説明

湿式クラッチブレーキの油圧制御装置

【課題】複雑で大きな油圧制御回路を必要とせず、クラッチブレーキ作動時のショックを防止できる湿式クラッチブレーキの油圧制御装置を提供する。
【解決手段】ブレーキバネ24でブレーキ機構20を作動させ、作動油の供給によりクラッチ機構15を作動させるクラッチシリンダ25を備えた湿式クラッチブレーキ10において、クラッチシリンダ25に供給する作動油の給排と圧力を制御するサーボ制御弁V1と、クラッチシリンダ内の実圧力を検出する圧力センサ35と、サーボ制御弁V1の開閉と吐出圧力を制御するコントローラ40を備えており、コントローラ40は、クラッチシリンダ25の目標圧力を指示する目標圧設定手段に、半クラッチ状態にするソフトクラッチ圧と、フルクラッチ動作を行わせるフルクラッチ圧と、半ブレーキ状態にするソフトブレーキ圧と、フルブレーキ動作を行わせるフルブレーキ圧を、目標圧として設定している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湿式クラッチブレーキの油圧制御装置に関する。たとえば、機械プレスには、外部動力源の動力を、クランク軸に伝達・遮断してプレスの作動を制御するクラッチブレーキ装置が設けられている。クラッチブレーキ装置には、大別して乾式と湿式があるが、本発明は湿式クラッチブレーキの油圧制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
機械プレス等の湿式クラッチブレーキ装置は、乾式クラッチブレーキ装置に比べて、制御性が良い。したがって、クラッチやブレーキ作動時のショックを防止でき、発生する騒音を低減できる。また、装置をコンパクトにでき、省エネルギー化でき、しかも、クラッチやブレーキのライニングの寿命を長くすることができる。このため、機械プレスでは湿式クラッチブレーキ装置が採用される場合がある(特許文献1,2参照)。
また、高速成形が必要な熱間鍛造用プレスでは、そのクラッチは大きなトルクを必要とするが、湿式クラッチブレーキ装置の騒音、振動の低さのため、油漏れによる火災の恐れがあるにも拘らず、最近採用されはじめている。
【0003】
機械式プレス等における湿式クラッチブレーキ装置は、クラッチ機構とブレーキ機構とからなり、クラッチ機構とブレーキ機構は、そのいずれか一方のみが機能するようにクラッチシリンダとブレーキバネで制御されている。また、クラッチシリンダを駆動するために油圧制御回路が組み込まれている。
【0004】
図10に、その油圧制御回路の一例を示す。この油圧制御回路は、プレス1サイクルの中でポンプから吐出する油と、各種バルブのON・OFF制御をスライドの位置測定に基づいて非常に短時間の中で実施し、ショックレス作動を達成させるため、油圧機器の構成は以下のように複雑なものとなっている。
【0005】
まず、基本的な作動回路は以下のとおりである。
同図において、101は高低圧の2連ポンプで、高低圧2本のアキュムレータ102,103に圧油を供給する。2本のアキュムレータ102,103はいずれもクラッチシリンダ125の油圧源であるが、低圧のアキュムレータ103はクラッチピストンの駆動に使用され、高圧のアキュムレータ102は必要なクラッチ力を確保するために用いられている。
104はロジックバルブで、開弁するとアキュムレータ103内の圧油がクラッチシリンダ125に供給され、閉弁すると圧油の供給が遮断される。105は前記ロジックバルブ104を開閉するパイロット制御弁である。
106は高圧アキュムレータ102用の電磁開閉弁で、クラッチ動作時には前記ロジックバルブ104の開弁によるクラッチシリンダ125の動作直後に開弁し、高圧アキュムレータ102からクラッチシリンダ125に高圧油を供給し、必要なクラッチ力を確保するようにしている。
107はクラッチシリンダ125内の圧力を急速に抜くための電磁開閉弁で、ブレーキ信号と同時に働く。
【0006】
以上の基本的回路の外、クラッチシリンダの制御性を向上するための調整回路が設けられている。
108は、電磁開閉弁107の圧抜き速度を制御する絞りである。
109は、電磁開閉弁でショック(騒音)防止のために設けている。すなわち、クラッチシリンダ125内の圧力を電磁開閉弁107で急速に抜くと、急ブレーキが作動して大きなショックと騒音が発生するので、これを防止するため、ブレーキ信号にて電磁開閉弁107をOFFにし、タイマー後に再度ONすると同時に、この電磁開閉弁109をOFFして、この回路から圧力を徐々に抜くようにしている。
【0007】
110は電磁開閉弁109から抜かれる流量をコントロールする弁である。
111は、流量コントロール用の電磁弁である。すなわち、ブレーキを効かすためには電磁弁109から圧油を抜くことになるが、電磁弁109,110のみでは微少な流量コントロールが実現できない。そのため、電磁弁111からクラッチシリンダに圧油を少量づつ供給しながら、電磁弁109,110から圧油を排出し、ブレーキのショックを柔らげるようにしている。
【0008】
以上のほか、安全確保や省エネルギーに対策のための安全対策回路も設けられている。
112は、電磁開閉弁107が作動不良となった場合でも、ブレーキが作動して安全を確保できるように設けた電磁開閉弁である。
113は、アキュムレータ102,103内の圧力が異常に高圧とならないように設けられている安全弁である。
114,115は高低圧アキュムレータ102,103の圧力が設定圧に達した後、アンロードさせポンプ駆動モータの電力を下げるための省エネ回路である。
【0009】
以上のような油圧回路により、プレス1サイクル毎のクラッチとブレーキの作動を実現しているのであるが、上記従来の油圧制御回路においては、プレス1サイクルの中でポンプから吐出する油と各種バルブのON・OFF制御を非常に短時間の中で実施し、ショックレス動作を達成させるため、油圧機器の構成は複雑なものとなっている。
また、クラッチシリンダ125に給排される作動油の圧力や流量が油温により変化するため、1度調整しても再度調整が必要となるのでプレスの運転に相当な熟練が必要となる。
さらに、制御性を維持するためには油温の管理が重要となり、油温をある設定範囲に保つためのヒーターやクーラーが必要で設備が大型化し、設備起動時の設定温度になるまでの時間が必要なため生産性を低下させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平10−305400号
【特許文献2】特開2001−58299号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は上記事情に鑑み、複雑で大きな油圧制御回路を必要とせず、プレスの運転にさほどの熟練を要せず、なおかつクラッチブレーキ作動時のショックを防止できる湿式クラッチブレーキ制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
第1発明の湿式クラッチブレーキの油圧制御装置は、外部駆動源とクランク軸とを接続・切断するクラッチ機構と、前記クランク軸を制動・解放するブレーキ機構と、作動油の供給圧力により前記クラッチ機構と前記ブレーキ機構を作動させるクラッチシリンダを備えた湿式クラッチブレーキにおいて、前記クラッチシリンダに供給する作動油の給排と圧力を制御する制御弁と、前記クラッチシリンダ内の実圧力を検出する圧力センサと、前記制御弁の開閉と吐出圧力を制御するコントローラを備えており、該コントローラは、前記クラッチシリンダの目標圧力を指示する目標圧設定手段と、該目標圧設定手段で与えられた目標圧力と、前記圧力センサで検出した実圧力との偏差が無くなるように前記制御弁を開閉する制御信号を出力する制御部とからなり、前記目標圧設定手段は、前記クラッチ機構を接続して前記ブレーキ機構を解放するフルクラッチ動作を行わせるフルクラッチ圧と、前記クラッチ機構を切断して前記ブレーキ機構を制動させるフルブレーキ動作を行わせるフルブレーキ圧を、目標圧として設定していることを特徴とする。
第2発明の湿式クラッチブレーキの油圧制御装置は、第1発明において、前記目標圧設定手段は、前記目標圧力として、前記クラッチ機構に半クラッチ動作を行わせるソフトクラッチ圧と、前記ブレーキ機構に半ブレーキ動作を行わせるソフトブレーキ圧を用い、前記ソフトクラッチ圧、前記フルクラッチ圧、前記ソフトブレーキ圧および前記フルブレーキ圧をその順で指令するように設定していることを特徴とする。
第3発明の湿式クラッチブレーキの油圧制御装置は、第2発明において、前記コントローラは、目標圧力としてフルブレーキ圧を指令し前記ブレーキ機構にフルブレーキ動作をさせた状態で、前記クランク軸を上死点で停止させることを特徴とする。
第4発明の湿式クラッチブレーキの油圧制御装置は、第2発明において、前記コントローラは、目標圧力としてソフトブレーキ圧を指令し前記ブレーキ機構に半ブレーキ動作をさせた状態で、前記クランク軸を上死点で停止させることを特徴とする。
第5発明の湿式クラッチブレーキの油圧制御装置は、第3発明において、前記コントローラは、前記フルブレーキ圧を指令するタイミング調整手段を備えており、前記クランク軸の停止位置が基準値より早いとき前記フルブレーキ圧の指令タイミングを遅らせ、前記クランク軸の停止位置が基準値より遅いとき前記フルブレーキ圧の指令タイミングを早めることを特徴とする。
第6発明の湿式クラッチブレーキの油圧制御装置は、第4発明において、前記コントローラは、前記ソフトブレーキ圧を指令するタイミング調整手段を備えており、前記クランク軸の停止位置が基準値より早いとき前記ソフトブレーキ圧の指令タイミングを遅らせ、前記クランク軸の停止位置が基準値より遅いとき前記ソフトブレーキ圧の指令タイミングを早めることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
第1発明によれば、クラッチシリンダ内の実圧力を検出して目標圧力に一致させる圧力フィードバック制御を行うため、油温の変化などによる制御性の悪化が生じない。このため、油温補償等のための制御弁やそれらを組み込んだ複雑な回路が不要なので、油圧制御回路が制御弁をクラッチシリンダと油圧源との間に介装する簡単な構成となる。また、フィードバック制御することにより油温に基づく制御誤差を補償できるため、油温管理を厳重に行う必要がなく、プレスの運転が容易となる。さらに、目標圧力の数値調整は容易なのでブレーキ動作とクラッチ動作の衝撃や騒音の回避が容易に行える。
第2発明によれば、フルクラッチの前に半クラッチ動作が自動で行え、フルブレーキの前に半ブレーキ動作が自動で行えるので、円滑なクラッチ接続とブレーキ動作が可能であり、騒音も生じにくい。しかも、それらの圧力やタイミングは目標圧力の数値調整だけで行えるので、ブレーキ機構とクラッチ機構の円滑かつフレキシブルな動作を容易に実現できる。
第3発明によれば、フルブレーキでクランク軸を上死点で停止させるので、プレススライド等の慣性の大きい物でも確実に目標停止位置で停止させることができる。
第4発明によれば、半ブレーキでクランク軸を上死点で停止させるので、プレススライド等を衝撃や騒音を大きく発生させないで、停止することができる。
第5発明によれば、クランク軸の停止位置が基準値より早いときは、フルブレーキ設定タイミングを遅らせ、停止位置が遅いときはフルブレーキ設定タイミングを早めるので、クランク軸の停止位置を基準値に自動的に収めることができる。このため、動作の狂いの累積が生じず、正確なタイミングでの運転が可能となる。
第6発明によれば、クランク軸の停止位置が基準値より早いときは、ソフトブレーキ設定タイミングを遅らせ、停止位置が遅いときはソフトブレーキ設定タイミングを早めるので、クランク軸の停止位置を基準値に自動的に収めることができる。このため、動作の狂いの累積が生じず、正確なタイミングでの運転が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態における湿式クラッチブレーキの油圧制御装置を示す油圧回路図および制御回路図である。
【図2】サーボ制御弁V1とクラッチシリンダ25の半クラッチ、フルクラッチ、半ブレーキ時の状態を示す油圧回路図である。
【図3】サーボ制御弁V1とクラッチシリンダ25のフルブレーキ時の状態を示す油圧回路図である。
【図4】プレス制御動作の一例を示す説明図であって、(A)はクラッチシリンダ25の目標圧力(L2)と実圧力(L3)を示す圧力線図であり、(B)はサーボ制御弁V1の開閉タイミングチャートである。
【図5】図4のプレス制御動作において、スライドの上死点停止位置調整制御を説明するタイミングチャートである。
【図6】本発明の油圧制御装置が適用される湿式クラッチブレーキの構造説明図である。
【図7】図6に示す湿式クラッチブレーキの要部拡大図である。
【図8】プレス制御動作の他の例を示す説明図であって、(A)はクラッチシリンダ25の目標圧力(L2)と実圧力(L3)を示す圧力線図であり、(B)はサーボ制御弁V1の開閉タイミングチャートである。
【図9】図8のプレス制御動作において、スライドの上死点停止位置制御を説明するタイミングチャートである。
【図10】従来の湿式クラッチブレーキにおける油圧制御回路の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
つぎに、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
まず、湿式クラッチブレーキの構成を説明する。図6は本発明の油圧制御装置が適用される湿式クラッチブレーキの一例を示している。
符号Aは機械プレスのクランク軸、Bは駆動軸であり、この駆動軸Bと前記クランク軸Aとは遊星歯車減速機Cを介して連結されている。Dはプレスフレームに取付けられた固定部材である。
【0016】
前記固定部材Dの外周には、フライホイールFが、回転可能に取付けられている。また、フライホイールFにはベルト車Eが同軸に固定されており、外部駆動源であるメインモータで回転されるようになっている。そして、このベルト車Eと前記駆動軸Bとの間には、両者を接続・切断し制動・解放する湿式クラッチブレーキ10が設けられている。
【0017】
前記湿式クラッチブレーキ10は、クラッチ機構15、ブレーキ機構20、クラッチシリンダ25からなる。
このクラッチシリンダ25には、駆動軸B内に形成した油路28と、駆動軸Bの先端に取付けたロータリジョイント29を経て作動油が供給されるようになっている。
また、このロータリジョイント29には、外部からの油路32が接続されている。
【0018】
図7に基づき、さらに湿式クラッチブレーキ10を詳細に説明する。
前記クラッチ機構15は、クラッチハウジング16とクラッチボス17と複数枚のディスク18a,18bからなる。
前記クラッチハウジング16は、ベルト車E側に連結された円筒状の回転部材であり、その内側に複数枚のディスク18aがスプライン等で結合されている。前記クラッチボス17は前記駆動軸Bにキー等で固定された円筒状の回転部材であり、その外側に複数枚のディスク18bがスプライン等で結合されている。
【0019】
前記クラッチハウジング16側のディスク18aとクラッチボス17側のディスク18bは互いにクシ歯状に入れ合わされており、後述するピストン26で圧縮すると、全てのディスク18a,18bが強く密着してクラッチが完全に接続した状態となり、ピストン26が離れるとすべてのディスク18a,18bが互いに離間してクラッチが遮断した状態となる。また、両方のディスク18a,18bが軽く接触すると、いわゆる半クラッチ状態となる。
【0020】
前記ブレーキ機構20は、ブレーキハウジング21とブレーキボス22と複数枚のディスク23a,23bとからなる。
前記ブレーキハウジング21は、プレスの固定部材Dに連結された円筒状の静止部材であり、その内側に複数枚のディスク23aがスプライン等で結合されている。前記ブレーキボス22は前記駆動軸Bにキー等で固定された円筒状の回転部材であり、その外側に複数枚のディスク23bがスプライン等で結合されている。
【0021】
前記ブレーキハウジング21側のディスク23aとブレーキボス22側のディスク23bは互いにクシ歯状に入れ合わされており、ピストン26で押圧すると、全てのディスク23a,23bが密着してブレーキが完全に効いた状態となり、ピストン26が離れると、全てのディスク23a,23bが互いに離間して、ブレーキが解放された状態となる。また、両方のディスク23a,23bが軽く接触すると、いわゆる半ブレーキ状態となる。
【0022】
つぎに、前記クラッチシリンダ25を説明する。
前記駆動軸Bの軸方向において、前記クラッチ機構15と、前記ブレーキ機構20との間には、ピストン26が設けられている。このピストン26とブレーキボス22側との間には、液密に密閉された油室27が形成されており、この油室27は、駆動軸Bの内部に形成された油路28およびロータリジョイント29を介して作動油が供給されるようになっている。上記したピストン26と油室27とでクラッチシリンダ25が構成されている。
【0023】
一方、前記ピストン26とクラッチボス17との間には、ブレーキバネ24が配設されている。このブレーキバネ24はピストン26を常時ブレーキ機構20側に押し付け、ブレーキを効かせるものである。
したがって、クラッチシリンダ25の油室27に油が供給されていない状態では、ピストン26はブレーキバネ24によって図中左方に向かって付勢される。このとき、ブレーキ機構20のディスク23a,23b同士が互いに密着してブレーキが効き、クラッチ機構15のディスク18a,18b同士は互いに離間してクラッチが切れた状態となる。すると、駆動軸Bもクランク軸Aも回転を停止する。この状態を、フルブレーキという。なお、フルブレーキには至らないが、ある程度ブレーキが効く状態を、半ブレーキという。
【0024】
逆に、クラッチシリンダ25の油室27に作動油を供給すると、ピストン26は油室27内の油圧によって図中右方に向かって付勢される。つまり、ブレーキバネ24を圧縮しつつ、ブレーキ機構20のディスク23a,23b同士が互いに離間してブレーキが解放され、クラッチ機構15のディスク18a,18b同士は互いに密着してクラッチが接続した状態となる。
すると、駆動軸Bはベルト車Eからの動力を受けて回転し、その回転が遊星歯車減速機Cを介してクランク軸Aに伝えられるので、クランク軸Aが起動回転する。この状態を、フルクラッチという。なお、フルクラッチには至らないが、ある程度クラッチが接続している状態を半クラッチという。
【0025】
以上のように、湿式クラッチブレーキ10は、クラッチシリンダ25の油室27への作動油の給排ならびに供給圧力を制御することにより、外部動力であるメインモータのクランク軸Aに対する接続・切断を制御することができる。また、クラッチの半接続(つまり、半クラッチ)もブレーキの半制動(つまり、半ブレーキ)も制御することができ、さらに、半クラッチおよび半ブレーキの程度も連続的に変えることができる。
【0026】
上記したクラッチ機構15のディスク18a,18b間およびブレーキ機構20のディスク23a,23b間には、ロータリジョイント29と駆動軸B内に設けた図示しない油路を介して潤滑油が供給されている。また、この潤滑油は回収されてクーラー等で冷却されるようになっている。
【0027】
つぎに、上記湿式クラッチブレーキ10を制御するための油圧制御装置を説明する。
図1の油圧回路図および制御回路図に示すクラッチシリンダ25、クラッチ機構15、ブレーキ機構20は、図6および図7で解説したものである。
このクラッチシリンダ25の油室27には、油圧源31から作動油が油路32を介して供給されるようになっている。33はタンクである。
V1はサーボ制御弁であって、特許請求の範囲にいう「制御弁」に相当し、前記油路32に介装されている。
【0028】
このサーボ制御弁V1は、4ポート3位置の方向制御弁であって、スプリングセンタ付勢電磁油圧駆動型の高速リニアサーボ弁である。
なお、このサーボ制御弁V1の駆動型式は特に制限がなく、電磁駆動型でもよく、パイロット油圧駆動型でもよく、それらの複合型であってもよい。
また、このサーボ制御弁V1は、給排時の作動油圧力を制御する圧力制御サーボ弁であり、電流や電圧等の入力値(目標値)に比例した圧力の作動油を供給することができる。
【0029】
前記サーボ制御弁V1の出力側油路32には圧力センサ35が接続されている。前記油路32はクラッチシリンダ25の油室27に連通しているので、圧力センサ35はクラッチシリンダの油室27内の実圧力を検出することができる。
なお、圧力センサ35は、クラッチシリンダ25により近いロータリジョイント29などに取付けてもよい。要するに、クラッチシリンダ25内の実圧力を検出することができれば、どこに取付けてもよいものである。
【0030】
図示の状態のサーボ制御弁V1は中立位置IIIであり、全てのポートはブロックされているので、クラッチシリンダ25内の油室27から作動油が排出されず、油室27内は一定圧に保たれている。
供給位置Iへ切換えると、油圧源31がクラッチシリンダ25の油室27に連通され、油室27内の圧力が上昇する。すると、ピストン26が右方向へ動き、ブレーキバネ24の圧縮力に抗してクラッチ機構15を接続する。
排出位置IIへ切換えると、タンク33にクラッチシリンダ25の油室27が連通して、油室27内の圧力が降下する。すると、ブレーキバネ24の圧縮力によってピストン26が左方向へ動き、ブレーキ機構20を作動させる。
上記の供給位置Iへの切換え、また排出位置IIへの切換えは、断続的ではなく連続的に行え、サーボ制御弁V1から吐出する作動油の圧力を連続的に変えることができる。
【0031】
40は前記サーボ制御弁V1を圧力フィードバック制御するコントローラである。このコントローラ40は、つぎのように構成されている。
41は制御器で、これには、圧力センサ35が検出したクラッチシリンダ25の実圧力検出値と後述する目標圧設定値が共に入力されるようになっている。制御器41は目標圧力と実圧力の偏差を演算し、その偏差が0になるように制御用指令信号を増幅器42に送る。増幅器42は、制御器41からの制御用指令信号に応じた駆動電流をサーボ制御弁V1のソレノイドV1sに駆動電流を送るものである。この駆動電流によりサーボ制御弁V1が開閉制御される。
43は信号発生器で、目標圧力信号を前記制御器41に供給する信号生成回路である。44は目標圧設定手段で、クラッチシリンダ25の目標圧力を設定する回路である。この目標圧設定手段44に設定されている目標圧力に対応させて、前記信号発生器43が目標圧力信号を出力する。なお、45はタイミング調整手段であるが、その詳細は後述する。
【0032】
前記目標圧設定手段44は、適宜のコンピュータプログラムで構成されている。
設定している目標圧力は、少なくとも二つ必要で、それはクラッチ機構を接続してブレーキ機構を解放するフルクラッチ動作を行わせるdフルクラッチ圧と、その後でクラッチ機構を切断してブレーキ機構を制動させるフルブレーキ動作を行わせるaフルブレーキ圧である。
好ましくは、さらに、二つの目標圧力を備えているのがよく、それはクラッチ機構に半クラッチ動作を行わせるcソフトクラッチ圧と、ブレーキ機構に半ブレーキ動作を行わせるbソフトブレーキ圧である。そして、本実施形態では、cソフトクラッチ圧、dフルクラッチ圧、bソフトブレーキ圧およびaフルブレーキ圧の四つが、その順で設定されている。
【0033】
上記の制御回路によると、目標圧設定手段44が目標圧力を出力すると、制御器41および増幅器42からの指令信号に基づき、サーボ制御弁V1が開閉動作を行い、クラッチシリンダ25に作動油が給排される。クラッチシリンダ25内の油室27内の圧力は圧力センサ35で制御器41にフィードバックされるので、目標圧力と実圧力の偏差が0となるように、サーボ制御弁V1が開閉制御される。このような圧力フィードバック制御に基づき、クラッチシリンダ25の実圧力は目標圧力に追随するので、予め設定した圧力をもって、クラッチ機構15とブレーキ機構20を任意に動作させることができる。すなわち、本制御回路によれば、フルブレーキ、半ブレーキ、フルクラッチおよび半クラッチを任意に制御することができる。
【0034】
図2および図3は、図1の発明の一実施形態を示す油圧回路図である。
本図では、サーボ制御弁V1を開閉制御する電子回路は省略している。また、本実施形態では、安全対策として安全弁V2,V3を油路32に介装している。この安全弁V2,V3は、いずれも4ポート2位置の開閉弁であって、スプリング付勢ソレノイド駆動でI位置とII位置をとることができる。その余の点は、図1の構成と実質的に異なることはない。
【0035】
図2に示すように、クラッチシリンダ25に作動油を供給するときは、サーボ制御弁V1が供給位置Iとなり、かつ2個の安全弁V2,V3は、いずれもI位置で直列に作動油が流れるように接続されている。
図3に示すように、クラッチシリンダ25から作動油を排出するときは、サーボ制御弁V1が排出位置IIとなり、かつ2個の安全弁V2,V3は、いずれもII位置で並列に作動油が流れるように接続されている。つまり、一方の安全弁V2(またはV3)が故障したとしても、ブレーキは確実に効き、両方の安全弁V2,V3が正常な場合のみクラッチが接続するようになっている。
【0036】
つぎに図4に基づき、図2〜3に示す実施形態の制御動作を説明する。
なお、以下の実施形態では、クラッチシリンダ25の目標圧力を以下のように設定しているが、これはブレーキバネ24の仕様等によって変動するものであり、あくまでも一例である。
図4に示すように、クラッチシリンダ25の目標圧力は、つぎのように設定されている。
a フルブレーキ圧 :0kgf/cm2
b ソフトブレーキ圧:20〜26kgf/cm2
c ソフトクラッチ圧:33〜40kgf/cm2
d フルクラッチ圧 :65〜70kgf/cm2
【0037】
そして、プレスの1サイクルの間で、サーボ制御弁V1の圧力制御は、つぎのシーケンスで繰り返される。
aフルブレーキ圧→cソフトクラッチ圧→dフルクラッチ圧→bソフトブレーキ圧→aフルブレーキ圧。以後はこの順を繰り返す。
なお、安全対策用の安全弁V2,V3は、II半クラッチ状態−IIIフルクラッチ状態−IV半ブレーキ状態の間は、いずれも供給位置にあり、Iフルブレーキ状態のみ排出位置となる。
【0038】
上記のバルブ開閉動作に基づく、クラッチブレーキの動作を図4に基づき説明する。
線L1(細線)は機械プレスのスライドの一サイクルを示し、Udは上死点、Ldは下死点を示している。
線L2(太点線)はサーボ制御弁V1で与えるクラッチシリンダ25の目標圧力を示している。
まず、図4下段のバルブ開閉タイミングチャート(B)と図4上段の目標圧力L2に基づき、サーボ制御弁V1の制御動作を説明する。この制御動作に基づくクラッチシリンダ25の実動作は後述する。
【0039】
I:ソフトクラッチ圧の指令
クランク軸(およびプレススライド)が上死点Udで停止している間に、ソフトクラッチ圧への目標圧力をステップ応答で指令する。また、同時に安全弁V2,V3を共にI位置とする。
上記の目標圧力は、ブレーキバネ24のクラッチ側ストローク端における吊合圧力と同じか、少し高い圧力とし、クラッチ接続時の衝撃とスライド起動タイミングをみて決めればよく、実施例では33〜40kg/cm2の中で最適値に決定している。この目標圧力の調整は、設定数値を変えるだけなので簡単に行える。
【0040】
II:フルクラッチ圧の指令
クランク軸(およびプレススライド)が上死点Udから少し動いた時、フルクラッチ圧力への目標圧力をステップ応答で指令する。
【0041】
III:ソフトブレーキ圧の指令
クランク軸(およびプレススライド)が下死点Ldに達した直後に、ソフトブレーキ圧への目標圧力をステップ応答で指令する。
【0042】
IV:フルブレーキ圧の指令
クランク軸(およびプレススライド)が上死点Udに戻る手前で、フルブレーキ圧への目標圧力指令する。すなわち、0圧を指令する。また、同時に安全弁V2,V3を共にII位置とする。
なお、上記の0圧力への指令タイミングは後述するタイミング調整手段で調整可能とされている。
【0043】
つぎに、図4上段の圧力線図(A)に基づき、クラッチシリンダ25によるブレーキ制御とクラッチ制御の実動作を説明する。なお、図4において、線L3(太実線)はクラッチシリンダ25の油室27内の実圧力を示している。
(Iフルブレーキ状態)
クラッチシリンダ25の実圧力が0のときクラッチシリンダ25のピストン26はブレーキバネ24の付勢力によってブレーキ機構20側にフルストロークしているので、フルブレーキの状態となっている。この状態では、スライドは上死点Udで停止している。
【0044】
(Iフルブレーキ→II半クラッチへ)
点線L2で示す目標圧力・ソフトクラッチ圧の指令があると、サーボ制御弁V1が開弁し、ソフトクラッチ圧の作動油がクラッチシリンダ25に供給される。これにより、クラッチシリンダ25内の圧力はやや遅れて急激に立上る。圧力がP1点に上昇した時点で、ブレーキバネ24が押し戻され始め、その後、緩やかに圧力が立上り、P2点でピストン26がクラッチ側に移動してブレーキバネ24と吊り合ったときピストン26のストロークが停止する。この状態では、ディスク18a,18bが軽く接触し、クラッチが半分効いた半クラッチ状態となる。
この半クラッチ状態になると、スライドが上死点から下降し始める。この状態の各弁の弁位置は図2に示すとおりである。すなわち、サーボ制御弁V1はI位置であり、安全弁V2,V3もI位置となっており、クラッチシリンダ25に作動油が供給される状態となっている。
【0045】
(II半クラッチ→IIIフルクラッチ)
目標圧力としてフルクラッチ圧を指令すると、サーボ制御弁V1がさらに開度を増し、フルクラッチ圧に上昇させた作動油がクラッチシリンダ25に供給される。これにより、目標圧力の指令より少し遅れて(P3点)、クラッチシリンダ25内の圧力が急上昇して、クラッチシリンダ25内はフルクラッチ圧になる(P4点)。この結果、ピストン26をクラッチ側にフルストロークさせクラッチを完全接続する。また、ブレーキバネ24は圧縮され、ブレーキは完全開放される。この状態になると、スライドにはクランク軸Aの回転駆動力がフルに伝えられ、スライドは高速下降する。
【0046】
(IIIフルクラッチ→IV半ブレーキ)
目標圧力としてソフトブレーキ圧を指令すると、サーボ制御弁V1が開弁度を小さくし、ソフトブレーキ圧に下降させた作動油がクラッチシリンダ25に供給される。これにより、目標圧力の指令より少し遅れて(P5点)クラッチシリンダ25内の圧力が急低下する。その圧力がP6点になるとブレーキバネ24と吊り合って、その後の圧力降下は緩やかとなり、P7点になるとブレーキバネ24によるブレーキがある程度効いて半ブレーキ状態となる。
このときスライドは下死点から上昇に転じているので、その上昇速度が緩やかに抑制されていく。
【0047】
(IV半ブレーキ→Iフルブレーキ)
スライドが上死点の手前、例えば300°の時点で、目標圧力としてフルブレーキ圧を指令すると、サーボ制御弁V1が図3に示すII位置に切換えられ、安全弁V2,V3もII位置に切換えられている。これにより、クラッチシリンダ25内の圧力はやや遅れて(P8点)、急激に低下し、フルブレーキ圧、すなわち0kgf/cm2となる(P9点)。この状態ではピストン26はブレーキバネ24でブレーキ機構20側にフルストロークしており、フルブレーキが効く。フルブレーキが効いた時点で、スライドは上死点Udで停止するように、フルブレーキのタイミングが調整されている。
【0048】
通常のプレス動作は、以上のクラッチブレーキ動作を順に行うことにより、実行される。
【0049】
つぎに、上死点停止位置のタイミング調整を説明する。
(IV上死点停止位置のタイミング調整)
プレスは1サイクルの最後に停止するが、最後のプレス停止時は、上記のごとく3つのバルブ、すなわちサーボ制御弁V1、安全弁V2,V3を全て排出位置IIとして作動油を排出する。このように、バルブ内に作動油を通過させるときは、作動油の温度によって排出時間が早くなったり遅くなったりする。その結果、スライドの停止位置が上死点の前後で狂ってしまうことがある。
このスライド停止位置の狂いを補償する制御を図1および図5に基づき説明する。
【0050】
図1に示すコントローラ40はタイミング調整手段45を備えている。このタイミング調整手段45は、クランク軸またはスライドの上死点での停止位置信号を取り込み、基準停止位置(360°すなわち0°)と比較し、その誤差に応じてフルブレーキ目標圧を指令するタイミングを早く又は遅く調整する演算回路である。クランク軸またはスライドの停止位置は、クランク軸に取付けられたエンコーダ等で検出できる。
【0051】
前記タイミング調整手段45における調整ロジックは、つぎのようになっている。
まず、フルブレーキ圧の指令タイミングは、本実施形態では、300°を基本指令角度Sdとしているが、その前後で5度きざみで数点の調整指令角度(たとえば、295°,305°,310°)を設定している。
実際のスライド停止角度が±5度以内ならば前回使用した指令角度とする。そして、−5度より早く停止してそれがN回続いたらフルブレーキ圧指令角度を遅らせる。たとえば、305°あるいは310°とする。遅らせる角度の選択は、早停止の度合いや頻度で選択すればよい。逆にスライド停止角度が、+5度より大きい場合はフルブレーキ圧指令角度を早め、たとえば295°とする。
このように、フルブレーキ時には、上死点停止角度を検出して常に上死点で停止するようにフィードバックをかけた制御とすることにより、スライドを上死点で正確に停止させることができるようになる。
【0052】
本実施形態の油圧制御装置によれば、つぎの利点がある。
1)微妙なクラッチシリンダ25の圧力を高応答なサーボ制御弁V1の圧力フィードバック制御で制御することにより、フレキシブルな制御が容易に実施できる。
2)目標圧力の調整も容易にできる。
3)圧力フィードバックにより、クラッチシリンダ25内の実圧力を制御するため、油温の変化などによるクラッチシリンダ内の圧力制御性の悪化を引き起こすことはない。
4)高応答のサーボ制御弁V1を使用することにより、熱間鍛造の高サイクル、高頻度にも使用できる。なお、サイクルが遅くサーボ弁より応答性の悪い比例制御弁でも使用できる場合には、サーボ制御弁の代わりに比例制御弁を使用してもよい。
5)高速成形が必要な熱間鍛造プレス用のクラッチは大きなトルクを必要とし、高圧油を用いることから油漏れが生じやすいが、本実施形態では、油圧回路が単純なので、油漏れ自体の可能性が小さいうえ、仮に油漏れがあった場合は少量の油漏れでも直ちに検出することができるため、火災などの災害を未然に防止できる。
【0053】
つぎに、本発明の他の実施形態を説明する。
図4に示すプレス制御動作では、スライドの上死点停止を、目標圧力をフルブレーキ圧としたフルブレーキで停止させていた。
これに対し、スライドの上死点停止を、ソフトブレーキ圧(目標圧力)とした半ブレーキで停止させてもよい。このプレス制御動作を、図8に基づき説明する。
【0054】
図8ではソフトブレーキも圧指令より以前の制御動作は示していないが、この点は図4に示すソフトクラッチ圧指令とフルクラッチ圧指令と同じである。
そこで、フルクラッチ圧以後の制御動作を説明する。
【0055】
(IV上死点停止動作)
スライドSが下死点Ldに至り、プレス加工を終えると上死点に向けて上昇しはじめる。この下死点Ldを越えてから目標圧力としてソフトブレーキ圧を指令する。これにより、マイナスの圧力偏差(電圧偏差)によりサーボ制御弁V1がII位置に切り替えられ、かつ、圧力偏差(電圧偏差)に相当する弁開度となりソフトブレーキ圧力で維持される。このとき、クラッチシリンダ25内の圧力が、ソフトブレーキ圧に下降するように排出される。このように、目標圧力の指令より少し遅れてクラッチシリンダ25内の圧力が低下しはじめ(P5点)、その圧力がP6点に低下するとピストン26が動きはじめる。そして、圧力がP7点になるとピストン26はブレーキ側ストローク端でブレーキバネ24と吊り合って、その後圧力降下して、P8点になると圧力差(P7−P8)に相当するブレーキバネ24によるブレーキが効いてくる。この状態が半ブレーキ状態である。
【0056】
この半ブレーキの間にスライドSは下死点から上昇に転じているので、その上昇速度が制動されていき、上死点Udに至ると、この半ブレーキ状態でスライドSは完全停止して保持される。つまり、スライドSの上死点停止後も半ブレーキ状態が継続する。
このように半ブレーキでスライドを停止させると、スライド停止時の衝撃が少なく騒音の発生も少なくなる。
【0057】
スライドが上死点で停止した後、目標圧力としてフルブレーキ圧を指令すると、サーボ制御弁V1はII位置のままでマイナスの圧力偏差(電圧偏差)に相当する弁開度となり、これにより、クラッチシリンダ25内の圧力は、急激に低下しはじめ(P9点から)、後にフルブレーキ圧、すなわち0kgf/cm2となる。この状態ではピストン26はブレーキバネ24でブレーキ機構20側にフルストロークしており、フルブレーキが効いている。したがって、慣性の大きいプレススライドも動くことはない。
【0058】
半ブレーキでスライド停止させるプレス制御動作での、タイミング調整手段45における調整方法を図9に基づき説明する。
ソフトブレーキ圧の指令タイミングの基本指令角度Sdに対し、その前後で5度きざみで数点の調整指令角度を設定しておく。
そして、実際のスライド停止角度が±5度以内ならば前回使用した指令角度とする。そして、−5度より早く停止してそれがN回続いたらソフトブレーキ圧指令角度を遅らせる。遅らせる角度の選択は、早停止の度合いや頻度で選択すればよい。逆にスライド停止角度が、+5度より大きい場合はフルブレーキ圧指令角度を早めればよい。
このように、ソフトブレーキ時において、上死点停止角度を検出して常に上死点で停止するようにフィードバックをかけた制御とすることにより、スライドを上死点で正確に停止させることができるようになる。
【0059】
(プレス以外の応用)
図6には機械プレスに使用した湿式クラッチブレーキ装置の一例を示したが、本図に示した湿式クラッチブレーキ装置10以外の構造を有するクラッチシリンダにも、本発明の制御装置を適用できる。
また、本発明の湿式クラッチブレーキ制御装置は、機械プレスに限られず、湿式クラッチブレーキ制御装置を使用する機械であれば、切断機やフォージングミル等の機械にも適用することができる。
【符号の説明】
【0060】
10 湿式クラッチブレーキ
15 クラッチ機構
20 ブレーキ機構
24 ブレーキバネ
25 クラッチシリンダ
26 ピストン
27 油室
35 圧力センサ
V1 サーボ制御弁
40 コントローラ
44 目標圧設定手段
45 タイミング調整手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部駆動源とクランク軸とを接続・切断するクラッチ機構と、前記クランク軸を制動・解放するブレーキ機構と、作動油の供給圧力により前記クラッチ機構と前記ブレーキ機構を作動させるクラッチシリンダを備えた湿式クラッチブレーキにおいて、
前記クラッチシリンダに供給する作動油の給排と圧力を制御する制御弁と、
前記クラッチシリンダ内の実圧力を検出する圧力センサと、
前記制御弁の開閉と吐出圧力を制御するコントローラを備えており、
該コントローラは、
前記クラッチシリンダの目標圧力を指示する目標圧設定手段と、
該目標圧設定手段で与えられた目標圧力と、前記圧力センサで検出した実圧力との偏差が無くなるように前記制御弁を開閉する制御信号を出力する制御部とからなり、
前記目標圧設定手段は、
前記クラッチ機構を接続して前記ブレーキ機構を解放するフルクラッチ動作を行わせるフルクラッチ圧と、前記クラッチ機構を切断して前記ブレーキ機構を制動させるフルブレーキ動作を行わせるフルブレーキ圧を、目標圧として設定している
ことを特徴とする湿式クラッチブレーキの油圧制御装置。
【請求項2】
前記目標圧設定手段は、前記目標圧力として、前記クラッチ機構に半クラッチ動作を行わせるソフトクラッチ圧と、前記ブレーキ機構に半ブレーキ動作を行わせるソフトブレーキ圧を用い、
前記ソフトクラッチ圧、前記フルクラッチ圧、前記ソフトブレーキ圧および前記フルブレーキ圧をその順で指令するように設定している
ことを特徴とする請求項1記載の湿式クラッチブレーキの油圧制御装置。
【請求項3】
前記コントローラは、目標圧力としてフルブレーキ圧を指令し前記ブレーキ機構にフルブレーキ動作をさせた状態で、前記クランク軸を上死点で停止させる
ことを特徴とする請求項2記載の湿式クラッチブレーキの油圧制御装置。
【請求項4】
前記コントローラは、目標圧力としてソフトブレーキ圧を指令し前記ブレーキ機構に半ブレーキ動作をさせた状態で、前記クランク軸を上死点で停止させる
ことを特徴とする請求項2記載の湿式クラッチブレーキの油圧制御装置。
【請求項5】
前記コントローラは、前記フルブレーキ圧を指令するタイミング調整手段を備えており、
前記クランク軸の停止位置が基準値より早いとき前記フルブレーキ圧の指令タイミングを遅らせ、
前記クランク軸の停止位置が基準値より遅いとき前記フルブレーキ圧の指令タイミングを早める
ことを特徴とする請求項3記載の湿式クラッチブレーキの油圧制御装置。
【請求項6】
前記コントローラは、前記ソフトブレーキ圧を指令するタイミング調整手段を備えており、
前記クランク軸の停止位置が基準値より早いとき前記ソフトブレーキ圧の指令タイミングを遅らせ、
前記クランク軸の停止位置が基準値より遅いとき前記ソフトブレーキ圧の指令タイミングを早める
ことを特徴とする請求項4記載の湿式クラッチブレーキの油圧制御装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−158718(P2010−158718A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−246055(P2009−246055)
【出願日】平成21年10月27日(2009.10.27)
【出願人】(502235326)住友重機械テクノフォート株式会社 (122)
【Fターム(参考)】