説明

液晶表示装置の表示制御方法および液晶表示装置

【課題】液晶表示パネルにおけるγ特性の視角依存性を利用して特殊な表示状態を実現する。
【解決手段】表示面を正面から視認したときの平均輝度が階調レベルnの輝度と同じであり、斜め方向から視認したときの平均輝度が階調レベルnの輝度とは異なる階調レベルn1,n2の組み合わせと階調レベルn1’,n2’の組み合わせとを選択し、領域A(明るい領域)では、階調レベルとして(n1,n2)の組み合わせを用い、領域B(暗い領域)では、階調レベルとして(n1’,n2’)の組み合わせを用いて、(n1,n2)の平均表示を行うとともに、(n1’,n2))の平均表示を行う。斜め方向から視認したときには、(n1,n2)の組み合わせによる平均輝度は、(n1’,n2’)の組み合わせによる平均輝度よりも高い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置の表示制御方法、およびその表示制御方法を用いた液晶表示装置に関し、特に、γ特性の視角依存性を利用した表示制御を行う液晶表示装置の表示制御方法および液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置において、TN(Twisted Nematic )モードの液晶を用いたTN型液晶表示パネルが広く用いられている。
【0003】
しかし、TN型液晶表示パネルには、視認者が表示面を斜め方向から視認すると、表示のコントラスト比が低下して視認されるという課題がある。すなわち、正面から視認した場合には階調差が明確に識別される画像を斜め方向から視認すると階調間の輝度差が不明瞭になる。また、階調特性が反転し、正面から暗く視認される部分を斜め方向から視認すると明るく視認される現象が発生することがある(例えば、特許文献1,2,3参照。)。
【0004】
視角特性を改善した液晶表示パネルとして、IPS(In-Plane Switching)モードやMVA(Multi-Domain Vertical Alignment )モードの液晶表示パネルがある。それらの液晶表示パネルでは、表示面を斜め方向から視認したときのコントラスト比の低下や階調特性の反転現象が緩和されている。
【0005】
【特許文献1】特開2004−62146号公報(段落0004−0006)
【特許文献2】特開平10−319373号公報(段落0002)
【特許文献3】特開2005−215590号公報(段落0004−0005)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
IPSモードの液晶表示パネルやMVAモードの液晶表示パネルでは、斜め方向から視認したときのコントラスト比の低下や階調特性の反転現象は緩和されるが、特に、MVAモードの液晶表示パネルにおいて、表示面を正面から視認したときのγ特性と斜め方向から視認したときのγ特性とが異なるという視角特性(γ特性の視角依存性)の問題が残っている。γ特性の視角依存性とは、それぞれの階調において、表示面を視認する角度が異なると、表示面を正面から視認した場合の輝度に対して、視認される輝度(相対輝度)が変わることである。例えば、表示面を正面から視認すると表示内容を判別できた部分が、斜め方向から視認すると高い輝度で視認されて表示内容を判別できないという現象が生ずる。
【0007】
図16(A)は、一般的なIPSモードの液晶表示パネルの視角特性を示す説明図であり、図16(B)は、一般的なMVAモードの液晶表示パネルの視角特性を示す説明図である。図16(A),(B)において、横軸は階調レベルを示し、縦軸は相対輝度を示す。なお、液晶表示パネルは256階調表示可能であるとする。また、相対輝度は、表示可能な最大輝度を1とし最小輝度を0とした場合の輝度である。図16(A),(B)に記載されている角度(0°、30°、45°および60°)は、表示面に対する法線からの視認方向の角度(視角)であり、法線から左または右に傾いた角度である。以下、表示面に対する法線に沿って表示面を視認する場合を「表示面を正面から視認する」と表現することがある。
【0008】
図16(A)に示すように、IPSモードの液晶表示パネルでは、それぞれの階調レベルにおいて、視角が変化しても輝度はほぼ同じである。また、図16(B)に示すように、MVAモードの液晶表示パネルでは、視角が大きくなるのに従って、輝度は高くなる。図16(B)に示すように、MVAモードの液晶表示パネルでは、表示面を正面から視認したときのγ特性と斜め方向から視認したときのγ特性とが異なっている。
【0009】
なお、γ特性の視角依存性の問題は、MVAモードの液晶表示パネルだけでなく、TN型液晶表示パネル等の他の方式による液晶表示パネルにも存在する。
【0010】
γ特性の視角依存性を改善するために種々の提案がなされている(例えば、上記の特許文献1参照。)。
【0011】
また、TN型液晶表示パネルにおける視角依存性を利用して、特殊な表示状態を実現するための提案もなされている(例えば、上記の特許文献2,3参照。)。例えば、特許文献2には、視野角を広くしたり狭くしたりすることができる液晶表示装置が記載されている。なお、特許文献2において、視野角を広くするということは、表示面に対する法線からの視認方向の角度が大きくなっても、コントラスト比が高い値に保たれるようにすることである。また、視野角を狭くするということは、視角がある程度以上になると、コントラスト比を極端に低下させるようにすることである。
【0012】
特許文献3には、0°以外の特定の視角におけるコントラスト比を最大にして、特定の視角を中心とした視野角内においてのみ表示内容を認識可能にすることによって、表示内容を認識不能にする視角を任意に変更できる液晶表示装置が記載されている。
【0013】
しかし、γ特性の視角依存性(それぞれの階調において視角が異なると視認される輝度が変わるという特性)を利用して特殊な表示状態を実現することは、特許文献1,2には記載されていない。特許文献1,2には、TN型液晶表示パネルにおけるコントラスト比の視角依存性を利用しているにすぎない。
【0014】
本発明は、液晶表示パネルにおけるγ特性の視角依存性を利用して特殊な表示状態を実現することができる液晶表示装置の表示制御方法および液晶表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
まず、本発明による液晶表示装置の表示制御方法および液晶表示装置の基礎になる液晶表示パネルの特性を説明する。図1(A)は、MVAモードの液晶表示パネルにおける各階調レベルの輝度の視角依存性の一例を示す説明図である。図1(A)において、横軸は、表示面に対する法線からの傾き(視角)であり、法線から左または右に傾いた角度θである。角度θの正値は右側への傾きに対応し、角度θの負値は左側への傾きに対応している。縦軸は、I(255,0)(表示面を正面から視認した場合の階調レベル255の画像の輝度)に対する輝度I(n,θ)、すなわち相対輝度[I(n,θ)/I(255,0)]を示す。nは階調レベルを示す。図1(B)は、それぞれの階調レベルの種々の角度(視角)θにおける階調レベル255(最も輝度が高いレベル)に対する輝度I(n,θ)、すなわち相対輝度(輝度比)[I(n,θ)/I(255,θ)]を示す。以下、相対輝度を、単に「輝度」という。
【0016】
図1(B)に示すように、各階調レベルにおいて視角の絶対値が小さい(0°に近い)場合には輝度は低く視認されるが、視角の絶対値が大きくなると輝度は高く視認される。しかも、輝度が高く視認される角度範囲(視野)は比較的広い。以下、輝度が低く(または高く)視認されることを、単に、輝度が低い(または高い)という。また、視角の絶対値が小さい場合の2つの階調レベルに関する輝度の差は、視角の絶対値が大きい場合の輝度の差とは異なっている。例えば、 図1(B)に示す例では、視角θが0°である場合の階調レベル160の輝度(約0.4)と階調レベル64の輝度(約0.1)との差は0.3であるのに対して、視角θが30°である場合には、階調レベル160の輝度(約0.6)と階調レベル64の輝度(約0.25)との差は0.35である。また、視角θが50°である場合には、階調レベル160の輝度(約0.9)と階調レベル64の輝度(約0.5)との差は0.4である。
【0017】
また、4つの階調レベルに着目すると、視角θが0°である場合に、2つの階調レベルの輝度の平均値Aが、他の2つの階調レベルの輝度の平均値Bと同じであっても、視角が大きくなると(斜め視点では)、2つの階調レベルの輝度の平均値Aは、他の2つの階調レベルの輝度の平均値Bと同じにならない。例えば、視角θが0°である場合には、階調レベル128の輝度(階調レベル128と階調レベル128との平均値に相当:0.25とする。)と、階調レベル160の輝度(約0.4)と階調レベル64の輝度(約0.1)の平均値はほぼ等しいが、視角θが50°である場合には、階調レベル128の輝度(約0.75)は、階調レベル160の輝度(約0.9)と階調レベル64の輝度(約0.5)の平均値(約0.7)とは異なる。以下、2つの階調レベルの輝度の平均値を平均輝度という。
【0018】
図2は、斜め視点では平均値Aと平均値Bとが同じにならないことを説明するための説明図である。図2(A)に示すように、視角θが0°である場合に、階調レベル160の輝度(2つの階調レベルがともに160であった場合の平均値Aに相当)が、階調レベル0の輝度と階調レベル224の輝度の平均値Bと同じであるが、視角θが50°である場合には、平均値Aは平均値Bよりも大きくなっている。図2(A)において、矢印は、視角θが50°である場合の平均値Aと平均値Bとの差を示す。なお、図2に例示された階調レベル0,160,224は一例である。また、図2(A)に記載されている「1階調表示」は、階調レベル160の輝度表示に相当し、「2階調平均表示」は、階調レベル0の輝度と階調レベル224の輝度との平均輝度表示に相当する。
【0019】
図2(B),(C)には、液晶表示パネルにおける隣接する4つの領域が、階調レベル160または階調レベル(0+224)/2であった場合に視認される輝度の様子が示されている。(0+224)/2は、輝度が、階調レベル0の輝度と階調レベル224の平均輝度であることを示す。なお、階調レベル0の輝度と階調レベル224の平均輝度は、後述するように、例えば階調レベルを時間平均または空間平均することによって実現される。
【0020】
図2(B)には、視角θが0°である場合に視認される輝度の様子が示され、図2(C)には、視角θが50°である場合に視認される輝度の様子が示されている。図2(B)に示すように、視角θが0°である場合には輝度差は視認されないが、図2(C)に示すように、視角θが50°である場合には輝度差は視認される。
【0021】
本発明による液晶表示装置の表示制御方法および液晶表示装置は、上述したような、表示画面を正面から観察した場合には平均値Aと平均値Bとがほぼ同じであっても、斜め視点では平均値Aと平均値Bとが同じにならないことを利用して特殊な表示を実現する。
【0022】
階調レベルnと輝度Iとの関係は、(1)式で表されるγ特性になる。
I(n,γ)=(n/255)^γ ・・・(1)
【0023】
ただし、好ましくは、液晶表示パネルの固有のγ特性に従う。(1)式において、I(n,γ)は階調レベルnにおける輝度であり、γは一般に2.2である。「^」は累乗の指数を示す。なお、輝度I(n,γ)は、視角θが0°である場合の輝度である。
【0024】
階調レベルがnであるときの輝度I(n,γ)に対して、(2)式を満足するn1,n2を選択することによって、視角θが0°であるときの、階調レベルn1と階調レベルn2の平均輝度は、階調レベルがnの輝度と等しくなる。
【0025】
I(n,γ)=[I(n1,γ)+I(n2,γ)]/2 ・・・(2)
【0026】
上述したように、視角θが0°であるときに(2)式を満足しても、MVAモードの液晶表示パネルを使用する場合には、斜め視点では平均値A(2つの階調レベルがともにnであった場合の平均値に相当)と平均値B(階調レベルn1の輝度と階調レベルn2の輝度の平均値に相当)とが同じにならない。よって、液晶表示パネルが、階調レベルnで表示を行う場合と、階調レベルn1の輝度と階調レベルn2の輝度の平均値の輝度の表示を行う場合とで、視角が0°に対して大きくなったときに視認される輝度は同じにならない。
【0027】
図3は、視角が0°の場合に平均輝度が同じであって斜め視点では平均輝度が異なる階調レベルn1,n2の集合を示す説明図である。図3の説明図に示すように、階調レベルnに対して、(2)式を満足するn1,n2の組み合わせは多数存在する。図3において、Sが付された数字が示す円弧は、その数字が示す階調レベルに対する(n1,n2)の組み合わせが存在する位置を示す。つまり、(n1,n2)の組み合わせは、円弧上に存在する。具体的には、(3)式を満足する(n1,n2)の集合Snは、図3における円弧上に存在する(n1,n2)の組み合わせである。
【0028】
Sn={n1,n2|I(n,γ)=[I(n1,γ)+I(n2,γ)]/2} ・・・(3)
【0029】
(3)式は、|の右側の条件を満足する(n1,n2)の組み合わせの全てを示す。なお、nは離散的な値(例えば、0〜255のいずれかの整数)であるから、集合Snを、例えば、(4)式で示すように条件に余裕を持たせることが好ましい。
【0030】
Sn={n1,n2|I(n−0.5,γ)<[I(n1,γ)+I(n2,γ)]/2<I(n+0.5,γ)} ・・・(4)
【0031】
視角が0°に対して大きくなったときに、集合Snに属する多数の(n1,n2)の組み合わせのそれぞれによる輝度(輝度の平均値すなわち平均輝度)は、階調レベルnの輝度とは異なる上に、互いに異なる。図1(A)に示されたように、ある視角における各階調レベルの輝度は異なっているからである。
【0032】
図1(A)に示された特性にもとづいて、視角が0°に対して大きくなったときの階調レベルn1,n2の輝度を導出することができる。従って、階調レベルn1,n2の平均輝度を導出することができる。一例として、視角が60°の場合の階調レベルnに対する集合Snに属するそれぞれの(n1,n2)の組み合わせの平均輝度を図4に示す。図4において、横軸は階調レベルnを示し、縦軸は輝度を示す。なお、図4には、γ=2.2である場合の視角θが0°であるときの輝度を示す曲線も示されている。
【0033】
図4において、斜線が施された領域は、視角が0°であるときには平均輝度が同じである場合、視角が60°であるときに選択可能な輝度の領域を示す。図4において、(下限)として示されている曲線は、それぞれの階調レベルn(n=0〜255)に対する(n1,n2)の組み合わせの平均輝度のうち、最も低い値を示す。(上限)として示されている曲線は、それぞれの階調レベルn(n=0〜255)に対する(n1,n2)の組み合わせの平均輝度のうち、最も高い値を示す。なお、(通常n表示)は、視角が60°の場合の階調レベルnの輝度を示す。図4では、(通常n表示)は、(上限)に一致している。ただし、一般的には、(通常n表示)と(上限)とは一致しない。
【0034】
例えば、階調レベルnが100である場合、(下限)は約0.5であり、(上限)は、(通常n表示)の場合と同じで、ほぼ0.8である。このことは、視角が0°である場合には平均輝度が同じになる(n1,n2)の組み合わせを2つ選択したときに、視角が60°である場合には、0.4(=0.8−0,4)の範囲内で、視認される輝度に差を付けることができることを示す。
【0035】
なお、視角が0°である場合には、(通常n表示)を示す曲線(特性)と、(下限)を示す曲線および(上限)を示す曲線とは一致する。
【0036】
階調レベルnが100である場合に限らず、他の階調レベルnについても、同様に、視角が0°である場合には平均輝度が同じになる2つの(n1,n2)の組み合わせを選択したときに、視角が60°である場合には、視認される輝度に差を付けることができる。つまり、図4には視角が60°である場合が例示されているが、他の視角でも、斜線内の領域の形状は異なるが、図4において斜線が施された領域と同じような領域がある。
【0037】
図5は、視角θが0°であるときに(2)式を満足する(n1,n2)の組み合わせと(n1’,n2’)の組み合わせの輝度、および階調レベルnの輝度であって、斜め視点での輝度の例を示す説明図である。一例として、階調レベルnは186である。階調レベルn1は80であり、階調レベルn2は246であり、階調レベルn1’は0であり、階調レベルn2’は255であるとする。図5(A)は、階調レベルnの2画素を示し、図5(B)は、階調レベルn1の画素と階調レベルn2の画素とを示し、図5(C)は、階調レベルn1’の画素と階調レベルn2’の画素とを示す。また、図5において、斜線の密度の違いは、輝度が異なっていることを示す。
【0038】
なお、(n1,n2)の組み合わせと(n1’,n2’)の組み合わせとは、図3における同一円弧上に存在する組み合わせである。そして、斜め視点では、階調レベルnの輝度と、階調レベルn1と階調レベルn2の平均輝度と、階調レベルn1’と階調レベルn2’の平均輝度とは互いに異なっている。
【0039】
以上に説明したような液晶表示パネルの特性を利用して、本発明による液晶表示装置の表示制御方法は、表示面を正面から視認したときの平均輝度が略同じ(観察者に同輝度と視認される程度の差を許容した同程度)であり、斜め方向(例えば、表示面に対する法線からの視認方向の角度が60゜)から視認したときの平均輝度が異なるN個(N:2以上の正の整数)の階調レベルの組み合わせを複数組選択し、選択したそれぞれの組におけるN個の階調レベルの組み合わせの平均表示による画像を液晶表示パネルに表示させることを特徴とする。
【0040】
本発明による液晶表示装置の表示制御方法の一態様は、表示面を正面から視認したときの平均輝度が略同じであり、斜め方向から視認したときの平均輝度が異なる階調レベルn1,n2(n1,n2:自然数)と階調レベルn1’,n2’(n1’,n2’:自然数)とを選択し、階調レベルn1,n2の平均表示による画像と階調レベルn1’,n2’の平均表示による画像とを液晶表示パネルに表示させることを特徴とする。
【0041】
階調レベル(N個や(n1,n2))の平均表示を、例えば、時間平均および/または空間平均(時間平均、空間平均、または時間平均と空間平均との併用)によって実現する。
【0042】
階調レベルの平均表示を、1つの階調レベルn(例えば、n=n1=n2の場合に相当)によって実現するようにしてもよい。
【0043】
表示面を正面から観察したときに視認される本来画像(例えば、図7に示す本来の表示「あいうえおabcde12345」)とは異なる画像(例えば、妨害パターンや斜め視認画像102)を、階調レベルn1,n2の平均表示による画像と階調レベルn1’,n2’の平均表示による画像とによって液晶表示パネルに表示させるようにしてもよい。
【0044】
本来画像とは異なる画像として、斜め視点からの本来画像の視認を阻害する妨害画像(例えば、妨害パターン)を液晶表示パネルに表示させるようにしてもよい。
【0045】
本発明による液晶表示装置は、表示面を正面から視認したときのγ特性と斜め方向から視認したときのγ特性とが異なる液晶表示パネルを用いた液晶表示装置であって、表示面を正面から視認したときの平均輝度が略同じであり、斜め方向から視認したときの平均輝度が異なる階調レベルn1,n2(n1,n2:自然数)と階調レベルn1’,n2’(n1’,n2’:自然数)とを選択する選択手段と、階調レベルn1,n2の平均表示による画像と、階調レベルn1’,n2’の平均表示による画像とを液晶表示パネルに表示させる表示制御手段とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0046】
本発明によれば、表示画面の正面から視認不能であるが、斜め視点から視認されることが可能な画像を液晶表示パネルに表示することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0047】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0048】
実施の形態1.
第1の実施の形態(実施の形態1)では、図2(A)に示されたように、視角0°では2つの階調レベルの輝度の平均値Aが他の2つの階調レベルの輝度の平均値Bと同じであっても、視角が大きくなると(斜め視点では)、2つの階調レベルの輝度の平均値Aは他の2つの階調レベルの輝度の平均値Bと同じにならないことを利用して、より具体的には、図4において斜線が施された領域が存在することを利用して、液晶表示パネルに表示された本来の情報を、斜め視点では視認しづらくするための表示(以下、妨害パターンという。)を、当該液晶表示パネルに表示する。なお、本実施の形態では、MVAモードの液晶表示パネルを使用することを想定するが、図2(A)に示されたような特性を有していれば、MVAモード以外のモードの液晶表示パネルを使用することができる。
【0049】
図4には、視角が60°の場合の階調レベルnに対する集合Snに属するそれぞれの(n1,n2)の組み合わせの平均輝度が示されたが、図6には、視角が30°の場合の階調レベルnに対する集合Snに属するそれぞれの(n1,n2)の組み合わせの平均輝度が示されている。図6において、横軸は階調レベルnを示し、縦軸は輝度を示す。また、(上限)、(下限)および(通常n表示)の意味は、図4に示されたそれらの意味と同じである。なお、図6には、γ=2.2である場合の輝度を示す曲線も示されている。
【0050】
図6において、矢印は、階調レベルn(この例では、n=160)に対する(n1,n2)の組み合わせの平均輝度のうち、最も高い値(最大輝度)と最も低い値(最小輝度)との差を示す。矢印の上側の先端は最大輝度を示し、最も高い値下側の先端は最小輝度を示す。
【0051】
そして、本実施の形態では、視角θが0°であるときには輝度差はない(n1,n2)の組み合わせのうち、斜め視点では最大輝度を呈する(n1,n2)の組み合わせと、斜め視点では最小輝度を呈する(n1,n2)の組み合わせとを用いて、妨害パターンを作成する。以下、斜め視点では最大輝度を呈する(n1,n2)の組み合わせを(n1,n2)とし、斜め視点では最小輝度を呈する(n1,n2)の組み合わせを(n1’,n2’)とする。なお、図4に示された最大輝度と最小輝度との差(斜線が施された領域における垂直方向の幅に相当)と図6に示された最大輝度と最小輝度との差(例えば、矢印の長さに相当)とを比較すると理解されるように、視角θが30°であるときに比べて、視角θが60°であるときの最大輝度と最小輝度との差はより大きい。つまり、視角0°を中心としたある程度の視野角では、妨害パターンは目立たず、本来の表示の視認を阻害しない。
【0052】
図7は、妨害パターンの一例を示す説明図である。図7(A)には、視角θが0°であるときの液晶表示パネルの視認状態が示されている。図7(B)には、斜め視点(例えば、視角が60°)の場合の液晶表示パネルの視認状態が示されている。図7において、領域A(明るい領域)は、液晶表示パネルの表示面101において、階調レベルとして(n1,n2)の組み合わせを用い、階調レベルn1と階調レベルn2の平均輝度が視認される領域を示す。領域B(暗い領域)は、液晶表示パネルの表示面101において、階調レベルとして(n1’,n2’)の組み合わせを用い、階調レベルn1’と階調レベルn2’の平均輝度が視認される領域を示す。
【0053】
図7(A)に示すように、視角θが0°であるときには妨害パターンの存在はほとんど視認されない。領域A,Bの輝度差がないからである。また、図7(B)に示すように、斜め視点では、領域A,Bに輝度差が生ずるので、妨害パターンが視認されるようになる。その結果、本来の情報(図7に示す例では、「あいうえお・・・」)が妨害パターンの影響を受けて視認しづらくなる。
【0054】
なお、妨害パターンのピッチ(明るい領域と暗い領域の出現周期)が荒すぎると妨害の効果が薄れ、細かすぎても効果が薄れるので、適切なピッチを設定することが好ましい。また、明るい領域と暗い領域とのうちのいずれかの領域を他方の領域に比べて大きくしてもよい。
【0055】
図7(A),(B)に示すような表示を実現するために、具体的には、視角θが0°であるときに階調レベルnの輝度が視認される(n1,n2)の組み合わせと(n1’,n2’)の組み合わせとを選択する。そして、選択した(n1,n2)の組み合わせで平均表示を行い、かつ、(n1’,n2’)の組み合わせで平均表示を行う。
【0056】
図6に示すように、階調レベルnが高い場合には、(上限)と(下限)との差が小さくなっている。すなわち、(n1,n2)の組み合わせの平均輝度と(n1’,n2’)の組み合わせの平均輝度との差が小さい。つまり、階調レベルnの値が高くなると、妨害パターンの効果が小さくなる。図6において、丸印は、階調レベルnが高い部分、具体的には、190〜255の部分を示す。
【0057】
そこで、本実施の形態では、妨害パターンを使用するときに常に効果が発揮されるように、液晶表示パネルに表示されるべき元画像の階調レベルを190以下に制御する階調圧縮を行う。
【0058】
256階調表示を行う場合に、階調圧縮を行う前の画像における階調レベルnの範囲は(5)式で表される。また、階調圧縮後の階調レベルnは(6)式で表される。(7)式は、階調レベルnの範囲を範囲を示す。すなわち、nは最小値を示し、nは最大値を示す。
【0059】
0≦n≦255 ・・・(5)
=(n/255)×(n−n)+n ・・・(6)
≦n≦n ・・・(7)
【0060】
例えば、nは0であり、nは190である。なお、階調レベルnが低い場合にも、(上限)と(下限)との差が小さくなっているので、nは0よりも大きい値(一例として80)であることが好ましい。また、本実施の形態で使用する階調レベル190等は一例であって、nやnは、使用する液晶表示パネルが有する特性に応じて設定される。つまり、(上限)と(下限)との差が所定値以下になる場合の所定値に応じた階調レベルを、nやnとする。所定値は、妨害パターンとしてどの程度の輝度差を用いるのかに応じて、すなわち用途や望まれる妨害パターンの効果の程度等に応じて決定される。
【0061】
なお、本実施の形態では、(n1,n2)の組み合わせとして斜め視点で平均輝度が最大になるものを用い、(n1’,n2’)の組み合わせとして斜め視点で平均輝度が最小になるものを用いたが、一方または双方を、斜め視点では最大輝度と最小輝度との中間の平均輝度になるような2つ階調レベルの組み合わせを用いてもよい。また、2つ階調レベルの組み合わせ((n1,n2)と(n1’,n2’))によって妨害パターンを実現したが、視角が0°では平均輝度が(n1,n2)の平均輝度および平均輝度(n1’,n2’)の平均輝度と同程度で、斜め視点では(n1,n2)の平均輝度と平均輝度(n1’,n2’)との中間の輝度になるような2つ階調レベルの組み合わせをさらに用いて、3つまたはそれ以上の輝度が視認されるように表示制御してもよい。
【0062】
また、本実施の形態では、液晶表示パネルに白黒表示を行うことを想定しているが、R(赤)、G(緑)、B(青)のそれぞれのγ特性は完全には一致しないので、カラー画像を対象にして表示制御を行う場合には、R、G、Bそれぞれのγ特性を対象にして、本実施の形態の表示制御を行うことが好ましい。
【0063】
詳しくは、RGBでの正面視でのRGBのγ特性はそれぞれの色で異なるので、(n1,n2)の組み合わせを選ぶ際に、つまり集合Snの要素を選ぶ際に、正面視でのカラー画像の見栄えを補償するために、R、G、Bそれぞれのγ特性を考慮することが好ましい。すなわち、R、G、B別に(4)式を満たす(n1,n2)の組み合わせを選ぶ。R、G、Bそれぞれのγ特性を考慮して集合Snの要素を選ぶことによって、正面視でのカラー画像の見栄えを大幅に改善できる。また、視野角制御の効果を最大にするために、集合Snの中から、輝度が最大の組み合わせ(n1,n2)と、輝度が最小の組み合わせ(n1’,n2’)を選ぶ際に、R、G、Bそれぞれのγ特性を考慮することが好ましい。
【0064】
実施の形態2.
第1の実施の形態では、図2(A)に示す特性を利用して妨害パターンを実現したが、図2(A)に示す特性を利用して、視角0゜では視認されないが、斜め視点では視認されるような画像表示を実現することもできる。
【0065】
図8は、液晶表示パネルの表示面101において、本来の表示(図8に示す例では、「あいうえお・・・」)の他に、別の表示(斜め視認画像)102が表示された状態を示す説明図である。
【0066】
斜め視認画像102は、例えば、第1の実施の形態における(n1,n2)の組み合わせで実現される。また、本来の表示および斜め視認画像102以外の背景領域(地の領域)103は、第1の実施の形態における(n1’,n2’)の組み合わせで実現される。従って、図8(A)に示すように、視角θが0°であるときには斜め視認画像102はほとんど視認されない。斜め視認画像102と背景領域103との輝度差がないからである。また、図8(B)に示すように、斜め視点では、斜め視認画像102と背景領域103に輝度差が生ずるので、斜め視認画像102が視認されるようになる。
【0067】
比較的低い輝度(例えば、黒)で本来の表示がなされている場合には、視角θが0°であるときの斜め視認画像102および背景領域103の輝度(具体的には、(n1,n2)の平均輝度、および(n1’,n2’)の平均輝度)が本来の表示の輝度よりも高くなるように、階調レベルnが選択される。
【0068】
図8(A),(B)に示すような表示を実現するために、具体的には、視角θが0°であるときに階調レベルnの輝度が視認される(n1,n2)の組み合わせと(n1’,n2’)の組み合わせとを選択する。そして、選択した(n1,n2)の組み合わせで平均表示を行い、かつ、(n1’,n2’)の組み合わせで平均表示を行う。
【0069】
なお、本実施の形態では、斜め視認画像102および背景領域103を対象として、(n1,n2)の平均輝度と(n1’,n2’)の平均輝度とを用いた表示制御を行い、視角θが0°であるときには斜め視認画像102の輝度と背景領域103に輝度差が生じないようにし、斜め視点では、斜め視認画像102と背景領域103に輝度差が生じて斜め視認画像102が視認可能であるように制御したが、逆に、視角θが0°であるときには斜め視認画像102の輝度と背景領域103に輝度差が生じて斜め視認画像102が視認可能であるようにし、斜め視点では、斜め視認画像102と背景領域103に輝度差が生じないようにして斜め視認画像102を視認できないように制御してもよい。また、本来の表示(図8に示す例では、「あいうえお・・・」)および背景領域103を対象として、(n1,n2)の平均輝度と(n1’,n2’)の平均輝度とを用いた表示制御を行うこともできる。例えば、視角θが0°であるときには「あいうえお・・・」の表示領域と背景領域103に輝度差が生じないようにして「あいうえお・・・」の表示領域を視認できないようにし、斜め視点では、「あいうえお・・・」の表示領域と背景領域103に輝度差が生じて「あいうえお・・・」の表示領域が視認可能であるように制御してもよい。逆に、視角θが0°であるときには「あいうえお・・・」の表示領域と背景領域103に輝度差が生じて「あいうえお・・・」の表示領域が視認可能であるようにし、斜め視点では、「あいうえお・・・」の表示領域と背景領域103に輝度差が生じないようにして「あいうえお・・・」の表示領域を視認できないように制御してもよい。
【0070】
また、本実施の形態でも、液晶表示パネルに白黒表示を行うことを想定しているが、R、G、Bのそれぞれを対象にして表示制御を行うことが好ましい。
【0071】
なお、上記の各実施の形態では、2つの階調レベル(n1またはn1’とn2またはn2’)の平均輝度を用いたが、3つ以上の階調レベルの平均輝度を用いてもよい。例えば、視角0゜では、3つの階調レベルn1,n2,n3の輝度の平均値が階調レベルnの輝度とほぼ等しいが、斜め視点では、3つの階調レベルn1,n2,n3の輝度の平均値が階調レベルnの輝度とは異なる階調レベルn1,n2,n3を用いたり、視角0゜では、階調レベルn1,n2,n3の輝度の平均値および階調レベルn1’,n2’,n3’の輝度の平均値はほぼ等しいが、斜め視点では、階調レベルn1,n2,n3の輝度の平均値と階調レベルn1’,n2’,n3’の輝度の平均値とが異なるような階調レベルの組み合わせを用いてもよい。
【0072】
以上のように、上記の各実施の形態では、表示画面を正面から視認したときには輝度差が小さく(上記の例では同程度の輝度)、斜め視点では輝度差が大きくなる2つの階調レベルの組み合わせを2組選択する。上記の例では、輝度が高くなる(n1,n2)の組と輝度が低くなる(n1’,n2’)の組とが選択されている。そして、それぞれの組み合わせの2つの階調レベルの表示の平均輝度が異なることにもとづいて、妨害パターンや斜め視認画像102の表示を実現する。なお、2組のうちの一方は、階調レベルの組み合わせではなく、階調レベルnの1階調表示でもよい。
【実施例】
【0073】
以下、上記の各実施の形態の液晶表示装置の表示制御方法および液晶表示装置を実現するための実施例を説明する。
【0074】
実施例1.
図9は、液晶表示装置の一例をMPU(Micro Processing Unit)40とともに示すブロック図である。図9に示す例では、TFT(Thin Film Transistor)がマトリクス状に配され、画素電極とコモン電極との間にMVAモードの液晶が挟持された液晶表示パネル10が用いられている。液晶表示パネル10を駆動する駆動回路には、液晶表示パネル10における同列のTFTのソースに接続されるデータ電極としての各ソース電極(ソース配線)が繋がれたソースドライバ(データ電極ドライバ)12、液晶表示パネル10における同行のTFTのゲートに接続される走査電極としての各ゲート電極(ゲート配線)が繋がれたゲートドライバ(走査電極ドライバ)13、データ電圧を作成するための電圧をソースドライバ12に供給するとともに、選択電圧(オン電圧)と非選択電圧(オフ電圧)とを作成するための電圧をゲートドライバ13に供給する電源回路14が設けられている。
【0075】
制御回路としてのコントローラ11は、駆動回路の外部に設けられているMPUから入力される表示データ(画素データ)を一時記憶するRAM111を有し、ソースドライバ12およびゲートドライバ13に、フレームの開始を示す信号に相当するVSYNC(垂直同期)信号を出力するとともに、各選択期間(1本のゲート配線にオン電圧としての選択電圧が印加される期間)毎に、LP(Latch Pulse )信号を出力する。
【0076】
ゲートドライバ13は、カウンタを内蔵し、VSYNC信号が入力されるとカウンタをリセットし、LP信号が入力されるとカウンタの値を+1する。そして、カウンタの値が示すゲート配線にTFTのゲートを導通状態にさせるための選択電圧を印加し、他のゲート配線にTFTのゲートを遮断状態にさせるための非選択電圧を印加する。また、ゲートドライバ13に内蔵されているコモン電圧出力部131は、コモン配線にコモン電圧を印加する。
【0077】
ソースドライバ12は、LP信号が入力されると、データ信号をラッチするとともに、ラッチしているデータ信号に応じたデータ電圧をソース配線に印加する。ゲートドライバ13はLP信号に同期してゲート配線に選択電圧を印加するので、ソースドライバ12は、ゲート配線への選択電圧の印加に同期して各ソース配線にデータ電圧を印加することになる。
【0078】
以下、図7に例示された妨害パターンを表示する場合を例にする。MPU40は、画面の表示データを作成する。すなわち、本来の表示(「あいうえお・・・」)の表示データを作成するとともに、妨害パターンの表示データを作成する。
【0079】
そして、MPU40は、(6)式にもとづく階調圧縮を行う。階調圧縮を実現するために、階調圧縮を行う前の画像における階調レベルnすなわち作成する表示データが示す各階調レベルと、それに応じた階調圧縮後の階調レベルnとが対応付けられたデータテーブルを備え、作成した表示データに応じた階調レベルnをデータテーブルから読み出し、読み出した階調レベルnを、変換後の表示データとする。
【0080】
さらに、妨害パターンの領域についての変換後の表示データに対応する(n1,n2)および(n1’,n2’)を選択する。具体的には、領域A(明るい領域)について(n1,n2)、領域B(暗い領域)について(n1’,n2’)の平均輝度)を選択する選択処理を行う。
【0081】
そして、選択処理を経た後の表示データすなわち各画素の階調レベルを示すデータを、液晶表示装置に出力する。液晶表示装置において、コントローラ11は、表示データをRAM111に一時記憶する。コントローラ11は、RAM111に記憶されている表示データを順次データ信号としてソースドライバ12に出力する。
【0082】
なお、本実施例では、本来の表示についても階調圧縮がなされるが、階調圧縮の対象を妨害パターンに限ってもよい。
【0083】
次に、平均輝度を得るための平均表示の実現方法を説明する。まず、時間平均によって平均輝度を実現する方法を説明する。図10は、2つの階調レベルによる平均輝度を実現するための方法を説明するための説明図である。図10(A),(B)における各々の正方形はそれぞれ画素を示す。図10(A),(B)において、小文字アルファベットa〜pが同じ画素は同一画素を示す。画素中の「1」の数字は第1フレームにおける表示を示し、「2」の数字は第2フレームにおける表示を示す。また、「2」の数字が付されている画素の階調レベルは、「1」の数字が付されている画素の階調レベルよりも高いとする。例えば、a1で示される画素の階調レベルよりもa2で示される画素の階調レベルの方がレベルが高い。なお、図10における斜線は、第1フレームにおける輝度と第2フレームにおける輝度とが異なっていることを示す。
【0084】
図10(A)に示す表示と図10(B)に示す表示とを1フレーム毎に交互に表示すると、「1」の数字が付されている画素の階調レベルによる輝度と「2」の数字が付されている画素の階調レベルによる輝度の平均輝度が視認される。よって、図10(C)における大文字アルファベットで示される各画素は、「1」の数字が付されている小文字アルファベットの画素の階調レベルによる輝度と、「1」の数字が付されているアルファベットと同じアルファベットで「2」の数字が付されている画素の階調レベルによる輝度との平均輝度で視認される。
【0085】
従って、大文字アルファベットA〜Pは、それぞれ画素の任意の階調レベル0〜255を表す自然数を示す。また、(a1〜p1,a2〜p2)は上記の(n1,n2)に相当する。例えば、(a1,a2)は、階調レベルAを平均で表示するために選択する2つの階調レベルを表す。詳しくは、下記の式を満たす関係にある。
【0086】
I(A,γ)=[I(a1,γ)+I(a2,γ)]/2 (a1≦a2)
【0087】
なお、図10に示す例では、画素A〜Pの階調レベルはそれぞれ異なる。従って、16種類の平均輝度が視認される表示が実現されている。第1および第2の実施の形態では、2種類の平均輝度が用いられていた。例えば、図10に示す画素a1の階調レベルが第1および第2の実施の形態におけるn1またはn1’に対応し、画素a2の階調レベルが第1および第2の実施の形態におけるn2またはn2’に対応する。また、図10に示す16画素の全てが、図7(B)に示された文字部分に対応する場合、または文字部分以外の領域に対応する場合には、画素a1〜p1の階調レベル(階調レベルは全て同じ)が第1および第2の実施の形態におけるn1またはn1’に対応し、画素a2〜p2(階調レベルは全て同じ)の階調レベルが第1および第2の実施の形態におけるn2またはn2’に対応する。また、MPU40は、図10に示されたような方式によって、妨害パターンや斜め視認画像102および背景領域103の平均輝度を実現する。
【0088】
3つ以上の階調レベルの平均輝度を用いる場合にも、輝度が平均される階調レベルの数に応じた連続するフレームにおいて、それぞれの階調レベルによる表示を行う。図11は、4つの階調レベルによる平均輝度を実現するための方法を説明するための説明図である。図11(A)〜(D)における各々の正方形はそれぞれ画素を示す。図11(A)〜(D)において、小文字アルファベットa〜pが同じ画素は同一画素を示す。画素中の数字は、その数字が示すフレームにおける表示を示す。各画素において、異なるフレームにおける階調レベルは異なっている。例えば、(a1で示される画素の階調レベル)≦(a2で示される画素の階調レベル)≦(a3で示される画素の階調レベル)≦(a4で示される画素の階調レベル)である。
【0089】
従って、下式を満たすような組み合わせを選ぶ。
I(A,γ)=[I(a1,γ)+I(a2,γ)+I(a3,γ)+I(a4,γ)]/4 (a1≦a2≦a3≦a4)
【0090】
図11(A)に示す表示〜図11(D)に示す表示を順に表示すると、「1」の数字が付されている画素の階調レベルによる輝度と、「2」の数字が付されている画素の階調レベルによる輝度と、「3」の数字が付されている画素の階調レベルによる輝度と、「4」の数字が付されている画素の階調レベルによる輝度との平均輝度が視認される。
【0091】
なお、図11に示す例では、16画素の階調レベルはそれぞれ異なる。従って、16種類の平均輝度が視認される表示が実現されている。第1および第2の実施の形態では、2種類の平均輝度が用いられていた。例えば、第1および第2の実施の形態において、1つの平均輝度をn1,n2,n3,n4の階調レベルによる輝度の平均値で実現する場合、画素a1の階調レベルがn1に対応し、画素a2の階調レベルがn2に対応し、画素a3の階調レベルがn3に対応し、画素a4の階調レベルがn4に対応する。また、MPU40は、図11に示されたような方式によって、妨害パターンや斜め視認画像102および背景領域103の平均輝度を実現する。
【0092】
次に、空間平均によって平均輝度を実現する方法を説明する。図12は、2つの階調レベルによる平均輝度を実現するための方法を説明するための説明図である。図12(A),(B)における各々の正方形はそれぞれ画素を示す。図12(A)における大文字アルファベットA〜Pで示されるそれぞれの画素は、図12(B)における小文字アルファベットa〜pで示されるそれぞれの画素と同一の画素である。
【0093】
図12(A)に示す16画素が表示したい画像(元画像)の画素であるとする。MPU40は、表示させたい画像の階調レベルを、図12(B)において、「1」の数字が付された画素(a1,c1,f1,h1,i1,k1,n1,p1)に低い階調レベルを割り当て、「2」の数字が付された画素(b2,d2,e2,g2,j2,l2,m2,o2)に高い階調レベルを割り当てることによって実現する。「1」の数字が付された画素と「2」の数字が付された画素とは、空間的に交互に配置されている。
【0094】
なお、図12に示す16画素の全てが、図7(B)に示された文字部分に対応する場合、または文字以外の領域に対応する場合には、「1」の数字が付された画素a1〜p1の階調レベル(階調レベルは全て同じ)が第1の実施の形態におけるn1に対応し、「2」の数字が付された画素b2〜o2の階調レベル(階調レベルは全て同じ)が第1の実施の形態におけるn2に対応する。また、MPU40は、図12に示されたような方式によって、妨害パターンや斜め視認画像102および背景領域103の平均輝度を実現する。
【0095】
図13は、4つの階調レベルによる平均輝度を実現するための方法を説明するための説明図である。図13における正方形はそれぞれ画素を示す。MPU40は、表示させたい画像の階調レベルを、図13において、「1」の数字が付された画素a1,c1,i1,k1に最も低い階調レベルを割り当て、「2」の数字が付された画素f2,h2,n2,p2に2番目に低い階調レベルを割り当て、「3」の数字が付された画素e3,g3,m3,o3に2番目に高い階調レベルを割り当て、「4」の数字が付された画素b4,d4,j4,l4に最も低い階調レベルを割り当てることによって実現する。任意の隣接する4画素は、「1」の数字が付された画素と、「2」の数字が付された画素と、「3」の数字が付された画素と、「4」の数字が付された画素とで構成される。つまり、同じ数字が付された画素は、空間的に分散して配置されている。
【0096】
なお、第1および第2の実施の形態において、1つの平均輝度をn1,n2,n3,n4の階調レベルによる輝度の平均値で実現する場合、例えば、画素a1,c1,i1,k1の階調レベルがn1に対応し、画素f2,h2,n2,p2の階調レベルがn2に対応し、画素e3,g3,m3,o3の階調レベルがn3に対応し、画素b4,d4,j4,l4の階調レベルがn4に対応する。また、MPU40は、図13に示されたような方式によって、妨害パターンや斜め視認画像102および背景領域103の平均輝度を実現する。
【0097】
以上に説明したように、時間平均または空間平均によって平均輝度が実現される。ただし、時間平均を用いる場合には、液晶表示パネルの応答速度が速いことが好ましい。液晶表示パネルの応答速度が遅い場合には、時間平均と空間平均とを併用することが好ましい。また、空間平均を用いる場合で解像度の低下が問題になるときには、液晶表示パネルの応答速度が遅くないことを条件に時間平均を用いることが好ましい。
【0098】
図14は、階調レベルnが0〜255である場合の(n1,n2)および(n1’,n2’)の選択の仕方を示す説明図である。MPU40は、図14(D)に示すデータテーブルが格納されたROMからデータ(大楕円で囲まれたデータ)を読み出すことが可能なように構成されている。図14(D)に示すデータテーブルには、0〜255のそれぞれの階調レベルに応じた(n1,n2)の組み合わせおよび(n1’,n2’)の組み合わせであって、視角が0゜の場合には階調レベルnとして視認されるが、斜め視点では、階調レベルnの輝度とは異なる輝度で視認される(n1,n2)および(n1’,n2’)の組み合わせのデータが設定されている。なお、具体的には、図14(D)において「輝度最大」として示されているデータが、第1および第2の実施の形態における(n1,n2)の組み合わせのデータに相当する。「輝度最大」として示されているデータのうち左欄のデータがn1に相当し、右欄のデータがn2に相当するものとする。また、「輝度最小」として示されているデータが、第1および第2の実施の形態における(n1’,n2’)の組み合わせのデータに相当する。「輝度最小」として示されているデータのうち左欄のデータがn1’に相当し、右欄のデータがn2’に相当するものとする。
【0099】
図14(A)に示す16画素が表示したい画像(元画像)の画素であるとする。MPU40は、表示させたい画像の階調レベルを図14(D)に示すデータテーブルから選択するのであるが、16画素の全てを斜め視点で輝度最大にするときには、図14(B)に示すように各画素の階調レベルを選択する。選択される階調レベルは、階調レベルnに対応するn1またはn2である。隣接する4画素の階調レベルnが等しい(例えば、186)場合には、n1(例えば、168)とn2(例えば、203)とが交互に配置されるようにする。また、隣接する4画素の階調レベルnのうちに他とは異なるもの(例えば、188または189に対する190)があるがそれらの値が近接している場合にも、n1とn2とが交互に配置されるようにする。つまり、図14に示す例では、空間平均によって平均輝度が実現される。
【0100】
また、16画素の全てを斜め視点で輝度最小にするときには、図14(C)に示すように各画素の階調レベルを選択する。選択される階調レベルは、階調レベルnに対応するn1’またはn2’である。なお、図14(B),(C)において付されている小楕円で囲まれたデータは、図14(D)において付されている小楕円で囲まれたデータに相当する。
【0101】
図15は、階調レベルnが0〜255である場合の(n1,n2)(または、(n1’,n2’))の具体的な選択の仕方を示す説明図である。MPU40は、実際には、図15(A)に示すように、表示画面において、n1(または、n1’)を割り当てる画素とn2(または、n2’)を割り当てる画素とをあらかじめ決めておく。n1(または、n1’)を割り当てる画素とn2(または、n2’)を割り当てる画素とは交互に配置されている。図15(B)は、図14(D)に示されたデータテーブルと同じデータテーブルである。MPU40は、各画素の階調レベルnに応じて、表示画面において特殊な表示を行う領域(妨害パターンや斜め視認画像102)については、階調レベルnに対応する(n1,n2)(または、(n1’,n2’))を、図14(D)や図15(B)に示されたデータテーブルから選択する。
【0102】
なお、R、G、Bのそれぞれを対象にして平均輝度の表示制御を行う場合には、図15(C)に示すように、R,G,Bのそれぞれを仮想的に1画素と捉えるようにして、(n1,n2)(または、(n1’,n2’))のうち高い階調レベルn1(または、n1’)と低い階調レベルn2(または、n2’)とを配置することが好ましい。
【0103】
また、以上の説明では、MPU40が平均輝度の制御を行った後の表示データを液晶表示装置に出力したが、平均輝度の制御を液晶表示装置が実行するようにしてもよい。
【0104】
平均輝度の制御を液晶表示装置が実行する場合には、例えば、MPU40は、作成した画像の表示データをそのまま駆動回路に出力する。コントローラ11またはコントローラ11とソースドライバ12との間に設けられる追加回路(図9において図示せず)には、入力されうる表示データが示す各階調レベルと、それに応じた階調圧縮後の階調レベルnとが対応付けられたデータテーブル、および図14(D)や図15(B)に示されたデータテーブルが設けられる。コントローラ11または追加回路は、MPU40から入力された表示データについて、上述した階調圧縮処理、および(n1,n2)(または、(n1’,n2’))の選択処理を実行する。特殊な表示の表示データの作成を液晶表示装置における駆動回路が行う場合、表示面を正面から視認したときの平均輝度が階調レベルnの輝度(階調レベルn1,n2の平均輝度を含む。)と同じであり、表示面を正面から視認したときの平均輝度が略同じであり、斜め方向から視認したときの平均輝度が階調レベルnの輝度とは異なる階調レベルn1’,n2’を選択する選択手段、および階調レベルn1,n2の平均表示による画像(平均輝度が視認される画像)と、階調レベルn1’,n2’の平均表示による画像とを液晶表示パネルに表示させる表示制御手段は、コントローラ11または追加回路で実現される。
【産業上の利用可能性】
【0105】
本発明は、MVAモードなどの表示面を正面から視認したときのγ特性と斜め方向から視認したときのγ特性とが異なっている液晶表示パネルを用いた液晶表示装置に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0106】
【図1】MVAモードの液晶表示パネルにおける各階調レベルの輝度の視角依存性の一例を示す説明図。
【図2】斜め視点では平均値Aと平均値Bとが同じにならないことを説明するための説明図。
【図3】視角が0°の場合に平均輝度が同じであって斜め視点では平均輝度が異なる階調レベルn1,n2の集合Snを示す説明図。
【図4】集合Snに属するそれぞれの(n1,n2)の組み合わせの平均輝度を示す説明図。
【図5】視角θが0°であるときに階調レベルnの輝度と平均輝度が同程度になる2つの階調レベルによる輝度の例を示す説明図。
【図6】視角が30°の場合の階調レベルnに対する集合Snに属するそれぞれの(n1,n2)の組み合わせの平均輝度を示す説明図。
【図7】妨害パターンの一例を示す説明図。
【図8】液晶表示パネルに本来の表示と斜め視認画像が表示された状態を示す説明図。
【図9】液晶表示装置の一例をMPUとともに示すブロック図。
【図10】時間平均によって2つの階調レベルによる平均輝度を実現するための方法を説明するための説明図。
【図11】時間平均によって4つの階調レベルによる平均輝度を実現するための方法を説明するための説明図。
【図12】空間平均によって2つの階調レベルによる平均輝度を実現するための方法を説明するための説明図。
【図13】空間平均によって4つの階調レベルによる平均輝度を実現するための方法を説明するための説明図。
【図14】階調レベルnが0〜255である場合の(n1,n2)の選択の仕方を示す説明図。
【図15】階調レベルnが0〜255である場合の(n1,n2)の具体的な選択の仕方を示す説明図。
【図16】IPSモードの液晶表示パネルおよびMVAモードの液晶表示パネルの視角特性を示す説明図。
【符号の説明】
【0107】
10 液晶表示パネル
11 コントローラ
12 ソースドライバ
13 ゲートドライバ
14 電源回路
40 MPU
101 液晶表示パネルの表示面
102 斜め視認画像
111 RAM
131 コモン電圧出力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示面を正面から視認したときのγ特性と斜め方向から視認したときのγ特性とが異なる液晶表示パネルを用いた液晶表示装置の表示制御方法であって、
表示面を正面から視認したときの平均輝度が略同じであり、斜め方向から視認したときの平均輝度が異なるN個(N:2以上の正の整数)の階調レベルの組み合わせを複数組選択し、
選択したそれぞれの組におけるN個の階調レベルの組み合わせの平均表示による画像を液晶表示パネルに表示させる
ことを特徴とする液晶表示装置の表示制御方法。
【請求項2】
表示面を正面から視認したときのγ特性と斜め方向から視認したときのγ特性とが異なる液晶表示パネルを用いた液晶表示装置の表示制御方法であって、
表示面を正面から視認したときの平均輝度が略同じであり、斜め方向から視認したときの平均輝度が異なる階調レベルn1,n2(n1,n2:自然数)と階調レベルn1’,n2’(n1’,n2’:自然数)とを選択し、
階調レベルn1,n2の平均表示による画像と階調レベルn1’,n2’の平均表示による画像とを液晶表示パネルに表示させる
ことを特徴とする液晶表示装置の表示制御方法。
【請求項3】
階調レベルの平均表示を、時間平均および/または空間平均によって実現する
請求項1または請求項2記載の液晶表示装置の表示制御方法。
【請求項4】
階調レベルの平均表示を、1つの階調レベルnによって実現する
請求項1から請求項3のうちのいずれか1項に記載の液晶表示装置の表示制御方法。
【請求項5】
表示面を正面から観察したときに視認される本来画像とは異なる画像を、階調レベルn1,n2の平均表示による画像と階調レベルn1’,n2’の平均表示による画像とによって液晶表示パネルに表示させる
請求項2記載の液晶表示装置の表示制御方法。
【請求項6】
本来画像とは異なる画像として、斜め視点からの前記本来画像の視認を阻害する妨害画像を液晶表示パネルに表示させる
請求項5記載の液晶表示装置の表示制御方法。
【請求項7】
表示面を正面から視認したときのγ特性と斜め方向から視認したときのγ特性とが異なる液晶表示パネルを用いた液晶表示装置であって、
表示面を正面から視認したときの平均輝度が略同じであり、斜め方向から視認したときの平均輝度が異なる階調レベルn1,n2(n1,n2:自然数)と階調レベルn1’,n2’(n1’,n2’:自然数)とを選択する選択手段と、
階調レベルn1,n2の平均表示による画像と、階調レベルn1’,n2’の平均表示による画像とを液晶表示パネルに表示させる表示制御手段とを備えた
ことを特徴とする液晶表示装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate


【公開番号】特開2008−275853(P2008−275853A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−118728(P2007−118728)
【出願日】平成19年4月27日(2007.4.27)
【出願人】(000103747)オプトレックス株式会社 (843)
【Fターム(参考)】