説明

測定装置、位置測定システム、測定方法、較正方法及びプログラム

【課題】光を用いて物体までの距離を測定した測定結果において、所定の対象物に関する測定結果を特定することを可能とすること。
【解決手段】物体までの距離を光の照射によって測定点毎に測定する測定装置であって、測定点毎の距離を表す距離情報と、測定点毎の受光量を表す受光量情報と、を取得する光学式距離測定部と、受光量情報において、光量が閾値を超える測定点を、光源方向に対して多くの入射光を反射する反射面を有する対象物に対応する測定点であると判定する対象判定部と、対象判定部によって判定された測定点の距離に基づいて、自装置の基準点を原点とするローカル座標系における対象物の位置を算出し、当該ローカル座標系における位置と、同一の対象物のグローバル座標系における位置とに基づいて、較正を行う較正ステップと、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光を用いて物体までの距離を測定するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
光学式距離センサの設置位置の較正(キャリブレーション)は、設置位置のグローバル座標が既知のマーク(以下、「較正用マーク」という。)に対して測定を行い、その測定結果を用いて行われている。このとき、光学式距離センサの測定結果のうち、どの部分が較正用マークについての測定結果であるかについては、従来の光学式距離センサは判定できない。そのため、従来は、較正を行う人間(以下、「較正者」という。)が、光学式距離センサの測定結果の中から較正用マークについての測定結果を判別し、光学式距離センサに対して指定を行っていた(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−168472号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のように較正用マーク毎に較正者が光学式距離センサに対して測定結果の指定を行うと、その作業に手間と時間とを要してしまう。そのため、較正作業に要する較正者の人件費や作業時間が増大してしまうという問題があった。また、このような問題は較正作業に限られない。すなわち、光学式距離センサの測定結果のうちどの部分が所定の対象物についての測定結果であるか、光学式距離センサは判定することができない。そのため、光学式距離センサの測定結果の中から所定の対象物についての測定結果を人間の手によって判別する必要があった。
【0005】
上記事情に鑑み、本発明は、光を用いて物体までの距離を測定した測定結果において、所定の対象物に関する測定結果を特定可能とする技術を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、測定範囲内に配置された物体(例えば、実施形態における対象物、較正用マーク10)までの距離を、光を照射することによって複数の測定点毎に測定する測定装置(例えば、実施形態における位置測定装置20、20a)であって、前記測定点毎に測定された距離を表す距離情報と、前記測定点毎に受光された光の光量を表す受光量情報と、を取得する光学式距離測定部(例えば、実施形態における光学式距離測定部201)と、前記受光量情報において、前記光量が所定の閾値(例えば、実施形態における光量閾値ThL)を超える測定点を、光源方向に対して多くの入射光を反射する反射面(例えば、実施形態における反射部101)を有する対象物に対応する測定点であると判定する対象判定部(例えば、実施形態における対象判定部202)と、前記対象判定部によって判定された測定点の距離に基づいて、自装置の基準点を原点とするローカル座標系における前記対象物の位置を算出し、当該ローカル座標系における位置と、同一の対象物のグローバル座標系における位置とに基づいて、較正を行う較正部(例えば、実施形態における較正部203、203a)と、を備える。
【0007】
本発明の一態様は、上記の測定装置であって、前記位置測定部(例えば、実施形態における較正部203a)は、前記対象物のグローバル座標系における位置を測定し、前記較正部は、一の前記光学式距離測定部についての前記較正を行う際に、他の前記光学式距離測定部によって取得された前記距離情報に基づいて測定された前記対象物のグローバル座標系における位置を用いて、前記較正を行うことを特徴とする。
【0008】
本発明の一態様は、上記の測定装置であって、前記対象物判定部は、前記受光量情報において、前記光量が所定の閾値を超える測定点を、光源方向に対して多くの入射光を反射する反射面を有し水平面での断面が円形である対象物に対応する測定点であると判定し、前記較正部(例えば、実施形態における較正部203b)は、前記対象判定部によって判定された測定点の距離に基づいて、前記対象物の前記断面の円の中心位置の水平面上の位置を、自装置の基準点を原点とするローカル座標系で測定し、当該ローカル座標系における位置と、同一の対象物の断面の中心位置の水平面上の位置のグローバル座標系における位置とに基づいて、較正を行うことを特徴とする。
【0009】
本発明の一態様は、上記の測定装置であって、前記測定点は線状に並び、前記較正部は、前記光学式距離測定部の水平面に対する傾きを予め記憶しており、当該傾きの値に基づいて、前記対象物の前記断面の円の中心位置の水平面上の位置を、自装置の基準点を原点とするローカル座標系で測定する、ことを特徴とする。
【0010】
本発明の一態様は、上記の測定装置であって、前記対象物は、垂直方向に伸びる円柱形であり、前記較正部は、前記円柱形の水平面の断面の円の半径を予め記憶しており、当該半径の値に基づいて前記断面の円の中心位置の水平面上の位置を前記ローカル座標系で測定することを特徴とする。
【0011】
本発明の一態様は、上記の測定装置であって、前記対象物は、球形であり、前記較正部は、前記球形の半径を予め記憶しており、当該半径の値に基づいて前記球の中心位置の水平面上の位置を前記ローカル座標系で測定することを特徴とする。
【0012】
本発明の一態様は、上記の測定装置であって、前記測定点は面状に並び、前記較正部は、前記対象判定部によって判定された測定点の集合によって表される形状に基づいて、前記対象物の前記断面の円の中心位置の水平面上の位置を、自装置の基準点を原点とするローカル座標系で測定する、ことを特徴とする。
【0013】
本発明の一態様は、上記の測定装置であって、前記対象物は、円柱形であり、前記較正部は、前記対象判定部によって判定された測定点のうち、前記円柱の天板部分に対応する測定点を選択し、選択された測定点の集合によって表される形状に基づいて、前記対象物の前記断面の円の中心位置の水平面上の位置を、自装置の基準点を原点とするローカル座標系で測定する、ことを特徴とする。
【0014】
本発明の一態様は、上記の測定装置であって、前記対象物は、球形であり、前記較正部は、前記球形の半径を予め記憶しており、前記対象判定部によって判定された測定点のうち距離が最も短い測定点を選択し、選択された測定点から前記測定点へ照射された光の進行方向に前記半径分進んだ位置を前記中心位置と推定し、この推定結果に基づいて、前記対象物の前記断面の円の中心位置の水平面上の位置を、自装置の基準点を原点とするローカル座標系で測定する、ことを特徴とする。
【0015】
本発明の一態様は、上記の測定装置であって、前記対象判定部によって判定された測定点の距離と、前記較正部による較正の結果とに基づいて、前記対象物のグローバル座標系における位置を測定する位置測定部(例えば、実施形態における位置測定部204)をさらに備えることを特徴とする。
【0016】
本発明の一態様は、位置測定システム(例えば、実施形態における位置測定システム1)であって、光源方向に対して多くの入射光を反射する反射面を有する複数の較正用マーク(例えば、実施形態における較正用マーク10)と、複数の測定点に対して光を発し、反射光を受光することによって各測定点の距離を測定し、測定点毎に測定された距離を表す距離情報と、前記測定点毎に受光された光の光量を表す受光量情報と、を取得する光学式距離測定部(例えば、実施形態における光学式距離測定部201)と、前記受光量情報において、前記光量が所定の閾値を超える測定点を、前記較正用マークに対応する測定点であると判定する対象判定部(例えば、実施形態における対象判定部202)と、前記対象判定部によって判定された測定点の距離に基づいて、自装置の基準点を原点とするローカル座標系における前記較正用マークの位置を算出し、当該ローカル座標における位置と、同一の前記較正用マークのグローバル座標系における位置とに基づいて、較正を行う較正部(例えば、実施形態における較正部203、203a)と、を備える。
【0017】
本発明の一態様は、測定範囲内に配置された物体までの距離を、光を照射することによって複数の測定点毎に測定する測定装置(例えば、実施形態における位置測定装置20、20a)が行う測定方法であって、前記測定装置が、前記測定点毎に測定された距離を表す距離情報と、前記測定点毎に受光された光の光量を表す受光量情報と、を取得する光学式距離測定ステップと、前記測定装置が、前記受光量情報において、前記光量が所定の閾値を超える測定点を、光源方向に対して多くの入射光を反射する反射面を有する対象物に対応する測定点であると判定する対象判定ステップと、前記測定装置が、前記対象判定ステップによって判定された測定点の距離に基づいて、自装置の基準点を原点とするローカル座標系における前記対象物の位置を算出し、当該ローカル座標における位置と、同一の対象物のグローバル座標系における位置とに基づいて、較正を行う較正ステップと、を備える。
【0018】
本発明の一態様は、測定範囲内に配置された物体までの距離を、光を照射することによって複数の測定点毎に測定する測定装置(例えば、実施形態における位置測定装置20、20a)としてコンピューターを動作させるためのプログラムであって、前記測定点毎に測定された距離を表す距離情報と、前記測定点毎に受光された光の光量を表す受光量情報と、を取得する光学式距離測定ステップと、前記受光量情報において、前記光量が所定の閾値を超える測定点を、光源方向に対して多くの入射光を反射する反射面を有する対象物に対応する測定点であると判定する対象判定ステップと、前記対象判定ステップによって判定された測定点の距離に基づいて、自装置の基準点を原点とするローカル座標系における前記対象物の位置を算出し、当該ローカル座標における位置と、同一の対象物のグローバル座標系における位置とに基づいて、較正を行う較正ステップと、を前記コンピューターに対して実行させるためのプログラムである。
【0019】
本発明の一態様は、較正方法であって、光源方向に対して多くの入射光を反射する反射面を有する複数の較正用マーク(例えば、実施形態における較正用マーク10)を有する位置測定システム(例えば、実施形態における位置測定システム1)が、複数の測定点に対して光を発し、反射光を受光することによって各測定点の距離を測定し、測定点毎に測定された距離を表す距離情報と、前記測定点毎に受光された光の光量を表す受光量情報と、を取得する光学式距離測定ステップと、前記位置測定システムが、前記受光量情報において、前記光量が所定の閾値を超える測定点を、前記較正用マークに対応する測定点であると判定する対象判定ステップと、前記位置測定システムが、前記対象判定ステップによって判定された測定点の距離に基づいて、自装置の基準点を原点とするローカル座標系における前記較正用マークの位置を算出し、当該ローカル座標における位置と、同一の前記較正用マークのグローバル座標系における位置とに基づいて、較正を行う較正ステップと、を備える。
【0020】
本発明の一態様は、光源方向に対して多くの入射光を反射する反射面を有する複数の較正用マーク(例えば、実施形態における較正用マーク10)を有する位置測定システム(例えば、実施形態における位置測定システム1)としてコンピューターを動作させるためのプログラムであって、複数の測定点に対して光を発し、反射光を受光することによって各測定点の距離を測定し、測定点毎に測定された距離を表す距離情報と、前記測定点毎に受光された光の光量を表す受光量情報と、を取得する光学式距離測定ステップと、前記受光量情報において、前記光量が所定の閾値を超える測定点を、前記較正用マークに対応する測定点であると判定する対象判定ステップと、前記対象判定ステップによって判定された測定点の距離に基づいて、自装置の基準点を原点とするローカル座標系における前記較正用マークの位置を算出し、当該ローカル座標における位置と、同一の前記較正用マークのグローバル座標系における位置とに基づいて、較正を行う較正ステップと、を前記コンピューターに実行させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0021】
本発明では、光源方向に対して多くの入射光を反射する反射面を有している対象物に対応する測定点を、対象判定部が受光量情報に基づいて判定する。そのため、本発明により、光を用いて物体までの距離を測定した測定結果において、所定の対象物に関する測定結果を特定することが可能となる。
【0022】
また、較正部をさらに備えた場合には、較正部が、対象判定部によって判定された測定点の距離に基づいて較正を行う。そのため、従来のように較正者による測定点の指定が不要となり、較正の処理に要する手間や時間を削減することが可能となる。
【0023】
また、較正部が、他の光学式距離測定部によって取得された距離情報に基づいて測定された対象物のグローバル座標系における位置を用いて較正を行うように構成された場合には、全ての対象物(較正用マーク)についてのグローバル座標系における位置を付与する必要が無い。そのため、較正の処理に要する手間や時間をさらに削減することが可能となる。
【0024】
また、対象物の水平面での断面が円形である場合には、較正用マークの設置位置や設置姿勢によらず精度の高い較正を行うことが可能となる。
より具体的には、較正に用いられる対象物の形状が、断面が円形である形状に限定されていることにより、断面における対象物の表面の各点と、断面の中心点との距離が、同一水平面上のどの角度から見ても同じとなる。したがって、較正部は、より精度良く、対象物の断面の中心位置を測定することが可能となる。
【0025】
また、測定点が線状に並び、光学式距離測定部の水平面に対する傾きを予め記憶している構成の場合には、光学式距離測定部の水平面の傾きに応じてより精度良く対象物の断面の中心位置を測定することが可能となる。
【0026】
また、測定点が面状に並ぶ構成の場合には、面状に並んだ複数の測定点の集合によって表される形状に基づいて処理を行うことが可能となるため、より精度良く対象物の断面の中心位置を測定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】第一実施形態における位置測定システムのシステム構成を表すシステム構成図である。
【図2】第一実施形態における位置測定装置の機能構成を表す概略ブロック図である。
【図3】光学式距離測定部の測定点の概略を表す図である。
【図4】光学式距離測定部の観測点の具体例を表す図である。
【図5】対象判定部の判定処理の概略を表す図である。
【図6】較正処理の概略を表す図である。
【図7】位置測定装置が、対象物として較正用マークを検出し較正を行う処理の流れを表すフローチャートである。
【図8】測定面の変形例を表す図である。
【図9】位置測定装置の構成の変形例を表す概略ブロック図である。
【図10】位置測定システムのシステム構成の変形例を表すシステム構成図である。
【図11】位置測定装置の他の設置例を表す概略図である。
【図12】第二実施形態における位置測定装置の機能構成を表す概略ブロック図である。
【図13】第二実施形態における較正部の処理の概略を表す概略図である。
【図14】第三実施形態における位置測定システムのシステム構成を表すシステム構成図である。
【図15】第三実施形態における位置測定装置の機能構成を表す概略ブロック図である。
【図16】較正処理の概略を表す図である。
【図17】較正処理において実行される処理のうち、発光部から較正用マークの中心点までの距離Lを算出する方法の概略を表す図である。
【図18】較正用マークの断面円の直径の条件を表す図である。
【図19】第四実施形態における位置測定システムのシステム構成を表すシステム構成図である。
【図20】較正処理において実行される処理のうち、発光部から較正用マークの中心点までの距離Lを算出する方法の概略を表す図である。
【図21】第五実施形態における位置測定システムのシステム構成を表すシステム構成図である。
【図22】推定方法の概略を表す図である。
【図23】上記の高さ閾値を説明する図である。
【図24】第六実施形態における位置測定システムのシステム構成を表すシステム構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
[第一実施形態]
図1は、第一実施形態における位置測定システム1のシステム構成を表すシステム構成図である。位置測定システム1は、較正用マーク10及び位置測定装置20を備える。図1では、位置測定システム1は、円柱30、直角に並ぶ2つの壁面40を有する空間に設置されている。位置測定装置20は、較正用マーク10についての距離の測定結果に基づいて較正処理を行う。較正処理の実行によって、位置測定装置20は、自装置の設置位置のグローバル座標及び平面上の回転角を算出する。較正処理を終えた位置測定装置20は、算出された自装置の設置位置のグローバル座標及び平面上の回転角に基づいて、測定の対象となる各物体の位置のグローバル座標の値を測定する。なお、図1では較正用マーク10は1つしか表示されていないが、実際には較正用マーク10は位置測定装置20の測定範囲内に複数設置される。
【0029】
較正用マーク10は、位置測定装置20が距離情報を取得する対象となる物体(対象物)の具体例である。較正用マーク10は、反射部101及び支柱部102を備える。反射部101は、少なくとも位置測定装置20から発光された光を受ける部分に設けられ、所定の反射材を用いて構成される。支柱部102は、反射部101を所定の位置に固定する。較正用マーク10は、例えば図1に図示されるように円柱形の形状で構成される。ただし、較正用マーク10の形状は円柱に限られず、例えば球体であっても良いし、四角柱(直方体)であっても良いし、他の形状であっても良い。
【0030】
反射部101が設けられる部分について説明する。図1において、位置測定装置20の発光部211は、床面から高さH3の位置に設けられており、床面から高さH3の平面上に沿って発光する。この場合、反射部101は、例えば図1に示されるように、床面からの高さがH1からH2までの間の範囲であって、位置測定装置20側を向いた部分に設けられる。H1〜H3の値の大小関係は、H1<H3<H2の関係である。ただし、上記説明における反射部101の範囲は、最小限度の範囲にすぎず、上記説明の範囲を超えて広く反射部101が設けられても良い。例えば、較正用マーク10の表面全体が反射部101によって覆われても良い。
【0031】
次に、反射部101に用いられる反射材について説明する。反射部101に用いられる反射材は、通常の物体と比較して、より多くの入射光を光源の方向へ反射する。このような反射材の具体例としては、例えば再帰性反射を行う再帰性反射材がある。
なお、較正用マーク10に限らず、位置測定装置20の処理の対象となる対象物には、上記のように反射部101が設けられる。
【0032】
図2は、第一実施形態における位置測定装置20の機能構成を表す概略ブロック図である。位置測定装置20は、バスで接続されたCPU(Central Processing Unit)やメモリや補助記憶装置や光学式距離センサなどを備え、位置測定プログラムを実行することによって、光学式距離測定部201、対象判定部202、較正部203、位置測定部204を備える装置として機能する。
【0033】
光学式距離測定部201は、発光部及び受光部を備える。光学式距離測定部201は、発光部から光を発してその反射光を受光部によって受光することによって、光を反射した物体までの距離を測定する。光学式距離測定部201は、複数の測定点を有し、測定点毎に、各測定点に対応する物体表面上の観測点までの距離を測定する。観測点とは、発光部から発せられた光と物体表面とが交差する点である。
【0034】
例えば、光学式距離測定部201は、発光部から所定の光線(赤外光やレーザー光など)を各測定点に向けて発光する。各測定点に向けて発光された各光線は、光源から各測定点へ向けた直線の延長上に位置する物体の表面上の交点(観測点)で反射する。光学式距離測定部201は、物体からの反射光を受光部で受光し、発光から受光までの時間及び光の速度に基づいて、各観測点までの距離を測定する。このような光学式距離測定部201の具体例としては、TOF(Time Of Flight)法により距離を行う光学式距離センサ等がある。なお、光学式距離測定部201に適用される技術は、TOF法に限定されない。光学式距離測定部201に適用される技術は、光学式の距離測定を行う技術であればどのような技術であっても良い。光学式距離測定部201は、各測定点に対応する物体から受光された反射光の光量を表す受光量情報と、各測定点において測定された観測点までの距離を表す距離情報とを生成し出力する。
【0035】
対象判定部202は、光学式距離測定部201によって出力される受光量情報に基づいて、複数の測定点の中から、位置測定装置20が測定対象としている物体(対象物)に対応する測定点(以下、「対象測定点」という。)を判定する。位置測定装置20が較正を行う際の対象物は、較正用マーク10である。
【0036】
較正部203は、予め複数の較正用マーク10について、夫々が設置された位置のグローバル座標の値を記憶している。そして、較正部203は、光学式距離測定部201によって出力される距離情報に基づいて、較正処理(キャリブレーション処理)を実行し、自装置の設置位置のグローバル座標及び床面上における回転角(以下、「較正情報」という。)を算出する。ここで、自装置の設置位置とは、後述する位置測定部204が位置測定を行う際の基準となる位置であり、自装置のローカル座標の原点となる位置である。自装置の設置位置とは、より具体的には、例えば光学式距離測定部201の設置位置や、後述するセンサユニット21の設置位置である。
【0037】
位置測定部204は、光学式距離測定部201によって出力される距離情報及び較正部203によって算出される較正情報に基づいて、光学式距離測定部201の各測定点に対応する観測点の位置のグローバル座標の値(以下、「位置情報」という。)を算出する。位置測定部204は、算出された位置情報を、他の装置に対し出力する。
【0038】
図3は、光学式距離測定部201の測定点の概略を表す図である。光学式距離測定部201は、仮想の測定面50を有し、測定面50に配置された各測定点60に対して光線を照射する。そして、光学式距離測定部201は、各測定点60に対して照射された各光と物体の表面との交点(観測点)において反射した光を受光し、各測定点60に対応する観測点の距離を測定する。図3の場合は、測定面50に対し、横一列に複数の測定点50が等間隔に配置される。
【0039】
図4は、光学式距離測定部201の観測点の具体例を表す図である。図4は、図1に表される環境を上方から俯瞰した場合の位置関係を表す。位置測定装置20の光学式距離測定部201は、測定面50の各測定点60に対し、順に光線を照射する。各光線は、光線の延長上に位置する物体の観測点70で反射し、反射光の一部又は全部が光学式距離測定部201に受光される。光学式距離測定部201は、光線の照射位置から各観測点70までの距離を測定する。
【0040】
図5は、対象判定部202の判定処理の概略を表す図である。図5Aは、光学式距離測定部201によって測定された距離情報の具体例を表す図である。図5Bは、光学式距離測定部201によって測定された受光量情報の具体例を表す図である。図5A及び図5Bの測定結果は、いずれも図1及び図4に示された環境における測定結果を表す。
【0041】
対象判定部202は、受光量情報において、予め設定されている光量閾値ThLを超える光量の値を有する測定点を、対象測定点として判定する。受光量情報に関する光量閾値ThLは、対象物の表面に用いられた反射材の反射特性や、光学式距離測定部201によって照射される光線の光量などに応じて予め設定される。上述したように、対象物の表面に用いられた反射材によって反射される光量は、通常の物体で反射される光量に比較して著しく高い。そのため、通常の物体による反射光では取り得ない値であって、且つ、対象物の表面に用いられた反射材による反射光で十分に取り得る値が、光量閾値ThLに設定される。
【0042】
なお、対象判定部202は、受光量情報のみならず、距離情報も用いて対象測定点を判定しても良い。この場合、対象判定部202は、距離情報において、予め設定されている第1閾値ThD1及び第2閾値ThD2の間に距離の値を有する測定点を、対象測定点の候補とする。また、対象判定部202は、受光量情報において、予め設定されている光量閾値ThLを超える光量の値を有する測定点を、対象測定点の候補とする。そして、対象判定部202は、距離情報に基づいて検出された対象測定点の候補と、受光量情報に基づいて検出された対象測定点の候補とを比較し、両方の情報において重複する対象測定点の候補を、最終的に対象測定点として判定する。距離情報に関する第1閾値ThD1及び第2閾値ThD2は、それぞれ対象物が設置される予定の領域と位置測定装置20の設置位置との関係に応じて予め設定される。
【0043】
図1及び図4の環境では、較正用マーク10(対象物)及び円柱30が、同じような距離に位置している。そのため、図5Aの距離情報では、第1閾値ThD1及び第2閾値ThD2の間に距離の値を有する測定点の集合が2組存在する。そのため、距離情報のみによって対象測定点を判定しようとすると、候補1及び候補2が、対象測定点として判定されてしまう。しかし、上述したように、較正用マーク10の表面に用いられた反射材において反射される光の光量は、通常の物体による反射光では取り得ない値である。そのため、図5Bの受光量情報では、光量閾値ThLを超える光量の値を有する測定点の集合は1組しか存在しない。したがって、対象判定部202は、受光量情報のみ、又は、距離情報及び受光量情報を用いて対象を判定することによって、対象物と同じような距離に他の物体が存在するような環境においても、人の手を介することなく対象測定点を判定することが可能となる。
【0044】
図6は、較正処理の概略を表す図である。図6において、縦軸はグローバル座標のY軸(GY)を表し、横軸はグローバル座標のX軸(GX)を表す。また、位置測定装置20の中心から伸びて互いに直交する2本の軸は、それぞれ位置測定装置20のローカル座標のX軸(LX)及びY軸(LY)を表す。位置測定部204は、光学式距離測定部201から出力される距離情報に基づいて、各測定点に対応する観測点の位置のローカル座標の値を取得する。図6の場合、位置測定部204は、二つの較正用マーク(10−1及び10−2)の位置のローカル座標の値を取得する。また、較正部203には、予め各較正用マーク10−1及び10−2のグローバル座標の値が与えられている。そして、較正部203は、各較正用マーク10−1及び10−2のグローバル座標の値及びローカル座標の値に基づいて、自装置の設置位置及び床面上における自装置の回転角を算出する。以上の処理が較正処理である。
【0045】
図7は、位置測定装置20が、対象物として較正用マーク10を検出し較正を行う処理の流れを表すフローチャートである。まず、光学式距離測定部201が、受光量情報及び距離情報を取得する(ステップS101及びステップS102)。次に、対象判定部202が、受光量情報及び距離情報に基づいて、対象物(この場合は較正用マーク10)に対応する測定点を判定する(ステップS103)。そして、較正部203が、対象判定部202によって判定された測定点における距離に基づいて較正を行う(ステップS104)。以上の処理によって、位置測定装置20における較正処理が完了する。この較正処理が完了した後は、位置測定部204は、位置測定装置20の設置位置若しくは回転角度が変更されるか又はグローバル座標の原点が変更されるまでは、各測定点に対応する物体の位置のグローバル座標を測定することが可能となる。
【0046】
以上のように構成された位置測定装置20は、対象物に反射部101が設けられていることを前提として、受光量情報のみ、又は、受光量情報及び距離情報に基づいて、人の手を介することなく対象物に対応する測定点を判定することが可能となる。そのため、位置測定装置20は、判定された測定点の距離に基づいて、対象物の位置や、対象物の表面形状などを測定することが可能となる。
【0047】
また、以上のように構成された位置測定装置20を備える位置測定システム1では、位置測定装置20が較正用マーク10に対応する測定点を、人の手を介することなく判定することが可能となる。そして、位置測定システム1では、判定された測定点の距離に基づいて、較正処理を実行することが可能となる。そのため、従来のように較正者による測定点の指定が不要となり、較正処理に要する手間や時間を削減することが可能となる。
【0048】
<変形例>
光学式距離測定部201の受光部には、発光部から発光される光の反射光を通し他の波長の光を遮断又は減衰させるようなフィルタが設けられてもよい。このように構成されることによって、光学式距離測定部201がより正確に距離情報及び受光量情報を取得することが可能となる。そして、較正部203における較正処理の精度を向上させることが可能となる。
【0049】
較正部203は、受光量情報に基づいて、較正用マーク10の円柱の断面円の中心位置を検出するように構成されても良い。具体的には、較正部203は、受光量情報に基づいて得られる対象測定点の候補の両端(XL及びXR)の測定点におけるグローバル座標の値又はローカル座標の値(以下、「空間座標値」という。)に基づいて、実際の空間における較正用マーク10の断面円の直径を算出する。直径は、測定点XLにおける空間座標値と、測定点XRにおける空間座標値との間の距離に相当する。この距離の半分の値が、半径に相当する。そして、XLとXRとの中間に位置する測定点XCの空間座標から、奥行き方向に半径分進んだ位置が、較正用マーク10の円柱の断面円の中心位置となる。このような処理によって、較正部203は較正用マーク10の円柱の断面円の中心位置を検出する。
【0050】
なお、較正部203が較正用マーク10の円柱の断面円の中心位置を検出する方法は、上記の方法に限定されず、他の方法であっても良い。例えば、較正部203は以下のような方法によっても較正用マーク10の円柱の断面円の中心位置を検出できる。較正部203は、対象測定点と判定された各測定点に対応する各観測点の空間座標値を求め、各観測点の空間座標値を最小自乗法等に基づいて円に近似する。そして、較正部203は、最小自乗法等に基づいて得られた円の中心を、円柱の断面円の中心位置の座標として取得する。
【0051】
図3に示された測定面50の例では、複数の測定点60が横一列に等間隔に配置されているが、測定面50における測定点60の配置は図3の例に限定されない。図8は、測定面50の変形例を表す図である。図8に示されるように、複数の測定点60は、縦方向及び横方向に並べられてもよい。また、各測定点60の横方向の間隔や縦方向の間隔は、一定であってもよいし、各点同士で異なってもよい。
【0052】
図2に示された位置測定装置20の例では、光学式距離測定部201、対象判定部202、較正部203、位置測定部204の全てが一体に構成される例を示しているが、位置測定装置20の構成は図2の例に限定されない。図9は、位置測定装置20の構成の変形例を表す概略ブロック図である。図9に示されるように、位置測定装置20は、例えばセンサユニット21及び位置測定ユニット22の二つの装置で構成されても良い。この場合、センサユニット21は光学式距離測定部201を備え、位置測定ユニット22は対象判定部202と較正部203と位置測定部204とを備える。このように構成された場合、図1に示されるような測定環境にはセンサユニット21のみが設置され、残る位置測定ユニット22は異なる位置に設置されても良い。この場合、図1及び図4における位置測定装置20の位置には、センサユニット21のみが同じような形状で設置されても良い。また、位置測定ユニット22は、パーソナルコンピュータやワークステーション等の情報処理装置において所定の位置測定プログラムを動作させることによって実現されても良いし、専用のハードウェアとして実現されても良い。また、センサユニット21と位置測定ユニット22とは、有線通信又は無線通信によって、距離情報及び受光量情報などの情報を送受信するように構成される。
【0053】
図10は、位置測定システム1のシステム構成の変形例を表すシステム構成図である。上記のように位置測定装置20がセンサユニット21及び位置測定ユニット22に分けて構成される場合、複数のセンサユニット21によって一台の位置測定ユニット22が共有されても良い。この場合、位置測定ユニット22には、複数のセンサユニット21が通信可能に接続される。そして、位置測定ユニット22は、各センサユニット21によって取得された距離情報及び受光量情報に基づいて、各センサユニット21の較正処理を行う。また、位置測定ユニット22は、各センサユニット21における較正処理の結果に基づいて、各センサユニット21の測定範囲において物体の位置の測定を行う。
【0054】
図11は、位置測定装置20の他の設置例を表す概略図である。図1では、位置測定装置20は円柱状の装置として床面に設置されているが、位置測定装置20の形状及び設置位置はこれに限定されない。例えば、図11の場合、位置測定装置20は、半円柱形又は半球形の形状を有し、床面90方向に向けて天井面80に設置される。この場合、床面90には、平面状や球体の較正用マーク10が、反射部101を天井面80方向に向けて設置される。なお、この場合の較正用マーク10は、例えば円形状である。また、この場合、位置測定装置20に対し、予め床面90までの距離(則ち床面90からの高さ)の情報や、位置測定装置20の水平面に対する傾き情報が与えられてもよい。
【0055】
[第二実施形態]
図12は、第二実施形態における位置測定装置20aの機能構成を表す概略ブロック図である。位置測定装置20aは、較正部203に代えて較正部203aを備える点で第一実施形態における位置測定装置20と異なり、他の構成は第一実施形態における位置測定装置20と同様である。
【0056】
較正部203aは、較正用マーク10のグローバル座標の値の全ては記憶していない。較正部203aは、一部又は全部の較正用マーク10のグローバル座標の値を、他の位置測定装置20又は位置測定装置20aから取得することによって較正処理を実行する。
【0057】
図13は、第二実施形態における較正部203aの処理の概略を表す概略図である。まず、図13において、位置測定装置20a−1は、既に較正用マーク10−1及び10−2のグローバル座標の値を取得しており、この値に基づいて較正処理を行う。この後、位置測定装置20a−1の位置測定部204は、較正処理の結果に基づいて、較正用マーク10−3の位置のグローバル座標の値を測定する。次に、位置測定装置20a−2の較正部203aは、位置測定装置20a−1によって測定された較正マーク10−3のグローバル座標の値、及び、予め与えられている較正マーク10−2のグローバル座標の値に基づいて、較正処理を行う。
【0058】
図13では、位置測定装置20aが2台のみ表示されるが、3台以上設置され、位置測定装置20a同士が互いに較正用マーク10のグローバル座標の値を共有してもよい。また、図13では第二実施形態における位置測定装置20aのみが表示されているが、第一実施形態における位置測定装置20が含まれ、位置測定装置20によって測定された較正用マーク10のグローバル座標の値を、他の位置測定装置20aが用いてもよい。
【0059】
また、第二実施形態において、図10に示されるように位置測定ユニット22が共有された場合には、較正部203aは、あるセンサユニット21の測定結果に基づいて得られる較正用マーク10のグローバル座標の値に基づいて、他のセンサユニット21についての較正処理を行ってもよい。
【0060】
このように構成された第二実施形態における位置測定装置20aでは、ある位置測定装置20a又はあるセンサユニット21による測定結果として得られた較正用マーク10のグローバル座標の値に基づいて、他の位置測定装置20a又は他のセンサユニット21に対する較正処理を行うことが可能となる。そのため、複数台の位置測定装置20a又は複数台のセンサユニット21を備える位置測定システム1において、少なくとも一台の位置測定装置20a又はセンサユニット21についての較正処理が実現できるように較正用マーク10の位置のグローバル座標の値を付与することによって、他の較正用マーク10のグローバル座標の値を付与することなく、他の位置測定装置20a及び他のセンサユニット21に対する較正処理を行うことが可能となる。
【0061】
[第三実施形態]
図14は、第三実施形態における位置測定システム1のシステム構成を表すシステム構成図である。位置測定システム1は、較正用マーク10及び複数の位置測定装置20を備える。図14では、位置測定システム1は、円柱30、直角に並ぶ2つの壁面40を有する空間に設置されている。また、図14では、位置測定システム1として2台の位置測定装置(20−1、20−2)が設置されている。複数台の位置測定装置20は、共通の較正用マーク10を用いて較正処理を行う。各位置測定装置20は、較正用マーク10についての距離の測定結果に基づいて較正処理を行う。位置測定装置20には、予め自装置の設置位置の高さ(z)と、X軸方向の回転角(θx)と、Y軸方向の回転角(θy)とが既知の値として与えられている。これらの既知の値は、較正部203bが予め記憶している。自装置の設置位置の高さ及び各回転角は、後述する発光部211の高さ及び各回転角を表す。なお、本実施形態において、Z軸は垂直方向の高さを表し、X軸及びY軸によって表される平面(X−Y平面)が水平面を表す。また、各位置測定装置20の高さ(z)は、必ずしも一致している必要はない。図14の場合は、z1とz2との値が同じであっても良いし異なる値であっても良い。
【0062】
較正処理の実行によって、位置測定装置20は、自装置の設置位置のX−Y平面上のグローバル座標(x,y)及びZ軸を中心とした回転角(θz)を算出する。較正処理を終えた位置測定装置20は、算出された自装置の設置位置のグローバル座標(x,y)及び回転角(θz)に基づいて、測定の対象となる各物体の位置のグローバル座標の値を測定する。なお、図14では較正用マーク10は1つしか表示されていないが、実際には較正用マーク10は各位置測定装置20の測定範囲内に複数設置される。
【0063】
較正用マーク10は、位置測定装置20が距離情報を取得する対象となる物体(対象物)の具体例である。較正用マーク10は、円柱形の形状を有する。そのため、較正用マーク10の断面は円形であり、断面の円の半径は高さによらず一律である。較正用マーク10の表面は、所定の反射材を用いて構成される。なお、所定の反射材は、少なくとも位置測定装置20から発行された光を受ける部分に設けられていれば良い。そのため、較正用マーク10の表面全てが所定の反射材に覆われている必要はない。
【0064】
図15は、第三実施形態における位置測定装置20の機能構成を表す概略ブロック図である。位置測定装置20は、バスで接続されたCPUやメモリや補助記憶装置や光学式距離センサなどを備え、位置測定プログラムを実行することによって、光学式距離測定部201、対象判定部202、較正部203b、位置測定部204を備える装置として機能する。
【0065】
第三実施形態の位置測定装置20における光学式距離測定部201、対象判定部202、位置測定部204は、第一実施形態の位置測定装置20における光学式距離測定部201、対象判定部202、位置測定部204と同じ構成である。そのため、これらの構成についての説明は省略する。なお、第三実施形態の光学式距離測定部201では、図3に表されるように、一つの軸上に複数の測定点50が配置される。図3の場合、測定面50に対し横一列に複数の測定点50が等間隔に配置される。なお、測定点50は必ずしも横一列に配置される必要はなく、斜め方向や縦方向に一列に配置されても良い。また、測定点50は必ずしも等間隔に配置される必要はない。
【0066】
較正部203bは、予め複数の較正用マーク10について、夫々が設置された位置のグローバル座標の値を記憶している。そして、較正部203bは、光学式距離測定部201によって出力される距離情報に基づいて、較正処理(キャリブレーション処理)を実行し、自装置の設置位置のX−Y平面上のグローバル座標(x1,y1)及びX−Y平面上の回転角(θz)を算出する。なお、以下の説明において、グローバル座標(x1,y1)及び回転角(θz)をまとめて「較正情報」という。ここで、自装置の設置位置とは、後述する位置測定部204が位置測定を行う際の基準となる位置であり、自装置のローカル座標の原点となる位置である。自装置の設置位置とは、より具体的には、例えば光学式距離測定部201の設置位置や、後述するセンサユニット21の設置位置である。
【0067】
図16は、較正処理の概略を表す図である。図16において、縦軸はグローバル座標のY軸(GY)を表し、横軸はグローバル座標のX軸(GX)を表す。また、位置測定装置20の中心から伸びて互いに直交する2本の軸は、それぞれ位置測定装置20のローカル座標のX軸(LX)及びY軸(LY)を表す。まず、較正部203bは、光学式距離測定部201から出力される距離情報に基づいて、較正用マーク10−1の中心点を通過する光線に対応する測定点を基準測定点として決定する。このとき、実際に中心点を通過する光線に対応する測定点が存在しない場合には、中心点の最も近くを通過する光線に対応する測定点を基準測定点としても良いし、中心点の最も近くを通過する光線に対応する測定点と2番目に近くを通過する光線に対応する測定点との間に仮想的に基準測定点を設けても良い。次に、較正部203bは、基準測定点に対応する距離情報に基づいて、中心点までのX−Y平面上の距離(L1)を算出する。次に、較正部203bは、中心点までの距離(L1)及び基準測定点の位置に基づいて、較正用マーク10−1の中心点のローカル座標の値を取得する。較正部203bは、同様の処理を較正用マーク10−2に対しても行うことによって、基準測定点の位置と、較正用マーク10−2の中心点までのX−Y平面上の距離L2を求め、中心点のローカル座標の値を取得する。較正部203bには、予め各較正用マーク10−1及び10−2のグローバル座標の値が与えられている。較正部203bは、各較正用マーク10−1及び10−2のグローバル座標の値及びローカル座標の値に基づいて、自装置の設置位置のX−Y平面上のグローバル座標(x,y)及びX−Y平面上の回転角(θz)を算出する。
【0068】
図17は、較正処理において実行される処理のうち、発光部211から較正用マーク10の中心点までの距離Lを算出する方法の概略を表す図である。図17に示されている観測点70は、較正マーク10の表面上に位置する観測点70のうち、発光部211からの距離が最も短い観測点70である。このとき、観測点70と発光部211との間の距離をdとする。図17において、L軸は、発光部211の発光点と、上記の観測点70とを結ぶ直線をX−Y平面に射影してできる線に沿ったものである。観測点70は、発光部211からの距離が最も短い観測点70であるため、発光部211と観測点70とを結ぶ線(光線)の延長上に較正マーク10の中心点があると近似することができる。したがってL軸上に較正用マーク10の中心点があると近似することができる。
【0069】
また、X−Y平面上に伸びる軸であってL軸と垂直な軸を、M軸と呼ぶ。図17において、発光部211は、X軸方向及びY軸方向に傾いている。この傾きによって生じるM軸を中心とした傾きの回転角をθとして表す。発光部211のX軸方向の傾き(θx)及びY軸方向の傾き(θy)は既知であるため、回転角θも既知の値である。また、較正用マーク10の断面の円の半径rは既知の値として予め較正部203bが記憶している。そのため、上記の回転角θ及び半径rに基づいて、r’を算出することが可能となる。また、図17において、L軸は、較正用マーク10の断面となる円の中心を原点としており、原点からのL軸上の距離の大きさを表す。発光部211のL軸の座標値はLである。較正部203bは、このように、発光部211からの距離が最も短い観測点70に基づいて、発光部211から較正用マーク10の中心点までの距離Lを算出する。具体的には、Lの値は以下のような式1によって近似的に表すことができる。
【0070】
【数1】

【0071】
なお、このように較正部203bがLを算出する場合は、自装置の設置位置の高さ(z)の値は必ずしも必要とならない。
【0072】
第三実施形態の位置測定装置20が、対象物として較正用マーク10を検出し較正を行う処理の流れ自体は、図7に表されるフローチャートの通りである。そのため、第三実施形態の位置測定装置20の処理の流れについての説明は省略する。
【0073】
以上のように構成された第三実施形態の位置測定システム1では、共通の較正用マーク10を用いて複数台の位置測定装置20の較正処理を実行することが可能となる。そのため、位置測定装置20毎に専用の較正用マーク10を設置する必要が無くなるため、較正処理に要するコストや作業時間を削減することが可能となる。以下、第三実施形態における効果について詳細に説明する。
【0074】
較正用マークは、較正作業の対象となる光学式距離センサ毎に最適な較正結果が得られるようにその形状や設置位置や設置姿勢が変更されることがあった。例えば、同じ二次元距離センサであっても、設置された高さや、x軸方向及びy軸方向の回転角によって表される姿勢などに応じて、較正用マークの設置位置や設置姿勢が変更されることがある。三次元距離センサの場合も同様である。このように、較正作業の対象となる光学式距離センサ毎に較正用マークの設置位置や設置姿勢などの変更が必要になると、設置された一つの較正用マークを用いて複数の光学式距離センサの較正を行うことはできなかった。このような問題に対し、第三実施形態の位置測定システム1では、較正用マークの設置位置や設置姿勢によらず精度の高い較正を行うことが可能となる。
【0075】
また、以上のように構成された位置測定システム1では、較正部203bが自装置におけるX軸及びY軸を中心とした回転角に応じて較正処理を行う。そのため、位置測定システム1に備えられた位置測定装置20がそれぞれ異なる傾きで設置された場合であっても、共通の較正用マーク10を用いて精度良く較正処理を行うことが可能となる。すなわち、各位置測定装置20の傾きに応じて較正用マーク10を傾かせて設置する必要が無くなる。また、一台の位置測定装置20に着目すると、自装置と較正用マーク10との相対的な傾きに拘わらず、精度良く較正処理を行うことが可能となるという効果がある。
【0076】
また、以上のように構成された位置測定装置20は、対象物の表面に反射材が設けられていることを前提として、受光量情報のみ、又は、受光量情報及び距離情報に基づいて、人の手を介することなく対象物に対応する測定点を判定することが可能となる。そのため、位置測定装置20は、判定された測定点の距離に基づいて、対象物の位置や、対象物の表面形状などを測定することが可能となる。
【0077】
また、以上のように構成された位置測定装置20を備える位置測定システム1では、位置測定装置20が較正用マーク10に対応する測定点を、人の手を介することなく判定することが可能となる。そして、位置測定システム1では、判定された測定点の距離に基づいて、較正処理を実行することが可能となる。そのため、従来のように較正者による測定点の指定が不要となり、較正処理に要する手間や時間を削減することが可能となる。
【0078】
なお、較正用マーク10の断面円の直径の条件について説明する。図18は、較正用マーク10の断面円の直径の条件を表す図である。図18において、観測点n及び観測点n+1は、仮想の観測点である。dは、発光部211から観測点n+1までの距離を表す。θsは、発光部211における角度分解能を表す。すなわち、θsは、発光部211の複数の観測点70のうち、隣接する観測点70それぞれに対して発光点から光線を出した際の、二つの光線の角度を表す。較正用マーク10の表面上に少なくとも1つの観測点70が得られるようにするためには、較正用マーク10の断面円の直径は、少なくともd×tan(θs)以上である必要がある。したがって、較正用マーク10は、このような条件に基づいて設計され設置される必要がある。
【0079】
<変形例>
光学式距離測定部201の受光部には、発光部から発光される光の反射光を通し他の波長の光を遮断又は減衰させるようなフィルタが設けられてもよい。このように構成されることによって、光学式距離測定部201がより正確に距離情報及び受光量情報を取得することが可能となる。そして、較正部203bにおける較正処理の精度を向上させることが可能となる。
【0080】
図15に示された位置測定装置20の例では、光学式距離測定部201、対象判定部202、較正部203b、位置測定部204の全てが一体に構成される例を示しているが、位置測定装置20の構成は図15の例に限定されない。例えば、上述した第一実施形態と同じように、第三実施形態の位置測定装置20は、例えばセンサユニット21及び位置測定ユニット22の二つの装置で構成されても良い(図9参照)。
【0081】
また、第三実施形態の位置測定装置20は、上述した第一実施形態と同じように、複数のセンサユニット21によって一台の位置測定ユニット22が共有されても良い(図10参照)。
また、第三実施形態の較正部203bは、上述した第一実施形態の較正部203aと同じように、較正用マーク10のグローバル座標の値の全ては記憶していないように構成されても良い(図12参照)。
【0082】
[第四実施形態]
図19は、第四実施形態における位置測定システム1のシステム構成を表すシステム構成図である。第四実施形態における位置測定システム1では、較正用マーク10の形状が円柱形ではなく球形となる。図19では、球体の較正用マーク10は天井から吊されている。また、第四実施形態における位置測定装置20は、発光部211から較正用マーク10の中心点までの距離Lを算出する方法が第三実施形態の場合と異なり、他の処理は同じである。そのため、距離Lを算出する方法のみ説明する。なお、球体の較正用マーク10の設置方法は、天井から吊すのではなく、どのような方法が採用されても良い。
【0083】
図20は、較正処理において実行される処理のうち、発光部211から較正用マーク10の中心点までの距離Lを算出する方法の概略を表す図である。図20に示されている観測点70は、較正マーク10の表面上に位置する観測点70のうち、発光部211からの距離が最も短い観測点70である。このとき、観測点70と発光部211との間の距離をdとする。図20において、L軸は、発光部211の発光点と、上記の観測点70とを結ぶ直線をX−Y平面に射影してできる線に沿ったものである。L軸は、較正用マーク10の中心点を通過するように設定される。そのため、較正用マーク10の中心点のZの値は0となる。観測点70は、発光部211からの距離が最も短い観測点70であるため、発光部211と観測点70とを結ぶ線(光線)及びL軸に共通する平面によって較正用マーク10の球体の断面を形成した場合に、その断面上に較正マーク10の中心点があると近似することができる。
【0084】
また、X−Y平面上に伸びる軸であってL軸と垂直な軸を、M軸と呼ぶ。図20において、発光部211は、X軸方向及びY軸方向に傾いており、この傾きによって生じるM軸を中心とした傾きの回転角をθとして表す。発光部211のX軸方向の傾き(θx)及びY軸方向の傾き(θy)は既知であるため、回転角θも既知の値である。また、図20において、発光部211の発光点からL軸上に下ろした垂線とL軸との交点を原点としている。較正用マーク10の中心点のL軸の座標値はLである。また、発光部211のZ軸の座標値はZである。なお、Zの値は、発光部211の高さ(自装置の高さ)から、較正用マーク10の中心点の高さを引いた値である。発光部211の高さ及び較正用マーク10の中心点の高さは、既知の値として予め較正部203bが記憶している。そのため、較正部203bは、Zの値を算出することが可能である。また、較正用マーク10の球体の半径はrであり、rの大きさも予め較正部203bが記憶している。
【0085】
較正部203bは、このように、発光部211からの距離が最も短い観測点70に基づいて、発光部211から較正用マーク10の中心点までの距離Lを算出する。以下、距離Lの具体的な算出法について説明する。
【0086】
図20において、観測点70の座標(a,a)はそれぞれ式2、式3のように表される。
【0087】
【数2】

【数3】

【0088】
較正用マーク10の中心点は、直線z=0と、観測点70を中心とする半径rの円との交点となる。観測点70を中心とする半径rの円は式4のように表される。
【0089】
【数4】

【0090】
したがって、z=0と式4とを連立して解くと、Lの値は式5のように表される。
【0091】
【数5】

【0092】
以上から、Lの値は式6のように表される。
【0093】
【数6】

【0094】
以上のように構成された第四実施形態の位置測定システム1では、球体の形状をした共通の較正用マーク10を用いて複数台の位置測定装置20の較正処理を実行することが可能となる。そのため、位置測定装置20毎に専用の較正用マーク10を設置する必要が無くなるため、較正処理に要するコストや作業時間を削減することが可能となる。
【0095】
また、以上のように構成された第四実施形態の位置測定システム1では、較正部203bが自装置におけるX軸及びY軸を中心とした回転角に応じて較正処理を行う。そのため、位置測定システム1に備えられた位置測定装置20がそれぞれ異なる傾きで設置された場合であっても、共通の較正用マーク10を用いて精度良く較正処理を行うことが可能となる。すなわち、各位置測定装置20の傾きに応じて較正用マーク10の位置を変えて設置する必要が無くなる。また、一台の位置測定装置20に着目すると、自装置と較正用マーク10との相対的な傾きに拘わらず、精度良く較正処理を行うことが可能となるという効果がある。
【0096】
<変形例>
第四実施形態の位置測定装置20は、第三実施形態と同様に変形して構成されても良い。
【0097】
[第五実施形態]
図21は、第五実施形態における位置測定システム1のシステム構成を表すシステム構成図である。第五実施形態における位置測定システム1では、位置測定装置20の測定面が第三実施形態の測定面と異なる。また、測定面が異なることに応じて、較正用マーク10の中心点のローカル座標の値を算出する方法が第三実施形態の場合と異なる。第五実施形態における位置測定システム1のその他の構成及び処理は、第三実施形態と同じである。なお、図21では、位置測定装置20は、半円柱形又は半球形の形状を有し、床面90方向に向けて天井面80に設置される。ただし、第五実施形態において、位置測定装置20の設置位置や形状は図21に示すものに限定されない。
【0098】
以下、測定面と、距離Lを算出する方法とについて説明する。なお、第五実施形態における測定面50の構成は、図8に示されるとおりである。すなわち、第五実施形態の測定面50では、複数の測定点60は二次元の平面上に配置される。図8の場合は、各測定点60は、縦方向及び横方向に等間隔に並べられる。なお、各測定点60の横方向の間隔や縦方向の間隔は、一定であってもよいし、各点同士で異なってもよい。
【0099】
第五実施形態の較正部203bは、較正用マーク10の天板に位置する複数の観測点70において取得された距離情報に基づいて、較正用マーク10の中心点のローカル座標を算出する。具体的には、較正部203bは、天板に位置する複数の観測点70に基づいて、天板の円形の形状を推定する。そして、較正部203bはこの推定結果に基づいて、較正用マーク10の中心点を推定する。
【0100】
第五実施形態の較正部203bが天板の円形の形状を推定する方法はどのように行われても良い。例えば、自装置の設置位置の高さ(z)と、較正用マーク10の天板の高さ(zm)とを既知の値として較正部203bが予め記憶している場合について説明する。この場合、較正部203bは、較正用マーク10上の各観測点70のうち、ローカル座標の高さの値がz−zmに等しい又は近い値を有する観測点70を、天板に位置する観測点70であると推定する。較正部203bは、推定された複数の観測点70のみを、X−Y平面に射影する。そして、較正部203bは、この射影された観測点70によって形成される形状に基づき、最小自乗法などの方法により円形の形状を推定する。
【0101】
また、較正用マーク10の円形の形状の推定は以下のように行われても良い。図22は、推定方法の概略を表す図である。図22の場合、較正部203bには、Z軸方向に複数の値z1〜z4が設定される。較正部203bは、較正用マーク10上の各観測点70の高さがどの値とどの値との間に位置するか判定する。そして、較正部203bは、最も多くの観測点70が位置すると判定された値と値の間(図22の場合は、値z1と値z2との間)に位置する観測点70のみを、X−Y平面に射影する。そして、較正部203bは、この射影された観測点70によって形成される形状に基づき、最小自乗法などの方法により円形の形状を推定する。
【0102】
また、較正用マーク10の円形の形状の推定は以下のように行われても良い。較正部203bは、隣接する二つの観測点70同士のローカル座標の高さの差を算出し、この差が所定の高さ閾値よりも小さい場合に、この二つの観測点70が天板に位置する観測点70であると推定する。較正部203bは、推定された複数の観測点70のみを、X−Y平面に射影する。そして、較正部203bは、この射影された観測点70によって形成される形状に基づき、最小自乗法などの方法により円形の形状を推定する。
【0103】
図23は、上記の高さ閾値を説明する図である。図23において、観測点70−1は、天板と側面との境界線である縁に位置する。観測点70−2は、観測点70−1に隣接し、較正用マーク10の側面に位置する。観測点70−1に対応する光線と観測点70−2に対応する光線とが為す角度は、発光部211における角度分解能θを表す。また、発光部211の高さはzである。また、観測点70−1へ向けた光線とX−Y平面とがなす角はθである。また、発光部211と観測点70−1とのX−Y平面上の距離はdである。ここで、発光部211と観測点70−1とのX−Y平面上の距離と、発光部211と観測点70−2とのX−Y平面上の距離は等しいものと仮定する。そうすると、観測点70−1の高さz1と、観測点70−2の高さz2とはそれぞれ以下のように表される。
【0104】
z1=z―d{tanθ}
z2=z−d{tan(θ+θ)}
【0105】
したがって、観測点70−1と観測点70−2との高さの差Δzは以下のように表される。
【0106】
Δz=d{tan(θ+θ)−tanθ}
【0107】
高さ閾値は、Δzと等しいか、Δzよりも小さい値として設定されることが望ましい。
以上のように構成された第五実施形態の位置測定システム1では、二次元上に配置された観測点70に基づいて距離の測定を行う複数の位置測定装置20において、円柱の形状をした共通の較正用マーク10を用いた較正処理を実行することが可能となる。そのため、位置測定装置20毎に専用の較正用マーク10を設置する必要が無くなるため、較正処理に要するコストや作業時間を削減することが可能となる。
【0108】
<変形例>
第三実施形態の位置測定装置20と、第五実施形態の位置測定装置20とが、共通の較正用マーク10を用いて較正処理を行う様に構成されても良い。また、第五実施形態の位置測定装置20も、第三実施形態と同様に変形して構成されても良い。
【0109】
[第六実施形態]
図24は、第六実施形態における位置測定システム1のシステム構成を表すシステム構成図である。第六実施形態における位置測定システム1では、較正用マーク10の形状が円柱形ではなく球形となる。図24では、球体の較正用マーク10は天井から吊されている。また、第六実施形態における位置測定装置20は、較正用マーク10の中心点のローカル座標の値を算出する方法が第五実施形態の場合と異なり、他の処理は同じである。そのため、較正用マーク10の中心点のローカル座標の値を算出する方法のみ説明する。なお、球体の較正用マーク10の設置方法は、天井から吊すのではなく、どのような方法が採用されても良い。
【0110】
第六実施形態の較正部203bは、較正用マーク10の表面上に位置する観測点70に基づいて、最小自乗法などの方法により球形の形状を推定する。そして、較正部203bは、この推定結果に基づいて、較正用マーク10の中心点のローカル座標を算出する。
【0111】
また、較正部203bは、較正用マーク10の球形の半径を既知の値として予め記憶している場合には、以下のような方法によって較正用マーク10の中心点のローカル座標の値を算出しても良い。較正部203bは、較正用マーク10の表面上に位置する観測点70の中から、最も距離が小さい観測点70のローカル座標を取得する。そして、較正部203bは、このローカル座標から、光線方向に球形の半径分だけ球形の内側に進んだ位置の座標を、中心点のローカル座標として算出する。
【0112】
以上のように構成された第六実施形態の位置測定システム1では、二次元上に配置された観測点70に基づいて距離の測定を行う複数の位置測定装置20において、球形の形状をした共通の較正用マーク10を用いた較正処理を実行することが可能となる。そのため、位置測定装置20毎に専用の較正用マーク10を設置する必要が無くなるため、較正処理に要するコストや作業時間を削減することが可能となる。
【0113】
<変形例>
第四実施形態の位置測定装置20と、第六実施形態の位置測定装置20とが、共通の較正用マーク10を用いて較正処理を行う様に構成されても良い。また、第六実施形態の位置測定装置20も、第三実施形態と同様に変形して構成されても良い。
【0114】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0115】
1…位置測定システム, 10…較正用マーク, 20…位置測定装置(測定装置), 21…センサユニット, 22…位置測定ユニット, 30…円柱, 40…壁面, 50…測定面, 60…測定点, 70…観測点, 80…天井面, 90…床面, 101…反射部, 102…支柱部, 201…光学式距離測定部, 202…対象判定部, 203…較正部, 204…位置測定部, 211…発光部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定範囲内に配置された物体までの距離を、光を照射することによって複数の測定点毎に測定する測定装置であって、
前記測定点毎に測定された距離を表す距離情報と、前記測定点毎に受光された光の光量を表す受光量情報と、を取得する光学式距離測定部と、
前記受光量情報において、前記光量が所定の閾値を超える測定点を、光源方向に対して多くの入射光を反射する反射面を有する対象物に対応する測定点であると判定する対象判定部と、
前記対象判定部によって判定された測定点の距離に基づいて、自装置の基準点を原点とするローカル座標系における前記対象物の位置を算出し、当該ローカル座標系における位置と、同一の対象物のグローバル座標系における位置とに基づいて、較正を行う較正部と、
を備える測定装置。
【請求項2】
前記位置測定部は、前記対象物のグローバル座標系における位置を測定し、
前記較正部は、一の前記光学式距離測定部についての前記較正を行う際に、他の前記光学式距離測定部によって取得された前記距離情報に基づいて測定された前記対象物のグローバル座標系における位置を用いて、前記較正を行うことを特徴とする請求項1に記載の測定装置。
【請求項3】
前記対象物判定部は、前記受光量情報において、前記光量が所定の閾値を超える測定点を、光源方向に対して多くの入射光を反射する反射面を有し水平面での断面が円形である対象物に対応する測定点であると判定し、
前記較正部は、前記対象判定部によって判定された測定点の距離に基づいて、前記対象物の前記断面の円の中心位置の水平面上の位置を、自装置の基準点を原点とするローカル座標系で測定し、当該ローカル座標系における位置と、同一の対象物の断面の中心位置の水平面上の位置のグローバル座標系における位置とに基づいて、較正を行うことを特徴とする、請求項1又は2に記載の測定装置。
【請求項4】
前記測定点は線状に並び、
前記較正部は、前記光学式距離測定部の水平面に対する傾きを予め記憶しており、当該傾きの値に基づいて、前記対象物の前記断面の円の中心位置の水平面上の位置を、自装置の基準点を原点とするローカル座標系で測定する、ことを特徴とする請求項3に記載の測定装置。
【請求項5】
前記対象物は、垂直方向に伸びる円柱形であり、
前記較正部は、前記円柱形の水平面の断面の円の半径を予め記憶しており、当該半径の値に基づいて前記断面の円の中心位置の水平面上の位置を前記ローカル座標系で測定することを特徴とする請求項4に記載の測定装置。
【請求項6】
前記対象物は、球形であり、
前記較正部は、前記球形の半径を予め記憶しており、当該半径の値に基づいて前記球の中心位置の水平面上の位置を前記ローカル座標系で測定することを特徴とする請求項4に記載の測定装置。
【請求項7】
前記測定点は面状に並び、
前記較正部は、前記対象判定部によって判定された測定点の集合によって表される形状に基づいて、前記対象物の前記断面の円の中心位置の水平面上の位置を、自装置の基準点を原点とするローカル座標系で測定する、ことを特徴とする請求項3に記載の測定装置。
【請求項8】
前記対象物は、円柱形であり、
前記較正部は、前記対象判定部によって判定された測定点のうち、前記円柱の天板部分に対応する測定点を選択し、選択された測定点の集合によって表される形状に基づいて、前記対象物の前記断面の円の中心位置の水平面上の位置を、自装置の基準点を原点とするローカル座標系で測定する、ことを特徴とする請求項7に記載の測定装置。
【請求項9】
前記対象物は、球形であり、
前記較正部は、前記球形の半径を予め記憶しており、前記対象判定部によって判定された測定点のうち距離が最も短い測定点を選択し、選択された測定点から前記測定点へ照射された光の進行方向に前記半径分進んだ位置を前記中心位置と推定し、この推定結果に基づいて、前記対象物の前記断面の円の中心位置の水平面上の位置を、自装置の基準点を原点とするローカル標系で測定する、ことを特徴とする請求項7に記載の測定装置。
【請求項10】
前記対象判定部によって判定された測定点の距離と、前記較正部による較正の結果とに基づいて、前記対象物のグローバル座標系における位置を測定する位置測定部をさらに備えることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の測定装置。
【請求項11】
光源方向に対して多くの入射光を反射する反射面を有する複数の較正用マークと、
複数の測定点に対して光を発し、反射光を受光することによって各測定点の距離を測定し、測定点毎に測定された距離を表す距離情報と、前記測定点毎に受光された光の光量を表す受光量情報と、を取得する光学式距離測定部と、
前記受光量情報において、前記光量が所定の閾値を超える測定点を、前記較正用マークに対応する測定点であると判定する対象判定部と、
前記対象判定部によって判定された測定点の距離に基づいて、自装置の基準点を原点とするローカル座標系における前記較正用マークの位置を算出し、当該ローカル座標における位置と、同一の前記較正用マークのグローバル座標系における位置とに基づいて、較正を行う較正部と、
を備える位置測定システム。
【請求項12】
測定範囲内に配置された物体までの距離を、光を照射することによって複数の測定点毎に測定する測定装置が行う測定方法であって、
前記測定装置が、前記測定点毎に測定された距離を表す距離情報と、前記測定点毎に受光された光の光量を表す受光量情報と、を取得する光学式距離測定ステップと、
前記測定装置が、前記受光量情報において、前記光量が所定の閾値を超える測定点を、光源方向に対して多くの入射光を反射する反射面を有する対象物に対応する測定点であると判定する対象判定ステップと、
前記測定装置が、前記対象判定ステップによって判定された測定点の距離に基づいて、自装置の基準点を原点とするローカル座標系における前記対象物の位置を算出し、当該ローカル座標系における位置と、同一の対象物のグローバル座標系における位置とに基づいて、較正を行う較正ステップと、
を備える測定方法。
【請求項13】
測定範囲内に配置された物体までの距離を、光を照射することによって複数の測定点毎に測定する測定装置としてコンピューターを動作させるためのプログラムであって、
前記測定点毎に測定された距離を表す距離情報と、前記測定点毎に受光された光の光量を表す受光量情報と、を取得する光学式距離測定ステップと、
前記受光量情報において、前記光量が所定の閾値を超える測定点を、光源方向に対して多くの入射光を反射する反射面を有する対象物に対応する測定点であると判定する対象判定ステップと、
前記対象判定ステップによって判定された測定点の距離に基づいて、自装置の基準点を原点とするローカル座標系における前記対象物の位置を算出し、当該ローカル座標系における位置と、同一の対象物のグローバル座標系における位置とに基づいて、較正を行う較正ステップと、
を前記コンピューターに対して実行させるためのプログラム。
【請求項14】
光源方向に対して多くの入射光を反射する反射面を有する複数の較正用マークを有する位置測定システムが、複数の測定点に対して光を発し、反射光を受光することによって各測定点の距離を測定し、測定点毎に測定された距離を表す距離情報と、前記測定点毎に受光された光の光量を表す受光量情報と、を取得する光学式距離測定ステップと、
前記位置測定システムが、前記受光量情報において、前記光量が所定の閾値を超える測定点を、前記較正用マークに対応する測定点であると判定する対象判定ステップと、
前記位置測定システムが、前記対象判定ステップによって判定された測定点の距離に基づいて、自装置の基準点を原点とするローカル座標系における前記較正用マークの位置を算出し、当該ローカル座標系における位置と、同一の前記較正用マークのグローバル座標系における位置とに基づいて、較正を行う較正ステップと、
を備える較正方法。
【請求項15】
光源方向に対して多くの入射光を反射する反射面を有する複数の較正用マークを有する位置測定システムとしてコンピューターを動作させるためのプログラムであって、
複数の測定点に対して光を発し、反射光を受光することによって各測定点の距離を測定し、測定点毎に測定された距離を表す距離情報と、前記測定点毎に受光された光の光量を表す受光量情報と、を取得する光学式距離測定ステップと、
前記受光量情報において、前記光量が所定の閾値を超える測定点を、前記較正用マークに対応する測定点であると判定する対象判定ステップと、
前記対象判定ステップによって判定された測定点の距離に基づいて、自装置の基準点を原点とするローカル座標系における前記較正用マークの位置を算出し、当該ローカル座標系における位置と、同一の前記較正用マークのグローバル座標系における位置とに基づいて、較正を行う較正ステップと、
を前記コンピューターに実行させるためのプログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate


【公開番号】特開2012−8114(P2012−8114A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−288332(P2010−288332)
【出願日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】