説明

液体含浸装置および基材への液体含浸方法

【課題】少ない液量で効率よく基材に液体を含浸できる液体含浸装置および基材への液体含浸方法を提供する。
【解決手段】基材20を加圧搬送する円柱状のロール2と、このロール2の外周面に沿った断面円弧形状を有し液体30を収容する凹部3が前記ロール2の外周面に対面配置されている受け型4とを備え、ロール2と受け型4の凹部3との間に供給される基材20が、受け型4の凹部3に収容されている液体30中でロール2と受け型4の凹部3との間で圧締されて厚み方向に圧縮され、ロール2及び受け型4の凹部3間通過に伴う圧締の解放による基材20の圧縮回復によって基材20への液体30含浸が行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体含浸装置および基材への液体含浸方法に関する。
【背景技術】
【0002】
木質単板等の基材に防虫剤や防腐剤等の液体を含浸させる方法として、従来、減圧や加圧処理による方法、蒸煮処理による方法が知られている。しかしながら、それらの処理方法はバッチ式で多量の液体を使用する方法であり、プロセス的にも、非常に手間のかかる方法であった。
【0003】
別の方法として、図7に示すように、液体槽41の液体42中で、基材43を上下一対のロール40,40で厚さ方向に圧縮しながら搬送し、ロール40,40通過後の基材43の圧縮回復により液体42を基材43に含浸させる方法が提案されている(例えば、特許文献1,2参照)。
【0004】
この方法において、基材への液体の含浸は、一対のロールのうち少なくとも一方のロールを完全に液体中に浸漬させた状態で行われるため、含浸処理のための液体槽の容積を大きくしなければならず、また多量の液体を要するという問題があった。また、特に、基材内部に液体を効果的に含浸させるために基材の圧縮回復を複数回行う場合には、その回数分だけ基材をロール間に通過させる必要があり、上下一対のロールを複数準備する必要であり、多くのロールを要するという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−307798号公報
【特許文献2】特開平11−48213号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上の通りの事情に鑑みてなされたものであり、少ない液量で効率よく基材に液体を含浸できる液体含浸装置および基材への液体含浸方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は以下のことを特徴としている。
【0008】
第1に、本発明の液体含浸装置は、基材を加圧搬送する円柱状のロールと、このロールの外周面に沿った断面円弧形状を有し液体を収容する凹部が前記ロールの外周面に対面配置されている受け型とを備え、ロールと受け型の凹部との間に供給される基材が、受け型の凹部に収容されている液体中でロールと受け型の凹部との間で圧締されて厚み方向に圧縮され、ロール及び受け型の凹部間通過に伴う圧締の解放による基材の圧縮回復によって基材への液体含浸が行われることを特徴とする。
【0009】
第2に、上記第1の発明において、受け型の凹部が、ロール外周の曲率半径よりも大きい形状を有することを特徴とする。
【0010】
第3に、上記第2の発明において、ロールと受け型の凹部との間に形成される基材入側の隙間が基材の厚みよりも大きいことを特徴とする。
【0011】
第4に、上記第1ないし第3の発明において、ロール及び受け型の凹部の少なくとも一方の表面に複数の突起が形成されていることを特徴とする。
【0012】
第5に、本発明の基材への液体含浸方法は、円柱状のロールと、このロールの外周面に沿った断面円弧形状を有し液体を収容した凹部を前記ロールの外周面に対面配置した受け型との間に基材を供給し、ロールの回転により基材を搬送することによって、ロールと受け型の凹部との間で基材を湾曲させつつ圧締して液体中で厚み方向に圧縮変形させ、基材のロール及び凹部間通過に伴う圧締の解放によって基材の圧縮を回復させ、この基材の圧縮回復により基材への液体含浸を行うことを特徴とする。
【0013】
第6に、上記第5の発明において、ロールと受け型の凹部との間の基材入側及び基材出側の隙間を内側の隙間よりも大きくし、この基材入側の隙間に基材を供給し、基材を搬送することによって、ロールと受け型の凹部との間で、基材入側から内側の隙間最小位置まで基材を漸次圧締して厚み方向に圧縮変形させ、隙間最小位置から基材出側まで圧締を漸次解放して基材の圧縮を回復させ、この基材の圧縮回復により基材への液体含浸を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
上記第1の発明によれば、ロールの外周面に沿った断面円弧形状の凹部を有する受け型を備え、凹部において液体を収容するので、ロールを完全に浸漬させるほどの大きな液体槽が不要であり、多量の液体も必要としない。また、ロール及び受け型の凹部間で圧締及び開圧が行われて基材への液体含浸が行われるので、少ない液量で効率よく基材に液体を含浸させることができる。また、装置が大型化しないという利点も有する。
【0015】
上記第2の発明によれば、受け型の凹部がロール外径の曲率半径よりも大きい形状を有するので、基材が漸次圧締され、また漸次開圧され、より効果的に基材内部に液体を含浸させることができる。
【0016】
上記第3の発明によれば、ロールと受け型の凹部との間に形成される基材入側の隙間が基材の厚みよりも大きいので、ロールと受け型の凹部との間への基材の挿入が容易となり、液体含浸を効率よく行うことができる。
【0017】
上記第4の発明によれば、ロールまたは受け型の凹部の表面の突起により、基材の圧縮回復が繰り返されるので、より一層効果的に基材内部に液体を含浸させることができる。
【0018】
上記第5の発明によれば、ロールと受け型の凹部との間で基材を湾曲させつつ圧締して液体中で厚み方向に圧縮変形させ、基材のロール及び凹部間の通過に伴う圧締の解放によって基材の圧縮を回復させ、この基材の圧縮回復により基材への液体含浸を行っているので、少ない液量で効率よく基材に液体を含浸させることができる。
【0019】
上記第6の発明によれば、ロールと受け型の凹部との間で、基材入側から内側の隙間最小位置まで基材を漸次圧締して厚み方向に圧縮変形させ、隙間最小位置から基材出側まで圧締を漸次解放して基材の圧縮を回復させ、この基材の圧縮回復により基材への液体含浸を行っているので、少ない液量でより一層効率よく基材に液体を含浸させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】液体含浸装置の一実施形態を示す概略図であり、(a)は側断面図、(b)は正面図である。
【図2】スパイラル状突条が外周面に形成されているロールの斜視図である。
【図3】図2のロールを備えた液体含浸装置の要部側断面図である。
【図4】格子状突条が外周面に形成されているロールの斜視図である。
【図5】格子状突条が表面に形成されている凹部を有する受け型の斜視図である。
【図6】図4のロールと図5の受け型を備えた液体含浸装置の要部側断面図である。
【図7】従来の液体含浸装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して本発明を詳細に説明する。図1は、本発明の液体含浸装置の一実施形態を示す概略図であり、(a)は側断面図、(b)は正面図である。
【0022】
本実施形態にかかる液体含浸装置1は、外周面が平滑な円柱状のロール2と、その下方に、液体30を収容する凹部3を有する受け型4を備えている。ロール2は、駆動モータ5から駆動力を受けた駆動軸6が回転駆動することにより回転する。受け型4の凹部3は、ロール2の下側にロール2外周面に対面して配置され、かつ、ロール2外周面に沿った平滑な曲面を有し、その断面が円弧形状であり断面視略半円状の形状を有している。この液体含浸装置1は、ロール2と受け型4の凹部3との間で基材20を厚み方向に任意の圧縮率で圧締できるように、ロール2と受け型4の凹部3との間の隙間7を任意に設定できるように構成されている。被処理材である基材20は、液体含浸装置1の前段に備えた図示しない搬送ロールによって搬送され、ロール2と受け型4の凹部3との間に供給される。ロール2と受け型4の凹部3との間に基材20が供給されると、基材20は、ロール2外周面及びその対向面である受け型4の凹部3の曲面で圧締され、円弧状に湾曲変形し、ロール2の回転により搬送される。ロール2及び受け型4の凹部3間通過後、基材20は圧締から解放される。基材20は圧締により厚み方向に圧縮変形し、圧締の解放を受けて基材20の圧縮が回復する。この基材20の圧縮からの回復により、凹部3に収容された液体30がなかば強制的に基材20内部に吸引され、基材20への液体30の含浸が行われる。
【0023】
ロール2は、鉄等の金属製のものやその周囲をウレタンゴム等の合成ゴムで被覆したものが用いられる。受け型4は、鉄等の金属製のものが用いられる。
【0024】
本実施形態では、受け型4の凹部3の曲面の曲率半径が、ロール2外周の曲率半径よりも大きくされ、凹部3の最深部において凹部3とロール2との間の隙間7が最小になるように受け型4の凹部3に対してロール2が配設されている。このような液体含浸装置1では、ロール2と受け型4の凹部3との間に形成される隙間7が基材20の入側及び出側において最大となり、内側方向、つまり凹部3の最深部に向かって徐々に小さくなる。基材20入側から基材20の搬送方向に隙間7が徐々に小さくなるため基材20に対する圧締圧が徐々に増加し、その圧締圧は凹部3の最深部において最大となる。凹部3の最深部を経ると隙間7が徐々に大きくなるため圧締圧が減少していく。したがって、このような液体含浸装置1に基材20を供給すると、基材20の圧縮とその圧縮からの回復が漸次行われるため、圧縮回復に伴う液体30の吸引も漸次行われて基材20内部に液体30が含浸しやすくなり、少ない液量で基材20に液体30を効率よく含浸させることができる。
【0025】
本実施形態では、ロール2と受け型4の凹部3との間に形成される隙間7の最小値が、基材20厚みの80%以下(圧縮率20%以上)、なかでも基材20厚みの40〜60%(圧縮率が40〜60%)になるように設定することが好ましい。かかる範囲内では、基材20内部に液体30を効果的に含浸させることができる。もちろん、隙間7の最小値は基材20が破壊されない程度に設定されるものであり、例えば、隙間7の最小値の下限は基材20厚みの30%(圧縮率の上限は70%)程度とされる。
【0026】
基材20入側の隙間71の大きさは、用いる基材20の材質、厚み等に応じて、例えば、隙間7の最小値の4〜10倍程度とすることができる。また、基材20挿入の容易さ、基材20の湾曲変形のしやすさ等を考慮して、基材20入側の隙間71を基材20の厚みよりも大きくすることが好ましい。
【0027】
被処理材である基材20としては、圧縮回復によって液体の含浸を行うことができるものであれば問わないが、ロータリー単板やスライス単板等の木質材料、インシュレーションボード、不織布や織物等の繊維状のマット等が例示される。基材20の厚さは、特に限定されないが、例えば、0.2mm〜5mm程度のものが用いられる。また、湾曲変形可能に柔軟性を有しているものが用いられる。
【0028】
ロール2及び受け型4の凹部3間での基材20の圧締に際し、基材20に加える圧力は、一般的には、20〜200kg/cmの範囲の線圧が例示される。線圧が200kg/cmを超えると、基材20に破壊が生じ、変形や割れが起こりやすくなる。圧力の設定は、基材20の圧縮率によっても規定され、圧縮率としては基材20が破壊しない程度で適宜設定されるが、一般的には20〜70%の圧縮率となる。
【0029】
なお、本願明細書において、圧縮率は(圧縮前の基材の厚さ−圧縮後の基材の厚さ)/(圧縮前の基材の厚さ)×100(%)で示される。
【0030】
基材20の搬送スピードは、上記した圧力の大きさ、基材20の種類、比重、厚み等を考慮し、1〜20m/分の範囲において適宜設定される。なお、基材20の搬送は、駆動モータ5によるロール2の回転ではなく、搬送ロールによる基材20の供給に伴うロール2の回転で行われるものであってもよい。
【0031】
基材20に含浸させる液体30としては、耐磨耗性や表面硬度等の機械的強度を付与し、外観の向上を図るべく樹脂液が用いられてもよいし、防腐剤、防カビ剤、防虫剤、防火剤等の薬液が用いられてもよい。また、基材20を着色するために染色液が用いられてもよい。液体30はこれらに限定されるものではなく各種のものであってよく、基材20の用途に応じて適宜選択すればよい。これらの液体30は、基材20への含浸を容易にするために、1000mPa・s以下の粘度に調製されることが好ましい。
【0032】
基材20である木質材料に液体30を効率よく含浸させるために、あらかじめ木質材料を80℃〜100℃程度の高温水中での煮沸、100℃〜200℃程度の水蒸気中での蒸煮、アルカリ処理、漂白処理等の処理を施して、木質材料内部の抽出成分の除去、細胞壁内の透過性阻害物質を除去しておくことがよい。また、ロール2や受け型4の一方または両方を加熱したり、含浸する液体30を加温したり、基材20をあらかじめ加温しておいてもよい。
【0033】
上記した実施形態では、ロール2と受け型4の凹部3との間に形成される隙間7が基材20の入側及び出側において最大になり、凹部3の最深部において最小になるように受け型4の凹部3に対してロール2が配設されているが、これに限定されることなく、例えば、基材20の出側もしくは入側方向にロール2を平行移動して凹部3の最深部以外の箇所において隙間7が最小になるようにロール2を配設してもよい。また、凹部3は、断面形状が半円状ではなく、その半円の1/2〜4/5程度の長さの円弧状に形成されていてもよい。このように様々なバリエーションの液体含浸装置1が考慮される。
【0034】
また、上記実施形態では、ロール2の外周面及び受け型4の凹部3の曲面が平滑なものを用いているが、ロール2及び受け型4の凹部3の少なくとも一方の表面に複数の突起8を形成したものを用いてもよい。突起8の高さは、100μm以上3mm以下が好ましく、突起8の形状は、例えば、スパイラル状や格子状等が例示される。
【0035】
図2は、スパイラル状突条9が外周面に形成されているロール2の斜視図であり、図3は、図2のロール2を備えた液体含浸装置の要部側断面図である。スパイラル状突条9はロール2の回転軸方向に対して任意の角度、例えば、5〜45°の範囲で傾斜して形成される。図2のロール2では、15°程度傾斜しているスパイラル状突条9が形成され、突条の高さは2mm、幅が5mm、隣り合う突条間の間隔が5mmである。図3に示すように、ロール2外周面では、スパイラル状突条9が形成されている部分が凸部分10、それ以外の部分が凹部分11となっており、凹部分11は基材20の面によって全部または部分的に閉塞されるので液体30が保持されやすくなっている。上述したように、基材20への液体30含浸は、圧縮変形した基材20の回復に伴って基材20内部に液体30が吸引されるものであり、本実施形態においても、凸部分10で圧縮変形した基材20が隣接する凹部分11で回復し、その凹部分11に保持されている液体30が基材20に吸引されるので、効率よく含浸させることができる。また、本実施形態では、基材20の圧縮率が最大になるのは凸部分10である。外周面が平滑なロールで前記凸部分10における圧縮率と同じになるように圧締した場合の圧締圧と本実施形態のロール2の圧締圧とを比べると、本実施形態のロール2の方が総圧縮面積が少ないので圧締圧も小さくて済む。さらに本実施形態のロール2を用いることにより、基材20との摩擦力が向上するため、確実に基材20を搬送できる利点も有する。
【0036】
図4は、格子状突条12が外周面に形成されているロール2の斜視図であり、図5は、格子状突条12が表面に形成されている凹部3を有する受け型4の斜視図であり、図6は、図4のロール2と図5の受け型4を備えた液体含浸装置の要部側断面図である。格子状突条12は、ロール2の回転軸方向に対して任意の角度、例えば、5〜45°の範囲で傾斜している突条が交差して形成されている。図4のロール2及び図5の受け型4の凹部3では、15°程度傾斜し、交差している格子状突条12が形成され、突条の高さは2mm、幅が5mm、隣り合う突条間の間隔が5mmである。本実施形態においても、上記の図3のロール2を備えた液体含浸装置1と同じことがいえる。すなわち、凸部分13で圧縮変形した基材20が隣接する凹部分14で回復し、その凹部分14に保持されている液体30が基材20に吸引されるので、効率よく含浸させることができる。また、外周面が平滑なロールで前記凸部分13における圧縮率と同じになるように圧締した場合の圧締圧と本実施形態のロール2の圧締圧とを比べると、本実施形態のロール2の方が総圧縮面積が少ないので圧締圧も小さくて済む。さらに本実施形態のロール2を用いることにより、基材20との摩擦力が向上するため、確実に基材20を搬送できる利点を有する。
【0037】
突起8の形状は、上記したスパイラル状や格子状に限定されるものではない。例えば、ドット状であってもよい。ドット状の場合、外径5mmの円柱状の多数の突起がロールの回転方向及び回転方向と直交する方向または交差する方向に小間隔毎に設けられる。
【0038】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【実施例】
【0039】
<実施例1>
厚さ2.5mmの気乾状態のスギロータリー単板を、図1の液体含浸装置の金属製のロール(φ400mm)と受け型の凹部との間に供給し、圧締圧30kg/cm、ロール送り速度6m/分の条件で加圧搬送して、樹脂含浸単板を得た。ロールと受け型の凹部との間の最小クリアランスは1.5mmであり、最小クリアランスにおける圧縮率は40%であった。なお、受け型の凹部には濃度20%のフェノール樹脂液(PL3725)を受け型の側面から一定量供給しており、その樹脂液の保持量は約4リットルである。また、前記ロールの外周面は平滑であり、受け型の凹部は平滑な曲面を有している。
【0040】
樹脂含浸単板の樹脂液の含有率は、木材重量に対し、約110%であった。その後、含水率15%まで乾燥し、次いで、樹脂未含浸の単板4枚の最表面に前記樹脂含浸単板を積層し、ユリアメラミン樹脂接着剤により140℃、圧力1.2Mpa、8分間の条件でプレス成形してスギ合板を得た。
【0041】
得られたスギ合板の表面硬度をブリネル硬度(JIS Z−2101)により測定したところ、11.7MPaであった。また、樹脂未含浸の単板で作製したスギ合板について表面硬度を測定したところ、平均4.2MPaであった。
<実施例2>
図1の液体含浸装置のロールに代えて、図2に示すスパイラル状突条が外周面に形成されている金属製のロールを備えた液体含浸装置を用いた。受け型の凹部は平滑な曲面を有している。
【0042】
厚さ2.5mmの気乾状態のスギロータリー単板を、ロールと受け型の凹部との間に供給し、圧締圧15kg/cm、ロール送り速度9m/分の条件で加圧搬送して、樹脂含浸単板を得た。ロールの凸部分と受け型の凹部との間の最小クリアランスは1.5mmであり、最小クリアランスにおける圧縮率は40%であった。なお、受け型の凹部には濃度20%のフェノール樹脂液(PL3725)を受け型の側面から一定量供給しており、その樹脂液の保持量は約4リットルである。
【0043】
樹脂含浸単板の樹脂液の含有率は、木材重量に対し、約140%であった。その後、実施例1と同様にしてスギ合板を得、表面硬度を測定したところ、14.9MPaであった。
<実施例3>
図1の液体含浸装置のロール及び受け型に代えて、図4に示す格子状突条が外周面に形成されている金属製のロールと、図5に示す格子状突条が表面に形成されている凹部を有する受け型を備えた液体含浸装置を用いた。
【0044】
厚さ2.5mmの気乾状態のスギロータリー単板を、ロールと受け型の凹部との間に供給し、圧締圧15kg/cm、ロール送り速度9m/分の条件で加圧搬送して、樹脂含浸単板を得た。ロールの凸部分と受け型の凹部の凸部分との間の最小クリアランスは1.2mmであり、最小クリアランスにおける圧縮率は52%であった。なお、受け型の凹部には濃度20%のフェノール樹脂液(PL3725)を受け型の側面から一定量供給しており、その樹脂液の保持量は約4リットルである。
【0045】
樹脂含浸単板の樹脂液の含有率は、木材重量に対し、約180%であった。その後、実施例1と同様にしてスギ合板を得、表面硬度を測定したところ、19.8MPaであった。
<比較例>
厚さ2.5mmの気乾状態のスギロータリー単板を、図7に示した上下一対の金属製のロール(φ400mm)間に通し、圧締圧33kg/cm、ロール送り速度6m/分の条件で加圧搬送して、樹脂含浸単板を得た。ロール間の最小クリアランスは1.2mmであり、最小クリアランスにおける圧縮率は52%であった。なお、液体槽には濃度20%のフェノール樹脂液(PL3725)を側面から一定量供給しており、その樹脂液の保持量は約50リットルである。
【0046】
樹脂含浸単板の樹脂液の含有率は、木材重量に対し、65%であった。その後、実施例1と同様にしてスギ合板を得、表面硬度を測定したところ、7.5MPaであった。
【0047】
以上より、実施例1−3では比較例に比べて樹脂液が単板に効果的に含浸されており、このような樹脂含浸単板を用いて作製された合板は、良好な表面硬度を有していることが確認できた。
【符号の説明】
【0048】
1 液体含浸装置
2 ロール
3 凹部
4 受け型
7 隙間
8 突起
9 スパイラル状突条
12 格子状突条
20 基材
30 液体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材を加圧搬送する円柱状のロールと、このロールの外周面に沿った断面円弧形状を有し液体を収容する凹部が前記ロールの外周面に対面配置されている受け型とを備え、
ロールと受け型の凹部との間に供給される基材が、受け型の凹部に収容されている液体中でロールと受け型の凹部との間で圧締されて厚み方向に圧縮され、ロール及び受け型の凹部間通過に伴う圧締の解放による基材の圧縮回復によって基材への液体含浸が行われることを特徴とする液体含浸装置。
【請求項2】
受け型の凹部が、ロール外周の曲率半径よりも大きい形状を有することを特徴とする請求項1に記載の液体含浸装置。
【請求項3】
ロールと受け型の凹部との間に形成される基材入側の隙間が基材の厚みよりも大きいことを特徴とする請求項2に記載の液体含浸装置。
【請求項4】
ロール及び受け型の凹部の少なくとも一方の表面に複数の突起が形成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の液体含浸装置。
【請求項5】
円柱状のロールと、このロールの外周面に沿った断面円弧形状を有し液体を収容した凹部を前記ロールの外周面に対面配置した受け型との間に基材を供給し、ロールの回転により基材を搬送することによって、ロールと受け型の凹部との間で基材を湾曲させつつ圧締して液体中で厚み方向に圧縮変形させ、基材のロール及び凹部間通過に伴う圧締の解放によって基材の圧縮を回復させ、この基材の圧縮回復により基材への液体含浸を行うことを特徴とする基材への液体含浸方法。
【請求項6】
ロールと受け型の凹部との間の基材入側及び基材出側の隙間を内側の隙間よりも大きくし、この基材入側の隙間に基材を供給し、基材を搬送することによって、ロールと受け型の凹部との間で、基材入側から内側の隙間最小位置まで基材を漸次圧締して厚み方向に圧縮変形させ、隙間最小位置から基材出側まで圧締を漸次解放して基材の圧縮を回復させ、この基材の圧縮回復により基材への液体含浸を行うことを特徴とする請求項5に記載の基材への液体含浸方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−93108(P2011−93108A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−246350(P2009−246350)
【出願日】平成21年10月27日(2009.10.27)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】