説明

温湯消毒装置

【課題】温湯消毒装置の温湯消毒槽における温水の温度を制御するにあたり、スピーディで精度の高い温度制御を可能にする。
【解決手段】種籾を温水に浸して消毒する温湯消毒槽3と、温湯消毒された種を冷水に浸して冷却する冷却槽4を備え、処理予定の種籾を所定量に分割して収納した複数の種収納容器を所定間隔を存して配置するように構成されたコンベア搬送装置を設け、前記複数の種収納容器に収納した種籾の所定時間の温湯消毒を連続的に行い、温湯消毒終了後、冷却槽に順次移送された複数の種収納容器を冷却槽内に漬けたままコンベア搬送装置の搬送方向に沿って順次移動させることで前記複数の種収納容器に収納した種籾の所定時間の冷却を連続的に行うように構成した温湯消毒装置1と、種籾投入部に投入した処理予定の種籾を、前記種収納容器に所定量に分割して排出する種籾袋詰め装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、種籾などの種を温水に浸して消毒する温湯消毒装置に関する。
【背景技術】
【0002】
種籾などを温水に浸して消毒する温湯消毒装置が知られている(例えば、特許文献1〜4参照)。この種の温湯消毒装置は、温水が入った温湯消毒槽と、冷水が入った冷却槽とを備えており、例えば、種籾を温湯消毒する場合、容器に収納した種籾を、60℃の温水に10分間浸した後、20℃以下の冷水に浸して速やかに冷却する。温湯消毒後に冷却を行う理由は、可及的速やかに種籾を元の状態に戻し、発芽率の低下などを回避するためである。このような温湯消毒方法においては、発芽率の低下を避けつつ、十分な消毒効果を得るために、温水温度、冷水温度、温水浸漬時間、冷水浸漬時間などを厳密に管理することが要求される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3691664号公報
【特許文献2】特許第3595954号公報
【特許文献3】特許第3448773号公報
【特許文献4】特開2004−290011号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来の温湯消毒装置では、温湯消毒槽内の温水温度が低下した場合、温湯消毒槽内の温水を加温しているが、単に加温するだけでは、スピーディで精度の高い温度制御を行うことができないという問題があった。
例えば、温度が低下した温水をスピーディに適正温度に戻すには急速な加温が必要である。
また、急速に加温すると、適正温度を越えて過度な高温状態になる可能性があるため、加温速度を抑える必要があり、スピーディな温度制御が困難となる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の育苗施設は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、種籾を温水に浸して消毒する温湯消毒槽と、温湯消毒された種を冷水に浸して冷却する冷却槽を備え、処理予定の種籾を所定量に分割して収納した複数の種収納容器を所定間隔を存して配置するように構成されたコンベア搬送装置を設け、該コンベア搬送装置の搬送動作により、前記複数の種収納容器を温湯消毒槽内に漬けたままコンベア搬送装置の搬送方向に沿って順次移動させることで前記複数の種収納容器に収納した種籾の所定時間の温湯消毒を連続的に行い、温湯消毒終了後、冷却槽に順次移送された複数の種収納容器を冷却槽内に漬けたままコンベア搬送装置の搬送方向に沿って順次移動させることで前記複数の種収納容器に収納した種籾の所定時間の冷却を連続的に行うように構成した温湯消毒装置と、種籾投入部に投入した処理予定の種籾を、前記種収納容器に所定量に分割して排出する種籾袋詰め装置を備えたことを特徴とする。このようにすると、大量の種籾を一挙に温湯消毒槽に入れることなく、小分けにした種籾を温湯消毒槽に順次入れることができ、その結果、温湯消毒槽における急激な温度変化を抑えて厳密な温度管理が可能になる。また、種籾を小分けにすることにより、中心部まで温水を速やかに浸透させ、処理温度の均一化が図れる。
また、前記温湯消毒装置は、温湯消毒槽内の温水を加温する温水加温手段と、温湯消毒槽内の温水温度を検出する温水温度検出手段と、前記温水温度検出手段の検出値によって前記温湯消毒槽内の温水温度が適正温度となるように、温水加温手段を制御する制御手段と、温湯消毒槽内を移動する種収納容器に向けて温水を噴出する温水噴出手段とを備え、前記温水加温手段は、温湯消毒槽の底部に配管される熱交換パイプを備え、前記温水噴出手段は、温湯消毒槽内の温水をポンプを介して循環させて循環パイプに所定間隔を存して設けた複数の噴出口から温水を噴出することを特徴とする。このようにすると、このようにすると、熱交換方式によって、温湯消毒槽内の温水を均一かつ速やかに加温できる。さらに、温水を籾収納容器に向けて噴出するので、中心部まで温水を浸透させることができるだけでなく、温水撹拌作用により槽内の温水温度を均一化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】温湯消毒装置の全体側面図である。
【図2】温湯消毒装置の全体平面図である。
【図3】温湯消毒槽を断面として示す温湯消毒装置の全体正面図である。
【図4】冷却槽を断面として示す温湯消毒装置の全体背面図である。
【図5】温湯消毒槽から冷却槽への移送部分を示す拡大側面図である。
【図6】搬送装置を示す拡大断面図である。
【図7】温湯消毒槽の温度制御システムを示すブロック図である。
【図8】温湯消毒槽及び冷却槽の温度制御システムを示す概念図である。
【図9】温湯消毒施設における作業の流れを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
次に、本発明の実施形態について、図面に基づいて説明する。図1〜図4において、1は種籾の消毒を行う温湯消毒装置であって、該温湯消毒装置1は、移動自在な台車フレーム2、該台車フレーム2のステップ上に連設される温湯消毒槽3及び冷却槽4、台車フレーム2の梁部に設けられる搬送装置5などを備えて一体的に構成されている。
【0008】
温湯消毒槽3及び冷却槽4は、いずれも上方が開口した水槽であり、温湯消毒槽3には、60℃程度の温水が入れられ、冷却槽4には、17℃〜20℃程度の冷水が入れられる。本実施形態では、吊り紐付きの網袋からなる籾収納袋6(温水や冷水の流入を許容する種収納容器)に4kg程度の種籾を収納し、これを温湯消毒槽3に約10分間浸した後、冷却槽4で約7分間冷却することにより、種籾の消毒処理を行う。尚、本実施形態では、台車フレーム2上に温湯消毒槽3及び冷却槽4を連設するにあたり、温湯消毒槽3及び冷却槽4を台車フレーム2の一側方にオフセットすることにより、台車フレーム2の他側方に作業ステップ7を確保している。
【0009】
図1〜図5に示すように、搬送装置5は、両槽3、4の上方に亘って設けられるチェーンコンベアであり、チェン伝動機構8aを介して搬送用モータ8で駆動される駆動スプロケット9と、複数の従動スプロケット10と、駆動スプロケット9及び従動スプロケット10に懸回される無端状の搬送チェーン11と、該搬送チェーン11に所定間隔を存して連結される複数のハンガー12とを備えて構成され、搬送用モータ8の駆動に応じて、複数のハンガー12を平面視長円状の搬送経路に沿って低速(40分で一周する程度の速度)で移動させる。ハンガー12の移動速度は、処理する材料に応じて調整できるようにすることが好ましい。例えば、うるち米の種籾を約10分間温湯処理する場合、毎分300mm程度の移動速度とし、他の種を温湯処理する場合、その適正温湯処理時間に応じて移動速度を増減させる。
【0010】
ハンガー12の上端部は、ハンガーブラケット13を介して搬送チェーン11に連結されている。ハンガーブラケット13は、ハンガー12の吊持荷重を支えるガイドローラ14を備えると共に、支軸15を介してハンガー12を前後揺動自在に支持している。また、ハンガー12の下端部は、逆T字状に形成され、その両端部に、籾収納袋6を吊り下げるフック12aが設けられている、尚、図5に示す符号16の部材は、ガイドローラ14が転動するローラレールであり、平面視長円状に形成されている。
【0011】
上記のように構成される搬送装置5は、温湯消毒槽3の手前側でハンガー12(フック12a)に引っ掛けられた籾収納袋6を、温湯消毒槽3内及び冷却槽4内を経由し、冷却槽4の後方まで搬送する。つまり、ハンガー12に吊持された籾収納袋6内の種籾は、搬送装置5の搬送動作に応じて、温湯消毒槽3内を所定時間(約10分)かけて移動することにより温湯消毒処理され、次いで、冷却槽4内に移送され、冷却槽4内を所定時間(約7分)かけて移動することにより冷却処理される。
【0012】
本実施形態の搬送装置5は、籾収納袋6を温湯消毒槽3から冷却槽4に移送する際や、冷却槽4から槽外へ移送する際に、籾収納袋6の移動速度を搬送装置5の搬送速度(搬送チェーン速度)よりも速くする移送補助手段が設けられている。このようにすると、温湯消毒槽3から冷却槽4への移送時間や、冷却槽4から槽外への移送時間を短縮できるので、同じ籾収納袋6でも、温水(又は冷水)から先に出る部分と、後から出る部分の時間差を可及的に小さくし、籾収納袋6内における処理温度のばらつきを抑えることができる。
【0013】
本実施形態の移送補助手段は、ハンガー12の上端部移動軌跡に固定状に設けられた角度調整ローラ17(固定部)であり、ハンガー12の上端部を角度調整ローラ17に当接させることにより、ハンガー12の下端側を搬送下流側に強制的に揺動させる。このようにすると、テコの原理を利用した比較的簡単な構成により、籾収納袋6の搬送速度を速めることができる。尚、本実施形態では、温湯消毒槽3及び冷却槽4の終端部に、籾収納袋6の移送をガイドする傾斜ガイド3a、4aが形成される。
【0014】
次に、温湯消毒槽3及び冷却槽4に設けられる設備について、図3、図4、図7及び図8を参照して説明する。温湯消毒槽3には、温湯消毒槽3内を移動する籾収納袋6に向けて下方から温水を噴出する温水噴出手段と、温湯消毒槽3内の温水を加温する温水加温手段と、温湯消毒槽3内の温水を減温する温水減温手段と、温湯消毒槽3内の温水温度を検出する温水温度検出手段と、温水加温手段及び温水減温手段を制御する制御手段と、温湯消毒槽3内に温水を補給する温水補給手段と、温湯消毒槽3から溢れた温水を処理するオーバーフロー処理手段とが設けられている。
【0015】
本実施形態の温水噴出手段は、温湯消毒槽3内の温水をフィルタ18を介して吸入する吸入パイプ19と、吸入した温水を循環パイプ20に送るポンプ21と、循環パイプ20に所定間隔を存して設けられる複数の噴出口22とを備えて構成されている。そして、循環パイプ20は、籾収納袋6の移動方向に沿って配置され、複数の噴出口22から上方の籾収納袋6に向けて温水を噴出させるので、籾収納袋6の中心部まで温水を浸透させることができるだけでなく、温水撹拌作用により槽内の温水温度を均一化することができる。
【0016】
本実施形態の温水加温手段は、温湯消毒槽3の底部に配管される熱交換パイプ23と、該熱交換パイプ23に高温水を供給するボイラ24と、熱交換パイプ23に供給する高温水の流量を調整する比例制御弁25とを備えて構成されている。このようにすると、熱交換方式によって、温湯消毒槽3内の温水を均一かつ速やかに加温できるだけでなく、比例制御弁25による精度の高い加温調整が可能になる。
【0017】
本実施形態の温水減温手段は、温湯消毒槽3の上部から冷水を追加供給する穴開きの冷水補給パイプ26と、該冷水補給パイプ26に供給する冷水の流量を調整する比例制御弁27とを備えて構成されている。このようにすると、比較的簡単な構成で温水の減温が可能になるだけでなく、比例制御弁27による精度の高い減温調整が可能になる。
【0018】
本実施形態の温水温度検出手段は、温湯消毒槽3内に配置される温度センサ28であり、温度センサ28の検出温度は制御手段に入力される。本実施形態の制御手段は、PID制御機能や温度調整計を備えるコントローラ29で構成され、温湯消毒槽3内の温水温度が適正温度となるように、温度センサ28の検出温度に応じて、温水加温手段(比例制御弁25)及び温水減温手段(比例制御弁27)の制御を行う。このようにすると、温湯消毒槽3内の温水が加温調整されるだけでなく、減温調整されるので、スピーディで精度の高い温度制御が可能になる。尚、温水加温手段及び温水減温手段の制御方式は、PID制御に限らず、任意の制御方式を適用できる。
【0019】
本実施形態の温水補給手段は、温湯消毒槽3内に配管された温水補給パイプ30と、該温水補給パイプ30の温水供給経路に介在する手動バルブ(図示せず)とを備えて構成され、該手動バルブの開閉操作に応じて、温湯消毒槽3内への温水補給が行われる。また、本実施形態のオーバーフロー処理手段は、温湯消毒槽3の上端縁部に設けられ、孔31aを介して温湯消毒槽3と連通する樋31と、樋31に繋がる排水パイプ32とを備えて構成されている。また、本実施形態では、常にオーバーフローが生じるように、温湯消毒槽3内に温水又は冷水を補給することにより、温湯消毒槽3内に浮遊するゴミを樋31及び排水パイプ32を介して排出するようにしている。
【0020】
冷却槽4には、冷却槽4内を移動する籾収納袋6に向けて下方から冷水を噴出する冷水噴出手段と、冷却槽4内の冷水を冷却する冷水冷却手段と、冷却槽4内に冷水を補給する冷水補給手段と、冷却槽4から溢れた冷水を処理するオーバーフロー処理手段とが設けられている。
【0021】
本実施形態の冷水噴出手段は、冷却槽4内の冷水をフィルタ33を介して吸入する吸入パイプ34と、吸入した冷水を循環パイプ35に送るポンプ36と、循環パイプ35に所定間隔を存して設けられる複数の噴出口37とを備えて構成されている。そして、循環パイプ35は、籾収納袋6の移動方向に沿って配置され、複数の噴出口37から上方の籾収納袋6に向けて冷水を噴出させるので、籾収納袋6の中心部まで冷水を浸透させることができるだけでなく、冷水撹拌作用により槽内の冷水温度を均一化することができる。
【0022】
本実施形態の冷水冷却手段は、温湯消毒槽3内の温水をフィルタ33を介して吸入する吸入パイプ38と、吸入した冷水を冷却する冷却装置(チラー)39と、冷却された冷水を冷却槽4内に戻す冷水還元パイプ40とを備えて構成されている。このようにすると、冷却槽4内の冷水を冷却装置39で積極的に冷却できるので、水道水の水温変化に影響を受けないだけでなく、籾収納袋6の投入に伴う大きな温度変化にも速やかに対応し、冷水を適正な温度に維持できる。
【0023】
本実施形態の冷水補給手段は、冷却槽4内に配管された冷水補給パイプ41と、該冷水補給パイプ41の冷水供給経路に介在する手動バルブ(図示せず)とを備えて構成され、該手動バルブの開閉操作に応じて、冷却槽4内への冷水補給が行われる。また、本実施形態のオーバーフロー処理手段は、冷却槽4の上端縁部に設けられ、孔42aを介して冷却槽4と連通する樋42と、樋42に繋がる排水パイプ43とを備えて構成されている。また、本実施形態では、常にオーバーフローが生じるように、冷却槽4内に冷水を補給することにより、冷却槽4内に浮遊するゴミを樋42及び排水パイプ43を介して排出するようにしている。
【0024】
尚、本実施形態の温湯消毒装置1においては、温湯消毒槽3の上部をカバー44で覆い、温湯消毒槽3から立ち上がる湯気の拡散を防止すると共に、排気ダクト45を介して、カバー44内の湯気を排気している。カバー44は、ハンガー12の搬送方向を向くスリット44aを上部に有し、このスリット44aによりハンガー12との干渉を回避している。また、カバー44の作業ステップ7側には、下端部を回動支点(蝶番)として開閉されるドア44bが設けられ、このドア44を開くと、カバー44に形成されるメンテナンス用の開口を介して、温湯消毒槽3内のメンテナンスが可能になる。また、温湯消毒槽3及び冷却槽4の側面には、槽内の状況を確認するためのガラス窓46、47が設けられている。
【0025】
次に、温湯消毒施設における作業の流れについて、図9を参照して説明する。この図に示すように、温湯消毒施設には、籾収納袋6に種籾を詰める種籾袋詰め装置48と、本発明の実施形態に係る温湯消毒装置1と、温湯消毒装置1で温湯消毒された種籾を脱水する脱水処理装置49と、脱水した種籾を除湿する種籾除湿装置50とを備えて構成されている。
【0026】
このように構成される施設で種籾を温湯消毒する場合には、まず、種籾袋詰め装置48の種籾投入部51に種籾を投入する。ここに投入された種籾は揚穀筒52を経由し、ホッパ53の揚上される。ホッパ53の籾排出部には、籾収納袋6を開口状態で引っ掛けるハンガー54が設けられ、ここに引っ掛けた籾収納袋6内に所定量(4kg)の種籾を排出することにより、種籾の袋詰めが行われる。
【0027】
次に、種籾が詰められた籾収納袋6を温湯消毒装置1に運び、搬送装置5の搬送始端位置でハンガー12のフック12aに籾収納袋6を引っ掛ける。この作業は、空のハンガー12が戻ってくる毎に順次繰り返し行われる。ハンガー12に引っ掛けられた籾収納袋6は、搬送装置5の搬送動作に応じて、まず、温湯消毒槽3内を所定時間(約10分)かけて移動することにより温湯消毒処理され、次いで、冷却槽4内に移送され、冷却槽4内を所定時間(約7分)かけて移動することにより冷却処理される。その後、冷却槽4の槽外まで搬送されたら、ハンガー12から籾収納袋6を外す。この作業は、冷却槽4から籾収納袋6が排出される毎に繰り返し行われる。
【0028】
次に、温湯消毒装置1の処理が終わった籾収納袋6を脱水処理装置49に運び、脱水機55に入れて脱水する。脱水が終わった籾収納袋6は、除湿台車56に載せ、種籾除湿装置50に運ぶ。そして、種籾除湿装置50の出芽室(除湿室)57に除湿台車56を搬入し、所定時間の除湿処理をすると、一連の作業が終わる。
【0029】
叙述の如く構成された本実施形態によれば、種を温水に浸して消毒する温湯消毒槽3と、温湯消毒された種を冷水に浸して冷却する冷却槽4とを備える温湯消毒装置1であって、温湯消毒槽3と冷却槽4を連設すると共に、両槽3、4の上方に亘って複数の籾収納袋(種収納容器)6を順次吊持搬送する搬送装置5を設け、該搬送装置5の搬送動作により、複数の籾収納袋6を温湯消毒槽3内から冷却槽4内に亘って順次移動させ、種の温湯消毒及び冷却を連続的に行うので、大量の種籾を一挙に温湯消毒槽3や冷却槽4に入れることなく、小分けにした種籾を温湯消毒槽3や冷却槽4に順次入れることができ、その結果、温湯消毒槽3や冷却槽4における急激な温度変化を抑えて厳密な温度管理が可能になる。また、種籾を小分けにすることにより、中心部まで温水や冷水が速やかに浸透させ、処理温度の均一化が図れる。しかも、籾収納袋6は、温湯消毒槽3内から冷却槽4内に亘って連続的に搬送されるので、作業効率が向上するだけでなく、温水浸漬時間や冷水浸漬時間も厳密に管理できる。
【0030】
また、籾収納袋6を温湯消毒槽3から冷却槽4に移送するとき、籾収納袋6の移動速度を搬送装置の搬送速度よりも速くする移送補助手段を備えるので、温湯消毒槽3から冷却槽4への移送時間を短縮でき、その結果、温湯消毒槽3から冷却槽4へ移る過程で温度処理にばらつきが生じる不都合を回避できる。
【0031】
また、搬送装置5は、籾収納袋6を吊持する揺動自在なハンガー12と、該ハンガー12を横方向に搬送する搬送チェーン11とを備えて構成され、移送補助手段は、ハンガー12の上端側を角度調整ローラ17に当接させることにより、ハンガー12の下端側を搬送下流側に強制的に揺動させるように構成されるので、比較的簡単な構成により、籾収納袋6の搬送速度を速めることができる。
【0032】
また、槽内を移動する籾収納袋6に向けて下方から温水又は冷水を噴出する噴出口22、37を、籾収納袋6の移動方向に沿って複数設けたので、籾収納袋6の中心部まで温水や冷水を浸透させ、温度処理の更なる均一化が図れる。
【0033】
また、温湯消毒槽3内の温水を加温する温水加温手段と、温湯消毒槽3内の温水を減温する温水減温手段と、温湯消毒槽3内の温水温度を検出する温水温度検出手段と、温湯消毒槽3内の温水温度が適正温度となるように、温水加温手段及び温水減温手段を制御する制御手段とを備えるので、温湯消毒槽3内の温水を加温するだけでなく、温水を減温することができ、その結果、スピーディで精度の高い温度制御が可能になる。
【0034】
また、温水加温手段は、温湯消毒槽3内の熱交換パイプ23に高温水を流す構成とし、温水減温手段は、温湯消毒槽3内に冷水を追加供給する構成としたので、熱交換方式によって、温湯消毒槽3内の温水を均一かつ速やかに加温できるだけでなく、比較的簡単な構成で温水の減温が可能になる。
【0035】
また、温湯消毒された種籾を冷水に浸して冷却する冷却槽4を設けるにあたり、該冷却槽4内の冷水を、冷却装置39を介して循環させ、適正な温度に維持するので、水道水の水温変化に影響を受けないだけでなく、籾収納袋6の投入に伴う大きな温度変化にも速やかに対応し、冷水を適正な温度に維持することができる。
【符号の説明】
【0036】
1 温湯消毒装置
2 台車フレーム
3 温湯消毒槽
4 冷却槽
5 搬送装置
6 籾収納袋
12 ハンガー
17 角度調整ローラ
22 噴出口
23 熱交換パイプ
24 ボイラ
25 比例制御弁
26 冷水補給パイプ
27 比例制御弁
28 温度センサ
29 コントローラ
37 噴出口
39 冷却装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
種籾を温水に浸して消毒する温湯消毒槽と、温湯消毒された種を冷水に浸して冷却する冷却槽を備え、処理予定の種籾を所定量に分割して収納した複数の種収納容器を所定間隔を存して配置するように構成されたコンベア搬送装置を設け、該コンベア搬送装置の搬送動作により、前記複数の種収納容器を温湯消毒槽内に漬けたままコンベア搬送装置の搬送方向に沿って順次移動させることで前記複数の種収納容器に収納した種籾の所定時間の温湯消毒を連続的に行い、温湯消毒終了後、冷却槽に順次移送された複数の種収納容器を冷却槽内に漬けたままコンベア搬送装置の搬送方向に沿って順次移動させることで前記複数の種収納容器に収納した種籾の所定時間の冷却を連続的に行うように構成した温湯消毒装置と、種籾投入部に投入した処理予定の種籾を、前記種収納容器に所定量に分割して排出する種籾袋詰め装置を備えた温湯消毒施設。
【請求項2】
前記温湯消毒装置は、温湯消毒槽内の温水を加温する温水加温手段と、温湯消毒槽内の温水温度を検出する温水温度検出手段と、前記温水温度検出手段の検出値によって前記温湯消毒槽内の温水温度が適正温度となるように、温水加温手段を制御する制御手段と、温湯消毒槽内を移動する種収納容器に向けて温水を噴出する温水噴出手段とを備え、前記温水加温手段は、温湯消毒槽の底部に配管される熱交換パイプを備え、前記温水噴出手段は、温湯消毒槽内の温水をポンプを介して循環させて循環パイプに所定間隔を存して設けた複数の噴出口から温水を噴出することを特徴とする請求項1に記載の温湯消毒施設。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−50460(P2012−50460A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−243093(P2011−243093)
【出願日】平成23年11月7日(2011.11.7)
【分割の表示】特願2007−253994(P2007−253994)の分割
【原出願日】平成17年11月30日(2005.11.30)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】