説明

液晶表示パネルの製造方法

【課題】液晶の注入時間を短縮することができ、簡便な液晶表示パネルの製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明にかかる液晶表示パネルの製造方法は、一対の絶縁性基板17、18を有する空セル30に液晶を注入して液晶表示パネルを製造する方法である。そして、空セル30の少なくとも一方の絶縁性基板に発熱膜19を形成しておく工程と、発熱膜19に電圧を印加し、空セル30を加熱する工程と、加熱された空セル30内に液晶105を注入する工程とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空セルに液晶を注入して液晶表示パネルを製造する液晶表示パネルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置は、軽量、薄型、低消費電力などの利点を有することから、テレビや携帯端末機器などの表示装置として幅広く用いられている。このような液晶表示装置に用いられる液晶表示パネルは、一般的に、電極や配向膜などが形成された2枚のガラス基板をスペーサによって所定間隔に維持した状態でシール材によって貼り合わせた空セル内に液晶を注入した構成を有している。
【0003】
空セル内に液晶を注入する方法としては、真空注入法が広く知られている。真空注入法では、例えば、真空チャンバ内に液晶を貯留した液晶ボートと複数の空セルとを配置する。そして、真空チャンバ内を真空排気して減圧し、空セルの間隙内及び液晶を脱気する。その後、空セルの下端の注入口を液晶ボート内の液晶に接触させる。そして、真空チャンバ内を大気圧に戻すと、毛細管現象と空セル内外の圧力差により、液晶ボート内の液晶が空セル内に吸い上げられる。これにより、液晶を複数の空セル内に同時に注入することができる。
【0004】
しかし、真空注入法では、液晶を空セル内に注入されるまでに時間がかかってしまい、製造効率が悪化するという問題があった。これは、液晶が粘性をもつためである。従来から、液晶あるいは空セルを加熱し液晶の粘度を低下させて、注入時間を短縮する加熱装置を備えた注入装置が知られている(例えば、特許文献1及び2参照)。
【特許文献1】特開2003−005200号公報
【特許文献2】特開平10−020315号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の注入装置では、真空チャンバの外壁面に設けた加熱装置で加熱することにより、空セル内への液晶の注入を促進している。しかしながら、上記の構成では、真空チャンバ内を減圧状態としたときは、熱を伝導する媒体が少ないため、液晶及び空セルの温度を上昇させる効率が悪い。
【0006】
特許文献2に記載の注入装置では、液晶ボートの下にラバーヒータを設け、液晶を直接加熱する構成が開示されている。一般的に、常温で粘度が低い液晶は、常温で粘度が高い液晶に比べ蒸発しやすいことが知られている。特に、多くの液晶表示装置に用いられている液晶は、複数の液晶をブレンドしたものであるため、蒸発し易い成分とそうでない成分が存在し、高温にした場合は蒸発し易い成分のみが蒸発することとなる。すなわち、液晶を高温にすると、一部の成分のみが蒸発により減少することになり、液晶全体の特性が変化してしまうおそれがある。また、これらの方法では、注入装置に加熱する手段を設けているため、大掛かりな設備が必要である。このため、コストが高くなり、さらには広い設置面積が必要となる。
【0007】
本発明はこのような事情を背景としてなされたものであり、本発明の目的は、液晶の注入時間を短縮することができ、簡便な液晶表示パネルの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明にかかる液晶表示パネルの製造方法は、一対の絶縁性基板を有する空セルに液晶を注入して液晶表示パネルを製造する液晶表示パネルの製造方法であって、前記空セルの少なくとも一方の絶縁性基板に発熱膜を形成しておく工程と、前記発熱膜に電圧を印加し、前記空セルを加熱する工程と、加熱された前記空セルに液晶を注入する工程とを有する方法である。これにより、簡便な方法で、液晶の注入時間を短縮することができる。
【0009】
上記の液晶表示パネルの製造方法であって、前記発熱膜が前記空セルの内側になるように、前記絶縁性基板に形成されていることが好ましい。これにより、空セルに注入する液晶をより効果的に加熱することができる。
【0010】
上記の液晶表示パネルの製造方法であって、前記発熱膜が表示領域全体に設けられた透明導電膜であることが好ましい。これにより、空セルに注入する液晶をより効果的に加熱することができる。
【0011】
上記の液晶表示パネルの製造方法であって、前記発熱膜を液晶の粘度を低下させるためのヒータとして用いる。これにより、製造工程を増やすことなく、ヒータを得ることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、液晶の注入時間を短縮することができ、簡便な液晶表示パネルの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
実施の形態.
本実施の形態にかかる液晶表示パネルの製造方法について説明する前に、図1を用いて液晶表示装置について説明する。図1は、液晶表示装置に用いられる液晶表示パネル10の構成を示す断面図である。図2は、液晶表示パネル10のTFTアレイ基板11の構成を示す平面図である。また、図2においては、画素電極22及び配向膜25の図示は省略している。ここでは、液晶表示装置の一例として、透過型のアクティブマトリクス駆動の液晶表示装置について説明する。
【0014】
液晶表示装置は、液晶表示パネル10、バックライトユニット、駆動回路等を備えるものである。液晶表示パネル10は、TFTアレイ基板11と対向基板12とを対向配置させ、両基板間に液晶層13を形成したものである。TFTアレイ基板11と対向基板12とは、その外周縁に塗布されたシール材14を介して貼り合わせられる。また、図2に示されるように、シール材14は、枠状に形成され、一部に開口を有する。この開口が液晶注入口15であり、液晶層13は、この液晶注入口15から液晶を注入し、液晶注入口15を封止材16によって封止することによって形成される。基板間には、スペーサ(不図示)が配置され、所定間隔に維持されている。
【0015】
TFTアレイ基板11は、ガラス等からなる透明の第1絶縁性基板17を有する。第1絶縁性基板17は、対向基板12の後述する第2絶縁性基板18より平面寸法が大きく形成されている。そして、第1絶縁性基板17は、第2絶縁性基板18の対向する2辺の端部から突出するように配置される。そして、第1絶縁性基板17上には、発熱膜19が形成されている。発熱膜19は、第1絶縁性基板17の略全面に形成されており、詳細には、シール材14の内側の領域全体に形成されている。すなわち、発熱膜19は、表示領域全体に設けられている。発熱膜19としては、例えばITO(Indium Tin Oxide)等の透明導電膜を用いることができる。発熱膜19の膜厚は、例えば95nm〜320nmである。
【0016】
なお、第1絶縁性基板17が第2絶縁性基板18から突出した突出領域において、発熱膜19上の端部には、発熱膜用電極20が形成されている。すなわち、突出領域において、第1絶縁性基板17の対向する2辺に沿って、発熱膜用電極20が形成されている。つまり、発熱膜用電極20は、発熱膜19上にて対向配置される。従って、発熱膜19の端部は、発熱膜19と発熱膜用電極20との積層構造となっている。発熱膜用電極20としては、例えばアルミニウム(Al)等からなる低抵抗の導電膜を用いることができる。
【0017】
発熱膜19上には、絶縁膜21が形成される。絶縁膜21は、発熱膜19の形成面積より小さく形成され、第2絶縁性基板18と略同じ大きさに形成されている。すなわち、絶縁膜21は、突出領域上には形成されておらず、突出領域では発熱膜用電極20が露出している。これにより、発熱膜用電極20に電圧を印加し、発熱膜19に電流を流すことができる。そして、この発熱膜19に電流を流すことにより、発熱膜19を略均一に加熱することができる。
【0018】
そして、絶縁膜21上において、1画素ごとに、図示しないスイッチング素子としてのTFT(薄膜トランジスタ)を有する。そして、シール材14で囲まれる領域にて、1画素ごとに画素電極22がマトリクス状に配置される。画素電極22としては、ITO等の透明導電膜を用いることができる。TFTアレイ基板11は、以上のように構成される。
【0019】
このTFTアレイ基板11の端部には、駆動回路(不図示)が設けられる。これにより、外部からの各種信号が駆動回路に供給される。それらの信号に応じて、駆動回路によりTFTのON、OFFが制御され、TFTがON状態のとき、画素電極22に表示電圧が印加される。
【0020】
対向基板12は、カラーフィルタ層23及び対向電極24を有している。カラーフィルタ層23は、例えばブラックマトリクス(BM)層と、赤(R)緑(G)青(B)の着色層とを有している。対向電極24は、対向基板12の液晶層13側に配置され、液晶層13に駆動電圧を供給するための共通電位が与えられる。対向電極24としては、ITO等の透明導電膜を用いることができる。そして、対向基板12と対向電極24との間にて、画素電極22及びTFTに対向する領域に、カラーフィルタ層23が形成されており、このカラーフィルタ層23を用いてカラー表示が行われる。対向基板12は、以上のように構成される。
【0021】
また、TFTアレイ基板11及び対向基板12の液晶層13側の表面には、液晶を配向させるための配向膜25が形成されている。配向膜25としては、ラビング処理されたポリイミド膜を用いることができる。TFTアレイ基板11と対向基板12の外側に、それぞれ偏光板26が貼付される。TN(Twisted Nematic)の場合、これらの偏光板26は、それぞれの吸収軸が垂直、もしくは平行になるように配置される。
【0022】
バックライトユニットは、液晶表示パネル10の反視認側、すなわちTFTアレイ基板11側に配置され、液晶表示パネル10の背面側から光を照射する。バックライトユニットとしては、例えば、光源、導光板、反射シート、拡散シート、プリズムシート、反射偏光シートなどを備えた一般的な構成のものを用いることができる。液晶表示装置は、以上のように構成されている。また、上記の構成は、一例であり、これ以外の構成でもよい。
【0023】
画素電極22と対向電極24との間の電界によって、液晶が駆動される。すなわち、基板間の液晶の配向方向が変化する。これにより、液晶層13を通過する光の偏光状態が変化する。すなわち、偏光板26を通過して直線偏光となった光は液晶層13によって、偏光状態が変化する。具体的には、バックライトユニットからの光及び外部から入射した外光は、TFTアレイ基板11側の偏光板26によって直線偏光になる。そして、この直線偏光が液晶層13を通過することによって、偏光状態が変化する。
【0024】
従って、偏光状態によって、対向基板12側の偏光板26を通過する光量が変化する。すなわち、バックライトユニットから液晶表示パネル10を透過する透過光のうち、視認側の偏光板26を通過する光の光量が変化する。液晶の配向方向は、印加される表示電圧によって変化する。従って、表示電圧を制御することによって、視認側の偏光板26を通過する光量を変化させることができる。すなわち、画素毎に表示電圧を変えることによって、所望の画像を表示することができる。
【0025】
液晶表示装置は、低温環境下では液晶の粘性が高くなるため、液晶の応答速度が極端に遅くなる。従って、低温環境下で液晶表示装置を使用すると、表示すべき画像の動きに液晶が追従せず、表示性能が低下するという問題がある。ここで、上記の液晶表示装置によれば、発熱膜19を通電することによって、液晶表示パネル10を暖めることができる。これにより、液晶の応答速度が改善し、表示特性を向上させることができる。また、上記の液晶表示装置は、液晶表示パネル10に直接、発熱膜19を形成している。すなわち、液晶層13近傍に発熱膜19が形成されている。このため、効率的に液晶層13を加熱することができる。また、液晶表示パネル10に直接、発熱膜19を形成するため、液晶表示パネル10の厚みを抑えることができる。また、別途ガラス基板等を配置する必要がなく、製造コストを低く抑えることができる。
【0026】
次に、液晶注入装置の構成について図3を用いて説明する。図3は液晶注入装置100の構成の一例を示す図である。図3に示すように、液晶注入装置100は、真空チャンバ101、キャリア102、アーム103などを備える。本実施の形態においては、上記の液晶表示パネル10となる空セル30を被注入対象とし、空セル30内に液晶を注入する。空セル30の液晶注入口15は図3中下端に設けられている。
【0027】
空セル30とは、配向膜25が形成されたTFTアレイ基板11と対向基板12とをスペーサによって所定間隔に維持した状態でシール材14によって貼り合わせたものである。空セル30内に液晶を注入し、偏光板26や駆動回路、バックライトユニットなどを設けることにより液晶表示装置が形成される。また、上記のように、突出領域に一対の発熱膜用電極20が形成されている。すなわち、一対の発熱膜用電極20は露出している。この発熱膜用電極20に外部から電圧を印加することにより、発熱膜19を略均一に暖めることができる。
【0028】
具体的には、一対の発熱膜用電極20に電圧を印加する。これにより、発熱膜19の両端に電圧が供給される。そして、一方の発熱膜用電極20から発熱膜19を通って他方の発熱膜用電極20に例えば4Aの電流を流す。発熱膜19に電流が流れ、発熱膜19の持つ抵抗によってジュール熱が発生する。このジュール熱によって液晶注入口15近傍及び表示領域全体が加熱される。これにより、第1絶縁性基板17等の温度が上昇する。
【0029】
真空チャンバ101は、内部を真空排気し減圧状態とするために図示しない真空ポンプが真空バルブを介して接続されている。また、真空チャンバ101の内部を大気圧に戻す際に供給されるNガス源がN導入バルブ(不図示)を介して接続されている。
【0030】
真空チャンバ101内には、空セル30及び液晶ボート104が配置される。液晶ボート104には凹部が設けられており、凹部内に液晶105が貯留されている。液晶ボート104としては、例えば、AlやCu、ステンレス鋼などの金属製のものを用いることができる。なお、液晶ボート104には、内部に貯留した液晶105を吸い上げるヤーン(不図示)が設けられていてもよい。ヤーンとしては、例えば、グラスファイバなどの繊維材料を撚ったものを用いることができる。
【0031】
キャリア102は、空セル30を固定・保持する。アーム103は、図示しない移動機構を有している。アーム103を駆動し、空セル30を保持したキャリア102を下降させることにより、空セル105の液晶注入口15を液晶105に接触させることができる。なお、液晶ボート104内に液晶を吸い上げるヤーンを設けた場合には、空セル30の液晶注入口15はヤーン上で液晶105と接触する。液晶注入装置100は、上記のように構成されている。
【0032】
上記のように、空セル30に発熱膜19が形成されているため、液晶注入装置100によって液晶105を注入する際に、空セル30内を加熱することができる。これにより、空セル30内に注入する液晶105の粘度が低下し、液晶105の注入速度を早くすることができる。また、液晶105は、空セル30内に注入する際に、発熱膜19によって加熱される。すなわち、空セル30内に注入する前に、液晶105は加熱されないため、液晶105の蒸発が抑制され、特性変化を抑制することができる。これにより、高品位の液晶表示装置を得ることができる。
【0033】
また、液晶注入装置100には、液晶105を加熱させる大掛かりな設備が不要である。このため、低コスト化が可能となり、さらには設置面積を広くする必要がない。すなわち、簡便に液晶105を空セル30内に注入することができる。さらには、液晶注入装置100ではなく、空セル30に加熱させる手段を設けるため、空セル30内をより効率的に加熱することができる。このため、印加する電圧を低く抑えることができ、低消費電力化することができる。
【0034】
次に、本実施の形態にかかる液晶表示パネル10の製造方法が用いられる液晶表示装置の製造方法について、図4を用いて説明する。図4は、液晶表示装置の製造方法を示すフローチャート図である。
【0035】
まず、TFTアレイ基板11及び対向基板12用の絶縁性基板17、18を用意する。第1絶縁性基板17上に、ITO等の発熱膜19を略全面に成膜する(ステップS1)。そして、第1絶縁性基板17の対向する2辺に沿って、発熱膜19上に、発熱膜用電極20を形成する。発熱膜用電極20としては、Al等の低抵抗の導電膜を用いることができる。次に、発熱膜用電極20が形成された領域を除いて、発熱膜19上に絶縁膜21を形成する。そして、絶縁膜21上に、TFT、画素電極22等を形成する。これにより、TFTアレイ基板11が形成される。
【0036】
第2絶縁性基板18上には、BM層、着色層をパターン形成することにより、カラーフィルタ層23が形成される。そして、カラーフィルタ層23上の略全面に、ITO等の対向電極24を形成する。これにより、対向基板12が形成される。
【0037】
次に、空セル30を形成する。まず、それぞれの基板上に、所定の方向に配向処理された配向膜25を形成する。その後、TFTアレイ基板11上にスペーサを散布し、シール材14を塗布してTFTアレイ基板11と対向基板12とを接着する。具体的には、シール材14によって、TFTアレイ基板11の絶縁膜21と、対向基板12の第2絶縁性基板18とを接着する。このように、対向する一対の基板を、一部に液晶注入口15を有するシール材14によって貼り合せることにより、空セル30が形成される。
【0038】
そして、真空チャンバ101内に空セル30を配置する。また、真空チャンバ101内に、液晶105を貯留した液晶ボート104を、空セル30の液晶注入口15と液晶105とが対向するように配置する。このとき、空セル30の液晶注入口15と、液晶105とは接触させない。
【0039】
そして、真空チャンバ101内を真空排気し減圧状態とする。これにより、空セル30内及び液晶105も脱気される。そして、発熱膜用電極20に外部から電圧を印加する。従って、発熱膜19の両端に電圧が印加され、発熱膜19に電流が流れる。これにより、発熱膜19が加熱され、空セル30内も加熱される。また、発熱膜19は、第1絶縁性基板17の略全面に形成されているため、1つの空セル30において温度のバラツキがなく、均一に加熱される(ステップS2)。
【0040】
その後、アーム103を移動させ、空セル30の液晶注入口15と液晶105とを接触させる。そして、N導入バルブからNガスを導入して、大気圧に戻す。そして、この空セル30に液晶注入口15から液晶105を注入する(ステップS3)。上記のように、空セル30内は加熱されているため、空セル30内に注入した液晶105も加熱される。このため、液晶105の粘度が低下し、空セル30内に液晶105を注入する速度を早くすることができる。このように、液晶の進行速度を速めることで、注入時間を短縮することができるため、効率がよく生産性が向上する。また、上記のように、空セル30内は、均一に加熱されるため、空セル30内に短時間に液晶105を充填することができる。
【0041】
その後、液晶注入口15に封止材16を塗布して、封止材16を硬化させることにより空セル30内に液晶105を封止する(ステップS4)。これにより、液晶セルが形成される。そして、それぞれの液晶セルの外側に偏光板26などの光学フィルムを貼り付けて(ステップS5)、液晶表示パネル10が完成する。そして、駆動回路、バックライトユニットなどを実装する(ステップS6)ことにより、液晶表示装置が完成する。
【0042】
本実施の形態にかかる液晶表示パネル10の製造方法によれば、一対の発熱膜用電極20を外部と接続することにより、発熱膜19に電圧を印加することができる。これにより、発熱膜19が加熱され、上記のように、液晶105の注入時間を短縮することができる。また、液晶表示パネル10の完成後は、発熱膜19をヒータとして利用することができる。すなわち、発熱膜用電極20に電圧を印加して、発熱膜19に電流を流す。これにより、発熱膜19が発熱し、発熱膜19によって液晶が加熱される。そして、液晶の応答速度が改善し、低温時の起動時間を短縮することができる。このように、発熱膜19をヒータとして利用することにより、別途ヒータを形成する工程が不要となる。すなわち、製造工程を増やすことなく、ヒータを設けることができ、生産性が向上し、製造コストも低減する。
【0043】
また、第1絶縁性基板17上に形成される絶縁膜21等の厚さは数nm又は数μm程度であるのに対して、第1絶縁性基板17の厚さは0.1〜0.5mmである。このため、発熱膜19を第1絶縁性基板17の外側(液晶層13と反対側)に形成してもよいが、本実施の形態のように、第1絶縁性基板17の内側に形成することが好ましい。これにより、第1絶縁性基板17を介在させることなく、セル内を加熱することができ、より効果的である。また、TFTアレイ基板11側ではなく、対向基板12側に発熱膜19を形成してもよい。対向基板12に形成する場合は、例えば第2絶縁性基板18上の略全面に発熱膜19を形成し、その後カラーフィルタ層23、対向電極24を形成するようにする。またさらには、TFTアレイ基板11及び対向基板12の両方に発熱膜19を形成してもよい。すなわち、TFTアレイ基板11及び対向基板12のうち、少なくともいずれか一方に発熱膜19が形成されていればよい。
【0044】
また、本実施の形態のように、対向電極24が略全面に形成されている場合、対向電極24に発熱膜19としての機能を持たせてもよい。すなわち、対向電極24によって、セル内を加熱してもよい。これにより、空セル30をより効果的に加熱することができる。また、発熱膜19を別途形成する必要がなく簡便である。本実施の形態では、透過型の液晶表示パネル10を例に挙げて説明したが、例えば反射型の液晶表示パネル10であってもよい。反射型の液晶表示パネル10の場合、発熱膜19としては、透明導電膜のように、透過性を有する必要はなく、例えば銅箔を用いてもよい。
【0045】
また、上記の方法に限らず、真空で液晶を注入する他の方法、例えばディスペンサ方式を用いた場合でも、本実施の形態のように発熱膜19を用いることによって液晶105の注入時間を短縮することが可能である。なお、上述の実施の形態では、単一の空セル30に対して、液晶を注入する場合について説明したが、これに限定されない。例えば、複数の空セル30をキャリア102によって固定・保持し、同時に液晶105を注入しても良い。これにより、さらに生産性が向上する。
【0046】
また、本実施の形態によれば、液晶105の注入速度が非常に遅いVA(Vertical Alignment;Vertically Aligned)方式の液晶表示装置の製造過程においても、液晶105の注入時間を短縮することができる。VA方式には、負の誘電率異方性(Δε<0)を持つ液晶組成物が用いられる。従って、電圧が印加されていないとき、液晶分子は基板面に対して垂直に配向している。また、VA方式の場合、液晶分子を基板に対して垂直に配列するために、垂直配向膜を使用する。垂直配向膜は、垂直配向制御を行うため、配向膜の側鎖が垂直方向に立設した状態で形成される。
【0047】
このため、電圧無印加時には、図5に示されるように、垂直配向膜3の側鎖2と液晶分子1との間に立体障害が生じると考えられる。図5は、垂直配向膜3と液晶分子1との関係を示す概念図である。このように、垂直配向膜3の垂直方向に延びた側鎖2と、無印加時に垂直方向に配向する液晶分子1とが互いに接触し、液晶注入の妨害になり、液晶注入に時間がかかると考えられる。
【0048】
例えば、平面積983.84mmの液晶表示パネル10(パネルAとする)の場合、無印加時に水平方向に配向するTN型では、液晶の注入時間が9分となった。一方、無印加時に垂直方向に配向するVA型では、液晶の注入時間が85分となり、TN型と比較して約10倍の時間を要した。また、平面積5193.76mmの液晶表示パネル10(パネルBとする)の場合、TN型では、液晶の注入時間が30分となった。一方、VA型では、液晶の注入時間が300分となり、TN型と比較して約10倍の時間を要した。なお、上記に示す例では、パネルA及びパネルBに従来の液晶の注入方法によって液晶を注入した。すなわち、空セル30を加熱せずに、液晶105を注入した。このように、VA型は、液晶注入に非常に時間がかかる。
【0049】
そこで、本実施の形態のように、空セル30内を加熱しながら、液晶105を注入することが好ましい。本実施の形態のように液晶105を注入した結果、VA型のパネルAの場合、発熱膜19上の発熱膜用電極20間に16Vの電圧を印加し、4Aの電流を流して空セル30を加熱したところ、液晶の注入時間が40分となった。また、VA型のパネルBの場合、液晶の注入時間が140分となった。すなわち、いずれの液晶表示パネル10においても、液晶の注入時間を約半分に短縮することができた。以上の結果を表1にまとめる。
【0050】
【表1】

【0051】
また、空セル30内を加熱することに加えて、空セル30の基板間に電圧を印加して液晶105を注入してもよい。これにより、液晶分子1が傾き、液晶分子1と垂直配向膜3との立体障害が低減し、さらに液晶の注入時間を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】実施の形態にかかる液晶表示パネルの構成を示す断面図である。
【図2】実施の形態にかかるTFTアレイ基板の構成を示す平面図である。
【図3】実施の形態にかかる液晶注入装置の構成の一例を示す図である。
【図4】実施の形態にかかる液晶表示装置の製造方法を示すフローチャート図である。
【図5】垂直配向膜と液晶分子との関係を示す概念図である。
【符号の説明】
【0053】
1 液晶分子、2 側鎖、3 垂直配向膜、10 液晶表示パネル、
11 TFTアレイ基板、12 対向基板、13 液晶層、14 シール材、
15 液晶注入口、16 封止材、17 第1絶縁性基板、
18 第2絶縁性基板、19 発熱膜、20 発熱膜用電極、21 絶縁膜、
22 画素電極、23 カラーフィルタ層、24 対向電極、25 配向膜、
26 偏光板、30 空セル、100 液晶注入装置、101 真空チャンバ、
102 キャリア、103 アーム、104 液晶ボート、105 液晶

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の絶縁性基板を有する空セルに液晶を注入して液晶表示パネルを製造する液晶表示パネルの製造方法であって、
前記空セルの少なくとも一方の絶縁性基板に発熱膜を形成しておく工程と、
前記発熱膜に電圧を印加し、前記空セルを加熱する工程と、
加熱された前記空セルに液晶を注入する工程とを有する液晶表示パネルの製造方法。
【請求項2】
前記発熱膜が前記空セルの内側になるように、前記絶縁性基板に形成されている請求項1に記載の液晶表示パネルの製造方法。
【請求項3】
前記発熱膜が表示領域全体に設けられた透明導電膜である請求項1又は2に記載の液晶表示パネルの製造方法。
【請求項4】
前記発熱膜を液晶の粘度を低下させるためのヒータとして用いる請求項1乃至3のいずれかに記載の液晶表示パネルの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−275866(P2008−275866A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−118859(P2007−118859)
【出願日】平成19年4月27日(2007.4.27)
【出願人】(000103747)オプトレックス株式会社 (843)
【出願人】(000167783)広島オプト株式会社 (95)
【Fターム(参考)】