説明

液体汲み上げ装置および液体汲み上げ方法

【課題】ランニングコストを抑制しながらも、特に海水をはじめとする液体を汲み上げることができる液体汲み上げ装置および液体汲み上げ方法を提供する。
【解決手段】液体を収容可能な第1収容部11を有するとともに、第1収容部に収容された液体を外部に流出させる汲み上げ配管14が設けられた第1容器本体10と、第1容器本体を収容するとともに、当該第1容器本体との間に液体を収容可能な第2収容部21を有する第2容器本体20と、を備える。第1容器本体は、第1収容部に液体が収容された状態で、第2容器本体の第2収容部への液体の導入に伴って浮上し、汲み上げ配管は、第1容器本体10が浮上した状態でサイフォンを成立させることで、第1収容部に収容された液体を外部に流出させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に海水をはじめとする液体を汲み上げる液体汲み上げ装置および液体汲み上げ方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、海洋性の微生物を人工的に増殖させる装置として、例えば特許文献1に示される培養装置が知られている。こうした海洋性の微生物の増殖は、培養槽に収容された海水に太陽光を当てながら曝気して行われることから、培養槽を海岸近くに設置して、ポンプ等で培養槽に海水を汲み上げることが多い。
【0003】
そして、近年では、バイオ燃料(炭化水素やバイオディーゼル)や、アスタキサンチン等の生理活性物質を産生することができる海洋性の微生物(藻類)が注目されており、このような藻類を大量に培養し、石油に換わるエネルギーとして利用したり、薬や化粧品、食品等に利用したりすることが検討されている。また、海洋性の微生物は養殖魚のエサとして利用されるが、養殖魚の消費拡大に伴って、海洋性の微生物の需要が拡大している。
【0004】
このように、近年、海洋性の微生物の用途拡大や需要拡大に伴って、海洋性の微生物をより大量に増殖させることが望まれており、こうした要求に応えるべく、培養槽の大型化が検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平07−16091号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のように、海洋性の微生物を増殖させるための培養槽を大型化すると、当然のこととして、培養液としての海水がより大量に必要となり、海水を汲み上げるためのより大きなポンプ動力が必要となる。このように、培養槽を大型化すれば、それに比例して、より大きなポンプ動力が要求されるため、海洋性の微生物を大量に増殖させるのに伴って、同時にランニングコストも上昇してしまい、スケールメリットが得られにくいといった危惧があり、設備の大型化が進みにくいといった実態がある。
【0007】
本発明の目的は、ランニングコストを抑制しながらも、特に海水をはじめとする液体を汲み上げることができる液体汲み上げ装置および液体汲み上げ方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の液体汲み上げ装置は、液体を収容可能な第1収容部を有するとともに、当該第1収容部に収容された液体を外部に流出させる汲み上げ手段が設けられた第1容器本体と、前記第1容器本体を収容するとともに、当該第1容器本体との間に液体を収容可能な第2収容部を有する第2容器本体と、を備え、前記第1容器本体は、前記第1収容部に液体が収容された状態で、前記第2容器本体の前記第2収容部への液体の導入に伴って浮上し、前記汲み上げ手段は、前記第1容器本体が浮上した状態で前記第1収容部に収容された液体を外部に流出可能であることを特徴とする。
【0009】
また、前記第1容器本体には中空部が設けられていてもよい。
【0010】
また、前記汲み上げ手段が、少なくとも前記第1容器本体と一体となって浮上する汲み上げ配管を有し、前記汲み上げ配管は、一端を前記第1収容部内に位置させ、他端が前記第1収容部の外方に設けられた接続管に接続されるとともに、前記第1収容部の底面側から上方に延伸した後に下方に折り返す折り返し部を有し、少なくとも前記折り返し部が、前記第1収容部に収容された液体の液面上方にある第1の位置と、前記第1収容部に収容された液体中に潜没する第2の位置とに変位可能であって、前記第1の位置から前記第2の位置への変位によってサイフォンを成立させてもよい。
【0011】
また、前記折り返し部の鉛直上方に配置され、前記第1容器本体の浮上過程で前記折り返し部に接触して前記折り返し部の浮上を制限する押し込み部を備え、前記押し込み部によって前記折り返し部の浮上が制限された状態で前記第1容器本体が浮上することにより、当該折り返し部が液体中に潜没することとしてもよい。
【0012】
また、前記第1容器本体の第1収容部に外部から液体を導く液体導入管を備え、前記第1収容部の満水時に、当該第1収容部から溢れた液体が前記第2容器本体の第2収容部に収容されることとしてもよい。
【0013】
また、前記液体導入管は、一部または全部がフレキシブル管によって構成されるとともに、前記第1容器本体が最も下方に位置している状態で、前記第1収容部に液体を導出する導出口を当該第1収容部の上方に位置させる第1の姿勢を保持し、前記第1容器本体が鉛直上方に浮上する過程で、当該第1容器本体に接触して前記導出口を前記第1容器本体と前記第2容器本体との間に位置させる第2の姿勢に変位することとしてもよい。
【0014】
また、前記第2収容部に収容された液体を外部に排水する排水管を備え、前記排水管は、一端を前記第2収容部内に位置させ、他端を前記第2容器本体の外方において前記一端よりも下方に位置させるとともに、前記第2収容部の底面側から上方に延伸した後に、もっとも上方に位置する反転部を介して前記第2容器本体の外方において下方に延伸し、前記反転部は、前記第1容器本体がもっとも浮上した状態における前記第2収容部に収容された液面よりも下方に位置することとしてもよい。
【0015】
また、本発明の液体汲み上げ方法は、第2容器本体の第2収容部に収容された第1容器本体の第1収容部に液体を導く工程と、前記第2収容部に液体を導くことにより、浮力によって前記第1容器本体を浮上させる工程と、前記第1容器本体が浮上する過程で、当該第1容器本体に設けられた汲み上げ配管によってサイフォンを成立させて、当該汲み上げ配管を介して前記第1収容部に収容された液体を外部に流出させる工程と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ランニングコストを抑制しながら、特に海水をはじめとする液体を汲み上げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本実施形態の液体汲み上げ装置を模式的に示す断面図である。
【図2】液体汲み上げ装置によって海水を汲み上げる際の動作を説明する図である。
【図3】液体汲み上げ装置から海水を排水する際の動作を説明する図である。
【図4】培養装置の概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0019】
本実施形態の液体汲み上げ装置は、汲み上げ対象となる液体の種別や用途を特に問わず、また、いずれの場所に設置することも可能であるが、ここでは、液体汲み上げ装置を海岸に設置し、潮位の変化を利用して、海洋性の微生物を培養する培養槽に海水を汲み上げる場合について説明する。
【0020】
図1は、本実施形態の液体汲み上げ装置を模式的に示す断面図であり、図1(a)は鉛直方向の断面図、図1(b)は図1(a)におけるI(b)−I(b)線断面図である。ただし、図1(b)においては、説明の都合上、一部の部品を取り除いた状態を示している。この図に示すように、本実施形態の液体汲み上げ装置1は、第1容器本体10と、この第1容器本体10を収容する第2容器本体20とを備えている。
【0021】
第1容器本体10は、液体を収容可能であって上方を開口させた第1収容部11と、この第1収容部11の下方に位置し、外部から完全に密閉された中空部12とを備えている。第1容器本体10は、水平方向の断面が矩形状に形成されているが、第1収容部11の上部位置には、当該第1収容部11を囲繞形成する側壁(図中左側の側壁)の一部を水平方向に突出させた配管接続領域11aが設けられている。この配管接続領域11aは、第1収容部11の一部を構成するものであり、配管接続領域11aの高さ位置まで第1収容部11内に海水が満たされると、当該配管接続領域11aにも海水が流れ込むようになっている。
【0022】
この配管接続領域11aの底面には、鉛直方向に貫通する配管挿通孔13が形成されており、この配管挿通孔13に汲み上げ配管14が挿通されている(図1(b)においては不図示)。汲み上げ配管14は、一端14aと他端14bとの間にU字形の折り返し部14cが設けられたJ形状の鋼管によって構成されており、一端14aを第1収容部11の底面近傍に位置させるとともに、他端14bを配管挿通孔13に挿通させている。したがって、汲み上げ配管14は、第1収容部11内において、その底面近傍から上方に延伸した後、折り返し部14cをもっとも上方に位置させて、配管接続領域11a内において、配管挿通孔13に向けて下方に延伸することとなる。
【0023】
この汲み上げ配管14は、第1収容部11内に設けられたガイド15(図1(b)においては不図示)により、鉛直方向に昇降可能に保持されている。より詳細に説明すると、第1収容部11の底面には、圧縮コイルバネからなる弾性部材16が収容された収容器17が設けられており、この収容器17内に、汲み上げ配管14の一端14aを進入させている。
【0024】
また、汲み上げ配管14の一端14aには突片14dが設けられており、この突片14dに弾性部材16を接触させている。この弾性部材16は、突片14dに対して、鉛直下方から上方に付勢する弾性力を作用させており、これによって、汲み上げ配管14は、図1(a)に示すように、折り返し部14cが第1収容部11の上部開口よりも上方にある第1の位置に保持されることとなる。つまり、汲み上げ配管14が第1の位置にある場合には、第1収容部11が満水となった場合にも、折り返し部14cが液面上方に突出することとなる。なお、汲み上げ配管14の他端14bには、第1収容部11の外部に設けられたフレキシブル管からなる接続管18が接続されている。
【0025】
上記の構成からなる第1容器本体10を収容するのが第2容器本体20であるが、この第2容器本体20は、第1容器本体10を収容することから、第1容器本体10よりも容積が大きく、また、その高さも第1容器本体10よりも高くなっている。第2容器本体20は、上方を開口させた第2収容部21を備えており、この第2収容部21内に第1容器本体10を収容している。第2収容部21の底面には、第1容器本体10を支持する支持部22が設けられており、第1容器本体10の底面と、第2収容部21の底面とが非接触状態に維持されるようにしている。
【0026】
そして、第2容器本体20の側壁には、海水を外部から第2容器本体20内に導入する液体導入管23が固設されている。この液体導入管23は、第2容器本体20の側壁に形成された貫通孔に固定される鋼製のフランジ部23aと、鋼製配管からなる本体部23bと、これらフランジ部23aおよび本体部23bを接続するフレキシブル管からなる可撓部23cと、を備えて構成される。フランジ部23aには、液体導入管23内に外部から海水を導く導入口23dが設けられており、本体部23bには、導入口23dから導かれた海水を導出する導出口23eが設けられている。なお、本体部23bには、不図示の逆止弁が設けられており、導入口23dから導出口23eに向けてのみ、海水が流通するように構成されている。
【0027】
また、液体導入管23は、第1容器本体10が支持部22によって支持された状態、すなわち、第1容器本体10が最も下方に位置した状態で、導出口23eが第1収容部11の上方に位置する第1の姿勢を保持している。したがって、第1容器本体10が最も下方に位置した状態で液体導入管23から導入された海水は、第2収容部21内に収容された第1容器本体10の第1収容部11に導かれることとなる。
【0028】
一方で、第2容器本体20には、第2収容部21から海水を外部に排水するための排水管24が固定されている。この排水管24は、一端24aと他端24bとの間にU字形の反転部24cが設けられたU形状の鋼管によって構成されており、一端24aを第2収容部21の底面近傍に位置させるとともに、他端24bを、第2容器本体20の外方において、一端24aよりも下方に位置させている。したがって、排水管24は、第2収容部21内において、その底面近傍から上方に延伸した後、反転部24cをもっとも上方に位置させて、第2容器本体20の外方において、第2収容部21の底面よりも下方まで鉛直方向に延伸することとなる。
【0029】
そして、この排水管24は、反転部24cが、上記の液体導入管23よりも上方であって、第2収容部21の開口よりも下方に位置するように固定されており、第2収容部21が満水となった場合に、反転部24cが液面よりも下方に位置して、海水中に潜没するようになっている。
【0030】
なお、図1(b)に示すように、第2容器本体20は、第1容器本体10を収容したときに、第1容器本体10の側壁外周面と、第2収容部21の側壁内周面との間に、全周に亘って間隙が形成される寸法関係を維持している。そして、第1容器本体10の側壁外周面には、当該第1容器本体10の鉛直方向への昇降をガイドするガイド手段30が設けられている。このガイド手段30は、ガイドローラ30aを備えており、第2容器本体20に対して第1容器本体10が鉛直方向にスムーズに昇降することができるようになっている。また、このガイド手段30により、第2容器本体20の第2収容部21内において、第1容器本体10の水平方向への移動が規制されている。
【0031】
また、図1(a)に示すように、第2容器本体20の上方、より詳細には、汲み上げ配管14の折り返し部14cの鉛直上方には、押し込み部31が設けられている。この押し込み部31は、第1容器本体10が鉛直上方に浮上する過程で、当該第1容器本体10と一体となって上方に移動する汲み上げ配管14の折り返し部14cに接触する位置に設けられている。つまり、第1容器本体10が鉛直上方に浮上すると、その過程で、汲み上げ配管14の折り返し部14cが押し込み部31に接触し、当該汲み上げ配管14のそれ以上の浮上が制限されることとなるが、その詳細については後述する。
【0032】
次に、液体汲み上げ装置1によって海水を汲み上げる際の動作について説明する。
【0033】
図2は、液体汲み上げ装置1によって海水を汲み上げる際の動作を説明する図である。既に説明したとおり、本実施形態においては、液体汲み上げ装置1が海岸に設置されているが、予め満潮時、干潮時等の潮位を考慮したうえで、液体汲み上げ装置1の各寸法が設計されている。ここでは、干潮時の潮位は、排水管24の他端24bよりも低くなり、満潮時の潮位は、排水管24の反転部24cよりも高くなるものとする。
【0034】
まず、液体汲み上げ装置1が空の状態で、満潮時に向けて徐々に潮位が高くなり、潮位が液体導入管23の高さ位置に達したとする。すると、海水が液体導入管23に流入するとともに、当該液体導入管23から第1容器本体10の第1収容部11に海水が流れ込む。このようにして、第1収容部11が満水になると、図2(b)に示すように、第1収容部11から海水が溢れ出すとともに、当該溢れ出した海水が、第2容器本体20の第2収容部21に流れ込む。
【0035】
このようにして第2収容部21に海水が流れ込んだ結果、第2収容部21内における海水の水位がある高さになると、浮力によって第1容器本体10が鉛直上方に浮上する。このとき、図2(c)に示すように、鉛直上方に浮上する第1容器本体10の上端縁によって液体導入管23が押し上げられ、当該液体導入管23は、その導出口23eが第1容器本体10と第2容器本体20との間の間隙に位置する第2の姿勢に変位する。したがって、今度は、液体導入管23から、第2容器本体20の第2収容部21に直接海水が導かれることとなり、引き続き第2収容部21内における海水の水位が上昇し、これに伴って第1容器本体10が引き続き浮上することとなる。
【0036】
このようにして第1容器本体10が浮上する過程では、第1収容部11よりも上方に突出する汲み上げ配管14の折り返し部14cが押し込み部31に接触する。上記したとおり、汲み上げ配管14は、第1収容部11内において鉛直方向に昇降可能に保持されており、また、汲み上げ配管14は、弾性部材16の付勢力によって第1の位置に保持されている。したがって、折り返し部14cが押し込み部31に接触した状態で、さらに第1容器本体10に浮力が作用すると、汲み上げ配管14と、第1収容部11の底面との間で弾性部材16が圧縮され、押し込み部31と折り返し部14cとの接触状態が維持される。
【0037】
このとき、第1容器本体10と汲み上げ配管14とは、鉛直方向に相対移動が可能であるため、第1容器本体10は引き続き浮上することとなる。これにより、図2(d)に示すように、汲み上げ配管14の折り返し部14cが、第1収容部11に収容された海水に完全に潜没した第2の位置に変位することとなる。このように、折り返し部14cが海水に完全に潜没すると、汲み上げ配管14においてサイフォンが成立し、第1収容部11に収容された海水が、汲み上げ配管14を介して接続管18に導かれることとなる。
【0038】
このように、本実施形態の液体汲み上げ装置1によれば、水位の変化とサイフォンの原理によって、何らの動力を要することなく、海水を汲み上げることが可能となる。
【0039】
図3は、液体汲み上げ装置1から海水を排水する際の動作を説明する図である。いま、上記のようにして海水が汲み上げられ、第1収容部11が空になったとする。そして、図3(a)に示すように、満潮時に、潮位が排水管24の反転部24cよりも高くなると、排水管24内が完全に海水で満たされる。その後、徐々に潮位が下がると、予め排水管24においてサイフォンが成立していることから、排水管24を介して、第2収容部21から海洋に向けて海水が排出される。このように、第2収容部21内の海水の水位が徐々に下がるのに伴って、第1容器本体10が降下して支持部22上に載置され、図3(b)に示すように、第2収容部21が空となって再び元の状態となる。
【0040】
また、第1容器本体10が降下する過程では、汲み上げ配管14が弾性部材16の弾性力によって第2の位置から第1の位置へと復帰するとともに、液体導入管23が第2の姿勢から第1の姿勢に復帰することとなる。
【0041】
以上のように、本実施形態の液体汲み上げ装置1によれば、動力を何ら要することなく、海水を何度も繰り返し汲み上げることが可能となる。したがって、例えば、海洋性の微生物を大量に増殖させるべく、大型の培養槽に大量の海水を汲み上げることとなったとしても、ランニングコストの上昇を抑制することができる。
【0042】
なお、本実施形態においては、液体汲み上げ装置1によって汲み上げた海水を、海洋性の微生物を増殖させる培養装置に利用することとしている。培養装置の具体的な構成は特に問わないが、上記の液体汲み上げ装置1に加えて、以下に説明する本実施形態の培養装置50を用いることにより、海水の汲み上げから微生物の回収までに要する動力を飛躍的に低減することができる培養システムが実現される。
【0043】
図4は、培養装置の概念図である。本実施形態の培養装置50は、複数の培養槽51(培養槽51a〜51d)を備えており、これら各培養槽51を、高さ位置を異にして配置している。そして、複数の培養槽51のうち、もっとも上方に位置する培養槽51aに、上記の液体汲み上げ装置1の接続管18から海水を流出させ、各培養槽51内に一定量以上の海水が満たされると、下方の培養槽51に海水が流出するようにしている。
【0044】
このように、複数の培養槽51間を海水が順次流下する構成により、周囲のガス成分(例えば、二酸化炭素や酸素)が海水中に取り込まれるとともに、攪拌作用がもたらされることとなる。したがって、例えば、培養槽51aに目的の微生物を植種するとともに、増殖に必要な時間をかけて海水を流下させれば、最も下方に位置する培養槽51dから増殖した微生物を回収することができる。
【0045】
このように、本実施形態の培養装置50によれば、海水が流下する過程で攪拌作用がもたらされるので、攪拌のためのポンプ動力を完全に不要もしくは低減することが可能となる。したがって、上記の液体汲み上げ装置1と培養装置50とを組み合わせて採用することで、海水の汲み上げに必要となる動力や攪拌のための動力を極めて低減することが可能となり、ランニングコストを一層低減することができる。
【0046】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0047】
例えば、上記実施形態においては、第1収容部11から海水を汲み上げる汲み上げ手段として、汲み上げ配管14を用いることとしたが、汲み上げ手段はこれに限られるものではない。例えば、第1収容部11の底部近傍に開閉栓を設けるとともに、当該開閉栓を手動もしくは自動で開閉することによって、海水の自重作用で第1収容部11から海水を流出させることとしても構わない。
【0048】
また、上方に浮上した第1収容部11をシリンダ等で回動させることで、第1収容部11から海水を所望の装置に流出させることとしてもよい。いずれにしても、第1収容部11から海水を汲み上げるための汲み上げ手段は上記の構成に限られるものではない。また、第2収容部21から海水を排出するための排水手段も排水管24の構成に限定されるものではない。ただし、上記実施形態のように、サイフォンの原理を利用して、海水の汲み上げや排水を全て行うこととすれば、一切の動力や人手を不要とすることができる。
【0049】
なお、上記実施形態においては、第1収容部11に海水を導入した後に、第2収容部21に海水を導入することとしたが、第1収容部11と第2収容部21とに同時に海水を導入することとしてもよい。また、上記実施形態においては、液体導入管23によって第1収容部11に海水を導入することとしたが、第1収容部11に海水を導入するための手段はこれに限らない。また、液体導入管23によって第1収容部11に海水を導入することとした場合に、液体導入管23全体をフレキシブル管で構成することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、特に海水をはじめとする液体を汲み上げる液体汲み上げ装置および液体汲み上げ方法に利用することができる。
【符号の説明】
【0051】
1 …液体汲み上げ装置
10 …第1容器本体
11 …第1収容部
12 …中空部
14 …汲み上げ配管
14a …一端
14b …他端
14c …折り返し部
18 …接続管
20 …第2容器本体
21 …第2収容部
23 …液体導入管
23e …導出口
24 …排水管
24a …一端
24b …他端
24c …反転部
31 …押し込み部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を収容可能な第1収容部を有するとともに、当該第1収容部に収容された液体を外部に流出させる汲み上げ手段が設けられた第1容器本体と、
前記第1容器本体を収容するとともに、当該第1容器本体との間に液体を収容可能な第2収容部を有する第2容器本体と、を備え、
前記第1容器本体は、
前記第1収容部に液体が収容された状態で、前記第2容器本体の前記第2収容部への液体の導入に伴って浮上し、
前記汲み上げ手段は、
前記第1容器本体が浮上した状態で前記第1収容部に収容された液体を外部に流出可能であることを特徴とする液体汲み上げ装置。
【請求項2】
前記第1容器本体には中空部が設けられていることを特徴とする請求項1記載の液体汲み上げ装置。
【請求項3】
前記汲み上げ手段は、
少なくとも前記第1容器本体と一体となって浮上する汲み上げ配管を有し、
前記汲み上げ配管は、
一端を前記第1収容部内に位置させ、他端が前記第1収容部の外方に設けられた接続管に接続されるとともに、前記第1収容部の底面側から上方に延伸した後に下方に折り返す折り返し部を有し、
少なくとも前記折り返し部が、前記第1収容部に収容された液体の液面上方にある第1の位置と、前記第1収容部に収容された液体中に潜没する第2の位置とに変位可能であって、前記第1の位置から前記第2の位置への変位によってサイフォンを成立させることを特徴とする請求項1または2記載の液体汲み上げ装置。
【請求項4】
前記折り返し部の鉛直上方に配置され、前記第1容器本体の浮上過程で前記折り返し部に接触して前記折り返し部の浮上を制限する押し込み部を備え、
前記押し込み部によって前記折り返し部の浮上が制限された状態で前記第1容器本体が浮上することにより、当該折り返し部が液体中に潜没することを特徴とする請求項3記載の液体汲み上げ装置。
【請求項5】
前記第1容器本体の第1収容部に外部から液体を導く液体導入管を備え、
前記第1収容部の満水時に、当該第1収容部から溢れた液体が前記第2容器本体の第2収容部に収容されることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の液体汲み上げ装置。
【請求項6】
前記液体導入管は、
一部または全部がフレキシブル管によって構成されるとともに、前記第1容器本体が最も下方に位置している状態で、前記第1収容部に液体を導出する導出口を当該第1収容部の上方に位置させる第1の姿勢を保持し、
前記第1容器本体が鉛直上方に浮上する過程で、当該第1容器本体に接触して前記導出口を前記第1容器本体と前記第2容器本体との間に位置させる第2の姿勢に変位することを特徴とする請求項5記載の液体汲み上げ装置。
【請求項7】
前記第2収容部に収容された液体を外部に排水する排水管を備え、
前記排水管は、
一端を前記第2収容部内に位置させ、他端を前記第2容器本体の外方において前記一端よりも下方に位置させるとともに、前記第2収容部の底面側から上方に延伸した後に、もっとも上方に位置する反転部を介して前記第2容器本体の外方において下方に延伸し、
前記反転部は、
前記第1容器本体がもっとも浮上した状態における前記第2収容部に収容された液面よりも下方に位置することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の液体汲み上げ装置。
【請求項8】
第2容器本体の第2収容部に収容された第1容器本体の第1収容部に液体を導く工程と、
前記第2収容部に液体を導くことにより、浮力によって前記第1容器本体を浮上させる工程と、
前記第1容器本体が浮上する過程で、当該第1容器本体に設けられた汲み上げ配管によってサイフォンを成立させて、当該汲み上げ配管を介して前記第1収容部に収容された液体を外部に流出させる工程と、を含むことを特徴とする液体汲み上げ方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−27326(P2013−27326A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−163864(P2011−163864)
【出願日】平成23年7月27日(2011.7.27)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】