流電圧供給部は、例えば交流電源、トランス、整流器および定電圧レギュレータ等により構成することができる。また、駆動パルス印加部32は、上記と違ってトランジスタ等を用いたスイッチング回路のみで構成して、直流電圧供給部は別個の構成要素として考え駆動パルス印加部32に含まれないものとしてもよい。すなわち、駆動パルス印加部32には、電磁コイル12に駆動パルスを供給することができる全ての構成が含まれる。
【0034】
また、補正部31は、例えば所定のプログラムが書き込まれたマイクロコンピュータにより構成することができる。このマイクロコンピュータは、上記スイッチング回路にパルス列のスイッチング信号を送り、このパルス列のスイッチング信号に基づいた駆動パルスが電磁コイル12に印加される。
【0035】
また、マイクロコンピュータに書き込まれたプログラムは、液体吐出部200が外部に吐出する液体の流量が一定になるよう電磁コイル温度検出部20により検出された電磁コイル12の温度に基づいて、例えばマイクロコンピュータが備えたROMに記憶された補正テーブル33を参照してその温度に対応する駆動パルスを探し出す。そして、そのマイクロコンピュータに書き込まれたプログラムは、その探し出した駆動パルスに対応するパルス列のスイッチング信号をスイッチング回路に供給するようマイクロコンピュータを動作させる。スイッチング回路は、パルス列のスイッチング信号に対応したスイッチング動作を行い、電磁コイル12に駆動パルスを印加する。なお、補正部31および駆動パルス印加部32の上記構成は一例であって、その他の構成であってもよい。
【0036】
流量設定部40は、液体吐出部200が外部に吐出する液体の流量を設定するものである。流量設定部40により設定された流量で液体が常時液体吐出部200から外部に吐出されるよう電磁ポンプ駆動部30は動作する。具体的に言うと、この流量設定部40における液体の流量の情報は補正部31(補正指示部34)に送られ、補正部31(補正指示部34)はこの情報および電磁コイル温度検出部20において検出された電磁コイル12の温度に基づいて動作する。なお、流量設定部40により設定可能な液体の流量の分だけ補正テーブル33は必要になるが、この場合の補正テーブル33については図2においてさらに説明することとする。
【0037】
以上のように液体供給装置100を構成すれば、電磁コイル12の温度が上昇して液体の粘度が低くなり液体吐出部200が外部に吐出する液体の流量が減少しそうになっても、すぐさまに電磁ポンプ10の動作を電磁ポンプ駆動部30が補正して液体吐出部200が外部に吐出する液体の流量を一定に維持することができる。また、以上のように液体供給装置100を構成すれば、逆に電磁コイル12の温度が下降して液体吐出部200が外部に吐出する液体の流量が増えそうになっても、すぐさまに電磁ポンプ10の動作を電磁ポンプ駆動部30が補正して液体吐出部200が外部に吐出する液体の流量を一定に維持することができる。これにより、液体吐出部200が外部に吐出する液体の流量を常時一定にすることができる。
【0038】
図2は、本発明の実施の形態における補正テーブル33の一例を示す図である。図2において補正テーブル33は、図1において説明した流量設定部40により設定可能な液体の流量に応じた温度パルス対応テーブルより構成されている。
【0039】
図2においては、液体吐出部200が外部に吐出する液体の流量が流量F1の際の温度パルス対応テーブル33a、液体吐出部200が外部に吐出する液体の流量が流量F2の際の温度パルス対応テーブル33bが示されている。温度パルス対応テーブル33aにおいては、液体吐出部200が外部に吐出する液体の流量が流量F1になる場合における電磁コイル12のコイル温度とそのコイル温度の電磁コイル12に印加されるべき駆動パルスとが対応付けられている。例えば、電磁コイル12のコイル温度がT1の場合に液体吐出部200が外部に吐出する液体の流量F1を維持するのに必要な駆動パルスはP1で、電磁コイル12のコイル温度がT2の場合に液体吐出部200が外部に吐出する液体の流量F1を維持するのに必要な駆動パルスはP2である旨の情報が図2に示されている。同様に、温度パルス対応テーブル33bにおいては、液体吐出部200が外部に吐出する液体の流量が流量F2になる場合における電磁コイル12のコイル温度とそのコイル温度の電磁コイル12に印加されるべき駆動パルスとが対応付けられている。
【0040】
以上のような温度パルス対応テーブルの集まりが補正テーブル33である。この温度パルス対応テーブルをいくつ設けるかは、上記説明したように流量設定部40により設定可能な液体の流量に依存するものである。
【0041】
図3は、本発明の実施の形態における液体供給装置100を用いた液体噴霧装置300の一例を示す図である。液体噴霧装置300は、一定差圧方式の液体噴霧装置であり、液体供給装置100と、定差圧ポンプ310と、液体噴霧ノズル320と、液体供給装置100と定差圧ポンプ310とを接続する液体通路管331と、定差圧ポンプ310と液体噴霧ノズル320とを接続する液体通路管332と、液体噴霧ノズル320と定差圧ポンプ310の入力側を接続する液体戻り管333とを備える。
【0042】
液体供給装置100は、上記において説明したため、説明を省略する。また、定差圧ポンプ310は、吐出圧力が一定の電磁ポンプである。液体噴霧ノズル320は液体を噴霧する(図示しない)噴霧開口を有し、その内部には、噴霧開口に通じる(図示しない)開口流路と噴霧開口から戻る(図示しない)戻り流路とが設けられている。また、液体噴霧ノズル320の開口流路に液体に旋回流を起こさせる溝が設けられている。このため、液体噴霧ノズル320は、外部に吐出する液体の流量がその液体の粘度により変化する特性を有する。
【0043】
液体供給装置100と、定差圧ポンプ310と、液体噴霧ノズル320とは、順に直列に接続されている。また、液体戻り管333は、液体噴霧ノズル320の戻り流路に接続されている。この一定差圧方式の液体噴霧装置300において液体の噴霧量は、液体供給装置100により液体供給装置100内の(図示しない)電磁ポンプ10の電磁コイル12の温度に基づいて制御される。
【0044】
以上のように、液体噴霧装置300を構成すれば、液体供給装置100内の電磁ポンプ10の電磁コイル12の温度に基づいて液体噴霧装置300から噴霧される液体の流量が一定になるよう制御することができる。
【0045】
図4は、図5における燃料噴霧装置500、図3における液体噴霧装置300、および図3における液体噴霧装置300の液体供給装置100を(図示しない)液体供給装置100´に置き換えた液体噴霧装置である(図示しない)液体噴霧装置300´を所定時間動作させた際の電磁コイルの温度(℃)と液体噴霧ノズル(燃料噴霧ノズル)から噴霧される液体の流量(L/H)の測定結果を表す図である。なお、上記液体供給装置100´とは、液体供給装置100において電磁コイル温度検出部20を移動させてケーシング11内の電磁コイル12付近に電磁コイル温度検出部20を設置した液体供給装置のことを言う。そして、液体噴霧装置300´は、特許文献1(特許第2646758号公報)に記載の燃料供給装置を想定した装置である。
【0046】
また、上記測定において電磁コイル温度検出部20として、温度検出用のサーミスタを用いた。また、電磁コイルは、燃料噴霧装置500にあっては制御ポンプ510(電磁ポンプ)内の電磁コイルを指し、液体噴霧装置300および液体噴霧装置300´にあっては液体供給装置100内の電磁ポンプ10の電磁コイル12を指す。
【0047】
図4(a)は、図5における燃料噴霧装置500を所定時間動作させた際の電磁コイルの温度(℃)と燃料噴霧ノズル530から噴霧される液体の流量(L/H)の測定結果を表す図である。すなわち、図4(a)の状態は、液体供給装置100における補正部31の補正動作がない状態である。図4(a)によると、時間の経過と伴に制御ポンプ510(電磁ポンプ)内の電磁コイルの温度が上昇している。そして、その電磁コイルの温度が上昇すると、燃料噴霧ノズル530から噴霧される液体の流量は減少する。図4(a)の状態は、燃料噴霧ノズル530から噴霧される液体の流量が制御ポンプ510(電磁ポンプ)内の電磁コイルの温度に完全に左右されていると言える。
【0048】
図4(b)は、図3における液体噴霧装置300を所定時間動作させた際の電磁コイル12の温度(℃)と液体噴霧ノズル320から噴霧される液体の流量(L/H)の測定結果を表す図である。図4(b)によると、時間の経過と伴に電磁コイル12の温度が上昇している。液体供給装置100において電磁コイル12の温度が上昇すると、電磁コイル温度検出部20はその情報を電磁ポンプ駆動部30に伝える。そして、電磁ポンプ駆動部30は、その上昇した温度に対応した駆動パルスに補正した補正駆動パルスを電磁コイル12に印加して電磁ポンプ10を駆動させる。液体供給装置100においては以上のような補正動作が絶えず行われているため、液体噴霧ノズル320から噴霧される液体の流量は図4(b)に示すようにほぼすべての時間帯において一定になっている。
【0049】
図4(c)は、(図示しない)液体噴霧装置300´を所定時間動作させた際の電磁コイル12の温度(℃)と液体噴霧ノズル320´から噴霧される液体の流量(L/H)の測定結果を表す図である。図4(c)によると、時間の経過と伴に電磁コイル12の温度が上昇している。そして、電磁コイル12の温度が上昇すると液体噴霧装置300´の場合も図4(b)で説明したのと同様な補正動作が行われるが、液体噴霧ノズル320´から噴霧される液体の流量が一定になるのに時間を要している。
【0050】
図4(b)と図4(c)とを比較すると、液体噴霧ノズルから噴霧される液体の流量が一定化するまでの時間が異なる点が注目する点である。図4(b)においては、楕円領域Aを見れば明らかなように、駆動パルスを印加して少し時間が経過して流量が6.50(L/H)を超えた後にすぐさま流量が6.00(L/H)程度に安定化している。一方、図4(c)においては、楕円領域Bを見れば明らかなように、駆動パルスを印加して少し時間が経過して流量が5.4(L/H)程度になった後に段々と流量が減少していき、約200(s)付近で流量が5.2(L/H)程度に安定化している。図4(c)においては、液体の流量の安定化に約200(s)程度とかなりの時間を要している。
【0051】
この結果から考察すると、液体噴霧ノズルから噴霧される液体の流量は電磁コイル12の温度に大きく依存していると言える。この理由は、液体噴霧装置300は電磁コイル12の温度そのものに基づいて補正動作を行った結果、液体噴霧ノズル320から噴霧される液体の流量をほぼすべての時間帯において一定にすることができたのに対し、液体噴霧装置300´は電磁コイル12の温度そのものではなく電磁コイル12付近の温度に基づいて補正動作を行った結果、液体噴霧ノズル320´から噴霧される液体の流量を一定化するのに時間的な遅れを生じたからである。安定した流量で液体を噴霧することが厳密に要求される場合において、液体噴霧装置300´のような時間的な遅れは致命的な欠点になる。
【0052】
この結果から明らかなように、液体噴霧装置300における液体供給装置100は、外部に噴霧される液体の流量を一定化するのに優れた性能を発揮している。以上のように構成された液体噴霧装置300によれば、外部に噴霧される液体の流量を時間的な遅れなく常時一定にすることができるため、安定した変動の少ない流量で液体を噴霧することができる。特に、石油給湯器のバーナー部等の燃料の正確な供給が要求される装置に上記液体供給装置100を適用すればさらに有益である。
【0053】
このように、本発明の実施の形態によれば、外部に吐出(噴霧)される液体の流量を時間的な遅れなく一定にすることができる。例えば特許文献1に記載された装置や、図6に示された燃料噴霧装置600等は、液体の流量の制御に時間的な遅れが生じていたが、本発明はこの時間的な遅れをほぼ無くしたリアルタイムな制御を実現している。
【0054】
なお、本発明の実施の形態の図1において説明したマイクロコンピュータにおけるプログラムで説明した処理手順は、これら一連の手順をコンピュータに実行させるためのプログラム乃至そのプログラムを記憶する記録媒体として捉えてもよい。
【0055】
なお、本発明の実施の形態は本発明を具現化するための一例を示したものであり、これに限定されるものではなく本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変形を施すことができる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明の活用例として、例えば石油給湯器のバーナー部の燃料を供給する箇所に本発明を適用することができる。また、上記以外にも、電磁コイル温度の変化が大きく、それによる液体の吐出流量の変化が大きい装置全般に適用できる。
【符号の説明】
【0057】
10 電磁ポンプ
11 ケーシング
12 電磁コイル
13 吸入口
14 吐出口
20 電磁コイル温度検出部
30 電磁ポンプ駆動部
31 補正部
32 駆動パルス印加部
33 補正テーブル
34 補正指示部
40 流量設定部
100 液体供給装置
200 液体吐出部
300 液体噴霧装置
310 定差圧ポンプ
320、320´ 液体噴霧ノズル
331、332 液体通路管
333 液体戻り管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部に吐出する液体の流量がその液体の粘度により変化する特性を有する液体吐出手段に向かって液体を供給する液体供給装置であって、
前記液体吐出手段に向かって液体を供給する電磁ポンプと、
前記電磁ポンプにおける電磁コイルの温度を検出する電磁コイル温度検出手段と、
前記検出された電磁コイルの温度に基づいて前記液体吐出手段が外部に吐出する液体の流量が一定になるよう前記電磁ポンプを駆動させる電磁ポンプ駆動手段と
を備えたことを特徴とする液体供給装置。
【請求項2】
前記電磁ポンプ駆動手段は、
前記検出された電磁コイルの温度に基づいて前記液体吐出手段が外部に吐出する液体の流量が一定になるような駆動パルスを前記電磁コイルに印加するよう指示する補正手段と、
前記指示に基づいて前記電磁コイルに前記駆動パルスを印加して前記電磁ポンプを駆動させる駆動パルス印加手段と
を具備することを特徴とする請求項1記載の液体供給装置。
【請求項3】
前記補正手段は、
前記液体吐出手段が外部に吐出する液体の流量と前記電磁コイルの温度とその温度の電磁コイルに印加されるべき駆動パルスとを対応付けた補正テーブルと、
前記液体吐出手段が外部に吐出する液体の流量が一定になるよう前記補正テーブルに基づいて前記検出された電磁コイルの温度に対応する駆動パルスを前記電磁コイルに印加すべき旨指示する補正指示手段と
を具備することを特徴とする請求項2記載の液体供給装置。
【請求項4】
前記電磁コイル温度検出手段は、前記電磁ポンプにおけるケーシング内部において前記電磁コイルに直接貼り付けられた温度検出用のサーミスタであることを特徴とする請求項1記載の液体供給装置。
【請求項5】
外部に吐出する液体の流量がその液体の粘度により変化する特性を有する液体吐出手段に向かって液体を供給する電磁ポンプと、前記電磁ポンプにおける電磁コイルの温度を検出する電磁コイル温度検出手段と、前記電磁コイルに駆動パルスを印加して前記電磁ポンプを駆動させる駆動パルス印加手段と、前記液体吐出手段が外部に吐出する液体の流量と前記電磁コイルの温度とその温度の電磁コイルに印加されるべき駆動パルスとを対応付けた補正テーブルとを備えた液体供給装置において実行されるプログラムであって、
前記液体吐出手段が外部に吐出する液体の流量が一定になるよう前記補正テーブルを参照して前記検出された電磁コイルの温度に対応する対応駆動パルスを探し出す手順と、
前記対応駆動パルスを前記電磁コイルに印加するよう前記駆動パルス印加手段に指示する手順と
を備えたことを特徴とするプログラム。
【請求項6】
液体を外部に噴霧する開口である噴霧開口と、前記噴霧開口に通じる開口流路と前記噴霧開口から戻る戻り流路とを内部に有し、外部に噴霧する液体の流量がその液体の粘度により変化する特性を有する液体噴霧ノズルと、
吐出圧力が一定のポンプである定差圧ポンプと、
電磁ポンプと、
前記電磁ポンプにおける電磁コイルの温度を検出する電磁コイル温度検出手段と、
前記検出された電磁コイルの温度に基づいて前記液体噴霧ノズルが外部に噴霧する液体の流量が一定になるよう前記電磁ポンプを駆動させる電磁ポンプ駆動手段と、
前記戻り流路と前記定差圧ポンプの入力側とを接続する液体戻り管と、
前記電磁ポンプと前記定差圧ポンプ、および前記定差圧ポンプと前記開口流路のそれぞれを接続する液体通路管と
を備えたことを特徴とする液体噴霧装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図4】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−181094(P2010−181094A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−25510(P2009−25510)
【出願日】平成21年2月6日(2009.2.6)
【出願人】(390002886)株式会社長府製作所 (197)
【Fターム(参考)】