説明

温度調節装置

【課題】コンパクトなユニット構成でアイドリングストップができるとともに、簡単な構成で騒音を抑えて快適な睡眠環境を形成できる温度調節装置を提供する。
【解決手段】蓄電池により駆動電力を供給される圧縮機と凝縮器と蒸発器とを環状に連結して冷凍サイクルを形成し、この冷凍サイクル中の前記蒸発器を循環ファンおよび吹き出し風路28と戻り風路29とを有する断熱壁体で形成された温調室内に収納するとともに前記圧縮機と凝縮器とこれらを冷却する放熱ファンとを機械室内に配設した温度調節ユニット2を運転席後部の仮眠用キャビン内に取り付け、前記蒸発器により生成された冷気あるいは暖気を前記仮眠用キャビン内または運転席、あるいはその双方に吹き出して温度調節するとともに、前記機械室の仮眠用キャビン側に開口させた放熱のための吸気口17を遮音体31で覆うようにしたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラックの運転台における仮眠用キャビンなどに設置して冷却あるいは加温された空気を吹き出す温度調節装置の構成に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トラックなどの自動車の運転台においては、キャビン内に睡眠をとるためのベッドルームが設けられ、随時横になって休息や睡眠ができるように構成されている。そして、夏場などにおいて睡眠をとる場合は、カーエアコンを運転して室内を空調することで快眠を確保してきたが、エアコンの運転による部屋全体の空調では、大きな電力消費量となり、さらに、アイドリング運転が必要となって、電力消費のみでなく、膨大な炭酸ガスの排出にともなう地球温暖化への影響が大きいものであった。
【0003】
一方、図18に示すように、内部に人間(A)が横たわる空間(78)を形成した寝袋(56)内に、熱交換器(66)と送風装置(68)とを有する空気調和装置(52)からの空気を循環させることで前記空間内を冷房するようにし、これにより、冷凍機自体を小電力で作動させることで、エネルギー資源の浪費や環境汚染を抑えるようにした構成が特許文献1に示されている。
【0004】
また、図19に示す特許文献2には、自動車の運転台の後壁と運転席との間のフロア上に設けた水平で平坦に延びるマット(86)の長手方向の一端部に、熱交換器を備えて熱交換空気を供給し、供給された空気が通気性マット内(87)を流動して人間(A)に対して快適な感覚が得られるようにした空気循環式マット(81)の構造が記載されている。
【0005】
さらに、前記特許文献1に記載の寝袋や特許文献2に記載のマット装置に対して、本特許出願人らは、蓄電池により駆動される冷却ユニットを運転席後部の仮眠用キャビン内に取り付け、蒸発器により生成された冷気あるいは暖気を運転席または仮眠用キャビン内、あるいはその双方に吹き出して温度調節するように構成した車載用温度調節装置を発明し、特願2008−229394号として出願している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−098044号公報
【特許文献2】特開2007−105084号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記特許文献1に記載の寝袋や特許文献2に記載のマット装置をトラックなどの車体に設置するに際しては、狭いキャビン空間に寝袋やマットとともに比較的大形の空調装置を設置しなければならないことから、コンパクト化のために自動車製造時に同時に取り付けたり、分離している室内側冷却機と室外機とを据え付け時に配管接続しなければならないなど、設置構成や据え付け作業がきわめて煩雑になりコスト高になる問題点を有していた。
【0008】
また、前記特許出願に記載の温度調節装置は、コンパクトな構成でアイドリングストップにより資源浪費や環境汚染を抑制するとともに、冷却あるいは加温された空気を吹き出す冷却ユニットの車内への取り付けを容易におこない、運転席後部の仮眠用キャビンだけでなく、運転席をも選択的に冷却あるいは加温することができるものであるが、車載用であることから振動による冷凍サイクルの配管折れを防止するため、冷却ユニットは可能な限り強固に固定されているとともに、機械室を含めた冷却ユニット全体が車内に設置されており、この構成によって、その分運転中には振動音や作動音などの騒音が大きくなる弊害がある。しかも、キャビン空間側(使用者側)に面して開口している機械室内の放熱のための吸気口から前記振動音や作動音が直接抜けてくるため、さらに騒音が大きくなり、快適な休息や睡眠が阻害される問題があった。
【0009】
本発明は上記の事情を考慮してなされたものであり、コンパクトなユニット構成でアイドリングストップができるとともに、簡単な構成で騒音を抑えて快適な睡眠環境を形成できる温度調節装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために本発明の温度調節装置は、蓄電池により駆動電力を供給される圧縮機と凝縮器と蒸発器とを環状に連結して冷凍サイクルを形成し、この冷凍サイクル中の前記蒸発器を循環ファンおよび吹き出し風路と戻り風路とを有する断熱壁体で形成された温調室内に収納するとともに前記圧縮機と凝縮器とこれらを冷却する放熱ファンとを機械室内に配設した温度調節ユニットを運転席後部の仮眠用キャビン内に取り付け、前記蒸発器により生成された冷気あるいは暖気を前記仮眠用キャビン内または運転席、あるいはその双方に吹き出して温度調節するとともに、前記機械室の仮眠用キャビン側に開口させた放熱のための吸気口を遮音フードで覆うようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、コンパクトで且つ簡単な構成で、エンジンを停止した状態での温度調節空間を得ることができるとともに、運転時に機械室の吸気口から漏出する圧縮機や放熱ファンからの騒音を遮音してより快適な睡眠環境を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の1実施形態の温度調節装置を設けたトラックの側面図である。
【図2】図1の温度調節装置設置部の平面図である。
【図3】図2における冷却ユニットの斜視図である。
【図4】図3の冷却ユニットの前面を破断した正面図である。
【図5】図4の機械室部の平面図である。
【図6】図3に配設した冷凍サイクルの概略構成図である。
【図7】図3における温調室の横断面図である。
【図8】図2における冷却マットの概略図である。
【図9】図3における遮音フードの吸気口の閉塞状態を示す側面図である。
【図10】図3の遮音フードの取り付け状態を示す要部の断面図である。
【図11】図10の冷却ユニット側板部の斜視図である。
【図12】図3の冷却ユニット運転時の遮音フードの開放状態を示す側面図である。
【図13】図3の冷却ユニットの点検時の遮音フードの開放状態を示す側面図である。
【図14】図12の他の実施例を示す側面図である。
【図15】本発明の他の実施例を示す後部キャビンの背面図である。
【図16】さらに他の実施例を示す後部キャビンの背面図である。
【図17】さらに他の実施例を示す後部キャビンの背面図である。
【図18】本発明の従来例の寝袋を示す断面図である。
【図19】本発明のさらに他の従来例を示す空気循環式マットの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面に基づき本発明の1実施形態について説明する。図1は、本発明の温度調節装置(1)を搭載したトラック前部の側面図、図2はその平面図であって、前記温度調節装置(1)は、仮眠用キャビンとして使用される運転席(3)の後部キャビン(4)に設置された温度調節ユニットとしての冷却ユニット(2)と、この冷却ユニット(2)を駆動する蓄電池(5)とから形成されている。
【0014】
後部キャビン(4)には、助手席側の後部位置の外壁に沿って前記冷却ユニット(2)を配設し、この冷却ユニット(2)に対して車体の幅方向が長手方向となるように、使用者(A)が横臥するための冷却マット(6)を設置している。
【0015】
また、前記蓄電池(5)は、トラック用の蓄電池とは別に冷却ユニット(2)の駆動電源用として専用に設けられており、自動車エンジンの駆動時に充電されるものであって、後部キャビン(4)外の車体下部に配設している。
【0016】
前記冷却ユニット(2)は、斜視図を図3、正面から前面を破断して示す図4に示すように、薄鋼板製の外板(7)で箱体状の外郭を形成し、高さ方向のほぼ中央部を断熱仕切壁(8)で上下の空間に区分されているとともに、前記後部キャビン(4)の床面である車体底板(4a)上に架台(42)を介してボルト固定されている。
【0017】
前記断熱仕切壁(8)の上方の空間は機械室(9)としており、前記図4および平面図である図5に示すように、冷凍サイクル(10)の一環をなす冷媒を圧縮して吐出する圧縮機(11)と、吐出された高温高圧の冷媒を受けて放熱し凝縮する凝縮器(12)およびこれら凝縮器(12)などの高温部品を冷却する放熱ファン(13)などを剛性のある鋼板などで形成した仕切板(14)上に設置している。
【0018】
前記冷凍サイクル(10)は、図6に示すように、前記圧縮機(11)、凝縮器(12)、減圧器である毛細管(15)および蒸発器(16)を環状に連結し、前記蓄電池(5)による駆動で圧縮機(11)からの冷媒を循環し、蒸発器(16)で蒸発させることによって冷気を生成するものであり、前記圧縮機(11)は、前記仕切板(14)上の幅方向の一側に片寄らせて配置し、振動吸収用のクッション体を介して固着されている。
【0019】
前記凝縮器(12)は、蛇行曲げした冷媒管を多数のフィンに嵌入させて奥行き寸法を薄くした直方体状をなし、面積の大きなその前面を外板(7)の前面に形成した吸気口(17)に沿わせて立設させ、この吸気口(17)と凝縮器(12)との間には埃などを遮蔽するためにフィルター(18)を設けている。
【0020】
凝縮器(12)の背面には、前記圧縮機(11)の運転に同期して駆動する放熱ファン(13)を前記圧縮機(11)に対向する平面における1コーナーの底部に開口した排気口(19)の端縁に面して立設させており、駆動時には、外気を前面の吸気口(17)から内部に吸引して凝縮器(12)を冷却し、熱交換した空気を外板(7)の前記排気口(19)から下方の排気ダクト(20)に向けて放出するようにしている。
【0021】
このとき、前述したように、圧縮機(11)は機械室(9)内の側部に位置しており、放熱ファン(13)による冷却作用を直接受けにくいことから過冷却による蒸発温度を低下を防ぐとともに、片寄らせた分を奥行き方向で放熱ファン(13)と圧縮機(11)が重ならないように配置することで、機械室(9)の奥行き寸法の短縮化をはかっており、前記機械室(9)の上部は、基板などの電気部品収納部(21)とし、その前面には操作パネル(22)を配置して冷却ユニット(2)の運転を制御している。
【0022】
前記断熱仕切壁(8)の下方空間には、前記断熱仕切壁(8)に連なるように同様の断熱材で形成された断熱側壁(23)を外板(7)の内面側に配設し、底部には剛性のある断熱壁(24)を設けることで内部を断熱空間とした温調室(25)としており、図7の横断面図で示すように、そのほぼ中央部には、前記凝縮器(12)からの冷媒を受けてこれを蒸発させることで低温化した冷気を生成する蒸発器(16)を幅方向に亙って立設状態で配置している。
【0023】
この蒸発器(16)も前記凝縮器(12)と同様に、蛇行曲げした冷媒管と冷媒管に嵌着した多数のフィンとから所定の幅と高さ寸法を有して奥行き寸法を薄くした横長の直方体をなしており、前記蒸発器(16)の一端側の温調室(25)の側部、すなわち、図7中の左側には、シロッコファンからなる循環ファン(26)を蒸発器(16)の長手方向に直交するように、温調室(25)の奥行き方向に亙って並置させている。
【0024】
前記蒸発器(16)の下面に対応する温調室(25)の底面には、一側に向かって下方傾斜させた露受け樋(27)を形成しており、この露受け樋(27)によって、冷却運転時に蒸発器(16)に付着する霜の除霜後の融解水を集めるようにしている。集められた除霜水は、露受け樋(27)の傾斜下端部から連通している前記排気ダクト(20)を流入し外部に流出する。
【0025】
温調室(25)における前記循環ファン(26)の設置部の前方には、ファンケーシングによって連結され、冷却ユニット(2)の前面側スペースにおける車体底板(4a)上に配置した概略構造を図8に示す空気循環式の冷却マット(6)に冷気を導入するように、その冷気取り入れ口(6a)に連結した円筒状の吹き出し風路(28)を外方に突出させている。
【0026】
前記吹き出し風路(28)の幅方向の反対側に位置する前記蒸発器(16)の前面には、戻り風路(29)を前記吹き出し風路(28)と同様に突出させて設けており、前記冷却マット(6)内を循環冷却した冷気を戻り口(6b)から前記戻り風路(29)を介して温調室(25)内の前記蒸発器(16)の一端側に流入させるようにしている。
【0027】
そして、特に図示しないが、前記吹き出し風路(28)の一部に冷気流路を分岐して冷風を送気する延長ダクトを接続し、その端部を、後部キャビン(4)や運転席(3)の上部まで延設させ、蒸発器(15)で熱交換された冷風をスポット的に供給するようにしてもよい。
【0028】
前記戻り風路(29)の一部には、空気温センサー(30)を配設しており、冷却マット(6)の循環風路(6c)内を流れて戻り口(6b)から戻り風路(29)に至った空気の温度を検知することによって冷却ユニット(2)における圧縮機(11)の運転を制御し、冷却された空気を循環風路(6c)内に供給して、冷却マット(6)内を使用者(A)の希望する温度に冷却する。
【0029】
冷却ユニット(2)は、上記のように、温調室(25)を機械室(9)の下方に配設したので、温調室(25)からの冷気の吹き出し風路(28)や戻り風路(29)の位置が冷却ユニット(2)の下方部となり、特に、冷却対象物が前記空気循環式の冷却マット(6)などのように床面近傍に配置するものの場合は、その接続構成がきわめて容易となり、熱損失が少ないので冷気の伝達効率を向上させることができる。
【0030】
また、床面近傍に設置した冷却マット(6)の冷気取り入れ口(6a)や戻り口(6b)と前記冷気の吹き出し風路(28)や戻り風路(29)とを直接連結することができるので、長尺のダクト部材が不必要になり、ダクトスペースを削減できるばかりか、部品数やコストアップを抑制でき、ダクト部材が突出しないので外観を良好に保つことができる利点を有するが、機械室(9)と温調室(25)との位置関係は逆にしてもよい。
【0031】
以上の構成により、冷却ユニット(2)における圧縮機(11)を運転した場合には、凝縮器(12)からの冷媒を蒸発させることで蒸発器(16)を低温化して温調室(25)内の空気を冷却し、生成された冷気を循環ファン(26)によって吹き出し風路(28)から冷却対象物である冷却マット(6)側の冷気取り入れ口(6a)から循環風路(6c)に吹き出して冷却マット(6)内を冷却するものであり、循環風路(6c)の循環後は、戻り口(6b)を介して戻り風路(29)から温調室(25)内の蒸発器(16)に流入させ、再び冷却して吹き出す冷気循環を繰り返す。
【0032】
しかして、上記構成による冷却ユニット(2)は、機械室(9)を含めたユニット全体が後部キャビン(4)内に設置されていることから、その運転中には、圧縮機(11)の振動音や放熱ファン(13)の回転音などが後部キャビン(4)側に開口している吸気口(17)からキャビン内に漏れ出ることで騒音となり、休息や睡眠が阻害される問題があるため、本発明においては、前記図3および図9にその側面図を示すように、前記冷却ユニット(2)の機械室(9)部分の全幅寸法に亙って設けられ吸気口(17)の全面を覆う平板状のフード部(32)とその両側から冷却ユニット(2)の側壁に沿って折曲させた側面部(33)とからなる遮音フード(31)を設けている。
【0033】
この遮音フード(31)は、透明な合成樹脂の薄板材で形成され、前記側面部(33)の一部に枢支軸(34)を設け、断面図を図10に示すように、この枢支軸(34)を中心として側板(7)側に垂直方向の凸条(35)を形成するとともに、図11に示すように、対応する前記冷却ユニット(2)側壁の外板(7)には、前記枢支軸(34)の嵌入孔(36)と前記凸条(35)に係合する凹溝(37)を放射状に形成している。なお、前記外板(7)は、薄鋼板製であることから、前記凹溝(37)は図に示すように、合成樹脂からなる別部材で形成するとよい。
【0034】
そして、枢支軸(34)とともに回動する遮音フード(31)の弾性変形によって前記凸条(35)と凹溝(37)とを接離し、回動によって前記凸条(35)が次の放射状の凹溝(37′)に合致したときは、その弾性による凸条(35)と凹溝(37′)との凹凸係合で、冷却ユニット(2)側壁の外板(7)に遮音フード(31)を所定角度で保持できるように回動可能に形成されている。
【0035】
上記により、冷却ユニット(2)の運転時には、図12に示すように、枢支軸(34)に対してフード部(32)の下端縁を吸気口(17)から離間するように所定角度回動させ、運転時の機械室(9)内への吸気を妨げない空間を形成するとともに、吸気口(17)の前面を覆うようにしている。
【0036】
したがって、運転中における吸気口(17)への空気の流入は阻害されることなく、圧縮機(11)や凝縮器(12)は放熱ファン(13)の回転によって充分に放熱作用がおこなわれるとともに、フード部(32)によって前方へ漏れ出る騒音を遮音することができ、使用者は騒音を抑制した快適な温度環境の中で休息や睡眠をとることができるものである。
【0037】
また、冷却ユニット(2)を使用しないときには、前記と同様に弾性力を利用して遮音フード(31)を回動し、そのフード部(32)をユニット前面に近接して沿うように移動させ、前記図9のように、吸気口(17)を閉塞するものであって、これにより、フィルター(18)への埃の付着を抑制でき、外観的にも遮音フード(31)が透明体であるので、フィルター(18)部の視認とともにキャビン空間に突出することがなく、使用者への圧迫感をなくすことができる。
【0038】
そしてまた、遮音フード(31)は、枢支軸(34)による回動を大きくして、例えば、図13に示すように、前記吸気口(17)を開放させる回動状態以上の角度、例えば、閉塞時に比して90度まで回動させることで、前記凸条(35)と凹溝(37)(37′)との凹凸係合を外すとともにロック解除溝(38)を設けるようにすれば、冷却ユニット(2)の嵌入孔(36)から枢支軸(34)を抜いて上方に持ち上げることで、冷却ユニット(2)本体から取り外すことができるものであり、清掃や点検修理の際の作業が煩雑にならず容易におこなうことができる。
【0039】
なお、本実施例においては、遮音フード(31)の下端縁を温調室(25)の前面に開口させた吹き出し風路(28)および戻り風路(29)の近傍まで延出させており、前記下端縁にはフード部(32)のほぼ全幅に亙って前方に突出する凸片(39)を形成している。そして、前記図9に示すように、遮音フード(31)で吸気口(17)を閉塞状態にした際には、前記下端縁に形成した凸片(39)が前記各風路(28)(29)の外表面部に近接するように位置することで、前記冷却マット(6)などの被冷却体や延長ダクトの接続管部が冷却ユニット(2)の吹き出し風路(28)および戻り風路(29)に接続できないようにしている。
【0040】
この構成によれば、遮音フード(31)が機械室(9)の吸気口(17)を閉塞している状態にあるときは、冷却マット(6)などの接続管が冷却ユニット(2)の吹き出し風路(28)や戻り風路(29)に取り付けることができないので、吸気口(17)を閉塞したまま運転することで放熱不足による冷却ユニット(2)への負荷を増大するなどの弊害を生じることがないとともに、使用時における注意を喚起することができる。
【0041】
上記実施例では、冷却ユニット(2)に対して遮音フード(31)を回動方式で取り付けるようにしたが、本発明はこれに限るものではなく、例えば、図14に示すように、前記と同様のフード部(32′)を形成した遮音フード(31′)の側面部(33′)の一部に水平の長穴からなるガイド溝(40)を穿設し、これに対向する冷却ユニット(2)の側壁部に水平のレール凸条(41)を設けることによって、遮音フード(31′)を機械室(9)の前後方向に摺動可能にし、吸気口(17)からの離間寸法を変更して開放または閉塞状態に保持するようにしてもよく、遮音フード(31′)の着脱についても上記実施例と同様の方式でおこなえばよい。
【0042】
前記実施例では、遮音体を遮音フード(31)(31′)として説明したが、遮音体構成としてはこれに限るものではなく、例えば、運転席(3)と後部キャビン(4)の平面図である前記図2に示すように、運転席(3)と後部キャビン(4)との間を断熱効果を有するカーテン(43)で区画するとともに、シート状の遮音板(44)として、仮眠用キャビンである後部キャビン(4)の冷却ユニット(2)の機械室(9)の吸気口(17)や吹き出し風路(28)側に仮眠空間(45)と仕切るように配置するようにしてもよい。
【0043】
そして、後部キャビン(4)の背面図である図15に示すように、後部キャビン(4)の天井面と下面には、ガイド保持部材(46a)(46b)を設け、遮音板(44)の上下部分を前記ガイド保持部材(46a)(46b)の受け部に嵌着させて取り付けるようにすれば、この遮音板(44)によって、運転中の冷却ユニット(2)の機械室(9)などから発生する振動音や作動音などの仮眠空間(45)への漏洩を遮断することができ、マット(6′)上に横臥した使用者(A)に対して、騒音を抑制した快適な睡眠空間を提供することができる。
【0044】
前記遮音板(44)には、冷気の吹き出し用風路(28)と戻り風路(29)用の開口(44a)(44b)を形成し、この開口(44a)(44b)に前記吹き出し用風路(28)と戻り風路(29)に連続して取り付けた長手方向に屈曲自在な蛇腹形状などのフレキシブル管(47a)(47b)の先端を接続することで、風路を仮眠空間(45)側と連通させており、このようにフレキシブル管(47a)(47b)を用いれば、冷却ユニット(2)と遮音板(44)との風路の組み付け作業を容易におこなうことができるものであり、特に、前記吹き出し用のフレキシブル管(47a)の先端を遮音板(44)の開口からさらに仮眠空間(45)内へ延出させて取り付けるようにすれば、その先端の角度を変えることによって仮眠空間(45)内への風向きを任意の方向に設定することができる。
【0045】
このとき、冷却ユニット(2)からの吹き出し風路(29)は、戻り風路(29)に対して後部キャビン(4)内の仮眠空間(45)における前記断熱カーテン(43)から離間した側、すなわち後部側に配置するようにする。このように配置することによって、吹き出し風路(28)から吹き出された冷気は、後部キャビン(4)の背面に比較して断熱性の小さい断熱カーテン(43)から漏洩することを抑制し、後部キャビン(4)内全体に均一に行き渡らせることができる。
【0046】
また、図16に示すように、遮音板(44′)を簾状に形成して、その上端部を後部キャビン(4)の天井部に取り付け、巻き上げ、あるいは、破線で示すように、引き下ろすことにより、仮眠空間(45)と冷却ユニット(2)との間を遮音するようにしてもよい。
【0047】
さらに他の実施例について説明する。冷却ユニット(2)は、前述のように、車体底板(4a)、すなわち後部キャビン(4)の床面上に架台(42)を介して保持されているが、本実施例においては、図17に示すように、架台(42′)の高さを30〜40cm程度高くし、その上に冷却ユニット(2)を載置するようにしている。そして、遮音板(44)の下方部における前記冷却ユニット(2)の底部位置に対応する部分を冷却ユニット(2)の前面の近傍まで凹陥させて凹陥部(48)を形成し、その下端を車体底板(4a)まで至るようにしている。
【0048】
上記構成により、後部キャビン(4)内に横臥した使用者(A)の足下部分を、前記凹陥部(48)に入れることも可能となり、仮眠空間をより広く使用することができ、快適性が向上する。
【0049】
なお、上記各構成における冷却対象物としての前記冷却マット(6)は、内部の空洞内に冷気を導入することにより、その上部や内部に入る人体を冷却するものであるが、冷却対象物はこれに限るものではなく、前記マット(6′)のように、その形態や設置スペースから、冷却ユニット(2)と冷却対象物とが一体化できない構成のものであればよい。
【0050】
また、上記各実施例については冷却ユニット(2)で冷気を生成し、これを冷却対象物である冷却マット(6)側に吹き出す構成を説明したが、前記冷気とは逆に暖気を生成し、この暖気に吹き出しにより対象物を加温するようにしてもよく、その場合には、特に図示しないが、前記冷凍サイクル(10)における圧縮機(11)の上流側と下流側とを連結するように四方弁を設け、冷媒流路を切り換えることで前記蒸発器(16)を高温側の熱交換器である凝縮器として使用し、この高温となった蒸発器(16)による暖気を吹き出すようにすればよい。
【0051】
そしてまた、上記各実施例においては、トラックなどの車内で使用する温度調節装置(1)について説明したが、本発明は、前記車載用に限らず、家庭における個人用や病院用としても活用できるものであり、屋外用としても広く展開して使用できるものである。そして、これらの対象物から電源は電池に限らず交流電源を使用するものでもよい。
【符号の説明】
【0052】
1 温度調節装置 2 冷却ユニット 3 運転席
4 後部キャビン 5 蓄電池 6 冷却マット
7 側板 9 機械室 10 冷凍サイクル
11 圧縮機 12 凝縮器 13 放熱ファン
16 蒸発器 17 吸気口 18 フィルター
19 排気口 25 温調室 26 循環ファン
27 露受け樋 28 吹き出し風路 29 戻り風路
30 空気温センサー 31、31′ 遮音フード 32、32′ フード部
33、33′ 側面部 34 枢支軸 35 凸条
36 嵌入孔 37、37′ 凹溝 38 ロック解除溝
39 凸片 42、42′ 架台 44、44′、44″ 遮音板
44a、44b 開口 45 仮眠空間 46a、46b ガイド保持部材
47a、47b フレキシブル管 48 凹陥部
A 使用者

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電池により駆動電力を供給される圧縮機と凝縮器と蒸発器とを環状に連結して冷凍サイクルを形成し、
この冷凍サイクル中の前記蒸発器を循環ファンおよび吹き出し風路と戻り風路とを有する断熱壁体で形成された温調室内に収納するとともに
前記圧縮機と凝縮器とこれらを冷却する放熱ファンとを機械室内に配設した温度調節ユニットを運転席後部の仮眠用キャビン内に取り付け、
前記蒸発器により生成された冷気あるいは暖気を前記仮眠用キャビン内または運転席、あるいはその双方に吹き出して温度調節するとともに、
前記仮眠用キャビンと温度調節ユニットとの間の少なくとも前記機械室における放熱のための吸気口を遮音体で覆うようにした
ことを特徴とする温度調節装置。
【請求項2】
機械室の仮眠用キャビン側に開口させた吸気口を遮音フードで覆うようにしたことを特徴とする請求項1記載の温度調節装置。
【請求項3】
遮音フードを吸気口の全体を覆う平板状の遮音部分とその両側に設けた枢支部とから形成し、回動によって吸気口を開放または閉塞状態に保持することを特徴とする請求項2記載の温度調節装置。
【請求項4】
遮音フードを吸気口の全体を覆う平板状の遮音部分とその両側に設けた摺動保持部とから形成し、機械室前方への摺動によって吸気口を開放または閉塞状態に保持することを特徴とする請求項2記載の温度調節装置。
【請求項5】
機械室と温調室とを上下方向に区画して配置し、吸気口を閉塞状態にした場合の遮音フードの端縁を温調室側へ延出させることで、温度調節ユニットに接続される被冷却体や延長風路管などの接続管部の吹き出し風路および戻り風路用開口部への取り付けを阻害するようにしたことを特徴とする請求項3または4記載の温度調節装置。
【請求項6】
機械室を温調室の上方に配置し、遮音フードの下端縁を温調室側へ延出させたことを特徴とする請求項5記載の温度調節装置。
【請求項7】
遮音フードの移動量を大きくした状態で、温度調節ユニットから遮音フードを取り外すことができるロック解除部を設けたことを特徴とする請求項3または4記載の温度調節装置。
【請求項8】
仮眠用キャビンの天井面と下面にガイド保持部材を設け、遮音体を板体としてその上下を前記ガイド保持部材に嵌着することで取り付けたことを特徴とする請求項1記載の温度調節装置。
【請求項9】
遮音体を簾状にしてその上端部を仮眠用キャビンの天井部に取り付け、巻き上げあるいは引き下ろしにより仮眠用キャビンと温度調節ユニットとの間を遮音するようにしたことを特徴とする請求項1記載の温度調節装置。
【請求項10】
仮眠用キャビンと温度調節ユニットとの間を遮音体で仕切るとともに、前記遮音体に冷気あるいは暖気の吹き出し用風路と戻り風路用の開口を形成し、この開口に前記吹き出し用風路と戻り風路の先端部を接続して風路を仮眠用キャビン側と連通させるようにしたことを特徴とする請求項1あるいは8記載の温度調節装置。
【請求項11】
遮音体の開口に接続される吹き出し風路と戻り風路の内、少なくとも吹き出し風路から遮音体の開口までの連結ダクトを屈曲自在管で形成したことを特徴とする請求項10記載の温度調節装置。
【請求項12】
温度調節ユニットの底面位置を仮眠用キャビンの底面より上方に配置し、遮音体の下方部の前記温度調節ユニットの底部に対応する位置を温度調節ユニット前面の近傍まで凹陥させてその下端を仮眠用キャビンの底面まで至らせたことを特徴とする請求項1記載の温度調節装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2010−184694(P2010−184694A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−35570(P2009−35570)
【出願日】平成21年2月18日(2009.2.18)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(502285664)東芝コンシューマエレクトロニクス・ホールディングス株式会社 (2,480)
【出願人】(503376518)東芝ホームアプライアンス株式会社 (2,436)
【Fターム(参考)】