説明

液晶表示装置及びその駆動方法

【課題】温度に応じて最適な表示を行うことができる液晶表示装置を提供すること。
【解決手段】本発明の一態様にかかる液晶表示装置100は、マトリクス状に配置された複数の画素を有する液晶表示パネル101と、液晶表示パネル101に一定周期ごとに極性反転された表示信号を出力する駆動回路102とを備えた液晶表示装置100であって、液晶表示パネル101の温度を測定する温度測定器103と、温度測定器103によって測定された液晶表示パネル101の温度に応じて表示信号の極性反転周期を変化させる制御回路としてのマイコン106とを備えるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置及びその駆動方法に関し、特に、極性反転駆動方式の液晶表示装置及びその駆動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高度な映像・情報化社会の進展やマルチメディアシステムの普及に伴い、表示装置の重要性はますます増大している。液晶表示装置は、薄型・軽量・低消費電力という利点を有することから、携帯通信端末などの表示装置として広く用いられている。
【0003】
一般的に、液晶表示パネルの駆動電圧には、液晶表示パネルに表示される画像のコントラストが最大となる最適値が存在し、その最適値は液晶表示パネルの温度によって変化することが知られている。従って、液晶表示パネルの温度によって駆動電圧を変えなければ最適なコントラストを得ることができない。
【0004】
そこで、従来から、液晶表示パネルの温度を検出するサーミスタなどの温度測定器を設け、この温度測定器によって測定した温度に応じて、液晶表示パネルに最適な駆動電圧を印加するようにした液晶表示装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−015148号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、通常、液晶表示装置においては、直流電圧印加による液晶材料の特性の劣化を防止するために、液晶に印加する駆動電圧の極性を一定周期で反転させている。このような極性反転駆動方式としては、例えば1選択期間内で駆動電圧の極性を反転させるA方式と、1フレームごとに駆動電圧の極性を反転させるB方式がある。しかしながら、これらの駆動方式では消費電力が大きい、あるいはクロストークが発生してしまうなどの問題を有していた。
【0006】
この問題を軽減するために、従来からABmix方式が採用されている。ABmix方式では、一定の選択期間ごとに極性を反転させた駆動電圧を印加する。この極性を反転させる周期は、一般的にS値と呼ばれる。通常、S値はあらかじめフレーム周波数やデューティ比などの駆動条件に合わせて、一定の値に設定されている。
【0007】
しかしながら、このABmix方式においても、配線抵抗や交流化したときの過渡応答などにより、駆動電圧の波形歪みが発生してしまう。このため、駆動電圧の極性を反転した場合、駆動電圧の実効値が変化してしまい、クロストークが発生し、高品質の表示を行うことができないことがある。特に、液晶表示装置を低温環境下において使用するときには、クロストークの発生が顕著である。
【0008】
また、液晶表示装置を高温環境下において使用するときには、液晶自体の応答速度が速くなる。このため、波形歪みの発生した駆動電圧に液晶が追随して、表示がちらつくという問題がある。
【0009】
本発明は、このような事情を背景としてなされたものであり、本発明の目的は、温度に応じて最適な表示を行うことができる液晶表示装置及び駆動方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の態様にかかる液晶表示装置は、マトリクス状に配置された複数の画素を有する液晶表示パネルと、前記液晶表示パネルに一定周期ごとに極性反転された表示信号を出力する駆動回路とを備えた液晶表示装置であって、前記液晶表示パネルの温度を測定する温度測定器と、前記温度測定器によって測定された前記液晶表示パネルの温度に応じて前記表示信号の極性反転周期を変化させる制御回路とを備えるものである。このような構成とすることによって、液晶表示パネルの温度に応じて最適な表示を行うことができる。
【0011】
本発明の第2の態様にかかる液晶表示装置は、上記の液晶表示装置において、前記制御回路は、前記液晶表示パネルの温度が所定の温度よりも高い場合には、前記表示信号の極性反転周期を短くし、前記液晶表示パネルの温度が所定の温度よりも低い場合には、前記表示信号の極性反転周期を長くするものである。このような構成とすることによって、液晶表示パネルの温度に応じて最適な表示を行うことができる。
【0012】
本発明の第3の態様にかかる液晶表示装置は、上記の液晶表示装置において、前記制御回路は、前記液晶表示パネルの温度に応じて前記表示信号の電圧値を変化させるものである。このような構成とすることによって、さらに高品質の表示を行うことが可能である。
【0013】
本発明の第4の態様にかかる液晶表示装置の駆動方法は、マトリクス状に配置された複数の画素を有する液晶表示パネルに一定周期ごとに極性反転された表示信号を出力する液晶表示装置の駆動方法であって、前記液晶表示パネルの温度を検出し、前記液晶表示パネルの温度に応じて、前記表示信号の極性反転周期を変化させる。これにより、液晶表示パネルの温度に応じて、最適な表示を行うことができる。
【0014】
本発明の第5の態様にかかる液晶表示装置の駆動方法は、上記の駆動方法において、前記液晶表示パネルの温度が所定の温度よりも高い場合には、前記表示信号の極性反転周期を短くし、前記液晶表示パネルの温度が所定の温度よりも低い場合には、前記表示信号の極性反転周期を長くする。これにより、液晶表示パネルの温度に応じて最適な表示を行うことができる。
【0015】
本発明の第6の態様にかかる液晶表示装置の駆動方法は、上記の駆動方法において、前記液晶表示パネルの温度に応じて前記表示信号の電圧値を変化させる。これにより、さらに高品質の表示を行うことが可能である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、温度に応じて最適な表示を行うことができる液晶表示装置及びその駆動方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に、本発明の実施の形態について図を参照して説明する。以下の説明は、本発明の実施の形態を説明するものであり、本発明が以下の実施の形態に限定されるものではない。説明の明確化のため、以下の記載及び図面は、適宜、省略及び簡略化がなされている。
【0018】
実施の形態1.
本発明の実施の形態1について、図1を参照して説明する。図1は、本発明の実施の形態1にかかる液晶表示装置100の構成を示す模式図である。本実施の形態においては、単純マトリクス型の液晶表示パネル101を用いた例について説明する。図1に示すように、液晶表示装置100は、液晶表示パネル101、駆動回路102、温度測定器103、検出回路104、A/Dコンバータ105、制御回路としてのマイコン106、電源回路107などを備えている。
【0019】
発明にかかる液晶表示パネル101の駆動方式としては、従来から広く知られているABmix方式が用いられる。従って、一定の選択期間ごとに駆動電圧の極性を反転させる。この極性を反転させる周期は、一般的にS値と呼ばれる。本発明は、液晶表示パネル101の温度に応じてS値を制御し、極性を反転させる周期を変化させることにより、表示品質を向上させることを特徴としている。
【0020】
液晶表示パネル101は、入力される表示データに基づいて画像表示を行う。液晶表示パネル101は、ガラスなどからなる2枚の基板の間に液晶を封入した構成を有している。一方の基板には、複数の信号電極が列方向に一定間隔を隔てて形成されている。また、他方の基板には、信号電極と交差するように走査電極が行方向に一定間隔を隔てて形成されている。本実施の形態においては、走査電極が、信号電極と液晶を挟んで対向する対向電極である。走査電極と信号電極との交差部が単位画素に対応する。走査電極及び信号電極は、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)などの透明導電性薄膜から形成されている。
【0021】
なお、単位画素に対応する位置にR(赤)、G(緑)、B(青)のいずれかに着色された樹脂を配置したカラーフィルタを設けてもよい。このとき、1つの画素は、R、G、Bの3つの単位画素から構成される。また、R、G、B各色の間に、BM(Black Matrix:ブラックマトリックス)を設けてもよい。
【0022】
また、2枚の基板の対向する面にはそれぞれ所定の方向に配向された配向膜が設けられている。これら両基板に挟持された液晶は、配向膜によって所定の方向に配向する。さらに、それぞれの基板の外側表面には、偏光板が貼着される。
【0023】
駆動回路102は、電気的に液晶表示パネル101に接続されている。本実施の形態においては、駆動回路102は、液晶表示パネル101を構成する一方の基板上に設けられている。駆動回路102は、後述するマイコン106から入力される画像表示に必要な各種の信号に基づいて、走査電圧及び表示電圧を出力する。具体的には、駆動回路102は、マイコン106において表示信号の電圧値が補正された電圧補正信号に対応する表示電圧を、S値補正信号に応じた周期で極性を反転させて液晶表示パネル101に出力する。
【0024】
温度測定器103は、上記の駆動回路102が設けられた液晶表示パネル101を構成する一方の基板上に設けられている。温度測定器103は、液晶表示パネル101の温度を測定する。温度測定器103としては、例えば、サーミスタなどを用いることができる。
【0025】
検出回路104は、温度測定器103が測定した温度による電流変化、電圧変化からアナログの温度データを生成し、A/Dコンバータ105に出力する。A/Dコンバータ105は、入力された温度データをデジタル変換し、マイコン106に出力する。
【0026】
制御回路としてのマイコン106は、入力される温度データに応じて、外部から入力される表示信号の電圧値を補正し、電圧補正信号を出力する。又、マイコン106は、入力される温度データに応じて、液晶に印加される駆動電圧の極性反転周期を決定するS値を補正し、S値補正信号を出力する。従って、本実施の形態にかかる液晶表示装置100は、温度に応じて、電圧値を補正するのに加えて、S値を補正することによって極性反転周期を変化させている。電源回路107は、駆動回路102に必要な電源電圧及び、表示電圧の生成に必要な基準電圧を供給する。
【0027】
液晶表示パネル101の背面には、バックライト(不図示)が備えられている。バックライトは、液晶表示パネル101の反視認側から液晶表示パネル101に対して白色光を照射する。バックライトとしては、例えば、光源、導光板、プリズムシートなどを備えた一般的な構成のものを用いる。
【0028】
ここで、本実施の形態にかかる液晶表示装置100の駆動について説明する。駆動回路102から各走査電極には順次、選択電圧となる走査電圧が印加される。一方、各信号電極には温度に応じて補正された電圧補正信号に対応する表示電圧が印加される。1フレームの間の走査電極及び信号電極の電位差が、液晶に印加される液晶駆動電圧となる。すなわち、液晶駆動電圧は、1フレーム間に液晶に印加される実効電圧である。各走査電圧によって選択された1つの走査電極と信号電極との電位差に応じて、走査電極−信号電極間の液晶の配列が変化する。反視認側の偏光板を透過した直線偏光は、液晶によって偏光方向が制御され、視認側偏光板を透過する光の透過率が制御される。
【0029】
次に、図2〜図6を参照して上述した液晶表示装置100の駆動方法について詳細に説明する。図2は、本実施の形態にかかる液晶表示装置100の駆動方法を説明するフローチャートである。図3は、S値が7の場合に走査線に印加される走査電圧の波形を示す図である。図4は、S値が3の場合に走査線に印加される走査電圧の波形を示す図である。図5は、S値が13の場合に走査線に印加される走査電圧の波形を示す図である。
【0030】
ここで、温度測定器103によって測定された液晶表示パネル101の温度をTPNLとする。また、液晶表示パネル101の温度の下側の基準値をt1、上側の基準値をt2とする。また、説明の簡略化のため、本実施の形態においては1フレームが8選択期間(8RST:Row Select Time)の場合、すなわち走査電極が8本の場合について説明する。
【0031】
また、図6は、本実施の形態にかかる液晶表示装置100において液晶に印加される駆動電圧の極性を模式的に示す波形図である。図6(a)は、液晶表示パネル101の温度が所定の温度領域内、すなわち、t1≦TPNL≦t2のときの駆動電圧の極性を模式的に示す図である。また、同図(b)は、液晶表示パネル101の温度が所定の温度領域よりも低い場合、すなわち、TPNL<t1のときの駆動電圧の極性を模式的に示す図である。さらに、同図(c)は、液晶表示パネル101の温度が所定の温度領域よりも高い場合、すなわち、t2<TPNLのときの駆動電圧の極性を模式的に示す図である。
【0032】
まず、図2に示すように、温度測定器103によって、液晶表示パネル101の温度を測定する(ステップS1)。そして、得られた液晶表示パネル101の温度TPNLに応じて、制御回路としてのマイコン106により電圧値の補正及びS値の補正を行う。具体的には、まず、測定した液晶表示パネル101の温度が所定の温度内かどうかを判定する(ステップS2)。
【0033】
本実施の形態においては、液晶表示パネル101の温度TPNLがt1以上t2以下の場合は、従来と同じように、フレーム周波数、デューティ比などの駆動条件に基づいてあらかじめ決定したS値を用い、S値を変更しない(ステップS3)。例えば、液晶表示パネル101の温度が0℃〜50℃の範囲内においては、S値を変更せず、あらかじめ設定したS=7を用いる。S値が7の場合、7選択期間ごとに駆動電圧の極性を反転させる。すなわち、図3に示すように、走査電極に7選択期間の間、正極性の選択電圧が印加され、8選択期間目から次の7選択期間の間、負極性の選択電圧が印加される。従って、1フレームが8選択期間からなる本実施の形態の場合には、1ライン目の走査電極には、1フレームごとに正極性、負極性、正極性の選択電圧となる走査電圧が印加されることとなる。
これにより、液晶駆動電圧の極性は図6(a)に示すものとなる。
【0034】
一方、液晶表示パネル101の温度が下側の基準値t1よりも低い場合、あらかじめ設定されているS値よりも大きくする(ステップS4)。例えば、液晶表示パネル101の温度が0℃よりも低い場合には、S値をあらかじめ設定した値よりも大きくし、S=13とする。S値が13の場合、13本の走査ラインごとに駆動電圧の極性を反転させる。すなわち、図4に示すように、走査電極に13選択期間の間、正極性の選択電圧が印加され、14選択期間目から次の13選択期間の間、負極性の選択電圧が印加される。従って、1フレームが8選択期間からなる本実施の形態の場合には、1ライン目の走査電極には、1フレームごとに正極性、正極性、負極性の選択電圧となる走査電圧が印加されることとなる。これにより、液晶駆動電圧の極性は図6(b)に示すものとなる。
【0035】
一般的に、液晶表示パネル101に印加される駆動電圧は、配線や電極の抵抗や、液晶容量の変化などにより、その波形が歪んでしまうことが知られている。このように駆動電圧の波形が歪むと実効電圧値が変化してしまい、表示が不均一となるクロストークが発生することがある。
【0036】
ここで、液晶表示パネル101の時定数τは、液晶容量をC、液晶や配線、電極などの抵抗をRとすると、以下の式で表される。
τ=CR・・・(1)
また、液晶容量Cは、誘電率をε、電極面積をS、電極間距離をdとすると、以下の式で表される。
C=ε・S/d・・・(2)
このうち、液晶の誘電率εは温度依存性があり、液晶容量は温度が変わることによって変化してしまう。広く知られているように、液晶の温度が低下すると、誘電率εは大きくなるため、液晶容量が大きくなり、時定数τが増大する。従って、液晶表示パネル101の温度が低下した場合には、上述したクロストークの発生が顕著となってしまう。
【0037】
また、液晶や配線、電極などの抵抗Rは、温度依存性はないものの、周波数に応じてその値が変化してしまう。すなわち、抵抗Rは周波数が高くなるにつれてその値が大きくなる。このため、周波数が高くなるにつれて、時定数τは増大してしまう。
【0038】
そこで、本発明では、液晶表示パネル101の温度が低い場合には、時定数τの増加を抑制するために、S値を大きくすることによって周波数を低くする。すなわち、極性反転した駆動電圧を印加する周期を長くする。例えば、1/120Duty、フレーム周波数90Hz、S値7(極性反転周期7)の場合の周波数f1は、
f1=120×90/(2×7)=771Hz
である。
【0039】
これに対して、液晶表示パネル101の温度が低い場合に、S値を大きくし、S値を13(極性反転周期13)とした場合の周波数f2は、
f2=120×90/(2×13)=415Hz
である。このように、S値を大きくすることによって、周波数を低くすることができ、時定数τの増加を抑制することができる。このため、液晶表示パネル101の温度が低い場合における、表示品質の低下を抑制することができる。
【0040】
また、液晶表示パネル101の温度が上側の基準値t2よりも大きい場合には、あらかじめ設定されているS値よりも小さくする(ステップS5)。例えば、液晶表示パネル101の温度が50℃よりも高い場合には、S値をあらかじめ設定した値よりも小さくし、S=3とする。S値が3の場合、3本の走査ラインごとに駆動電圧の極性を反転させる。すなわち、図5に示すように、走査電極に3選択期間の間、正極性の選択電圧が印加され、4選択期間目から次の3選択期間の間、負極性の選択電圧が印加される。従って、1フレームが8選択期間からなる本実施の形態の場合には、1ライン目の走査電極には、1フレームごとに正極性、正極性、負極性の選択電圧となる走査電圧が印加されることとなる。これにより、液晶駆動電圧の極性は図6(c)に示すものとなる。
【0041】
一般的に、液晶は温度が高くなると、その粘度が低下し、応答速度が速くなる。従って、液晶表示パネル101の温度が高温になると、印加時間が短くても液晶が応答してしまうという問題がある。上述のように、波形が歪んだ駆動電圧が印加された場合には、ちらつきの発生が顕著となる。
【0042】
そこで、本発明では、液晶表示パネル101の温度が高い場合には、液晶に駆動電圧を印加する時間を短くするために、S値を小さくすることによって周波数を高くする。すなわち、極性反転した駆動電圧を印加する周期を短くする。S値を3(極性反転周期3)へと変化させた場合の周波数f3は、
f3=120×90/(2×3)=1800Hz
である。
【0043】
このように、S値を小さくすることによって、周波数を高くすることができる。このため、駆動電圧が液晶に印加される時間を短くすることができ、液晶表示パネル101の温度が高い場合における、ちらつきの発生を抑制し、表示品質の低下を抑制することができる。
【0044】
また、表示電圧値は、従来と同様に温度に応じて補正を行う(ステップS6)。このように、液晶パネル101の温度に応じて、S値及び電圧値に対して最適な補正を行った駆動電圧を液晶表示パネル101に印加することができる。これにより、所定の温度範囲(t1〜t2)内においてだけでなく、低温時及び高温時いずれの場合であっても、クロストークの発生及びちらつきのない高品位の表示を行うことができる。
【0045】
なお、本実施の形態においては、S値を温度に応じて変化させるだけでなく、駆動電圧値についても温度に応じて変化させたが、これに限定されない。S値のみを液晶表示パネル101の温度に応じて変化させるようにしてもよい。また、下側の基準値t1および上側の基準値t2は、使用する液晶の物性などに応じて任意に設定することが可能である。
【0046】
また、駆動電圧値の補正量及びS値の補正量は、液晶の種類や他の駆動条件などによって、任意に決定することができる。
【0047】
実施例.
本発明の実施例について説明する。上述のように、液晶表示パネルの温度に応じて、駆動電圧値及びS値の補正を行った液晶表示装置のクロストーク及びちらつきの評価を行った。本実施例の場合、−30℃のときに駆動電圧13.2V、S=13とし、25℃のときに駆動電圧12.1V、S=7とし、85℃のときに駆動電圧11.1V、S=3とした。
【0048】
比較例として、従来のように、液晶表示パネルの温度に応じて駆動電圧のみの補正を行ったときのクロストーク及びちらつきの評価を行った。この場合、S値は7で一定とし、−30℃のときに駆動電圧13.2V、25℃のときに駆動電圧12.1V、85℃のときに駆動電圧11.1Vとした。このときの評価結果を以下の表に示す。
【表1】

【0049】
表に示すように、駆動電圧の補正のみを行った場合、−30℃の低温時にはクロストークが、85℃の高温時にはちらつきが発生した。しかしながら、本実施例のように、温度に応じて駆動電圧の補正のみならず、S値を制御することによって、低温時のクロストーク及び高温時のちらつきの改善をすることができた。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】実施の形態にかかる液晶表示装置の構成の一例を示す概略図である。
【図2】実施の形態にかかる液晶表示装置の駆動方法を説明するためのフローチャートである。
【図3】実施の形態にかかる液晶表示装置に印加される走査信号の波形図である。
【図4】実施の形態にかかる液晶表示装置に印加される他の走査信号の波形図である。
【図5】実施の形態にかかる液晶表示装置に印加される他の走査信号の波形図である。
【図6】実施の形態にかかる液晶表示装置の駆動方法を説明するための波形図である。
【符号の説明】
【0051】
100 液晶表示装置
101 液晶表示パネル
102 駆動回路
103 温度測定器
104 検出回路
105 A/Dコンバータ
106 制御回路(マイコン)
107 電源回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マトリクス状に配置された複数の画素を有する液晶表示パネルと、
前記液晶表示パネルに一定周期ごとに極性反転された表示信号を出力する駆動回路とを備えた液晶表示装置であって、
前記液晶表示パネルの温度を測定する温度測定器と、
前記温度測定器によって測定された前記液晶表示パネルの温度に応じて前記表示信号の極性反転周期を変化させる制御回路とを備える液晶表示装置。
【請求項2】
前記制御回路は、前記液晶表示パネルの温度が所定の温度よりも高い場合には、前記表示信号の極性反転周期を短くし、
前記液晶表示パネルの温度が所定の温度よりも低い場合には、前記表示信号の極性反転周期を長くする請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項3】
前記制御回路は、前記液晶表示パネルの温度に応じて前記表示信号の電圧値を変化させる請求項1又は2に記載の液晶表示装置。
【請求項4】
マトリクス状に配置された複数の画素を有する液晶表示パネルに一定周期ごとに極性反転された表示信号を出力する液晶表示装置の駆動方法であって、
前記液晶表示パネルの温度を検出し、
前記液晶表示パネルの温度に応じて、前記表示信号の極性反転周期を変化させる液晶表示装置の駆動方法。
【請求項5】
前記液晶表示パネルの温度が所定の温度よりも高い場合には、前記表示信号の極性反転周期を短くし、
前記液晶表示パネルの温度が所定の温度よりも低い場合には、前記表示信号の極性反転周期を長くする請求項4に記載の液晶表示装置の駆動方法。
【請求項6】
前記液晶表示パネルの温度に応じて前記表示信号の電圧値を変化させる請求項4又は5に記載の液晶表示装置の駆動方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−226049(P2007−226049A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−49099(P2006−49099)
【出願日】平成18年2月24日(2006.2.24)
【出願人】(000103747)オプトレックス株式会社 (843)
【Fターム(参考)】