説明

液体現像剤用の絶縁性液体

【課題】保存安定性が良好であり、現像効率に優れ、かつトナー粒子の定着強度が高い液体現像剤用の絶縁性液体を提供する。
【解決手段】下記一般式(I)で表される脂肪酸モノエステル(A)を含有する脂肪酸モノエステル組成物(α)を50質量%以上有し、炭素数9〜24の1価のアルコール(A−i)の含有量が10質量%以下、下記一般式(II)で表される脂肪酸モノエステル(A−ii)の含有量が1質量%以下、酸価が1mgKOH/g以下であることを特徴とする。
−COOR ・・・(I)
−COOR ・・・(II)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体現像剤用の絶縁性液体に関する。
【背景技術】
【0002】
潜像担持体上に形成した静電潜像を現像するために用いられる現像剤には、顔料等の着色剤及び結着樹脂を含む材料で構成されるトナー粒子を乾式状態で用いる乾式現像剤と、トナー粒子を電気絶縁性の担体液(絶縁性液体)に分散した液体現像剤とがある。このような現像剤には、潜像担持体へのトナー粒子の移動を促進させるために帯電付与剤等が配合されているのが一般的である。
【0003】
乾式現像剤を用いる画像形成では、高解像度化するためには粒子の細かいトナー粒子を用いる必要があるものの、トナー粒子は小粒径になるほど凝集しやすくなり、取り扱いにくいものとなる。加えて、粉体現像剤は、飛散しやすいため、作業者により吸引されたり、現像が行われるスペースを汚染する等の懸念がある。
【0004】
一方、液体現像剤は、トナー粒子が液体中に分散しているため飛散せず、トナー粒子が小粒径であっても凝集力が弱く、取り扱いが比較的容易なものである。加えて、液体現像剤は、小粒径のトナー粒子が用いられるため、乾式現像剤に比べて高解像な画像や印字を得られる。さらに、液体現像剤の結着樹脂には、乾式現像剤の結着樹脂よりも低い軟化点(軟化温度)のものを用いることができるため、細線画像の再現性、階調再現性、カラーの再現性に優れ、かつ高速で画像形成できる。
【0005】
従来、液体現像剤で用いられてきた絶縁性液体は、石油系炭化水素を主とするものである。この様な液体現像剤を用いた現像方式では、石油系炭化水素の揮発性を利用して、絶縁性液体を蒸発させ、紙等の記録媒体にトナー粒子を定着させるが、絶縁性液体を揮発させたり回収するための大掛かりな装置が必要である。
【0006】
近年、絶縁性液体として不揮発性のものを用いた現像方式が試みられているが、不揮発性の絶縁性液体を用いた現像方式では、トナー粒子の表面に絶縁性液体が残留して、記録媒体へのトナー粒子の定着強度が低下するという問題があった。
【0007】
こうした問題に対し、例えば、紫外線硬化樹脂を含有する液体現像剤が提案されている(例えば、特許文献1)。
また、特定の脂肪酸エステルを絶縁性液体とする提案がなされている。例えば、総炭素数が9以下の脂肪酸モノエステルを絶縁性液体とした静電写真用液体現像剤(例えば、特許文献2)、脂肪酸トリグリセリドを含有するキャリア液を用いた記録液(例えば、特許文献3)、特定の粘度と特定の電気抵抗を備えた脂肪酸エステルを用いた捺染用トナー(例えば、特許文献4)、炭素数1〜8のアルコール成分を含む不飽和脂肪酸モノエステルを含む絶縁性液体にトナー粒子が分散した液体現像剤(例えば、特許文献5)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平9−208873号公報
【特許文献2】特開平7−72669号公報
【特許文献3】特開2001−98197号公報
【特許文献4】特開2008−304757号公報
【特許文献5】特開2008−26571号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1の発明では、画像形成装置が大型化するという問題がある。
また、特許文献2〜5の発明では、従来の画像形成装置を転用できるものの、液体現像剤の保存安定性が不十分である。加えて、特許文献2〜5の発明では、現像後の発色が不十分になったり、現像速度が低下したりする等、現像効率が低下したり、記録媒体へのトナー粒子の定着強度が低下するという問題があった。
そこで、本発明は、保存安定性が良好であり、現像効率に優れ、かつトナー粒子の定着強度が高い液体現像剤用の絶縁性液体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、鋭意検討した結果、以下の知見を得た。
従来、絶縁性液体に用いられている脂肪酸エステルは、液体現像剤中の結着樹脂や帯電付与剤、画像形成装置に用いられる樹脂部材との親和性が高いものである。このため、従来の脂肪酸エステルを用いた液体現像剤は、結着樹脂が溶解されたり、樹脂部材から樹脂成分が溶出したりして、十分な保存安定性を得られにくい。加えて、従来の脂肪酸エステルを用いた液体現像剤は、帯電付与剤等を溶出させるため、現像効率を低下させる。
また、脂肪酸トリグリセリドは、トナー粒子の分散性を高められるものの、動粘度が高いために、潜像担持体へのトナー粒子の移動速度を低下させて、現像効率を低下させてしまう。炭素数の合計が21を超えるような脂肪酸モノエステルは、粘度が高くなりすぎて、トナー粒子の移動速度を低下させて、現像効率を低下させる。トナー粒子の移動速度を速めるためには、液体現像剤を任意の温度に加熱して、絶縁性液体の粘度を低減させる必要がある。液体現像剤を加熱すると、過剰なエネルギーが必要になると共に、繰り返し加熱することによる品質への懸念がある。
本発明者らは、上記の知見に基づき、本発明を完成するに至った。
【0011】
即ち、本発明の液体現像剤用の絶縁性液体(以下、単に絶縁性液体ということがある)は、下記一般式(I)で表される脂肪酸モノエステル(A)を含有する脂肪酸モノエステル組成物(α)を50質量%以上有し、炭素数9〜24の1価のアルコール(A−i)の含有量が10質量%以下、下記一般式(II)で表される脂肪酸モノエステル(A−ii)の含有量が1質量%以下、酸価が1mgKOH/g以下であることを特徴とする。
−COOR ・・・(I)
(上記(I)式中、Rは炭素数5〜21の炭化水素基であり、Rは炭素数9〜24の炭化水素基であって分岐鎖又は不飽和結合を有するものである。ただし、Rの炭素数とRの炭素数の合計は24〜45である。)
−COOR ・・・(II)
(上記(II)式中、Rは炭素数5〜21の炭化水素基であり、Rは炭素数1〜8の炭化水素基である。)
前記脂肪酸モノエステル(A)は、前記R及びRの双方又はいずれか一方が不飽和結合を有し、ヨウ素価が30〜130[g/100g]であることが好ましく、前記脂肪酸モノエステル(A)は、前記R及びRの双方又はいずれか一方が分岐鎖を有することが好ましく、流動点が10℃以下であることが好ましい。
【0012】
3価以上のポリオールエステル(B)を含有するポリオールエステル組成物(β)を有することが好ましく、前記ポリオールエステル(B)は、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセリン、ジグリセリン、ペンタエリスリトールから選択される1種以上のポリオールのエステルであることが好ましく、3価以上のポリオール(B−i)の含有量が10質量%以下であることがより好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の液体現像剤用の絶縁性液体によれば、保存安定性が良好であり、現像効率に優れ、かつトナー粒子の定着強度が高い液体現像剤を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の絶縁性液体を用いた液体現像剤を適用する画像形成装置の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(絶縁性液体)
絶縁性液体は、潜像担持体上に形成された静電潜像を現像するための液体現像剤に用いられ、トナー粒子が分散される分散媒である。
本発明の絶縁性液体は、脂肪酸モノエステル組成物(α)(以下、(α)成分ということがある)を含有するものである。
【0016】
液体現像剤中の絶縁性液体の含有量は、トナー粒子の種類や画像形成装置の種類等を勘案して決定でき、例えば、50〜98質量%が好ましく、55〜95質量%がより好ましく、65〜85質量%がさらに好ましい。上記下限値未満であると、液体現像剤の流動性が低下し、現像工程での搬送性が低下するおそれがある。搬送性が低下すると、画像形成装置での液体現像剤の塗布ムラができ、濃度ムラ等の画像欠陥を生じるおそれがある。また、上記上限値超であると、液体現像剤中のトナー粒子の量が不足して、画像濃度が不十分になるおそれがある。
【0017】
絶縁性液体の流動点は、特に限定されないが、10℃以下が好ましく、−10℃以下がより好ましい。流動点が上記上限値超であると、液体現像剤の流動性が低下し、現像工程での搬送性が低下するおそれがある。搬送性が低下すると、画像形成装置での液体現像剤の塗布ムラができ、濃度ムラ等の画像欠陥を生じるおそれがある。
【0018】
<脂肪酸モノエステル組成物(α)>
本発明の(α)成分は、脂肪酸モノエステル(A)(以下、(A)成分ということがある)を含有するものである。絶縁性液体は、(A)成分を含有することで、保存安定性が良好で、現像効率に優れるものとなる。
【0019】
(α)成分のヨウ素価は、30〜130g/100gが好ましく、40〜110g/100gがより好ましく、50〜90g/100がさらに好ましい。上記下限値未満であると、記録媒体へのトナー粒子の定着強度が低下するおそれがあり、上記上限値超であると、酸化しやすく保存安定性が低下するおそれがある。
【0020】
(α)成分の動粘度(40℃)は、特に限定されないが、5〜32mm/秒が好ましく、9〜26mm/秒がより好ましく、13〜20mm/秒がさらに好ましい。上記下限値未満であると、液体現像剤中でのトナー粒子の分散安定性が低下する傾向にあり、上記上限値超であると、トナー粒子の移動速度が低下して現像効率が低下する傾向にある。なお、動粘度(40℃)は、JIS K2283に準拠して測定される40℃の動粘度である。
【0021】
(α)成分の体積抵抗率(20℃)は、例えば、1.0×1012Ωcm以上が好ましく、5.0×1012Ωcm以上がより好ましく、1.0×1013Ωcm以上がさらに好ましい。上記下限値以上であれば、トナー粒子への電荷付与性を向上させ、かつ、帯電されたトナー粒子の電荷を安定にでき、帯電安定性に優れた絶縁性液体となり、より高画質の画像を形成できる。
【0022】
絶縁性液体中の(α)成分の含有量は、50質量%以上であり、好ましくは65〜85質量%である。上記下限値以上であれば現像効率に優れ、上記上限値以下であれば保存安定性や、液体現像剤中でのトナー粒子の分散安定性に優れる。
【0023】
≪脂肪酸モノエステル(A)≫
(A)成分は、下記一般式(I)で表される脂肪酸モノエステルである。
【0024】
−COOR ・・・(I)
【0025】
(上記(I)式中、Rは、炭素数5〜21の炭化水素基であり、Rは炭素数9〜24の炭化水素基であって分岐鎖又は不飽和結合を有するものである。ただし、Rの炭素数とRの炭素数の合計は24〜45である。)
【0026】
(I)式中、Rは、原料の脂肪酸モノエステル、油脂又は脂肪酸に由来する炭化水素基であり、直鎖であってもよいし、分岐鎖を有していてもよいし、環状構造であってもよく、不飽和結合を有していてもよい。
【0027】
(I)式中、Rの炭化水素基は、炭素数5〜21であり、炭素数9〜17が好ましい。上記下限値未満であると結着樹脂や樹脂部材等の樹脂(以下、総じて樹脂材料ということがある)を溶解しやすく(樹脂溶解性)なり、液体現像剤の保存安定性が低下する。上記上限値超であると動粘度が高くなり、潜像担持体へのトナー粒子の移動速度を低下させて、良好な現像効率を得られない。
【0028】
(I)式中、Rは、原料のアルコールに由来する炭化水素基であり、分岐鎖又は不飽和結合を有するものである。Rが分岐鎖又は不飽和結合を有すれば、流動点が低くなり、現像時に液体現像剤を加熱するための過剰なエネルギーが不要であり、かつ加熱による液体現像剤の品質への懸念がなくなる。
【0029】
(I)式中、Rの炭化水素基は、炭素数9〜24であり、炭素数13〜20が好ましい。上記下限値未満であると樹脂溶解性が強くなり、液体現像剤の保存安定性が低下する。上記上限値超であると動粘度が高くなり、潜像担持体へのトナー粒子の移動速度を低下させて、良好な現像効率を得られない。
【0030】
(A)成分は、R及びRの双方又はいずれか一方が不飽和結合を有することが好ましく、R及びRの双方が不飽和結合を有することがより好ましい。R及びRの少なくとも一方が不飽和結合を有することで、記録媒体へのトナー粒子の定着強度を向上でき、また流動点が低くなる。加えて、R及びRの双方が不飽和結合を有することで、流動点をより低くできる。
【0031】
(A)成分は、R及びRの双方又はいずれ一方が分岐鎖を有することが好ましく、R及びRの双方が分岐鎖を有することがより好ましい。R及びRの少なくとも一方が分岐鎖を有することで、記録媒体へのトナー粒子の定着強度を向上でき、また流動点が低くなる。さらに、R及びRの双方が分岐鎖を有することで、流動点をより低くできる。
【0032】
の炭素数とRの炭素数との合計は、24〜45であり、30〜40が好ましい。上記下限値未満であると樹脂溶解性が強くなり、液体現像剤の保存安定性が低下する。上記上限値超であると動粘度が高くなり、潜像担持体へのトナー粒子の移動速度を低下させて、良好な現像効率を得られない。
【0033】
このような(A)成分としては、例えば、ミリストレイン酸イソトリデシル、ミリストレイン酸2−ヘキシルデシル、ミリストレイン酸2−オクチルデシル、ミリストレイン酸オレイル、ミリストレイン酸2−オクチルドデシル、ミリストレイン酸2−デシルテトラデシル、ミリストレイン酸リノリル、ミリストレイン酸リノレニル、ミリストレイン酸エライジル、パルミトレイン酸イソトリデシル、パルミトレイン酸2−ヘキシルデシル、パルミトレイン酸2−オクチルデシル、パルミトレイン酸オレイル、パルミトレイン酸2−オクチルドデシル、パルミトレイン酸2−デシルテトラデシル、パルミトレイン酸リノリル、パルミトレイン酸リノレニル、パルミトレイン酸エライジル、オレイン酸イソトリデシル、オレイン酸2−ヘキシルデシル、オレイン酸2−オクチルデシル、オレイン酸オレイル、オレイン酸2−オクチルドデシル、オレイン酸2−デシルテトラデシル、オレイン酸リノリル、オレイン酸リノレニル、オレイン酸エライジル、リノール酸イソトリデシル、リノール酸2−ヘキシルデシル、リノール酸2−オクチルデシル、リノール酸オレイル、リノール酸2−オクチルドデシル、リノール酸2−デシルテトラデシル、リノール酸リノリル、リノール酸リノレニル、リノール酸エライジル、リノレン酸イソトリデシル、リノレン酸2−ヘキシルデシル、リノレン酸2−オクチルデシル、リノレン酸オレイル、リノレン酸2−オクチルドデシル、リノレン酸2−デシルテトラデシル、リノレン酸リノリル、リノレン酸リノレニル、リノレン酸エライジル、ピノレン酸イソトリデシル、ピノレン酸2−ヘキシルデシル、ピノレン酸2−オクチルデシル、ピノレン酸オレイル、ピノレン酸2−オクチルドデシル、ピノレン酸2−デシルテトラデシル、ピノレン酸リノリル、ピノレン酸リノレニル、ピノレン酸エライジル、エイコセン酸イソトリデシル、エイコセン酸2−ヘキシルデシル、エイコセン酸2−オクチルデシル、エイコセン酸オレイル、エイコセン酸2−オクチルドデシル、エイコセン酸2−デシルテトラデシル、エイコセン酸リノリル、エイコセン酸エライジル、エイコサジエン酸イソトリデシル、エイコサジエン酸2−ヘキシルデシル、エイコサジエン酸2−オクチルデシル、エイコサジエン酸オレイル、エイコサジエン酸2−オクチルドデシル、エイコサジエン酸2−デシルテトラデシル、エイコサジエン酸リノリル、エイコサジエン酸エライジル、ドコサジエン酸イソトリデシル、ドコサジエン酸2−ヘキシルデシル、ドコサジエン酸2−オクチルデシル、ドコサジエン酸オレイル、ドコサジエン酸2−オクチルドデシル、ドコサジエン酸2−デシルテトラデシル、ドコサジエン酸リノリル、ドコサジエン酸エライジル、エイコサトリエン酸イソトリデシル、エイコサトリエン酸2−ヘキシルデシル、エイコサトリエン酸2−オクチルデシル、エイコサトリエン酸オレイル、エイコサトリエン酸2−オクチルドデシル、エイコサトリエン酸2−デシルテトラデシル、エイコサトリエン酸リノリル、エイコサトリエン酸エライジル、エルカ酸イソトリデシル、エルカ酸2−ヘキシルデシル、エルカ酸2−オクチルデシル、エルカ酸オレイル、エルカ酸2−オクチルドデシル、エルカ酸2−デシルテトラデシル、エルカ酸リノリル、エルカ酸エライジルが挙げられる。これらの(A)成分は、樹脂溶解性をより抑制でき、かつ不飽和結合を含むためトナー粒子の定着強度をさらに向上させ、かつ低温での流動性に優れている。
【0034】
上述した(A)成分の中でも、現像効率のさらなる向上を図る観点から、オレイン酸イソトリデシル、リノール酸イソトリデシル、リノレン酸イソトリデシル、ミリストレイン酸イソトリデシル、パルミトレイン酸イソトリデシル、ピノレン酸イソトリデシル、オレイン酸2−ヘキシルデシル、リノール酸2−ヘキシルデシル、リノレン酸2−ヘキシルデシル、ミリストレイン酸2−ヘキシルデシル、パルミトレイン酸2−ヘキシルデシル、ピノレン酸2−ヘキシルデシル、オレイン酸オレイル、リノール酸オレイル、リノレン酸オレイル、ミリストレイン酸オレイル、パルミトレイン酸オレイル、ピノレン酸オレイル、オレイン酸リノリル、リノール酸リノリル、リノレン酸リノリル、ミリストレイン酸リノリル、ピノレン酸リノリル、オレイン酸2−オクチルデシル、リノール酸2−オクチルデシル、リノレン酸2−オクチルデシル、ミリストレイン酸2−オクチルデシル、ピノレン酸2−オクチルデシル、オレイン酸2−オクチルドデシル、リノール酸2−オクチルドデシル、リノレン酸2−オクチルドデシル、リノレン酸2−オクチルドデシル、ピノレン酸2−オクチルドデシルがより好ましい。
これらの(A)成分は、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0035】
(α)成分中の(A)成分の含有量は、多いほど本発明の効果を好適に発揮でき、例えば、90質量%以上が好ましく、95質量%以上がより好ましく、98質量%以上がさらに好ましく、100質量%であってもよい。
【0036】
≪(α)成分の製造方法≫
(α)成分の製造方法としては、特に限定されず、従来公知のエステル交換法、エステル化法等が挙げられる。
【0037】
[エステル交換法]
エステル交換法としては、例えば、分岐鎖又は不飽和結合を有する炭素数9〜24の1価の原料アルコール(以下、(a1)成分ということがある)と、原料脂肪酸モノエステル(以下、(a2)成分ということがある)とをエステル交換する第一のエステル交換工程を有する方法が挙げられる。
第一のエステル交換工程では、(a1)成分と(a2)成分とを触媒の存在下で任意の温度に加熱してエステル交換することで、(A)成分を生成する。
【0038】
(a1)成分は、分岐鎖又は不飽和結合を有する炭素数9〜24の1価のアルコールである。原料アルコールと原料脂肪酸モノエステルとがエステル交換することにより、原料アルコールの炭化水素基が、アルコール残基として(A)成分のRとなる。
【0039】
(a1)成分は、求める(A)成分に応じて決定でき、例えば、イソノナノール、イソウンデカノール、イソトリデカノール、2−ヘキシルデカノール、オレイルアルコール、リノリルアルコール、2−オクチルデカノール、2−オクチルドデカノール、2−デシルテトラデカノール、リノリルアルコール、リノレニルアルコール、エライジルアルコール等が挙げられる。中でも、(A)成分の樹脂溶解性を抑制する観点から、イソトリデカノール、2−ヘキシルデカノール、2−オクチルデカノール、オレイルアルコール、リノリルアルコール、2−オクチルドデカノール、2−デシルテトラデカノール、リノレニルアルコール、エライジルアルコールが好ましく、さらに現像効率をより向上させる観点から、イソトリデカノール、2−ヘキシルデカノール、オレイルアルコール、リノリルアルコール、2−オクチルデカノール、2−オクチルドデカノールがより好ましい。
これらの(a1)成分は、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0040】
(a2)成分は、下記一般式(a2)で表される脂肪酸モノエステルである。
【0041】
−COOR ・・・(a2)
(上記(a2)式中、Rは(I)式のRと同じであり、Rは炭素数1〜8又は炭素数22以上のアルキル基を表わす。)
【0042】
(a2)式中、Rは、(I)式のRと同じである。
(a2)式中、Rは、直鎖又は分岐鎖を有する炭化水素基を表す。Rの炭化水素基の炭素数は、1〜8又は25以上であり、例えば、1〜2が好ましく、1がより好ましい。即ち、原料脂肪酸モノエステルとしては、脂肪酸メチルエステルが好ましい。原料アルコールと原料脂肪酸モノエステルとがエステル交換することにより、(a2)成分のRが、脂肪酸残基として(A)成分のRとなる。
【0043】
(a2)成分は、求める(A)成分に応じて決定でき、例えば、カプロン酸、カプリル酸、イソオクチル酸、イソノナン酸、カプリン酸、イソデカン酸、ラウリル酸、ミリスチン酸、ミリストレイン酸、パルミチン酸、イソパルミチン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ピノレン酸、エレオステアリン酸、エライジン酸、アラキン酸、アラキジン酸、エイコセン酸、エイコサジエン酸、ドコサジエン酸、ベヘン酸、エルカ酸又はエイコサトリエン酸のモノエステル等が挙げられる。中でも、(A)成分による樹脂溶解性を抑制し、かつ記録媒体へのトナー粒子の定着強度を向上させる観点から、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ピノレン酸、エイコセン酸、エイコサジエン酸、ドコサジエン酸、エルカ酸又はエイコサトリエン酸のモノエステルが好ましく、酸化による保存安定性をより抑制する観点から、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸又はピノレン酸のモノエステルがより好ましい。
これらの(a2)成分は、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0044】
第一のエステル交換工程における(a1)成分と(a2)成分との配合比は、(a1)/(a2)で表されるmol比が、例えば、1.0〜2.0が好ましく、1.2〜1.8がより好ましい。上記下限値未満であると、未反応の(a2)成分が多量に残留するおそれがあり、上記上限値超であると、未反応の(a1)成分が多量に残留するおそれがある。
【0045】
第一のエステル交換工程に用いる触媒としては、例えば、リチウム、セシウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、バリウム、カルシウム等の水酸化物、炭酸水素塩、炭酸塩、ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシド等の塩基性触媒、チタン系のテトライソプロピルチタネート、テトラn−ブチルチタネート、テトラエタノールアミンチタネート、テトラステアリルチタネート等が挙げられる。
【0046】
第一のエステル交換工程における触媒の使用量は、触媒の種類等を勘案して決定でき、例えば、(a2)成分100質量部に対し、0.05〜1.0質量部が好ましい。
【0047】
第一のエステル交換工程における到達温度は、(a1)成分、(a2)成分、触媒の種類等を勘案して決定でき、例えば、150〜260℃が好ましく、180〜230℃がより好ましい。上記下限値未満であると未反応の原料が残存しやすく、上記上限値超であると生成した(α)成分が分解されやすくなる。エステル交換法においては、反応温度を段階的に昇温することが好ましい。段階的に昇温することで、未反応の原料の残存量を減量できる。
【0048】
第一のエステル交換工程においては、大気圧下で加熱を開始した後、到達温度に達するまでに任意の圧力まで減圧することが好ましい。第一のエステル交換工程を減圧環境下とすることで、副生するアルコールを除去できる。到達圧力は、特に限定されないが、例えば、0.1〜2KPaが好ましく、0.6〜0.8KPaがより好ましい。上記下限値未満であると、(a1)成分と(a2)成分との混合物や副生するアルコールが突沸するおそれがあり、上記上限値超であると、未反応の(a1)成分と(a2)成分の残存量が多くなるおそれがある。エステル交換法においては、反応環境を段階的に減圧することが好ましい。段階的に減圧することで、副生するアルコールの残存量を減量して、反応の進行を速くできる。
【0049】
第一のエステル交換工程の後、必要に応じて精製工程を設けることができる。
精製工程は、第一のエステル交換工程で得られた(α)成分から、未反応の(a1)成分、未反応の(a2)成分又は副生物を除去し、(α)成分中の(A)成分の含有量を高める工程である。本発明の絶縁性液体は、(a1)成分及び(a2)成分が少ないほど、本発明の効果を高められる。
【0050】
精製工程には、従来公知の精製方法を用いることができ、例えば、焼成珪藻土等の濾過助剤を用いて濾別する方法、遠心分離等が挙げられる。
【0051】
(a1)成分と(a2)成分とをエステル交換して得られた(α)成分は、未反応の(a1)成分の含有量が少ないほど、帯電付与剤の溶出や電荷の離散を抑制して、現像効率をさらに向上できる。このため、(α)成分中の(a1)成分の含有量は、例えば、10質量%以下が好ましく、6質量%以下がより好ましい。
また、(a1)成分と(a2)成分とをエステル交換して得られた(α)成分は、未反応の(a2)成分の含有量が少ないほど、帯電付与剤の溶出や電荷の離散を抑制して、現像効率をさらに向上できる。このため、(α)成分中の(a2)成分の含有量は、例えば、1質量%以下が好ましく、0.6質量%以下がより好ましい。
【0052】
エステル交換法においては、(a2)成分に換えて油脂(以下、(a3)成分ということがある)を用いてもよい。
【0053】
(a3)成分は、求める(A)成分に応じて決定でき、例えば、オリーブ油、カカオ脂、シソ油、ツバキ油、落花生油、大豆油、菜種油、脱水ひまし油、桐油、紅花油、亜麻仁油、ひまわり油、コーン油、綿実油、ごま油、米糠油、大麻油、月見草油、パーム油、パーム核油、ヤシ油等が挙げられる。好ましくは、オリーブ油、カカオ脂、シソ油、ツバキ油、落花生油、大豆油、菜種油、脱水ひまし油、紅花油、亜麻仁油、ひまわり油、コーン油、綿実油、ごま油、米糠油、大麻油、月見草油、パーム油等、炭素数18の脂肪酸基を多く含有するものが好適に用いられる。中でも、酸化しにくいことから、パーム油がより好ましい。
【0054】
第一のエステル交換工程における(a1)成分と(a3)成分との配合比は、(a1)/(a3)で表されるmol比が、例えば、3.0〜9.0が好ましく、3.9〜5.2がより好ましい。上記下限値未満であると、未反応の(a3)成分が多量に残留するおそれがあり、上記上限値超であると、未反応の(a1)成分が多量に残留するおそれがある。
【0055】
(a1)成分と(a3)成分とをエステル交換して得られた(α)成分は、未反応の(a1)成分の含有量が少ないほど、帯電付与剤の溶出や電荷の離散を抑制して、現像効率をさらに向上できる。このため、(α)成分中の(a1)成分の含有量は、例えば、10質量%以下が好ましく、6質量%以下がより好ましい。
また、(a1)成分と(a3)成分とをエステル交換して得られた(α)成分は、未反応の脂肪酸モノエステルの含有量が少ないほど、帯電付与剤の溶出や電荷の離散を抑制して、現像効率をさらに向上できる。このため、(α)成分中の(a3)成分の含有量は、例えば、1質量%以下が好ましく、0.6質量%以下がより好ましい。
また、(a1)成分と(a3)成分とをエステル交換して得られた(α)成分は、(a3)成分から分離した脂肪酸の含有量が少ないほど、帯電付与剤の溶出や電荷の離散を抑制して、現像効率をさらに向上できる。このため、(α)成分において、脂肪酸の含有量の指標となる酸価は、例えば、1mgKOH/g以下が好ましく、0.6mgKOH/g以下がより好ましい。
【0056】
[エステル化法]
エステル化法としては、例えば、(a1)成分で、原料脂肪酸(a4)(以下、(a4)成分ということがある)をエステル化する第一のエステル化工程を有する方法が挙げられる。
第一のエステル化工程では、(a1)成分と(a4)成分とを触媒の存在下で任意の温度に加熱して、(a1)成分で(a4)成分をエステル化することで、(A)成分を生成する。
【0057】
(a4)成分は、下記一般式(a4)で表される脂肪酸である。
【0058】
−COOH ・・・(a4)
(上記(III)式中、Rは、前記(I)式のRと同じである。)
【0059】
(a1)成分で(a4)成分をエステル化することにより、(a4)成分のRが、脂肪酸残基として(A)成分のRとなる。
【0060】
(a4)成分は、求める(A)成分に応じて決定でき、例えば、カプロン酸、カプリル酸、イソオクチル酸、イソノナン酸、カプリン酸、イソデカン酸、ラウリル酸、ミリスチン酸、ミリストレイン酸、パルミチン酸、イソパルミチン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ピノレン酸、エレオステアリン酸、エライジン酸、アラキン酸、アラキジン酸、エイコセン酸、エイコサジエン酸、ドコサジエン酸、ベヘン酸、エルカ酸又はエイコサトリエン酸が挙げられる。中でも、(A)成分による樹脂溶解性を抑制し、かつ記録媒体へのトナー粒子の定着強度を向上させる観点から、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ピノレン酸、エイコセン酸、エイコサジエン酸、ドコサジエン酸、エルカ酸又はエイコサトリエン酸が好ましく、酸化による保存安定性をより抑制する観点から、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸又はピノレン酸がより好ましい。
これらの(a4)成分は、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0061】
第一のエステル化工程における(a1)と(a4)との配合比は、(a1)/(a4)で表されるmol比が、例えば、1.0〜2.0が好ましく、1.2〜1.8がより好ましい。上記下限値未満であると、未反応の(a4)成分が多量に残留するおそれがあり、上記上限値超であると、未反応の(a1)成分が多量に残留するおそれがある。
【0062】
第一のエステル化工程に用いる触媒としては、例えば、硫酸、p−トルエンスルホン酸(p−TS)、ベンゼンスルホン酸(BS)等の酸触媒、ZrO、TiO、SiO、PO、Al、ZnO等の無機酸化物触媒等が挙げられる。
【0063】
第一のエステル化工程における触媒の使用量は、触媒の種類等を勘案して決定でき、例えば、(a4)成分100質量部に対し、0.05〜1.0質量部が好ましい。
【0064】
第一のエステル化工程における到達温度は、(a1)成分、(a4)成分、触媒の種類等を勘案して決定でき、例えば、150〜260℃が好ましく、180〜230℃がより好ましい。上記下限値未満であると未反応の原料が残存しやすく、上記上限値超であると生成した(α)成分が分解されやすくなる。エステル化法においては、反応温度を段階的に昇温することが好ましい。段階的に昇温することで、未反応の原料の残存量を減量できる。
【0065】
第一のエステル化工程においては、大気圧下で加熱を開始した後、到達温度に達するまでに任意の圧力まで減圧することが好ましい。第一のエステル化工程を減圧環境下とすることで、副生する水を除去できる。到達圧力は、特に限定されないが、例えば、0.1〜2KPaが好ましく、0.6〜0.8KPaがより好ましい。上記下限値未満であると、(a1)成分と(a4)成分との混合物や副生する水が突沸するおそれがあり、上記上限値超であると、未反応の(a1)成分と(a4)成分との残存量が多くなるおそれがある。エステル化法においては、反応環境を段階的に減圧することが好ましい。段階的に減圧することで、副生する水の残存量を減量できる。
【0066】
第一のエステル化工程の後、必要に応じて精製工程を設けることができる。
精製工程は、第一のエステル交換工程の後段に設けられる精製工程と同様である。
【0067】
(a1)成分で(a4)成分をエステル化して得られた(α)成分は、未反応の(a1)成分の含有量が少ないほど、帯電付与剤の溶出や電荷の離散を抑制して、現像効率をさらに向上できる。このため、(α)成分中の(a1)成分の含有量は、例えば、10質量%以下が好ましく、6質量%以下がより好ましい。
(a1)成分で(a4)成分をエステル化して得られた(α)成分は、未反応の(a4)成分の含有量が少ないほど、帯電付与剤の溶出や電荷の離散を抑制して、現像効率をさらに向上できる。このため、(α)成分において、脂肪酸の含有量の指標となる酸価は、例えば、1mgKOH/g以下が好ましく、0.6mgKOH/g以下がより好ましい。
【0068】
<アルコール(A−i)>
アルコール(A−i)(以下、(A−i)成分ということがある)は、炭素数9〜24の1価のアルコールである。(A−i)成分は、上述した(α)成分の製造に用いられた(a1)成分の未反応物、エステル交換で生じた副生物等、不可避的に含有されるものの他、絶縁性液体の粘度調整等を目的として配合されるものを含む。
【0069】
絶縁性液体中の(A−i)成分の含有量は、10質量%以下であり、6質量%以下が好ましく、0質量%であってもよい。(A−i)成分の含有量が少ないほど、絶縁性液体は帯電付与剤の溶出や電荷の離散を抑制して、現像効率を高められる。
【0070】
<脂肪酸モノエステル(A−ii)>
脂肪酸モノエステル(A−ii)(以下、(A−ii)成分ということがある)は、下記一般式(II)で表されるものである。(A−ii)成分は、上述した(α)成分の製造に用いられた(a2)成分や(a3)成分の未反応物、後述する(β)成分の製造に用いられた(b2)成分等、不可避的に含有されるものの他、絶縁性液体の粘度調整等を目的として配合されるものを含む。
【0071】
−COOR ・・・(II)
(上記(II)式中、Rは炭素数5〜21の炭化水素基であり、Rは炭素数1〜8の炭化水素基である。)
【0072】
絶縁性液体中の(A−ii)成分の含有量は、1質量%以下であり、0.6質量%以下が好ましく、0質量%であってもよい。(A−ii)成分の含有量が少ないほど、帯電付与剤の溶出や電荷の離散を抑制して、現像効率を高められる。特に、(A−ii)成分として、Rが炭素数1である(即ち、(A−ii)成分が脂肪酸メチルエステル)場合、現像効率の低下が顕著である。
【0073】
<脂肪酸>
脂肪酸は、上述した(α)成分の製造に用いられた(a3)成分から分離した脂肪酸、(a4)成分の未反応物、後述する(β)成分の製造に用いられる(b3)成分等、不可避的に含有されるものの他、絶縁性液体の粘度調整等を目的として配合されるものを含む。
【0074】
絶縁性液体中の脂肪酸の含有量は、脂肪酸の含有量の指標となる酸価が、1mgKOH/g以下であり、0.6mgKOH/g以下が好ましい。脂肪酸の含有量が少ないほど、帯電付与剤の溶出や電荷の離散を抑制して、現像効率を高められる。
【0075】
<ポリオールエステル組成物(β)>
本発明の絶縁性液体は、ポリオールエステル組成物(β)(以下、(β)成分ということがある)を含有してもよい。
本発明の(β)成分は、3価以上のポリオールエステル(B)(以下、(B)成分ということがある)を含有するものである。絶縁性液体は、(β)成分を含有することで、トナー粒子同士の凝集をより良好に抑制して、保存安定性のさらなる向上が図れると共に、トナー粒子の記録媒体への定着強度をより向上できる。
【0076】
(β)成分としては、(B)成分を含むものであればよく、例えば、オリーブ油、カカオ脂、シソ油、ツバキ油、落花生油、大豆油、菜種油、脱水ひまし油、桐油、紅花油、亜麻仁油、ひまわり油、コーン油、綿実油、ごま油、米糠油、大麻油、月見草油、パーム油、パーム核油、ヤシ油等の天然油脂や、合成油脂等が挙げられる。天然油脂の中では、オリーブ油、カカオ脂、シソ油、ツバキ油、落花生油、大豆油、菜種油、脱水ひまし油、紅花油、亜麻仁油、ひまわり油、コーン油、綿実油、ごま油、米糠油、大麻油、月見草油、パーム油等、炭素数18の脂肪酸基を多く含有するものが好適に用いられる。中でも、酸化しにくいことから、パーム油がより好ましい。
これら(β)成分は、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0077】
(β)成分のヨウ素価は、30〜130g/100gが好ましく、40〜110g/100gがより好ましく、50〜90g/100gがさらに好ましい。上記下限値未満であると、記録媒体へのトナー粒子の定着強度が低下するおそれがあり、上記上限値超であると、保存安定性が低下するおそれがある。加えて、上記範囲内であれば、トナー粒子の記録媒体への定着強度をより高められる。さらにトナー粒子に対する絶縁性液体の親和性を高めて、液体現像剤の保存性をより向上できる。
【0078】
(β)成分の動粘度(40℃)は、特に限定されないが、15〜100mm/秒が好ましく、20〜85mm/秒がより好ましく、25〜60mm/秒がさらに好ましい。上記下限値未満であると、液体現像剤中でのトナー粒子の分散安定性が低下する傾向にあり、上記上限値超であると、トナー粒子の移動速度が低下して現像効率が低下する傾向にある。
【0079】
加えて、(β)成分を含有する絶縁性液体の動粘度(40℃)は、15〜32mm/秒が好ましく、15〜26mm/秒がより好ましく、15〜20mm/秒がさらに好ましい。上記下限値以上であれば、保存安定性のさらなる向上が図れ、上記上限値以下であれば、現像効率のさらなる向上が図れる。
【0080】
(β)成分の体積抵抗率(20℃)は、例えば、1.0×1012Ωcm以上が好ましく、5.0×1012Ωcm以上がより好ましく、1.0×1013Ωcm以上がさらに好ましい。上記下限値以上であれば、トナー粒子への電荷付与性を向上させ、かつ、帯電されたトナー粒子の電荷を安定にでき、帯電安定性に優れた絶縁性液体となり、より高画質の画像を形成できる。
【0081】
絶縁性液体中の(β)成分の含有量は、絶縁性液体に求める機能を勘案して決定でき、例えば、50質量%以下が好ましく、15〜35質量%がより好ましい。上記上限値超であると現像効率が低下し、上記下限値未満であると定着強度、保存安定性のさらなる向上が図れないおそれがある。
【0082】
≪3価以上のポリオールエステル(B)≫
(B)成分は、3価以上のポリオールエステルである。(B)成分は、(A)成分の種類等を勘案して決定でき、例えば、前述の天然油脂に含有されるトリグリセライド、後述する製造方法により、3価以上のポリオール(b1)と、原料脂肪酸モノエステル(b2)及び脂肪酸(b3)から選択される1種とから合成されるエステルが挙げられる。
【0083】
(β)成分中の(B)成分の含有量は、多いほど本発明の効果を好適に発揮でき、例えば、90質量%以上が好ましく、95質量%以上がより好ましく、98質量%以上がさらに好ましく、100質量%であってもよい。
【0084】
≪(β)成分の製造方法≫
(β)成分の製造方法としては、特に限定されず、従来公知のエステル交換法、エステル化法等が挙げられる。
【0085】
[エステル交換法]
エステル交換法としては、例えば、3価以上のポリオール(b1)(以下、(b1)成分ということがある)と、原料脂肪酸モノエステル(b2)(以下、(b2)成分ということがある)とをエステル交換する第二のエステル交換工程を有する方法が挙げられる。
第二のエステル交換工程では、(b1)成分と(b2)成分とを触媒の存在下で任意の温度に加熱してエステル交換することで、(B)成分を生成する。
【0086】
(b1)成分は、3価の以上のポリオールであれば特に限定されず、例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオール、トリメチロールエタン等のアルカントリオールやジグリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、マンニトール、ソルビタン等のアルカンポリオール及びアルカントリオールの分子内又は分子間脱水物、ショ糖、グルコース、マンノース、フルクトース、メチルグルコシド等の糖類及びその誘導体等が挙げられる。中でも、グリセリン、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオール、トリメチロールエタン、ジグリセリン、ペンタエリスリトール等の3〜4価のポリオールが好ましい。3〜4価のポリオールは、トナー粒子の分散安定性を向上させ、絶縁性液体の体積抵抗率を維持しやすくさせ、トナー粒子への電荷付与性を高め、かつ、帯電されたトナー粒子の電荷をさらに安定化できる。より好ましくは、グリセリン、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオール、トリメチロールエタン等の3価のポリオールが挙げられる。3価のポリオールであれば、液体現像剤の現像効率をより高められる。
これらの(b1)成分は、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0087】
(b2)成分は、脂肪酸モノエステルであれば特に限定されないが、(a2)成分と同様であることが好ましい。(b2)成分として(a2)成分と同様のものを用いことで、(α)成分との相溶性を高められる。
【0088】
第二のエステル交換工程における(b1)成分と(b2)成分との配合比は、(b2)/(b1)で表されるmol比が、例えば、(b1)成分が3価のポリオールの場合、3.0〜6.0が好ましく、3.6〜4.5がより好ましい。上記下限値未満であると、未反応の(b1)成分が多量に残留するおそれがあり、上記上限値超であると、未反応の(b2)成分が多量に残留するおそれがある。
【0089】
第二のエステル交換工程に用いる触媒は、第一のエステル交換工程に用いる触媒と同様である。
【0090】
第二のエステル交換工程における触媒の使用量は、触媒の種類等を勘案して決定でき、例えば、(b2)成分100質量部に対し、0.05〜1.0質量部が好ましい。
【0091】
第二のエステル交換工程における到達温度は、第一のエステル交換工程における到達温度と同様である。
【0092】
第二のエステル交換工程においては、大気圧下で加熱を開始した後、到達温度に達するまでに任意の圧力まで減圧することが好ましい。第二のエステル交換工程における到達圧力は、第一のエステル交換工程における到達温度と同様である。
【0093】
第二のエステル交換工程の後、必要に応じて精製工程を設けることができる。
精製工程は、第二のエステル交換工程で得られた(β)成分から、未反応の(b1)成分、未反応の(b2)成分又は副生物を除去し、(β)成分中の(B)成分の含有量を高める工程である。本発明の絶縁性液体は、(β)成分中の(b1)成分及び(b2)成分が少ないほど、本発明の効果を高められる。
第二のエステル交換工程の後段に設けられる精製工程は、第一のエステル交換工程の後段に設けられる精製工程と同様である。
【0094】
(b1)成分と(b2)成分とをエステル交換して得られた(β)成分は、未反応の(b1)成分の含有量が少ないほど、帯電付与剤の溶出や電荷の離散を抑制して、現像効率をさらに向上できる。このため、(β)成分中の(b1)成分の含有量は、例えば、10質量%以下が好ましく、6質量%以下がより好ましい。
また、(b1)成分と(b2)成分とをエステル交換して得られた(β)成分は、未反応の(b2)成分の含有量が少ないほど、帯電付与剤の溶出や電荷の離散を抑制して、現像効率をさらに向上できる。このため、(β)成分中の(b2)成分の含有量は、例えば、1質量%以下が好ましく、0.6質量%以下がより好ましい。
【0095】
[エステル化法]
エステル化法としては、例えば、(b1)成分で、原料脂肪酸(b3)(以下、(b3)成分ということがある)をエステル化する第二のエステル化工程を有する方法が挙げられる。
第二のエステル化工程では、(b1)成分と(b3)成分とを触媒の存在下で任意の温度に加熱して、(b1)成分で(b3)成分をエステル化することで、(B)成分を生成する。
【0096】
(b3)成分は、脂肪酸であれば特に限定されないが、前述の(a4)成分と同様のものが好ましい。
【0097】
第二のエステル化工程における(b1)成分と(b3)成分との配合比は、(b3)/(b1)で表されるmol比が、例えば、(b1)成分が3価のポリオールの場合、3.0〜6.0が好ましく、3.6〜4.5がより好ましい。上記下限値未満であると、未反応の(b1)成分が多量に残留するおそれがあり、上記上限値超であると、未反応の(b3)成分が多量に残留するおそれがある。
【0098】
第二のエステル化工程に用いる触媒は、第一のエステル化工程に用いる触媒と同様である。
【0099】
第二のエステル化工程における触媒の使用量は、触媒の種類等を勘案して決定でき、例えば、(b3)成分100質量部に対し、0.05〜1.0質量部が好ましい。
【0100】
第二のエステル化工程における到達温度は、(b1)成分、(b3)成分、触媒の種類等を勘案して決定でき、例えば、150〜260℃が好ましく、180〜230℃がより好ましい。上記下限値未満であると未反応の原料が残存しやすく、上記上限値超であると生成した(β)成分が分解されやすくなる。エステル化法においては、反応温度を段階的に昇温することが好ましい。段階的に昇温することで、未反応の原料の残存量を減量できる。
【0101】
第二のエステル化工程においては、大気圧下で加熱を開始した後、到達温度に達するまでに任意の圧力まで減圧することが好ましい。第二のエステル化工程を減圧環境下とすることで、副生する水を除去できる。到達圧力は、特に限定されないが、例えば、0.1〜2KPaが好ましく、0.6〜0.8KPaがより好ましい。上記下限値未満であると、(b1)成分と(b3)成分との混合物や副生する水が突沸するおそれがあり、上記上限値超であると、未反応の(b1)成分と(b3)成分との残存量が多くなるおそれがある。エステル化法においては、反応環境を段階的に減圧することが好ましい。段階的に減圧することで、副生物水の量を減量して、反応の進行を速くできる。
【0102】
第二のエステル化工程の後、必要に応じて精製工程を設けることができる。
第二のエステル化工程の後段に設ける精製工程は、第一のエステル交換工程の後段に設けられる精製工程と同様である。
【0103】
(b1)成分で(b3)成分をエステル化して得られた(β)成分は、未反応の(b1)成分の含有量が少ないほど、帯電付与剤の溶出や電荷の離散を抑制して、現像効率をさらに向上できる。このため、(β)成分中の(b1)成分の含有量は、例えば、10質量%以下が好ましく、6質量%以下がより好ましい。
(b1)成分で(b3)成分をエステル化して得られた(β)成分は、未反応の(b3)成分の含有量が少ないほど、帯電付与剤の溶出や電荷の離散を抑制して、現像効率をさらに向上できる。このため、(β)成分において、脂肪酸の含有量の指標となる酸価は、例えば、1mgKOH/g以下が好ましく、0.6mgKOH/g以下がより好ましい。
【0104】
<3価以上のポリオール(B−i)>
3価以上のポリオール(B−i)(以下、(B−i)成分ということがある)は、上述した(β)成分の製造に用いられた(b1)成分の未反応物等、不可避的に含有されるものの他、絶縁性液体の粘度調整等を目的として配合されるものを含む。
【0105】
絶縁性液体中の(B−i)成分の含有量は、10質量%以下であり、6質量%以下が好ましく、0質量%であってもよい。(B−i)成分の含有量が少ないほど、絶縁性液体は帯電付与剤の溶出や電荷の離散を抑制して、現像効率を高められる。
加えて、絶縁性液体中の(A−i)成分の含有量と(B−i)成分の含有量との合計は、20質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましく、6質量%以下がさらに好ましい。上記上限値超では、現像効率が低下するおそれがある。
【0106】
<任意成分>
本発明の絶縁性液体は、必要に応じて、酸化防止剤、酸化重合促進剤、防腐剤、防錆剤、流動点降下剤、香料、本発明の絶縁性液体を除く絶縁性液体(任意絶縁性液体)等の任意成分を含有できる。
【0107】
≪酸化防止剤≫
本発明の絶縁性液体は、酸化防止剤を含有することで、液体現像剤の保存安定性を特に優れたものにできる。
酸化防止剤としては、例えば、トコフェロール、d−トコフェロール、dl−α−トコフェロール、酢酸−α−トコフェロール、酢酸dl−α−トコフェロール、酢酸トコフェロール、α−トコフェロール等のビタミンE、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、アスコルビン酸、アスコルビン酸塩類、アスコルビン酸ステアリン酸エステル等のビタミンC、緑茶抽出物、生コーヒー抽出物、セサモール、セサミノール等が挙げられる。これらの酸化防止剤は、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0108】
酸化防止剤としてビタミンEを用いた場合、以下のような効果が得られる。ビタミンEは、環境負荷が小さい成分であると共に、ビタミンEが酸化されて生じる物質は、液体現像剤への影響が小さい成分である。このため、液体現像剤をより環境に優しいものとすることができる。また、ビタミンEは、不飽和脂肪酸成分又は飽和脂肪酸成分(即ち、(α)成分もしくは(β)成分、又は、(α)成分もしくは(β)成分の原料中の脂肪酸残基)、特にグリセリドを含む液体への分散性が高いことから、酸化防止剤として好適に用いることができる。さらに、ビタミンEとグリセリドとを併用することにより、絶縁性液体とトナー粒子との親和性をさらに向上させることができる。この結果、液体現像剤の保存性、記録媒体に対するトナー粒子の定着性等が特に優れたものとなる。
絶縁性液体中における酸化防止剤の含有量は、0.01〜15質量%が好ましく、0.1〜7質量%がより好ましく、1〜7質量%がさらに好ましい。上記範囲内であれば、液体現像剤としての保存性、長期安定性を特に優れたものにできる。
酸化防止剤の熱分解温度は、200℃以下であることが好ましい。これにより、液体現像剤としての保存性、長期安定性をより優れたものにできる。
【0109】
≪酸化重合促進剤≫
本発明の絶縁性液体は、トナー粒子が記録媒体に定着する際、不飽和脂肪酸成分の酸化重合反応を促進する酸化重合促進剤を含んでいてもよい。これにより、記録媒体へのトナー粒子の定着特性を特に優れたものとすることができる。
【0110】
酸化重合促進剤は、特に限定されないが、保存時等(画像形成装置のアイドリング時等を含む)において、実質的に不飽和脂肪酸成分の酸化重合反応に寄与せず、必要時(定着時)において、不飽和脂肪酸成分の酸化重合(硬化)反応に寄与するものが好ましい。これにより、液体現像剤の保存安定性をより優れたものとしつつ、記録媒体へのトナー粒子の定着強度を特に優れたものとすることができる。
【0111】
酸化重合促進剤としては、例えば、加熱条件下で不飽和脂肪酸成分の酸化重合反応(硬化反応)を促進する機能を有し、室温付近では実質的に不飽和脂肪酸成分の酸化重合反応(硬化反応)を促進する機能を有さない物質、即ち、不飽和脂肪酸成分の酸化重合反応(硬化反応)における活性化エネルギーが比較的高い物質を用いることができる。
【0112】
このような酸化重合促進剤としては、例えば、樹脂酸金属塩(例えば、コバルト塩、マンガン塩、鉛塩等)、リノレン酸金属塩(例えば、コバルト塩、マンガン塩、鉛塩等)、オクチル酸金属塩(例えば、コバルト塩、マンガン塩、鉛塩、亜鉛塩、カルシウム塩等)、ナフテン酸金属塩(例えば、亜鉛塩、カルシウム塩等)等の各種の脂肪酸金属塩等が挙げられる。
これらの脂肪酸金属塩は、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
脂肪酸金属塩は、定着時に酸素を供給して、不飽和脂肪酸成分の酸化重合反応を促進し、定着時等の加熱時において酸化重合反応を効果的に促進できる。従って、保存時等においては酸化重合反応が生じるのをより確実に防止しつつ、定着時等において酸化重合反応をより効果的に促進することができる。また、脂肪酸金属塩は、不飽和脂肪酸成分及び飽和脂肪酸成分を含む液体への分散性が高いため、絶縁性液体中において均一に分散でき、その結果、記録媒体へのトナー粒子の定着時に、酸化重合反応を全体的に効率よく進行させることができる。
【0113】
酸化重合促進剤は、カプセル化された状態で、絶縁性液体中に含まれるものであってもよい。カプセル化されていることで、保存時等(画像形成装置のアイドリング時等を含む)において、実質的に不飽和脂肪酸成分の酸化重合反応に寄与せず、必要時において不飽和脂肪酸成分の酸化重合(硬化)反応に寄与するものとすることができる。これは、液体現像剤の保存時等における酸化重合反応をより確実に防止すると共に、記録媒体へのトナー粒子の定着時においてカプセルが定着時の圧力等によって潰れ、酸化重合促進剤と不飽和脂肪酸成分とが接触し、不飽和脂肪酸成分の酸化重合反応を確実に進行させるためである。
加えて、カプセル化されていると、酸化重合促進剤の材料の選択の幅が広がる。言い換えると、反応性の高い酸化重合促進剤(比較的低温で不飽和脂肪酸成分の酸化重合反応に寄与する酸化重合促進剤)であっても好適に用いることができ、記録媒体へのトナー粒子の定着強度を特に優れたものとすることができる。
【0114】
絶縁性液体中の酸化重合促進剤の含有量は、0.05〜7質量%が好ましく、0.1〜5質量%がより好ましい。上記範囲内であれば、液体現像剤の保存時等における酸化重合反応を十分に防止しつつ、記録媒体へのトナー粒子の定着時において不飽和脂肪酸成分の酸化重合反応をより確実に進行させることができる。
【0115】
なお、酸化防止剤及び酸化重合促進剤を含む絶縁性液体を調製する場合、酸化防止剤は、例えば、酸化重合促進剤を分散する前に、絶縁性液体に含ませておいてもよいし、酸化重合促進剤を分散した後に、絶縁性液体に加えてもよいし、酸化重合促進剤を分散させる際に、絶縁性液体に加えてもよい。
【0116】
≪流動点降下剤≫
流動点降下剤としては、特開2004−149705号公報に記載のアルキルメタクリレート系ポリマー等が挙げられる。好ましくは、脂肪酸エステルに対する低温流動性改善の効果が高い点で、例えば、三洋化成工業社製のアクルーブシリーズが挙げられる。絶縁性液体中の流動点降下剤の含有量は、低温流動性を改善するために、0.01〜3質量%が好ましく、動粘度を増加させない点で0.01〜1質量%がより好ましい。
【0117】
≪香料≫
香料としては、例えば、リナロール、ゲラニオール、シトロネロール、ロジノール、ネロール、ボルネオール、メントール、β−フェニルエチルアルコール、エチルマルトール、エチルバニリン、ダマセノン、ダマスコン、イソダマスコン、α−ダイナスコン、ヨノン、メチルヨノン、リモネン、リナリルアセテート、ゲラニルアセテート、ネリルアセテート、ゲラニルプロピオネート、ローズ系調合香料あるいはローズオイル、ハッカハクオイル、カモミルオイル、ライム系調合香料あるいはライムオイル、オレンジ系調合香料あるいはオレンジオイル、ラベンダー系調合香料あるいはラベンダーオイル、ジャスミン系調合香料あるいはジャスミンオイル、ライラック系調合香料あるいはライラックオイル等が挙げられる。これらの香料は、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
絶縁性液体中の香料の含有量は、マスキングする効果を得る点で0.05〜1質量%が好ましく、低温での液安定性を良好に維持できる点で0.1〜0.6質量%がより好ましい。
【0118】
≪任意絶縁性液体≫
任意絶縁性液体としては、本発明の効果を損なわないものであればよく、例えば、アイソパーC、アイソパーE、アイソパーG、アイソパーH、アイソパーL、アイソパーM、アイソパーV(以上、商品名、エクソンモービル社製)等のパラフィン系溶媒、エクソール100/140、エクソールD30、エクソールD40、エクソールD80、エクソールD110、エクソールD130(以上、商品名、エクソンモービル社製)等のナフテン系溶媒、日石ハイゾールSAS(商品名、JX日鉱日石エネルギー株式会社製)等の芳香族炭化水素系溶媒、シリコーンオイルKF96−10(商品名、信越化学工業株式会社製)等のシリコーン系溶媒等が挙げられる。
【0119】
<絶縁性液体の製造方法>
絶縁性液体の製造方法は特に限定されず、例えば、(α)成分を単独で絶縁性液体としてもよいし、(α)成分と、必要に応じて(β)成分及び/又は任意成分とを混合して絶縁性液体としてもよい。
(α)成分と、(β)成分及び/又は任意成分との混合方法は、特に限定されず、例えば、(α)成分と、(β)成分及び/又は任意成分とを攪拌装置に投入し、任意の温度に加熱しながら攪拌する方法が挙げられる。
【0120】
(絶縁性液体の使用方法)
本発明の絶縁性液体は、液体現像剤の分散媒として用いられる。
液体現像剤は、例えば、トナー粒子を絶縁性液体中に分散することにより製造される。トナー粒子を絶縁性液体に分散する方法は、特に限定されず、例えば、攪拌装置に投入し、攪拌する方法が挙げられる。
【0121】
トナー粒子は、結着樹脂と着色剤とを含有するものであり、例えば、以下の方法により製造される。
例えば、結着樹脂、顔料や染料等の着色剤、必要に応じて分散剤等を溶融混練し、その後冷却して混練物とし、この混練物を粗粉砕してトナー粒子原料粉とする。結着樹脂としては、例えば、ポリエステル樹脂、スチレンアクリル共重合体、エポキシ樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体等が好ましい。
トナー粒子原料粉を本発明の絶縁性液体中で微粉砕して、トナー粒子とする。微粉砕する方法は、従来公知の方法が用いられ、例えば、ボールミルやピンミル等の粉砕装置を用いる方法が挙げられる。トナー粒子の平均粒子径は、特に限定されず、例えば、0.1〜3μmとされる。
液体現像剤中のトナー粒子の含有量は、液体現像剤の用途等を勘案して決定でき、例えば、2〜50質量%とされる。
【0122】
本発明の絶縁性液体を用いた液体現像剤は、従来公知の画像形成装置の現像剤として用いることができる。
画像形成装置としては、例えば、図1に示す画像形成装置1が挙げられる。
【0123】
画像形成装置1は、像担持体の一例としての感光体10と、感光体10の回転方向に沿って、帯電ローラー11と、露光ユニット12と、現像ユニット100と、感光体スクイーズ装置101と、1次転写バックアップローラー51と、除電ユニット16と、感光体クリーニングブレード17と、現像剤回収部18とを備えるものである。
【0124】
感光体10は、円筒状の基材とその外周面に形成され、例えばアモルファスシリコン等の材料で構成された感光層を有し、中心軸を中心に回転可能であり、本実施形態においては、図1中の矢印で示すように時計回りに回転する。
感光体10は、後述する現像ユニット100から液体現像剤が供給され、供給された液体現像剤の層が表面に形成されるものである。
【0125】
帯電ローラー11は、感光体10を帯電させるためのものであり、露光ユニット12は、レーザーを照射することによって帯電された感光体10上に潜像を形成するものである。この露光ユニット12は、半導体レーザー、ポリゴンミラー、F−θレンズ等を有しており、不図示のホストコンピューターから入力された画像信号に基づいて、変調されたレーザーを帯電された感光体10上に照射する。
【0126】
現像ユニット100は、感光体10に形成された潜像を、液体現像剤を用いて現像するためのものである。
感光体スクイーズ装置101は、現像ユニット100の回転方向下流側に、感光体10に対向して配置されており、感光体スクイーズローラー13と、該感光体スクイーズローラー13に押圧摺接して表面に付着した液体現像剤を除去するクリーニングブレード14と、除去された液体現像剤を回収する現像剤回収部15とで構成される。この感光体スクイーズ装置101は、感光体10に現像された現像剤から余剰な絶縁性液体及び不要なカブリトナーを回収し、顕像内のトナー粒子比率を上げる機能を有する。
【0127】
1次転写バックアップローラー51は、感光体10に形成された単色像を、後述する中間転写部40に転写するためのものである。
除電ユニット16は、1次転写バックアップローラー51によって中間転写部40上に中間転写像が転写された後に、感光体10上の残留電荷を除去するものである。
感光体クリーニングブレード17は、感光体10の表面に当接されたゴム製の部材で、1次転写バックアップローラー51によって中間転写部40上に像が転写された後に、感光体10上に残存する液体現像剤を掻き落として除去するものである。
現像剤回収部18は、感光体クリーニングブレード17により除去された液体現像剤を回収するものである。
【0128】
中間転写部40は、エンドレスの弾性ベルト部材であり、図示しないモータの駆動力が伝達されるベルト駆動ローラー(不図示)及び従動ローラー(不図示)に張架されている。また、中間転写部40は、1次転写バックアップローラー51で感光体10と当接しながら反時計回りに回転駆動される。
この中間転写部40に、1次転写バックアップローラー51により、現像部30で形成された単色像(中間転写像)が転写される。
中間転写部40には、感光体10に形成した単色像を2次転写して重ね合わせて担持し、2次転写ユニット(不図示)で紙、フィルム、布等の記録媒体に2次転写する。
また、中間転写部40には、中間転写部クリーニングブレード、現像剤回収部、非接触式バイアス印加部材からなるクリーニング装置(不図示)が配置されている。
【0129】
1次転写バックアップローラー51より中間転写部40の移動方向下流側には、中間転写部スクイーズ装置52が配されている。この中間転写部スクイーズ装置52は、中間転写部40上に転写された液体現像剤が望ましい分散状態に至っていない場合に、転写された液体現像剤から余剰の絶縁性液体を除去する手段として設けられている。
中間転写部スクイーズ装置52は、中間転写部スクイーズローラー53と、中間転写部スクイーズローラー53に押圧摺接して表面をクリーニングする中間転写部スクイーズクリーニングブレード55と、中間転写部スクイーズクリーニングブレード55で除去された液体現像剤を回収する現像剤回収部56とから構成される。
中間転写部スクイーズ装置52は、中間転写部40に1次転写された液体現像剤から余剰な絶縁性液体を回収し、像内のトナー粒子比率を上げると共に、不要なカブリトナーを回収する機能を有する。
【0130】
2次転写ユニットは、記録媒体の移動方向に沿って所定間隔離間して配置された一対の2次転写ローラーを備えるものであり、これらの2次転写ローラーは、前述のベルト駆動ローラー又は従動ローラーと中間転写部40を介して圧接可能となっている。そして、2次転写ユニットは、搬送されてきた記録媒体と中間転写部40とを密着させ、中間転写部40上の中間転写像を記録媒体に転写する。
【0131】
2次転写ユニットにより画像が転写された記録媒体は、定着部(不図示)に送られ、加熱及び加圧されて、トナー粒子が定着されたものとなる。定着温度は、例えば、80〜160℃とされる。
【0132】
現像ユニット100は、液体現像剤貯留部31と、塗布ローラー32と、規制ブレード33と、現像剤攪拌ローラー34、連通部35と、回収スクリュー36と、現像ローラー20と、現像ローラークリーニングブレード21と、現像剤回収部24とを備えている。
【0133】
液体現像剤貯留部31は、感光体10に形成された潜像を現像するための液体現像剤を貯留する機能を備えており、液体現像剤を現像部に供給する供給部31aと、供給部31a等で発生した余剰の液体現像剤を回収する回収部31bと、供給部31aと回収部31bとを仕切る仕切31cとを備えている。
【0134】
供給部31aは、液体現像剤を塗布ローラー32に供給するものであり、現像剤撹拌ローラー34を設置した凹状の部分を有する。また、供給部31aには、液体現像剤混合槽93から連通部35を通じて液体現像剤が供給される。
【0135】
回収部31bは、供給部31aに過剰に供給された液体現像剤や現像剤回収部15、24で生じた余剰な液体現像剤を回収するものである。回収された液体現像剤は、後述する液体現像剤混合槽93に搬送され、再利用される。また、回収部31bは、凹状の部分を有し、その底付近に回収スクリュー36が設置されている。
供給部31aと回収部31bとの境界には、供給部31aと回収部31bとを仕切る仕切31cが設けられている。
【0136】
仕切31cには、切欠部が形成されており、切欠部を通じて液体現像剤が供給部31aから回収部31bへあふれ出るようにされている。
塗布ローラー32は、液体現像剤を現像ローラー20へ供給するものである。この塗布ローラー32は、鉄等の金属性のローラーの表面に溝が均一かつ螺旋状に形成されニッケルメッキが施された、いわゆるアニロクスローラーといわれるものであり、その直径は約25mmである。本実施形態では、塗布ローラー32の回転方向に対して斜めに複数の溝が、いわゆる切削加工や転造加工等によって形成されている。この塗布ローラー32は、反時計回りに回転しながら液体現像剤に接触することによって、溝に、供給部31a内の液体現像剤を担持して、該担持した液体現像剤を現像ローラー20へ搬送する。
【0137】
規制ブレード33は、塗布ローラー32の表面に当接して、塗布ローラー32上の液体現像剤の量を規制する。すなわち、当該規制ブレード33は、塗布ローラー32上の余剰の液体現像剤を掻き取って、現像ローラー20に供給する塗布ローラー32上の液体現像剤を調節するものである。この規制ブレード33は、弾性体としてのウレタンゴムからなり、鉄等金属製の規制ブレード支持部材より支持されている。また、規制ブレード33は、塗布ローラー32が回転して液体現像剤から進出する側(図1中の右側)に設けられている。規制ブレード33で掻き取られた液体現像剤は、供給部31aに回収され、再利用される。
【0138】
現像剤攪拌ローラー34は、液体現像剤を一様分散状態に攪拌するものである。これにより、複数個のトナー粒子が凝集した場合であっても、トナー粒子同士を好適に分散させることができる。特に、本発明を適用した液体現像剤は、トナー粒子の分散安定性に優れると共に再分散性にも優れているため、再利用した液体現像剤であっても、容易にトナー粒子を分散させることができる。
【0139】
供給部31a内において、液体現像剤の中のトナー粒子はプラスの電荷を有し、液体現像剤は、現像剤撹拌ローラー34により撹拌されて一様の分散状態になり、塗布ローラー32が回転することによって、液体現像剤貯留部31から汲み上げられ、規制ブレード33によって液体現像剤量が規制されて現像ローラー20に供給される。また、現像剤攪拌ローラー34によって攪拌されることにより、仕切31cを超えて回収部31b側に液体現像剤を安定して溢れさせることができ、液体現像剤が滞留し圧縮することを防ぐことができる。
【0140】
現像剤攪拌ローラー34は、連通部35付近に設けられている。このため、連通部35から供給された液体現像剤が素早く拡散することができ、液体現像剤が供給部31aに補給されている場合であっても、供給部31aの液面を安定したものとすることができる。このような現像剤攪拌ローラー34が連通部35付近に設けられることにより、連通部35が負圧になり、自然に液体現像剤が吸い上げられることができる。
【0141】
液体現像剤補給部90は、液体現像剤タンク91と、絶縁性液体タンク92と、液体現像剤混合槽93とを備えている。
液体現像剤タンク91は、液体現像剤を収納するものであり、絶縁性液体タンク92は、絶縁性液体が収納するものである。
【0142】
液体現像剤混合槽93は、液体現像剤タンク91からの任意の量の高濃度の液体現像剤と、絶縁性液体タンク92からの任意の量の絶縁性液体とが供給されるようになっている。
液体現像剤混合槽93は、供給された高濃度液体現像剤及び絶縁性液体をそれぞれ備え付けられた攪拌装置により混合撹拌して、液体現像剤を調製する。液体現像剤混合槽93で調製された液体現像剤は、供給部31に供給されるようになっている。
液体現像剤混合層93には、回収部31bで回収された液体現像剤が回収され、再利用される。
【0143】
上述の通り、本発明の絶縁性液体は、(α)成分50質量%以上を有し、(A−i)成分の含有量が10質量%以下、(A−ii)成分の含有量が1質量%以下、酸価が1mgKOH/g以下であるため、保存安定性が良好であり、現像効率に優れ、かつ定着強度が高い液体現像剤を提供できる。(α)成分の主成分である(A)成分が樹脂材料と適度な親和性を有するため、樹脂材料を溶解せずに、トナー粒子に含まれる結着樹脂を可塑化できる。加えて、(A)成分を主成分とする(α)成分の粘度は比較的低いため、トナー粒子は、潜像担持体上又は記録媒体へ速やかに移動すると共に、絶縁性液体が内部に浸透し、その内部の結着樹脂が可塑化される。結着樹脂が可塑化されると、例えば、記録媒体として紙を用いた場合、トナー粒子が紙繊維の隙間に入り込みやすくなり、紙へのトナー粒子の定着強度が高まる。また、トナー粒子は、内部まで十分に可塑化されているため、比較的低温でもトナー粒子が溶融し、記録媒体へ容易に定着できる。このため、本発明の絶縁性液体を用いた液体現像剤は、低温条件下、高速での画像形成に好適である。
また、(A)成分は、樹脂材料との親和性が適度で、トナー粒子の表面に付着しやすく、かつ記録媒体に浸透しやすい。このため、トナー粒子の表面に付着した(A)成分は、トナー粒子と記録媒体とが接触した際に記録媒体に速やかに浸透する。そして、この(A)成分の浸透と共に、記録媒体への定着時の熱で溶融した結着樹脂の一部が記録媒体の内部に浸透し、トナー粒子のアンカーとして機能して、定着強度が向上する。
加えて、(A−i)成分及び(A−ii)成分の含有量と、酸価とが所定の上限値に抑制されているため、上述した(A)成分の機能が損なわれることなく発揮される。
このように、(A)成分を含有する(α)成分を有する絶縁性液体を用いることで、液体現像剤の保存安定性を向上させると共に、現像効率とトナー粒子の定着強度とを向上できる。
【0144】
また、複数色のトナー粒子を用いて画像形成する場合、十分に可塑化したトナー粒子同士が接触して溶融しあうことで、隣接する異なる色のトナー粒子同士を確実に結合させることができる。この結果、異なる色のトナー粒子同士が結合した領域は、各トナー粒子が有する色同士が混ざり合い、各トナー粒子の中間の色を呈し、目的とする画像の色調をより確実に得られる。さらに、トナー粒子は、内部まで十分に可塑化されることで、形成される画像はグロスムラの少ないものとなる。
【0145】
絶縁性液体は、(β)成分を含有することで、トナー粒子同士の凝集を抑制して液体現像剤の保存安定性を高めると共に、トナー粒子の記録媒体への定着強度をより高められる。
絶縁性液体中に含まれる(A)成分と、(β)成分の主成分である(B)成分とは、トナー粒子の主成分である結着樹脂との親和性に優れている。このため、トナー粒子の絶縁性液体中での分散性は良好なものとなり、液体現像剤中でトナー粒子同士の凝集(ブロッキング)が効果的に防止され、液体現像剤の保存安定性がより向上する。
加えて、定着時においては、液体現像剤に熱が加えられることにより、(A)成分がトナー粒子に浸透し、トナー粒子内の結着樹脂を可塑化してトナー粒子を記録媒体に強固に定着させることができる。
さらに、(B)成分は(A)成分よりも粘度が高いため、結着樹脂への絶縁性液体の親和性を損なうことなく、絶縁性液体を適度な粘度とし、液体現像剤の記録媒体内への浸透を好適なものとすることができる。また、絶縁性液体は、不飽和脂肪酸成分の酸化重合反応によりトナー粒子を含んだ状態で硬化し、硬化した液体現像剤と記録媒体とのアンカー効果によりトナー粒子を記録媒体へ強固に定着させることができる。
【実施例】
【0146】
以下、実施例を示して本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の記載によって限定されるものではない。
以降、(A’)成分とは(A)成分の比較品であり、(α’)成分とは(α)成分の比較品を示す。
【0147】
(実施例1)
<絶縁性液体の調製>
5Lの四つ口フラスコに、ラウリン酸2114gと、イソトリデカノール(協和発酵ケミカル株式会社製)1470gと、触媒としてp−トルエンスルホン酸(関東化学株式会社製)17gとを仕込み、窒素置換を行った。その後、窒素を1mL/秒の流量で流通させながら、液温が140℃になるまで昇温してエステル交換反応を行い、反応により生成した水を蒸留により除去した。水を除去した後、0.6kPaまで徐々に減圧しながら200℃になるまで昇温し、酸価0.5mgKOH/g以下、原料由来の未反応残留アルコールであるイソトリデカノールを1質量%以下の粗製物を得た。
次いで、粗製物1500gに対し、濾過助剤としてハイフロスーパーセル(商品名、ナカライテスク株式会社製)を22.5g(粗製物100質量部に対し1.5質量部)添加し、10分攪拌して均一に分散させた後、80℃で加圧濾過して、ラウリン酸イソトリデシルを(A)成分として含有する(α)成分(以下、(α1)成分ということがある)を得た。
得られた(α1)成分について、動粘度、体積抵抗率、ヨウ素価、(A−i)成分の含有量、(A−ii)成分の含有量及び酸価を測定すると共に、低温流動性、樹脂溶解性及び酸化安定性を評価し、その結果を表中に示す。
【0148】
<液体現像剤の調製>
ポリエステル樹脂(重量平均分子量:8500、酸価:15)85質量部とシアン顔料15質量部とをヘンシェルミキサーにて混合した後、2軸押出混練機にて溶融混練した。混練物を冷却し、ハンマーミルで約1mm以下に粗粉砕して、トナー粒子原料粉を調製した。
次に、当該トナー粒子原料粉25gと、(α1)成分75gと、分散剤(ルーブリゾール株式会社製、Solsperse13940)0.5gと、オクチル酸ジルコニウム0.5gと、3mm径ジルコニアボール500gとを内容積約500mLのセラミックポットに入れ、ボールミルにて7日間、粉砕、混合した。混合液を濾過してジルコニアボールを除去し、液体現像剤を得た。得られた液体現像剤中に分散しているトナー粒子の体積平均径は1.8μmであった。
得られた液体現像剤について、現像効率、定着強度及び分散安定性を評価し、その結果を表中に示す。
【0149】
(実施例2)
ラウリン酸の代わりにエルカ酸2414gを用い、イソトリデカノールの代わりに2デシルテトラデカノール2655gを用いた以外は、実施例1と同様にしてエルカ酸−2デシルテトラデシルを(A)成分として含有する(α)成分(以下、(α2)成分ということがある)を得た。得られた(α2)成分について、動粘度、体積抵抗率、ヨウ素価、(A−i)成分の含有量、(A−ii)成分の含有量及び酸価を測定すると共に、低温流動性、樹脂溶解性及び酸化安定性を評価し、その結果を表中に示す。
また、得られた(α2)成分を用いて、実施例1と同様にして液体現像剤を調製し、この液体現像剤について、現像効率、定着強度及び分散安定性を評価し、その結果を表中に示す。
【0150】
(実施例3)
ラウリン酸の代わりにオレイン酸メチルを主成分とする、炭素数18(C18)の脂肪酸メチル(パーム油由来)1882gを用い、イソトリデカノールの代わりに2−ヘキシルデカノール1556gを用いた以外は、実施例1と同様にしてパーム油由来のC18脂肪酸−2ヘキシルデシルを(A)成分として含有する(α)成分(以下、(α3)成分ということがある)を得た。得られた(α3)成分について、動粘度、体積抵抗率、ヨウ素価、(A−i)成分の含有量、(A−ii)成分の含有量及び酸価を測定すると共に、低温流動性、樹脂溶解性及び酸化安定性を評価し、その結果を表中に示す。
また、得られた(α3)成分を用いて、実施例1と同様にして液体現像剤を調製し、この液体現像剤について、現像効率、定着強度及び分散安定性を評価し、その結果を表中に示す。
【0151】
(実施例4)
ラウリン酸の代わりにオレイン酸メチルを主成分とするC18脂肪酸メチル(パーム油由来)2091gを用い、イソトリデカノール1545gを用いた以外は、実施例1と同様にしてパーム油由来のC18脂肪酸イソトリデシルを(A)成分として含有する(α)成分(以下、(α4)成分ということがある)を得た。得られた(α4)成分について、動粘度、体積抵抗率、ヨウ素価、(A−i)成分の含有量、(A−ii)成分の含有量及び酸価を測定すると共に、低温流動性、樹脂溶解性及び酸化安定性を評価し、その結果を表中に示す。
また、得られた(α4)成分を用いて、実施例1と同様にして液体現像剤を調製し、この液体現像剤について、現像効率、定着強度及び分散安定性を評価し、その結果を表中に示す。
【0152】
(実施例5)
(α4)成分に、原料のパーム油由来のC18脂肪酸メチルエステルを添加し、(A−ii)成分の含有量を0.6質量%とした(α)成分(以下、(α5)成分ということがある)を得た。得られた(α5)成分について、動粘度、体積抵抗率、ヨウ素価、(A−i)成分の含有量、(A−ii)成分の含有量及び酸価を測定すると共に、低温流動性、樹脂溶解性及び酸化安定性を評価し、その結果を表中に示す。
また、得られた(α5)成分を用いて、実施例1と同様にして液体現像剤を調製し、この液体現像剤について、現像効率、定着強度及び分散安定性を評価し、その結果を表中に示す。
【0153】
(実施例6)
(α4)成分に、原料のパーム油由来のC18脂肪酸メチルエステルを添加し、(A−ii)成分の含有量を1.0質量%とした(α)成分(以下、(α6)成分ということがある)を得た。得られた(α6)成分について、動粘度、体積抵抗率、ヨウ素価、(A−i)成分の含有量、(A−ii)成分の含有量及び酸価を測定すると共に、低温流動性、樹脂溶解性及び酸化安定性を評価し、その結果を表中に示す。
また、得られた(α6)成分を用いて、実施例1と同様にして液体現像剤を調製し、この液体現像剤について、現像効率、定着強度及び分散安定性を評価し、その結果を表中に示す。
【0154】
(実施例7)
(α4)成分に、原料のイソトリデカノールを添加し、(A−i)成分の含有量を9.6質量%とした(α)成分(以下、(α7)成分ということがある)を得た。得られた(α7)成分について、動粘度、体積抵抗率、ヨウ素価、(A−i)成分の含有量、(A−ii)成分の含有量及び酸価を測定すると共に、低温流動性、樹脂溶解性及び酸化安定性を評価し、その結果を表中に示す。
また、得られた(α7)成分を用いて、実施例1と同様にして液体現像剤を調製し、この液体現像剤について、現像効率、定着強度及び分散安定性を評価し、その結果を表中に示す。
【0155】
(実施例8)
ラウリン酸の代わりにパーム油由来のC18脂肪酸メチル2091gを用い、イソトリデカノールの代わりにオレイルアルコール(Aldrich社製)2010gを用いた以外は、実施例1と同様にしてパーム油由来のC18脂肪酸オレイルを(A)成分として含有する(α)成分(以下、(α8)成分ということがある)を得た。得られた(α8)成分について、動粘度、体積抵抗率、ヨウ素価、(A−i)成分の含有量、(A−ii)成分の含有量及び酸価を測定すると共に、低温流動性、樹脂溶解性及び酸化安定性を評価し、その結果を表中に示す。
また、得られた(α8)成分を用いて、実施例1と同様にして液体現像剤を調製し、この液体現像剤について、現像効率、定着強度及び分散安定性を評価し、その結果を表中に示す。
【0156】
(実施例9)
ラウリン酸の代わりにカプロン酸838gを用い、イソトリデカノールの代わりに2−デシルテトラデカノール2655gを用いた以外は、実施例1と同様にしてエルカ酸−2デシルテトラデシルを(A)成分とする(α)成分(以下、(α9)成分ということがある)を得た。得られた(α9)成分について、動粘度、体積抵抗率、ヨウ素価、(A−i)成分の含有量、(A−ii)成分の含有量及び酸価を測定すると共に、低温流動性、樹脂溶解性及び酸化安定性を評価し、その結果を表中に示す。
また、得られた(α9)成分を用いて、実施例1と同様にして液体現像剤を調製し、この液体現像剤について、現像効率、定着強度及び分散安定性を評価し、その結果を表中に示す。
【0157】
(実施例10)
ラウリン酸の代わりにエルカ酸2414gを用い、イソトリデカノールの代わりにイソノニルアルコール1080gを用いた以外は、実施例1と同様にしてエルカ酸イソノニルを(A)成分とする(α)成分(以下、(α10)成分ということがある)を得た。得られた(α10)成分について、動粘度、体積抵抗率、ヨウ素価、(A−i)成分の含有量、(A−ii)成分の含有量及び酸価を測定すると共に、低温流動性、樹脂溶解性及び酸化安定性を評価し、その結果を表中に示す。
また、得られた(α10)成分を用いて、実施例1と同様にして液体現像剤を調製し、この液体現像剤について、現像効率、定着強度及び分散安定性を評価し、その結果を表中に示す。
【0158】
(実施例11)
ラウリン酸の代わりに亜麻仁油由来のC18脂肪酸1967gを用いた以外は、実施例1と同様にして亜麻仁油由来のC18脂肪酸イソトリデシルを(A)成分とする(α)成分(以下、(α11)成分ということがある)を得た。得られた(α11)成分について、動粘度、体積抵抗率、ヨウ素価、(A−i)成分の含有量、(A−ii)成分の含有量及び酸価を測定すると共に、低温流動性、樹脂溶解性及び酸化安定性を評価し、その結果を表中に示す。
また、得られた(α11)成分を用いて、実施例1と同様にして液体現像剤を調製し、この液体現像剤について、現像効率、定着強度及び分散安定性を評価し、その結果を表中に示す。
【0159】
(実施例12)
ラウリン酸の代わりに亜麻仁油由来のC18脂肪酸1967gを用い、イソトリデカノールの代わりにイソノニルアルコール1080gを用いた以外は、実施例1と同様にして亜麻仁油由来のC18脂肪酸イソノニルを(A)成分とする(α)成分(以下、(α12)成分ということがある)を得た。得られた(α12)成分について、動粘度、体積抵抗率、ヨウ素価、(A−i)成分の含有量、(A−ii)成分の含有量及び酸価を測定すると共に、低温流動性、樹脂溶解性及び酸化安定性を評価し、その結果を表中に示す。
また、得られた(α12)成分を用いて、実施例1と同様にして液体現像剤を調製し、この液体現像剤について、現像効率、定着強度及び分散安定性を評価し、その結果を表中に示す。
【0160】
(実施例13)
ラウリン酸の代わりに米糠油由来のC18脂肪酸1989gを用いた以外は、実施例1と同様にして米糠油由来のC18脂肪酸イソトリデシルを(A)成分とする(α)成分(以下、(α13)成分ということがある)を得た。得られた(α13)成分について、動粘度、体積抵抗率、ヨウ素価、(A−i)成分の含有量、(A−ii)成分の含有量及び酸価を測定すると共に、低温流動性、樹脂溶解性及び酸化安定性を評価し、その結果を表中に示す。
また、得られた(α13)成分を用いて、実施例1と同様にして液体現像剤を調製し、この液体現像剤について、現像効率、定着強度及び分散安定性を評価し、その結果を表中に示す。
【0161】
(実施例14)
(α13)成分に、原料の米糠油由来のC18脂肪酸を添加し、酸価を1.0mgKOH/gとした(α)成分(以下、(α14)成分ということがある)を得た。得られた(α14)成分について、動粘度、体積抵抗率、ヨウ素価、(A−i)成分の含有量、(A−ii)成分の含有量及び酸価を測定すると共に、低温流動性、樹脂溶解性及び酸化安定性を評価し、その結果を表中に示す。
また、得られた(α14)成分を用いて、実施例1と同様にして液体現像剤を調製し、この液体現像剤について、現像効率、定着強度及び分散安定性を評価し、その結果を表中に示す。
【0162】
(実施例15)
<絶縁性液体の調製>
ラウリン酸の代わりにパーム油由来のC18脂肪酸メチル2945gを用い、イソトリデカノールの代わりにトリメチロールプロパン(東京化成工業株式会社製)268gを用い、触媒としてナトリウムメトキシド(東京化成工業株式会社製)2gを用いた以外は、実施例1と同様にしてパーム油由来のC18脂肪酸−トリメチロールプロパンを(B)成分とする(β)成分(以下、(β1)成分ということがある)を得た。この(β1)成分500gと、実施例4で調製した(α4)成分500gとを混合して、絶縁性液体(以下、絶縁性液体Aということがある)とした。得られた絶縁性液体Aについて、動粘度、体積抵抗率、ヨウ素価、(A−i)成分の含有量、(A−ii)成分の含有量及び酸価を測定すると共に、低温流動性、樹脂溶解性及び酸化安定性を評価し、その結果を表中に示す。
【0163】
<液体現像剤の調製>
ポリエステル樹脂(重量平均分子量:8500、酸価:15)85質量部とシアン顔料15質量部とをヘンシェルミキサーにて混合した後、2軸押出混練機にて溶融混練した。混練物を冷却し、ハンマーミルで約1mm以下に粗粉砕して、トナー粒子原料粉を調整した。
次に、当該トナー粒子原料粉25gと、絶縁性液体A75gと、分散剤(Solsperse13940)0.5gと、オクチル酸ジルコニウム0.5gと、3mm径ジルコニアボール500gとを内容積約500mLのセラミックポットに入れ、ボールミルにて7日間、粉砕、混合した。混合液を濾過してジルコニアボールを除去し、液体現像剤を得た。得られた液体現像剤中に分散しているトナー粒子の体積平均径は1.8μmであった。
得られた液体現像剤について、現像効率、定着強度及び分散安定性を評価し、その結果を表中に示す。
【0164】
(実施例16)
(α4)成分を650gとし、(β1)成分を350gとした以外は、実施例15と同様にして絶縁性液体(以下、絶縁性液体Bということがある)を得た。得られた絶縁性液体Bについて、動粘度、体積抵抗率、ヨウ素価、(A−i)成分の含有量、(A−ii)成分の含有量及び酸価を測定すると共に、低温流動性、樹脂溶解性及び酸化安定性を評価し、その結果を表中に示す。
また、得られた絶縁性液体Bを用いて、実施例15と同様にして液体現像剤を調製し、この液体現像剤について、現像効率、定着強度及び分散安定性を評価し、その結果を表中に示す。
【0165】
(実施例17)
(α4)成分を800gとし、(β1)成分を200gとした以外は、実施例15と同様にして絶縁性液体(以下、絶縁性液体Cということがある)を得た。得られた絶縁性液体Cについて、動粘度、体積抵抗率、ヨウ素価、(A−i)成分の含有量、(A−ii)成分の含有量及び酸価を測定すると共に、低温流動性、樹脂溶解性及び酸化安定性を評価し、その結果を表中に示す。
また、得られた絶縁性液体Cを用いて、実施例15と同様にして液体現像剤を調製し、この液体現像剤について、現像効率、定着強度及び分散安定性を評価し、その結果を表中に示す。
【0166】
(実施例18)
絶縁性液体Cに、原料のパーム油由来のC18脂肪酸メチルを添加し、(A−ii)成分の含有量を0.6質量%とした絶縁性液体(以下、絶縁性液体Dということがある)を得た。得られた絶縁性液体Dについて、動粘度、体積抵抗率、ヨウ素価、(A−i)成分の含有量、(A−ii)成分の含有量及び酸価を測定すると共に、低温流動性、樹脂溶解性及び酸化安定性を評価し、その結果を表中に示す。
また、得られた絶縁性液体Dを用いて、実施例15と同様にして液体現像剤を調製し、この液体現像剤について、現像効率、定着強度及び分散安定性を評価し、その結果を表中に示す。
【0167】
(実施例19)
絶縁性液体Cに、原料のパーム油由来C18脂肪酸メチルを添加し、(A−ii)成分の含有量を1.0%とした絶縁性液体(以下、絶縁性液体Eということがある)を得た。得られた絶縁性液体Eについて、動粘度、体積抵抗率、ヨウ素価、(A−i)成分の含有量、(A−ii)成分の含有量及び酸価を測定すると共に、低温流動性、樹脂溶解性及び酸化安定性を評価し、その結果を表中に示す。
また、得られた絶縁性液体Eを用いて、実施例15と同様にして液体現像剤を調製し、この液体現像剤について、現像効率、定着強度及び分散安定性を評価し、その結果を表中に示す。
【0168】
(実施例20)
絶縁性液体Cに、原料のイソトリデカノールを添加し、(A−i)成分の含有量を10.0%とした絶縁性液体(以下、絶縁性液体Fということがある)を得た。得られた絶縁性液体Fについて、動粘度、体積抵抗率、ヨウ素価、(A−i)成分の含有量、(A−ii)成分の含有量及び酸価を測定すると共に、低温流動性、樹脂溶解性及び酸化安定性を評価し、その結果を表中に示す。
また、得られた絶縁性液体Fを用いて、実施例15と同様にして液体現像剤を調製し、この液体現像剤について、現像効率、定着強度及び分散安定性を評価し、その結果を表中に示す。
【0169】
(実施例21)
絶縁性液体Cに、パーム油由来のC18脂肪酸を添加し、酸価1.0mgKOH/gの絶縁性液体(以下、絶縁性液体Gということがある)を得た。得られた絶縁性液体Gについて、動粘度、体積抵抗率、ヨウ素価、(A−i)成分の含有量、(A−ii)成分の含有量及び酸価を測定すると共に、低温流動性、樹脂溶解性及び酸化安定性を評価し、その結果を表中に示す。
また、得られた絶縁性液体Gを用いて、実施例15と同様にして液体現像剤を調製し、この液体現像剤について、現像効率、定着強度及び分散安定性を評価し、その結果を表中に示す。
【0170】
(実施例22)
トリメチロールプロパンの代わりにペンタエリスリトール(三菱ガス化学株式会社製)332gを用いた以外は実施例15と同様にして、パーム油由来のC18脂肪酸−ペンタエリスリトールを(B)成分とする(β)成分(以下、(β2)成分ということがある)を得た。(α4)成分650gと、(β2)成分350gとを混合して絶縁性液体(以下、絶縁性液体Hということがある)を得た。得られた絶縁性液体Hについて、動粘度、体積抵抗率、ヨウ素価、(A−i)成分の含有量、(A−ii)成分の含有量及び酸価を測定すると共に、低温流動性、樹脂溶解性及び酸化安定性を評価し、その結果を表中に示す。
また、得られた絶縁性液体Hを用いて、実施例15と同様にして液体現像剤を調製し、この液体現像剤について、現像効率、定着強度及び分散安定性を評価し、その結果を表中に示す。
【0171】
(実施例23)
(α4)成分650gと、菜種油(商品名:菜種白絞油、J−オイルミルズ株式会社製)(以下、(β3)成分ということがある)350gとを混合して絶縁性液体(以下、絶縁性液体Iということがある)を得た。得られた絶縁性液体Iについて、動粘度、体積抵抗率、ヨウ素価、(A−i)成分の含有量、(A−ii)成分の含有量及び酸価を測定すると共に、低温流動性、樹脂溶解性及び酸化安定性を評価し、その結果を表中に示す。
また、得られた絶縁性液体Iを用いて、実施例15と同様にして液体現像剤を調製し、この液体現像剤について、現像効率、定着強度及び分散安定性を評価し、その結果を表中に示す。
【0172】
(実施例24)
(α3)成分650gと、(β1)成分350gとを混合して絶縁性液体(以下、絶縁性液体Jということがある)を得た。得られた絶縁性液体Jについて、動粘度、体積抵抗率、ヨウ素価、(A−i)成分の含有量、(A−ii)成分の含有量及び酸価を測定すると共に、低温流動性、樹脂溶解性及び酸化安定性を評価し、その結果を表中に示す。
また、得られた絶縁性液体Jを用いて、実施例15と同様にして液体現像剤を調製し、この液体現像剤について、現像効率、定着強度及び分散安定性を評価し、その結果を表中に示す。
【0173】
(実施例25)
(α3)成分650gと、(β2)成分350gとを混合して絶縁性液体(以下、絶縁性液体Kということがある)を得た。得られた絶縁性液体Kについて、動粘度、体積抵抗率、ヨウ素価、(A−i)成分の含有量、(A−ii)成分の含有量及び酸価を測定すると共に、低温流動性、樹脂溶解性及び酸化安定性を評価し、その結果を表中に示す。
また、得られた絶縁性液体Kを用いて、実施例15と同様にして液体現像剤を調製し、この液体現像剤について、現像効率、定着強度及び分散安定性を評価し、その結果を表中に示す。
【0174】
(実施例26)
(α3)成分650gと、(β3)成分350gとを混合して絶縁性液体(以下、絶縁性液体Lということがある)を得た。得られた絶縁性液体Lについて、動粘度、体積抵抗率、ヨウ素価、(A−i)成分の含有量、(A−ii)成分の含有量及び酸価を測定すると共に、低温流動性、樹脂溶解性及び酸化安定性を評価し、その結果を表中に示す。
また、得られた絶縁性液体Lを用いて、実施例15と同様にして液体現像剤を調製し、この液体現像剤について、現像効率、定着強度及び分散安定性を評価し、その結果を表中に示す。
【0175】
(比較例1)
ラウリン酸の代わりにバレリアン酸738gを用い、イソトリデカノールの代わりに2ヘキシルデカノール1815gを用いた以外は、実施例1と同様にしてバレリアン酸−2ヘキシルデシルを(A’)成分として含む(α’)成分(以下、(α’1)成分ということがある)を得た。得られた(α’1)成分について、動粘度、体積抵抗率、ヨウ素価、(A−i)成分の含有量、(A−ii)成分の含有量及び酸価を測定すると共に、低温流動性、樹脂溶解性及び酸化安定性を評価し、その結果を表中に示す。
また、得られた(α’1)成分を用いて、実施例1と同様にして液体現像剤を調製し、この液体現像剤について、現像効率、定着強度及び分散安定性を評価し、その結果を表中に示す。
【0176】
(比較例2)
ラウリン酸の代わりにパーム油由来のC18脂肪酸メチルエステル2091gを用い、イソトリデカノールの代わりに2エチルヘキサノール975gを用いた以外は、実施例1と同様にしてパーム油由来のC18脂肪酸−2エチルヘキシルを(A’)成分を含有する(α’)成分(以下、(α’2)成分ということがある)を得た。得られた(α’2)成分について、動粘度、体積抵抗率、ヨウ素価、(A−i)成分の含有量、(A−ii)成分の含有量及び酸価を測定すると共に、低温流動性、樹脂溶解性及び酸化安定性を評価し、その結果を表中に示す。
また、得られた(α’2)成分を用いて、実施例1と同様にして液体現像剤を調製し、この液体現像剤について、現像効率、定着強度及び分散安定性を評価し、その結果を表中に示す。
【0177】
(比較例3)
ラウリン酸の代わりにパーム油由来のC18脂肪酸メチル2091gを用い、イソトリデカノールの代わりにラウリルアルコール1395gを用いた以外は、実施例1と同様にしてパーム油由来のC18脂肪酸ラウリルを(A’)成分を含有する(α’)成分(以下、α’3)成分ということがある)を得た。得られた(α’3)成分について、動粘度、体積抵抗率、ヨウ素価、(A−i)成分の含有量、(A−ii)成分の含有量及び酸価を測定すると共に、低温流動性、樹脂溶解性及び酸化安定性を評価し、その結果を表中に示す。
また、得られた(α’3)成分を用いて、実施例1と同様にして液体現像剤を調製し、この液体現像剤について、現像効率、定着強度及び分散安定性を評価し、その結果を表中に示す。
【0178】
(比較例4)
ラウリン酸の代わりに亜麻仁油由来のC18脂肪酸1967gを用い、イソトリデカノールの代わりにブタノール(関東化学株式会社製)555gを用いた以外は、実施例1と同様にして亜麻仁由来の脂肪酸C18脂肪酸−ブチルを(A’)成分とする(α’)成分(以下、(α’4)成分ということがある)を得た。得られた(α’4)成分について、動粘度、体積抵抗率、ヨウ素価、(A−i)成分の含有量、(A−ii)成分の含有量及び酸価を測定すると共に、低温流動性、樹脂溶解性及び酸化安定性を評価し、その結果を表中に示す。
また、得られた(α’4)成分を用いて、実施例1と同様にして液体現像剤を調製し、この液体現像剤について、現像効率、定着強度及び分散安定性を評価し、その結果を表中に示す。
【0179】
(比較例5)
(α4)成分に、原料のパーム油由来のC18脂肪酸メチルエステルを添加し、(A−ii)成分の含有量を1.4質量%とした(α)成分(以下、(α’5)成分ということがある)を得た。得られた(α’5)成分について、動粘度、体積抵抗率、ヨウ素価、(A−i)成分の含有量、(A−ii)成分の含有量及び酸価を測定すると共に、低温流動性、樹脂溶解性及び酸化安定性を評価し、その結果を表中に示す。
また、得られた(α’5)成分を用いて、実施例1と同様にして液体現像剤を調製し、この液体現像剤について、現像効率、定着強度及び分散安定性を評価し、その結果を表中に示す。
【0180】
(比較例6)
(α4)成分に、イソトリデカノールを添加し、(A−i)成分の含有量を12%とした(α)成分(以下、(α’6)成分ということがある)を得た。得られた(α’6)成分について、動粘度、体積抵抗率、ヨウ素価、(A−i)成分の含有量、(A−ii)成分の含有量及び酸価を測定すると共に、低温流動性、樹脂溶解性を評価し、その結果を表中に示す。
また、得られた(α’6)成分を用いて、実施例1と同様にして液体現像剤を調製し、この液体現像剤について、現像効率、定着強度及び分散安定性を評価し、その結果を表中に示す。
【0181】
(比較例7)
(α13)成分に、原料の米糠油由来のC18脂肪酸を添加し、酸価を1.2mgKOH/gとした(α)成分(以下、(α’7)成分ということがある)を得た。得られた(α’7)成分について、動粘度、体積抵抗率、ヨウ素価、(A−i)成分の含有量、(A−ii)成分の含有量及び酸価を測定すると共に、低温流動性、樹脂溶解性及び酸化安定性を評価し、その結果を表中に示す。
また、得られた(α’7)成分を用いて、実施例1と同様にして液体現像剤を調製し、この液体現像剤について、現像効率、定着強度及び分散安定性を評価し、その結果を表中に示す。
【0182】
(比較例8)
(α3)成分400gと、(β2)成分600gとを混合して絶縁性液体(以下、絶縁性液体Mということがある)を得た。得られた絶縁性液体Mについて、動粘度、体積抵抗率、ヨウ素価、(A−i)成分の含有量、(A−ii)成分の含有量及び酸価を測定すると共に、低温流動性、樹脂溶解性及び酸化安定性を評価し、その結果を表中に示す。
また、得られた絶縁性液体Mを用いて、実施例15と同様にして液体現像剤を調製し、この液体現像剤について、現像効率、定着強度及び分散安定性を評価し、その結果を表中に示す。
【0183】
(比較例9)
パーム油由来のC18脂肪酸メチルに代わり亜麻仁油由来のC18脂肪酸1967gを用いた以外は、実施例22と同様にして亜麻仁由来のC18脂肪酸−ペンタエリスリトールを(B)成分として含有する(β)成分(以下、(β4)成分ということがある)を得た。(α3)成分400gと、(β4)成分600gとを混合して絶縁性液体(以下、絶縁性液体Nということがある)を得た。得られた絶縁性液体Nについて、動粘度、体積抵抗率、ヨウ素価、(A−i)成分の含有量、(A−ii)成分の含有量及び酸価を測定すると共に、低温流動性、樹脂溶解性及び酸化安定性を評価し、その結果を表中に示す。
また、得られた絶縁性液体Nを用いて、実施例15と同様にして液体現像剤を調製し、この液体現像剤について、現像効率、定着強度及び分散安定性を評価し、その結果を表中に示す。
【0184】
(比較例10)
カプリン酸−トリメチロールプロパン(商品名:ルビノールF310N、ライオン株式会社製)を(β)成分(以下、(β5)成分ということがある)とした。(β5)成分について、動粘度、体積抵抗率、ヨウ素価、(A−i)成分の含有量、(A−ii)成分の含有量及び酸価を測定すると共に、低温流動性、樹脂溶解性及び酸化安定性を評価し、その結果を表中に示す。
また、(β5)成分を絶縁性液体とし、実施例15と同様にして液体現像剤を調製した。得られた液体現像剤について、現像効率、定着強度及び分散安定性を評価し、その結果を表中に示す。
【0185】
(比較例11)
絶縁性液体Cに、原料のパーム油由来のC18脂肪酸メチルを添加し、(A−ii)成分の含有量を1.3質量%とした絶縁性液体(以下、絶縁性液体Oということがある)を得た。得られた絶縁性液体Oについて、動粘度、体積抵抗率、ヨウ素価、(A−i)成分の含有量、(A−ii)成分の含有量及び酸価を測定すると共に、低温流動性、樹脂溶解性及び酸化安定性を評価し、その結果を表中に示す。
また、得られた絶縁性液体Oを用いて、実施例15と同様にして液体現像剤を調製し、この液体現像剤について、現像効率、定着強度及び分散安定性を評価し、その結果を表中に示す。
【0186】
(比較例12)
絶縁性液体Cに、原料のイソトリデカノールを添加し、(A−i)成分含有量を12質量%とした絶縁性液体(以下、絶縁性液体Pということがある)を得た。得られた絶縁性液体Pについて、動粘度、体積抵抗率、ヨウ素価、(A−i)成分の含有量、(A−ii)成分の含有量及び酸価を測定すると共に、低温流動性、樹脂溶解性及び酸化安定性を評価し、その結果を表中に示す。
また、得られた絶縁性液体Pを用いて、実施例15と同様にして液体現像剤を調製し、この液体現像剤について、現像効率、定着強度及び分散安定性を評価し、その結果を表中に示す。
【0187】
(比較例13)
絶縁性液体Cに、パーム油由来Cの18脂肪酸を添加し。酸価1.2mgKOH/gの絶縁性液体(以下、絶縁性液体Qということがある)とした。得られた絶縁性液体Qについて、動粘度、体積抵抗率、ヨウ素価、(A−i)成分の含有量、(A−ii)成分の含有量及び酸価を測定すると共に、低温流動性、樹脂溶解性及び酸化安定性を評価し、その結果を表中に示す。
また、得られた絶縁性液体Qを用いて、実施例15と同様にして液体現像剤を調製し、この液体現像剤について、現像効率、定着強度及び分散安定性を評価し、その結果を表中に示す。
【0188】
(評価方法)
<動粘度>
JIS K2283に準拠して、以下の手順で動粘度を測定した。試料をキャノンフェンスケ型動粘度管に採取し、40℃又は100℃に保持した恒温槽で30分以上保温した。その後、該キャノンフェンスケ型動粘度管において一定高さから試料を流下させた際の時間を計測し、各温度における動粘度(単位:mm/秒)を求めた。
【0189】
<体積抵抗率>
JIS C2101に準拠して、以下の手順で体積抵抗率を測定した。試料温度を80±1℃となるように調節した。電極間ギャップが1mmの同心円筒型構造の電極に試料を約50g入れ、シェーリングブリッジ等の静電容量測定器によって、試料に250V/mmの直流電流を印加し、1分後の電流値から体積抵抗率を求めた。
【0190】
<ヨウ素価>
基準油脂試験法(ウィイス−シクロヘキサン法)に準拠して、以下の手順でヨウ素価を測定した。フラスコに試料を予想されるヨウ素価に対応する表1の採取量に準じて量り取り、シクロヘキサン10mLを加えて溶解させる。次にウィイス試薬(関東化学株式会社製)25mLを加え、栓をした後に常温、暗所にて表1に示す作用時間で放置する。所定の時間が経過した後に、10g/100mLヨウ化カリウム溶液20mL及び水100mLを加えて振り混ぜる。指示薬にデンプン水溶液を用いて0.1mol/Lチオ硫酸ナトリウム標準液(関東化学株式会社製)で滴定する。終点は溶液の青色が消失したときとした。なお、ヨウ素価の算出は、下記(1)式にて行った。
【0191】
ヨウ素価=((A−B)×F×1.269)/C ・・・(1)
A:空試験の0.1mol/Lチオ硫酸ナトリウム標準液使用量(mL)
B:本試験の0.1mol/Lチオ硫酸ナトリウム標準液使用量(mL)
C:試料採取量(g)
F:0.1mol/Lチオ硫酸ナトリウム標準液のファクター
【0192】
【表1】

【0193】
<流動点>
JIS K2269に準拠して、以下の手順で流動点を測定した。試料を試験管の標線(中央)の高さまで注ぎ、流動点用温度計を付けたコルク栓で試験管を密栓する。試験管を入れた外管を冷却浴に入れ、冷却する。試料が任意の温度まで下がったら2.5℃毎に試験管を速やかに取り出し、静かに傾けて試料の表面が流動するかどうかを調べ、外管に戻す。試験管を水平に倒して正確に5秒間保っても試料が全く動かなくなる温度に2.5℃を加え、流動点とした。
【0194】
<(A−ii)成分(脂肪酸メチル)の含有量の定量>
内部標準としてラウリン酸メチル(又はオレイン酸メチル)0.06gを試料の2gと共にアセトン4gに溶解し、その2μLを下記測定装置に注入した。そして、ラウリン酸メチル(又はオレイン酸メチル)の濃度を変更したときのピーク面積と内部標準物質のピーク面積から検量線を作成し、試料中に含まれる(A−ii)成分としての脂肪酸メチルの定量を行った。
【0195】
≪測定条件≫
ガスクロマトグラム:GC−14A(株式会社島津製作所製)
検出器:FID
カラム:ガラス製(直径3mm×長さ1m)
充填剤:2質量%silicon OV−1(60/80メッシュ)
【0196】
≪測定条件≫
注入口温度:320℃
検出器温度:320℃
キャリアガス:N(50mL/分)、H(0.75kg/cm)、空気(0.5kg/cm
カラム温度:100℃から昇温速度10℃/分で230℃まで昇温し、さらに昇温速度30℃/分で320℃まで昇温して22分間保持した。
【0197】
<(A−i)成分(アルコール)の含有量の定量>
内部標準として、原料アルコールより炭素数が2又は3少ない脂肪族系アルコール0.06gを試料の2gと共にアセトン4gに溶解し、その2μLを下記測定装置に注入した。そして、アルコールの濃度を変更したときのピーク面積と内部標準物質のピーク面積から検量線を作成し、試料中に含まれる(A−i)成分の定量を行った。
≪測定条件≫
ガスクロマトグラム:GC−14A(株式会社島津製作所製)
検出器:FID
カラム:ガラス製(直径3mm×長さ1m)
充填剤:2質量%silicon OV−1(60/80メッシュ)
≪測定条件≫
注入口温度:320℃
検出器温度:320℃
キャリアガス:N(50mL/分)、H(0.75kg/cm)、空気(0.5kg/cm
カラム温度:100℃から昇温速度10℃/分で230℃まで昇温し、さらに昇温速度30℃/分で320℃まで昇温して22分間保持した。
【0198】
<酸価>
JIS K0070に準拠し、以下の手順により測定した。試料を溶剤に溶かし、電位差滴定装置を用い、水酸化カリウム水溶液で電位差滴定を行って、得られた滴定曲線の変曲点を終点とし酸価を求めた。
【0199】
<低温流動性>
各例の絶縁性液体の流動点の値に対して以下の3段階の基準に従って評価した。
◎:−10.0℃以下
○:−7.5℃〜10.0℃
×:12.5℃以上
【0200】
<樹脂材料の溶解>
ポリウレタン製のクリーニングブレードの小片を絶縁性液体中に浸漬し、50℃雰囲気中に7日間放置した。その後、小片を取り出して表面に付着している絶縁性液体を吸収布で除去し、浸漬前後の質量を測定した。下記(2)式にて質量変化率を求め、求めた質量変化率を下記評価基準に分類して評価した。
質量変化率(%)={(浸漬後の重量−浸漬前の重量)/浸漬前の重量}×100 ・・・(2)
【0201】
≪評価基準≫
◎:±2%以内
○:±3%〜5%
×:±5%以上
【0202】
<現像効率>
図1に示す画像形成装置1と同様の画像形成装置を用い、各例で調製した液体現像剤で画像形成し、現像特性の評価を行った。まず、感光体の表面電位が+500Vになるように均一に帯電し、次に、感光体に露光し、感光体表面の帯電を減衰させ、表面電位を+50Vとした。画像形成装置の現像ローラー上に各例の液体現像剤による液体現像剤層を形成した。次に、現像ローラーに+300Vのバイアス電圧を印加して、プラスに帯電したトナー粒子を電気泳動することにより露光部を現像した。液体現像剤層が感光体と現像ローラーとの間を通過した後の、現像ローラー上のトナー粒子と、感光体上のトナー粒子とをテープで採取した。採取に用いた各テープを記録紙上に貼り付け、それぞれの光学反射濃度を測定した。測定後、感光体上で採取されたトナー粒子の濃度を、感光体上で採取されたトナー粒子の濃度と現像ローラ上で採取されたトナー粒子の濃度との総和で除した数値に100を掛けた値を現像効率として求め、以下の4段階の基準に従い評価した。
A:現像効率が95%以上であり、現像効率に特に優れる。
B:現像効率が90%以上、95%未満であり、現像効率に優れる。
C:現像効率が80%以上、90%未満であり、実用上問題のない。
D:現像効率が80%よりも小さく、現像効率に劣る。
【0203】
<定着強度評価>
図1に示す画像形成装置1に2次転写機構及びヒートローラー定着機構を付設した画像形成システムを用い、各例の液体現像剤により所定パターンの画像を記録紙(セイコーエプソン株式会社製、上質紙、LPCPPA4)上に形成した。その後、記録紙上に形成された画像について、ヒートロール定着を行った(プロセス速度:250mm/sec.、ローラー表面温度:160℃、定着ニップ:8.5mm)。
記録紙上の定着像を消しゴム(株式会社ライオン事務器製、砂字消し、商品名:LION 261−11)を押圧荷重1.0kgfで2回擦り、画像濃度の残存率をX−Rite Inc社製「X−Rite model 404」により測定した。測定結果を下記評価基準分類して評価した。
◎:画像濃度残存率が90%以上。
○:画像濃度残存率が80%以上90%未満。
△:画像濃度残存率が70%以上80%未満。
×:画像濃度残存率が70%未満。
【0204】
<保存安定性>
≪分散安定性≫
各例の液体現像剤10mLを遠沈管に入れ、1000G、10分間の条件で遠心分離した後、上澄みの200μLを分集し、各々の液体現像剤の製造に用いた絶縁性液体で100倍に希釈し、サンプルとした。
各サンプルについて紫外可視分光光度計(日本分光株式会社製、V−570)を用いて吸収波長を測定した。
シアン系顔料の吸収域(685nm)の吸光度の値を下記評価基準に分類して評価した。
【0205】
[評価基準]
◎:吸光度が1.50以上(沈降が全く見られない)。
○:吸光度が1.00以上1.50未満(沈降がほとんど見られない)。
△:吸光度が0.50以上1.00未満(沈降が確認される)。
×:吸光度が0.50未満(沈降が顕著で自然放置でも沈降が始まる)。
【0206】
≪酸化安定性≫
100mLのサンプル瓶に各例の絶縁性液体を80g入れた後、密栓した。この試料を温度40℃、6ヶ月経過後に酸価(mgKOH/g)を測定した。下記(3)式により試験前後の酸価の変化量(mgKOH/g)を算出し、算出した値を下記評価基準に部類して評価した。
酸価の変化量(mgKOH/g)=(試験後の酸価−試験前の酸価) ・・・(3)
◎:0.5mgKOH/g以下
○:0.6mgKOH/g〜1.5mgKOH/g
△:1.6mgKOH/g以上
【0207】
【表2】

【0208】
【表3】

【0209】
【表4】

【0210】
【表5】

【0211】
【表6】

【0212】
【表7】

【0213】
表2〜7に示すように、本発明を適用した実施例1〜26は、いずれも現像効率がA〜Cであり、分散安定性及び酸化安定性の評価が○〜◎、定着強度の評価が△〜◎であった。
これに対し、(A)成分に代えて(A’)成分を含有する比較例1〜4は、いずれも現像効率が×であった。(A−ii)成分の含有量が1.0質量%超である比較例5及び11、(A−i)成分の含有量が10質量%超である比較例6及び12、酸化が1.0mgKOH/g超である比較例7及び13、(α)成分の含有量が50質量%未満である比較例8及び9は、いずれも現像効率が「D」であった。(A)成分を含有せず、(B)成分のみを含有する比較例10は定着強度が×であった。
これらの結果から、本発明を適用した液体現像剤は、保存安定性が良好であり、現像効率に優れ、かつトナー粒子の定着強度を高められることが判った。
【0214】
加えて、(β)成分を含有する実施例15〜18は、(β)成分を含有しない実施例1に比べ、定着強度、分散安定性が向上していた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)で表される脂肪酸モノエステル(A)を含有する脂肪酸モノエステル組成物(α)を50質量%以上有し、炭素数9〜24の1価のアルコール(A−i)の含有量が10質量%以下、下記一般式(II)で表される脂肪酸モノエステル(A−ii)の含有量が1質量%以下、酸価が1mgKOH/g以下であることを特徴とする液体現像剤用の絶縁性液体。
−COOR ・・・(I)
(上記(I)式中、Rは炭素数5〜21の炭化水素基であり、Rは炭素数9〜24の炭化水素基であって分岐鎖又は不飽和結合を有するものである。ただし、Rの炭素数とRの炭素数の合計は24〜45である。)
−COOR ・・・(II)
(上記(II)式中、Rは炭素数5〜21の炭化水素基であり、Rは炭素数1〜8の炭化水素基である。)
【請求項2】
前記脂肪酸モノエステル(A)は、前記R及びRの双方又はいずれか一方が不飽和結合を有し、ヨウ素価が30〜130[g/100g]であることを特徴とする請求項1に記載の液体現像剤用の絶縁性液体。
【請求項3】
前記脂肪酸モノエステル(A)は、前記R及びRの双方又はいずれか一方が分岐鎖を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の液体現像剤用の絶縁性液体。
【請求項4】
流動点が10℃以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の液体現像剤用の絶縁性液体。
【請求項5】
3価以上のポリオールエステル(B)を含有するポリオールエステル組成物(β)を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の液体現像剤用の絶縁性液体。
【請求項6】
前記ポリオールエステル(B)は、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセリン、ジグリセリン、ペンタエリスリトールから選択される1種以上のポリオールのエステルであることを特徴とする請求項5に記載の液体現像剤用の絶縁性液体。
【請求項7】
3価以上のポリオール(B−i)の含有量が10質量%以下であることを特徴とする請求項5又は6に記載の液体現像剤用の絶縁性液体。



【図1】
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【公開番号】特開2012−208383(P2012−208383A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−74920(P2011−74920)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】