測定装置、測定方法、タッチプローブおよびキャリブレーションゲージ
【課題】被測定物の凹部を測定できない事態の発生を極力回避することができる測定装置を提供する。
【解決手段】被測定物設置体219と、筐体215に回転自在に設けられているスピンドル217とを具備したヘッド213と、スピンドル217に一体的に設置されるハウジングと測定子61を具備するスタイラス60とを備えハウジングがスピンドル217に設置されたときに測定子61がスピンドル217の回転中心軸Cから離れているタッチプローブ60と、を有し、スピンドル217に設置されている設置済みタッチプローブ60をインデックス位置決めした状態で、筐体215を被測定物設置体219に対して相対的に移動し、被測定物設置体219に設置された設置済み被測定物の形状を測定するように構成されている被測定物の測定装置201である。
【解決手段】被測定物設置体219と、筐体215に回転自在に設けられているスピンドル217とを具備したヘッド213と、スピンドル217に一体的に設置されるハウジングと測定子61を具備するスタイラス60とを備えハウジングがスピンドル217に設置されたときに測定子61がスピンドル217の回転中心軸Cから離れているタッチプローブ60と、を有し、スピンドル217に設置されている設置済みタッチプローブ60をインデックス位置決めした状態で、筐体215を被測定物設置体219に対して相対的に移動し、被測定物設置体219に設置された設置済み被測定物の形状を測定するように構成されている被測定物の測定装置201である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定装置および測定方法に係り、特に、タッチプローブを用いて被測定物を測定するものに関する。
【0002】
また、本発明は、タッチプローブに係り、特に、被測定物の凹面を測定のためのものに関する。
【0003】
また、本発明は、キャリブレーションゲージに係り、特に、タッチプローブを用いて被測定物を測定する前に使用されるものに関する。
【背景技術】
【0004】
従来、図11で示すように、スタイラス401が直線的に延びているタッチプローブ403を用いて、被測定物(たとえばワーク)Wの形状を測定している。
【0005】
しかし、図11に示すタッチプローブ403では、ワークWの凹部W1の形状を測定しようとしてタッチプローブ403を移動すると、タッチプローブ403の測定子405がワークWの凹部W1に当接する前に、スタイラス401の中間部が凹部W1の周辺に存在している凸部W2に接触してしまい、ワークWの凹部W1を測定することができない場合がある。
【0006】
このような不具合を解消するために、図12で示すように、スタイラスの先端側部位が「十」字状になって枝分かれしているものが知られている。これらのスタイラスの各先端側部位407それぞれの先端には、測定子405が配置されている。
【0007】
なお、上記従来の技術に関連する文献としてたとえば特許文献1参照を掲げることができる。
【0008】
また、従来、図11や図12で示すように、タッチプローブを使用して被測定物(たとえばワーク)Wの形状を測定している。
【0009】
なお、図11や図12で示す参照符号W1はワークWの凹部を示しており、参照符号W2はワークWの凸部を示しており、参照符号401はスタイラスを示しており、参照符号403はタッチプローブを示しており、参照符号405(405A,405B)は測定子を示しており、参照符号407(407A,407B)はスタイラス401の先端側部位を示している。
【0010】
また、ワークWの測定をする前に、ワークWの測定精度を向上させるために、半球状の部位(凹部や凸部)を備えたキャリブレーションゲージを用いてキャリブレーションを行っている。
【0011】
なお、上記従来の技術に関連する文献としてたとえば特許文献1参照を掲げることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2006−349411号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかし、図12で示すタッチプローブ403を用いたのでは、スタイラス401の先端側部位(4つの先端側部位のうちの1つの先端側部位)407Aが向いている方向もしくはこの方向と僅かな交差角度で交差している方向でしか、ワークWの凹部W1の測定ができないという問題がある。
【0014】
すなわち、図12で示すタッチプローブ403では、4本の先端側部位407が90°ずつの角度で交差し「十」字状になっている。
【0015】
そして、4本の先端側部位407のうちの1本の先端側部位407A(測定子405A)を図12で示す矢印A12の方向(先端側部位407Aの軸の延伸方向)に移動して、ワークの凹部の測定をするようになっている。このときに、矢印A12の方向とワークWの凹部W1の測定箇所(測定子405Aが当接する箇所)の法線ベクトルの方向とがお互いに一致している。
【0016】
ところで、上記法線ベクトルの方向が図12に矢印A12aで示す方向(矢印A12とは45°程度の角度で交差する方向)になっている場合には、矢印A12aの方向にタッチプローブ403(測定子405A、先端側部位407A)を移動させる必要があり、この移動によって、先端側部位407Aに隣接している先端側部位407Bもしくは先端側部位407C(測定子405Bもしくは測定子405C)が、ワークW(ワークの凹部W1周辺の凸部W2)に接触してしまい、ワークWの凹部W1の測定することができない事態が発生する。
【0017】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、被測定物の凹部を測定できない事態の発生を極力回避することができる測定装置(被測定物の測定装置)および測定方法(被測定物の測定方法)を提供することを目的とする。
【0018】
また、図12で示すタッチプローブ403を用いたのでは、スタイラス401の先端側部位(4つの先端側部位のうちの1つの先端側部位)407Aが向いている方向もしくはこの方向と僅かな交差角度で交差している方向でしか、ワークWの凹部W1の測定ができないという問題がある。
【0019】
すなわち、図12で示すタッチプローブ403では、4本の先端側部位407が90°ずつの角度で交差し「十」字状になっている。
【0020】
そして、4本の先端側部位407のうちの1本の先端側部位407A(測定子405A)を図12で示す矢印A12の方向(先端側部位407Aの軸の延伸方向)に移動して、ワークの凹部の測定をするようになっている。
【0021】
このときに、矢印A12の方向とワークWの凹部W1の測定箇所(測定子405Aが当接する箇所)の法線ベクトルの方向とがお互いに一致している。ところで、上記法線ベクトルの方向が図12に矢印A12aで示す方向(矢印A12とは45°程度の角度で交差する方向)になっている場合には、矢印A12aの方向にタッチプローブ403(測定子405A、先端側部位407A)を移動させる必要があり、この移動によって、先端側部位407Aに隣接している先端側部位407Bもしくは先端側部位407C(測定子405Bもしくは測定子405C)が、ワークW(ワークの凹部W1周辺の凸部W2)に接触してしまい、ワークWの凹部W1の測定することができない事態が発生する。
【0022】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、被測定物の凹部を測定できない事態の発生を極力回避することができるタッチプローブを提供することを目的とする。
【0023】
また、上記従来のキャリブレーションゲージでは、球面である3次元形状の曲面を備えているので、精度の良いキャリブレーションゲージの製作に多くの工数の時間とを要してしまうという問題がある。
【0024】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、精度の良く製作が容易であるキャリブレーションゲージを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0025】
請求項1に記載の発明は、被測定物が設置される被測定物設置体と、筐体と所定の軸を中心にして前記筐体に回転自在に設けられているスピンドルとを具備し、前記筐体が前記被測定物設置体に対して相対的に移動位置決め自在になっているヘッドと、前記スピンドルに一体的に設置されるハウジングと、前記ハウジングから突出しているスタイラス本体部とこのスタイラス本体部の先端に設けられている測定子とを具備するスタイラスとを備え、前記ハウジングが前記スピンドルに設置されたときに、前記スタイラス本体部、前記測定子の少なくともいずれかが、前記スピンドルの回転中心軸から離れているタッチプローブとを有し、前記ハウジングが前記スピンドルに設置されている設置済みタッチプローブを、前記スピンドルを用いてインデックス位置決めした状態で、前記筐体を前記被測定物設置体に対して相対的に移動し、前記被測定物設置体に設置された設置済み被測定物の形状を測定するように構成されている被測定物の測定装置である。
【0026】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の被測定物の測定装置において、キャリブレーションゲージが設置され、前記筐体に対して相対的に移動位置決め自在であるキャリブレーションゲージ設置体を有し、前記設置済み被測定物の形状を前記設置済みタッチプローブで測定する前に、前記キャリブレーションゲージ設置体に設置された設置済みキャリブレーションゲージを用いてキャリブレーションをするように構成されており、前記キャリブレーションゲージは、所定の1平面に所定形状の1本の仮想曲面を描き、この仮想曲線を前記所定の1平面に対して直交する方向に所定の距離だけ移動したときに、前記仮想曲線の軌跡で表される曲面である2次元曲面を、キャリブレーション用曲面として備えており、前記キャリブレーションは、前記設置済みタッチプローブをインデッックス位置決めして、前記キャリブレーションをするように構成されている被測定物の測定装置である。
【0027】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の被測定物の測定装置において、キャリブレーションゲージが設置され、前記ヘッドの筐体に対して相対的に移動位置決め自在であるキャリブレーションゲージ設置体を有し、前記設置済み被測定物の形状を前記設置済みタッチプローブで測定する前に、前記キャリブレーションゲージ設置体に設置された設置済みキャリブレーションゲージを用いてキャリブレーションをするように構成されており、前記タッチプローブのスタイラス本体部は、直線状の基端側部位とこの基端側部位に対して所定の角度で交差している直線状の先端側部位とを備えて「L」字状に形成されており、前記先端側部位の先端に前記測定子が位置しており、前記設置済みタッチプローブでは、前記スピンドルの回転中心軸と前記スタイラス本体部の基端側部位の中心軸とがお互いに一致しており、前記キャリブレーションゲージは、所定の1平面に所定形状の1本の仮想曲面を描き、この仮想曲線を前記所定の1平面に対して直交する方向に所定の距離だけ移動したときに、前記仮想曲線の軌跡で表される曲面である2次元曲面を、キャリブレーション用曲面として備えており、前記設置済み被測定物における所定の一方向をX軸方向とし、このX軸方向に対して直交する所定の一方向をY軸方向とし、前記X軸方向と前記Y軸方向とに直交する所定の一方向をZ軸方向とすると、前記設置済みキャリブレーションゲージは、このキャリブレーション用曲面における前記仮想曲線の移動方向が前記X軸方向になっており、前記キャリブレーションは、前記設置済み被測定物における所定の被測定点を決定し、この所定の被測定点での法線ベクトルにおけるX軸方向とY軸方向とZ軸方向との3軸方向の成分を求め、前記設置済みキャリブレーションゲージにおけるキャリブレーション用曲面内に存在し、法線ベクトルのY軸方向の成分とZ軸方向の成分とが前記所定の被測定点における法線ベクトルのY軸方向の成分とZ軸方向の成分と等しくなる所定の仮測定点を決定し、前記所定の被測定点における法線ベクトルのX軸方向の成分に対応する分だけ前記スピンドルを回転させるとともに、前記法線ベクトルのY軸方向の成分とZ軸方向の成分とで形成される仮法線ベクトルの方向に、前記仮測定点から所定の距離だけ離れているところに前記測定子を位置させることで、前記設置済みタッチプローブを位置決めし、前記測定子を、前記仮法線ベクトルの方向であって前記設置済みキャリブレーションゲージに接近する方向で、前記設置済みキャリブレーションゲージに対して相対的に移動して、前記測定子を前記仮測定点に当接させて行うように構成されている被測定物の測定装置である。
【0028】
請求項4に記載の発明は、被測定物の測定方法において、ハウジングと、このハウジングから突出しているスタイラス本体部とこのスタイラス本体部の先端に設けられている測定子とを具備するスタイラスとを備え、前記スタイラス本体部、前記測定子の少なくともいずれかが、所定の軸から離れているタッチプローブを、前記所定の軸を中心にして前記ハウジングを回動しインデックス位置決めするインデックス位置決め段階と、前記インデックス位置決め段階で前記タッチプローブをインデックス位置決めしてある状態で、前記ハウジングを前記被測定物に対して相対的に移動し、前記被測定物の形状を前記タッチプローブで測定する測定段階とを有する被測定物の測定方法である。
【0029】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の被測定物の測定方法において、前記インデックス位置決め段階で前記ハウジングをインデックス位置決めする前に、キャリブレーションゲージを用いてキャリブレーションをするキャリブレート段階を有し、前記キャリブレーションゲージは、所定の1平面に所定形状の1本の仮想曲面を描き、この仮想曲線を前記所定の1平面に対して直交する方向に所定の距離だけ移動したときに、前記仮想曲線の軌跡で表される曲面である2次元曲面を、キャリブレーション用曲面として備えており、前記キャリブレート段階は、前記所定の軸を中心にして前記ハウジングを回動し前記タッチプローブをインデッックス位置決めし、前記キャリブレーションをする段階である被測定物の測定方法である。
【0030】
請求項6に記載の発明は、請求項4に記載の被測定物の測定方法において、前記インデックス位置決め段階で前記ハウジングをインデックス位置決めする前に、キャリブレーションゲージを用いてキャリブレーションをするキャリブレート段階を有し、前記キャリブレーションゲージは、所定の1平面に所定形状の1本の仮想曲面を描き、この仮想曲線を前記所定の1平面に対して直交する方向に所定の距離だけ移動したときに、前記仮想曲線の軌跡で表される曲面である2次元曲面を、キャリブレーション用曲面として備えており、前記タッチプローブのスタイラス本体部は、直線状の基端側部位とこの基端側部位に対して所定の角度で交差している直線状の先端側部位とを備えて「L」字状に形成されており、前記先端側部位の先端に前記測定子が位置しており、前記タッチプローブでは、前記所定の軸と前記スタイラス本体部の基端側部位の中心軸とがお互いに一致しており、前記被測定物における所定の一方向をX軸方向とし、このX軸方向に対して直交する所定の一方向をY軸方向とし、前記X軸方向と前記Y軸方向とに直交する所定の一方向をZ軸方向とすると、前記キャリブレーションゲージは、このキャリブレーション用曲面における前記仮想曲線の移動方向が前記X軸方向になっており、前記キャリブレーと段階は、前記被測定物における所定の被測定点を決定し、この所定の被測定点での法線ベクトルにおけるX軸方向とY軸方向とZ軸方向との3軸方向の成分を求め、前記キャリブレーションゲージにおけるキャリブレーション用曲面内に存在し、法線ベクトルのY軸方向の成分とZ軸方向の成分とが前記所定の被測定点における法線ベクトルのY軸方向の成分とZ軸方向の成分と等しくなる所定の仮測定点を決定し、前記所定の被測定点における法線ベクトルのX軸方向の成分に対応する分だけ前記スピンドルを回転させるとともに、前記法線ベクトルのY軸方向の成分とZ軸方向の成分とで形成される仮法線ベクトルの方向に、前記仮測定点から所定の距離だけ離れているところに前記測定子を位置させることで、前記設置済みタッチプローブを位置決めし、前記測定子を前記仮法線ベクトルの方向であって前記キャリブレーションゲージ設置体に設置されているキャリブレーションゲージに接近する方向に、前記キャリブレーションゲージ設置体に設置されているキャリブレーションゲージに対して相対的に移動して、前記測定子を前記仮測定点に当接させて前記キャリブレーションをする段階である被測定物の測定方法である。
【0031】
請求項7に記載の発明は、ハウジングと、前記ハウジングから突出しているスタイラス本体部と、前記スタイラス本体部の先端に設けられている測定子とを有し、前記スタイラス本体部、前記測定子の少なくともいずれかが、所定の軸から離れているタッチプローブである。
【0032】
請求項8に記載の発明は、請求項7に記載のタッチプローブにおいて、前記タッチプローブのスタイラス本体部は、直線状の基端側部位とこの基端側部位に対して所定の角度で交差している直線状の先端側部位とを備えて「L」字状に形成されており、前記先端側部位の先端に前記測定子が位置しており、前記所定の軸と前記スタイラス本体部の基端側部位の中心軸とがお互いに一致しているタッチプローブである。
【0033】
請求項9に記載の発明は、所定の1平面に所定形状の1本の仮想曲面を描き、この仮想曲線を前記所定の1平面に対して直交する方向に所定の距離だけ移動したときに、前記仮想曲線の軌跡で表される曲面である2次元曲面を、キャリブレーション用曲面として備えているキャリブレーションゲージである。
【0034】
請求項10に記載の発明は、請求項9に記載のキャリブレーションゲージにおいて、
前記仮想曲線は、半円の円弧を備えて構成されていることを特徴とするキャリブレーションゲージである。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、被測定物の凹部を測定できない事態の発生を極力回避することができるという効果を奏する。
【0036】
また、本発明によれば、精度が良く製作が容易であるキャリブレーションゲージを提供することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の実施形態に係る測定装置の概略構成を示す図であり、(a)は正面図であり、(b)は側面図((a)におけるIB矢視図)である。
【図2】被測定物の自由曲面形状を測定するときの説明図である。
【図3】キャリブレーションゲージを用いたキャリブレーションを説明する図であり、(b)は(a)におけるIIIB矢視図である。
【図4】キャリブレーションケージおよびそのキャリブレーションケージを用いた測定装置のキャリブレーション方法を実施するシステムの構成を示す図である。
【図5】変形例に係るキャリブレーションゲージの斜視図である。
【図6】(a)は変形例に係るキャリブレーションゲージの正面であり、(b)は(a)のおけるVIB矢視図である。
【図7】変形例に係るキャリブレーションゲージを用いたキャリブレーションを説明する図であり、(b)は(a)におけるVIIB−VIIB断面を示す図である。
【図8】変形例に係るキャリブレーションゲージを用いたキャリブレーションを説明する図である。
【図9】図3(a)におけるIX−IX断面を示す図であり、図8で示すキャリブレーションに対応した図である。
【図10】変形例に係るタッチプローブを示す図である。
【図11】タッチプローブを用いて被測定物を測定する場合における従来の態様を示す図である。
【図12】タッチプローブを用いて被測定物を測定する場合における従来の態様を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本発明の実施形態に係る測定装置(被測定物の測定装置)201は、たとえば、工具によってワークWを切削加工する門型工作機械等の工作機械(たとえばCNC3軸加工機)として使用されるものであり、工具(ツール)が交換可能なように構成されている。そして、工具に代えてタッチプローブが装着されることによって、被測定物(たとえば、工具によって自らが加工したワーク)を測定することができるようになっている。なお、測定装置201が、被測定物の測定をもっぱら行う専用機であってもよい。
【0039】
以下、説明の便宜のために、水平な一方向をX軸方向とし、水平な他の一方向であってX軸方向に対して直交する方向をY軸方向とし、X軸方向とY軸方向とに対して直交する方向(上下方向;鉛直方向)をZ軸方向とする。
【0040】
図1で示すように、測定装置201は、ベッド203を備えている。ベッド203両側方(X軸方向の中間部であってY軸方向の両端部)からは一対のコラム205が上方に延出している。一対のコラム205はベッド203に一体的に設けられている。
【0041】
一対のコラム205の上端には、ビーム207が設けられている。ビーム207は一対のコラム205に一体的に設けられており、一対のコラム205とビーム207とで門型の部位が形成されている。
【0042】
ビーム207には、Y軸テーブル209が設けられている。Y軸テーブル209は図示しないリニアガイドベアリングを介してビーム207に支持されており、図4で示すY軸サーボモータ32等のアアクチュエータによって、コンピュータ式数値制御装置(CNC)20の制御の下、ベッド203に対してY軸方向で移動位置決め自在になっている。
【0043】
Y軸テーブル209にはZ軸テーブル(図示せず)が設けられている。Z軸テーブルは図示しないリニアガイドベアリングを介してY軸テーブル209に支持されており、図4で示すZ軸サーボモータ33等のアアクチュエータによって、CNC20の制御の下、Y軸テーブル209に対してZ軸方向で移動位置決め自在になっている。
【0044】
Z軸テーブルには、ヘッド213が設けられている。ヘッド213は筐体215とスピンドル(回転体)217とを備えて構成されている。筐体215はZ軸テーブルに一体的に設けられている。
【0045】
スピンドル217(主軸51)は、筐体215の内側に設けられている。また、スピンドル217は、この中心軸C軸を中心にして筐体215に対して回転するようになっている。なお、C軸はヘッド213(スピンドル217)の中心を通ってZ軸方向に延びている軸である。また、スピンドル217は、CNC20の制御の下、図4で示すサーボモータ37等のアクチュエータによって回転駆動され、また、回転位置決めされるようになっている。
【0046】
サーボモータ37は、いわゆるビルトインタイプ(固定子が筐体215に設けられており、回転子がスピンドル217と一体化しているタイプ)になっており、スピンドル217の繰り返しの回転位置決め精度は、1/10000°(0.36″)程度になっている。
【0047】
ベッド203の上面には、X軸テーブル219が設けられている。X軸テーブル219は図示しないリニアガイドベアリングを介してベッド203に載置されて支持されており、図4で示すX軸サーボモータ31等のアアクチュエータによって、CNC20の制御の下、ベッド203に対してX軸方向で移動位置決め自在になっている。
【0048】
これにより、ヘッド213の筐体215は、X軸テーブル219に対して、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向で相対的に移動位置決め自在になっている。
【0049】
なお、ヘッド213は、X軸テーブル219から離れてX軸テーブル219の上方に位置しており、X軸テーブル219の上にはワーク(被測定物)Wが、図示しない取付具によって一体的に設置されるようになっている。
【0050】
スピンドル217の下端側部位はヘッド213の筐体215の下端から突出しており、スピンドル217の下端に工具が一体的に設置されるようになっている。そして、X軸テーブル219の上にワークWを設置してある状態で、CNC20の制御の下、スピンドル217を回転するとともに、ヘッド213(筐体215)をX軸テーブル219に対して相対的に適宜移動することで、ワークWに切削加工を施すようになっている。加工によって形成される面は、たとえば3次元曲面になる。
【0051】
また、切削加工が終了した後、工具をタッチプローブ60に付け替えて、CNC20の制御の下、スピンドル217を回転位置決めするとともに、ヘッド213(筐体215)をX軸テーブル219に対して相対的に適宜移動することで、ワークWの形状を測定するようになっている。
【0052】
なお、上記加工や測定をする際、ワークWがA軸(X軸と平行な所定の軸)やB軸(Y軸と平行な所定の軸)まわりで回動位置決め自在になっていてもよい。
【0053】
次に、測定装置201の制御システムについて詳しく説明する。
【0054】
図4で示すように、測定装置201の制御システムは、CAD・CAM機10と、コンピュータ式数値制御装置(CNC)20とを備えて構成されている。
【0055】
CAD・CAM機10とCNC20は、RS2324等によるシリアル通信やLAN、インタネット等による通信手段40によって双方向に通信可能に接続されている。なお、CAD・CAM機10とCNC20は、オフラインで、データの授受が行われてもよい。
【0056】
CAD・CAM機10は、専用コンピュータ、あるいは汎用のパーソナルコンピュータである。CAD・CAM機10は、マンマシンインターフェースを含むものであり、コンピュータプログラムを実行することにより、CAD・CAMデータ作成部11と、測定プログラム作成部12と、法線ベクトルデータ抽出部13と、キャリブレーション実行プログラム作成部14を具現化する。
【0057】
CAD・CAMデータ作成部11は、被測定物(加工部)の形状データ、曲面データ(表面データ)、形状データ、曲面データより数値制御用加工プログラムを作成する。
【0058】
測定プログラム作成部12は、被測定物の形状精度測定を実行する形状精度測定プログラムを作成する。形状精度測定プログラムは、被測定物の自由曲面(表面)の任意の座標位置を測定点とし、測定点における被測定物表面の法線ベクトルを示すデータに基づいて、測定点より法線ベクトル方向に所定量オフセットした位置を設定し、そのオフセット位置にタッチプローブの測定子中心が位置するようにタッチプローブを軸移動させ、タッチプローブをオフセット位置より測定点の法線ベクトル方向に移動させてタッチプローブの測定子を被測定物の表面に接近接触させ、オフセット位置より被測定物の表面との接触位置までの移動量あるいはそれと等価の数量値を求める手順を、CNC20が実行可能なコンピュータ言語で記述したものである。
【0059】
形状精度測定プログラムは、被測定物の表面上に複数個の測定点S1、S2、S3…を、直交3軸の座標値(Xs,Ys,Zs)によって、順次、指定し、各測定点S1、S2、S3…における被測定物表面の法線ベクトルを記述している。つまり、形状精度測定プログラムは、被測定物の表面上の測定点S1、S2、S3…を、直交3軸の座標値(Xs,Ys,Zs)を指定し、指定された測定点S1、S2、S3毎に、各測定点S1、S2、S3…における被測定物表面の法線ベクトルデータを有する。
【0060】
測定点S1、S2、S3…における被測定物表面の法線ベクトルは、曲面創成の数式から、X軸,Y軸、Z軸の各軸方向のベクトルi、j、kによって定義する仕方と、測定点S1、S2、S3…における接平面の傾斜角度(たとえば、接平面とXY平面との交差角度)Bと水平方向の角度(たとえば、接平面とXY平面との交差部位である交線とX軸との交差角度)Cとにより定義する仕方がある。ここでは、後者を使用することで、指令フォーマットは、次のように表される。指令フォーマットは、「G***_X**_Y**_Z**_B**_C**」で表される。
【0061】
被測定物が、金型のように、CNC3軸加工機によって自由曲面形状を加工された加工物である場合、法線ベクトルを示すデータ(傾斜角度Bと水平方向の角度C)は、その自由曲面形状の加工のために、CNC3軸加工機で用いられる数値制御用加工プログラムを作成するためのCAD・CAMの曲面データより取得することができる。
【0062】
このことにより、測定プログラム作成部12は、CAD・CAMデータ作成部11で作成されたCAD・CAMの曲面データより、法線ベクトルを示すデータ(傾斜角度Bと水平方向の角度C)を得る。
【0063】
ここで、形状精度測定プログラムによる被測定物の形状精度測定について、図2を参照して説明する。
【0064】
三次元形状測定具として、球状あるいは半球状の測定子61を有するタッチプローブ60を使用し、取得した法線ベクトルを示すデータより、測定点(被測定点)Sにおいて法線ベクトル方向Nsに所定量オフセットしたオフセット位置Psofを設定し、そのオフセット位置Psofに測定子61の中心Tcが位置するように、タッチプローブ60を移動し(測定装置201のX軸テーブル219に設置された被測定物Wに対して、測定装置201のヘッド213(スピンドル217)に設置されたタッチプローブ60を移動し)、タッチプローブ60をオフセット位置Psofより測定点Sの法線ベクトル方向Nsに移動させ、タッチプローブ60の測定子61を被測定物(たとえばワーク)Wの表面に接近接触させる。オフセット位置Psofより被測定物Wの表面との接触位置までの移動量あるいはそれと等価の数量値を求める。
【0065】
測定点Sの設計上の座標値(Xs,Ys,Zs)と、オフセット位置Psofの座標値(Xsof,Ysof,Zsof)は既知値であるから、誤差ゼロ時のオフセット位置Psofと測定点Sとの法線ベクトル方向の距離、すなわち、肉厚方向の数量値は既知値となり、この既知値(測定基準値)と測定値との差値が、直接、自由曲面f上の測定点Sの肉厚方向の形状精度を数量で表すことになる。
【0066】
この差値が予め設定されている誤差許容値以内であるか否の比較演算を行うことにより、測定点S毎に、OK、NGを出力したり、あるいは差値を段階的に分け、誤差レベル(VALUE)0〜Nを出力することができるようになっている。
【0067】
被測定物WがCNC3軸加工機(たとえば、工作機械としても使用される測定装置201)によって自由曲面形状を加工された加工物である場合には、図2に示されているように、タッチプローブ60をCNC3軸加工機の主軸51(スピンドル217)に取り付け、CNC3軸加工機の機上で、CNC3軸加工機のCNC20を用いて自由曲面形状の測定を自動モードで行うことができる。
【0068】
これにより、CNC3軸加工機をBC軸自動オフセット機能(法線ベクトル自動オフセット機能)を備えた面直測定CMM(Coordinate Measuring Machine)として機能させることができる。
【0069】
なお、この形状精度測定は、BC軸自動オフセット機能を備えた面直測定CMM等、直交3軸の軸制御系を有するサーボ制御式の三次元測定専用機でも、同等に行うことができる。
【0070】
CAD・CAM機10の法線ベクトルデータ抽出部13は、測定プログラム作成部12によって作成された形状精度測定プログラムより、各測定点(被測定点)S1、S2、S3…における被測定物表面の法線ベクトルデータを抽出する。
【0071】
測定点Sにおける法線ベクトルが曲面の傾斜角度Bと水平方向の角度Cとにより定義されている場合、法線ベクトルデータ抽出部13は、形状精度測定プログラムの各測定点S1、S2、S3…毎の指令フォーマット(G***_X**_Y**_Z**_B**_C**)より、各測定点S1、S2、S3…の(B**_C**)を抽出する。
【0072】
なお、重複する(B**_C**)については、一つのみが有効になり、同一の(B**_C**)を重複して抽出することがない。
【0073】
なお、測定点S1、S2、S3…における被測定物表面の法線ベクトルを、X軸,Y軸、Z軸の各軸方向のベクトルi、j、kによって定義している場合には、法線ベクトルデータ抽出部13は、X軸,Y軸、Z軸の各軸方向のベクトルi、j、kを抽出する。
【0074】
キャリブレーション実行プログラム作成部14は、キャリブレーション実行プログラムを作成する。キャリブレーション実行プログラムは、法線ベクトルデータ抽出部13が抽出した法線ベクトルデータ(たとえば、B**_C**)毎に、その法線ベクトルデータが示す法線ベクトル方向に関してのみ測定装置のキャリブレーションを実行する指令を記述したものである。
【0075】
キャリブレーション実行プログラムは、図4に示されているように、所定位置(所定座標位置)に設置されたキャリブレーションゲージ(キャリブレーション用ゲージ)100に対してタッチプローブ60の測定子61の中心がキャリブレーションゲージ100の凹球面101に対して、抽出された法線ベクトルデータ(たとえば、B**_C**)毎に、法線ベクトル方向Ncに所定量オフセットしたオフセット位置Pcofに位置するように、タッチプローブ60を移動させ、タッチプローブ60を、オフセット位置Pcofより、X軸、Y軸、Z軸の3軸同期制御(3軸同時制御)によって、法線ベクトル方向Ncに移動させてタッチプローブ60の測定子61をキャリブレーションゲージ100の凹球面101に接近接触させ、オフセット位置Pcofよりキャリブレーションゲージ100の凹球面101との接触位置までの移動量あるいはそれと等価の数量値を求める手順を、CNC20が実行可能なコンピュータ言語で記述したものである。
【0076】
CNC20は、X軸、Y軸、Z軸の3軸同期制御が可能なものであり、入出力部21と、プログラム実行部22と、X軸制御部23と、Y軸制御部24と、Z軸制御部25とを有する。また、CNC20は、C軸制御部27を備えており、C軸制御が可能(スピンドル217を回転位置決め自在)になっている。C軸は、X軸、Y軸、Z軸ともに4軸同期制御が可能になっていてもよいしなっていなくてもよい。
【0077】
プログラム実行部22は、数値制御用加工プログラム、形状精度測定プログラム、キャリブレーション実行プログラムをユーザ指定で実行する。プログラム実行部22は、何れのプログラムを実行しても、X軸制御部23、Y軸制御部24、Z軸制御部25によってX軸指令、Y軸指令、Z軸指令を生成し、これら各軸指令を、X軸サーボモータ31、Y軸サーボモータ32、Z軸サーボモータ33へ出力する。なお、形状精度測定プログラム、キャリブレーション実行プログラムを実行する場合には、上記各軸指令に加えて、C軸制御部27によってC軸指令を生成し、この生成した軸指令を、C軸サーボモータ37へ出力する。
【0078】
X軸サーボモータ31、Y軸サーボモータ32、Z軸サーボモータ33、C軸サーボモータ37の各々には、ロータリエンコーダ等による位置検出器34、35、36、38が接続されている。位置検出器34、35、36は、各軸のサーボモータ31〜33のモータ位置を検出する。位置検出器34、35、36、38のモータ位置信号は、フィードバック式のサーボ制御、形状精度測定、キャリブレーションのための位置信号として、CNC20に入力される。
【0079】
なお、これらの各制御時の位置信号は、X軸、Y軸、Z軸では、各軸に対してリニアセンサを設けることで、リニアセンサの出力信号を用いることもできる。
【0080】
形状精度測定時と、キャリブレーション時には、X軸サーボモータ31、Y軸サーボモータ32、Z軸サーボモータ33によって各軸方向に移動し、C軸サーボモータ37によって回転するCNC3軸加工機の主軸51(スピンドル217)に、工具に代えてタッチプローブ60を取り付ける。タッチプローブ60の測定子61の接触を示すオンオフ信号は、プログラマブルロジックコントローラ(PLC)26を介してCNC20に入力される。
【0081】
タッチプローブ60による形状精度測定のためのキャリブレーションは、CNC20のプログラム実行部22がキャリブレーション実行プログラムを実行することにより行われる。
【0082】
このキャリブレーションは、被測定物の表面上に指定された測定点S1、S2、S3…における被測定物表面より当該被測定物表面の法線ベクトル方向Ncに変位したオフセット位置と測定点S1、S2、S3…の被測定物表面との法線ベクトル方向Ncの距離を計測して表面形状精度を計測する計測装置のキャリブレーションであり、形状精度測定の各測定点S1、S2、S3…における被測定物表面の法線ベクトル方向Ncに関してのみ、キャリブレーションを行う。
【0083】
本実施形態では、キャリブレーションは、半球状の凹球面101を有するキャリブレーションゲージ100を所定の機械座標位置に取り付け(測定装置201のX軸テーブル219上の所定の位置に取り付け)、形状精度測定と同じ機上で行う。
【0084】
このキャリブレーションは、図3で示すように、たとえば、キャリブレーションゲージ100に対してタッチプローブ60の測定子61の中心がキャリブレーションゲージ100の凹球面101の1点(測定点S1、S2、S3…)に対して法線ベクトル方向Ncに所定量オフセットしたオフセット位置Pcofに位置するように、X軸サーボモータ31、Y軸サーボモータ32、Z軸サーボモータ33によって、主軸51と共にタッチプローブ60を移動させるとともに、なお、C軸サーボモータ37でスピンドル217を回転位置決めしておいて、タッチプローブ60をオフセット位置Pcofより前記1点の法線ベクトル方向Ncに移動させてタッチプローブ60の測定子61をキャリブレーションゲージ100の凹球面101に接近接触させ、オフセット位置Pcofよりキャリブレーションゲージ100の凹球面101との接触位置までの移動量あるいはそれと等価の数量値を求めて測定装置201のキャリブレーションを行う。
【0085】
キャリブレーションゲージ100の形状寸法は既知であるから、オフセット位置Pcofよりキャリブレーションゲージ100の凹球面101の任意の1点までの法線ベクトル方向の距離が既知であり、この距離と上述の移動量の測定値の差値を校正差値としてCNC20に取り込み、CNC20による形状精度測定についてチューニングを行う。
【0086】
そして、キャリブレーション結果の保証として、校正差値を反映したキャリブレーションを同様に行い、校正差値が許容値内になるまで、上述のキャリブレーションを繰り返す。
【0087】
このキャリブレーションでは、実際の測定点S1、S2、S3…の法線ベクトル方向と同位相で、ダイレクト方式でキャリブレーションが行われるから、形状精度測定において実際に必要な法線ベクトル方向のキャリブレーションだけが行われ、キャリブレーション点数を不必要に増やすことなく、高い形状精度測定結果を保証するキャリブレーションが、精度よく、短時間で行われることになる。
【0088】
この実施形態で使用されるキャリブレーションゲージ100は、図3に示されているように、半球状の凹球面101を有するすり鉢形状のキャリブレーションゲージである。キャリブレーションゲージ100は凹球面101の開口端側に凹球面101の半径と同じ半径による高さ(軸長)hの円筒部102を凹球面101と同心に有する。キャリブレーションゲージ100は円筒部102の開口端の周りに垂直面(たとえばY軸方向に対して直交している平面)103を有する。
【0089】
このキャリブレーションゲージ100では、オフセット位置Pcofは、何れの法線ベクトル方向のキャリブレーションにおいても、凹球面101の中心点Gcの一点に設定できる。
【0090】
このことにより、オフセット位置Pcofを設定するプログラム記述を簡素化でき、キャリブレーションにおけるタッチプローブ60の総パス長を、凸球面によるキャリブレーションゲージを使用した時より、短くすることができる。このことによっても、キャリブレーションに要する時間を短縮できる。
【0091】
また、凸球面によるキャリブレーションゲージでは、凸球面に対して、タッチプローブ60の球状の測定子61の座りが悪く、測定子61が凸球面に対して滑るような現象が生じ易いが、凹球面101であると、凹球面101に対する測定子61の座りがよくなり、滑りによるタッチプローブ60のキャリブレーション精度の低下がなくなる。
【0092】
オフセット位置Pcofの設定、つまり、キャリブレーションゲージ100の凹球面101の中心点Gcの座標(Xcof、Ycof、Zcof)設定は、タッチプローブ60を用いてCNC20が、Gコードによる内径部の自動心出し(直交2方向アプローチ)のマクロプログラムを、実行することにより、キャリブレーションゲージ100の円筒部102の自動心出しを行うことで、座標値(Xcof、Ycof)を取得し、タッチプローブ60を用いて水平上面103の直交4点のZ軸位置を測定してその平均値より高さh分を差し引きことにより、座標値(Zcof)を取得できる。
【0093】
このことにより、凹球面型のキャリブレーションゲージ100を使用することで、オフセット位置Pcofの設定も容易になり、このことによっても、キャリブレーションに要する時間を短縮できる。
【0094】
また、キャリブレーションゲージ100は、半球状の凹球面101以外に、半球状の凸球面104を有する。また、キャリブレーションゲージ100では、測定点の被測定物の表面が、凹面か、凸面かに応じて、凹球面101と、凸球面104とを使い分けることができる。
【0095】
ここで、測定装置201についてさらに詳しく説明する。
【0096】
測定装置201は、図1で示すように、被測定物設置体(X軸テーブル)219と、ヘッド213とを備えている。
【0097】
被測定物設置体219には、曲面状の外形面(自由曲面;球面等の3次元曲面)を備えた被測定物Wが一体的に設置されるようになっている。
【0098】
ヘッド213は、筐体215と所定の軸(C軸)を中心にして筐体215に回転自在に設けられているスピンドル217とを具備している。筐体215は、被測定物設置体219に対して、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向で相対的に移動位置決め自在になっている。
【0099】
スピンドル217の下端には、タッチプローブ60が設置されるようになっている。タッチプローブ60は、図2等で示すように、ハウジング221とスタイラス223とを備えている。
【0100】
スタイラス223は、細長い棒状のスタイラス本体部225と球状の測定子61とを備えている。スタイラス本体部225は、ハウジング221からたとえば、湾曲、屈曲の少なくともいずれかの態様で突出している。測定子61は、スタイラス本体部225の先端でスタイラス本体部225に一体的に設けられている。
【0101】
ハウジング221がスピンドル217に一体的に設置された状態では、スタイラス223はハウジング221から下方に延出している。また、ハウジング221がスピンドル217に一体的に設置された状態では、スタイラス本体部225、測定子61の少なくともいずれかが、スピンドル217の回転中心軸C1から離れている(オフセットされた位置に存在するように構成されている)。
【0102】
ここで、タッチプローブ60の形態に係る1つ目の態様を例示する(図2参照)。
【0103】
スタイラス本体部225は、細長い円柱状の素材(たとえば、外径に対して高さが5倍から100倍程度に十分大きい円柱状の素材)を、この長手方向の中間部(たとえば中央部)で所定の角度θだけ(たとえば90°)折り曲げて屈曲させることで、直線状の基端側部位227と直線状の先端側部位229とを備えて「L」字状の形態になっている。測定子61は、先端側部位229の先端に設けられている。測定子61の中心は、先端側部位229の中心軸CHの延長線上に位置している。
【0104】
タッチプローブ60をスピンドル217に設置したときには(設置済みタッチプローブでは)、スピンドル217の回転中心軸Cとスタイラス本体部225の基端側部位227の中心軸とがお互いに一致している(スピンドル217の回転中心軸Cの延長線上にスタイラス本体部225の基端側部位227の中心軸が存在している)。
【0105】
また、タッチプローブ60をスピンドル217に設置したときには、スタイラス本体部225の先端側部位229の中心軸CHがスピンドル217の回転中心軸Cとたとえば直交しており、スタイラス本体部225の先端側部位229が、スピンドル217の回転中心軸C(スタイラス本体部225の基端側部位227)から離れる方向に延伸している。
【0106】
上記1つ目の態様は、タッチプローブ60をスピンドル217に設置したときに、スタイラス本体部225の先端側部位229と測定子61とが、スピンドル217の回転中心軸Cから離れている場合の例である。
【0107】
タッチプローブ60の形態に係る2つ目の態様を例示する(図示せず)。
【0108】
スタイラス本体部は、細長い円柱状の素材(たとえば、外径に対して高さが5倍から100倍程度に十分大きい円柱状の素材)を、この長手方向で湾曲させることで、たとえば、半円状の形態になっている。すなわち、スタイラス本体部の中心軸が半円状になっている。
【0109】
タッチプローブをスピンドルに設置したときには、スタイラス本体部の中心軸の基端が、スピンドルの回転中心軸の延長線と交差し、スタイラス本体部の中心軸の先端も、スピンドルの回転中心軸の延長線と交差し、測定子の中心は、スピンドルの回転中心軸の延長線上に存在している。一方、スタイラス本体部の長手方向の中間部が、スピンドルの回転中心軸から離れている。したがって、タッチプローブをスピンドルに設置したときにスピンドルを回転させても、測定子の中心位置は変化せず一定の位置に存在する。一方、タッチプローブをスピンドルに設置したときにスピンドルを回転させると、スタイラス本体部の長手方向での中間部の位置が変化し、スピンドルを1回転させるとスタイラス本体部の中心軸の軌跡は球状になる。
【0110】
上記2つ目態様は、タッチプローブをスピンドルに設置したときに、スタイラス本体部のみが、スピンドルの回転中心軸から離れている場合の例である。
【0111】
タッチプローブの形態に係る3つ目の態様を掲げる(図示せず)。
【0112】
この3つ目の態様は、スタイラス本体部の長さが、上記2つ目の態様よりも短いかもしくは長くなっている。したがって、スタイラス本体部は、たとえば、1/4円状もしくは2/3円状になっている。
【0113】
タッチプローブをスピンドルに設置したときには、スタイラス本体部の中心軸の基端が、スピンドルの回転中心軸の延長線と交差し、スタイラス本体部の基端以外の部位がスピンドルの回転中心軸から離れており、測定子の中心もスピンドルの回転中心軸から離れている。
【0114】
上記3つ目態様は、タッチプローブをスピンドルに設置したときに、スタイラス本体部と測定子とが、スピンドルの回転中心軸から離れている場合の例である。
【0115】
タッチプローブの形態に係る4つ目の態様を例示する(図示せず)。
【0116】
スタイラス本体部は、曲がっておらず、細長い円柱状(たとえば、外径に対して高さが5倍から100倍程度に十分大きい円柱状の素材)に形成されている。測定子は、スタイラス本体部の先端に設けられている。測定子の中心は、スタイラス本体部の中心軸の延長線上に位置している。
【0117】
タッチプローブをスピンドルに設置したときには、スタイラス本体部の中心軸の基端は、スピンドルの回転中心軸の延長線と交差しているが、スタイラス本体部の中心軸は、スピンドルの回転中心軸に対して斜めに延伸し、測定子の中心は、スピンドルの回転中心軸から離れている。したがって、タッチプローブをスピンドルに設置したときにスピンドルを回転させると、スタイラス本体部の位置が変化し、スピンドルを1回転させるとスタイラス本体部の中心軸の軌跡は円錐の側面状になる。
【0118】
上記4つ目態様は、タッチプローブをスピンドルに設置したときに、スタイラス本体部と測定子とが、スピンドルの回転中心軸から離れている場合の例である。
【0119】
なお、上述した1つ目〜3つ目の態様では、スタイラス本体部が「L」字状に屈曲し、もしくは、円弧状に湾曲しているが、他の形状(たとえば「コ」字状)に屈曲していてもよいし、他の形状(たとえば楕円の円弧状)に湾曲していてもよいし、屈曲と湾曲との両方を含んだ態様になっていてもよい。
【0120】
また、上述した1つ目〜4つ目の態様では、スタイラスの本体部が枝別れしておらず、スタイラスの本体部が1本の素材をそのままもしくは屈曲や湾曲させた形態になっており、測定子が1本のスタイラス本体部の先端に1つだけ設けられていることが望ましい。
【0121】
また、測定装置201は、制御装置(たとえばCNC20)の制御の下、ハウジング221がスピンドル217に設置されている設置済みタッチプローブ60を、スピンドル217をインデックス位置決めすることでインデックス位置決めした状態で、ヘッド213の筐体215を被測定物設置体219に対して相対的に移動(X軸方向、Y軸方向、Z軸方向の少なくともいずれかの方向に、自らの姿勢を変えない平行移動)し、被測定物設置体219に設置された設置済み被測定物Wの形状(曲面状の外形面;被測定部)を、設置済みタッチプローブ60で測定するように構成されている。
【0122】
タッチプローブ60は、通常市販されているタッチプローブと同様に、スタイラス223に何ら力が加わっていないときには、スタイラス223がハウジング221に対して所定の位置で所定の姿勢になっている。そして、測定子61が被測定物Wに当接することで、測定子61(スタイラス223)が被測定物Wで押され、スタイラス223の姿勢(測定子61の位置)がハウジング221に対してごく僅かに変位するようになっている。測定装置201は、このごく僅かなスタイラス223の変位のし始めを検出することで、測定子61が被測定物Wに当接したときにおけるタッチプローブ60のハウジング221の位置を求め、測定子61が当接した被測定物Wの部位の位置を求めることができるようになっている。さらに、測定装置201では、測定子61が当接した被測定物Wの部位の位置を複数求めることで、被測定物Wの形状を測定することができるように構成されている。
【0123】
なお、すでに理解されるように、測定装置201では、タッチプローブ60の測定子61を被測定物Wの凹部W1に当接させて、被測定物Wの凹部W1の形状を測定するとき、凹部W1の周辺に存在している部位(凹部W1よりも突出している凸位)W2とスタイラス本体部225との干渉を避けるために、スタイラス本体部225、測定子61の少なくともいずれかをスピンドル217の回転中心軸Cから離してあり、しかも、タッチプローブ60が設置されたスピンドル217をインデックス位置決めするのである(図2、図9等参照)。
【0124】
また、測定装置201には、キャリブレーションゲージ設置体(たとえば被測定物設置体;X軸テーブル)219が設けられている。キャリブレーションゲージ設置体219には、キャリブレーションゲージ100,150(図3、図5等参照)が一体的に設置されるようになっている。キャリブレーションゲージ設置体219は、ヘッド213の筐体215に対して、X軸方向、Y軸方向。Z軸方向で、相対的に移動位置決め自在になっている。
【0125】
そして、測定装置(被測定物の形状測定装置)201は、制御装置(たとえばCNC20)の制御の下、設置済み被測定物Wの形状を設置済みタッチプローブ60で測定する前に、X軸テーブル219に設置された設置済みキャリブレーションゲージ100,150を用いてキャリブレーションをするように構成されている。
【0126】
キャリブレーションゲージ100は、図3で示すように、半球面を備えている場合もあるが、ここで使用するキャリブレーション(変形例に係るキャリブレーション)150は、図5で示すように、2次元曲面を、キャリブレーション用曲面151として備えている。
【0127】
2次元曲面は、所定の1平面に所定形状の1本の仮想曲面を描き、この仮想曲線(始点と終点とを備え自らが交差することなく延びている曲線)を前記所定の1平面に対して直交する方向に直線的に所定の距離だけ移動したときに、前記仮想曲線の軌跡で表される曲面である。2次元曲面として、たとえば、円柱の側面の一部を掲げることができる。
【0128】
前記キャリブレーションゲージ150は、設置済みタッチプローブ60をインデッックス位置決めして、キャリブレーションをするときに使用される。
【0129】
このキャリブレーションでは、設置済みタッチプローブ60の測定子61は、前述したように、スピンドル217の回転中心軸Cから離れて存在している。スピンドル217の回転中心軸Cの延伸方向は、たとえば、前記仮想曲線の移動方向(前記所定の1平面に対して直交する方向;たとえば、X軸方向)に対して交差する方向(たとえば、直交する方向;Y軸方向)に延びている。また、キャリブレーションは、キャリブレーション用曲面151内の所定の点での法線ベクトルの方向に、設置済みタッチプローブ60の測定子61を移動してなされるように構成されている。
【0130】
キャリブレーションについて例を掲げてさらに詳しく説明する。
【0131】
設置済み被測定物Wの被測定点における形状測定(測定装置201を用いた被測定点の位置測定)は、前述したように、被測定点からこの被測定点での法線ベクトルの方向に設置済みタッチプローブ60の測定子61の中心を所定の距離だけ離しておいて、被測定点からこの被測定点の法線ベクトルの方向に設置済みタッチプローブ60の測定子61を移動し、設置済みタッチプローブ60の測定子61を被測定点に接触させて行うよう構成されている。
【0132】
タッチプローブ60のスタイラス本体部225は、前述したように、直線状の基端側部位227とこの基端側部位227に対して所定の角度(たとえば、90°)で交差している直線状の先端側部位229とを備えて「L」字状(「ヘ」字状や「レ」字状であってもよい。)に形成されており、先端側部位229の先端に測定子61が位置している。
【0133】
設置済みタッチプローブ60では、スピンドル217の回転中心軸Cとスタイラス本体部225の基端側部位227の中心軸とがお互いに一致しており、スタイラス本体部225の先端側部位229の中心軸CHがスピンドル217の回転中心軸Cと所定の角度(たとえば、90°)で交差しており、スタイラス本体部225の先端側部位229が、スピンドル217の回転中心軸C(スタイラス本体部225の基端側部位227)から離れる方向に延伸している。
【0134】
設置済み被測定物Wにおける所定の一方向をX軸方向とし、このX軸方向に対して直交する所定の一方向をY軸方向とし、X軸方向とY軸方向とに直交する所定の一方向をZ軸方向とする。設置済みキャリブレーションゲージ150では、このキャリブレーション用曲面151における仮想曲線(2次元曲面で構成されているキャリブレーション用曲面151を形成する仮想曲線)の移動方向がX軸方向になっている。
【0135】
このような条件の下、キャリブレーションが次のようにしてなされるようになっている。
【0136】
まず、設置済み被測定物Wにおける所定の被測定点を決定し、この所定の被測定点での法線ベクトルにおけるX軸方向とY軸方向とZ軸方向との3軸方向の成分を求める。
【0137】
続いて、設置済みキャリブレーションゲージ150におけるキャリブレーション用曲面151内に存在する仮測定点であって、法線ベクトルのY軸方向の成分とZ軸方向の成分とが所定の被測定点(設置済み被測定物Wの所定の被測定点)における法線ベクトルのY軸方向の成分とZ軸方向の成分と等しくなる所定の仮測定点(キャリブレーション用被測定点)を決定する。
【0138】
続いて、設置済み被測定物Wの所定の被測定点における法線ベクトルのX軸方向の成分に対応する分だけスピンドル217(設置済みタッチプローブ60)を回転して、スタイラス本体部225の先端側部位229をインデックス位置決めするとともに、法線ベクトルのY軸方向の成分とZ軸方向の成分とで形成される仮法線ベクトルの方向に、設置済みキャリブレーションゲージ150の仮測定点から所定の距離だけ離れているところに、設置済みタッチプローブ60の測定子61を位置させることで、設置済みタッチプローブ60を位置決めする。
【0139】
続いて、測定子61(スピンドル217)を、仮法線ベクトルの方向であってキャリブレーションゲージ設置体219に設置されているキャリブレーションゲージ(設置済みキャリブレーションゲージ)150に接近する方向に、キャリブレーションゲージ設置体219に設置されているキャリブレーションゲージ150に対して相対的にしかも直線的に移動して、測定子61を仮測定点に当接させる。これによって、キャリブレーションがなされるようになっている。
【0140】
ここで、キャリブレーションゲージ150についてさらに詳しく説明する(図5、図6、図7参照)。
【0141】
キャリブレーションゲージ150の2次元曲面(キャリブレーション用曲面151)を形成している仮想曲線は、第1の半円の円弧153と、この第1の半円の円弧153から離れている第2の半円の円弧155と備えて構成されている。すなわち、キャリブレーションゲージ150のキャリブレーション用曲面151は、第1の円柱側面の半分と、第2の円柱側面の半分とを備えて構成されている。なお、キャリブレーション用曲面151として、凹状の第1の円柱側面の半分、凸上の第2の円柱側面の半分の少なくともいずれかを備えている構成であってもよい。
【0142】
第2の半円の円弧155は、第1の半円の円弧153で形成される半円の外側に存在している所定の点C1(図6(a)参照)を中心点として、第1の半円弧153を180°回動したところに位置している。
【0143】
さらには、第1の半円の円弧153と第2の半円の円弧155とは次に説明するような位置関係になっている。
【0144】
まず、円をこの円の所定の直径で2等分して形成される第1の半円(第1の半円の円弧153の半円)と第2の半円(第2の半円の円弧155の半円)とを得る。第2の半円を第1の半円に対して、前記円が描かれている平面内で前記所定の直径の延伸方向と直交する方向に所定の距離だけ移動して第1の半円から離す。第1の半円から所定の距離だけ離れた第2の半円を前記円が描かれている平面内で第1の半円に対して、前記所定の直径の延伸方向に、前記円の半径よりも大きい所定の距離だけ移動する。このような移動をすることで第1の半円と第2の半円とはお互いが離れた所定の位置関係になる。第1の半円の円弧153と第2の半円の円弧155との位置関係は、上記第1の半円の円弧と工機第2の半円の円弧との関係になっている。
【0145】
そして、第1の半円の円弧153によって、凹状キャリブレーション用曲面157が形成され、第2の半円の円弧155によって、凸状キャリブレーション用曲面159が形成されている。
【0146】
次に、設置済み被測定物Wの被測定点における法線ベクトルのX軸方向の成分に対応する分だけスピンドル217を回転させることについてさらに詳しく説明する。
【0147】
まず、設置済み被測定物Wの被測定点における法線ベクトルが、X軸方向の成分を含んでいない場合について、図7を参照しつつ説明する。なお、図7では、説明の便宜のために、設置済み被測定物Wの被測定点における法線ベクトルが、Z軸方向の成分も含んでいないが、Z軸方向の成分を含んでいても、以下の説明と同様に考えることができる。
【0148】
設置済み被測定物Wの被測定点における法線ベクトルがX軸方向の成分を含んでいない場合には、タッチプローブ60のスタイラス本体部225における先端側部位229の中心軸CHがY軸方向に延伸するように、タッチプローブ60をC軸まわりでインデックス位置決めするとともに、測定子61の中心が、設置済みキャリブレーションゲージ150の第1の半円弧153の中心に位置するように、ヘッド213(設置済みタッチプローブ60のハウジング221)を位置決めする。
【0149】
続いて、設置済みタッチプローブ60をY軸方向に移動して測定子61をキャリブレーションゲージ150(第1の半円弧153のキャリブレーション用曲面151)に当接させて、キャリブレーションを行う。なお、設置済み被測定物Wの被測定点における法線ベクトルが、Z軸方向の成分も含んでいる場合には、設置済みタッチプローブ60をY軸方向とZ軸方向と斜めに(Y軸方向に対して斜めに)直線的に移動してキャリブレーションを行えばよい。
【0150】
次に、設置済み被測定物Wの被測定点における法線ベクトルが、X軸方向の成分を含んでいる場合について、図8、図9を参照しつつ説明する。なお、図8においても図7の場合と同様にして、説明の便宜のために、設置済み被測定物Wの被測定点における法線ベクトルが、Z軸方向の成分も含んでいないが、Z軸方向の成分を含んでいても、図7での説明と同様に考えることができる。
【0151】
図9は、キャリブレーションゲージ100を示す図であるが、説明のために、キャリブレーションゲージ100を被測定物Wとする。被測定物Wにおける被測定点をSWとすると、この被測定点SWにおける法線ベクトルは、X軸方向の成分とY軸方向の成分を有しており、Y軸と角度θAで交差している。
【0152】
図3で示すキャリブレーションゲージ100を用いて、図9で示す被測定点SWのためのキャリブレーションをする場合には、図9で示すように、設置済みタッチプローブ60を矢印(被測定点SWにおける法線ベクトルとは逆向きの矢印)のように移動してキャリブレーションをすることになる。
【0153】
一方、図5や図6で示すキャリブレーションゲージ150を用いて、図9で示す被測定点SWのためのキャリブレーションをする場合には、図8で示すように、設置済みタッチプローブ60を、タッチプローブ60のスタイラス本体部225における先端側部位229の中心軸CHがY軸と角度θAで交差するようにC軸まわりでインデックス位置決めしておいて、矢印(Y軸方向に伸びた矢印とは逆向きの矢印)のように移動してキャリブレーションをすることになる。
【0154】
なお、図8で示す、測定子61の中心とキャリブレーション用曲面151との間の距離は、たとえば、図9で示す、測定子61の中心とキャリブレーション用曲面との間の距離(半球の凹部の半径)と等しくなっているものとする。また、図8で示すキャリブレーションをした後には、図8で示す状態から半時計まわりに角度θAだけ、設置済みタッチプローブ60回転させて位置決めし、図9で示すようにして、被測定物Wの形状測定することが望ましい。
【0155】
ところで、被測定物Wを測定する場合、図9では、設置済みタッチプローブ60のスタイラス本体部225における先端側部位229の中心軸CHが、Y軸方向に延伸しているが、必ずしもこのようになっている必要はなく、先端側部位229の中心軸CHがY軸に対して斜めに(図示しないが角度θBだけ傾いて)延伸していてもよい。この場合におけるキャリブレーション(図8に示す態様でのキャリブレーション)は、たとえば、角度θAに角度θBを加えたものとなる。
【0156】
次に、測定装置201の動作を説明する。
【0157】
初期状態として、X軸テーブル219上に被測定物(たとえば、測定装置201で加工した加工済みワーク)Wが設置されており、ヘッド213のスピンドル217にタッチプローブ60が設置されているものとする。
【0158】
上記初期状態において、CNC20等の制御の下、ワークWの被測定点を決定し(被測定点が予め決定されていてもよい)、所定の軸(C軸)を中心にしてハウジング221(スピンドル217)を回動し、設置済みタッチプローブ60をインデックス位置決めする(インデックス位置決め段階)。
【0159】
続いて、インデックス位置決め段階でタッチプローブ60をインデックス位置決めしてある状態で、ハウジング221を被測定物Wに対して相対的に移動し、被測定物Wの形状(曲面状の外形面;被測定部)をタッチプローブ60で測定する(測定段階)。
【0160】
なお、測定装置201においてキャリブレーションをする場合には、インデックス位置決め段階でハウジング221をインデックス位置決めし、測定段階でタッチプローブ60を用いて被測定物Wを測定する前に、キャリブレーションゲージ150,100を用いてキャリブレーションをする(キャリブレート段階)。
【0161】
キャリブレート段階は、所定の軸(C軸)を中心にしてハウジング221を回動しタッチプローブ60をインデッックス位置決めし、キャリブレーションをする段階である。
【0162】
さらに説明すると、キャリブレーと段階では、被測定物Wにおける所定の被測定点を決定し、この所定の被測定点での法線ベクトルにおけるX軸方向とY軸方向とZ軸方向との3軸方向の成分を求め、たとえば、キャリブレーションゲージ150におけるキャリブレーション用曲面151内に存在し、法線ベクトルのY軸方向の成分とZ軸方向の成分とが所定の被測定点における法線ベクトルのY軸方向の成分とZ軸方向の成分と等しくなる所定の仮測定点を決定し、所定の被測定点における法線ベクトルのX軸方向の成分に対応する分だけスピンドル217を回転させるとともに、法線ベクトルのY軸方向の成分とZ軸方向の成分とで形成される仮法線ベクトルの方向に、仮測定点から所定の距離だけ離れているところに測定子61を位置させることで、設置済みタッチプローブ60を位置決めし、測定子61(スピンドル217)を仮法線ベクトルの方向であってキャリブレーションゲージ設置体に設置されているキャリブレーションゲージ150に接近する方向に、キャリブレーションゲージ設置体に設置されているキャリブレーションゲージ150に対して相対的にしかも直線的に移動して、測定子61を仮測定点に当接させてキャリブレーションをするようになっている。
【0163】
測定装置201によれば、スタイラス223が軸Cからずれている設置済みタッチプローブ60をインデックス位置決めした状態で、ヘッド213の筐体215を被測定物設置体219に対して相対的に移動し、設置済み被測定物Wの形状を測定するように構成されているので、被測定物Wの凹部W1を測定することができない事態の発生を極力回避することができる。
【0164】
すなわち、図11や図12で示すような(従来のような)形態で被測定物Wの凹部W1の形状を測定しようとしても、上述したようにスタイタス本体部が被測定物Wの凸部W2(凹部W1周辺の凸部)W2に接触してしまい、測定子が凹部W1に届かない事態が発生する。
【0165】
これに対して、図2で示すように、スタイラス本体部225が長手方向の中間部で曲がっており、しかも、タッチプローブ60がC軸を回動中心にしてインデックス位置決めされるようになっているので、被測定物Wの凹部W1を形状を測定するときに、スタイラスが凹部W1周辺の凸部W2に接触してしまう事態を回避する機会が従来よりも増えるのである。
【0166】
また、測定装置201によれば、設置済みタッチプローブ60をインデッックス位置決めしてキャリブレーションをするようになっているので、2次元曲面で形成されたキャリブレーション用曲面151を用いて、3次元曲面のキャリブレーションを実行するこことができる。
【0167】
キャリブレーションゲージ150によれば、キャリブレーション用曲面151が球面等の3次元曲面では無くて、2次元曲面(円柱側面状の曲面157、159)で構成されているので、キャリブレーションゲージ150の構成が簡素化されており、精度が良く製作が容易であるキャリブレーションゲージ150を得ることができる。
【0168】
ところで、図10に示しように、ハウジング221を基端側ハウジング231と先端側ハウジング233とに分割し、軸CXを回動中心にして、先端側ハウジング233を基端側ハウジング231に対して回動位置決めされるように、タッチプローブ60を構成してもよい。これによりスタイラス223の軸CAの延伸方向を斜めにすることができる。
【符号の説明】
【0169】
60 タッチプローブ
61 測定子
100、150 キャリブレーションゲージ
151 キャリブレーション用曲面
203 ヘッド
215 筐体
217 スピンドル
219 被測定物設置体(X軸テーブル;キャリブレーションゲージ設置体)
221 ハウジング
223 スタイラス
225 スタイラス本体部
227 基端側部位
229 先端側部位
C 回転中心軸(所定の軸)
W 測定装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定装置および測定方法に係り、特に、タッチプローブを用いて被測定物を測定するものに関する。
【0002】
また、本発明は、タッチプローブに係り、特に、被測定物の凹面を測定のためのものに関する。
【0003】
また、本発明は、キャリブレーションゲージに係り、特に、タッチプローブを用いて被測定物を測定する前に使用されるものに関する。
【背景技術】
【0004】
従来、図11で示すように、スタイラス401が直線的に延びているタッチプローブ403を用いて、被測定物(たとえばワーク)Wの形状を測定している。
【0005】
しかし、図11に示すタッチプローブ403では、ワークWの凹部W1の形状を測定しようとしてタッチプローブ403を移動すると、タッチプローブ403の測定子405がワークWの凹部W1に当接する前に、スタイラス401の中間部が凹部W1の周辺に存在している凸部W2に接触してしまい、ワークWの凹部W1を測定することができない場合がある。
【0006】
このような不具合を解消するために、図12で示すように、スタイラスの先端側部位が「十」字状になって枝分かれしているものが知られている。これらのスタイラスの各先端側部位407それぞれの先端には、測定子405が配置されている。
【0007】
なお、上記従来の技術に関連する文献としてたとえば特許文献1参照を掲げることができる。
【0008】
また、従来、図11や図12で示すように、タッチプローブを使用して被測定物(たとえばワーク)Wの形状を測定している。
【0009】
なお、図11や図12で示す参照符号W1はワークWの凹部を示しており、参照符号W2はワークWの凸部を示しており、参照符号401はスタイラスを示しており、参照符号403はタッチプローブを示しており、参照符号405(405A,405B)は測定子を示しており、参照符号407(407A,407B)はスタイラス401の先端側部位を示している。
【0010】
また、ワークWの測定をする前に、ワークWの測定精度を向上させるために、半球状の部位(凹部や凸部)を備えたキャリブレーションゲージを用いてキャリブレーションを行っている。
【0011】
なお、上記従来の技術に関連する文献としてたとえば特許文献1参照を掲げることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2006−349411号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかし、図12で示すタッチプローブ403を用いたのでは、スタイラス401の先端側部位(4つの先端側部位のうちの1つの先端側部位)407Aが向いている方向もしくはこの方向と僅かな交差角度で交差している方向でしか、ワークWの凹部W1の測定ができないという問題がある。
【0014】
すなわち、図12で示すタッチプローブ403では、4本の先端側部位407が90°ずつの角度で交差し「十」字状になっている。
【0015】
そして、4本の先端側部位407のうちの1本の先端側部位407A(測定子405A)を図12で示す矢印A12の方向(先端側部位407Aの軸の延伸方向)に移動して、ワークの凹部の測定をするようになっている。このときに、矢印A12の方向とワークWの凹部W1の測定箇所(測定子405Aが当接する箇所)の法線ベクトルの方向とがお互いに一致している。
【0016】
ところで、上記法線ベクトルの方向が図12に矢印A12aで示す方向(矢印A12とは45°程度の角度で交差する方向)になっている場合には、矢印A12aの方向にタッチプローブ403(測定子405A、先端側部位407A)を移動させる必要があり、この移動によって、先端側部位407Aに隣接している先端側部位407Bもしくは先端側部位407C(測定子405Bもしくは測定子405C)が、ワークW(ワークの凹部W1周辺の凸部W2)に接触してしまい、ワークWの凹部W1の測定することができない事態が発生する。
【0017】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、被測定物の凹部を測定できない事態の発生を極力回避することができる測定装置(被測定物の測定装置)および測定方法(被測定物の測定方法)を提供することを目的とする。
【0018】
また、図12で示すタッチプローブ403を用いたのでは、スタイラス401の先端側部位(4つの先端側部位のうちの1つの先端側部位)407Aが向いている方向もしくはこの方向と僅かな交差角度で交差している方向でしか、ワークWの凹部W1の測定ができないという問題がある。
【0019】
すなわち、図12で示すタッチプローブ403では、4本の先端側部位407が90°ずつの角度で交差し「十」字状になっている。
【0020】
そして、4本の先端側部位407のうちの1本の先端側部位407A(測定子405A)を図12で示す矢印A12の方向(先端側部位407Aの軸の延伸方向)に移動して、ワークの凹部の測定をするようになっている。
【0021】
このときに、矢印A12の方向とワークWの凹部W1の測定箇所(測定子405Aが当接する箇所)の法線ベクトルの方向とがお互いに一致している。ところで、上記法線ベクトルの方向が図12に矢印A12aで示す方向(矢印A12とは45°程度の角度で交差する方向)になっている場合には、矢印A12aの方向にタッチプローブ403(測定子405A、先端側部位407A)を移動させる必要があり、この移動によって、先端側部位407Aに隣接している先端側部位407Bもしくは先端側部位407C(測定子405Bもしくは測定子405C)が、ワークW(ワークの凹部W1周辺の凸部W2)に接触してしまい、ワークWの凹部W1の測定することができない事態が発生する。
【0022】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、被測定物の凹部を測定できない事態の発生を極力回避することができるタッチプローブを提供することを目的とする。
【0023】
また、上記従来のキャリブレーションゲージでは、球面である3次元形状の曲面を備えているので、精度の良いキャリブレーションゲージの製作に多くの工数の時間とを要してしまうという問題がある。
【0024】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、精度の良く製作が容易であるキャリブレーションゲージを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0025】
請求項1に記載の発明は、被測定物が設置される被測定物設置体と、筐体と所定の軸を中心にして前記筐体に回転自在に設けられているスピンドルとを具備し、前記筐体が前記被測定物設置体に対して相対的に移動位置決め自在になっているヘッドと、前記スピンドルに一体的に設置されるハウジングと、前記ハウジングから突出しているスタイラス本体部とこのスタイラス本体部の先端に設けられている測定子とを具備するスタイラスとを備え、前記ハウジングが前記スピンドルに設置されたときに、前記スタイラス本体部、前記測定子の少なくともいずれかが、前記スピンドルの回転中心軸から離れているタッチプローブとを有し、前記ハウジングが前記スピンドルに設置されている設置済みタッチプローブを、前記スピンドルを用いてインデックス位置決めした状態で、前記筐体を前記被測定物設置体に対して相対的に移動し、前記被測定物設置体に設置された設置済み被測定物の形状を測定するように構成されている被測定物の測定装置である。
【0026】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の被測定物の測定装置において、キャリブレーションゲージが設置され、前記筐体に対して相対的に移動位置決め自在であるキャリブレーションゲージ設置体を有し、前記設置済み被測定物の形状を前記設置済みタッチプローブで測定する前に、前記キャリブレーションゲージ設置体に設置された設置済みキャリブレーションゲージを用いてキャリブレーションをするように構成されており、前記キャリブレーションゲージは、所定の1平面に所定形状の1本の仮想曲面を描き、この仮想曲線を前記所定の1平面に対して直交する方向に所定の距離だけ移動したときに、前記仮想曲線の軌跡で表される曲面である2次元曲面を、キャリブレーション用曲面として備えており、前記キャリブレーションは、前記設置済みタッチプローブをインデッックス位置決めして、前記キャリブレーションをするように構成されている被測定物の測定装置である。
【0027】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の被測定物の測定装置において、キャリブレーションゲージが設置され、前記ヘッドの筐体に対して相対的に移動位置決め自在であるキャリブレーションゲージ設置体を有し、前記設置済み被測定物の形状を前記設置済みタッチプローブで測定する前に、前記キャリブレーションゲージ設置体に設置された設置済みキャリブレーションゲージを用いてキャリブレーションをするように構成されており、前記タッチプローブのスタイラス本体部は、直線状の基端側部位とこの基端側部位に対して所定の角度で交差している直線状の先端側部位とを備えて「L」字状に形成されており、前記先端側部位の先端に前記測定子が位置しており、前記設置済みタッチプローブでは、前記スピンドルの回転中心軸と前記スタイラス本体部の基端側部位の中心軸とがお互いに一致しており、前記キャリブレーションゲージは、所定の1平面に所定形状の1本の仮想曲面を描き、この仮想曲線を前記所定の1平面に対して直交する方向に所定の距離だけ移動したときに、前記仮想曲線の軌跡で表される曲面である2次元曲面を、キャリブレーション用曲面として備えており、前記設置済み被測定物における所定の一方向をX軸方向とし、このX軸方向に対して直交する所定の一方向をY軸方向とし、前記X軸方向と前記Y軸方向とに直交する所定の一方向をZ軸方向とすると、前記設置済みキャリブレーションゲージは、このキャリブレーション用曲面における前記仮想曲線の移動方向が前記X軸方向になっており、前記キャリブレーションは、前記設置済み被測定物における所定の被測定点を決定し、この所定の被測定点での法線ベクトルにおけるX軸方向とY軸方向とZ軸方向との3軸方向の成分を求め、前記設置済みキャリブレーションゲージにおけるキャリブレーション用曲面内に存在し、法線ベクトルのY軸方向の成分とZ軸方向の成分とが前記所定の被測定点における法線ベクトルのY軸方向の成分とZ軸方向の成分と等しくなる所定の仮測定点を決定し、前記所定の被測定点における法線ベクトルのX軸方向の成分に対応する分だけ前記スピンドルを回転させるとともに、前記法線ベクトルのY軸方向の成分とZ軸方向の成分とで形成される仮法線ベクトルの方向に、前記仮測定点から所定の距離だけ離れているところに前記測定子を位置させることで、前記設置済みタッチプローブを位置決めし、前記測定子を、前記仮法線ベクトルの方向であって前記設置済みキャリブレーションゲージに接近する方向で、前記設置済みキャリブレーションゲージに対して相対的に移動して、前記測定子を前記仮測定点に当接させて行うように構成されている被測定物の測定装置である。
【0028】
請求項4に記載の発明は、被測定物の測定方法において、ハウジングと、このハウジングから突出しているスタイラス本体部とこのスタイラス本体部の先端に設けられている測定子とを具備するスタイラスとを備え、前記スタイラス本体部、前記測定子の少なくともいずれかが、所定の軸から離れているタッチプローブを、前記所定の軸を中心にして前記ハウジングを回動しインデックス位置決めするインデックス位置決め段階と、前記インデックス位置決め段階で前記タッチプローブをインデックス位置決めしてある状態で、前記ハウジングを前記被測定物に対して相対的に移動し、前記被測定物の形状を前記タッチプローブで測定する測定段階とを有する被測定物の測定方法である。
【0029】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の被測定物の測定方法において、前記インデックス位置決め段階で前記ハウジングをインデックス位置決めする前に、キャリブレーションゲージを用いてキャリブレーションをするキャリブレート段階を有し、前記キャリブレーションゲージは、所定の1平面に所定形状の1本の仮想曲面を描き、この仮想曲線を前記所定の1平面に対して直交する方向に所定の距離だけ移動したときに、前記仮想曲線の軌跡で表される曲面である2次元曲面を、キャリブレーション用曲面として備えており、前記キャリブレート段階は、前記所定の軸を中心にして前記ハウジングを回動し前記タッチプローブをインデッックス位置決めし、前記キャリブレーションをする段階である被測定物の測定方法である。
【0030】
請求項6に記載の発明は、請求項4に記載の被測定物の測定方法において、前記インデックス位置決め段階で前記ハウジングをインデックス位置決めする前に、キャリブレーションゲージを用いてキャリブレーションをするキャリブレート段階を有し、前記キャリブレーションゲージは、所定の1平面に所定形状の1本の仮想曲面を描き、この仮想曲線を前記所定の1平面に対して直交する方向に所定の距離だけ移動したときに、前記仮想曲線の軌跡で表される曲面である2次元曲面を、キャリブレーション用曲面として備えており、前記タッチプローブのスタイラス本体部は、直線状の基端側部位とこの基端側部位に対して所定の角度で交差している直線状の先端側部位とを備えて「L」字状に形成されており、前記先端側部位の先端に前記測定子が位置しており、前記タッチプローブでは、前記所定の軸と前記スタイラス本体部の基端側部位の中心軸とがお互いに一致しており、前記被測定物における所定の一方向をX軸方向とし、このX軸方向に対して直交する所定の一方向をY軸方向とし、前記X軸方向と前記Y軸方向とに直交する所定の一方向をZ軸方向とすると、前記キャリブレーションゲージは、このキャリブレーション用曲面における前記仮想曲線の移動方向が前記X軸方向になっており、前記キャリブレーと段階は、前記被測定物における所定の被測定点を決定し、この所定の被測定点での法線ベクトルにおけるX軸方向とY軸方向とZ軸方向との3軸方向の成分を求め、前記キャリブレーションゲージにおけるキャリブレーション用曲面内に存在し、法線ベクトルのY軸方向の成分とZ軸方向の成分とが前記所定の被測定点における法線ベクトルのY軸方向の成分とZ軸方向の成分と等しくなる所定の仮測定点を決定し、前記所定の被測定点における法線ベクトルのX軸方向の成分に対応する分だけ前記スピンドルを回転させるとともに、前記法線ベクトルのY軸方向の成分とZ軸方向の成分とで形成される仮法線ベクトルの方向に、前記仮測定点から所定の距離だけ離れているところに前記測定子を位置させることで、前記設置済みタッチプローブを位置決めし、前記測定子を前記仮法線ベクトルの方向であって前記キャリブレーションゲージ設置体に設置されているキャリブレーションゲージに接近する方向に、前記キャリブレーションゲージ設置体に設置されているキャリブレーションゲージに対して相対的に移動して、前記測定子を前記仮測定点に当接させて前記キャリブレーションをする段階である被測定物の測定方法である。
【0031】
請求項7に記載の発明は、ハウジングと、前記ハウジングから突出しているスタイラス本体部と、前記スタイラス本体部の先端に設けられている測定子とを有し、前記スタイラス本体部、前記測定子の少なくともいずれかが、所定の軸から離れているタッチプローブである。
【0032】
請求項8に記載の発明は、請求項7に記載のタッチプローブにおいて、前記タッチプローブのスタイラス本体部は、直線状の基端側部位とこの基端側部位に対して所定の角度で交差している直線状の先端側部位とを備えて「L」字状に形成されており、前記先端側部位の先端に前記測定子が位置しており、前記所定の軸と前記スタイラス本体部の基端側部位の中心軸とがお互いに一致しているタッチプローブである。
【0033】
請求項9に記載の発明は、所定の1平面に所定形状の1本の仮想曲面を描き、この仮想曲線を前記所定の1平面に対して直交する方向に所定の距離だけ移動したときに、前記仮想曲線の軌跡で表される曲面である2次元曲面を、キャリブレーション用曲面として備えているキャリブレーションゲージである。
【0034】
請求項10に記載の発明は、請求項9に記載のキャリブレーションゲージにおいて、
前記仮想曲線は、半円の円弧を備えて構成されていることを特徴とするキャリブレーションゲージである。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、被測定物の凹部を測定できない事態の発生を極力回避することができるという効果を奏する。
【0036】
また、本発明によれば、精度が良く製作が容易であるキャリブレーションゲージを提供することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の実施形態に係る測定装置の概略構成を示す図であり、(a)は正面図であり、(b)は側面図((a)におけるIB矢視図)である。
【図2】被測定物の自由曲面形状を測定するときの説明図である。
【図3】キャリブレーションゲージを用いたキャリブレーションを説明する図であり、(b)は(a)におけるIIIB矢視図である。
【図4】キャリブレーションケージおよびそのキャリブレーションケージを用いた測定装置のキャリブレーション方法を実施するシステムの構成を示す図である。
【図5】変形例に係るキャリブレーションゲージの斜視図である。
【図6】(a)は変形例に係るキャリブレーションゲージの正面であり、(b)は(a)のおけるVIB矢視図である。
【図7】変形例に係るキャリブレーションゲージを用いたキャリブレーションを説明する図であり、(b)は(a)におけるVIIB−VIIB断面を示す図である。
【図8】変形例に係るキャリブレーションゲージを用いたキャリブレーションを説明する図である。
【図9】図3(a)におけるIX−IX断面を示す図であり、図8で示すキャリブレーションに対応した図である。
【図10】変形例に係るタッチプローブを示す図である。
【図11】タッチプローブを用いて被測定物を測定する場合における従来の態様を示す図である。
【図12】タッチプローブを用いて被測定物を測定する場合における従来の態様を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本発明の実施形態に係る測定装置(被測定物の測定装置)201は、たとえば、工具によってワークWを切削加工する門型工作機械等の工作機械(たとえばCNC3軸加工機)として使用されるものであり、工具(ツール)が交換可能なように構成されている。そして、工具に代えてタッチプローブが装着されることによって、被測定物(たとえば、工具によって自らが加工したワーク)を測定することができるようになっている。なお、測定装置201が、被測定物の測定をもっぱら行う専用機であってもよい。
【0039】
以下、説明の便宜のために、水平な一方向をX軸方向とし、水平な他の一方向であってX軸方向に対して直交する方向をY軸方向とし、X軸方向とY軸方向とに対して直交する方向(上下方向;鉛直方向)をZ軸方向とする。
【0040】
図1で示すように、測定装置201は、ベッド203を備えている。ベッド203両側方(X軸方向の中間部であってY軸方向の両端部)からは一対のコラム205が上方に延出している。一対のコラム205はベッド203に一体的に設けられている。
【0041】
一対のコラム205の上端には、ビーム207が設けられている。ビーム207は一対のコラム205に一体的に設けられており、一対のコラム205とビーム207とで門型の部位が形成されている。
【0042】
ビーム207には、Y軸テーブル209が設けられている。Y軸テーブル209は図示しないリニアガイドベアリングを介してビーム207に支持されており、図4で示すY軸サーボモータ32等のアアクチュエータによって、コンピュータ式数値制御装置(CNC)20の制御の下、ベッド203に対してY軸方向で移動位置決め自在になっている。
【0043】
Y軸テーブル209にはZ軸テーブル(図示せず)が設けられている。Z軸テーブルは図示しないリニアガイドベアリングを介してY軸テーブル209に支持されており、図4で示すZ軸サーボモータ33等のアアクチュエータによって、CNC20の制御の下、Y軸テーブル209に対してZ軸方向で移動位置決め自在になっている。
【0044】
Z軸テーブルには、ヘッド213が設けられている。ヘッド213は筐体215とスピンドル(回転体)217とを備えて構成されている。筐体215はZ軸テーブルに一体的に設けられている。
【0045】
スピンドル217(主軸51)は、筐体215の内側に設けられている。また、スピンドル217は、この中心軸C軸を中心にして筐体215に対して回転するようになっている。なお、C軸はヘッド213(スピンドル217)の中心を通ってZ軸方向に延びている軸である。また、スピンドル217は、CNC20の制御の下、図4で示すサーボモータ37等のアクチュエータによって回転駆動され、また、回転位置決めされるようになっている。
【0046】
サーボモータ37は、いわゆるビルトインタイプ(固定子が筐体215に設けられており、回転子がスピンドル217と一体化しているタイプ)になっており、スピンドル217の繰り返しの回転位置決め精度は、1/10000°(0.36″)程度になっている。
【0047】
ベッド203の上面には、X軸テーブル219が設けられている。X軸テーブル219は図示しないリニアガイドベアリングを介してベッド203に載置されて支持されており、図4で示すX軸サーボモータ31等のアアクチュエータによって、CNC20の制御の下、ベッド203に対してX軸方向で移動位置決め自在になっている。
【0048】
これにより、ヘッド213の筐体215は、X軸テーブル219に対して、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向で相対的に移動位置決め自在になっている。
【0049】
なお、ヘッド213は、X軸テーブル219から離れてX軸テーブル219の上方に位置しており、X軸テーブル219の上にはワーク(被測定物)Wが、図示しない取付具によって一体的に設置されるようになっている。
【0050】
スピンドル217の下端側部位はヘッド213の筐体215の下端から突出しており、スピンドル217の下端に工具が一体的に設置されるようになっている。そして、X軸テーブル219の上にワークWを設置してある状態で、CNC20の制御の下、スピンドル217を回転するとともに、ヘッド213(筐体215)をX軸テーブル219に対して相対的に適宜移動することで、ワークWに切削加工を施すようになっている。加工によって形成される面は、たとえば3次元曲面になる。
【0051】
また、切削加工が終了した後、工具をタッチプローブ60に付け替えて、CNC20の制御の下、スピンドル217を回転位置決めするとともに、ヘッド213(筐体215)をX軸テーブル219に対して相対的に適宜移動することで、ワークWの形状を測定するようになっている。
【0052】
なお、上記加工や測定をする際、ワークWがA軸(X軸と平行な所定の軸)やB軸(Y軸と平行な所定の軸)まわりで回動位置決め自在になっていてもよい。
【0053】
次に、測定装置201の制御システムについて詳しく説明する。
【0054】
図4で示すように、測定装置201の制御システムは、CAD・CAM機10と、コンピュータ式数値制御装置(CNC)20とを備えて構成されている。
【0055】
CAD・CAM機10とCNC20は、RS2324等によるシリアル通信やLAN、インタネット等による通信手段40によって双方向に通信可能に接続されている。なお、CAD・CAM機10とCNC20は、オフラインで、データの授受が行われてもよい。
【0056】
CAD・CAM機10は、専用コンピュータ、あるいは汎用のパーソナルコンピュータである。CAD・CAM機10は、マンマシンインターフェースを含むものであり、コンピュータプログラムを実行することにより、CAD・CAMデータ作成部11と、測定プログラム作成部12と、法線ベクトルデータ抽出部13と、キャリブレーション実行プログラム作成部14を具現化する。
【0057】
CAD・CAMデータ作成部11は、被測定物(加工部)の形状データ、曲面データ(表面データ)、形状データ、曲面データより数値制御用加工プログラムを作成する。
【0058】
測定プログラム作成部12は、被測定物の形状精度測定を実行する形状精度測定プログラムを作成する。形状精度測定プログラムは、被測定物の自由曲面(表面)の任意の座標位置を測定点とし、測定点における被測定物表面の法線ベクトルを示すデータに基づいて、測定点より法線ベクトル方向に所定量オフセットした位置を設定し、そのオフセット位置にタッチプローブの測定子中心が位置するようにタッチプローブを軸移動させ、タッチプローブをオフセット位置より測定点の法線ベクトル方向に移動させてタッチプローブの測定子を被測定物の表面に接近接触させ、オフセット位置より被測定物の表面との接触位置までの移動量あるいはそれと等価の数量値を求める手順を、CNC20が実行可能なコンピュータ言語で記述したものである。
【0059】
形状精度測定プログラムは、被測定物の表面上に複数個の測定点S1、S2、S3…を、直交3軸の座標値(Xs,Ys,Zs)によって、順次、指定し、各測定点S1、S2、S3…における被測定物表面の法線ベクトルを記述している。つまり、形状精度測定プログラムは、被測定物の表面上の測定点S1、S2、S3…を、直交3軸の座標値(Xs,Ys,Zs)を指定し、指定された測定点S1、S2、S3毎に、各測定点S1、S2、S3…における被測定物表面の法線ベクトルデータを有する。
【0060】
測定点S1、S2、S3…における被測定物表面の法線ベクトルは、曲面創成の数式から、X軸,Y軸、Z軸の各軸方向のベクトルi、j、kによって定義する仕方と、測定点S1、S2、S3…における接平面の傾斜角度(たとえば、接平面とXY平面との交差角度)Bと水平方向の角度(たとえば、接平面とXY平面との交差部位である交線とX軸との交差角度)Cとにより定義する仕方がある。ここでは、後者を使用することで、指令フォーマットは、次のように表される。指令フォーマットは、「G***_X**_Y**_Z**_B**_C**」で表される。
【0061】
被測定物が、金型のように、CNC3軸加工機によって自由曲面形状を加工された加工物である場合、法線ベクトルを示すデータ(傾斜角度Bと水平方向の角度C)は、その自由曲面形状の加工のために、CNC3軸加工機で用いられる数値制御用加工プログラムを作成するためのCAD・CAMの曲面データより取得することができる。
【0062】
このことにより、測定プログラム作成部12は、CAD・CAMデータ作成部11で作成されたCAD・CAMの曲面データより、法線ベクトルを示すデータ(傾斜角度Bと水平方向の角度C)を得る。
【0063】
ここで、形状精度測定プログラムによる被測定物の形状精度測定について、図2を参照して説明する。
【0064】
三次元形状測定具として、球状あるいは半球状の測定子61を有するタッチプローブ60を使用し、取得した法線ベクトルを示すデータより、測定点(被測定点)Sにおいて法線ベクトル方向Nsに所定量オフセットしたオフセット位置Psofを設定し、そのオフセット位置Psofに測定子61の中心Tcが位置するように、タッチプローブ60を移動し(測定装置201のX軸テーブル219に設置された被測定物Wに対して、測定装置201のヘッド213(スピンドル217)に設置されたタッチプローブ60を移動し)、タッチプローブ60をオフセット位置Psofより測定点Sの法線ベクトル方向Nsに移動させ、タッチプローブ60の測定子61を被測定物(たとえばワーク)Wの表面に接近接触させる。オフセット位置Psofより被測定物Wの表面との接触位置までの移動量あるいはそれと等価の数量値を求める。
【0065】
測定点Sの設計上の座標値(Xs,Ys,Zs)と、オフセット位置Psofの座標値(Xsof,Ysof,Zsof)は既知値であるから、誤差ゼロ時のオフセット位置Psofと測定点Sとの法線ベクトル方向の距離、すなわち、肉厚方向の数量値は既知値となり、この既知値(測定基準値)と測定値との差値が、直接、自由曲面f上の測定点Sの肉厚方向の形状精度を数量で表すことになる。
【0066】
この差値が予め設定されている誤差許容値以内であるか否の比較演算を行うことにより、測定点S毎に、OK、NGを出力したり、あるいは差値を段階的に分け、誤差レベル(VALUE)0〜Nを出力することができるようになっている。
【0067】
被測定物WがCNC3軸加工機(たとえば、工作機械としても使用される測定装置201)によって自由曲面形状を加工された加工物である場合には、図2に示されているように、タッチプローブ60をCNC3軸加工機の主軸51(スピンドル217)に取り付け、CNC3軸加工機の機上で、CNC3軸加工機のCNC20を用いて自由曲面形状の測定を自動モードで行うことができる。
【0068】
これにより、CNC3軸加工機をBC軸自動オフセット機能(法線ベクトル自動オフセット機能)を備えた面直測定CMM(Coordinate Measuring Machine)として機能させることができる。
【0069】
なお、この形状精度測定は、BC軸自動オフセット機能を備えた面直測定CMM等、直交3軸の軸制御系を有するサーボ制御式の三次元測定専用機でも、同等に行うことができる。
【0070】
CAD・CAM機10の法線ベクトルデータ抽出部13は、測定プログラム作成部12によって作成された形状精度測定プログラムより、各測定点(被測定点)S1、S2、S3…における被測定物表面の法線ベクトルデータを抽出する。
【0071】
測定点Sにおける法線ベクトルが曲面の傾斜角度Bと水平方向の角度Cとにより定義されている場合、法線ベクトルデータ抽出部13は、形状精度測定プログラムの各測定点S1、S2、S3…毎の指令フォーマット(G***_X**_Y**_Z**_B**_C**)より、各測定点S1、S2、S3…の(B**_C**)を抽出する。
【0072】
なお、重複する(B**_C**)については、一つのみが有効になり、同一の(B**_C**)を重複して抽出することがない。
【0073】
なお、測定点S1、S2、S3…における被測定物表面の法線ベクトルを、X軸,Y軸、Z軸の各軸方向のベクトルi、j、kによって定義している場合には、法線ベクトルデータ抽出部13は、X軸,Y軸、Z軸の各軸方向のベクトルi、j、kを抽出する。
【0074】
キャリブレーション実行プログラム作成部14は、キャリブレーション実行プログラムを作成する。キャリブレーション実行プログラムは、法線ベクトルデータ抽出部13が抽出した法線ベクトルデータ(たとえば、B**_C**)毎に、その法線ベクトルデータが示す法線ベクトル方向に関してのみ測定装置のキャリブレーションを実行する指令を記述したものである。
【0075】
キャリブレーション実行プログラムは、図4に示されているように、所定位置(所定座標位置)に設置されたキャリブレーションゲージ(キャリブレーション用ゲージ)100に対してタッチプローブ60の測定子61の中心がキャリブレーションゲージ100の凹球面101に対して、抽出された法線ベクトルデータ(たとえば、B**_C**)毎に、法線ベクトル方向Ncに所定量オフセットしたオフセット位置Pcofに位置するように、タッチプローブ60を移動させ、タッチプローブ60を、オフセット位置Pcofより、X軸、Y軸、Z軸の3軸同期制御(3軸同時制御)によって、法線ベクトル方向Ncに移動させてタッチプローブ60の測定子61をキャリブレーションゲージ100の凹球面101に接近接触させ、オフセット位置Pcofよりキャリブレーションゲージ100の凹球面101との接触位置までの移動量あるいはそれと等価の数量値を求める手順を、CNC20が実行可能なコンピュータ言語で記述したものである。
【0076】
CNC20は、X軸、Y軸、Z軸の3軸同期制御が可能なものであり、入出力部21と、プログラム実行部22と、X軸制御部23と、Y軸制御部24と、Z軸制御部25とを有する。また、CNC20は、C軸制御部27を備えており、C軸制御が可能(スピンドル217を回転位置決め自在)になっている。C軸は、X軸、Y軸、Z軸ともに4軸同期制御が可能になっていてもよいしなっていなくてもよい。
【0077】
プログラム実行部22は、数値制御用加工プログラム、形状精度測定プログラム、キャリブレーション実行プログラムをユーザ指定で実行する。プログラム実行部22は、何れのプログラムを実行しても、X軸制御部23、Y軸制御部24、Z軸制御部25によってX軸指令、Y軸指令、Z軸指令を生成し、これら各軸指令を、X軸サーボモータ31、Y軸サーボモータ32、Z軸サーボモータ33へ出力する。なお、形状精度測定プログラム、キャリブレーション実行プログラムを実行する場合には、上記各軸指令に加えて、C軸制御部27によってC軸指令を生成し、この生成した軸指令を、C軸サーボモータ37へ出力する。
【0078】
X軸サーボモータ31、Y軸サーボモータ32、Z軸サーボモータ33、C軸サーボモータ37の各々には、ロータリエンコーダ等による位置検出器34、35、36、38が接続されている。位置検出器34、35、36は、各軸のサーボモータ31〜33のモータ位置を検出する。位置検出器34、35、36、38のモータ位置信号は、フィードバック式のサーボ制御、形状精度測定、キャリブレーションのための位置信号として、CNC20に入力される。
【0079】
なお、これらの各制御時の位置信号は、X軸、Y軸、Z軸では、各軸に対してリニアセンサを設けることで、リニアセンサの出力信号を用いることもできる。
【0080】
形状精度測定時と、キャリブレーション時には、X軸サーボモータ31、Y軸サーボモータ32、Z軸サーボモータ33によって各軸方向に移動し、C軸サーボモータ37によって回転するCNC3軸加工機の主軸51(スピンドル217)に、工具に代えてタッチプローブ60を取り付ける。タッチプローブ60の測定子61の接触を示すオンオフ信号は、プログラマブルロジックコントローラ(PLC)26を介してCNC20に入力される。
【0081】
タッチプローブ60による形状精度測定のためのキャリブレーションは、CNC20のプログラム実行部22がキャリブレーション実行プログラムを実行することにより行われる。
【0082】
このキャリブレーションは、被測定物の表面上に指定された測定点S1、S2、S3…における被測定物表面より当該被測定物表面の法線ベクトル方向Ncに変位したオフセット位置と測定点S1、S2、S3…の被測定物表面との法線ベクトル方向Ncの距離を計測して表面形状精度を計測する計測装置のキャリブレーションであり、形状精度測定の各測定点S1、S2、S3…における被測定物表面の法線ベクトル方向Ncに関してのみ、キャリブレーションを行う。
【0083】
本実施形態では、キャリブレーションは、半球状の凹球面101を有するキャリブレーションゲージ100を所定の機械座標位置に取り付け(測定装置201のX軸テーブル219上の所定の位置に取り付け)、形状精度測定と同じ機上で行う。
【0084】
このキャリブレーションは、図3で示すように、たとえば、キャリブレーションゲージ100に対してタッチプローブ60の測定子61の中心がキャリブレーションゲージ100の凹球面101の1点(測定点S1、S2、S3…)に対して法線ベクトル方向Ncに所定量オフセットしたオフセット位置Pcofに位置するように、X軸サーボモータ31、Y軸サーボモータ32、Z軸サーボモータ33によって、主軸51と共にタッチプローブ60を移動させるとともに、なお、C軸サーボモータ37でスピンドル217を回転位置決めしておいて、タッチプローブ60をオフセット位置Pcofより前記1点の法線ベクトル方向Ncに移動させてタッチプローブ60の測定子61をキャリブレーションゲージ100の凹球面101に接近接触させ、オフセット位置Pcofよりキャリブレーションゲージ100の凹球面101との接触位置までの移動量あるいはそれと等価の数量値を求めて測定装置201のキャリブレーションを行う。
【0085】
キャリブレーションゲージ100の形状寸法は既知であるから、オフセット位置Pcofよりキャリブレーションゲージ100の凹球面101の任意の1点までの法線ベクトル方向の距離が既知であり、この距離と上述の移動量の測定値の差値を校正差値としてCNC20に取り込み、CNC20による形状精度測定についてチューニングを行う。
【0086】
そして、キャリブレーション結果の保証として、校正差値を反映したキャリブレーションを同様に行い、校正差値が許容値内になるまで、上述のキャリブレーションを繰り返す。
【0087】
このキャリブレーションでは、実際の測定点S1、S2、S3…の法線ベクトル方向と同位相で、ダイレクト方式でキャリブレーションが行われるから、形状精度測定において実際に必要な法線ベクトル方向のキャリブレーションだけが行われ、キャリブレーション点数を不必要に増やすことなく、高い形状精度測定結果を保証するキャリブレーションが、精度よく、短時間で行われることになる。
【0088】
この実施形態で使用されるキャリブレーションゲージ100は、図3に示されているように、半球状の凹球面101を有するすり鉢形状のキャリブレーションゲージである。キャリブレーションゲージ100は凹球面101の開口端側に凹球面101の半径と同じ半径による高さ(軸長)hの円筒部102を凹球面101と同心に有する。キャリブレーションゲージ100は円筒部102の開口端の周りに垂直面(たとえばY軸方向に対して直交している平面)103を有する。
【0089】
このキャリブレーションゲージ100では、オフセット位置Pcofは、何れの法線ベクトル方向のキャリブレーションにおいても、凹球面101の中心点Gcの一点に設定できる。
【0090】
このことにより、オフセット位置Pcofを設定するプログラム記述を簡素化でき、キャリブレーションにおけるタッチプローブ60の総パス長を、凸球面によるキャリブレーションゲージを使用した時より、短くすることができる。このことによっても、キャリブレーションに要する時間を短縮できる。
【0091】
また、凸球面によるキャリブレーションゲージでは、凸球面に対して、タッチプローブ60の球状の測定子61の座りが悪く、測定子61が凸球面に対して滑るような現象が生じ易いが、凹球面101であると、凹球面101に対する測定子61の座りがよくなり、滑りによるタッチプローブ60のキャリブレーション精度の低下がなくなる。
【0092】
オフセット位置Pcofの設定、つまり、キャリブレーションゲージ100の凹球面101の中心点Gcの座標(Xcof、Ycof、Zcof)設定は、タッチプローブ60を用いてCNC20が、Gコードによる内径部の自動心出し(直交2方向アプローチ)のマクロプログラムを、実行することにより、キャリブレーションゲージ100の円筒部102の自動心出しを行うことで、座標値(Xcof、Ycof)を取得し、タッチプローブ60を用いて水平上面103の直交4点のZ軸位置を測定してその平均値より高さh分を差し引きことにより、座標値(Zcof)を取得できる。
【0093】
このことにより、凹球面型のキャリブレーションゲージ100を使用することで、オフセット位置Pcofの設定も容易になり、このことによっても、キャリブレーションに要する時間を短縮できる。
【0094】
また、キャリブレーションゲージ100は、半球状の凹球面101以外に、半球状の凸球面104を有する。また、キャリブレーションゲージ100では、測定点の被測定物の表面が、凹面か、凸面かに応じて、凹球面101と、凸球面104とを使い分けることができる。
【0095】
ここで、測定装置201についてさらに詳しく説明する。
【0096】
測定装置201は、図1で示すように、被測定物設置体(X軸テーブル)219と、ヘッド213とを備えている。
【0097】
被測定物設置体219には、曲面状の外形面(自由曲面;球面等の3次元曲面)を備えた被測定物Wが一体的に設置されるようになっている。
【0098】
ヘッド213は、筐体215と所定の軸(C軸)を中心にして筐体215に回転自在に設けられているスピンドル217とを具備している。筐体215は、被測定物設置体219に対して、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向で相対的に移動位置決め自在になっている。
【0099】
スピンドル217の下端には、タッチプローブ60が設置されるようになっている。タッチプローブ60は、図2等で示すように、ハウジング221とスタイラス223とを備えている。
【0100】
スタイラス223は、細長い棒状のスタイラス本体部225と球状の測定子61とを備えている。スタイラス本体部225は、ハウジング221からたとえば、湾曲、屈曲の少なくともいずれかの態様で突出している。測定子61は、スタイラス本体部225の先端でスタイラス本体部225に一体的に設けられている。
【0101】
ハウジング221がスピンドル217に一体的に設置された状態では、スタイラス223はハウジング221から下方に延出している。また、ハウジング221がスピンドル217に一体的に設置された状態では、スタイラス本体部225、測定子61の少なくともいずれかが、スピンドル217の回転中心軸C1から離れている(オフセットされた位置に存在するように構成されている)。
【0102】
ここで、タッチプローブ60の形態に係る1つ目の態様を例示する(図2参照)。
【0103】
スタイラス本体部225は、細長い円柱状の素材(たとえば、外径に対して高さが5倍から100倍程度に十分大きい円柱状の素材)を、この長手方向の中間部(たとえば中央部)で所定の角度θだけ(たとえば90°)折り曲げて屈曲させることで、直線状の基端側部位227と直線状の先端側部位229とを備えて「L」字状の形態になっている。測定子61は、先端側部位229の先端に設けられている。測定子61の中心は、先端側部位229の中心軸CHの延長線上に位置している。
【0104】
タッチプローブ60をスピンドル217に設置したときには(設置済みタッチプローブでは)、スピンドル217の回転中心軸Cとスタイラス本体部225の基端側部位227の中心軸とがお互いに一致している(スピンドル217の回転中心軸Cの延長線上にスタイラス本体部225の基端側部位227の中心軸が存在している)。
【0105】
また、タッチプローブ60をスピンドル217に設置したときには、スタイラス本体部225の先端側部位229の中心軸CHがスピンドル217の回転中心軸Cとたとえば直交しており、スタイラス本体部225の先端側部位229が、スピンドル217の回転中心軸C(スタイラス本体部225の基端側部位227)から離れる方向に延伸している。
【0106】
上記1つ目の態様は、タッチプローブ60をスピンドル217に設置したときに、スタイラス本体部225の先端側部位229と測定子61とが、スピンドル217の回転中心軸Cから離れている場合の例である。
【0107】
タッチプローブ60の形態に係る2つ目の態様を例示する(図示せず)。
【0108】
スタイラス本体部は、細長い円柱状の素材(たとえば、外径に対して高さが5倍から100倍程度に十分大きい円柱状の素材)を、この長手方向で湾曲させることで、たとえば、半円状の形態になっている。すなわち、スタイラス本体部の中心軸が半円状になっている。
【0109】
タッチプローブをスピンドルに設置したときには、スタイラス本体部の中心軸の基端が、スピンドルの回転中心軸の延長線と交差し、スタイラス本体部の中心軸の先端も、スピンドルの回転中心軸の延長線と交差し、測定子の中心は、スピンドルの回転中心軸の延長線上に存在している。一方、スタイラス本体部の長手方向の中間部が、スピンドルの回転中心軸から離れている。したがって、タッチプローブをスピンドルに設置したときにスピンドルを回転させても、測定子の中心位置は変化せず一定の位置に存在する。一方、タッチプローブをスピンドルに設置したときにスピンドルを回転させると、スタイラス本体部の長手方向での中間部の位置が変化し、スピンドルを1回転させるとスタイラス本体部の中心軸の軌跡は球状になる。
【0110】
上記2つ目態様は、タッチプローブをスピンドルに設置したときに、スタイラス本体部のみが、スピンドルの回転中心軸から離れている場合の例である。
【0111】
タッチプローブの形態に係る3つ目の態様を掲げる(図示せず)。
【0112】
この3つ目の態様は、スタイラス本体部の長さが、上記2つ目の態様よりも短いかもしくは長くなっている。したがって、スタイラス本体部は、たとえば、1/4円状もしくは2/3円状になっている。
【0113】
タッチプローブをスピンドルに設置したときには、スタイラス本体部の中心軸の基端が、スピンドルの回転中心軸の延長線と交差し、スタイラス本体部の基端以外の部位がスピンドルの回転中心軸から離れており、測定子の中心もスピンドルの回転中心軸から離れている。
【0114】
上記3つ目態様は、タッチプローブをスピンドルに設置したときに、スタイラス本体部と測定子とが、スピンドルの回転中心軸から離れている場合の例である。
【0115】
タッチプローブの形態に係る4つ目の態様を例示する(図示せず)。
【0116】
スタイラス本体部は、曲がっておらず、細長い円柱状(たとえば、外径に対して高さが5倍から100倍程度に十分大きい円柱状の素材)に形成されている。測定子は、スタイラス本体部の先端に設けられている。測定子の中心は、スタイラス本体部の中心軸の延長線上に位置している。
【0117】
タッチプローブをスピンドルに設置したときには、スタイラス本体部の中心軸の基端は、スピンドルの回転中心軸の延長線と交差しているが、スタイラス本体部の中心軸は、スピンドルの回転中心軸に対して斜めに延伸し、測定子の中心は、スピンドルの回転中心軸から離れている。したがって、タッチプローブをスピンドルに設置したときにスピンドルを回転させると、スタイラス本体部の位置が変化し、スピンドルを1回転させるとスタイラス本体部の中心軸の軌跡は円錐の側面状になる。
【0118】
上記4つ目態様は、タッチプローブをスピンドルに設置したときに、スタイラス本体部と測定子とが、スピンドルの回転中心軸から離れている場合の例である。
【0119】
なお、上述した1つ目〜3つ目の態様では、スタイラス本体部が「L」字状に屈曲し、もしくは、円弧状に湾曲しているが、他の形状(たとえば「コ」字状)に屈曲していてもよいし、他の形状(たとえば楕円の円弧状)に湾曲していてもよいし、屈曲と湾曲との両方を含んだ態様になっていてもよい。
【0120】
また、上述した1つ目〜4つ目の態様では、スタイラスの本体部が枝別れしておらず、スタイラスの本体部が1本の素材をそのままもしくは屈曲や湾曲させた形態になっており、測定子が1本のスタイラス本体部の先端に1つだけ設けられていることが望ましい。
【0121】
また、測定装置201は、制御装置(たとえばCNC20)の制御の下、ハウジング221がスピンドル217に設置されている設置済みタッチプローブ60を、スピンドル217をインデックス位置決めすることでインデックス位置決めした状態で、ヘッド213の筐体215を被測定物設置体219に対して相対的に移動(X軸方向、Y軸方向、Z軸方向の少なくともいずれかの方向に、自らの姿勢を変えない平行移動)し、被測定物設置体219に設置された設置済み被測定物Wの形状(曲面状の外形面;被測定部)を、設置済みタッチプローブ60で測定するように構成されている。
【0122】
タッチプローブ60は、通常市販されているタッチプローブと同様に、スタイラス223に何ら力が加わっていないときには、スタイラス223がハウジング221に対して所定の位置で所定の姿勢になっている。そして、測定子61が被測定物Wに当接することで、測定子61(スタイラス223)が被測定物Wで押され、スタイラス223の姿勢(測定子61の位置)がハウジング221に対してごく僅かに変位するようになっている。測定装置201は、このごく僅かなスタイラス223の変位のし始めを検出することで、測定子61が被測定物Wに当接したときにおけるタッチプローブ60のハウジング221の位置を求め、測定子61が当接した被測定物Wの部位の位置を求めることができるようになっている。さらに、測定装置201では、測定子61が当接した被測定物Wの部位の位置を複数求めることで、被測定物Wの形状を測定することができるように構成されている。
【0123】
なお、すでに理解されるように、測定装置201では、タッチプローブ60の測定子61を被測定物Wの凹部W1に当接させて、被測定物Wの凹部W1の形状を測定するとき、凹部W1の周辺に存在している部位(凹部W1よりも突出している凸位)W2とスタイラス本体部225との干渉を避けるために、スタイラス本体部225、測定子61の少なくともいずれかをスピンドル217の回転中心軸Cから離してあり、しかも、タッチプローブ60が設置されたスピンドル217をインデックス位置決めするのである(図2、図9等参照)。
【0124】
また、測定装置201には、キャリブレーションゲージ設置体(たとえば被測定物設置体;X軸テーブル)219が設けられている。キャリブレーションゲージ設置体219には、キャリブレーションゲージ100,150(図3、図5等参照)が一体的に設置されるようになっている。キャリブレーションゲージ設置体219は、ヘッド213の筐体215に対して、X軸方向、Y軸方向。Z軸方向で、相対的に移動位置決め自在になっている。
【0125】
そして、測定装置(被測定物の形状測定装置)201は、制御装置(たとえばCNC20)の制御の下、設置済み被測定物Wの形状を設置済みタッチプローブ60で測定する前に、X軸テーブル219に設置された設置済みキャリブレーションゲージ100,150を用いてキャリブレーションをするように構成されている。
【0126】
キャリブレーションゲージ100は、図3で示すように、半球面を備えている場合もあるが、ここで使用するキャリブレーション(変形例に係るキャリブレーション)150は、図5で示すように、2次元曲面を、キャリブレーション用曲面151として備えている。
【0127】
2次元曲面は、所定の1平面に所定形状の1本の仮想曲面を描き、この仮想曲線(始点と終点とを備え自らが交差することなく延びている曲線)を前記所定の1平面に対して直交する方向に直線的に所定の距離だけ移動したときに、前記仮想曲線の軌跡で表される曲面である。2次元曲面として、たとえば、円柱の側面の一部を掲げることができる。
【0128】
前記キャリブレーションゲージ150は、設置済みタッチプローブ60をインデッックス位置決めして、キャリブレーションをするときに使用される。
【0129】
このキャリブレーションでは、設置済みタッチプローブ60の測定子61は、前述したように、スピンドル217の回転中心軸Cから離れて存在している。スピンドル217の回転中心軸Cの延伸方向は、たとえば、前記仮想曲線の移動方向(前記所定の1平面に対して直交する方向;たとえば、X軸方向)に対して交差する方向(たとえば、直交する方向;Y軸方向)に延びている。また、キャリブレーションは、キャリブレーション用曲面151内の所定の点での法線ベクトルの方向に、設置済みタッチプローブ60の測定子61を移動してなされるように構成されている。
【0130】
キャリブレーションについて例を掲げてさらに詳しく説明する。
【0131】
設置済み被測定物Wの被測定点における形状測定(測定装置201を用いた被測定点の位置測定)は、前述したように、被測定点からこの被測定点での法線ベクトルの方向に設置済みタッチプローブ60の測定子61の中心を所定の距離だけ離しておいて、被測定点からこの被測定点の法線ベクトルの方向に設置済みタッチプローブ60の測定子61を移動し、設置済みタッチプローブ60の測定子61を被測定点に接触させて行うよう構成されている。
【0132】
タッチプローブ60のスタイラス本体部225は、前述したように、直線状の基端側部位227とこの基端側部位227に対して所定の角度(たとえば、90°)で交差している直線状の先端側部位229とを備えて「L」字状(「ヘ」字状や「レ」字状であってもよい。)に形成されており、先端側部位229の先端に測定子61が位置している。
【0133】
設置済みタッチプローブ60では、スピンドル217の回転中心軸Cとスタイラス本体部225の基端側部位227の中心軸とがお互いに一致しており、スタイラス本体部225の先端側部位229の中心軸CHがスピンドル217の回転中心軸Cと所定の角度(たとえば、90°)で交差しており、スタイラス本体部225の先端側部位229が、スピンドル217の回転中心軸C(スタイラス本体部225の基端側部位227)から離れる方向に延伸している。
【0134】
設置済み被測定物Wにおける所定の一方向をX軸方向とし、このX軸方向に対して直交する所定の一方向をY軸方向とし、X軸方向とY軸方向とに直交する所定の一方向をZ軸方向とする。設置済みキャリブレーションゲージ150では、このキャリブレーション用曲面151における仮想曲線(2次元曲面で構成されているキャリブレーション用曲面151を形成する仮想曲線)の移動方向がX軸方向になっている。
【0135】
このような条件の下、キャリブレーションが次のようにしてなされるようになっている。
【0136】
まず、設置済み被測定物Wにおける所定の被測定点を決定し、この所定の被測定点での法線ベクトルにおけるX軸方向とY軸方向とZ軸方向との3軸方向の成分を求める。
【0137】
続いて、設置済みキャリブレーションゲージ150におけるキャリブレーション用曲面151内に存在する仮測定点であって、法線ベクトルのY軸方向の成分とZ軸方向の成分とが所定の被測定点(設置済み被測定物Wの所定の被測定点)における法線ベクトルのY軸方向の成分とZ軸方向の成分と等しくなる所定の仮測定点(キャリブレーション用被測定点)を決定する。
【0138】
続いて、設置済み被測定物Wの所定の被測定点における法線ベクトルのX軸方向の成分に対応する分だけスピンドル217(設置済みタッチプローブ60)を回転して、スタイラス本体部225の先端側部位229をインデックス位置決めするとともに、法線ベクトルのY軸方向の成分とZ軸方向の成分とで形成される仮法線ベクトルの方向に、設置済みキャリブレーションゲージ150の仮測定点から所定の距離だけ離れているところに、設置済みタッチプローブ60の測定子61を位置させることで、設置済みタッチプローブ60を位置決めする。
【0139】
続いて、測定子61(スピンドル217)を、仮法線ベクトルの方向であってキャリブレーションゲージ設置体219に設置されているキャリブレーションゲージ(設置済みキャリブレーションゲージ)150に接近する方向に、キャリブレーションゲージ設置体219に設置されているキャリブレーションゲージ150に対して相対的にしかも直線的に移動して、測定子61を仮測定点に当接させる。これによって、キャリブレーションがなされるようになっている。
【0140】
ここで、キャリブレーションゲージ150についてさらに詳しく説明する(図5、図6、図7参照)。
【0141】
キャリブレーションゲージ150の2次元曲面(キャリブレーション用曲面151)を形成している仮想曲線は、第1の半円の円弧153と、この第1の半円の円弧153から離れている第2の半円の円弧155と備えて構成されている。すなわち、キャリブレーションゲージ150のキャリブレーション用曲面151は、第1の円柱側面の半分と、第2の円柱側面の半分とを備えて構成されている。なお、キャリブレーション用曲面151として、凹状の第1の円柱側面の半分、凸上の第2の円柱側面の半分の少なくともいずれかを備えている構成であってもよい。
【0142】
第2の半円の円弧155は、第1の半円の円弧153で形成される半円の外側に存在している所定の点C1(図6(a)参照)を中心点として、第1の半円弧153を180°回動したところに位置している。
【0143】
さらには、第1の半円の円弧153と第2の半円の円弧155とは次に説明するような位置関係になっている。
【0144】
まず、円をこの円の所定の直径で2等分して形成される第1の半円(第1の半円の円弧153の半円)と第2の半円(第2の半円の円弧155の半円)とを得る。第2の半円を第1の半円に対して、前記円が描かれている平面内で前記所定の直径の延伸方向と直交する方向に所定の距離だけ移動して第1の半円から離す。第1の半円から所定の距離だけ離れた第2の半円を前記円が描かれている平面内で第1の半円に対して、前記所定の直径の延伸方向に、前記円の半径よりも大きい所定の距離だけ移動する。このような移動をすることで第1の半円と第2の半円とはお互いが離れた所定の位置関係になる。第1の半円の円弧153と第2の半円の円弧155との位置関係は、上記第1の半円の円弧と工機第2の半円の円弧との関係になっている。
【0145】
そして、第1の半円の円弧153によって、凹状キャリブレーション用曲面157が形成され、第2の半円の円弧155によって、凸状キャリブレーション用曲面159が形成されている。
【0146】
次に、設置済み被測定物Wの被測定点における法線ベクトルのX軸方向の成分に対応する分だけスピンドル217を回転させることについてさらに詳しく説明する。
【0147】
まず、設置済み被測定物Wの被測定点における法線ベクトルが、X軸方向の成分を含んでいない場合について、図7を参照しつつ説明する。なお、図7では、説明の便宜のために、設置済み被測定物Wの被測定点における法線ベクトルが、Z軸方向の成分も含んでいないが、Z軸方向の成分を含んでいても、以下の説明と同様に考えることができる。
【0148】
設置済み被測定物Wの被測定点における法線ベクトルがX軸方向の成分を含んでいない場合には、タッチプローブ60のスタイラス本体部225における先端側部位229の中心軸CHがY軸方向に延伸するように、タッチプローブ60をC軸まわりでインデックス位置決めするとともに、測定子61の中心が、設置済みキャリブレーションゲージ150の第1の半円弧153の中心に位置するように、ヘッド213(設置済みタッチプローブ60のハウジング221)を位置決めする。
【0149】
続いて、設置済みタッチプローブ60をY軸方向に移動して測定子61をキャリブレーションゲージ150(第1の半円弧153のキャリブレーション用曲面151)に当接させて、キャリブレーションを行う。なお、設置済み被測定物Wの被測定点における法線ベクトルが、Z軸方向の成分も含んでいる場合には、設置済みタッチプローブ60をY軸方向とZ軸方向と斜めに(Y軸方向に対して斜めに)直線的に移動してキャリブレーションを行えばよい。
【0150】
次に、設置済み被測定物Wの被測定点における法線ベクトルが、X軸方向の成分を含んでいる場合について、図8、図9を参照しつつ説明する。なお、図8においても図7の場合と同様にして、説明の便宜のために、設置済み被測定物Wの被測定点における法線ベクトルが、Z軸方向の成分も含んでいないが、Z軸方向の成分を含んでいても、図7での説明と同様に考えることができる。
【0151】
図9は、キャリブレーションゲージ100を示す図であるが、説明のために、キャリブレーションゲージ100を被測定物Wとする。被測定物Wにおける被測定点をSWとすると、この被測定点SWにおける法線ベクトルは、X軸方向の成分とY軸方向の成分を有しており、Y軸と角度θAで交差している。
【0152】
図3で示すキャリブレーションゲージ100を用いて、図9で示す被測定点SWのためのキャリブレーションをする場合には、図9で示すように、設置済みタッチプローブ60を矢印(被測定点SWにおける法線ベクトルとは逆向きの矢印)のように移動してキャリブレーションをすることになる。
【0153】
一方、図5や図6で示すキャリブレーションゲージ150を用いて、図9で示す被測定点SWのためのキャリブレーションをする場合には、図8で示すように、設置済みタッチプローブ60を、タッチプローブ60のスタイラス本体部225における先端側部位229の中心軸CHがY軸と角度θAで交差するようにC軸まわりでインデックス位置決めしておいて、矢印(Y軸方向に伸びた矢印とは逆向きの矢印)のように移動してキャリブレーションをすることになる。
【0154】
なお、図8で示す、測定子61の中心とキャリブレーション用曲面151との間の距離は、たとえば、図9で示す、測定子61の中心とキャリブレーション用曲面との間の距離(半球の凹部の半径)と等しくなっているものとする。また、図8で示すキャリブレーションをした後には、図8で示す状態から半時計まわりに角度θAだけ、設置済みタッチプローブ60回転させて位置決めし、図9で示すようにして、被測定物Wの形状測定することが望ましい。
【0155】
ところで、被測定物Wを測定する場合、図9では、設置済みタッチプローブ60のスタイラス本体部225における先端側部位229の中心軸CHが、Y軸方向に延伸しているが、必ずしもこのようになっている必要はなく、先端側部位229の中心軸CHがY軸に対して斜めに(図示しないが角度θBだけ傾いて)延伸していてもよい。この場合におけるキャリブレーション(図8に示す態様でのキャリブレーション)は、たとえば、角度θAに角度θBを加えたものとなる。
【0156】
次に、測定装置201の動作を説明する。
【0157】
初期状態として、X軸テーブル219上に被測定物(たとえば、測定装置201で加工した加工済みワーク)Wが設置されており、ヘッド213のスピンドル217にタッチプローブ60が設置されているものとする。
【0158】
上記初期状態において、CNC20等の制御の下、ワークWの被測定点を決定し(被測定点が予め決定されていてもよい)、所定の軸(C軸)を中心にしてハウジング221(スピンドル217)を回動し、設置済みタッチプローブ60をインデックス位置決めする(インデックス位置決め段階)。
【0159】
続いて、インデックス位置決め段階でタッチプローブ60をインデックス位置決めしてある状態で、ハウジング221を被測定物Wに対して相対的に移動し、被測定物Wの形状(曲面状の外形面;被測定部)をタッチプローブ60で測定する(測定段階)。
【0160】
なお、測定装置201においてキャリブレーションをする場合には、インデックス位置決め段階でハウジング221をインデックス位置決めし、測定段階でタッチプローブ60を用いて被測定物Wを測定する前に、キャリブレーションゲージ150,100を用いてキャリブレーションをする(キャリブレート段階)。
【0161】
キャリブレート段階は、所定の軸(C軸)を中心にしてハウジング221を回動しタッチプローブ60をインデッックス位置決めし、キャリブレーションをする段階である。
【0162】
さらに説明すると、キャリブレーと段階では、被測定物Wにおける所定の被測定点を決定し、この所定の被測定点での法線ベクトルにおけるX軸方向とY軸方向とZ軸方向との3軸方向の成分を求め、たとえば、キャリブレーションゲージ150におけるキャリブレーション用曲面151内に存在し、法線ベクトルのY軸方向の成分とZ軸方向の成分とが所定の被測定点における法線ベクトルのY軸方向の成分とZ軸方向の成分と等しくなる所定の仮測定点を決定し、所定の被測定点における法線ベクトルのX軸方向の成分に対応する分だけスピンドル217を回転させるとともに、法線ベクトルのY軸方向の成分とZ軸方向の成分とで形成される仮法線ベクトルの方向に、仮測定点から所定の距離だけ離れているところに測定子61を位置させることで、設置済みタッチプローブ60を位置決めし、測定子61(スピンドル217)を仮法線ベクトルの方向であってキャリブレーションゲージ設置体に設置されているキャリブレーションゲージ150に接近する方向に、キャリブレーションゲージ設置体に設置されているキャリブレーションゲージ150に対して相対的にしかも直線的に移動して、測定子61を仮測定点に当接させてキャリブレーションをするようになっている。
【0163】
測定装置201によれば、スタイラス223が軸Cからずれている設置済みタッチプローブ60をインデックス位置決めした状態で、ヘッド213の筐体215を被測定物設置体219に対して相対的に移動し、設置済み被測定物Wの形状を測定するように構成されているので、被測定物Wの凹部W1を測定することができない事態の発生を極力回避することができる。
【0164】
すなわち、図11や図12で示すような(従来のような)形態で被測定物Wの凹部W1の形状を測定しようとしても、上述したようにスタイタス本体部が被測定物Wの凸部W2(凹部W1周辺の凸部)W2に接触してしまい、測定子が凹部W1に届かない事態が発生する。
【0165】
これに対して、図2で示すように、スタイラス本体部225が長手方向の中間部で曲がっており、しかも、タッチプローブ60がC軸を回動中心にしてインデックス位置決めされるようになっているので、被測定物Wの凹部W1を形状を測定するときに、スタイラスが凹部W1周辺の凸部W2に接触してしまう事態を回避する機会が従来よりも増えるのである。
【0166】
また、測定装置201によれば、設置済みタッチプローブ60をインデッックス位置決めしてキャリブレーションをするようになっているので、2次元曲面で形成されたキャリブレーション用曲面151を用いて、3次元曲面のキャリブレーションを実行するこことができる。
【0167】
キャリブレーションゲージ150によれば、キャリブレーション用曲面151が球面等の3次元曲面では無くて、2次元曲面(円柱側面状の曲面157、159)で構成されているので、キャリブレーションゲージ150の構成が簡素化されており、精度が良く製作が容易であるキャリブレーションゲージ150を得ることができる。
【0168】
ところで、図10に示しように、ハウジング221を基端側ハウジング231と先端側ハウジング233とに分割し、軸CXを回動中心にして、先端側ハウジング233を基端側ハウジング231に対して回動位置決めされるように、タッチプローブ60を構成してもよい。これによりスタイラス223の軸CAの延伸方向を斜めにすることができる。
【符号の説明】
【0169】
60 タッチプローブ
61 測定子
100、150 キャリブレーションゲージ
151 キャリブレーション用曲面
203 ヘッド
215 筐体
217 スピンドル
219 被測定物設置体(X軸テーブル;キャリブレーションゲージ設置体)
221 ハウジング
223 スタイラス
225 スタイラス本体部
227 基端側部位
229 先端側部位
C 回転中心軸(所定の軸)
W 測定装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定物が設置される被測定物設置体と、
筐体と所定の軸を中心にして前記筐体に回転自在に設けられているスピンドルとを具備し、前記筐体が前記被測定物設置体に対して相対的に移動位置決め自在になっているヘッドと、
前記スピンドルに一体的に設置されるハウジングと、前記ハウジングから突出しているスタイラス本体部とこのスタイラス本体部の先端に設けられている測定子とを具備するスタイラスとを備え、前記ハウジングが前記スピンドルに設置されたときに、前記スタイラス本体部、前記測定子の少なくともいずれかが、前記スピンドルの回転中心軸から離れているタッチプローブと、
を有し、前記ハウジングが前記スピンドルに設置されている設置済みタッチプローブを、前記スピンドルを用いてインデックス位置決めした状態で、前記筐体を前記被測定物設置体に対して相対的に移動し、前記被測定物設置体に設置された設置済み被測定物の形状を測定するように構成されていることを特徴とする被測定物の測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の被測定物の測定装置において、
キャリブレーションゲージが設置され、前記筐体に対して相対的に移動位置決め自在であるキャリブレーションゲージ設置体を有し、
前記設置済み被測定物の形状を前記設置済みタッチプローブで測定する前に、前記キャリブレーションゲージ設置体に設置された設置済みキャリブレーションゲージを用いてキャリブレーションをするように構成されており、
前記キャリブレーションゲージは、所定の1平面に所定形状の1本の仮想曲面を描き、この仮想曲線を前記所定の1平面に対して直交する方向に所定の距離だけ移動したときに、前記仮想曲線の軌跡で表される曲面である2次元曲面を、キャリブレーション用曲面として備えており、
前記キャリブレーションは、前記設置済みタッチプローブをインデッックス位置決めして、前記キャリブレーションをするように構成されている特徴とする被測定物の測定装置。
【請求項3】
請求項1に記載の被測定物の測定装置において、
キャリブレーションゲージが設置され、前記ヘッドの筐体に対して相対的に移動位置決め自在であるキャリブレーションゲージ設置体を有し、
前記設置済み被測定物の形状を前記設置済みタッチプローブで測定する前に、前記キャリブレーションゲージ設置体に設置された設置済みキャリブレーションゲージを用いてキャリブレーションをするように構成されており、
前記タッチプローブのスタイラス本体部は、直線状の基端側部位とこの基端側部位に対して所定の角度で交差している直線状の先端側部位とを備えて「L」字状に形成されており、前記先端側部位の先端に前記測定子が位置しており、
前記設置済みタッチプローブでは、前記スピンドルの回転中心軸と前記スタイラス本体部の基端側部位の中心軸とがお互いに一致しており、
前記キャリブレーションゲージは、所定の1平面に所定形状の1本の仮想曲面を描き、この仮想曲線を前記所定の1平面に対して直交する方向に所定の距離だけ移動したときに、前記仮想曲線の軌跡で表される曲面である2次元曲面を、キャリブレーション用曲面として備えており、
前記設置済み被測定物における所定の一方向をX軸方向とし、このX軸方向に対して直交する所定の一方向をY軸方向とし、前記X軸方向と前記Y軸方向とに直交する所定の一方向をZ軸方向とすると、前記設置済みキャリブレーションゲージは、このキャリブレーション用曲面における前記仮想曲線の移動方向が前記X軸方向になっており、
前記キャリブレーションは、
前記設置済み被測定物における所定の被測定点を決定し、この所定の被測定点での法線ベクトルにおけるX軸方向とY軸方向とZ軸方向との3軸方向の成分を求め、
前記設置済みキャリブレーションゲージにおけるキャリブレーション用曲面内に存在し、法線ベクトルのY軸方向の成分とZ軸方向の成分とが前記所定の被測定点における法線ベクトルのY軸方向の成分とZ軸方向の成分と等しくなる所定の仮測定点を決定し、
前記所定の被測定点における法線ベクトルのX軸方向の成分に対応する分だけ前記スピンドルを回転させるとともに、前記法線ベクトルのY軸方向の成分とZ軸方向の成分とで形成される仮法線ベクトルの方向に、前記仮測定点から所定の距離だけ離れているところに前記測定子を位置させることで、前記設置済みタッチプローブを位置決めし、
前記測定子を、前記仮法線ベクトルの方向であって前記設置済みキャリブレーションゲージに接近する方向で、前記設置済みキャリブレーションゲージに対して相対的に移動して、前記測定子を前記仮測定点に当接させて行うように構成されていることを特徴とする被測定物の測定装置。
【請求項4】
被測定物の測定方法において、
ハウジングと、このハウジングから突出しているスタイラス本体部とこのスタイラス本体部の先端に設けられている測定子とを具備するスタイラスとを備え、前記スタイラス本体部、前記測定子の少なくともいずれかが、所定の軸から離れているタッチプローブを、前記所定の軸を中心にして前記ハウジングを回動しインデックス位置決めするインデックス位置決め段階と、
前記インデックス位置決め段階で前記タッチプローブをインデックス位置決めしてある状態で、前記ハウジングを前記被測定物に対して相対的に移動し、前記被測定物の形状を前記タッチプローブで測定する測定段階と、
を有することを特徴とする被測定物の測定方法。
【請求項5】
請求項4に記載の被測定物の測定方法において、
前記インデックス位置決め段階で前記ハウジングをインデックス位置決めする前に、キャリブレーションゲージを用いてキャリブレーションをするキャリブレート段階を有し、
前記キャリブレーションゲージは、所定の1平面に所定形状の1本の仮想曲面を描き、この仮想曲線を前記所定の1平面に対して直交する方向に所定の距離だけ移動したときに、前記仮想曲線の軌跡で表される曲面である2次元曲面を、キャリブレーション用曲面として備えており、
前記キャリブレート段階は、前記所定の軸を中心にして前記ハウジングを回動し前記タッチプローブをインデッックス位置決めし、前記キャリブレーションをする段階であることを特徴とする被測定物の測定方法。
【請求項6】
請求項4に記載の被測定物の測定方法において、
前記インデックス位置決め段階で前記ハウジングをインデックス位置決めする前に、キャリブレーションゲージを用いてキャリブレーションをするキャリブレート段階を有し、
前記キャリブレーションゲージは、所定の1平面に所定形状の1本の仮想曲面を描き、この仮想曲線を前記所定の1平面に対して直交する方向に所定の距離だけ移動したときに、前記仮想曲線の軌跡で表される曲面である2次元曲面を、キャリブレーション用曲面として備えており、
前記タッチプローブのスタイラス本体部は、直線状の基端側部位とこの基端側部位に対して所定の角度で交差している直線状の先端側部位とを備えて「L」字状に形成されており、前記先端側部位の先端に前記測定子が位置しており、
前記タッチプローブでは、前記所定の軸と前記スタイラス本体部の基端側部位の中心軸とがお互いに一致しており、
前記被測定物における所定の一方向をX軸方向とし、このX軸方向に対して直交する所定の一方向をY軸方向とし、前記X軸方向と前記Y軸方向とに直交する所定の一方向をZ軸方向とすると、前記キャリブレーションゲージは、このキャリブレーション用曲面における前記仮想曲線の移動方向が前記X軸方向になっており、
前記キャリブレーと段階は、
前記被測定物における所定の被測定点を決定し、この所定の被測定点での法線ベクトルにおけるX軸方向とY軸方向とZ軸方向との3軸方向の成分を求め、
前記キャリブレーションゲージにおけるキャリブレーション用曲面内に存在し、法線ベクトルのY軸方向の成分とZ軸方向の成分とが前記所定の被測定点における法線ベクトルのY軸方向の成分とZ軸方向の成分と等しくなる所定の仮測定点を決定し、
前記所定の被測定点における法線ベクトルのX軸方向の成分に対応する分だけ前記スピンドルを回転させるとともに、前記法線ベクトルのY軸方向の成分とZ軸方向の成分とで形成される仮法線ベクトルの方向に、前記仮測定点から所定の距離だけ離れているところに前記測定子を位置させることで、前記設置済みタッチプローブを位置決めし、
前記測定子を前記仮法線ベクトルの方向であって前記キャリブレーションゲージ設置体に設置されているキャリブレーションゲージに接近する方向に、前記キャリブレーションゲージ設置体に設置されているキャリブレーションゲージに対して相対的に移動して、前記測定子を前記仮測定点に当接させて前記キャリブレーションをする段階であることを特徴とする被測定物の測定方法。
【請求項7】
ハウジングと、
前記ハウジングから突出しているスタイラス本体部と、
前記スタイラス本体部の先端に設けられている測定子と、
を有し、前記スタイラス本体部、前記測定子の少なくともいずれかが、所定の軸から離れていることを特徴とするタッチプローブ。
【請求項8】
請求項7に記載のタッチプローブにおいて、
前記タッチプローブのスタイラス本体部は、直線状の基端側部位とこの基端側部位に対して所定の角度で交差している直線状の先端側部位とを備えて「L」字状に形成されており、前記先端側部位の先端に前記測定子が位置しており、
前記所定の軸と前記スタイラス本体部の基端側部位の中心軸とがお互いに一致していることを特徴とするタッチプローブ。
【請求項9】
所定の1平面に所定形状の1本の仮想曲面を描き、この仮想曲線を前記所定の1平面に対して直交する方向に所定の距離だけ移動したときに、前記仮想曲線の軌跡で表される曲面である2次元曲面を、キャリブレーション用曲面として備えていることを特徴とするキャリブレーションゲージ。
【請求項10】
請求項9に記載のキャリブレーションゲージにおいて、
前記仮想曲線は、半円の円弧を備えて構成されていることを特徴とするキャリブレーションゲージ。
【請求項1】
被測定物が設置される被測定物設置体と、
筐体と所定の軸を中心にして前記筐体に回転自在に設けられているスピンドルとを具備し、前記筐体が前記被測定物設置体に対して相対的に移動位置決め自在になっているヘッドと、
前記スピンドルに一体的に設置されるハウジングと、前記ハウジングから突出しているスタイラス本体部とこのスタイラス本体部の先端に設けられている測定子とを具備するスタイラスとを備え、前記ハウジングが前記スピンドルに設置されたときに、前記スタイラス本体部、前記測定子の少なくともいずれかが、前記スピンドルの回転中心軸から離れているタッチプローブと、
を有し、前記ハウジングが前記スピンドルに設置されている設置済みタッチプローブを、前記スピンドルを用いてインデックス位置決めした状態で、前記筐体を前記被測定物設置体に対して相対的に移動し、前記被測定物設置体に設置された設置済み被測定物の形状を測定するように構成されていることを特徴とする被測定物の測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の被測定物の測定装置において、
キャリブレーションゲージが設置され、前記筐体に対して相対的に移動位置決め自在であるキャリブレーションゲージ設置体を有し、
前記設置済み被測定物の形状を前記設置済みタッチプローブで測定する前に、前記キャリブレーションゲージ設置体に設置された設置済みキャリブレーションゲージを用いてキャリブレーションをするように構成されており、
前記キャリブレーションゲージは、所定の1平面に所定形状の1本の仮想曲面を描き、この仮想曲線を前記所定の1平面に対して直交する方向に所定の距離だけ移動したときに、前記仮想曲線の軌跡で表される曲面である2次元曲面を、キャリブレーション用曲面として備えており、
前記キャリブレーションは、前記設置済みタッチプローブをインデッックス位置決めして、前記キャリブレーションをするように構成されている特徴とする被測定物の測定装置。
【請求項3】
請求項1に記載の被測定物の測定装置において、
キャリブレーションゲージが設置され、前記ヘッドの筐体に対して相対的に移動位置決め自在であるキャリブレーションゲージ設置体を有し、
前記設置済み被測定物の形状を前記設置済みタッチプローブで測定する前に、前記キャリブレーションゲージ設置体に設置された設置済みキャリブレーションゲージを用いてキャリブレーションをするように構成されており、
前記タッチプローブのスタイラス本体部は、直線状の基端側部位とこの基端側部位に対して所定の角度で交差している直線状の先端側部位とを備えて「L」字状に形成されており、前記先端側部位の先端に前記測定子が位置しており、
前記設置済みタッチプローブでは、前記スピンドルの回転中心軸と前記スタイラス本体部の基端側部位の中心軸とがお互いに一致しており、
前記キャリブレーションゲージは、所定の1平面に所定形状の1本の仮想曲面を描き、この仮想曲線を前記所定の1平面に対して直交する方向に所定の距離だけ移動したときに、前記仮想曲線の軌跡で表される曲面である2次元曲面を、キャリブレーション用曲面として備えており、
前記設置済み被測定物における所定の一方向をX軸方向とし、このX軸方向に対して直交する所定の一方向をY軸方向とし、前記X軸方向と前記Y軸方向とに直交する所定の一方向をZ軸方向とすると、前記設置済みキャリブレーションゲージは、このキャリブレーション用曲面における前記仮想曲線の移動方向が前記X軸方向になっており、
前記キャリブレーションは、
前記設置済み被測定物における所定の被測定点を決定し、この所定の被測定点での法線ベクトルにおけるX軸方向とY軸方向とZ軸方向との3軸方向の成分を求め、
前記設置済みキャリブレーションゲージにおけるキャリブレーション用曲面内に存在し、法線ベクトルのY軸方向の成分とZ軸方向の成分とが前記所定の被測定点における法線ベクトルのY軸方向の成分とZ軸方向の成分と等しくなる所定の仮測定点を決定し、
前記所定の被測定点における法線ベクトルのX軸方向の成分に対応する分だけ前記スピンドルを回転させるとともに、前記法線ベクトルのY軸方向の成分とZ軸方向の成分とで形成される仮法線ベクトルの方向に、前記仮測定点から所定の距離だけ離れているところに前記測定子を位置させることで、前記設置済みタッチプローブを位置決めし、
前記測定子を、前記仮法線ベクトルの方向であって前記設置済みキャリブレーションゲージに接近する方向で、前記設置済みキャリブレーションゲージに対して相対的に移動して、前記測定子を前記仮測定点に当接させて行うように構成されていることを特徴とする被測定物の測定装置。
【請求項4】
被測定物の測定方法において、
ハウジングと、このハウジングから突出しているスタイラス本体部とこのスタイラス本体部の先端に設けられている測定子とを具備するスタイラスとを備え、前記スタイラス本体部、前記測定子の少なくともいずれかが、所定の軸から離れているタッチプローブを、前記所定の軸を中心にして前記ハウジングを回動しインデックス位置決めするインデックス位置決め段階と、
前記インデックス位置決め段階で前記タッチプローブをインデックス位置決めしてある状態で、前記ハウジングを前記被測定物に対して相対的に移動し、前記被測定物の形状を前記タッチプローブで測定する測定段階と、
を有することを特徴とする被測定物の測定方法。
【請求項5】
請求項4に記載の被測定物の測定方法において、
前記インデックス位置決め段階で前記ハウジングをインデックス位置決めする前に、キャリブレーションゲージを用いてキャリブレーションをするキャリブレート段階を有し、
前記キャリブレーションゲージは、所定の1平面に所定形状の1本の仮想曲面を描き、この仮想曲線を前記所定の1平面に対して直交する方向に所定の距離だけ移動したときに、前記仮想曲線の軌跡で表される曲面である2次元曲面を、キャリブレーション用曲面として備えており、
前記キャリブレート段階は、前記所定の軸を中心にして前記ハウジングを回動し前記タッチプローブをインデッックス位置決めし、前記キャリブレーションをする段階であることを特徴とする被測定物の測定方法。
【請求項6】
請求項4に記載の被測定物の測定方法において、
前記インデックス位置決め段階で前記ハウジングをインデックス位置決めする前に、キャリブレーションゲージを用いてキャリブレーションをするキャリブレート段階を有し、
前記キャリブレーションゲージは、所定の1平面に所定形状の1本の仮想曲面を描き、この仮想曲線を前記所定の1平面に対して直交する方向に所定の距離だけ移動したときに、前記仮想曲線の軌跡で表される曲面である2次元曲面を、キャリブレーション用曲面として備えており、
前記タッチプローブのスタイラス本体部は、直線状の基端側部位とこの基端側部位に対して所定の角度で交差している直線状の先端側部位とを備えて「L」字状に形成されており、前記先端側部位の先端に前記測定子が位置しており、
前記タッチプローブでは、前記所定の軸と前記スタイラス本体部の基端側部位の中心軸とがお互いに一致しており、
前記被測定物における所定の一方向をX軸方向とし、このX軸方向に対して直交する所定の一方向をY軸方向とし、前記X軸方向と前記Y軸方向とに直交する所定の一方向をZ軸方向とすると、前記キャリブレーションゲージは、このキャリブレーション用曲面における前記仮想曲線の移動方向が前記X軸方向になっており、
前記キャリブレーと段階は、
前記被測定物における所定の被測定点を決定し、この所定の被測定点での法線ベクトルにおけるX軸方向とY軸方向とZ軸方向との3軸方向の成分を求め、
前記キャリブレーションゲージにおけるキャリブレーション用曲面内に存在し、法線ベクトルのY軸方向の成分とZ軸方向の成分とが前記所定の被測定点における法線ベクトルのY軸方向の成分とZ軸方向の成分と等しくなる所定の仮測定点を決定し、
前記所定の被測定点における法線ベクトルのX軸方向の成分に対応する分だけ前記スピンドルを回転させるとともに、前記法線ベクトルのY軸方向の成分とZ軸方向の成分とで形成される仮法線ベクトルの方向に、前記仮測定点から所定の距離だけ離れているところに前記測定子を位置させることで、前記設置済みタッチプローブを位置決めし、
前記測定子を前記仮法線ベクトルの方向であって前記キャリブレーションゲージ設置体に設置されているキャリブレーションゲージに接近する方向に、前記キャリブレーションゲージ設置体に設置されているキャリブレーションゲージに対して相対的に移動して、前記測定子を前記仮測定点に当接させて前記キャリブレーションをする段階であることを特徴とする被測定物の測定方法。
【請求項7】
ハウジングと、
前記ハウジングから突出しているスタイラス本体部と、
前記スタイラス本体部の先端に設けられている測定子と、
を有し、前記スタイラス本体部、前記測定子の少なくともいずれかが、所定の軸から離れていることを特徴とするタッチプローブ。
【請求項8】
請求項7に記載のタッチプローブにおいて、
前記タッチプローブのスタイラス本体部は、直線状の基端側部位とこの基端側部位に対して所定の角度で交差している直線状の先端側部位とを備えて「L」字状に形成されており、前記先端側部位の先端に前記測定子が位置しており、
前記所定の軸と前記スタイラス本体部の基端側部位の中心軸とがお互いに一致していることを特徴とするタッチプローブ。
【請求項9】
所定の1平面に所定形状の1本の仮想曲面を描き、この仮想曲線を前記所定の1平面に対して直交する方向に所定の距離だけ移動したときに、前記仮想曲線の軌跡で表される曲面である2次元曲面を、キャリブレーション用曲面として備えていることを特徴とするキャリブレーションゲージ。
【請求項10】
請求項9に記載のキャリブレーションゲージにおいて、
前記仮想曲線は、半円の円弧を備えて構成されていることを特徴とするキャリブレーションゲージ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2013−88341(P2013−88341A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−230657(P2011−230657)
【出願日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【出願人】(000003458)東芝機械株式会社 (843)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【出願人】(000003458)東芝機械株式会社 (843)
【Fターム(参考)】
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