説明

液体現像剤、および液体現像剤を用いた画像形成装置

【課題】現像効率に優れた液体現像剤、および液体現像剤を用いた画像形成装置を実現する。
【解決手段】絶縁性有機溶媒中に、結着樹脂と着色剤と電磁波吸収剤とを含有するトナー、および荷電制御剤が分散した液体現像剤であって、ゼータ電位の絶対値が60〜150mVであることを特徴とする液体現像剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体現像剤、および液体現像剤を用いた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式における現像法としては、粉体のトナー(乾式現像剤)を用いる乾式現像法が一般的である。また、近年、絶縁性を有する液体キャリアにトナーを分散させた液体現像剤を用いる湿式現像法が知られている。
また、電子写真方式において、紙などの記録媒体上に転写された画像を定着させる方法としては、従来、ヒートロール方式が主に採用されている。
しかし、ヒートロール方式は、画像が転写された記録媒体を加熱したロールの間を通過させることで、トナーを記録媒体に熱圧着させるものであるため、定着部で目詰まりが生じたり、画像が押し潰されるため解像度が低下したりすることがあった。そのため、使用する記録媒体の種類が制限される等の問題があった。また、ヒートロール方式は、記録媒体に転写された画像を定着させるのに多大な熱エネルギーを必要とするため、消費電力が増える傾向にある。そのため、ヒートロール方式は、近年の省エネルギー化の傾向を考慮すると必ずしも好適ではなかった。
【0003】
このような問題を解決するために、例えば特許文献1には、ヨウ素価130以上の油脂を含むトナー粒子を絶縁性の媒体に分散させた液体トナーが開示されている。該液体トナーは、トナー中に含まれたヨウ素価130以上の油脂が記録媒体上に定着された後、空気に触れることで固化することができ、消費電力の抑制が期待される。
また、UVなどを用いた化学反応により記録媒体上に転写された画像を定着させる方法が提案されている。
【0004】
しかし、特許文献1に記載の液体トナーでは、油脂を溶かす目的で金属類を含有したドライヤーを使用する場合、多くの熱エネルギーを消費することがあった。また、油脂が溶ける際に臭いが発生したり、定着に時間がかかったりするなどの問題があった。
一方、化学反応により画像を定着させる方法では、液体現像剤を用いて感光体上の静電潜像を現像する場合、液体現像剤や該液体現像剤に含まれる液体キャリアの抵抗が低いとにじみが発生したり、画像ボケが発生したりすることがあった。
【0005】
ところで、液体現像剤用の液体キャリアとしては、IsoperやNorperに代表される炭化水素系有機溶媒やシリコーンオイル、植物油などのキャリアオイルが知られている。そして、これらキャリアオイル中にトナーが分散して液体現像剤を構成する。液体現像剤は、トナー同士の凝集作用を防ぐことができるので、乾式現像剤に比べて粒子径の小さいトナーを用いることができ、解像度の高い画像形成を行うことができる。
【0006】
しかし、このような液体現像剤は、トナーを分散させるために低揮発性の溶媒(キャリアオイル)を用いているため、記録媒体上に画像を定着させる際にトナーが記録媒体上に定着しにくかったり、定着しても揮発せずに残存するキャリアオイルにより擦過性が低くなったりする場合があった。これを解決するには、例えば画像の定着前に複数の除去ローラを設置してキャリアオイルを除去すればよいが、装置の大型化や機構の複雑化といった新たな問題が生じることとなる。
【0007】
そこで、炭化水素系有機溶媒やシリコーンオイルなどの代替キャリアとして、近年、光硬化型モノマー液が用いられている。該光硬化型モノマー液は、アクリレートなどに代表される炭素同士の官能性不飽和基を有するモノマー、またはオリゴマーから構成される液体に、光重合開始剤(電磁波吸収剤)を分散または溶解させたものである。
光硬化型モノマー液は、紫外線などの光が照射されると前記光重合開始剤がラジカル反応を誘発し、炭素同士の官能性不飽和基を有するモノマー、またはオリゴマーが架橋して硬化する。従って、前記光硬化型モノマー液を用いた液体現像剤は、溶媒ごと記録媒体上に画像を定着させることができ、溶媒を除去するための部材の設置を省略できる。
【0008】
また、光硬化型モノマー液を用いた液体現像剤は、紫外線などの光を照射すると光重合開始剤(電磁波吸収剤)が光エネルギーを熱エネルギーに変換して熱を放出するので、該熱を利用して記録媒体上に画像を定着させることができ、従来のようなヒートロール方式を採用しなくてもよく、画像形成装置の消費エネルギーを抑えることができる。
しかし、上述したアクリレートに体表されるモノマー、またはオリゴマーは、極性を有するので溶媒の比抵抗が低く、現像時に感光体表面の電荷が液体現像剤に移動しやすい。その結果、感光体表面の電位が低下し、画像のにじみや画像ボケなどが発生する場合があった。
【0009】
そこで、例えば特許文献2、3には、高抵抗の光反応開始剤を用いることで抵抗を高めた光硬化型モノマー液を含有した液体現像剤が開示されている。
このように、光硬化型モノマー液を高抵抗にすることで、感光体表面の電位が低下するのを抑え、画像のにじみや画像ボケなどが発生するのを抑制できる。
【特許文献1】特開平8−272153号公報
【特許文献2】特開2003−57883号公報
【特許文献3】特開2005−352363号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献2、3に記載の液体現像剤では、必ずしも現像効率を十分に満足するものではなかった。そのため、記録媒体上に形成された画像の画質が低下しやすかった。
【0011】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、現像効率に優れた液体現像剤、および液体現像剤を用いた画像形成装置の実現を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは鋭意検討した結果、液体現像剤のゼータ電位を規定することで、トナーが適度に電気泳動して現像ローラから感光体へ適当に広がりながら飛翔しやすくなり、その結果、現像効率が向上することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち、本発明の液体現像剤は、絶縁性有機溶媒中に、結着樹脂と着色剤と電磁波吸収剤とを含有するトナー、および荷電制御剤が分散した液体現像剤であって、ゼータ電位の絶対値が60〜150mVであることを特徴とする。
ここで、前記電磁波吸収剤が、波長が750〜1100nmの近赤外領域を吸収することが好ましい。
また、前記トナーが酸化防止剤をさらに含有することが好ましい。
【0014】
また、本発明の画像形成装置は、前記液体現像剤を用いて記録媒体上に形成された画像に、光を照射して前記記録媒体上に画像を定着させる光定着手段を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、現像効率に優れた液体現像剤、および液体現像剤を用いた画像形成装置を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明を詳細に説明する。
[液体現像剤]
本発明の液体現像剤は、ゼータ電位の絶対値が60〜150mVである。ゼータ電位の絶対値が60mV以上であれば、トナーが電気泳動しやすくなるので、画像形成装置に用いた際に、現像ローラから感光体に飛翔しやすくなり、現像効率が向上する。
ところで、感光体上にトナーが適当な広がりをもたずに飛翔した場合、トナーが密に付着した部分と疎に付着した部分とが生じ、感光体上にてトナーの濃度ムラが発生しやすくなる傾向にある。その結果、トナーの濃度が部分的に低下して、現像効率が低下しやすくなる。ゼータ電位の絶対値が150mV以下であれば、トナーが適当に広がりながら飛翔するので、感光体上にて均一に付着しやすくなり、トナーの濃度ムラを軽減でき、現像効率を良好に維持できる。
ゼータ電位の絶対値は、60〜130mVが好ましく、60〜100mVがより好ましい。
【0017】
本発明において「ゼータ電位」とは、電気泳動の原理によって、液体現像剤中のトナーに外部から電場を印加した時のトナーの泳動速度から求められる電位のことである。また、「液体現像剤のゼータ電位」とは、後述する絶縁性有機溶媒で液体現像剤を8000倍に希釈したときの値である。
液体現像剤のゼータ電位は、以下のようにして求めることができる。
まず、絶縁性有機溶媒で液体現像剤を8000倍に希釈して希釈液を調製し、該希釈液のゼータ電位を測定し、これを液体現像剤のゼータ電位とする。希釈に用いる絶縁性有機溶媒は、液体現像剤を構成する絶縁性有機溶媒と同じ種類のものであってもよく、異なる種類のものでもよいが、同じ種類のものが好ましい。
【0018】
ゼータ電位の測定装置としては、電気泳動の原理を用いた装置が好ましく、例えば、大塚電子社製の「ELS−8000」、ベックマン・コールター社製の「DELSA440SX」、およびパティクルサイジングシステムズ社製の「NICOMP Model380」等が挙げられる。また、超音波法の原理による測定で代用することも可能であり、例えば、ルフト社製の「DT1200」等が適している。
【0019】
このような液体現像剤を得るためには、液体現像剤を構成する成分のうち、荷電制御剤の種類や添加量を調整すればよい。
以下、液体現像剤を構成する各成分について具体的に説明する。
本発明の液体現像剤は、絶縁性有機溶媒中にトナーおよび荷電制御剤が分散したものである。
【0020】
<絶縁性有機溶媒>
絶縁性有機溶媒としては、静電潜像を乱さない程度の抵抗値(1011〜1016Ω・cm程度)のものを使用する。また、絶縁性有機溶媒としては、臭気、毒性が無く、比較的引火点が高い溶媒が好ましい。
絶縁性有機溶媒としては、例えば、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素、ハロゲン化炭化水素、ポリシロキサン等が挙げられ、これらを単独で、または混合して用いることができる。特に、臭気、無害性、コストの点から、ノルマルパラフィン系溶媒、イソパラフィン系溶媒が好ましい。このような溶媒の具体例として、0号ソルベントL、0号ソルベントM、0号ソルベントH(いずれも日本石油化学社製)、アイソパーC、アイソパーE、アイソパーG、アイソパーH、アイソパーL、アイソパーM、アイソパーK、アイソパーV(いずれもエクソン化学社製)、シェルゾール71(シェル石油化学社製)、IPソルベント1016、IPソルベント1620、IPソルベント2028、IPソルベント2835(いずれも出光石油化学社製)、日石アイソゾール200、日石アイソゾール300、日石アイソゾール400(いずれも日本石油社製)等が挙げられる。
【0021】
<トナー>
トナーは、結着樹脂と、着色剤と、電磁波吸収剤とをトナー原料として含有する。
(結着樹脂)
本発明に用いる結着樹脂としては、熱可塑性を有する樹脂が好ましい。例えば、熱可塑性飽和ポリエステル樹脂、スチレン−アクリル共重合体樹脂、スチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂、ポリオレフィン共重合体樹脂(特にエチレン系共重合体)、エポキシ樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂等を挙げることができ、これらを単独で、または混合して用いることができる。
また、必要に応じて、パラフィンワックス、ポリオレフィン等の樹脂を離型剤として配合してもよい。これら離型剤の配合量は、結着樹脂100質量%中、20質量%以下が好ましい。
【0022】
これらの熱可塑性を有する樹脂の中でも、熱可塑性飽和ポリエステル樹脂、エチレン系共重合体、スチレン−アクリル共重合体樹脂、エポキシ樹脂等が好適に用いられる。特に熱可塑性飽和ポリエステル樹脂を用いることが好ましいが、これは、熱可塑性飽和ポリエステル樹脂は広範囲に熱特性等の物性を変化させることができるだけではなく、カラー画像を得る際に透光性が優れるために美しい色彩が得られ、また延展性や粘弾性に優れるために定着後の樹脂膜が強靱で、紙等の記録媒体との接着性が良いからである。
【0023】
熱可塑性飽和ポリエステル樹脂は、多価アルコールと多価カルボン酸の重縮合により得られる。重縮合の方法としては、通常公知の重縮合の方法を用いることができる。
多価アルコールとしては、特に限定されないが、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール等のプロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール等のブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール等のアルキレングリコール(脂肪族グリコール)およびこれらのアルキレンオキサイド付加物、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノール等のビスフェノール類およびこれらのアルキレンオキサイド付加物のフェノール系グリコール類、単環或いは多環ジオール等の脂環式及び芳香族ジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン等のトリオール等が挙げられ、これらを単独で、または2種以上混合して用いることができる。特に、ネオペンチルグリコール、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド2〜3モル付加物が、生成物であるポリエステル樹脂の安定性やコスト等の点で好ましい。アルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等が挙げられる。
【0024】
多価カルボン酸としては、特に限定されないが、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、フタル酸およびその変性酸(例えば、ヘキサヒドロ無水フタル酸)、イソフタル酸、テレフタル酸等の飽和または不飽和の2価塩基酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、メチルナディック酸等の3官能以上の飽和多価塩基酸、およびこれらの酸無水物、低級アルキルエステル等が挙げられる。これらを単独で、または2種以上混合して用いることができる。特に、イソフタル酸、テレフタル酸が、生成物であるポリエステル樹脂の安定性やコスト等の点で好ましい。
【0025】
結着樹脂は、ガラス転移温度(Tg)が30〜65℃であることが好ましく、45〜55℃であることがより好ましい。Tgが30℃未満であると、結着樹脂の粘度が低くなりすぎる傾向にあり、トナーを作製する際に、結着樹脂以外のトナー原料と混ざりにくくなる。一方、Tgが65℃を越えると、結着樹脂以外のトナー原料と混練させるには、温度を高く設定する必要があり、電磁波吸収剤が焼結してトナーの色調が黒く変色しやすくなることがある。
また、結着樹脂は、質量平均分子量が3000〜10000であることが好ましく、5000〜8000であることがより好ましい。質量平均分子量は、Tgの値に依存しやすく、Tgの値が大きくなるに連れて質量平均分子量の値も大きくなる傾向にある。
【0026】
(着色剤)
着色剤としては、公知の顔料や染料を用いることができる。
例えば黒色顔料としては、カーボンブラック、オイルファーネスブラック、チャンネルブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、アニリンブラック等のアジン系色素、金属塩アゾ色素、金属酸化物、複合金属酸化物などが挙げられる。
黄色顔料としては、カドミウムイエロー、ミネラルファストイエロー、ニッケルチタンイエロー、ネーブルスイエロー、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、ハンザイエロー10G、ベンジジンイエローGR、キノリンイエローレーキ、パーマネントイエローNCG、タートラジンレーキなどが挙げられる。
橙色顔料としては、モリブデンオレンジ、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、インダンスレンブリリアントオレンジRK、ベンジジンオレンジG、インダンスレンブリリアントオレンジGKなどが挙げられる。
赤色顔料としては、ベンガラ、カドミウムレッド、パーマネントレッド4R、リソールレッド、ピラゾロンレッド、ウォッチングレッドカルシウム塩、レーキレッドD、ブリリアントカーミン6B、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、アリザリンレーキ、ブリリアントカーミン3Bなどが挙げられる。
紫色顔料としては、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキなどが挙げられる。
青色顔料としては、コバルトブルー、アルカリブルー、ビクトリアブルーレーキ、フタロシアニンブルー、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー部分塩素化物、ファーストスカイブルー、インダンスレンブルーBCなどが挙げられる。
緑色顔料としては、クロムグリーン、酸化クロム、ピグメントグリーンB、マラカイトグリーンレーキなどが挙げられる。
着色剤の含有量は、結着樹脂100質量部に対して、1〜20質量部が好ましく、3〜10質量部がより好ましい。
【0027】
(電磁波吸収剤)
電磁波吸収剤は、波長が750〜1100nmの近赤外領域を吸収することが好ましく、より好ましくは800〜1000nmである。電磁波吸収剤の吸収波長領域が前記近赤外領域であれば、上述した着色剤の色調が変化しにくくなる。
このような電磁波吸収剤としては、近赤外線吸収剤が好ましい。例えばビスイミニウム誘導体;ペンタメチンベンゾインドリウム化合物、ペンタメチンベンゾオキサゾリウム化合物、ペンタメチンベンゾチアゾリウム化合物等のペンタメチンシアニン誘導体;ヘプタメチンインドリウム化合物、ヘプタメチンベンゾインドリウム化合物、ヘプタメチンオキサゾリウム化合物、ヘプタメチンベンゾオキサゾリウム化合物、ヘプタメチンチアゾリウム化合物、ヘプタメチンベンゾチアゾリウム化合物等のヘプタメチンシアニン誘導体;スクアリリウム誘導体;ビス(スチルベンジチオラト)化合物、ビス(ベンゼンジチオラト)ニッケル化合物、ビス(カンファージチオラト)ニッケル化合物等のニッケル錯体;スクアリリウム誘導体;アゾ色素誘導体;フタロシアニン誘導体;ポルフィリン誘導体;ジピロメテン金属キレート化合物などが挙げられる。また、市販のものを用いてもよく、例えばナガセケムテックス社製のNIR−IM1やNIR−AM1、山本化成社製のMIRシリーズなどが好適である。
電磁波吸収剤の含有量は、結着樹脂100質量部に対して、0.001〜1.0質量部が好ましく、0.05〜0.5質量部がより好ましい。
【0028】
電磁波吸収剤は、紫外線などの光が照射されると光エネルギーを吸収して、該光エネルギーを熱エネルギーに変換して熱を放出する。この放出される熱を利用して記録媒体上に画像を定着させることができる。従って、従来のようなヒートロール方式を採用しなくてもよく、画像形成装置の消費エネルギーを抑えることができる。
【0029】
(その他)
本発明に用いるトナーは、酸化防止剤を含有するのが好ましい。上述した電磁波吸収剤、特に近赤外線吸収剤は長波長領域に吸収帯を有するので、空気中の酸素など、ラジカルを持つ化合物の影響を受けて劣化しやすい。そこで、トナーに酸化防止剤を含有させることで、該酸化防止剤がクエンチャーの役割を果たし、ラジカルを持つ化合物による電磁波吸収剤の劣化を抑制できる。
【0030】
酸化防止剤としては、例えばジ−t−ブチルヒドロキシトルエン、2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニル(メタ)アクリレート、2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ペンチルフェニル)エチル]−4,6−ジ−t−ペンチルフェニル(メタ)アクリレート、2,4−ビス(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジメルカプト−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、2,2−チオ−ジエチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,4−ビス[(オクチルチオ)メチル]−o−クレゾール等が挙げられる。
酸化防止剤の含有量は、結着樹脂100質量部に対して、0.0001〜0.1質量部が好ましく、0.0005〜0.05質量部がより好ましい。
【0031】
<荷電制御剤>
荷電制御剤は、液体現像剤のゼータ電位を調整するものである。
荷電制御剤としては、例えばラウリル(メタ)アクリレート、N−ビニル−2−ピロリドン、ナフテン酸マンガン、ナフテン酸カルシウム、ナフテン酸ジルコニウム、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸鉄、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸アルミニウム、ナフテン酸銅、ドデシル酸マンガン、ドデシル酸カルシウム、ドデシル酸ジルコニウム、ドデシル酸コバルト、ドデシル酸鉄、ドデシル酸亜鉛、ドデシル酸アルミニウム、ドデシル酸銅、オクチル酸マンガン、オクチル酸カルシウム、オクチル酸ジルコニウム、オクチル酸コバルト、オクチル酸鉄、オクチル酸亜鉛、オクチル酸アルミニウム、オクチル酸銅等の金属石鹸;サリチル酸ジ−t−ブチルマンガン、サリチル酸ジ−t−ブチルカルシウム、サリチル酸ジ−t−ブチルジルコニウム、サリチル酸ジ−t−ブチルコバルト、サリチル酸ジ−t−ブチル鉄、サリチル酸ジ−t−ブチル亜鉛、サリチル酸ジ−t−ブチルアルミニウム、サリチル酸ジ−t−ブチルクロム、サリチル酸ジ−t−ブチル銅、ヒドロキシビス(3,5−t−ブチルサリチル酸)マンガン、ヒドロキシビス(3,5−t−ブチルサリチル酸)カルシウム、ヒドロキシビス(3,5−t−ブチルサリチル酸)ジルコニウム、ヒドロキシビス(3,5−t−ブチルサリチル酸)鉄、ヒドロキシビス(3,5−t−ブチルサリチル酸)亜鉛、ヒドロキシビス(3,5−t−ブチルサリチル酸)アルミニウム、ヒドロキシビス(3,5−t−ブチルサリチル酸)クロム、ヒドロキシビス(3,5−t−ブチルサリチル酸)銅、ヒドロキシビス(サリチル酸)金属塩、ヒドロキシビス(モノアルキルサリチル酸)金属塩、ヒドロキシビス(ジアルキルサリチル酸)金属塩、ヒドロキシビス(トリアルキルサリチル酸)金属塩、ヒドロキシビス(テトラアルキルサリチル酸)金属塩等のサリチル酸金属塩;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸バリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩;レシチン、セハリン等の燐脂質;n−デシルアミン等の有機アミン塩;第4級アンモニウム塩;アルキルピリジニウム塩等が例示できる。これらを単独で、または混合して用いることができる。特に、ラウリル(メタ)アクリレートとN−ビニル−2−ピロリドンの共重合体が好ましい。
【0032】
荷電制御剤の添加量は、その種類によってトナーに帯電を付与する効果が異なるため、一概には決められないが、例えば荷電制御剤としてラウリル(メタ)アクリレートとN−ビニル−2−ピロリドンの共重合体を用いる場合、トナー100質量部に対して、0.1〜40質量部が好ましく、1〜20質量部がより好ましく、4〜10質量部が特に好ましい。
液体現像剤のゼータ電位は、荷電制御剤の添加量に依存し、荷電制御剤の添加量が増えるに連れて、ゼータ電位が高くなる傾向にある。荷電制御剤の添加量が上記範囲内であれば、液体現像剤を8000倍に希釈したときのゼータ電位を60〜150mVに容易に調整できる。
【0033】
<その他添加剤>
本発明の液体現像剤は、その他添加剤を含有してもよい。その他添加剤としては、帯電制御剤などが挙げられる。
帯電制御剤としては、ナフテン酸マンガン、ナフテン酸カルシウム、ナフテン酸ジルコニウム、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸鉄、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸アルミニウム、ナフテン酸銅、ドデシル酸マンガン、ドデシル酸カルシウム、ドデシル酸ジルコニウム、ドデシル酸コバルト、ドデシル酸鉄、ドデシル酸亜鉛、ドデシル酸アルミニウム、ドデシル酸銅、オクチル酸マンガン、オクチル酸カルシウム、オクチル酸ジルコニウム、オクチル酸コバルト、オクチル酸鉄、オクチル酸亜鉛、オクチル酸アルミニウム、オクチル酸銅等の金属石鹸;サリチル酸ジ−t−ブチルマンガン、サリチル酸ジ−t−ブチルカルシウム、サリチル酸ジ−t−ブチルジルコニウム、サリチル酸ジ−t−ブチルコバルト、サリチル酸ジ−t−ブチル鉄、サリチル酸ジ−t−ブチル亜鉛、サリチル酸ジ−t−ブチルアルミニウム、サリチル酸ジ−t−ブチルクロム、サリチル酸ジ−t−ブチル銅、ヒドロキシビス(3,5−t−ブチルサリチル酸)マンガン、ヒドロキシビス(3,5−t−ブチルサリチル酸)カルシウム、ヒドロキシビス(3,5−t−ブチルサリチル酸)ジルコニウム、ヒドロキシビス(3,5−t−ブチルサリチル酸)鉄、ヒドロキシビス(3,5−t−ブチルサリチル酸)亜鉛、ヒドロキシビス(3,5−t−ブチルサリチル酸)アルミニウム、ヒドロキシビス(3,5−t−ブチルサリチル酸)クロム、ヒドロキシビス(3,5−t−ブチルサリチル酸)銅、ヒドロキシビス(サリチル酸)金属塩、ヒドロキシビス(モノアルキルサリチル酸)金属塩、ヒドロキシビス(ジアルキルサリチル酸)金属塩、ヒドロキシビス(トリアルキルサリチル酸)金属塩、ヒドロキシビス(テトラアルキルサリチル酸)金属塩等のサリチル酸金属塩;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸バリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩;レシチン、セハリン等の燐脂質;n−デシルアミン等の有機アミン塩;第4級アンモニウム塩;アルキルピリジニウム塩等が例示できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0034】
[液体現像剤の製造方法]
本発明の液体現像剤は、上述したトナー、荷電制御剤、および必要に応じてその他添加剤を絶縁性有機溶媒に分散させることで得られる。
トナーの調製方法としては、公知の方法を用いることができるが、着色剤と電磁波吸収剤とを結着樹脂と共にフラッシング処理する方法が特に好ましい。
ここで、液体現像剤の製造方法の一例について、具体的に説明する。
【0035】
<トナーの調製>
トナーは、トナー原料のうち、少なくとも着色剤と電磁波吸収剤を結着樹脂と共にフラッシング処理する工程と、トナー原料を混練する工程とを経て得られる。
フラッシング処理工程では、結着樹脂を溶媒に溶解させた溶液Aと、電磁波吸収剤を溶媒に溶解させた溶液Bと、着色剤とを混合した後、溶媒を溜去する。これにより、着色剤と電磁波吸収剤とが、結着樹脂と共にフラッシング処理される。なお、混合時や溶媒の溜去時は、減圧しながら行ってもよい。
フラッシング処理工程に用いる溶媒としては、例えばエチルメチルケトン、テトラヒドロフラン、メチル−t−ブチルエーテル、トルエン、キシレンなどが挙げられる。
このようにフラッシング処理することで、着色剤表面および電磁波吸収剤表面の少なくとも一部が、結着樹脂にて被覆されるようになる。
【0036】
溶液Aにおいては、結着樹脂100質量部に対して溶媒の配合量は30〜100質量部が好ましい。また、酸化防止剤を用いる場合は、溶液Aに含有させるのが好ましい。
一方、溶液Bにおいては、電磁波吸収剤100質量部に対して溶媒の配合量は50〜100質量部が好ましい。
溶液Aと溶液Bの質量比(溶液A/溶液B)は、99/1〜50/50が好ましい。なお、溶液Aと溶液Bで用いる溶媒は同じであってもよく、異なっていてもよいが、減圧溜去することを考慮すると、溶液Aと溶液Bで用いる溶媒は同じであることが好ましい。
【0037】
混練工程では、フラッシング処理工程でフラッシング処理されたトナー原料と、必要に応じて含有されるこれら以外のトナー原料を混練してトナーを作製する。
混練する際は、60〜100℃の温度にて加温混練するのが好ましい。
また、混練工程で得られるトナー(トナー混練物)は、冷却した後、カッターミルなどを用いて粗粉砕し、さらにジェットミルなどを用いて微粉砕するのが好ましい。
【0038】
通常、トナーを製造するに際しては、100〜140℃程度の比較的高い温度でトナー原料を混練していた。そのため、電磁波吸収剤を混練時に添加すると、電磁波吸収剤が焼結して得られるトナーが黒く変色しやすかった。また、電磁波吸収剤の融点は、通常、混練時の温度よりもさらに高いので、電磁波吸収剤がトナー中で均一に分散しにくかった。その結果、紫外線などの光を照射することで光エネルギーを熱エネルギーに変換しても、熱が均一に放出されにくく、画像の定着性が低下し、色再現性が低下することがあった。
しかし、上述したように、着色剤と電磁波吸収剤とを結着樹脂と共にフラッシング処理すれば、着色剤表面および電磁波吸収剤表面の少なくとも一部が、結着樹脂にて被覆されるので、トナー原料、特に電磁波吸収剤をトナー中で均一に分散できるので好ましい。また、特に結着樹脂としてガラス転移温度が30〜65℃の結着樹脂を用いれば、混練時の温度を比較的低い温度に設定できるので、電磁波吸収剤の焼結を抑制できる。
【0039】
なお、フラッシング処理工程および混練工程は、混練工程の後にフラッシング処理工程を行わない限り、フラッシング処理工程の後に混練工程を行ってもよく、フラッシング処理工程と混練工程を同時に行ってもよい。特に、生産効率の観点から、フラッシング処理工程と混練工程を同時に行うのが好ましい。
フラッシング処理工程と混練工程を同時に行う方法としては、例えば以下に示す方法が挙げられる。
【0040】
まず、結着樹脂を溶媒に溶解させた溶液Aと、電磁波吸収剤を溶媒に溶解させた溶液Bと、着色剤とをニーダやフラッシャーなどの混練機に添加し、減圧しながら混練する。この際、徐々に混練温度を上昇させて加温混練する。混練温度は、50〜60℃で開始するのが好ましく、最終的に80〜100℃まで昇温するのが好ましい。
ついで、溶媒を減圧溜去してトナー混練物を得た後、該トナー混練物をカッターミルなどで粗粉砕し、さらにジェットミルなどで微粉砕し、トナーを得る。
なお、酸化防止剤などをトナーに含有させる場合は、結着樹脂と共に溶媒に溶解させて溶液Aとするのが好ましい。
また、結着樹脂や電磁波吸収剤を溶媒に溶解させず、結着樹脂と、電磁波吸収剤と、着色剤と、必要に応じて酸化防止剤をニーダやフラッシャーなどの混練機に投入し、減圧しながら混練してもよい。この際、徐々に混練温度を上昇させて加温混練する。
【0041】
このようにフラッシング処理しながら混練することで、単にトナー原料を混練する場合に比べて、トナー原料がより均一に分散できる。特に、電磁波吸収剤がトナー中で均一に分散したトナーが得られる。
【0042】
こうして得られたトナーを用いて、公知の方法により液体現像剤を調製する。
すなわち、トナーと荷電制御剤と絶縁性有機溶媒をサンドグラインダーなどの分散機で混合して、トナーおよび荷電制御剤とが絶縁性有機溶媒に分散した液体現像剤を得る。
また、予めトナーと絶縁性有機溶媒とを混合して濃厚液体現像剤を調製し、該濃厚液体現像剤に荷電制御剤を添加すると共に、所望の濃度になるまで絶縁性有機溶媒にて希釈し、これを液体現像剤として用いてもよい。
【0043】
絶縁性有機溶媒の配合量は、トナー100質量部に対して100〜4000質量部が好ましく、150〜1000質量部がより好ましい。
なお、トナーと絶縁性有機溶媒とを混合する際に、帯電制御剤を添加してもよい。この場合、トナー100質量部に対して帯電制御剤の配合量は0.01〜30質量部が好ましく、1〜10質量部がより好ましい。
【0044】
このようにして得られる液体現像剤は、絶縁性有機溶媒で8000倍に希釈したときのゼータ電位の絶対値が60〜150mVであり、適度に電気泳動しやすくなる。従って、画像形成装置に用いた際に、現像ローラから感光体にトナーが適当に広がりながら飛翔するので、現像効率を良好に維持できる。
【0045】
[画像形成装置]
本発明の液体現像剤は、電子写真方式の形成装置において好適に使用できる。
図1は、本発明の画像形成装置の一例を示す概略構成図である。なお、図1はタンデム方式を採用したカラープリンタを示すものであるが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば複写機、ファクシミリ、レーザービームプリンタ等にも好適に用いることができる。
この例の画像形成装置1は、本発明の液体現像剤を用いて画像を形成する画像形成手段2と、記録媒体(紙など)を収容する給紙カセット3と、画像形成手段2で形成された画像を記録媒体上に転写する二次転写手段4と、転写された画像を記録媒体上に定着させる光定着手段5と、定着の完了した記録媒体を排出する排出手段6と、給紙カセット3から排出手段6まで記録媒体を搬送する用紙搬送手段7とを具備する。
【0046】
画像形成手段2は、中間転写ベルト20と、該中間転写ベルト20をクリーニングするクリーニング部21と、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(BK)の各色にそれぞれ対応した画像形成ユニットFY、FM、FC、FBとを備える。
中間転写ベルト20は、無端状、すなわちループ状のベルト状部材であり、駆動ローラ22およびテンションローラ23に張架されて、図1において時計回りに走行する。なお、中間転写ベルト20の走行において、外側を向く面を中間転写ベルト20の表面と称し、他方の面を裏面と称する。
クリーニング部21は、クリーニングローラ211とクリーニングブレード212とを備える。
【0047】
画像形成ユニットFY、FM、FC、FBは、中間転写ベルト21の近傍に4つ並べてクリーニング部21と二次転写手段4との間に配置される。なお、各画像形成ユニットの配置の順番はこの限りではないが、各色の混色による完成画像への影響を考慮すると、図1に示す配置が好ましい。
各画像形成ユニットには、感光体10と、帯電器11と、露光装置12と、現像装置13と、一次転写ローラ14と、クリーニング装置15と、除電装置16と、キャリア液除去ローラ17とを備える。
各画像形成ユニットには、それぞれ液体現像剤循環装置(図示略)が設けられ、各色に対応した本発明の液体現像剤の供給、および回収が行われる。
【0048】
感光体10は、円柱状の部材であって、その表面に帯電したトナーを含むトナー像を担持可能である。
帯電器11は、感光体10の表面を一様に帯電させることができる装置である。
露光装置12は、LED等の光源を有し、外部の機械から入力される画像データに応じて、一様に帯電した感光体10の表面に光を照射する。これにより、感光体10の表面には静電潜像が形成される。
【0049】
現像装置13は、液体現像剤を感光体10上の静電潜像に対向するように保持することで、静電潜像に液体現像剤中のトナーを付着させる。これにより、静電潜像はトナー層として現像される。現像装置13は、現像容器130、現像ローラ131、供給ローラ132、汲み上げローラ133、クリーニングブレード134、及び現像ローラ帯電器135を備える。現像容器130内に、本発明の液体現像剤18が収容される。
【0050】
一次転写ローラ14は、中間転写ベルト20の裏面に、感光体10と対向して配置されている。一次転写ローラ14には、図示しない電源からトナー像中のトナーとは逆極性の電圧を印加されるようになっている。つまり、一次転写ローラ14は、中間転写ベルト20と接触している位置で、中間転写ベルト20にトナーと逆極性の電圧を印加する。中間転写ベルト20は導電性を有するので、この印加電圧によって、中間転写ベルト14の表面側及びその周辺にトナーが引き付けられる。
【0051】
クリーニング装置15は、感光体10から記録媒体に転写されずに残留した液体現像剤をクリーニングするための装置であって、残留現像剤搬送スクリュー151と、クリーニングブレード152とを備える。
除電装置16は、除電用の光源を有し、次の周回による画像形成に備えて、クリーニングブレード152による液体現像剤除去後、感光体10の表面を光源からの光によって除電する。
【0052】
キャリア液除去ローラ17は、感光体10の回転軸と平行な回転軸を中心として感光体10と同方向に回転可能な略円柱状の部材である。キャリア液除去ローラ17は、感光体10と中間転写ベルト20とが接触する位置よりも二次転写手段4が配置されている側に配置されており、中間転写ベルト20の表面からキャリア液を除去する部材である。
【0053】
給紙カセット3は、トナー像を定着させる記録媒体(紙など)を収納するものである。
二次転写手段4は中間転写ベルト20上に形成された画像(トナー像)を記録媒体に転写するものであって、中間転写ベルト20を駆動させる駆動ローラ22と、該駆動ローラ22に対向して配置された二次転写ローラ41とを備える。
【0054】
光定着手段5は、記録媒体上に転写された画像に光を照射して、前記記録媒体上に画像を定着させるものであり、光定着用光源51と、記録媒体を走行させる一対のフィードローラ52とを備える。
光定着用光源51としては、ハロゲンランプ、水銀ランプ、フラッシュランプ、赤外線レーザ等が挙げられる。中でもフラッシュランプが好ましく、瞬時に画像を記録媒体上に定着させることができ、消費エネルギーを節約できる。
【0055】
排出手段6は、光定着手段5で画像が定着した記録媒体を排出させるものであって、画像形成装置1の上部に配置されている。
用紙搬送手段7は、複数の搬送ローラ対を備え、給紙カセット3から二次転写手段4や定着手段5、排出手段6に記録媒体を搬送する。
【0056】
ここで、図1を用いて画像形成方法を説明する。
まず、帯電器11によって感光体10の表面を帯電させる。ついで、露光装置12によって感光体の表面を露光して静電潜像を形成する。ついで、現像装置13によって、感光体10上の静電潜像に本発明の液体現像剤を付着させて静電潜像をトナー像(画像)として現像する。このようにして各画像形成ユニットで形成された画像を感光体10から中間転写ベルト20に転写し、該中間転写ベルト20上で重ね合わせてカラートナー像とする。
カラートナー像の形成と同時に給紙カセット3に収容される記録媒体を用紙搬送手段7に沿って搬送し、中間転写ベルト20への一次転写とタイミングを合わせて二次転写手段4に送り込み、二次転写手段4で中間転写ベルト20上のカラートナー像(画像)を記録媒体上に転写させる。
【0057】
ついで、画像が転写された記録媒体を光定着手段5へ搬送させ、画像に光を照射して記録媒体上に定着させる。
ここで、光定着の方法について、具体的に説明する。なお、以下の説明は、光定着用光源51として、キセノン中の放電における発光現象を利用したフラッシュランプを用いた例である。
【0058】
光定着の方法としては、複数のフラッシュランプを、時間差を設けて発光させるディレイ方式を用いることができる。ディレイ方式とは、複数のフラッシュランプを並べ、各々のランプを0.01〜100msec程度ずつ遅らせて発光を行い、同じ箇所を複数回照らす方式のことである。
ディレイ方式により、一度の発光で画像に光エネルギーを供給するのではなく、分割して光エネルギーを供給できるため、定着条件を緩和でき耐ボイド性と定着性とを両立できる。
【0059】
光定着用光源51の発光エネルギーは、1.0〜7.0J/cmであることが好ましく、2.0〜5.0J/cmであることがより好ましい。
なお、キセノンのランプ強度を示すフラッシュ光の単位面積当りの発光エネルギーは下記式(1)で表される。
S={(1/2)×C×V}/(u×L)×(n×f) ・・・(1)
式(1)中、nは一度に発光するランプの本数(本)、fは点灯周波数(Hz)、Vは入力電圧(V)、Cはコンデンサ容量(F)、uはプロセス搬送速度(cm/s)、Lはフラッシュランプの有効発光幅(通常は最大用紙幅、cm)、Sはエネルギー密度(J/cm2)を表す。
【0060】
画像に対して複数回フラッシュ発光を行う場合、上述したフラッシュランプの発光エネルギーは、発光1回ごとのフラッシュ光の単位面積に与える発光エネルギーの総和量を指すものとする。
本発明においては、フラッシュランプの本数は0〜20本であることが好ましく、2〜10本であることがより好ましい。
また、複数のフラッシュランプ間の各々の時間差は0.1〜20msecであることが好ましく、1〜3msecであることがより好ましい。
さらに、フラッシュランプ1本あたりの1回の発光による発光エネルギーは、0.1〜1J/cmであることが好ましく、0.4〜0.8J/cmであることより好ましい。
【0061】
光照射された画像は、トナー中の電磁波吸収剤が光を吸収して光エネルギーを熱エネルギーに変換する。この時に発生する熱が放出され、トナーが溶融し、記録媒体上に定着する。
特に、フラッシング処理して作製したトナーを用いた液体現像剤を使用すれば、電磁波吸収剤がトナー中で均一に分散しているので、電磁波吸収剤が光エネルギーを熱エネルギーに変換した時に発生する熱を均一に放出できる。また、記録媒体上に形成された画像に光を照射すると、画像全体に熱が均一に伝わるため、トナーの硬化速度が速まる。よって、記録媒体が光定着手段を通過する短時間の間でも、十分にトナーが溶融するので、記録媒体上に画像が定着しやすくなる。
【0062】
このようにして画像が定着された記録媒体は、排出手段6によって画像形成装置1の外部に排出される。
二次転写後、中間転写ベルト20上に残留したトナーは、中間転写ベルト20のクリーニング手段21によって除去される。また、感光体10に供給されず現像ローラ131上に残留した液体現像剤は、クリーニングブレード134によって掻き取られて回収される。
【0063】
以上説明したように、本発明の液体現像剤は、絶縁性有機溶媒で8000倍に希釈したときのゼータ電位の絶対値が60〜150mVであるので、適度に電気泳動しやすくなる。従って、画像形成装置に用いた際に、現像ローラから感光体にトナーが適当に広がりながら飛翔するので、現像効率を良好に維持できる。
また、本発明の画像形成装置は、本発明の液体現像剤を用いるので、現像効率が良好である。従って、本発明であれば、高画質の画像を形成できる。
【実施例】
【0064】
以下、本発明について実施例を挙げて具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下の記述中において「部」とあるのは特に断りのない限り「質量部」を表し、「Mw」とあるのは「質量平均分子量」を表し、「Mn」とあるのは「数平均分子量」を表す。
ここで、結着樹脂のMwおよびMn、トナーの体積平均粒径、液体現像剤のゼータ電位の測定方法について、以下に示す。
【0065】
[測定方法]
<Mwの測定>
結着樹脂のMwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により求めた。測定には、高速液体クロマトグラフポンプ(日本分光社製、「TRI ROTAR−V型」)、紫外分光検出器(日本分光社製、「UVIDEC−100−V型」)、50cm長さのカラム(昭和電工社製、「Shodex GPC A−803」)を用い、結着樹脂0.05gを20mLのテトラヒドロフラン(THF)に溶解させ、これを被検試料として用いた。
結着樹脂のMwは、GPCの結果から、被検試料の分子量を、ポリスチレンを標準物質として算出することにより、ポリスチレン換算質量平均分子量として求めた。
なお、荷電制御剤のMwについても、結着樹脂のMwと同様にして求めた。
【0066】
<Mnの測定>
結着樹脂のMnは、Mwの測定と同様にしてGPCにより求めた。
【0067】
<体積平均粒径の測定>
トナーの体積平均粒径は、レーザー回折式粒度分布測定装置(島津製作所社製、「SALD−1100」)を用いて測定した。
【0068】
<ゼータ電位の測定>
液体現像剤のゼータ電位は、液体現像剤をIPソルベント2835(出光石油化学社製)にて8000倍に希釈して希釈液を調製し、電気泳動装置(大塚電子社製、「ELS−8000」)を用いて希釈液のゼータ電位を測定した。
【0069】
[実施例1]
<結着樹脂の作製>
還流冷却器、水・アルコール分離装置、窒素ガス導入管、温度計及び攪拌装置を備えた丸底フラスコに、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物1750部とイソフタル酸790部とを入れ、攪拌しながら窒素ガスを導入し、200℃〜240℃の温度で脱水重縮合を行った。
生成したポリエステル樹脂の酸価又は反応溶液の粘度が所定の値になったところで反応系の温度を100℃以下に下げ、重縮合を停止させ、ポリエステル樹脂を得た。
得られたポリエステル樹脂は、Mw=10500、Mn=4750であった。
【0070】
<液体現像剤の調製>
結着樹脂として先に得たポリエステル樹脂360部と、酸化防止剤としてジ−t−ブチルヒドロキシトルエン(BHT)0.2部と、電磁波吸収剤として近赤外線吸収剤(ナガセケムテックス社製、「NIR−IM1」)1部と、着色剤としてToner Yellow HG VP2155(クラリアント社製、PY180)40部の混合物を、フラッシャーに投入し、減圧下、40℃から80℃まで徐々に加温し、フラッシング処理しながら混練し、着色剤濃度10質量%の着色樹脂混練物を得た。
この着色樹脂混練物を十分冷却した後、カッターミルを用いて粗粉砕し、さらにジェットミル(日本ニューマチック工業社製)を用いて微粉砕して、体積平均粒径10μm程度の着色トナー粗粒子(トナー)を得た。
【0071】
着色トナー粗粒子30gと、0.5質量%の帯電制御剤(SERVO社製、「ヌーデックス Zr12」)2gと、絶縁性有機溶媒としてIPソルベント2835(出光石油化学社製)70gとを混合し、サンドグラインダー(IGARASHI KIKAI SEIZO CO.,Ltd.製)によりメディアとして直径1mmのガラスビーズ(150mL)を用いて、ウオータージャケット付1/8ガロンベッセルにて、冷却水温度5℃、ディスク回転数2000rpmで10時間処理することにより湿式グラインディングし、体積平均トナー粒子径2.5μmの濃厚液体現像剤を得た。
【0072】
次いで濃厚液体現像剤100部に対して、IPソルベント1620(出光石油化学社製)を900部加えて希釈し、さらにゼータ電位を調整するために、荷電制御剤としてラウリルメタクリレート/N−ビニル−2−ピロリドン共重合体(以下、「LMA/VP」と略す。)を3部(すなわち、着色トナー粗粒子100質量部に対して10.2部)添加し、超音波分散機を用いて約20分間混合分散させて、液体現像剤を調製した。
なお、荷電制御剤として用いたLMA/VPの重合比率は、LMA:VP=95:5であり、Mwは200000であった。
得られた液体現像剤のゼータ電位を測定した。結果を表1に示す。なお、表1に示した値は、先の方法により測定したゼータ電位の絶対値である。
【0073】
<現像効率の評価>
得られた液体現像剤を、図1に示すような画像形成装置にセットした。ついで、2cm×10cmのソリッド画像を感光体上に形成させた。この時の感光体上の画像部を粘着テープで剥離し、剥離した粘着テープ上面の反射濃度(感光体上テープ濃度)を反射濃度計(SAKURA社製、「デンシトメーター PDM5」)を用いて測定した。同様に、現像ローラ上の残留トナーを粘着テープで剥離し、剥離した粘着テープ上面の反射濃度(現像ローラ上テープ濃度)を測定し、現像効率を下記式(1)より求めた。評価基準としては、現像効率が95%以上のものを「○(良好)」と判定し、現像効率が95%未満のものを「×(不良)」と判定した。結果を表1に示す。
現像効率(%)=感光体上テープ濃度/(感光体上テープ濃度+現像ローラ上テープ濃度)×100 ・・・(1)
【0074】
[実施例2]
LMA/VPの添加量を3部から5部に変更した以外は、実施例1と同様にして液体現像剤を調製し、評価を行った。ゼータ電位および評価結果を表1に示す。
【0075】
[実施例3]
LMA/VPの添加量を3部から7部に変更した以外は、実施例1と同様にして液体現像剤を調製し、評価を行った。ゼータ電位および評価結果を表1に示す。
【0076】
[比較例1]
LMA/VPの添加量を3部から1部に変更した以外は、実施例1と同様にして液体現像剤を調製し、評価を行った。ゼータ電位および評価結果を表1に示す。
【0077】
[比較例2]
LMA/VPの添加量を3部から12部に変更した以外は、実施例1と同様にして液体現像剤を調製し、評価を行った。ゼータ電位および評価結果を表1に示す。
【0078】
【表1】

【0079】
表1から明らかなように、ゼータ電位の絶対値が60〜150mVである実施例の液体現像剤は、比較例に比べて現像効率に優れていた。
一方、ゼータ電位が53mVである比較例1の液体現像剤は、実施例に比べて現像効率が劣っていた。これは、トナーが電気泳動しにくくなり、その結果、感光体上の静電潜像へのトナーの付着力が低下した、すなわち現像ローラから感光体にトナーが移動しにくくなったことによるものと考えられる。
ゼータ電位が154mVである比較例2の液体現像剤は、実施例に比べて現像効率が劣っていた。これは、トナーが適当に広がりながら移動しにくくなったため、感光体上にてトナーの濃度ムラが発生し、トナーの濃度が部分的に低下したことによるものと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明の画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0081】
1:画像形成装置、2:画像形成手段、3:給紙カセット、4:二次転写手段、5:光定着手段、6:排出手段、7:用紙搬送手段。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性有機溶媒中に、結着樹脂と着色剤と電磁波吸収剤とを含有するトナー、および荷電制御剤が分散した液体現像剤であって、
ゼータ電位の絶対値が60〜150mVであることを特徴とする液体現像剤。
【請求項2】
前記電磁波吸収剤が、波長が750〜1100nmの近赤外領域を吸収することを特徴とする請求項1に記載の液体現像剤。
【請求項3】
前記トナーが酸化防止剤をさらに含有することを特徴とする請求項1または2に記載の液体現像剤。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の液体現像剤を用いて記録媒体上に形成された画像に、光を照射して前記記録媒体上に画像を定着させる光定着手段を備えたことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【公開番号】特開2010−32689(P2010−32689A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−193393(P2008−193393)
【出願日】平成20年7月28日(2008.7.28)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】