説明

湿式画像形成装置

【課題】樹脂がキャリア液中に溶解している液体現像剤を用いる場合においても、効率的にクリーニングを行うことができる湿式画像形成装置及び湿式画像形成方法を提供することを課題とする。
【解決手段】液体現像剤を用いて感光体ドラム表面の静電潜像を現像する湿式画像形成装置であって、前記液体現像剤が少なくとも顔料と樹脂と2種以上の不揮発性のキャリア液とを含み、前記2種以上のキャリア液のうち少なくとも1種のキャリア液は前記樹脂の溶解性が他のキャリア液とは異なっており、前記樹脂はキャリア液に溶解して存在している液体現像剤であること、並びに現像後の現像剤担持体上の残留液体現像剤に対して、前記2種以上のキャリア液のうち前記樹脂の溶解性が最も高いキャリア液を供給する手段、
その後に残留液体現像剤を回収する回収手段、及び回収後に残りのキャリア液を供給する手段を有することを特徴とする、湿式画像形成装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリンタ、複写機、ファクシミリ装置、又はこれらの機能を併せ持つ複合機等に採用され得る電子写真方式の1つである湿式現像法の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
一般に、帯電した着色粒子で静電潜像を顕像化する電子写真方式に用いる現像方式は、現像剤の形態により、乾式現像法と湿式現像法とに大別される。そのうち、湿式現像法では、電気絶縁性のキャリア液中に着色粒子を分散させた液体現像剤が用いられる。液体現像剤中で帯電した着色粒子は、電気泳動の原理により現像ローラ表面から感光体ドラム表面に移動し、感光体ドラム表面の静電潜像をトナー像(顕像)化する。得られたトナー像は感光体ドラムから記録媒体に転写される。液体現像剤は、着色粒子が大気中に飛散する可能性がほとんどないため、例えば平均粒子径がサブミクロンサイズの微細な着色粒子が使用でき、高解像度で階調性に優れた高画質な画像が得られる。
【0003】
また、従来、湿式画像現像装置において、周面に微細な凹部を有する供給ローラとドクターブレードとを用いて所定量に計量された液体現像剤を現像ローラ上に均一な厚みの薄層として転写する技術が知られている。そして、現像ローラ上に転写された液体現像剤の薄層は、像担持体への現像性能を向上する目的で現像ローラ近傍に配設された帯電器によってコンパクション処理(薄層中の現像剤成分を現像ローラ側に圧縮させる処理)された後、像担持体上の静電潜像に現像される。ところが、現像ローラから像担持体への現像効率が100%ではないことから、像担持体に現像されなかった現像剤が現像ローラ上に残留する。このような残留現像剤(残留トナー)が付着した状態の現像ローラでは、その周面に均一な厚みの液体現像剤の層を形成するのが極めて困難なため、像担持体への現像性能が著しく低下することから、上記現像ローラの周面を次回の像担持体への現像処理に用いた場合には、用紙上の転写画像に汚れ等の種々の不都合が生じることとなる。このため、現像ローラ上から残留現像剤を除去(クリーニング)する必要がある。
【0004】
これまでに報告されているクリーニング方法としては、現像器などの付着した残留液体現像剤をクリーニングするために、液体現像剤のキャリア液をクリーニング液として液体現像剤が接触する所定の1〜2カ所に供給し、残留現像剤の粘度を下げることでクリーニング性を向上させる技術がある(特許文献1)。
【0005】
一方、湿式画像形成装置において、樹脂がキャリア液中に溶解している液体現像剤を用いる場合、非加熱または低温加熱で定着が可能となるという利点がある。ところが、そのような液体現像剤を用いる場合、現像後の現像ローラ上の液体現像剤は、帯電付与によって現像ローラに強く付着するが、樹脂が溶解していることでその付着力が強くなり、クリーニングは一般の液体現像剤に比べ難しくなるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−10446号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、上記従来クリーニング技術では、上述したような非加熱または低温加熱で定着が可能な液体現像剤を用いる場合における十分なクリーニング性を確保できないため、非加熱・低温定着可能な液体現像剤を用いる場合の有効なクリーニング方法が求められていた。さらに、このような液体現像剤を用いる場合、回収液を再生液体現像剤として用いるために、回収率や搬送性を向上させる必要もあった。また、回収液において、樹脂濃度が上がることによる樹脂の析出を抑えることも必要である。
【0008】
よって、本発明は、樹脂がキャリア液中に溶解している液体現像剤を用いる場合においても、効率的にクリーニングを行うことができ、液体現像剤の搬送性にも優れた湿式画像形成装置及び湿式画像形成方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、前記課題に鑑みて鋭意検討を重ねた結果、液体現像剤に顔料と樹脂と2種以上の樹脂の溶解性が異なるキャリア液とを含有させ、さらに溶解性の高いキャリア液を現像剤担持体上の残留液体現像剤へ供給することにより、樹脂を含有する液体現像剤を用いる場合でも優れたクリーニング性を達成できることに着目し、さらに研究を重ねて本発明を完成した。
【0010】
すなわち、前記課題を解決するための本発明の一局面は、液体現像剤を用いて感光体ドラム表面の静電潜像を現像する湿式画像形成装置であって、前記液体現像剤が少なくとも顔料と樹脂と2種以上の不揮発性のキャリア液とを含み、前記2種以上のキャリア液のうち少なくとも1種のキャリア液は前記樹脂の溶解性が他のキャリア液とは異なっており、前記樹脂はキャリア液に溶解して存在している液体現像剤であること、並びに現像後の現像剤担持体上の残留液体現像剤に対して、前記2種以上のキャリア液のうち前記樹脂の溶解性が最も高いキャリア液を供給する手段、その後に残留液体現像剤を回収する回収手段、及び回収後に残りのキャリア液を供給する手段を有することを特徴とする、湿式画像形成装置である。
【0011】
このような構成により、樹脂を含んでいるために一般の液体現像剤よりも帯電付与によって現像ローラに強く付着する液体現像剤を用いる場合でも効率よくクリーニングすることが可能となる。すなわち、キャリア液のうち全てのキャリア液を混合したものよりも、樹脂の溶解性が高いキャリア液のみを用いることにより、樹脂の溶解速度が速くなり、クリーニング部におけるすり抜けなどのクリーニング不良を抑制することができる。
【0012】
また、回収された液体現像剤は再生液体現像剤として使用されるが、上記構成によれば、その際の回収性及び搬送性も向上する。
【0013】
通常、回収時に樹脂が析出してしまった場合、最初から2種以上のキャリア液の混合液を加えて混合しても、樹脂を再溶解できないことがある。その場合、その回収液は再生液体現像剤としては用いることができず、廃棄しなければならない。本発明に係る画像形成装置では、先に溶解性の高いキャリア液を加えるので、樹脂を必ず溶解させることができ、回収液における樹脂濃度上昇による樹脂の析出を防ぐことができる。よって、回収液を廃棄しなくてもすみ、回収性が上がる。
【0014】
一方、樹脂を溶解させた液体現像剤を用いて搬送経路で現像剤のつまりが起こると、液があふれて機内が汚れ、画像に悪影響を起こす。これに対し、樹脂が良好に溶解するキャリア液を添加すると、液の粘度が下がり、さらに樹脂の析出も起きないため、上記のような搬送経路中の現像剤のつまりを抑制できる。つまり、回収液の搬送性が上がる。
【0015】
さらには、再生液体現像剤を作製するときに、通常であれば樹脂を均一に溶解させるためにかなりの時間がかかるが、上記湿式画像形成装置を用いることにより、その撹拌時間あるいは撹拌の強さ(回転数など)を軽減させることができる。
【0016】
また、前記湿式画像形成装置において、回収手段がクリーニングブレード方式であることが好ましい。これにより、よりクリーニング性を高めることができる。さらに、樹脂の析出がクリーニングブレードで起こると、これもクリーニング不良につながるため、ブレードの交換が必要となる場合がある。よって、樹脂の析出を抑えられれば、ブレードの耐久性も上がるという利点がある。
【0017】
また、前記湿式画像形成装置において用いられる液体現像剤が含む樹脂は、環状オレフィン共重合体、スチレン系エラストマー、セルロースエーテル、ポリビニルブチラールから選択される少なくとも1種であることがより好ましい。このような樹脂を用いることにより、非加熱あるいは低温定着がより確実に行える。
【0018】
さらに、前記湿式画像形成装置が、回収した液体現像剤における顔料、キャリア液及び樹脂のそれぞれの濃度を測定して濃度調整を行う手段を有することが好ましい。これにより、回収液をより効率よく再生液体現像剤として調製することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る湿式画像形成装置及び湿式画像形成方法によれば、樹脂が溶解している液体現像剤を用いる場合のクリーニングを効率よく行い、高品質な画像を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】液体現像剤の循環系統を示す概略構成図である。
【図2】湿式画像形成装置が備える液体現像装置の周辺の概略構成図である。
【図3】湿式画像形成装置の概略構成図である。
【図4】液体現像剤循環装置を除いた湿式画像形成装置の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
<液体現像剤>
まず、本実施形態に係る画像形成装置において用いられ得る液体現像剤について説明する。
【0022】
本実施形態で用いる液体現像剤は、基本的構成として、少なくとも顔料と、樹脂と、2種以上の不揮発性のキャリア液とを有する。樹脂は液体現像剤中に溶解して存在しており、また2種以上のキャリア液のうち少なくとも1種のキャリア液は樹脂の溶解性が他のキャリア液と異なっている。
【0023】
[顔料]
本実施形態では、着色粒子として、顔料そのものを用いる。本発明に係る液体現像剤を用いることにより、顔料そのものを液体現像剤に含めることができ、それにより画像形成において結着樹脂を含むトナーを用いる場合のような加熱定着工程を経る必要がなくなるからである。つまり、熱エネルギーや光エネルギーを消費することなく、着色粒子としての顔料を記録媒体に定着させることができるため、湿式画像形成装置における消費エネルギーの削減が図られる。
【0024】
本実施形態における顔料としては、例えば、従来公知の有機顔料や無機顔料を特に限定することなく用いることができる。
【0025】
例えば、黒色顔料としては、カーボンブラック、オイルファーネスブラック、チャンネルブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、アニリンブラック等のアジン系色素、金属塩アゾ色素、金属酸化物、複合金属酸化物等が挙げられる。黄色顔料としては、カドミウムイエロー、ミネラルファストイエロー、ニッケルチタンイエロー、ネーブルスイエロー、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、ハンザイエロー10G、ベンジジンイエローGR、キノリンイエローレーキ、パーマネントイエローNCG、タートラジンレーキ等が挙げられる。橙色顔料としては、モリブデンオレンジ、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、インダンスレンブリリアントオレンジRK、ベンジジンオレンジG、インダンスレンブリリアントオレンジGK等が挙げられる。赤色顔料としては、ベンガラ、カドミウムレッド、パーマネントレッド4R、リソールレッド、ピラゾロンレッド、ウォッチングレッドカルシウム塩、レーキレッドD、ブリリアントカーミン6B、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、アリザリンレーキ、ブリリアントカーミン3B等が挙げられる。紫色顔料としては、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ等が挙げられる。青色顔料としては、C.I.Pigment Blue 15:3、コバルトブルー、アルカリブルー、ビクトリアブルーレーキ、フタロシアニンブルー、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー部分塩素化物、ファーストスカイブルー、インダンスレンブルーBC等が挙げられる。緑色顔料としては、クロムグリーン、酸化クロム、ピグメントグリーンB、マラカイトグリーンレーキ等が挙げられる。
【0026】
液体現像剤中の顔料の含有量は、1〜30質量%が好ましい。より好ましくは、3質量%以上であり、さらに好ましくは、5質量%以上である。また、より好ましくは、20質量%以下であり、さらに好ましくは、10質量%以下である。
【0027】
[樹脂]
本実施形態に係る液体現像剤において用いられ得る樹脂としては、キャリア液に溶解した状態で長期間安定して存在可能であること、及び、記録媒体への画像の転写後に、記録媒体の表面上でキャリア液中の樹脂の濃度が高くなって飽和溶解量を超えると、樹脂が記録媒体の表面上に留まって被膜を形成可能であることを条件として、特に限定なく用いることができる。
【0028】
なお、「記録媒体」とは、例えば、上質普通紙、プリント専用紙、コピー用紙、トレーシングペーパ、厚紙、OHPシート等、画像を形成することが可能なあらゆる記録媒体を意味する。以下の説明では、それらの記録媒体を指して単に「シート」という用語を用いることもある。
【0029】
具体的な例示としては、環状オレフィン共重合体、スチレン系エラストマー、セルロースエーテル、ポリビニルブチラール等が挙げられる。これらは単独で用いることも、2種以上組み合わせて用いることもできる。
【0030】
なお、本実施形態に係る液体現像剤では、樹脂は、キャリア液に溶解した状態で存在する。樹脂がキャリア液に溶解している状態とは、ゲルの状態も含まれる。樹脂の種類や分子量等によっては、樹脂がキャリア液中で相互に絡み合って流動性が相対的に低いゲルの状態になることがある。例えば、樹脂の濃度が高い場合や、樹脂とキャリア液との親和性が低い場合、あるいは気温が低い場合等はゲルの状態となることが多い。一方、キャリア液中での樹脂の相互の絡み合いが少なく、流動性が相対的に高いときは溶液の状態となる。
【0031】
本実施形態においては、樹脂が全てあるいは大半がキャリア液に溶解していることが必要となるため、キャリア液に溶解しない樹脂を使用することはできない(あるいは樹脂を溶解させることができないキャリア液を使用することはできない)。樹脂が粒子としてキャリア液中に存在すると、粒子は画像部にのみ存在し、記録媒体上に顔料等と一緒に転写される。不揮発性のキャリア液は記録媒体内部に浸透するため、少なくともキャリア液以外の顔料および粒子などが記録媒体表面上に留まるが、樹脂の粒子が析出して残っているとその粒子は固着が不十分であり、擦ったりすることにより顔料と共に記録媒体上から脱離してしまい画像が乱れる。しかし、樹脂が十分にキャリア液中に溶解して存在している場合には、キャリア液が記録媒体内部に浸透すると、樹脂が絡み合って析出し、顔料表面を覆うため、顔料は記録媒体表面へ強固に固着され、高品質な画像を得ることが可能となる。
【0032】
液体現像剤中の樹脂の含有量は、樹脂の種類によっても異なるが、例えば、1〜10質量%であることが好ましい。より好ましくは、2〜7質量%であり、さらに好ましくは、3.5〜5質量%である。
【0033】
樹脂の含有量が1質量%未満であると、記録媒体の表面上に留まる樹脂被膜の量が少なくなり過ぎ、造膜性ひいては定着性が過度に不足する可能性がある。また、樹脂の含有量が10質量%を超えると、記録媒体の表面上に留まる樹脂被膜の量が多くなり過ぎ、被膜の乾燥性が過度に低下し、被膜の粘着性(タック性)が過度に大きくなり、画像の耐擦過性が過度に低下する可能性がある。また、現像性が不足し、画像濃度が低くなり、かぶりが多くなる可能性もある。
【0034】
以下、本実施形態において使用し得る樹脂について、それぞれより具体的に説明する。
(環状オレフィン共重合体)
環状オレフィン共重合体は、環状オレフィン骨格を主鎖に有し、環境負荷物質を含まない、非晶性で熱可塑性のオレフィン系樹脂であり、透明性、軽量性、低吸水性等に優れたものである。より詳しくは、本実施形態においては、環状オレフィン共重合体は、主鎖が炭素−炭素結合からなり、主鎖の少なくとも一部に環状炭化水素構造を有する高分子化合物である。この環状炭化水素構造は、ノルボルネンやテトラシクロドデセンに代表されるような、環状炭化水素構造中に少なくとも一つのオレフィン性二重結合を有する化合物(環状オレフィン)を単量体として用いることで導入される。
【0035】
本実施形態で使用可能な環状オレフィン共重合体としては、環状オレフィン共重合体がキャリア液に溶解した状態で長期間安定して存在可能であること、及び、シートへの画像の転写後に、シートの表面上でキャリア液中の環状オレフィン共重合体の濃度が高くなって飽和溶解量を超えると、環状オレフィン共重合体がシートの表面上に留まって被膜を形成可能であることを条件として、例えば、(1)環状オレフィンの付加(共)重合体又はその水素添加物、(2)環状オレフィンとα−オレフィンとの付加共重合体又はその水素添加物、(3)環状オレフィンの開環(共)重合体又はその水素添加物、等が挙げられる。
【0036】
前記環状オレフィンの具体例としては、
(a)シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロオクテン;
(b)シクロペンタジエン、1,3−シクロヘキサジエン等の1環の環状オレフィン;
(c)ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン(ノルボルネン)、5−メチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5,5−ジメチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−エチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−ブチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−エチリデン−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−ヘキシル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−オクチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−オクタデシル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−メチリデン−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−ビニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−プロペニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン等の2環の環状オレフィン;
(d)トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,7−ジエン(ジシクロペンタジエン)、トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン;
(e)トリシクロ[4.4.0.12,5]ウンデカ−3,7−ジエン若しくはトリシクロ[4.4.0.12,5]ウンデカ−3,8−ジエン又はこれらの部分水素添加物(又はシクロペンタジエンとシクロヘキセンとの付加物)であるトリシクロ[4.4.0.12,5]ウンデカ−3−エン;
(f)5−シクロペンチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−シクロヘキシル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−シクロヘキセニルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−フェニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン等の3環の環状オレフィン;
(g)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン(テトラシクロドデセン)、8−メチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−エチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−メチリデンテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−エチリデンテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−ビニルテトラシクロ[4,4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−プロペニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン等の4環の環状オレフィン;
(h)8−シクロペンチル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−シクロヘキシル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−シクロヘキセニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−フェニル−シクロペンチル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン;
(i)テトラシクロ[7.4.13,6.01,9.02,7]テトラデカ−4,9,11,13−テトラエン(1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレン)、テトラシクロ[8.4.14,7.01,10.03,8]ペンタデカ−5,10,12,14−テトラエン(1,4−メタノ−1,4,4a,5,10,10a−へキサヒドロアントラセン);
(j)ペンタシクロ[6.6.1.13,6.02,7.09,14]−4−ヘキサデセン、ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]−4−ペンタデセン、ペンタシクロ[7.4.0.02,7.13,6.110,13]−4−ペンタデセン;ヘプタシクロ[8.7.0.12,9.14,7.111,17.03,8.012,16]−5−エイコセン、ヘプタシクロ[8.7.0.12,9.03,8.14,7.012,17.113,l6]−14−エイコセン;
(k)シクロペンタジエンの4量体等の多環の環状オレフィン;等が挙げられる。これらの環状オレフィンは、それぞれ単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0037】
前記α−オレフィンとしては、炭素数が2〜20、好ましくは2〜8のα−オレフィンが好ましく、その具体例としては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−へキセン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、3−エチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−へキセン、4,4−ジメチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、4−エチル−1−へキセン、3−エチル−1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセン等が挙げられる。これらのα−オレフィンは、それぞれ単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0038】
本実施形態においては、環状オレフィンの重合方法、環状オレフィンとα−オレフィンとの重合方法、及び得られた重合体の水素添加方法には、格別な制限はなく、公知の方法に従って行うことができる。
【0039】
本実施形態においては、環状オレフィン共重合体の構造には、格別な制限はなく、鎖状でも、分岐状でも、架橋状でもよいが、好ましくは直鎖状である。
【0040】
本実施形態においては、環状オレフィン共重合体としては、例えば、ノルボルネンとエチレンとの共重合体、又は、テトラシクロドデセンとエチレンとの共重合体が好ましく用いられ得るが、ノルボルネンとエチレンとの共重合体がより好ましい。その場合の、共重合体中のノルボルネンの含有率は、60〜82質量%が好ましく、60〜79質量%がより好ましく、60〜76質量%がさらに好ましく、60〜65質量%が一層好ましい。ノルボルネン含有率が60質量%未満であると、環状オレフィン共重合体の被膜のガラス転移温度が低くなり過ぎ、環状オレフィン共重合体被膜の造膜性が低下する可能性がある。ノルボルネン含有率が82質量%を超えると、環状オレフィン共重合体の被膜のガラス転移温度が高くなり過ぎ、環状オレフィン共重合体被膜による顔料つまり画像の定着性が低下する可能性がある。また、キャリア液への環状オレフィン共重合体の溶解性が過度に低くなる可能性がある。
【0041】
本実施形態においては、環状オレフィン共重合体として、市販されているものを使用することができる。例えば、ノルボルネンとエチレンとの共重合体として、トパス・アドヴァンスト・ポリマーズ・ゲーエムベーハー社製の「TOPAS(登録商標)TM」(ノルボルネン含有率:約60質量%)、「TOPAS(登録商標)TB」(ノルボルネン含有率:約60質量%)、「TOPAS(登録商標)8007」(ノルボルネン含有率:約65質量%)、「TOPAS(登録商標)5013」(ノルボルネン含有率:約76質量%)、「TOPAS(登録商標)6013」(ノルボルネン含有率:約76質量%)、「TOPAS(登録商標)6015」(ノルボルネン含有率:約79質量%)、「TOPAS(登録商標)6017」(ノルボルネン含有率:約82質量%)等が挙げられる。これらは状況に応じて単独で用いてもよいし2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0042】
(スチレン系エラストマー)
本実施形態で使用できるスチレン系エラストマーとしては、従来公知のものを特に限定なく使用することができる。その具体例としては、例えば、芳香族ビニル化合物と、オレフィン系化合物又は共役ジエン化合物とからなるブロック共重合体等が挙げられる。前記ブロック共重合体としては、例えば、芳香族ビニル化合物からなる重合体ブロックをAとし、オレフィン系化合物又は共役ジエン化合物からなる重合体ブロックをBとしたときに、式1で表される構造を有するブロック共重合体等が挙げられる。
【0043】
【化1】

【0044】
前記ブロック共重合体を構成する芳香族ビニル化合物としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、2,3−ジメチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、モノクロロスチレン、ジクロロスチレン、p−ブロモスチレン、2,4,5−トリブロモスチレン、2,4,6−トリブロモスチレン、o−tert−ブチルスチレン、m−tert−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、エチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン等が挙げられる。
【0045】
重合体ブロックAは、前記芳香族ビニル化合物のうちの1種から構成されていてもよいし、2種以上から構成されていてもよい。これらのうちでも、スチレン及び/又はα−メチルスチレンから構成されたものが、本実施形態に係る液体現像剤に好ましい物性を与える。
【0046】
前記ブロック共重合体を構成するオレフィン系化合物としては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、2−ブテン、イソブテン、1−ペンテン、2−ペンテン、シクロペンテン、1−ヘキセン、2−ヘキセン、シクロヘキセン、1−ヘプテン、2−ヘプテン、シクロヘプテン、1−オクテン、2−オクテン、シクロオクテン、ビニルシクロペンテン、ビニルシクロヘキセン、ビニルシクロヘプテン、ビニルシクロオクテン等が挙げられる。
【0047】
前記ブロック共重合体を構成する共役ジエン化合物としては、例えば、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン等が挙げられる。
【0048】
重合体ブロックBは、前記オレフィン系化合物及び前記共役ジエン化合物のうちの1種から構成されていてもよいし、2種以上から構成されていてもよい。これらのうちでも、ブタジエン及び/又はイソプレンから構成されたものが、本実施形態に係る液体現像剤に好ましい物性を与える。
【0049】
前記ブロック共重合体の好ましい具体例としては、例えば、ポリスチレン−ポリブタジエン−ポリスチレントリブロック共重合体又はその水素添加物、ポリスチレン−ポリイソプレン−ポリスチレントリブロック共重合体又はその水素添加物、ポリスチレン−ポリ(イソプレン/ブタジエン)−ポリスチレントリブロック共重合体又はその水素添加物、ポリ(α−メチルスチレン)−ポリブタジエン−ポリ(α−メチルスチレン)トリブロック共重合体又はその水素添加物、ポリ(α−メチルスチレン)−ポリイソプレン−ポリ(α−メチルスチレン)トリブロック共重合体又はその水素添加物、ポリ(α−メチルスチレン)−ポリ(イソプレン/ブタジエン)−ポリ(α−メチルスチレン)トリブロック共重合体又はその水素添加物、ポリスチレン−ポリイソブテン−ポリスチレントリブロック共重合体、ポリ(α−メチルスチレン)−ポリイソブテン−ポリ(α−メチルスチレン)トリブロック共重合体等が挙げられる。
【0050】
また、本実施形態で使用し得るスチレン系エラストマーとして、重合体ブロックA及び重合体ブロックBが式2で表される構造を有するスチレン−ブタジエン系エラストマー(SBS)が好ましい。
【0051】
【化2】

【0052】
前記スチレン−ブタジエン系エラストマーは、スチレンモノマーと、共役ジエン化合物であるブタジエンとを共重合させることにより得られる。好ましいスチレンモノマーとしては、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−ドデシルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレン、p−クロロスチレン等が挙げられる。
【0053】
前記スチレン−ブタジエン系エラストマーは、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)による分子量分布において、数平均分子量Mnは、好ましくは、1,000〜100,000の範囲内であり(式1参照)、より好ましくは、2,000〜50,000の範囲内である。また、重量平均分子量Mwは、好ましくは、5,000〜1,000,000の範囲内であり、より好ましくは、10,000〜500,000の範囲内である。その場合に、重量平均分子量Mwが2,000〜200,000の範囲内、好ましくは3,000〜150,000の範囲内に、少なくとも1つのピークが存在することが好ましい。
【0054】
前記スチレン−ブタジエン系エラストマーは、(重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn)の比の値は、好ましくは、3.0以下であり、より好ましくは、2.0以下である。
【0055】
前記スチレン−ブタジエン系エラストマーにおけるスチレン含有量(重合体ブロックAの含有量)は、好ましくは、5〜75質量%の範囲内であり(式2参照)、より好ましくは、10〜65質量%の範囲内である。スチレン含有量が5質量%未満であると、スチレン系エラストマーの被膜のガラス転移温度が低くなりすぎ、スチレン系エラストマー被膜の造膜性が低下する傾向となる。スチレン含有量が75質量%を超えると、スチレン系エラストマーの被膜の軟化点が高くなりすぎ、スチレン系エラストマー被膜による顔料つまり画像の定着性が低下する傾向となる。
【0056】
本実施形態においては、スチレン系エラストマーとして、市販されているものを使用することができる。例えば、スチレン−共役ジエンブロック共重合体として、クラレ社製の「セプトン」S1001、S2063、S4055、S8007や「ハイブラー」5127、7311、シェル社製の「クレイトン」、旭化成ケミカルズ社製の「アサプレン(登録商標)」T411、T413、T437や「タフプレン(登録商標)」A、315P 等、JSR社製の「JSR TR1086」、「JSR TR2000」、「JSR TR2250」、「JSR TR2827」等;スチレン−共役ジエンブロック共重合体の水素添加物として、JSR社製の「ダイナロン」6200P、4600P、1320P 等;スチレン−エチレン共重合体として、ダウ・ケミカル社製の「インデックス」等;組成物として、アロン化成社製の「アロンAR」、三菱化学社製の「ラバロン」等が挙げられる。これらは状況に応じて単独で用いてもよいし2種以上組み合わせて用いてもよい。なお、クラレ社製の「セプトン」S1001、S2063、S4055、S8007や「ハイブラー」5127、7311はスチレン−共役ジエンブロック共重合体の水素添加物である。
【0057】
(セルロースエーテル)
セルロースエーテルは、セルロース分子内の水酸基がアルコキシ基に置換された高分子である。置換率は、45〜49.5%が好ましい。また、アルコキシ基のアルキル部分が例えばヒドロキシル基等によって置換されていてもよい。セルロースエーテルの被膜は、強靭性、熱安定性等に優れている。
【0058】
本実施形態で使用可能なセルロースエーテルとしては、セルロースエーテルがキャリア液に溶解した状態で長期間安定して存在可能であること、及び、シートへの画像の転写後に、シートの表面上でキャリア液中のセルロースエーテルの濃度が高くなって飽和溶解量を超えると、セルロースエーテルがシートの表面上に留まって被膜を形成可能であることを条件として、例えば、メチルセルロース、エチルセルロース等のアルキルセルロース;ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等のヒドロキシアルキルセルロース;ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルエチルセルロース等のヒドロキシアルキルアルキルセルロース;カルボキシメチルセルロース等のカルボキシアルキルセルロース;カルボキシメチルヒドロキシエチルセルロース等のカルボキシアルキルヒドロキシアルキルセルロース;等が挙げられる。これらは状況に応じて単独で用いてもよいし2種以上組み合わせて用いてもよい。これらのうちでも、アルキルセルロースが好ましく、アルキルセルロースのうちでも、エチルセルロースが好ましい。
【0059】
本実施形態においては、セルロースエーテルとして、市販されているものを使用することができる。例えば、エチルセルロースとして、日進化成社製の「エトセル(登録商標)STD4」、「エトセル(登録商標)STD7」、「エトセル(登録商標)STD10」等が挙げられる。これらは状況に応じて単独で用いてもよいし2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0060】
(ポリビニルブチラール)
本実施形態において使用できるポリビニルブチラール(ブチラール樹脂:アルキルアセタール化ポリビニルアルコール)は、式3に示すように、水酸基を有し、親水性のビニルアルコール単位と、ブチラール基を有し、疎水性のビニルアセタール単位と、アセチル基を有し、ビニルアルコール単位とビニルアセタール単位との中間の性質の酢酸ビニル単位との共重合体である。本実施形態に係る液体現像剤においては、ブチラール化度(親水性部と疎水性部との割合を定めたもの)が60〜85mol%のポリビニルブチラールが被膜形成能(造膜性)に優れる点で好ましい。ポリビニルブチラールは、非極性溶剤に対して溶解性を示すビニルアセタール単位と、紙等の記録媒体に対して結着性を向上させるビニルアルコール単位とを有するため、キャリア液及び記録媒体の両方に対して親和性が高いものである。
【0061】
【化3】

【0062】
本実施形態で使用し得るポリビニルブチラールとしては、特に限定されない。例えば、ヘキスト社製の「Mowital(登録商標)」B20H、B30B、B30H、B60T、B60H、B60HH、B70H;積水化学工業社製の「エスレック(登録商標)」BL−1(ブチラール化度:63±3mol%)、BL-2(同:63±3mol%)、BL−S(同:70mol%以上)、BL−L、BH−3(同:65±3mol%)、BM−1(同:65±3mol%)、BM-2(同:68±3mol%)、BM−5(同:63±3mol%)、BM−S;電気化学工業社製の「デンカブチラール」#2000−L、#3000−1、#3000−2、#3000−3、#3000−4、#3000−K、#4000−1、#5000−A、#6000−C等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0063】
[キャリア液]
一般に、電気絶縁性のキャリア液は液体キャリアの役割を果たし、得られる液体現像剤の電気絶縁性を高めることを目的として用いられるが、本実施形態に係るキャリア液としては、後述の樹脂を溶解させることができるもの(樹脂の溶解度が相対的に高いもの)が少なくとも1種用いられる。
【0064】
そして、本実施形態に係る液体現像剤は少なくとも2種以上のキャリア液を含むが、そのうち少なくとも1種のキャリア液は上述した樹脂の溶解性が他の樹脂と異なっている。すなわち、本実施形態では、キャリア液として、少なくとも1種の樹脂の溶解度が相対的に高いもの(樹脂の良溶媒)と、樹脂の溶解度相対的に低いもの(樹脂の貧溶媒)を混合して用いる。
【0065】
さらに前記物性に加えて、例えば、25℃における体積抵抗が1012Ω・cm以上(換言すれば導電率が1.0pS/cm以下)の電気絶縁性有機溶剤が好ましい。
【0066】
このような2種以上のキャリア液の組み合わせとしては、例えば、2種のキャリア液を用いる場合は、樹脂の良溶媒として植物油等、樹脂の貧溶媒として常温で液体の脂肪族炭化水素等が用いられ得る。
【0067】
脂肪族炭化水素としては、例えば、液状のn−パラフィン系炭化水素、iso−パラフィン系炭化水素、ハロゲン化脂肪族炭化水素、分岐鎖を有する脂肪族炭化水素、又はそれらの混合物等が好ましい。より具体的には、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、ノナン、デカン、ドデカン、ヘキサデカン、ヘプタデカン、シクロヘキサン、パークロロエチレン、トリクロロエタン等が用いられ得る。環境対応(VOC対策)の観点から、不揮発性の有機溶剤、及び揮発性の相対的に低い有機溶剤(例えば沸点が200℃以上のもの等)が好ましく、例えば、炭素数が16以上の脂肪族炭化水素を比較的多く含む流動パラフィン等が好ましく用いられ得る。
【0068】
また、植物油の具体的な例示としては、例えば、トール油脂肪酸(主成分:オレイン酸、リノール酸)、植物油由来の脂肪酸エステル、大豆油、サフラワー油、ヒマシ油、アマニ油、桐油等が挙げられ、なかでもトール油脂肪酸等が好ましく用いられ得る。
【0069】
前記キャリア液としては市販のものを用いてもよく、例えば、松村石油研究所社製の流動パラフィン「モレスコホワイトP−55」、「モレスコホワイトP−40」、「モレスコホワイトP−70」、「モレスコホワイトP−200」;ハリマ化成株式会社製のトール油脂肪酸「ハートール FA−1」、「ハートールFA−1P」、「ハートールFA−3」;カネダ株式会社製の植物油ベースソルベント「ベジソルMT」「ベジソルCM」、「ベジソルMB」、「ベジソルPR」、植物油「桐油」;エクソンモービル社製の「アイソパーG」、「アイソパーH」、「アイソパーK」、「アイソパーL」、「アイソパーM」、「アイソパーV」;コスモ石油社製の流動パラフィン「コスモホワイトP−60」、「コスモホワイトP−70」、「コスモホワイトP−120」;日清オイリオ社製の植物油「大豆油白絞油 S」、「アマニ油」、「サフラワー油」;伊藤製油社製の植物油「ヒマシ油 LAV」、「ヒマシ油 工」等が好ましく用いられ得る。
【0070】
本実施形態に係る液体現像剤は、2種以上のキャリア液を含むが、用いるキャリア液の種類によってキャリア液全体の導電率ひいては液体現像剤の導電率が過度に高くならないように留意する。例えば、トール油脂肪酸をはじめ、植物性の油等は、流動パラフィン等のような脂肪族炭化水素等と比べると、一般に、導電率が高い。したがって、樹脂をキャリア液に良好に溶解させるために、キャリア液として前記油類を含むときは、その含有量に留意する必要がある。
【0071】
キャリア液全体における前記油類の含有量が多いほど、樹脂の溶解度の点で有利となるが、導電率の点で不利となる。一方、キャリア液全体における前記油類の含有量が少ないほど、導電率の点で有利となるが、樹脂の溶解度の点で不利となる。
【0072】
以上より、キャリア液全体における前記油類の含有量は、液体現像剤中に含まれる樹脂の種類や含有量等に依存するが、例えば、2〜80質量%であることが好ましい。2質量%未満では、樹脂をキャリア液に良好に溶解させることが困難となる。また、80質量%を超えると、キャリア液全体の導電率ひいては液体現像剤の導電率が過度に高くなる。液体現像剤の導電率が過度に高くなると、現像性が不足し、画像濃度が低くなり、かぶりが多くなる可能性がある。
【0073】
本実施形態では、液体現像剤の導電率は、例えば、200pS/cm以下であることが好ましい。したがって、好適な例示として、トール油脂肪酸等の前記油類に樹脂を溶解させ、得られた溶液(以下、本明細書において「樹脂溶液」ともいう)に高電気抵抗の脂肪族炭化水素を混合することにより、キャリア液全体の導電率ひいては液体現像剤の導電率を例えば200pS/cm以下に調整することが好ましい。
【0074】
なお、液体現像剤中のキャリア液全体の含有量は、特に限定はないが、70〜95質量%程度、好ましくは、80〜90質量%程度である。
【0075】
[分散安定剤]
本実施形態に係る液体現像剤は、さらに液体現像剤中の粒子の分散を促進し安定化するための分散安定剤を含有していてもよい。本実施形態で使用し得る分散安定剤としては、例えば、ビックケミー社製の「BYK−116」等が好適である。その他、ルーブリゾール社製の「ソルスパース9000」、「ソルスパース11200」、「ソルスパース13940」、「ソルスパース16000」、「ソルスパース17000」、「ソルスパース18000」や、ISP社製の「Antaron(登録商標)V−216」、「Antaron(登録商標)V−220」等も好ましく用いられ得る。
【0076】
液体現像剤中の分散安定剤の含有量は、0.5〜6質量%程度、好ましくは、1.5〜3質量%程度である。
【0077】
[製造方法]
本実施形態に係る液体現像剤は、キャリア液、顔料、樹脂、及び、状況に応じて分散安定剤を、例えば、ボールミル、サンドグラインダー、ダイノーミル、ロッキングミル等を用いて(ジルコニアビーズ等を用いるメディア分散型機でもよい)、状況に応じて数分〜10数時間かけて、十分に溶解又は混合・分散させることにより、製造することができる。
【0078】
本実施形態においては、キャリア液に樹脂を溶解させた後、顔料(状況に応じて分散安定剤と共に)を混合・分散させることにより、液体現像剤を製造してもよく、あるいは、樹脂溶液(キャリア液に樹脂を溶解させたものをいう)と、顔料分散体(キャリア液に顔料(状況に応じて分散安定剤と共に)を混合・分散させたものをいう)とをそれぞれ予め調製しておいて、これらを適宜の混合比(質量比)で混合することにより、液体現像剤を製造してもよい。
【0079】
<液体現像装置及び湿式画像形成装置>
次に、図面を参照して、本実施形態に係る湿式画像形成装置を説明する。なお、以下の説明で用いられる「上」、「下」、「左」、「右」等の方向を表す用語は、単に説明の明瞭化を目的とするものであり、本発明を何ら限定するものではない。また、以下の説明で用いられる「シート」という用語は、例えば、上質普通紙、プリント専用紙、コピー用紙、トレーシングペーパ、厚紙、OHPシート等、画像を形成することが可能なあらゆる記録媒体を意味する。
【0080】
なお、本実施形態に係る湿式画像形成装置は、上述した液体現像剤を用いる画像形成装置であって、後述するような、現像後の現像剤担持体上の残留液体現像剤に対して前記2種以上のキャリア液のうち前記樹脂の溶解性が最も高いキャリア液を供給する手段、並びに、その後に残留液体現像剤を回収する回収手段及び回収後に残りのキャリア液を供給する手段を有するものであれば、その他の機構については特に限定はない。
【0081】
本実施形態に係る湿式画像形成装置は、このような構成を有することにより、樹脂を含んでいるために一般の液体現像剤よりも帯電付与によって現像ローラに強く付着する液体現像剤を用いる場合でも効率よくクリーニングすることが可能となる。すなわち、キャリア液のうち全てのキャリア液を混合したものよりも、樹脂の溶解性が高いキャリア液のみを用いることにより、樹脂の溶解速度が速くなり、クリーニング部におけるすり抜けなどのクリーニング不良を抑制することができる。
【0082】
また、回収された液体現像剤は再生液体現像剤として使用されるが、上記構成によれば、その際の回収性及び搬送性も向上する。
【0083】
通常、回収時に樹脂が析出してしまった場合、最初から2種以上のキャリア液の混合液を加えて混合しても、樹脂を再溶解できないことがある。その場合、その回収液は再生液体現像剤としては用いることができず、廃棄しなければならない。本発明に係る画像形成装置では、先に溶解性の高いキャリア液を加えるので、樹脂を必ず溶解させることができ、回収液における樹脂濃度上昇による樹脂の析出を防ぐことができる。よって、回収液を廃棄しなくてもすみ、回収性が上がる。
【0084】
一方、樹脂を溶解させた液体現像剤を用いて搬送経路で現像剤のつまりが起こると、液があふれて機内が汚れ、画像に悪影響を起こす。これに対し、樹脂が良好に溶解するキャリア液を添加すると、液の粘度が下がり、さらに樹脂の析出も起きないため、上記のような搬送経路中の現像剤のつまりを抑制できる。つまり、回収液の搬送性が上がる。
【0085】
さらには、再生液体現像剤を作製するときに、通常であれば樹脂を均一に溶解させるためにかなりの時間がかかるが、上記湿式画像形成装置を用いることにより、その撹拌時間あるいは撹拌の強さ(回転数など)を軽減させることができる。
【0086】
また、前記湿式画像形成装置において、回収手段がクリーニングブレード方式であることが好ましい。これにより、よりクリーニング性を高めることができる。さらに、樹脂の析出がクリーニングブレードで起こると、これもクリーニング不良につながるため、ブレードの交換が必要となる場合がある。よって、樹脂の析出を抑えられれば、ブレードの耐久性も上がるという利点がある。
【0087】
より具体的には、まず図1を参照しながら、液体現像剤を現像装置106に供給すると共に、液体現像剤を現像装置106から回収して再利用する、液体現像剤の循環系統について説明する。図1は、後述する液体現像剤循環装置のうちの一つである液体現像剤循環装置LCの概略構成図であり、液体現像剤の循環系統を模式的に示す。他の液体現像剤循環装置LY、LM、LBも同じ構成である。液体現像剤循環装置LCは、液体現像剤を現像装置106に供給すると共に、リザーブタンク108Aに回収された液体現像剤を再利用するためのものである。
【0088】
液体現像剤循環装置LCは、現像剤調整タンク109、キャリアAタンク、キャリアBタンク、顔料分散体タンク、樹脂溶液タンク、現像剤リザーブタンク108Aと108B、クリーニング装置104を含む。
【0089】
クリーニング装置104は、現像ローラ102から残留液体現像剤を回収する。回収された液体現像剤はリザーブタンク108Aを介して現像剤調製タンク109に送られる。なお、クリーニング装置104としては、クリーニングブレード方式のクリーニング装置を用いることが好ましい。
【0090】
キャリアBタンクからは、上述したキャリア液のうち、樹脂の溶解性が高いキャリア液(樹脂の良溶媒、以下キャリアBとも称す)が供給され、キャリアBは流路変更部材(例えば、三方コック)110によって流路を変えて、調製タンク109又は現像剤担持体(現像ローラ)102上の残留液体現像剤へと供給される。なお、前記液体現像剤において、3種以上のキャリア液を用いる場合は、キャリアBタンクへはそのうち最も樹脂の溶解度が高いキャリア液を供給する。
【0091】
なお、キャリアBは、後述の図2に示されるように、クリーニング装置104より手前に供給される。このような構成により、残留液体現像剤中の樹脂が析出することなく、残留液体現像剤の回収性および搬送性が著しく向上する。なお、ここで用いられる供給手段としては、特に限定はなく、通常のクリーニング液供給手段であれば使用できる。また、キャリアBの供給量も、残留液体現像剤中の樹脂が析出することなく溶解する程度の量である限り特に限定はされない。
【0092】
現像剤調整タンク109は、現像剤の濃度調整システムであり、回収された液体現像剤に、現像装置106で用いられる現像剤よりも濃度が高い顔料、樹脂あるいはキャリアAおよびBを加えることで、顔料濃度を適正範囲に調整するものである。顔料濃度が調整された液体現像剤は、リザーブタンク108Bを介して現像装置106に再度供給される。
【0093】
固形分濃度検出装置111は、現像剤調整タンク109内の液体現像剤の顔料及び樹脂の濃度を検出するための装置である。現像剤調整タンク109に接続されている環状のパイプに、固形分濃度検出装置111が接続されている。現像剤調整タンク109内の液体現像剤は、固形分濃度検出装置111へ導かれ、その後、現像剤調整タンク109に戻される。
【0094】
キャリアBタンクおよびキャリアAタンクは、それぞれのキャリア液を収納するタンクである。固形分濃度検出装置111により、現像剤調整タンク109内の顔料及び樹脂の濃度が適正範囲よりも高いと判定された場合に、それぞれのキャリアタンクから現像剤調整タンク109内にキャリア液が供給され、現像剤調整タンク109内の液体現像剤の顔料濃度が下げられる。この際、再生液体現像剤のキャリア液中におけるキャリアBの比率が、上述した範囲となるように調整する。
【0095】
なお、キャリアAタンクと現像剤調整タンク109とはパイプで接続されており、パイプにはポンプが配設されている。ポンプの駆動によってキャリアAタンクから現像剤調整タンク109にキャリア液が供給される。図面では図示していないが、さらに別のキャリア液を収納するキャリアタンクを有していてもよい。この場合、用いられるその他のキャリア液はキャリアBより、前記樹脂の溶解性が劣るキャリア液である。またキャリアBタンクは現像剤調整タンク109に接続され、かる流路変更部材110により現像剤担持体(現像ローラ)102上の残留液体現像剤へも供給される。
【0096】
樹脂分散体タンクは、現像装置106で用いられる現像剤よりも樹脂濃度が高い液体現像剤を収納するタンクである。固形分濃度検出装置111により、現像剤調整タンク109内の樹脂の濃度が適正範囲よりも低いと判定された場合に、樹脂タンクから現像剤調整タンク109内に樹脂濃度が高い樹脂が供給され、現像剤調整タンク109内の液体現像剤の樹脂濃度が上げられる。樹脂タンクと現像剤調整タンク109とはパイプで接続されており、パイプにはポンプが配設されている。このポンプの駆動によって樹脂タンクから現像剤調整タンク109に樹脂が供給される。
【0097】
顔料分散体タンクは、現像装置106で用いられる現像剤よりも顔料分散体濃度が高い液体現像剤を収納するタンクである。固形分濃度検出装置111により、現像剤調整タンク109内の顔料分散体の濃度が適正範囲よりも低いと判定された場合に、顔料分散体タンクから現像剤調整タンク109内に顔料分散体濃度が高い顔料分散体が供給され、現像剤調整タンク109内の液体現像剤の顔料分散体濃度が上げられる。顔料分散体タンクと現像剤調整タンク109とはパイプで接続されており、パイプにはポンプが配設されている。このポンプの駆動によって顔料分散体タンクから現像剤調整タンク109に顔料分散体が供給される。
【0098】
このようにして回収された残留液体現像剤は再生液体現像剤として調製されて再び現像に用いられる。なお、再生液体現像剤中の各組成比が上述した液体現像剤のものを同じとなるように、再生液体現像剤は調製される。
【0099】
現像剤調整タンク109内には、液体現像剤を攪拌するための攪拌装置109aが配設されている。攪拌装置109aによる攪拌の目的は、濃度調整のために現像剤調整タンク109内へ導入された顔料分散体又はキャリア液が、現像剤調整タンク109内の既存の液体現像剤と均一に混ざるようにするため、また、現像剤調整タンク109内に収容されている液体現像剤において凝集することがある顔料分散体を再分散させることである。攪拌装置109aは、回転軸と、この回転軸の先端に取り付けられた攪拌羽根とを含む。
【0100】
現像剤リザーブタンク108Bは、液体現像剤供給手段を介して現像装置106に補給する液体現像剤を収納するタンクである。リザーブタンク108Bは、現像剤調整タンク109とパイプで接続されており、パイプにはポンプが配設されている。このポンプの駆動によって、現像剤調整タンク109からリザーブタンク108Bに液体現像剤が供給される。
【0101】
なお、図示は省略しているが、それぞれのタンクには、これらタンク内の液面高さを検知するための液面検出装置が設けられている。
【0102】
次に、図2は本実施形態に係る湿式画像形成装置が備える液体現像装置の周辺の概略構成図である。
【0103】
現像容器112は、その内部に、液体現像剤が供給され、液体現像剤を貯留する。液体現像剤は、上述したようにキャリア液と樹脂と顔料との濃度調整が予め行われた後、供給ノズルから現像容器112の内部へ供給される。
【0104】
塗布ローラ103は現像容器112の略中央に配置され、供給ローラ105に下方から当接されてニップ部を形成する。供給ローラ105は、塗布ローラ103の直上ではなく、供給ノズル278から離れる方向にずれて配置されていてもよい。供給ローラ105の周面には液体現像剤を保持するための溝が設けられる。
【0105】
供給ノズルから供給される液体現像剤は、供給ローラ105と塗布ローラ103とのニップ部の塗布ローラ103の回転方向上流側で一時的に滞留され、両ローラの回転に伴って、供給ローラ105の溝に保持された状態で上方へ運ばれる。規制ブレード107は、供給ローラ105の周面に圧接され、供給ローラ105の溝に保持される液体現像剤の量が所定量になるように規制する。規制ブレード107により掻き落とされた余剰の液体現像剤は、現像容器112の底部に貯留される。
【0106】
現像ローラ102は、現像容器140の上部開口部に、供給ローラ105と接するように配置される。現像ローラ102は供給ローラ105と同方向に回転される。この結果、現像ローラ102と供給ローラ105とが当接するニップ部では、現像ローラ102の表面は供給ローラ105の表面と逆方向に移動する。これにより、現像ローラ102の周面には、供給ローラ105の周面に保持された液体現像剤が受け渡される。供給ローラ105の溝に保持される液体現像剤の量(液体現像剤の薄層の厚み)が所定値に規制されているので、現像ローラ102の表面に担持される液体現像剤の量(液体現像剤の薄層の厚み)もまた所定値に保たれる。
【0107】
現像ローラ102は感光体ドラム101と接し、感光体ドラム101の表面の静電潜像の電位と現像ローラ102に印加される現像電界との電位差によって、画像データに基づいたトナー像が感光体ドラム10の表面に形成される。
【0108】
現像クリーニング装置(クリーニングブレード)104は、現像ローラ102の感光体ドラム101との接触部の回転方向下流側に接触するように配置され、感光体ドラム101への現像動作を終えた現像ローラ102の表面の液体現像剤を除去する。
【0109】
上述したように、樹脂の溶解性の高いキャリアBは、クリーニング装置104より手前に供給され、樹脂の溶解性がキャリアBより低いキャリアAは、残留液体現像剤が回収された後に供給される。
【0110】
現像クリーニング装置104で除去された液体現像剤は回収され、濃度調整システム(現像剤調整タンク109)に搬送される。
【0111】
次に、図3および図4を用いて、本実施形態で用いられ得る湿式画像形成装置の一実施態様について説明するが、本発明の湿式画像形成装置はこの態様に限定はされない。なお、図3は湿式画像形成装置の概略構成図であり、図4は液体現像剤循環装置を除いた湿式画像形成装置の概略断面図である。また、以下に説明する湿式画像形成装置はカラープリンタであるが、例えば、モノクロプリンタ、複写機、ファクシミリ装置、これらの機能を併せ持つ複合機等、シート、すなわち記録媒体に画像を形成することができるその他のあらゆる湿式画像形成装置でも構わない。
【0112】
図3に示すように、カラープリンタ1は、画像形成のための様々なユニットや部品が収納される上側本体部1A(装置本体)と、この上側本体部1Aの下部に配置され、各色用の液体現像剤循環装置LY、LM、LC、LBが収納される下側本体部1Bとから構成されている。ここでは、上側本体部1Aと下側本体部1Bとを結ぶ配管類は図示を省略している。
【0113】
図4に示すように、上側本体部1A内には、画像データに基づいてトナー像を形成するタンデム式の画像形成部2と、用紙を収容する用紙収納部3と、画像形成部2で形成されたトナー像を用紙上に転写する二次転写部4と、転写されたトナー像を用紙上に定着させる定着部5と、定着の完了した用紙を排紙する排出部6と、用紙収納部3から排出部6まで用紙を搬送する用紙搬送部7とが配置されている。
【0114】
画像形成部2は、中間転写ベルト21と、中間転写ベルト21のクリーニング部22と、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(Bk)の各色にそれぞれ対応した画像形成ユニットFY、FM、FC、及びFBとを含む。
【0115】
中間転写ベルト21は、導電性を有し、用紙搬送方向に直交する方向における長さが最大の用紙より幅広であって、無端状、すなわちループ状のベルト状部材であり、図3および図4において時計回りに循環駆動される。中間転写ベルト21の循環駆動において外側を向く面を以下、表面と称し、他方の面を裏面と称する。
【0116】
画像形成ユニットFY、FM、FCおよびFBは、中間転写ベルト21の近傍に4つ並べて中間転写ベルト21のクリーニング部22と二次転写部4との間に配置される。なお、各画像形成ユニットFY、FM、FC、FBの配置の順番はこの限りではないが、各色の混色による完成画像への影響を配慮すると、この配置が好ましい。
【0117】
画像形成ユニットFY、FM、FCおよびFBのそれぞれは、感光体ドラム10(像担持体)と、帯電器11と、LED露光装置12と、現像装置106と、一次転写ローラ20と、クリーニング装置26と、除電装置13と、キャリア液除去ローラ30とを含む。また、画像形成ユニットFY、FM、FCおよびFBのうち、最も二次転写部4に近い位置に位置する画像形成ユニットFBには、キャリア液除去ローラ30が設けられていないが、その他の構成は同一である。
【0118】
各画像形成ユニットFY、FM、FC、FBに対応して、それぞれ液体現像剤循環装置LY、LM、LC、LBが設けられ、各色の液体現像剤の供給、並びに回収が行われるようになっている。液体現像剤循環装置LY、LM、LC、LBについては後に詳述する。
【0119】
感光体ドラム10は、円柱状の部材であって、その表面に帯電(本実施形態ではプラス極性に帯電)した顔料を含むトナー像を担持可能である。感光体ドラム10は、図1および図2において反時計回りに回転可能な部材である。帯電器11は、感光体ドラム10の表面を一様に帯電させることができる機器である。露光装置12は、LED等の光源を有し、外部の機器から入力される画像データに応じて、一様に帯電した感光体ドラム10の表面に光を照射する。これにより、感光体ドラム10の表面には、静電潜像が形成される。
【0120】
現像装置106は、誘電性液体のキャリア(分散媒)中に固形分である顔料分散体(分散質)を分散させた液体現像剤を、感光体ドラム10の表面の静電潜像に対向するように保持することで、静電潜像に顔料を付着させる。これにより、静電潜像はトナー像として現像される。
【0121】
一次転写ローラ20は、中間転写ベルト21の裏面に、感光体ドラム10と対向して配置されている。一次転写ローラ20には、図示しない電源からトナー像中の顔料とは逆極性(本実施形態ではマイナス)の電圧が印加される。つまり、一次転写ローラ20は、中間転写ベルト21と接触している位置で、中間転写ベルト21に顔料と逆極性の電圧を印加する。中間転写ベルト21は導電性を有するので、この印加電圧によって、中間転写ベルト21の表面側及びその周辺に顔料が引き付けられる。中間転写ベルト21は、トナー像を担持して、用紙まで搬送する像担持体として機能する。
【0122】
感光体ドラムのクリーニング装置26は、感光体ドラム10から中間転写ベルト21に転写されずに残留した液体現像剤をクリーニングするための装置であって、感光体ドラム10の表面上の残留液体現像剤を掻き取るクリーニングブレード262を有する。
【0123】
除電装置13は、除電用の光源を有し、次の周回による画像形成に備えて、クリーニングブレード262による液体現像剤除去後、感光体ドラム10の表面を光源からの光によって除電する。
【0124】
キャリア液除去ローラ30は、感光体ドラム10の回転軸と平行な回転軸を中心として感光体ドラム10と同方向に回転可能な略円柱状の部材である。キャリア液除去ローラ30は、感光体ドラム10と中間転写ベルト21とが接触する位置よりも二次転写部4が配置されている側に配置されており、中間転写ベルト21の表面からキャリア液を除去する部材である。
【0125】
用紙収納部3は、トナー像を定着させる用紙を収納する部分であって、上側本体部1Aの下部に配置されている。また、用紙収納部3は、用紙を収納している給紙カセットを有している。
【0126】
二次転写部4は、中間転写ベルト21上に形成されたトナー像を用紙に転写する部分であって、中間転写ベルト21を支持する支持ローラ41と、支持ローラ41に対向して配置された二次転写ローラ42とを有する。
【0127】
定着部5は、用紙にトナー像を定着させる部分であって、二次転写部4の上側に配置されている。また、定着部5は、加熱ローラ43と、加熱ローラ43に対向して配置された加圧ローラ44とを有している。なお、本実施形態では、非加熱定着可能な液体現像剤を用いているので、この定着部5は省略することもできる。
【0128】
排出部6は、定着部5でトナー像が定着された用紙が排出される部分であって、カラープリンタ1の上部に配置されている。用紙搬送部7は、複数の搬送ローラ対を含み、用紙収納部3から二次転写部4や定着部5、排出部6に用紙を搬送する。
【実施例】
【0129】
以下、実施例を通して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例によって限定されるものではない。
【0130】
1.液体現像剤の製造
セルロースエーテルとしてのエチルセルロース(日進化成社製の「エトセル(登録商標)STD4」(エトキシ化率:45〜49.5%))3.8質量部、キャリア液Bとしてのトール油脂肪酸(ハリマ化成社製の「ハートールFA−1」)15.2質量部に溶解させることにより、樹脂溶液を調製した。一方、キャリア液Aとしての流動パラフィン(松村石油研究所社製の「モレスコホワイトP−200」)18質量部に、着色粒子としてのシアン顔料(C.I.Pigment Blue 15:3)5質量部と、分散安定剤としてのルーブリゾール社製のISP社製の「Antaron(登録商標)V−216」2質量部とを混合・分散させることにより、顔料分散体を調製した。顔料分散体中の顔料の平均粒子径(D50)は0.5μmであった。そして、樹脂溶液19質量部と顔料分散体を25質量部とトール油脂肪酸56質量部で混合することにより、表1に示すように、顔料を5質量%、エチルセルロースを3.8質量%含有し、キャリア液全体におけるトール油脂肪酸の含有量が79.8質量%である、シアンの液体現像剤を製造した。
【0131】
2.画像形成
2−1.従来方法(キャリアBを回収に用いないとき)
京セラミタ(株)製の湿式画像形成装置(カラープリンタ)の実験機(線速:116mm/s)を用い、シアンの画像形成ユニットFCにシアンの前記液体現像剤を仕込んで、現像ローラ上に5μmの現像剤層を形成した。現像ローラ上で、コロナチャージャ(4kV印加)で、現像剤を帯電させた後、白紙画像を10分間、現像剤を現像ローラから感光体へ現像させた。その他の画像形成条件を以下に示す。
【0132】
感光体:暗電位:+550V、明電位:+10V
現像ローラ:+400V
それから、現像後の回収液をクリーニングブレードで回収したところ、クリーニング不良を起こした(現像ローラに現像剤が固着した)。
【0133】
2−2.本実施形態
クリーニングブレードの前にトール油脂肪酸(キャリア液B)を現像ローラの上にゆっくり滴下した(10分間で3g)以外は、2−1と同様にして画像を形成した。その結果、上記したようなクリーニング不良は発生しなかった。
【0134】
なお、クリーニングブレードで回収後の回収液に、流動パラフィン(キャリア液A)を0.76g加え、撹拌し、再生液体現像剤を調製した。(現像後に加えたキャリアAとキャリアBの比は、20.1:79.8である)。
【0135】
2−3.考察
以上より、本実施形態に係る湿式画像形成装置であれば、樹脂が溶解した液体現像剤を用いる場合でもクリーニング不良を起こさず、良好な回収性および搬送性を示すことが明らかになった。
【産業上の利用可能性】
【0136】
本発明は、カラープリンタ、プリンタ、複写機、ファクシミリ装置、これらの機能を併せ持つ複合機等に採用され得る電子写真方式の1つである湿式現像法の技術分野において、広範な産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0137】
1 画像形成装置
1A 上側本体部(装置本体)
101 感光体ドラム
102 現像ローラ
103 塗布ローラ
104 クリーニング装置
105 供給ローラ
106 現像装置
109 現像剤調製タンク
108 リザーブタンク
110 流路変更部材
111 固形分濃度検出装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体現像剤を用いて感光体ドラム表面の静電潜像を現像する湿式画像形成装置であって、
前記液体現像剤が少なくとも顔料と樹脂と2種以上の不揮発性のキャリア液とを含み、前記2種以上のキャリア液のうち少なくとも1種のキャリア液は前記樹脂の溶解性が他のキャリア液とは異なっており、前記樹脂はキャリア液に溶解して存在している液体現像剤であること、並びに
現像後の現像剤担持体上の残留液体現像剤に対して、前記2種以上のキャリア液のうち前記樹脂の溶解性が最も高いキャリア液を供給する手段、
その後に残留液体現像剤を回収する回収手段、及び
回収後に残りのキャリア液を供給する手段を有することを特徴とする、湿式画像形成装置。
【請求項2】
前記回収手段がクリーニングブレード方式であることを特徴とする、請求項1に記載の湿式画像形成装置。
【請求項3】
樹脂が、環状オレフィン共重合体、スチレン系エラストマー、セルロースエーテル、ポリビニルブチラールから選択される少なくとも1種である、請求項1又は2に記載の湿式画像形成装置。
【請求項4】
さらに、回収した液体現像剤における顔料及び樹脂のそれぞれの濃度を測定し、濃度調整を行う手段を有する、請求項1〜3のいずれかに記載の湿式画像形成装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−128090(P2012−128090A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−278201(P2010−278201)
【出願日】平成22年12月14日(2010.12.14)
【出願人】(000006150)京セラドキュメントソリュ−ションズ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】