説明

液体吐出装置

【課題】ポンプ部から駆動部への液体の浸入、パーティクルの容器内への落下、吐出精度の低下を防止でき、洗浄作業も容易に行うことができる液体吐出装置の提供。
【解決手段】液体吐出装置1はポンプ部3と駆動部2とを備える。駆動部2は、吐出口開閉バルブを駆動する吐出口開閉ロッドと、吐出部材を駆動する吐出用ロッドと、供給部開閉バルブを駆動する供給部開閉ロッドとを備える。各ロッドは、駆動部2に配置される第1ロッド50,60,70と、ポンプ3に配置される第2ロッド150,160,170とを備える。第1ロッドおよび第2ロッド間はダイアフラム40が配置され、ダイアフラム40を挟んで配置された各第1ロッドおよび第2ロッドの少なくとも一方の端部には磁石が取り付けられ、各第1ロッドおよび第2ロッドは前記磁石の磁力によってダイアフラム40を挟んで接合されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を吐出する液体吐出装置に係り、銀ペースト、アルコール、熱硬化型エポキシ樹脂、電池やコンデンサの電解液、グリース、液晶溶液等の各種液体の吐出装置(ディスペンサやポンプ)に利用できる。
【背景技術】
【0002】
従来より、液体の吐出装置として様々な形式のものが知られているが、本出願人は、液体が入られた容器が取り付けられた容器付きの液体吐出装置を提案している(特許文献1参照)。
【0003】
前記特許文献1の液体吐出装置は、液体を吐出するポンプ部に、液体が入られた容器を設けているので、液体の移送距離を短くでき、高粘度の液体であっても加圧手段を設けることなく、確実に供給することができる。
また、吐出用開閉バルブ、供給部開閉バルブ、吐出部材を備えているので、供給部開閉バルブを閉めることで吐出する液体を閉じ込めて容積計量することができ、吐出量が微量であっても吐出量を高精度に制御することができる。
このように前記特許文献1の液体吐出装置は、微量精密吐出が可能なため、電子部品や医薬などの様々な製造ラインで使われており、最近ではクリーンルーム内に設けられた製造ラインなどでも利用されるようになった。
【0004】
ところで、前記特許文献1の液体吐出装置は、前記各バルブや吐出部材を駆動するためのロッドが、容器などが設けられたポンプ部と、各バルブなどを駆動する機構が設けられた駆動部とに跨って配置されている。
このため、前記ロッドの周囲に、フッ素樹脂やゴム製のシールを配置して、ポンプ部から駆動部に液体が浸入することを防止していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3523311号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記ロッドは、進退駆動されるため、前記シールはロッドによって擦れることになる。そして、シールがロッドで擦れてパーティクルが発生すると、このパーティクルは容器内に落ちてしまう。
また、パーティクルの発生は、前記シールだけでなく、駆動部においても発生することがあるが、この駆動部で発生したパーティクルも前記シールを超えて容器内に落ちてしまうという問題もあった。すなわち、前記シール部分に駆動部で発生したパーティクルが付着すると、前記ロッドが進退駆動される際に、前記パーティクルはシール及びロッド間を移動して容器側に移動してしまうという現象が発生した。
これらの原因で、吐出する液体にパーティクルが混入してしまい、特に、クリーンルーム内などに設けられ、要求レベルが高く、パーティクル混入を防止する必要がある製造ライン、例えば、液晶注入ラインなどでは、上記液体吐出装置の利用が難しいという問題がある。
【0007】
さらに、前記シールがロッドに接触しているため、シールの摩擦力がロッドの駆動に影響する。この際、シールの摩擦力は、シールの状態等によって変動し、不安定であるため、ロッドの駆動も不安定となり、吐出精度に影響するという問題がある。
その上、液体吐出装置を洗浄する際に、前記シールやロッドを分解して洗浄しなければならず、洗浄作業が煩雑になるという問題もある。
【0008】
本発明の目的は、ポンプ部から駆動部への液体の浸入を防止することができ、パーティクルが容器内に落ちることを防止でき、吐出精度の低下も防止でき、洗浄作業も容易に行うことができる液体吐出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の液体吐出装置は、液体を吐出する吐出口を有する容器を備えるポンプ部と、前記ポンプ部に取り付けられる駆動部とを備えた液体吐出装置であって、前記ポンプ部は、前記容器の吐出口を開閉する吐出口開閉バルブと、前記吐出口開閉バルブの外側に同心円状に配置されて容器内の液体を吐出する吐出部材と、前記吐出部材の外側に同心円状に配置されて容器内部から吐出口に連通する液体供給部を開閉する供給部開閉バルブとを備え、前記駆動部は、前記吐出口開閉バルブを駆動する吐出口開閉ロッドと、前記吐出部材を駆動する吐出用ロッドと、前記供給部開閉バルブを駆動する供給部開閉ロッドと、これらの各ロッドを駆動させる駆動機構とを備え、前記各ロッドは、前記駆動部に配置される第1ロッドと、前記ポンプ側に配置される第2ロッドとを備えて構成され、各第1ロッドおよび第2ロッド間はダイアフラムが配置され、このダイアフラムを挟んで配置された各第1ロッドおよび第2ロッドの少なくとも一方の端部には磁石が取り付けられ、前記各第1ロッドおよび第2ロッドは前記磁石の磁力によって前記ダイアフラムを挟んで接合されていることを特徴とする。
【0010】
ここで、本発明では、各第1ロッドおよび第2ロッドのそれぞれの端部に永久磁石を取り付けて、各第1ロッドおよび第2ロッドを永久磁石同士の磁力により、ダイアフラムを挟んで接合してもよい。また、第1ロッドまたは第2ロッドの一方に永久磁石を取り付け、他方に前記永久磁石に対して磁力で接合可能な部材、例えば、鉄、ニッケル、コバルト等の強磁性体等を設けて、各第1ロッドおよび第2ロッドを永久磁石の磁力により、ダイアフラムを挟んで接合してもよい。
【0011】
本発明の液体吐出装置は、次のような動作で液体を吐出する。まず、前記吐出液を容器内に供給する。この液体の供給は、容器にパイプ等を介して吐出液が貯蔵されたタンクから液体を供給してもよいし、容器を着脱可能に構成し、液を入れた容器をポンプに装着して行ってもよい。
次に、圧縮空気や圧電素子等を用いた駆動機構により、供給部開閉ロッドを移動して供給部開閉バルブを開き、容器内の液体を液体供給部を介して供給部開閉バルブの内側に供給可能な状態にする。さらに、吐出用ロッドを移動して吐出部材を吐出口より離れる方向に移動させ、この移動により形成される空間に液体を吸入する。
この吸入動作後に、供給部開閉バルブを閉じて液体を供給部開閉バルブの内側に封入して、吐出液の計量を行う。
この計量動作後に、吐出口開閉ロッドを移動して吐出口開閉バルブを開き、液体を吐出可能な状態にする。そして、吐出部材を吐出口の方向に移動させて吐出口より液体を吐出する。この吐出動作後に、吐出口開閉バルブを閉めて吐出口を閉塞する。
以上の動作を繰り返して、液体を所定量ごとに吐出口より吐出する。
【0012】
本発明によれば、各バルブや吐出部材を駆動する各ロッドを、ダイアフラムを挟んで配置された第1ロッドおよび第2ロッドで構成し、各ロッドは磁力によって接合しているので、液体吐出装置のポンプ部と容器部とを貫通孔部分が無いダイアフラムで区画することができる。
このため、ポンプ部から液体が容器部に浸入することを確実に防止できるとともに、駆動部側でパーティクルが発生したとしても、貫通する部分がないダイアフラムによって区画されているポンプ部側にパーティクルが侵入することを確実に防止できる。
また、各ロッドはダイアフラムを貫通していないので、ロッドの移動に伴ってシールが擦れてパーティクルが発生することもなく、この点でもポンプ部側にパーティクルが侵入することを確実に防止できる。
【0013】
さらに、ダイアフラムは非常に薄いため、各ロッドの端部間の距離変動は殆ど無く、ロッドの動作にダイアフラムが影響することがない。このため、ダイアフラムを挟んで各ロッドを配置しても、吐出精度にほとんど影響することがない。
その上、ポンプ部側に配置された各第2ロッドは、前記第1ロッドと磁力で結合しているため、液体吐出装置を分解洗浄する際には、駆動部からポンプ部の容器等を取り外し、さらに第2ロッドを引っ張ることで、ポンプ部において液に接する部分を容易に取り外すことができる。このため、分解洗浄作業も極めて容易に行うことができ、メンテナンス性のよい液体吐出装置とすることができる。
【0014】
本発明の液体吐出装置において、前記吐出用ロッドの第1ロッドおよび前記供給部開閉ロッドの第1ロッドには、前記ダイアフラム側の磁極が互いに異なる磁石がそれぞれ取り付けられ、前記吐出用ロッドの第2ロッドおよび前記供給部開閉ロッドの第2ロッドの少なくとも一方の第2ロッドには、前記吐出用ロッドの第1ロッドおよび前記供給部開閉ロッドの第1ロッドのうち、前記一方の第2ロッドを接合すべき一方の第1ロッドに取り付けられた磁石に対しては引き合い、他方の第1ロッドに取り付けられた磁石に対しては反発する磁極の向きで磁石が取り付けられていることが好ましい。
【0015】
本発明によれば、吐出用ロッドおよび供給部開閉ロッドの各第2ロッドと、各第1ロッドとの組合せを誤ってしまうことがなく、分解洗浄後に組み立てる際に、容易にかつ正しい組合せにすることができる。
例えば、前記吐出用ロッドの第1ロッドには、ダイアフラム側の磁極がN極の磁石を取り付け、前記供給部開閉ロッドの第1ロッドには、ダイアフラム側の磁極がS極の磁石を取り付けておく。そして、吐出用ロッドの第2ロッドに磁石を取り付ける場合、その磁石のダイアフラム側の磁極をS極とすれば、吐出用ロッドの第2ロッドは吐出用ロッドの第1ロッドには磁力で接合するが、供給部開閉ロッドの第1ロッドには同じS極同士が対向するため反発して接合しない。このため、吐出用ロッドの第2ロッドを誤って供給部開閉ロッドの第1ロッドに接合することがなく、各第1ロッドおよび第2ロッドを正しい組み合わせで接合できる。
【0016】
本発明の液体吐出装置において、前記吐出用ロッドは1本設けられ、前記吐出口開閉ロッドおよび供給部開閉ロッドはそれぞれ2本設けられ、前記吐出口開閉ロッドおよび供給部開閉ロッドの平面配置は、前記吐出用ロッドを中心とする同心円状であり、かつ、前記吐出口開閉ロッドおよび供給部開閉ロッドが等間隔で交互に位置するように配置されていることが好ましい。
【0017】
本発明によれば、ダイアフラムの表面に沿った平面配置において、2本の吐出口開閉ロッドは、吐出用ロッドを挟んで対向する位置に配置され、2本の供給部開閉ロッドも吐出用ロッドを挟んで対向位置される。すなわち、吐出用ロッドを中心とする同心円において、各吐出口開閉ロッドは180度間隔で配置され、各供給部開閉ロッドも180度間隔で配置され、吐出口開閉ロッドおよび供給部開閉ロッド間は90度の間隔で配置される。
このため、各吐出口開閉ロッドや供給部開閉ロッドが移動する際に、ダイアフラムにおいて吐出用ロッドが配置された位置を中心に、対称位置部分が変位するため、ダイアフラムに偏った力が加わってしまうことを防止でき、ダイアフラムの変位をスムーズにできる。
【0018】
本発明の液体吐出装置において、前記吐出口開閉バルブは、前記吐出口開閉ロッドの第2ロッドの先端に取り付けられたニードルと、このニードルの先端が接離する吐出口の当接面により構成され、前記吐出部材は、前記吐出用ロッドの第2ロッドの先端に取り付けられ、前記ニードルが挿通された筒状の吐出プランジャにより構成され、前記供給部開閉バルブは、前記供給部開閉ロッドの第2ロッドの先端に取り付けられ、前記吐出プランジャが挿通された筒状の開閉部材と、この開閉部材の先端が接離する液体供給部の当接面により構成されていることが好ましい。
【0019】
このような構成によれば、容器の吐出口の近くに、吐出口開閉バルブ、供給部開閉バルブ、吐出部材を配置でき、容器内の液体を吸入し、計量し、吐出するポンプ部を吐出口部分に配置できる。このため、液体の移送距離を短くでき、高粘度の液体であっても加圧手段を設けることなく、確実に供給することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の液体吐出装置によれば、ポンプ部から駆動部への液体の浸入を防止することができ、パーティクルが容器内に落ちることを防止でき、吐出精度の低下も防止でき、洗浄作業も容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1実施形態の液体吐出装置を用いたシステムを示す概略構成図である。
【図2】第1実施形態の液体吐出装置の駆動部を示す縦断面図である。
【図3】第1実施形態の液体吐出装置の駆動部の要部を示す縦断面図である。
【図4】第1実施形態のダイアフラム押さえ部材を示す下面図である。
【図5】(A)は第1実施形態のダイアフラムを示す上面図、(B)は(A)のB−B線に沿った断面図である。
【図6】(A)は第1実施形態の供給部開閉継手部材を示す断面図、(B)は下面図である。
【図7】(A)は第1実施形態の吐出部材継手部材を示す断面図、(B)は下面図である。
【図8】第1実施形態の駆動部およびポンプ部を示す縦断面図である。
【図9】第1実施形態のポンプ部を示す縦断面図である。
【図10】第1実施形態のポンプ部の要部を示す斜視図である。
【図11】第2実施形態の液体吐出装置の駆動部を示す縦断面図である。
【図12】第2実施形態の液体吐出装置の駆動部およびポンプ部を示す縦断面図である。
【図13】第2実施形態の駆動部台を示す下面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の第1実施形態を図面に基づいて説明する。
図1には、第1実施形態の液体吐出装置(ポンプ)1を利用したシステムの概略構成図が示されている。液体吐出装置1は、駆動機構を内蔵する駆動部2およびポンプ部3を備えて構成されており、このポンプ1は、液の吐出時には被吐出部材に近づくようにポンプ1を下降させ、吐出時以外には搬送装置等に干渉しないようにポンプ1を上昇させる上下装置4に保持されている。
ポンプ1の駆動部2には、駆動源としてのエア供給を行うとともに、その供給タイミングを制御するコントローラ5がエア供給配管6を介して接続されている。
【0023】
[駆動部の構成]
駆動部2は、図2,3にも示すように、シリンダブロック10を備えている。なお、図2は駆動部2全体の構成を示す縦断面図、図3は駆動部2において特にシリンダ、ピストン部分を示す縦断面図である。
シリンダブロック10の上部にはネジ筒11がロックナットで固定され、ネジ筒11には袋ナット12、マイクロホルダ13を介してマイクロメータ14が取り付けられている。
ネジ筒11内には、パイプ状に形成されたバネ座15が挿入されている。このバネ座15と、マイクロメータ14との間には、コイルバネ16が配置され、バネ座15を下方に付勢している。
【0024】
バネ座15の内部には、前記マイクロメータ14のスピンドル14Aと、このスピンドル14Aにキャップを介して当接している吐出量調整部材17とが配置されている。
吐出量調整部材17は、上端部が塞がれたパイプ状に形成され、その側面には上下方向に連続するスリット17Aが形成されている。
【0025】
吐出量調整部材17内には、プッシュロッド18およびプッシュ継手19が挿入されている。プッシュ継手19はプッシュロッド18の上端に圧入固定され、上端部には横方向に貫通する孔が形成されている。
この孔には平行ピン20が挿通されている。平行ピン20の両端は、吐出量調整部材17のスリット17Aを通してバネ座15の下フランジ部に挿入されている。
従って、バネ座15およびプッシュロッド18は、平行ピン20、プッシュ継手19を介して一体に移動する。また、平行ピン20はスリット17Aを上下に移動できるため、バネ座15、プッシュロッド18は、吐出量調整部材17に対して独立して移動できる。
【0026】
シリンダブロック10には、第1、第2、第3の各シリンダ21、22、23が形成されている。
各シリンダ21〜23には、それぞれ軸方向である図2の上下方向に摺動可能なように、第1、第2、第3の各ピストン31、32、33が挿入されている。なお、各ピストン31〜33と、シリンダ21〜23との間には、駆動用のエアが漏れないようにOリングや断面U字状のリップパッキン等の適宜なシール材が介在されている。
さらに、第2ピストン32および第3ピストン33間には、第2シリンダ22および第3シリンダ23を区画する仕切部材34が配置されている。
【0027】
各シリンダ21〜23には、第1、第2、第3の各シリンダポート24,25,26が連通されている。各シリンダポート24〜26には、エア供給配管6をワンタッチで連結するためのワンタッチ継ぎ手27〜29が接続されている。
また、第1シリンダポート24は、第1ピストン31および第2ピストン32間の空間にエアを供給し、第2シリンダポート25は第2ピストン32および仕切部材34間の空間にエアを供給し、第3シリンダポート26は仕切部材34および第3ピストン33間の空間にエアを供給するために用いられる。
【0028】
第1ピストン31は、中心軸に上下方向の貫通孔が形成され、この貫通孔に吐出量調整部材17、プッシュ継手19、プッシュロッド18が挿通されている。また、第1ピストン31の上端には前記バネ座15が当接されている。
そして、第1シリンダ21にエアが供給されていない場合は、前記コイルバネ16のバネ力がバネ座15を介して第1ピストン31に加わるため、第1ピストン31は下方に移動する。
一方、第1シリンダ21にエアを供給して前記コイルバネ16による力よりも大きな力が第1ピストン31に加わると、第1ピストン31は上方に移動する。
第1ピストン31が上下に移動すると、バネ座15およびプッシュロッド18も連動して上下に移動する。
【0029】
なお、第1シリンダ21の内面には、ストップリング35が取り付けられ、ポンプ部3を取り外した際に、コイルバネ16の付勢力で第1ピストン31が第1シリンダ21から外れることを防止している。
【0030】
第2ピストン32は、中心軸に上下方向の貫通孔が形成されている。そして、この貫通孔には駆動パイプ36が配置され、2枚のストップリングで第2ピストン32と接合されている。
駆動パイプ36は、上端側が第1ピストン31の貫通孔に挿入され、第1ピストン31および駆動パイプ36間はシール材でシールされている。
駆動パイプ36内の上下貫通孔には前記プッシュロッド18、プッシュ継手19が挿通されている。そして、駆動パイプ36の上端面は、吐出量調整部材17の下端面に当接している。従って、駆動パイプ36および第2ピストン32の上方ストロークエンドは、駆動パイプ36が吐出量調整部材17に当接する位置となる。吐出量調整部材17の上下位置は、マイクロメータ14を操作してスピンドル14Aの吐出量を変更することで調整される。このため、マイクロメータ14によって、駆動パイプ36の上方ストロークエンド位置が設定されることになり、これにより、後述するように、吐出量も調整される。
【0031】
この第2ピストン32および駆動パイプ36は、後述する戻しバネ66で上方に付勢されているので、各シリンダポート24,25からエアを供給していない状態では、駆動パイプ36が吐出量調整部材17に当接する上方ストロークエンドの位置に移動している。
【0032】
仕切部材34は、ストップリングによってシリンダブロック10に固定されている。この仕切部材34の外周面とシリンダブロック10の内周面との間もシール材でシールされている。また仕切部材34の中心部分にはガイド部34Aが下方に突出されている。ガイド部34Aには上下方向の貫通孔が形成され、前記駆動パイプ36およびプッシュロッド18が挿通されている。なお、仕切部材34の貫通孔内周面にはドライブッシュ34Bが取り付けられ、前記駆動パイプ36を上下方向にスムーズに案内できるようにされている。
【0033】
第3ピストン33は、中心軸に貫通孔が形成されている。この貫通孔には前記仕切部材34のガイド部34Aが挿通され、このガイド部34Aおよび第3ピストン33間もシール材でシールされている。
この第3ピストン33も、後述する戻しバネ76で上方に付勢されているので、シリンダポート26からエアを供給していない状態では、第3ピストン33が仕切部材34に当接する上方ストロークエンドの位置に移動している。
【0034】
次に、駆動部2において、前記各ピストン31〜33の移動に連動して移動する部品について、図2を参照して説明する。
シリンダブロック10の下方には、継ぎ手ブロック37、ダイアフラム押さえ部材38、蓋部材39が順次固定されている。
【0035】
継ぎ手ブロック37は、中心に前記シリンダブロック10の第3シリンダ23と略同サイズの面積の貫通孔が形成されている。
また、ダイアフラム押さえ部材38には、図4に示すように、平面中心に1箇所の貫通孔381が形成され、その周囲に等間隔で4箇所の貫通孔382が形成されている。なお、図4は、ダイアフラム押さえ部材38の下面図である。
蓋部材39は、前記ダイアフラム押さえ部材38の下面にねじ止め固定されている。
【0036】
そして、ダイアフラム押さえ部材38および蓋部材39間にはダイアフラム40が配置されている。
ダイアフラム40は、図5に示すように、略円板状に形成されている。ダイアフラム40の外周は肉厚のフランジ部401とされ、フランジ部401の上面には4つの孔402が形成されている。
フランジ部401の内周側は薄肉状に形成され、ダイアフラム40の平面中心の周囲には、4つの変位部403が形成されている。但し、ダイアフラム40には貫通孔は形成されていない。
各変位部403は、上部側に向かうにしたがって、平面直径が小さくなるように、切頭円錐状に形成されている。このため、変位部403の上端部は平板状に形成されている。
また、ダイアフラム40の中心部も、平板状の変位部404とされている。
なお、ダイアフラム40としては、変位部403を球面状等に形成したものを利用してもよい。すなわち、変位部403は、後述する各ロッド60,70,160,170の移動に伴い、スムーズに変位できる形状に形成すればよい。
【0037】
ダイアフラム40の各変位部403および404の平面部分は、前記ダイアフラム押さえ部材38の各貫通孔382,381の形成位置と対応している。
そして、ダイアフラム40の孔402にはピンが嵌合され、このピンを前記ダイアフラム押さえ部材38の孔383に挿入することで、ダイアフラム押さえ部材38に対してダイアフラム40の位置決めがなされている。
従って、ダイアフラム40は、前記ダイアフラム押さえ部材38に対して位置合わせされた状態で、ダイアフラム押さえ部材38および蓋部材39によって挟持されている。
【0038】
前記継ぎ手ブロック37には、前記第1ピストン31に連動して移動する吐出口開閉第1ロッド50と、前記第2ピストン32に連動して移動する吐出部材第1ロッド60と、前記第3ピストン33に連動して移動する供給部開閉第1ロッド70とが配置されている。
ここで、吐出口開閉第1ロッド50は、ダイアフラム押さえ部材38の中心孔381に対応する平面位置に配置されている。
吐出部材第1ロッド60は2本設けられ、ダイアフラム押さえ部材38の中心孔381を挟んで対称位置に配置された2つの孔382に対応する平面位置に配置されている。
供給部開閉第1ロッド70も2本設けられ、ダイアフラム押さえ部材38の中心孔381を挟んで配置された残り2つの孔383に対応する平面位置に配置されている。
【0039】
供給部開閉第1ロッド70は、供給部開閉継手部材71にねじ止めされている。
供給部開閉継手部材71は、図6に示すように、略円筒状に形成されている。なお、図6(A)は、供給部開閉継手部材71の縦断面図、図6(B)は下面図である。
そして、供給部開閉継手部材71の下面には、内側に突出する一対のフランジ部711が形成されている。そして、これらのフランジ部711に、バネ座712を挟んで各供給部開閉第1ロッド70がねじ止めされている。
【0040】
吐出部材第1ロッド60は、吐出部材継手部材61にねじ止めされている。
吐出部材継手部材61は、図7に示すように、ブロック状に形成されている。なお、図7(A)は、吐出部材継手部材61の縦断面図、図7(B)は下面図である。
そして、吐出部材継手部材61の下面には、バネ座612を挟んで各吐出部材第1ロッド60がねじ止めされている。
この吐出部材継手部材61は、各吐出部材第1ロッド60を結ぶ方向が、前記供給部開閉継手部材71における供給部開閉第1ロッド70を結ぶ方向と直交するように、前記供給部開閉継手部材71のフランジ部711間の溝部に配置されている。
なお、図2においては、吐出部材第1ロッド60、供給部開閉第1ロッド70の断面を、吐出口開閉第1ロッド50が配置される中心位置で直交する交差方向した断面を記載しているため、左右対称形状では表示されていない。
【0041】
各ロッド50,60,70には、磁石継手53、63、73が固定されている。各磁石継手53、63、73には、円柱状の磁石(永久磁石)55,65,75が固定されている。
ここで、磁石55、65は、上側がS極で、下側(ダイアフラム40側)がN極となる向きで固定されている。
一方、磁石75は、上側がN極で、下側(ダイアフラム40側)がS極となる向きで固定されている。
【0042】
この各ロッド50,60,70の磁石継手53、63、73および磁石55、65、75部分は、前記ダイアフラム押さえ部材38の孔381、382にそれぞれ挿入されている。そして、前記孔381、382は段付き孔とされており、この段部および前記バネ座512,612,712間には戻しバネ56、66、76が配置されている。
【0043】
そして、本実施形態では、駆動部2およびポンプ部3の間に前記ダイアフラム40が配置されているので、ポンプ部3から液体が駆動部2内に侵入することや、駆動部2で発生したパーティクルがポンプ部3内に落下することが防止されている。
【0044】
[ポンプ部の構成]
次に、ポンプ部3の構成について説明する。
ポンプ部3は、図8、9に示すように、ほぼ円筒状に形成されたステンレス製の容器100を備えている。この容器100は袋ナット101により、蓋部材39に着脱可能に取り付けられている。
【0045】
容器100の下端部には、下方に貫通する孔が形成され、この孔には吐出口111を有するバルブシート110が下方から容器100にねじ込まれるバルブシート押さえ部材120で固定されている。
バルブシート110の容器100内部側の開口は、下方に向かって径が小さくなる凹状のテーパ面とされた当接面112が形成されている。この当接面112の下端からバルブシート110の下面まで上下に連通する吐出口111が形成されている。
【0046】
バルブシート押さえ部材120には前記吐出口111に連通する孔121が形成されている。この孔121内には吐出用の針122が挿入され、締め付けナット123により固定されている。
【0047】
容器100の中心軸部分には、図8〜10に示すように、吐出口開閉第2ロッド150が配置されている。
吐出口開閉第2ロッド150の上端には磁石継手153が固定され、磁石継手153には円柱状の磁石(永久磁石)155が固定されている。ここで、磁石155は、上側(ダイアフラム40)がS極となる向きに固定されている。このため、ダイアフラム40の変位部404を挟んで配置された各磁石55,155は磁力で接合され、前記吐出口開閉第1ロッド50および吐出口開閉第2ロッド150はダイアフラム40を挟んで磁力により接合されている。そして、この吐出口開閉第1ロッド50および吐出口開閉第2ロッド150を備えて吐出口開閉ロッドが構成されている。
【0048】
吐出口開閉第2ロッド150の下端には、吐出口111を開閉するニードル151が圧入や接着などで連結されている。ニードル151下端の吐出口111に当接する当接面151Aは、凸状の球面とされ、吐出口111のテーパ状の当接面112に接離することで吐出口111を開閉するように構成されている。従って、ニードル151下端の当接面151A、吐出口111の当接面112により吐出口開閉バルブが構成される。
【0049】
前記吐出口開閉第2ロッド150を挟んだ位置には、2本の吐出部材第2ロッド160が配置されている。
吐出部材第2ロッド160の上端にも磁石継手163が固定され、磁石継手163には円柱状の磁石(永久磁石)165が固定されている。ここで、磁石165は、上側(ダイアフラム40)がS極となる向きに固定されている。このため、ダイアフラム40の変位部403を挟んで配置された各磁石65,165は磁力で接合され、前記吐出部材第1ロッド60および吐出部材第2ロッド160はダイアフラム40を挟んで磁力により接合されている。そして、この吐出部材第1ロッド60および吐出部材第2ロッド160を備えて吐出部材ロッドが構成されている。
【0050】
吐出部材第2ロッド160の各下端に跨ってプランジャ台161が取り付けられている。プランジャ台161の中心下面には、吐出部材であるプランジャ162が固定されている。
プランジャ162の略下半分はパイプ状に形成され、このパイプ部分に前記ニードル151が挿通されている。このため、ニードル151の同心円状外側に吐出部材であるプランジャ162が配置される。
【0051】
前記吐出口開閉第2ロッド150を挟んだ位置には、2本の供給部開閉第2ロッド170も配置されている。図10に示すように、2本の供給部開閉第2ロッド170および吐出口開閉第2ロッド150が並ぶ方向は、2本の吐出部材第2ロッド160および吐出口開閉第2ロッド150が並ぶ方向に対して直交するように配置されている。
供給部開閉第2ロッド170の上端にも磁石継手173が固定され、磁石継手173には円柱状の磁石(永久磁石)175が固定されている。ここで、磁石175は、上側(ダイアフラム40)がN極となる向きに固定されている。このため、ダイアフラム40の変位部403を挟んで配置された各磁石75,175は磁力で接合され、前記供給部開閉第1ロッド70および供給部開閉第2ロッド170はダイアフラム40を挟んで磁力により接合されている。そして、この供給部開閉第1ロッド70および供給部開閉第2ロッド170を備えて供給部開閉ロッドが構成されている。
【0052】
供給部開閉第2ロッド170の各下端に跨って供給部開閉バルブ台171が取り付けられている。供給部開閉バルブ台171の中心下面には、開閉部材であるバルブパイプ172が固定されている。
このバルブパイプ172内には、前記プランジャ162のパイプ部分およびニードル151が挿通されている。このため、プランジャ162の同心円状外側にバルブパイプ172が配置される。
【0053】
バルブパイプ172の下端の当接面172Aは凸状の曲面とされ、バルブシート110のテーパ状の当接面112に接離可能に形成されており、液体供給部を開閉可能とされている。
従って、バルブパイプ172の当接面172Aおよびバルブシート110の当接面112により供給部開閉バルブが構成されている。
【0054】
次に、本実施形態の作用について説明する。本実施形態の液体の吐出動作は、前記特許文献1のものと同様のものである。
すなわち、運転開始前、即ち液体吐出装置1の停止状態においては、コントローラ5は各シリンダ21〜23にはエアを供給していない。
このため、コイルバネ16の付勢力で、バネ座15、プッシュロッド18、吐出口開閉第1ロッド50、吐出口開閉第2ロッド150、ニードル151が下方に移動し、ニードル151の下端の当接面151Aは吐出口111の当接面112に当接する。このため、吐出口開閉バルブは閉じられた状態にある。
【0055】
一方、プランジャ162およびバルブパイプ172は、戻しバネ66、76の作用により上方ストロークエンドの位置にあり、供給部開閉バルブは開いた状態にある。従って、バルブパイプ172の内側には、下端当接面172Aおよび当接面112間に形成される液体供給部を通して容器100から液体が供給された状態となっている。
【0056】
次いで、コントローラ5により第3シリンダ23内にエアを供給すると、第3ピストン33が戻りバネ76の付勢力に抗して下方に移動し、この移動に伴い供給部開閉継手部材71、供給部開閉第1ロッド70、供給部開閉第2ロッド170、バルブパイプ172が下方に移動されてバルブシート110の当接面112に当接し、供給部開閉バルブが閉じられた状態になる。
これにより、バルブパイプ172の内側に液が封入され、液が所定量に計量されることとなる。
【0057】
この後、コントローラ5により第2シリンダ22にエアを供給して第2ピストン32を上方ストロークエンドの位置に維持しつつ、第1シリンダ21にエアを供給する。これにより、第1ピストン31が上方に移動し、バネ座15、プッシュロッド18も上方に移動する。
すると、戻しバネ56により吐出口開閉第1ロッド50も上方に移動し、吐出口開閉第2ロッド150、ニードル151も上方に移動する。従って、吐出口開閉バルブが開いて吐出口111が開放され、液は吐出口111に連通する針122から吐出可能な状態となる。
【0058】
この後、コントローラ5により第2シリンダ22へのエア供給を停止し、第1シリンダ21へのエア供給を継続すると、第2ピストン32が下方に移動され、駆動パイプ36、吐出部材継手部材61、吐出部材第1ロッド60、吐出部材第2ロッド160、プランジャ162が下方に移動する。これにより、バルブパイプ172内で計量された液が吐出口111および針122を通して吐出される。
また、前記吐出部材継手部材61が下方に移動する途中から、前記吐出部材継手部材61がバネ座512に当接し、吐出部材継手部材61の移動と共に吐出口開閉第1ロッド50、吐出口開閉第2ロッド150、ニードル151も下方に移動する。このため、液体の吐出工程の最後には、プランジャ162とともにニードル151も移動し、吐出口111を閉鎖する。
【0059】
この後、コントローラ5により第3シリンダ23内を大気に開放すると、戻しバネ76によって第3シリンダ23、供給部開閉継手部材71、供給部開閉第1ロッド70、供給部開閉第2ロッド170、バルブパイプ172が上方に移動し、供給部開閉バルブが開かれる。
【0060】
次いで、コントローラ5により第1シリンダ21を大気に開放すると、戻しバネ66の作用により第2ピストン32、駆動パイプ36、吐出部材継手部材61、吐出部材第1ロッド60、吐出部材第2ロッド160、プランジャ162が上方に移動される。なお、プランジャ162の上方移動量は、前記駆動パイプ36が吐出量調整部材17に当接する位置、つまりマイクロメータ14のスピンドル14Aの進退位置で調整される。
このプランジャ162の上方移動に伴って形成される空間に、液体供給部を通して容器100内から液が流入して供給される。従って、プランジャ162の上方移動量により計量・吐出される液量が設定される。
【0061】
前述のような本実施形態によれば、次のような効果がある。
(1)各バルブや吐出部材を駆動するロッドを、ダイアフラム40を挟んで配置された吐出口開閉第1ロッド50、吐出部材第1ロッド60、供給部開閉第1ロッド70と、吐出口開閉第2ロッド150、吐出部材第2ロッド160、供給部開閉第2ロッド170とで構成しているので、液体吐出装置1の駆動部2およびポンプ部3をダイアフラム40で区画することができる。
このため、駆動部2側でパーティクルが発生したとしても、貫通する部分がないダイアフラム40によって区画されているポンプ部3側にパーティクルが侵入することを確実に防止できる。
また、各ロッド50,60,70,150,160,170はダイアフラム40を貫通していないので、ロッドの移動に伴ってシールが擦れてパーティクルが発生することもなく、この点でもポンプ部3側にパーティクルが侵入することを確実に防止できる。
従って、吐出する液体がパーティクルで汚染されたりすることがなく、液晶注入用のようにクリーンルームなどで利用される要求レベルの高い液体の吐出にも利用することができる。
【0062】
(2)また、ダイアフラム40により、ポンプ部3から液体が駆動部2に浸入することを確実に防止できるため、液の洗浄はポンプ部3側でよく、メンテナンスも容易に行うことができる。
【0063】
(3)さらに、ダイアフラム40は非常に薄いため、各ロッド50,60,70,150,160,170の磁石55,65,75,155,165,175間の距離変動は殆ど無く、ロッドの動作にダイアフラム40が影響することがない。このため、ダイアフラム40を挟んで各ロッド50,60,70,150,160,170を配置しても、吐出精度にほとんど影響することがない。
その上、駆動部2側に配置された各第1ロッド50,60,70と、ポンプ部3側に配置された前記第2ロッド150,160,170と磁力で結合しているため、液体吐出装置1を分解洗浄する際には、袋ナット101を取り外して駆動部2から容器100を取り外し、さらに第2ロッド150,160,170を引っ張ることで、ポンプ部3において液に接する部分を容易に取り外すことができる。
このため、分解洗浄作業も極めて容易に行うことができ、メンテナンス性のよい液体吐出装置とすることができる。
【0064】
(4)その上、吐出部材第2ロッド160および供給部開閉第2ロッド170は、ダイアフラム40の平面中心に対して同心円上に配置されるため、吐出部材第1ロッド60および供給部開閉第1ロッド70に対して誤った組合せで取り付けてしまう可能性があり、その場合、各ロッドの動作が異なり、正しい吐出動作を行うことができない。
これに対し、本実施形態では、磁石165,175の磁極の向きが異なるため、吐出部材第2ロッド160を誤って供給部開閉第1ロッド70に接続したり、供給部開閉第2ロッド170を誤って吐出部材第1ロッド60に接続することがない。従って、分解洗浄後に、各吐出部材第2ロッド160、供給部開閉第2ロッド170をセットする際に、容易にかつ正しく接合することができ、メンテナンス性も向上することができる。
さらに、吐出口開閉第2ロッド150はダイアフラム40の中心位置に配置すればよいため、吐出口開閉第1ロッド50に対して容易に接合することができる。
【0065】
(5)吐出する液を、供給部開閉バルブを閉めることでバルブパイプ172内に閉じ込めて容積計量をしているので、たとえ吐出量が微量であっても吐出量を高精度に制御することができる。
また、吐出量の調整は、マイクロメータ14によりプランジャ162の移動量を調整するだけでよいため、簡単にかつ高精度に行うことができる。
【0066】
(6)ポンプ部3に容器100を設け、この容器100に液を入れてあるため、液の移送距離を短くでき、高粘度の液であっても加圧手段を設けることなく、確実に供給することができる。
極微量の液を吐出する場合等のように容器100の容積に対して吐出量が少ない場合には、容器100に液を満たせば、半日あるいは1日分の吐出量を確保できるため、容器100を着脱して液を補充する場合であっても、作業性や生産性が低下することもない。なお、液の補充時期は、液面計を設けたり、一定時間当たりの吐出量から補充サイクルを設定することなどで容易に管理することができる。
また、容器100を着脱して液を補充する場合には、圧送ポンプのような移送手段が不要なため、構造が簡易となり、液体吐出装置1を安価に提供できる。
【0067】
(7)ペーストのように高粘度の液は、ポンプ部3と吐出口111とが離れていると液の吐出に遅れが生じるが、本実施形態によれば、液を吐出するプランジャ162等を有するポンプ部3と吐出口111とが極めて近いので、液の吐出の遅れがない。
【0068】
(8)駆動部2は、いわゆるエアシリンダ式としたので、液体吐出装置1を小型化でき、特に微量の液を吐出するのに好適である。また、この駆動機構は、コントローラ5で各シリンダポート24〜26へのエア供給の有無のみを制御すればよいので、制御が容易であり、確実に動作させることができる。
【0069】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態は、駆動部2の駆動機構として圧電素子を用いたものである。このため、ポンプ部3の構成は、前記第1実施形態と略同じである。このため、第2実施形態において、前記第1実施形態と同一または同様の構成には同一符号を付し、説明を省略または簡略する。
【0070】
第2実施形態の液体吐出装置1Aは、図11、12に示すように、継手ブロック302と、駆動部台303と、容器100と、カバー305とを備えている。継手ブロック302は駆動部台303に対してビス止めされている。また、容器100は、袋ナット101を介して継手ブロック302に対して着脱自在に取り付けられている。これらの継手ブロック302、駆動部台303、容器100、カバー305によって液体吐出装置1Aの本体が構成されている。
【0071】
第2実施形態の液体吐出装置1Aの駆動部2Aは、図11に示すように、駆動部台303に固定されたガイド部材311と、ガイド部材311に対してスライド移動可能に設けられた圧電素子支持板312と、圧電素子支持板312をガイド部材311に対して容器100側に付勢する押しバネ313と、圧電素子支持板312に固定された第1圧電素子314Aおよび第2圧電素子314Bとを備えている。
ガイド部材311は、圧電素子支持板312を挟んで一対設けられている。
また、圧電素子支持板312には、駆動部台303の下面図である図13に示すように、第1駆動アーム部材315Aおよび第2駆動アーム部材315Bとが取り付けられている。
さらに、カバー305には、駆動制御手段である外部の制御装置(図示略)に接続されるコネクタ318が設けられ、制御装置から出力される駆動信号によって各圧電素子314A,314Bが駆動されるように構成されている。
【0072】
なお、本実施形態においては、制御装置は、第1圧電素子314Aに対しては、第1圧電素子用第1設定値から第1圧電素子用第2設定値までの電圧を印加可能に構成され、第2圧電素子314Bに対しては、第2圧電素子用第1設定値から第2圧電素子用第2設定値までの電圧を印加可能に構成されている。さらに、本実施形態では、各第1設定値は電圧値「0」に設定され、第2設定値は使用する圧電素子314A,314Bやその圧電素子314A,314Bに求める変位量に応じて設定されている。
このため、各圧電素子314A,314Bの長手方向の寸法は、第1設定値の電圧を印加された場合に比べて、第2設定値の電圧を印加された場合の方が長くなるようにされている。
【0073】
[圧電素子支持板の構造]
圧電素子支持板312は、ステンレスなどの金属材で構成され、1枚の板材をワイヤカットなどで以下に説明する所定の形状に切断することで製造されている。この圧電素子支持板312は、本出願人が出願した国際公開第2006/078018号パンフレットに開示されたものと同様のものである。
すなわち、圧電素子支持板312は、その中心軸部分に設けられたベース部321と、このベース部321の一端側から連続して形成された第1基端部322Aおよび第2基端部322Bと、前記ベース部321の他端側から第1ヒンジ部323を介して連続して形成された第1駆動部324Aおよび第2駆動部324Bと、前記各基端部322A,322Bに対して第2ヒンジ部325および前記各駆動部324A,324Bに対して第3ヒンジ部326を介して連続して形成された前記第1変位伝達部327Aおよび第2変位伝達部327Bとを備えている。ベース部321の下端には突起331が形成されている。
なお、圧電素子支持板312の材質は限定されないが、特に熱膨張が少なく硬い種類のステンレスを用いれば、温度変化の影響を軽減できる点で好ましい。
【0074】
各基端部322A,322Bおよび駆動部324A,324Bには、圧電素子固定部329が設けられ、各圧電素子固定部329間に圧電素子314A,314Bが掛け渡されて固定されている。なお、駆動部324A,324Bおよび圧電素子固定部329間は第4ヒンジ部328が設けられている。
圧電素子314A,314Bは、熱膨張係数が「0」またはマイナスの数値のものが利用されている。このため、圧電素子固定部329および圧電素子314A,314B間に、図示略の熱膨張係数の大きな材質の金属板を挟んで接着し、温度変化の影響を少なくするようにしている。
なお、各ヒンジ部323,325,326,328は、他の部分に比べて幅寸法が狭い細幅に形成され、力が加わると弾性変形可能に形成されている。
【0075】
ベース部321にはピン321Aが貫通して取り付けられている。上側のピン321Aは、各ガイド部材311の上側のU字溝に挿入されている。また、下側のピン321Aは、各ガイド部材311内に挿入されてバネ313で付勢されるバネ座313Aの溝に挿入されている。従って、駆動部台303に固定されたガイド部材311に対して、バネ座313Aはバネ313で下方に付勢され、圧電素子支持板312はバネ座313Aで押されて下方に付勢されている。
【0076】
各駆動アーム部材315A,315Bはそれぞれ2枚ずつ設けられている。第1駆動アーム部材315Aは第1変位伝達部327Aおよび図示略のスペーサを挟んで配置されて第1変位伝達部327Aに固定されている。また、第2駆動アーム部材315Bは、第2変位伝達部327Bを挟んで配置され、第2変位伝達部327Bに固定されている。ここで、各駆動アーム部材315A,315Bの固定方法は接着剤などの適宜な手段が利用できるが、本実施形態では駆動アーム部材315A,315Bおよび変位伝達部327A,327Bを貫通するピンを圧入することで、各駆動アーム部材315A,315Bをがたつき無く変位伝達部327A,327Bに固定している。
なお、本実施形態では、図13に示すように、第2駆動アーム部材315Bは、突起331を挟んでその外側に配置され、第1駆動アーム部材315Aは第2駆動アーム部材315Bの外側にそれぞれ配置されている。
【0077】
このような構成の駆動機構では、圧電素子314A,314Bに第1設定値の電圧を印加、つまり本実施形態では第1設定値は電圧値「0」であるため、駆動信号の入力を行わない状態では、各ヒンジ部323,325,326,328が変形しないように構成されている。そして、この状態では、突起331の容器100側の面と、各駆動アーム部材315A,315Bの容器側の面とが同じ高さ、つまり同一平面上に配置されるように設定されている。
【0078】
一方、各圧電素子314A,314Bに第2設定値の電圧を印加すると、各圧電素子314A,314Bの長手方向寸法が長くなる。この際、基端部322A,322Bはベース部321に対して一体化されていて移動しにくいのに対し、駆動部324A,324Bはヒンジ部323でベース部321に連結されているため、各圧電素子314A,314Bの長手方向寸法が長くなると、ヒンジ部323が変形し、駆動部324A,324Bは容器100側に移動する。
駆動部324A,324Bの移動に伴い、第3ヒンジ部326を介して連結された変位伝達部327A,327Bも移動される。この際、第3ヒンジ部326は、変位伝達部327A,327Bの圧電素子314A,314Bに近接する位置(圧電素子支持板312の内側)に設けられ、第2ヒンジ部325は第3ヒンジ部326よりも外側(圧電素子314A,314Bから離れた位置)に設けられているので、駆動部324A,324Bの移動によって第3ヒンジ部326側が容器100側に引っ張られると、変位伝達部327A,327Bは容器側の端部が外側に向くように傾斜される。
変位伝達部327A,327Bの傾斜に伴い、駆動アーム部材315A,315Bも傾斜し、駆動アーム部材315A,315Bの先端が容器側に移動する。このように圧電素子314A,314Bの伸長を駆動アーム部材315A,315Bの傾斜に変換しているため、駆動アーム部材315A,315B先端の移動量を圧電素子314Aの伸長量の数倍〜数十倍(本実施形態では約10倍)に拡大することができる。従って、本実施形態では、第1変位伝達部327Aおよび第1駆動アーム部材315Aによって第1変位拡大部が構成され、第2変位伝達部327Bおよび第2駆動アーム部材315Bによって第2変位拡大部が構成される。また、圧電素子支持板312および駆動アーム部材315A,315Bによって圧電素子支持部材が構成される。
【0079】
継手ブロック302内には、前記第1実施形態と同様に、吐出口開閉第1ロッド50、吐出部材第1ロッド60、供給部開閉第1ロッド70が配置されている。
吐出口開閉第1ロッド50は、突起331の下面に当接可能な長さに設定されており、戻しバネ56により突起331に当接されている。
【0080】
吐出部材第1ロッド60は、吐出口開閉第1ロッド50を挟んで2本設けられ、吐出部材継手部材61Aに固定されている。吐出部材継手部材61Aは、吐出部材第1ロッド60が固定されるフランジを有し、内部に吐出口開閉第1ロッド50が挿通される貫通孔が形成されたフランジ付きの円筒により構成されている。そして、吐出部材継手部材61Aの上端面は、戻しバネ66により前記第2駆動アーム部材315Bの先端下面に当接されている。
【0081】
供給部開閉第1ロッド70は、吐出口開閉第1ロッド50を挟んで2本設けられ、供給部開閉継手部材71Aに固定されている。供給部開閉継手部材71Aも、供給部開閉第1ロッド70が固定されるフランジを有し、内部に吐出部材継手部材61Aが挿通される貫通孔が形成されたフランジ付きの円筒により構成されている。そして、供給部開閉継手部材71Aの上端面は、戻しバネ76により前記駆動アーム部材315Aの先端下面に当接されている。
【0082】
駆動部2Aにおけるダイアフラム押さえ部材38、蓋部材39、ダイアフラム40の構成は前記第1実施形態と同一であり、ポンプ部3の構成も前記第1実施形態と略同一であるため、説明を省略する。
【0083】
次に、本実施形態の液体吐出装置1Aにおける液体の吐出動作について説明する。なお、この動作は、前記国際公開第2006/078018号パンフレットに開示されたものと同じである。
【0084】
[原点状態]
運転開始前即ち液体吐出装置1の停止状態(原点状態)においては、制御装置は各圧電素子314A,314Bに第1圧電素子用第1設定値および第2圧電素子用第1設定値の電圧を印加する。本実施形態では、各第1設定値は「0」とされているため、原点状態では各圧電素子314A,314Bには電圧が印加されないように制御される。
このため、各圧電素子314A,314Bは、初期状態つまり長手方向の長さ寸法が最も短くなる状態とされ、変位伝達部327A,327Bも変位していないので、各駆動アーム部材315A,315Bの先端下面は、圧電素子支持板312の突起331の下面に揃っている。また、圧電素子支持板312および駆動アーム部材315A,315Bは、各戻しバネ56、66、76の付勢力で上方に付勢されているが、これらの各戻しバネ56、66、76の各付勢力のうちの最大の付勢力よりも大きな付勢力を有する押しバネ313によって下方に付勢され、吐出口開閉第1ロッド50、吐出部材第1ロッド60、供給部開閉第1ロッド70を容器100側に付勢している。
【0085】
この原点状態では、ニードル151で吐出口111が閉鎖されている。また、バルブパイプ172は、その先端がバルブシート110の当接面112から所定距離離れた位置となるように供給部開閉第2ロッド170やバルブパイプ172の寸法などが設定されている。さらに、プランジャ162も、その先端がバルブシート110の当接面112から所定距離離れた位置となるように吐出部材第2ロッド160やプランジャ162の長さ寸法などが設定されている。
【0086】
[計量工程]
次に、制御装置は、第1圧電素子314Aに第1圧電素子用第1設定値の電圧を印加したまま、第2圧電素子314Bに予め設定された第2圧電素子用第3設定値の電圧を印加する。この第3設定値は、第2圧電素子用第1設定値以上、第2圧電素子用第2設定値未満とされ、後述するように、吐出する液量に応じて制御されるものである。
第2圧電素子314Bに第2圧電素子用第3設定値の電圧を印加すると、第2圧電素子314Bは、印加電圧に応じた寸法だけ伸長する。この動作に伴い、第2駆動部324B、第2変位伝達部327Bおよび第2駆動アーム部材315Bが傾き、第2駆動アーム部材315Bの先端側が下方に移動する。この移動に伴い、吐出部材継手部材61Aは下方に移動する。その結果、プランジャ162も下方に移動し、プランジャ162の先端が印加電圧に応じた調整位置に移動する。
本実施形態では、後述するように吐出量は、プランジャ162の移動量によって設定され、この移動量は、調整位置から、第2圧電素子用第2設定値の電圧を印加した際の移動位置までの移動量によって決められる。つまり、本実施形態では、吐出工程終了時のプランジャ162の移動終了位置は固定し、プランジャ162の移動開始位置を印加電圧を調整することで、吐出工程時のプランジャ162の移動量つまりは吐出量を調整している。従って、計量工程において第2圧電素子314Bに印加する電圧値(第2圧電素子用第3設定値)を調整するだけで吐出量を自由に調整できるため、吐出液量の計量が行われることになる。
【0087】
[バルブ切替工程]
次に、制御装置は、第2圧電素子314Bに第2圧電素子用第3設定値の電圧を印加したまま、第1圧電素子314Aに第1圧電素子用第2設定値の電圧を印加する。すると、第1圧電素子314Aは、印加電圧に応じた寸法だけ伸長する。この動作に伴い、第1駆動部324A、第1変位伝達部327Aおよび第1駆動アーム部材315Aが傾き、第1駆動アーム部材315Aの先端側が下方に移動する。
従って、供給部開閉継手部材71は下方に移動し、バルブパイプ172も下方に移動する。
ここで、移動前のバルブパイプ172とバルブシート110間の隙間寸法は、第2設定値の電圧を印加した際に第1駆動アーム部材315Aの先端部の移動量つまりバルブパイプ172の移動量に比べて小さくされている。このため、第1圧電素子314Aに第1圧電素子用第2設定値の電圧を印加してバルブパイプ172を移動すると、まずバルブパイプ172がバルブシート110に当接し、液体供給部(入口バルブ)が閉じられる。
【0088】
バルブパイプ172がバルブシート110に当接した後も、第1圧電素子314Aが伸長すると、バルブパイプ172は液体吐出装置1Aの本体に対してそれ以上移動できないため、その反力によってバネ313の付勢力に抗して第1駆動アーム部材315Aおよび圧電素子支持板312が上方に移動する。
圧電素子支持板312が上方に移動すると、戻しバネ56によってニードル151も吐出口111から離れる方向に移動する。このため、出口バルブが開かれ、吐出口111が開口される。
従って、入口バルブが開かれ、かつ出口バルブが閉じられた状態から、入口バルブが閉じられ、かつ出口バルブが開かれた状態に切り替えられるため、バルブの切替工程が実行される。また、バルブの切替は、第1圧電素子314Aがバルブパイプ172をバルブシート110に当接させた後、さらに伸長して圧電素子支持板312を移動することで機械的に行われるので、一方のバルブは必ず閉じられた状態にあり、容器100内と吐出口111とが直接連通されることはない。
【0089】
[吐出工程]
次に、制御装置は、第1圧電素子314Aに第1圧電素子用第2設定値の電圧を印加したまま、第2圧電素子314Bに第2圧電素子用第2設定値の電圧を印加する。すると、第2圧電素子314Bは、印加電圧に応じて伸長し、この動作に伴い、第2駆動部324B、第2変位伝達部327Bおよび第2駆動アーム部材315Bが傾き、第2駆動アーム部材315Bの先端側が下方に移動する。
従って、吐出部材継手部材61Aは下方に移動し、プランジャ162も吐出口111側に移動する。
【0090】
この際、入口バルブは閉じられ、出口バルブが開かれているので、プランジャ162の移動に伴い、液体が吐出口111を介して針(ノズル)122から吐出される。
また、吐出部材継手部材61Aは、下方に所定量移動した後、吐出口開閉第1ロッド50のバネ座512に当接するように構成されているため、最初はバルブパイプ172が単独で移動していても、最後は、バルブパイプ172およびニードル151が一緒に移動する。そして、ニードル151が吐出口111に当接して吐出口111が塞がれると、バルブパイプ172の移動も停止し、吐出工程が終了する。
【0091】
[入口弁開工程]
次に、制御装置は、第2圧電素子314Bに第2圧電素子用第2設定値の電圧を印加したまま、第1圧電素子314Aに第1圧電素子用第1設定値の電圧を印加つまり電圧印加をオフにする。すると、第1圧電素子314Aは初期状態の長さ寸法に戻り、第1駆動アーム部材315Aの先端は上方に移動する。
このため、バルブパイプ172は、戻しバネ76の付勢力によって吐出口111から離れる方向に移動し、入口バルブが開かれる。
【0092】
[吸入工程および原点復帰]
次に、制御装置は、第1圧電素子314Aに第1圧電素子用第1設定値の電圧を印加したまま、第2圧電素子314Bに第2圧電素子用第1設定値の電圧を印加つまり電圧印加をオフにする。すると、第2圧電素子314Bは初期状態の長さ寸法に戻り、第2駆動アーム部材315Bの先端は上方に移動する。
このため、プランジャ162は、戻しバネ66の付勢力によって吐出口111から離れる方向に移動する。
この際、出口バルブは閉じられ、入口バルブが開かれているので、プランジャ162の移動によって形成された空間には、容器100内の液体が入口バルブを介して吸入される。そして、プランジャ162が初期位置に戻ることで、原点状態に復帰することになる。
【0093】
以上の工程を繰り返すことで、所定量の液体が順次吐出されることになる。また、各液体吐出工程において、第2圧電素子用第3設定値を調整することで、液体の1回毎の吐出量を調整することができる。さらに、圧電素子314A,314Bに加える駆動信号の電流値を調整することでバルブパイプ172、プランジャ162、ニードル151の駆動スピードが制御され、液体吐出のサイクルタイムを調整することができる。
【0094】
このような本実施形態によれば、各第1ロッド50,60,70および第2ロッド150,160,170がダイアフラム40を挟んで磁力で接合されているため、前記第1実施形態と同じ作用効果がある。
さらに、駆動部2Aとして圧電素子314A,314Bおよび圧電素子支持板312を用いたことなどで次のような効果もある。
(2−1)圧電素子314A,314Bを利用してバルブパイプ172、プランジャ162、ニードル151を駆動しているので、エアシリンダを利用して駆動する場合と同等程度に液体吐出装置1Aを小型、軽量化することができる。すなわち、サーボモータ、ソレノイド、カムなどの駆動機構を採用した場合に比べて、液体吐出装置1Aを容易に小型化できる。
従って、各種製品の生産ラインにおいて、接着剤や各種ペースト等の吐出に本実施形態の液体吐出装置1Aを利用する際にも、ロボットのアームに取り付けて、高速、高加速度で移動させることができ、生産ラインのタクトタイムの短縮を実現でき、生産性向上に寄与することができる。
【0095】
(2−2)圧電素子314A,314Bは高速駆動が可能なため、例えば、1秒間に10回以上の吐出動作が可能であり、エアシリンダ駆動に比べて高速に液体吐出動作を実現できる。さらに、圧電素子314A,314Bは、エアシリンダ駆動に比べて発生力が大きいため、ノズルを細くして抵抗が増えても液体を飛ばして吐出することができる。このため、例えば、0.01マイクロリットルの水でもきれいに飛ばすことができ、安定した動作を実現できる。
その上、吐出工程は、ニードル151が吐出口111を塞ぐことで終了するため、吐出液の液切れを良くでき、この点でも液をきれいに飛ばすことができ、吐出量の精度を向上できかつ安定した吐出動作を実現できる。
【0096】
(2−3)吐出液の液量は、計量工程において、第2圧電素子314Bに加える第2圧電素子用第3設定値を調整することで容易に設定変更できる。このため、吐出動作中であっても1回の吐出動作毎の吐出量を自動的に調整することができる。従って、例えば、基板上に複数の電子部品を取り付ける工程において、各電子部品の取付場所毎に異なる液量の接着剤を塗布するために、基板上に吐出する液体の量を変更する場合や、複数の製品が混在して送られる生産ラインにおいて、製品毎に液体の吐出量を変更しなければならない場合でも、容易に対応でき、使い勝手のよい液体吐出装置1を提供できる。
【0097】
(2−4)また、2つの圧電素子314A,314Bの動作によって、吐出部材であるプランジャ162および供給部開閉部材であるバルブパイプ172の駆動を制御するとともに、圧電素子314A,314Bを支持する圧電素子支持板312を押しバネ313で吐出口111側に付勢し、バルブパイプ172がバルブシート110のテーパ状の当接面112に当接した後も圧電素子314Aを伸長させることで、圧電素子支持板312をバネ313の付勢力に抗して吐出口111から離れる方向に移動して吐出口開閉部材であるニードル151の駆動を制御している。
このように、本実施形態では、圧電素子支持板312を押しバネ313およびガイド部材311によって液体吐出装置1Aの本体に対してスライド移動可能に設けたり、バルブパイプ172をストロークの途中で容器100の内面に当接させ、その反力を利用することで、2本の圧電素子314A,314Bの駆動を制御するだけで3つの部材(バルブパイプ172、プランジャ162、ニードル151)の駆動を制御できる。従って、3つの部材を3個の圧電素子で駆動する場合のように、圧電素子の配置や駆動制御が複雑になるという問題が生じることがなく、液体吐出装置1Aの製造コストも低減できる。
その上、圧電素子314A,314Bで駆動できるため、カム、モータおよびボールネジ、ソレノイド等を駆動源とする場合に比べて、液体吐出装置1Aを小型化でき、特に極微量の液体を吐出するのに好適である。
【0098】
(2−5)圧電素子314A,314Bが固定される圧電素子支持板312を一体成形したので、各圧電素子314A,314Bの伸縮に対応する駆動部324A,324Bや変位伝達部327A,327Bの変位量を精度良く設定できる。
また、各駆動アーム部材315A,315Bは、変位伝達部327A,327Bにがたつき無く固定されているので、変位伝達部327A,327Bの変位量を各駆動アーム部材315A,315Bに精度良く伝達でき、各圧電素子314A,314Bの伸縮に対応する各駆動アーム部材315A,315Bの変位量つまりは各バルブパイプ172、プランジャ162、ニードル151の移動量を精度よく設定でき、微量の液体であっても高精度に吐出できる。
【0099】
(2−6)各圧電素子314A,314Bへの印加電圧を「0」にした際に、液体吐出装置1Aが原点状態(停止状態)となるように設定したので、動作停止中に圧電素子314A,314Bが発熱して温度が上昇することがない。このため、圧電素子314A,314Bが温度変化の影響を受けてその変位量がばらつくことを防止でき、圧電素子314A,314Bの変位量の精度つまり液体の吐出量の精度を向上できる。
【0100】
(2−7)プランジャ162のストロークのみで液体の吐出量が設定されるため、外気温などによって容器100等が膨張しても吐出量の精度はその影響を受けず、極微量であっても精度の高い液量を吐出できる。
【0101】
(2−8)高粘度の液体を高速で吐出するには、液体を高圧で押し出す必要があるが、駆動源として圧電素子314A,314Bの機械的な駆動力を用いているので、エアシリンダを駆動源とした場合に比べて、駆動力が高くなり、液体を高速で吐出できる。
また、液体を基板等の被付着物より離れた上方から吐出できるので、液体吐出装置1Aの外部に赤外線等のセンサを設けることにより、吐出が行われたかを確認できる。
液体吐出装置1Aには、チェック弁を設けていないので、液体を加圧して送ることができる。従って、粘性の高い液体であっても液体吐出装置1A内への供給が容易である。
【0102】
なお、本発明は前記実施例の構成に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲の変形は本発明に含まれるものである。
例えば、前記実施例では、ステンレス製の容器100を用いていたが、フッ素樹脂などによって容器を構成してもよい。また、ポンプ部3を構成する各部材もステンレス製に限らず、チタン等の金属やセラミック等の他の材質のものを用いてもよい。特に、比較的固く、かつ耐薬品性を有する材質のものが好ましい。
【0103】
前記第1実施例では、ピストン31〜33をエアおよびコイルバネ16、戻しバネ56、66、76により上下に移動させていたが、エアのみで移動させてもよい。また、モータ等で駆動されるカムやステップモータ等で、吐出口開閉バルブ、吐出部材、供給部開閉バルブを直接駆動してもよい。要するに、本発明の駆動機構は、吐出口開閉バルブ、吐出部材および供給部開閉バルブをそれぞれ独立に駆動でき、かつ、前記動作を行えるものであればよい。
【0104】
また、吐出口開閉バルブ、吐出部材および供給部開閉バルブの形状等は、前記実施形態のものに限定されず、その形状や機構は実施にあたって適宜設定すればよい。要するに、本発明は、吐出口開閉バルブ、吐出部材、供給部開閉バルブが内側から外側に順次同心円状に配置されていればよく、その具体的構造、材質、機構等は適宜設定すればよい。
【0105】
前記各実施形態では、各第1ロッド50,60,70と、第2ロッド150,160,170のそれぞれに磁石55,65,75,155,165,175を取り付けていたが、本発明はダイアフラム40が介在された状態で各第1ロッド50,60,70および第2ロッド150,160,170を磁力で接合できればよいため、一方のロッドには磁石の代わりに鉄、コバルト、ニッケルや各種合金等の前記磁石に対して磁力で接合(吸引)可能な部材を設けてもよい。例えば、第1ロッド50,60,70に永久磁石を取り付け、第2ロッド150,160,170に強磁性体等からなる部材を取り付けてもよい。逆に、第1ロッド50,60,70に強磁性体等からなる部材を取り付け、第2ロッド150,160,170に永久磁石を取り付けてもよい。要するに、第1ロッドおよび第2ロッドの少なくとも一方に磁石を取り付けて、各ロッドがその磁力で接合できるように構成すればよい。
【0106】
この際、前記実施形態と同様に、吐出部材第1ロッド60および吐出部材第2ロッド160と、供給部開閉第1ロッド70および供給部開閉第2ロッド170とが正しい組合せで接合できるように、磁石65および磁石75の磁極の向きを異ならせ、吐出部材第2ロッド160または供給部開閉第2ロッド170の一方には正しい組合せの第1ロッドの磁石と吸引する向きに磁石を配置し、他方には強磁性体等の磁力で接合できる部材を設ければよい。特に、本実施形態では、洗浄などで取り外した第2ロッド150,160,170を組み立てる際に、最初に、ダイアフラム40の中心に配置される吐出口開閉第2ロッド150をダイアフラム40の中心の変位部404に配置し、次に、吐出部材第2ロッド160を変位部403に配置し、最後に供給部開閉第2ロッド170を変位部403に配置する順番で行うと作業しやすい。このため、同じ変位部403に配置する吐出部材第2ロッド160および供給部開閉第2ロッド170のうち、先に配置する吐出部材第2ロッド160には供給部開閉第1ロッド70の磁石75と反発する向きに磁石165を取り付けておけば、吐出部材第2ロッド160を正しく吐出部材第1ロッド60に接合できる。そして、供給部開閉第2ロッド170は残っている変位部403部分に配置すればよいので、供給部開閉第2ロッド170に磁石ではなく強磁性体等の部材を取り付けても、正しい組合せで容易に接合できるメリットがある。但し、各第2ロッド150,160,170を互いに組み合わせてからまとめてダイアフラム40部分に配置することもできるため、この場合には、供給部開閉第2ロッド170側に磁石175を取り付け、吐出部材第2ロッド160側には強磁性体等の部材を取り付けることも可能である。
【0107】
前記各実施形態では、吐出部材第2ロッド160の磁石165と、供給部開閉第2ロッド170の磁石175との磁極の向きを異ならせることで、吐出部材第1ロッド60、供給部開閉第1ロッド70との組合せを正しく設定できるようにしているが、例えば、ロッド150に対する距離を、吐出部材第2ロッド160および供給部開閉第2ロッド170で異ならせることで吐出部材第1ロッド60、供給部開閉第1ロッド70との組合せを正しく設定できるようにしてもよい。
また、ダイアフラム40の各変位部403と、各第2ロッド160,170とに配置位置を示す記号などを表示して、作業者が目視で確認して組み立てるようにしてもよい。
【0108】
また、本発明の液体吐出装置1,1Aは、電子部品の製造装置に組み込んで利用してもよい。このような電子部品の製造装置では、極微量の液体を精度良く移送できる前述の液体吐出装置1,1Aを用いているので、前記針122から極微量の液体を高精度に吐出できる。
【符号の説明】
【0109】
1,1A…液体吐出装置、2、2A…駆動部、3…ポンプ部、40…ダイアフラム、50…吐出口開閉第1ロッド、60…吐出部材第1ロッド、70…供給部開閉第1ロッド、55,65,75,155,165,175…磁石、100…容器、110…バルブシート、111…吐出口、112…当接面、150…吐出口開閉第2ロッド、151…ニードル、160…吐出部材第2ロッド、162…吐出部材であるプランジャ、170…供給部開閉第2ロッド、172…開閉部材であるバルブパイプ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吐出する吐出口を有する容器を備えるポンプ部と、
前記ポンプ部に取り付けられる駆動部とを備えた液体吐出装置であって、
前記ポンプ部は、
前記容器の吐出口を開閉する吐出口開閉バルブと、
前記吐出口開閉バルブの外側に同心円状に配置されて容器内の液体を吐出する吐出部材と、
前記吐出部材の外側に同心円状に配置されて容器内部から吐出口に連通する液体供給部を開閉する供給部開閉バルブとを備え、
前記駆動部は、
前記吐出口開閉バルブを駆動する吐出口開閉ロッドと、
前記吐出部材を駆動する吐出用ロッドと、
前記供給部開閉バルブを駆動する供給部開閉ロッドと、
これらの各ロッドを駆動させる駆動機構とを備え、
前記各ロッドは、
前記駆動部に配置される第1ロッドと、
前記ポンプ側に配置される第2ロッドとを備えて構成され、
各第1ロッドおよび第2ロッド間はダイアフラムが配置され、このダイアフラムを挟んで配置された各第1ロッドおよび第2ロッドの少なくとも一方の端部には磁石が取り付けられ、前記各第1ロッドおよび第2ロッドは前記磁石の磁力によって前記ダイアフラムを挟んで接合されていることを特徴とする液体吐出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の液体吐出装置において、
前記吐出用ロッドの第1ロッドおよび前記供給部開閉ロッドの第1ロッドには、前記ダイアフラム側の磁極が互いに異なる磁石がそれぞれ取り付けられ、
前記吐出用ロッドの第2ロッドおよび前記供給部開閉ロッドの第2ロッドの少なくとも一方の第2ロッドには、前記吐出用ロッドの第1ロッドおよび前記供給部開閉ロッドの第1ロッドのうち、前記一方の第2ロッドを接合すべき一方の第1ロッドに取り付けられた磁石に対しては引き合い、他方の第1ロッドに取り付けられた磁石に対しては反発する磁極の向きで磁石が取り付けられていることを特徴とする液体吐出装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の液体吐出装置において、
前記吐出用ロッドは1本設けられ、
前記吐出口開閉ロッドおよび供給部開閉ロッドはそれぞれ2本設けられ、
前記吐出口開閉ロッドおよび供給部開閉ロッドの平面配置は、前記吐出用ロッドを中心とする同心円状であり、かつ、前記吐出口開閉ロッドおよび供給部開閉ロッドが等間隔で交互に位置するように配置されていることを特徴とする液体吐出装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の液体吐出装置において、
前記吐出口開閉バルブは、前記吐出口開閉ロッドの第2ロッドの先端に取り付けられたニードルと、このニードルの先端が接離する吐出口の当接面により構成され、
前記吐出部材は、前記吐出用ロッドの第2ロッドの先端に取り付けられ、前記ニードルが挿通された筒状の吐出プランジャにより構成され、
前記供給部開閉バルブは、前記供給部開閉ロッドの第2ロッドの先端に取り付けられ、前記吐出プランジャが挿通された筒状の開閉部材と、この開閉部材の先端が接離する液体供給部の当接面により構成されていることを特徴とする液体吐出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−168952(P2010−168952A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−10938(P2009−10938)
【出願日】平成21年1月21日(2009.1.21)
【出願人】(000111373)ノイベルク有限会社 (10)
【Fターム(参考)】