説明

温室内温度制御装置、及び温室内温度制御システム

【課題】土壌内への温度制御を容易とすると共に、省エネルギを実現した温室内温度制御装置を提供する。
【解決手段】この温室内温度制御装置50は、土壌上に立設されて内部空間を外気と遮蔽する温室8と、温室8内の空気温度及び温室8内の土壌温度を制御する温度制御設備52と、を備えた温室内温度制御装置50であって、温度制御設備52は、土壌中に埋設された空気ダクト5と、空気ダクト5内に配設され空気ダクト5内の空気を加熱又は冷却する温度制御管6と、空気ダクト5の吸気口に設置され空気ダクト5に温室8内の空気を吸入する吸気ファン4と、空気ダクト5の排気口に設置され温度制御管6の隔壁を通じて2つの流体間で熱の授受を行わせて加熱又は冷却を行なう熱交換器7と、熱交換器7と密着して設置され空気ダクト5内の空気を温室8内に排気する排気ファン9と、を備えて構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温室内温度制御装置、及び温室内温度制御システムに関し、さらに詳しくは、温室内の温度と土壌の温度管理を一括して制御する温室内温度制御装置とシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
施設園芸農家では、温室や暖房設備等を用いて作物に最も適した環境や温度域を人工的に作り出すことにより、1年を通して多品種の作物を栽培することが可能である。しかし、燃料価格の上昇による生産コストの増加は、農家経営に大きな影響を与えている。また、地球温暖化防止策としての温室ガスの排出量の削減も重要な課題となっている。そのため、施設園芸農家においては、生産管理、生産設備の省エネルギ対策が非常に重要となっており、併せて、省エネルギ対策の実践による農家経営の改善も必要に迫られている。
特許文献1には、ボイラの排熱と土壌に埋設したヒートパイプにより集熱した熱源により温室内を暖房し、土壌を熱源パイプにより加熱する農業用熱暖房装置について開示されている。
【特許文献1】特開2003−185368公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の施設園芸では、冬季における暖房手段として、石油ヒータが一般に用いられているが、エネルギ効率が低いため莫大な燃料経費がかかるばかりでなく、温室ガスの排出量削減といった課題に対して貢献度が低いといった問題がある。
また、特許文献1に開示されている従来技術は、エネルギ源として石油が使われるため、上記従来の施設園芸と同様の課題を抱えている。また、ヒートパイプや熱源パイプを使用することにより、暖房効率を高めることはできるが、熱源パイプを土壌に直接埋設しているため、熱の伝達速度が遅いといった問題がある。
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、土壌中に埋設した空気ダクト内に温度制御管を配設すると共に、空気ダクトに空気放出孔を設け、温度制御された空気ダクト内の空気を、空気放出孔を介して土壌中に放出することにより、土壌内への温度制御を容易とすると共に、省エネルギを実現した温室内温度制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明はかかる課題を解決するために、請求項1は、土壌上に立設されて内部空間を外気と遮蔽する温室と、該温室内の空気温度及び該温室内の土壌温度を制御する温度制御設備と、を備えた温室内温度制御装置であって、前記温度制御設備は、吸気口と排気口を夫々前記温室内に位置させた状態で土壌中に埋設された空気ダクトと、該空気ダクト内に配設されて加熱、又は冷却用の流体を搬送することにより該空気ダクト内の空気を加熱又は冷却する温度制御管と、前記空気ダクト内に前記温室内の空気を吸引する吸気ファンと、前記空気ダクトの排気口に設置され前記温度制御管の隔壁を通じて前記空気ダクト内の空気と温度制御管内の流体間で熱の授受を行わせて加熱又は冷却を行なう熱交換器と、前記空気ダクト内の空気を前記温室内に排気する排気ファンと、を備え、前記空気ダクトに前記温度制御管により加熱又は冷却された空気を土壌中に放出する空気放出孔を備えたことを特徴とする。
本発明の最も大きな特徴は、空気ダクト内に温度制御管を配設すると共に、空気ダクトに温度制御管により加熱又は冷却された空気を土壌内に放出する空気放出孔を備えた点である。そして、温度制御管から放出される温度により加熱又は冷却された空気を排気ファンにより排気し、温室内を循環して吸気ファンにより再び空気ダクトに流入させる。このとき、吸気ファンにより吸入された空気は圧力が高いため、空気放出孔から土壌に放出される。これにより、土壌への熱伝達を早めて、且つ均一に伝達させることができる。
【0005】
請求項2は、温水又は冷却水の何れかを選択的に切り替えて前記温度制御管に流入させる切替器を備えたことを特徴とする。
空気ダクトには空気が流れているため、温度制御管の表面温度が空気に伝達して加熱又は冷却する。従って、温度制御管の温度により空気の温度が左右される。本発明では、温水又は冷却水の何れかを選択的に切り替えて温度制御管に流入させる切替器を備え、温室の温度を上昇させるときは温水を流し、温室の温度を低下させるときは冷却水を流すように作動させる。これにより、温室の温度を広い範囲で制御することができる。
請求項3は、前記空気放出孔を開放又は閉止する放出孔開閉手段を備えことを特徴とする。
温室では畝ごとに異なる作物を栽培することがある。作物は種類により土壌温度が同じとは限らない。そこで本発明では、空気放出孔を開放又は閉止する放出孔開閉手段を備え、土壌の温度を畝ごとに制御する。これにより、作物ごと、或いは畝ごとに土壌温度をきめ細かく制御することができる。
【0006】
請求項4は、請求項1乃至3の何れか一項に記載の温室内温度制御装置と、前記温室内の空気温度を検出する温度センサと、前記土壌温度を検出する土壌温度センサと、前記各温度センサにより検出された温度に基づいて前記吸気ファン、前記排気ファン、及び前記放出孔開閉手段を制御する制御部と、を備えたことを特徴とする。
温室内温度制御設備を制御するためには、温室内と土壌の温度を検知するセンサが必要である。これらのセンサからの情報は制御部に入力され、制御部は各温度情報に基づいて吸気ファン、排気ファン、又は放出孔開閉手段に係る動作を制御する。ここでいう動作とは、ファンの回転又は停止や放出孔開閉手段の開閉動作をいう。これにより、温室全体の温度管理をシステムとして自動管理することができる。
請求項5は、前記制御部は、前記温度センサが検出した温度が所定の温度範囲に達していない場合、前記吸気ファン及び排気ファンを同時に動作させることを特徴とする。
温室内の温度が所定の温度(作物に最適な温度範囲)に達していない場合は、吸気と排気の両ファンを回転して温室内の空気を循環させる。これにより、温室内の温度を即座に所定温度に到達させることができる。
【0007】
請求項6は、前記制御部は、前記温度センサが検出した温度が所定の温度範囲に達している場合、前記排気ファンを停止することを特徴とする。
温室内の温度が所定温度に達している場合は、排気ファンを停止して温室内の空気の循環を停止する。これにより、現状の温度を維持すると共に、ファンの電力を削減することができる。
請求項7は、前記制御部は、前記土壌温度センサが検出した温度が所定の温度範囲に達している場合、前記吸気ファンを停止することを特徴とする。
吸気ファンの主たる機能は、空気ダクト内の気圧を高めて、空気放出孔から温度制御された空気を放出し易くするためである。従って、土壌温度センサが検出した温度が所定の温度範囲に達している場合は、土壌への放出を弱めるために吸気ファンを停止する。これにより、土壌の温度制御をきめ細かく行なうと共に、ファンの電力を削減することができる。
請求項8は、前記放出孔開閉手段を前記空気放出孔の全てに取り付けた場合、前記制御部は、前記土壌温度センサが検出した温度が所定の温度範囲に達している場合、該土壌温度センサ近傍の空気放出孔を閉止するように前記放出孔開閉手段を制御することを特徴とする。
作物ごとに土壌温度を個別に管理するためには、放出孔開閉手段を空気放出孔の全てに取り付ける必要がある。そして土壌温度センサをそれぞれの作物の近傍に複数配置する。土壌温度センサが検出した温度が所定の温度範囲に達している場合、この土壌温度センサ近傍の空気放出孔を閉止する。これにより、畝全体の土壌温度管理をきめ細かく行うことができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、空気ダクト内に温度制御管を配設すると共に、空気ダクトに温度制御管により加熱又は冷却された空気を土壌内に放出する空気放出孔を備え、温度制御管から放出される温度により加熱又は冷却された空気を排気ファンにより排気し、温室内を循環して吸気ファンにより再び空気ダクトに流入させ、吸気ファンにより吸入された空気の圧力を高めて、空気放出孔から土壌に放出するので、土壌への熱伝達を早めて、且つ均一に伝達させることができる。
また、温水又は冷却水の何れかを選択的に切り替えて温度制御管に流入させる切替器を備え、温室の温度を上昇させるときは温水を流し、温室の温度を低下させるときは冷却水を流すように作動させるので、温室の温度を広い範囲で制御することができる。
また、空気放出孔を開放又は閉止する放出孔開閉手段を備え、土壌の温度を畝ごとに制御するので、作物ごと、或いは畝ごとに土壌温度をきめ細かく制御することができる。
また、温室内と土壌の温度を検知するセンサからの情報は制御部に入力され、制御部は各温度情報に基づいて吸気ファン、排気ファン、又は放出孔開閉手段に係る動作を制御するので、温室全体の温度管理をシステムとして自動管理することができる。
【0009】
また、温室内の温度が所定の温度(作物に最適な温度範囲)に達していない場合は、吸気と排気の両ファンを回転して温室内の空気を循環させるので、温室内の温度を即座に所定温度に到達させることができる。
また、温室内の温度が所定温度に達している場合は、排気ファンを停止して温室内の空気の循環を停止するので、現状の温度を維持することができる。これにより、現状の温度を維持すると共に、ファンの電力を削減することができる。
また、土壌温度センサが検出した温度が所定の温度範囲に達している場合は、土壌への放出を弱めるために吸気ファンを停止するので、土壌の温度制御をきめ細かく行なうと共に、ファンの電力を削減することができる。
また、土壌温度センサが検出した温度が所定の温度範囲に達している場合、この土壌温度センサ近傍の空気放出孔を閉止するので、畝全体の土壌温度管理をきめ細かく行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を図に示した実施形態を用いて詳細に説明する。但し、この実施形態に記載される構成要素、種類、組み合わせ、形状、その相対配置などは特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する主旨ではなく単なる説明例に過ぎない。
図1は本発明の第1の実施形態に係る温室内温度制御装置の構成を示す図である。図1(a)は側断面図、(b)は上面図である。この温室内温度制御装置50は、土壌上に立設されて内部空間を外気と遮蔽する温室8と、温室8内の空気温度及び温室8内の土壌温度を制御する温度制御設備52と、を備えた温室内温度制御装置50であって、温度制御設備52は、吸気口と排気口を夫々温室8内に位置させた状態で土壌中に埋設された空気ダクト5と、空気ダクト5内に配設されて加熱、又は冷却用の流体を搬送することにより空気ダクト5内の空気を加熱又は冷却する温度制御管6と、空気ダクト5内に温室8内の空気を吸引する吸気ファン4と、空気ダクト5の排気口に設置され温度制御管6の隔壁を通じて空気ダクト5内の空気と温度制御管6内の流体間で熱の授受を行わせて加熱又は冷却を行なう熱交換器7と、熱交換器7と密着して設置され空気ダクト5内の空気を温室8内に排気する排気ファン9と、を備え、本実施形態では、夜間電力により水を加熱して給湯するヒートポンプ給湯器1の温水を貯湯槽2に貯留して、必要時に温度制御管6に貯湯槽2の温水を供給する。また、空気ダクト5に温度制御管6により加熱された空気を土壌11中に放出する空気放出孔12を備えている。また、本温室内温度制御装置50をシステムとして稼働するために、温度センサ10(上部温度センサ10a、下部温度センサ10b、土壌温度センサ10c)を備えている。また、温室8内の空気を攪拌するための循環ファン3を備えても構わない。尚、図示は省略するが、熱交換器7により熱交換された温水は再び貯湯槽2に戻されて使用される。
【0011】
次に本実施形態に係る温室内温度制御装置50の概略動作について説明する。給湯器1は夜間電力を使用して水道水(或いは地下水)をヒートポンプ給湯器1により加熱して所定の温度(70℃〜90℃)に加熱して貯湯槽2に貯留する。貯湯槽2には図示を省略するが、温水を温度制御管6に流すポンプが備えられ、そのポンプの圧力により、温度制御管6内に温水を循環させる。また、温度制御管6は空気ダクト5内に配設されているので、温度制御管6の表面の熱により温められる。また、温室8内の空気を暖めるために、吸気ファン4と排気ファン9を同時に動作させる。これにより、空気ダクト5内の暖められた空気13が空気放出孔12を介して土壌11に放出されと共に、熱交換器7により更に暖められて温室8内に排気される。この動作を繰り返すことにより、土壌11と温室8内の空気が暖められる。また、暖められた空気は、温室8の上部に溜まるため、循環ファン3により空気を攪拌することにより、より全体の温度分布を均一化することができる。
図1(b)では、温度制御管6を2本に分離して、それぞれに空気ダクト5、吸気ファン4、排気ファン9、及び熱交換器7を備えているが、空気ダクト5を連結して、吸気口と排気口にそれぞれ吸気ファン4、排気ファン9、及び熱交換器7を備える構成でも構わない。
【0012】
本発明の最も大きな特徴は、空気ダクト5内に温度制御管6を配設すると共に、空気ダクト5に温度制御管6により加熱された空気を土壌11内に放出する空気放出孔12を備えた点である。そして、温度制御管6から放出される温度により加熱された空気を排気ファン9により排気し、温室8内を循環して吸気ファン4により再び空気ダクト5に流入させる。このとき、吸気ファン4により吸入された空気は圧力が高いため、空気放出孔12から土壌11に放出される。これにより、土壌11への熱伝達を早めて、且つ均一に伝達させることができる。
【0013】
図2は本発明の第2の実施形態に係る温室内温度制御装置の構成を示す図である。同じ構成要素には図1と同じ参照番号を付して説明する。図2が図1と異なる点は、貯湯槽2と温度制御管6との間に、温水又は冷却水の何れかを選択的に切り替えて温度制御管6に流入させる切替器14を備えたことである。切替器14には、配管15を介して地下水16を汲み上げて温度制御管6に供給する図示しないポンプが備えられている。
即ち、空気ダクト5には空気が流れているため、温度制御管6の表面温度が空気に伝達して加熱又は冷却する。従って、温度制御管6の温度により空気の温度が左右される。本実施形態では、温水又は冷却水の何れかを選択的に切り替えて温度制御管6に流入させる切替器14を備え、温室8の温度を上昇させるときは温水を流し、温室8の温度を低下させるときは冷却水を流すように作動させる。これにより、温室8の温度を広い範囲で制御することができる。
【0014】
図3は空気放出孔12を開放又は閉止する放出孔開閉器(放出孔開閉手段)53の一例を示す図である。図3(a)は断面図、図3(b)は開閉動作を説明する図である。図3(a)のように、放出孔開閉器53は、空気ダクト5に設けられた空気放出孔12に取り付けられ、枠体20と枠体20内を回転する回転板27と回転板27を回転させるソレノイド23から構成されている。回転板27は軸21によりソレノイド23の軸22に回動可能に取り付けられている。図3(b)を参照して放出孔開閉器53の概略動作について説明する。図3(b)はソレノイド23を動作させて放出孔開閉器53を閉止した状態を示す図である。この状態では、枠体20の開口部24と回転板27の開口部25は位置が一致しないため、回転体27により枠体20の開口部24は閉止されている。次に、ソレノイド23の動作を停止すると、バネ26の力で矢印Bの方向に軸22が移動し、その結果、回転板27の軸21が回転して回転板27が矢印Aの方向に回転することにより、回転板27の開口部25と枠体20の開口部24が一致して放出孔開閉器53を開放状態にする。
即ち、温室8では畝ごとに異なる作物を栽培することがある。作物は種類により土壌温度が同じとは限らない。そこで本発明では、空気放出孔12を開放又は閉止する放出孔開閉器53を備え、土壌11の温度を畝ごとに制御する。これにより、作物ごと、或いは畝ごとに土壌温度をきめ細かく制御することができる。
【0015】
図4は本発明に係る温室内温度制御システムの構成を示すブロック図である。この温室内温度制御システム60は、温室8内の空気温度を検出する上部温度センサ10a、下部温度センサ10bと、土壌温度を検出する土壌温度センサ10cと、各温度センサにより検出された温度に基づいて図1又は図2に記載の温室内温度制御装置50、51に係る吸気ファン4、排気ファン9、及び放出孔開閉器53を制御する制御部30と、を備えて構成されている。尚、切替器は制御部30を介して動作させてもよいし、制御部30を介さずに手動にて動作させても構わない。
即ち、温室内温度制御設備50、51を制御するためには、温室8内と土壌11の温度を検知する温度センサ10(10a〜10c)が必要である。これらの温度センサからの情報は制御部30に入力され、制御部30は各温度情報に基づいて吸気ファン4、排気ファン9、又は放出孔開閉器53に係る動作を制御する。ここでいう動作とは、ファンの回転又は停止や放出孔開閉器53の開閉動作をいう。これにより、温室全体の温度管理をシステムとして自動管理することができる。
【0016】
図5は本発明の第1の実施形態に係る温室内温度制御システムの動作を説明するフローチャートである。夜間電力を使用するために、その時間帯になると(S1でYES)、給湯器1が動作して水道水又は地下水を加熱する(S2)。加熱された温水は貯湯器2により貯留され、貯湯器2が満タンになるまで貯留される(S3)。貯湯器2が満タンになると(S3でYES)、給湯器1を停止する(S4)。このとき貯湯器2には70℃〜90℃の温水が貯留される。次に、貯湯器2が満タンになると、温度制御管6に給湯を開始する(S5)。その後、制御部30は上部温度センサ10aと下部温度センサ10bの温度情報を検知して所定値の温度に達しているか否かを検証する(S6)。もし、所定温度に達していなければ(S6でNO)、吸気ファン4と排気ファン9を動作させる(S7)。これにより、温室8内に温風が循環される。一方、ステップS6で所定温度に達している場合(S6でYES)、排気ファン9を停止して温室8に温風を送風することを停止する(S10)。次に、土壌温度センサ10cの温度情報を検知して所定値の温度に達しているか否かを検証する(S8)。もし、達していなければ(S8でNO)ステップS5に戻る。ステップS8で所定値に達していれば(S9でYES)、吸気ファン4を停止して、温風を土壌11中に放出する圧力を低下させる(S9)。
【0017】
図6は本発明の第2の実施形態に係る温室内温度制御システムの動作を説明するフローチャートである。夜間電力を使用するために、その時間帯になると(S20でYES)、給湯器1が動作して水道水又は地下水を加熱する(S21)。加熱された温水は貯湯器2により貯留され、貯湯器2が満タンになるまで貯留される(S22)。貯湯器2が満タンになると(S22でYES)、給湯器1を停止する(S23)。このとき貯湯器2には70℃〜90℃の温水が貯留される。次に、貯湯器2が満タンになると、温度制御管6に給湯を開始する(S24)。その後、制御部30は上部温度センサ10aと下部温度センサ10bの温度情報を検知して所定値の温度に達しているか否かを検証する(S25)。もし、所定温度に達していなければ(S25でNO)、吸気ファン4と排気ファン9を動作させる(S26)。これにより、温室8内に温風が循環される。一方、ステップS25で所定温度に達している場合(S25でYES)、排気ファン9を停止して温室8に温風を送風することを停止する(S29)。次に、土壌温度センサ10cの温度情報を検知して所定値の温度に達しているか否かを検証する(S27)。もし、達していなければ(S27でNO)ステップS24に戻る。ステップS27で所定値に達していれば(S27でYES)、放出孔開閉器53を動作して空気放出孔12を閉止して土壌11中に放出する空気を停止する(S28)。
【0018】
図7は図6のフローチャートを更に詳細に説明するための説明図である。一般的には、温室では、各種の作物を畝毎に分けて栽培する場合がある。そのとき、作物によって土壌温度が異なる場合がある。そこで各畝に空気ダクト5a〜5dを配設し、夫々の畝に土壌温度センサ10cを夫々配設する。当然、どの土壌温度センサがどの畝の土壌温度を検知するかは予め決定しておく。また、各畝に配設された空気ダクトにある空気放出孔12に夫々放出孔開閉器53を配置する。この放出孔開閉器53も、当然どの放出孔開閉器53がどの畝の空気ダクトに配置したかを予め決定しておく。また、放出孔開閉器53ごとに制御してもよいし、畝ごとに放出孔開閉器53を制御しても構わない。このように構成しておくことにより、図6のステップS28で空気放出孔を閉止する場合に、制御部30は各畝毎に最適な温度を土壌温度センサにより検知して、その温度情報に基づいて畝ごとの放出孔開閉器をきめ細かく制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る温室内温度制御装置の構成を示す図である。
【図2】本発明の第2の実施形態に係る温室内温度制御装置の構成を示す図である。
【図3】空気放出孔12を開放又は閉止する放出孔開閉器(放出孔開閉手段)53の一例を示す図である。
【図4】本発明に係る温室内温度制御システムの構成を示すブロック図である。
【図5】本発明の第1の実施形態に係る温室内温度制御システムの動作を説明するフローチャートである。
【図6】本発明の第2の実施形態に係る温室内温度制御システムの動作を説明するフローチャートである。
【図7】図6のフローチャートを更に詳細に説明するための説明図である。
【符号の説明】
【0020】
1 ヒートポンプ給湯器、2 貯湯槽、3 循環ファン、4 吸気ファン、5 空気ダクト、6 温度制御管、7 熱交換器、8 温室、9 排気ファン、10 温度センサ、11 土壌、12 空気放出孔、13 空気、14 切替器、15 配管、16 地下水、30 制御部、50、51 温室内温度制御装置、60 温室内温度制御システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
土壌上に立設されて内部空間を外気と遮蔽する温室と、該温室内の空気温度及び該温室内の土壌温度を制御する温度制御設備と、を備えた温室内温度制御装置であって、
前記温度制御設備は、吸気口と排気口を夫々前記温室内に位置させた状態で土壌中に埋設された空気ダクトと、該空気ダクト内に配設されて加熱、又は冷却用の流体を搬送することにより該空気ダクト内の空気を加熱又は冷却する温度制御管と、前記空気ダクト内に前記温室内の空気を吸引する吸気ファンと、前記空気ダクトの排気口に設置され前記温度制御管の隔壁を通じて前記空気ダクト内の空気と温度制御管内の流体間で熱の授受を行わせて加熱又は冷却を行なう熱交換器と、前記空気ダクト内の空気を前記温室内に排気する排気ファンと、を備え、
前記空気ダクトに前記温度制御管により加熱又は冷却された空気を土壌中に放出する空気放出孔を備えたことを特徴とする温室内温度制御装置。
【請求項2】
温水又は冷却水の何れかを選択的に切り替えて前記温度制御管に流入させる切替器を備えたことを特徴とする請求項1に記載の温室内温度制御装置。
【請求項3】
前記空気放出孔を開放又は閉止する放出孔開閉手段を備えことを特徴とする請求項1又は2に記載の温室内温度制御装置。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか一項に記載の温室内温度制御装置と、前記温室内の空気温度を検出する温度センサと、土壌温度を検出する土壌温度センサと、前記各温度センサにより検出された温度に基づいて前記吸気ファン、前記排気ファン、及び前記放出孔開閉手段を制御する制御部と、を備えたことを特徴とする温室内温度制御システム。
【請求項5】
前記制御部は、前記温度センサが検出した温度が所定の温度範囲に達していない場合、前記吸気ファン及び排気ファンを同時に動作させることを特徴とする請求項4に記載の温室内温度制御システム。
【請求項6】
前記制御部は、前記温度センサが検出した温度が所定の温度範囲に達している場合、前記排気ファンを停止することを特徴とする請求項4又は5に記載の温室内温度制御システム。
【請求項7】
前記制御部は、前記土壌温度センサが検出した温度が所定の温度範囲に達している場合、前記吸気ファンを停止することを特徴とする請求項4又は5に記載の温室内温度制御システム。
【請求項8】
前記放出孔開閉手段を前記空気放出孔の全てに取り付けた場合、前記制御部は、前記土壌温度センサが検出した温度が所定の温度範囲に達している場合、該土壌温度センサ近傍の空気放出孔を閉止するように前記放出孔開閉手段を制御することを特徴とする請求項4に記載の温室内温度制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−88378(P2010−88378A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−263035(P2008−263035)
【出願日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【出願人】(591082328)橋本産業株式会社 (9)
【Fターム(参考)】