説明

湿気硬化性樹脂組成物

【課題】
従来の湿気硬化性樹脂組成物は浴室改修等、施工後に高湿度に曝されることが多く、組成硬化物の可撓性が損なわれる。接着層が長期に渡り可とう性・弾性を有し、十分な貯蔵安定性を有し高度の耐水性も発揮するので浴室改修の壁・天井への化粧板接着にも好適な湿気硬化性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】
(a)反応性ケイ素基を含有するオキシアルキレン系重合体、(b)ジブチル錫塩と正珪酸エチルの反応生成物、(c)エポキシ樹脂、(d)(c)の潜在性硬化剤となるケチミン化合物を少なくとも含む湿気硬化性樹脂組成物である。また、(a)反応性ケイ素基を含有するオキシアルキレン系重合体、(b)(a)の硬化触媒、(c)エポキシ樹脂、(d)(c)の潜在性硬化剤となるケチミン化合物を含有することを特徴とする湿気硬化性樹脂組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は反応性ケイ素基を含有するオキシアルキレン系重合体とエポキシ樹脂とを含有し、可とう性、耐水性、貯蔵安定性に優れる湿気硬化性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
エポキシ樹脂は多分野で使用されているが、硬化物が可とう性に乏しいため、はく離接着強さが小さい問題がある。一方、反応性ケイ素基を有するオキシアルキレン系重合体は一液型かつ常温硬化でゴム状弾性体となり、可とう性を有するため良好なはく離接着強さを示すが、硬化物の耐水接着性能が低いことが問題となっている。そこでエポキシ樹脂硬化物の堅さおよび反応性ケイ素基を有するオキシアルキレン系重合体硬化物の耐水接着性能と強度不足を改善する為、両者を組み合わせた硬化性樹脂組成物が提案されている。大半は主剤と硬化剤からなる2液タイプであるがエポキシ樹脂の硬化剤としてケチミン化合物を利用することにより、主剤と(潜在性)硬化剤をあらかじめ混合した1液タイプが開発されている。しかしながら、この一液型湿気硬化性樹脂は保存安定性が悪く、保存中に架橋反応が進行してしまい、使用できない場合があった。
【特許文献1】特開昭63−273629号公報
【特許文献2】特開平4−1220号公報
【特許文献3】特開平5−271389号公報
【特許文献4】特許第3512938号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の課題は接着層が長期に渡り可とう性、耐水性を有し、かつ貯蔵安定性も良好であり、浴室、トイレ、キッチン周りなどの水がかりとなる部位の壁・天井への化粧板接着に好適な湿気硬化性樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記の課題を解決すべく検討した結果、(a)反応性ケイ素基を含有するオキシアルキレン系重合体、(b)ジブチル錫塩と正珪酸エチルの反応生成物、(c)エポキシ樹脂、(d)(c)の潜在性硬化剤となるケチミン化合物を含有することを特徴とする湿気硬化性樹脂組成物が長期に渡り可とう性、耐水性を保持し、貯蔵安定性にも優れる硬化性樹脂組成物となる事を見い出し、本発明に至った。
【発明の効果】
【0005】
本発明の湿気硬化性樹脂組成物は一液で長期に渡り可とう性、耐水性を保持し、貯蔵安定性に優れるため、浴室、トイレ、キッチン周りなどの水がかりとなる部位の壁・天井への化粧板接着に好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明に使用される(a)成分の反応性ケイ素基を含有するオキシアルキレン系重合体の具体例としては、特公昭45−36319号、特公昭46−12154号、特開昭50−156599号、特開昭54−6096号、特開昭55−13767号、特開昭55−13468号、特開昭57−164123号、特公平3−2450号、米国特許3,632,557、米国特許4,345,053、米国特許4,366,307、米国特許4,960,844等の各公報に提案されているもの、また特開昭61−197631号、特開昭61−215622号、特開昭61−215623号、特開昭61−218632号の各公報に提案されている数平均分子量6,000以上、Mw/Mnが1.6以下の高分子量で分子量分布が狭いオキシアルキレン系重合体が例示できるが、特にこれらに限定されるものではない。前記の方法などにより得られた反応性ケイ素基を含有するオキシアルキレン系重合体は、単独で使用してもよいし2種以上を併用してもよい。また、反応性ケイ素基を有するビニル系重合体をブレンドしてなるオキシアルキレン系重合体も使用できる。
【0007】
本発明において重要な点は、(b)成分としてジブチル錫塩と正珪酸エチルの反応生成物を用いることである。発明者らは、前記特許文献1〜4に記載の反応性ケイ素基を有するオキシアルキレン系重合体に対する各硬化触媒を検討したが、これらを用いた場合にはいずれも貯蔵安定性が十分ではなく、ジブチル錫塩と正珪酸エチルの反応生成物を用いた場合のみ、反応性ケイ素基を有するオキシアルキレン系重合体に対する硬化触媒作用及び貯蔵安定性が満足するものとなる。
【0008】
本発明に使用される(c)成分のエポキシ樹脂は、エピクロルヒドリン−ビスフェノ−ルA型エポキシ樹脂、エピクロルヒドリン−ビスフェノールF型エポキシ樹脂、テトラブロモビスフェノールAのグリシジルエーテルなどの難燃型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールAプロピレンオキシド付加物のグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、p−オキシ安息香酸グリシジルエーテルエステル型エポキシ樹脂、m−アミノフェノール系エポキシ樹脂、ジアミノジフェニルメタン系エポキシ樹脂、ウレタン変性エポキシ樹脂、各種脂環式エポキシ樹脂、N,N−ジグリシジルアニリン、N,N−ジグリシジル−o−トルイジン、トリグリシジルイソシアヌレート、ポリアルキレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンなどのごとき多価アルコールのグリシジルエーテル、ヒダントイン型エポキシ樹脂、石油樹脂などのごとき不飽和重合体のエポキシ化物などが例示されるが、これらに限定されるものではなく、一般に使用されているエポキシ樹脂が使用されうる。これらエポキシ樹脂の中でも、特にエポキシ基を少なくとも分子中に2個含有するものが硬化に際し反応性が高く、また硬化物が3次元網目構造を形成しやすいなどの点から好ましい。さらに好ましいものとしてはビスフェノールA型エポキシ樹脂類またはノボラック型エポキシ樹脂などがあげられる。
【0009】
これらの(c)成分のエポキシ樹脂と(a)成分の反応性ケイ素基を有するオキシアルキレン系重合体の使用割合は、重量比で(a)/(c)=100/5〜100の範囲である。(a)/(c)の割合が100/5未満になるとエポキシ樹脂硬化物の強靱性、耐水性の改良効果が得られにくくなり、(a)/(c)の割合が100/100を超えると、オキシアルキレン系重合体硬化物の特徴である柔軟なゴム弾性の性質が失われ、著しく堅く、脆い組成物になってしまう。(a)成分と(c)成分の好ましい使用割合は、硬化性樹脂組成物の用途などにより異なるため一概には決められないが(a)成分であるオキシアルキレン系重合体硬化物の強度を改善する場合には(a)成分100重量部に対して(c)成分を5〜100重量部、さらに好ましくは10〜60重量部使用するのがよい。
【0010】
本発明に使用される(d)成分のケチミン化合物は、分子中に2つ以上のアミノ基を持つアミン化合物とケトン化合物との脱水縮合反応物である。分子内の窒素の塩基性が弱く、水分のない状態ではエポキシ樹脂とは殆ど反応しないものの、空気中の水分と反応すると一級アミンが容易に生成してエポキシ樹脂と反応が進行する特徴があり、吸湿しないかぎり硬化が進行しない利点がある。この特徴が生かされて一液タイプエポキシ樹脂に利用できるもので、具体例として、ポリオキシプロピレンジアミンとメチルイソブチルケトンとを脱水反応したもの、ポリオキシプロピレントリアミンとメチルイソブチルケトンとを脱水反応したもの、ポリオキシアルキレンジアミンとメチルイソブチルケトンとを脱水反応したもの、ヘキサメチレンジアミンとメチルイソブチルケトンとを脱水反応したもの、などが挙げられる。
【0011】
本発明において、密着性向上などを目的として(a)成分以外の反応性ケイ素化合物を用いることができ、湿分の存在下で反応する加水分解性官能基を有する分子量500以下の化合物が好ましい。また、この化合物は官能性の置換基を有することが好ましい。加水分解性官能基としてはアルコキシ基、アシロキシ基、ケトキシメート基、アミノ基、アミノオキシ基、アミド基、アルケニルオキシ基などが例示できる。また、置換基としてはエポキシ含有基、アミノ含有基、アクリル含有基、メルカプト含有基などが例示できる。このような化合物例とではシランカップリング剤があげられ、これら化合物は単独で使用しても2種類以上併用してもよい。
【0012】
本発明の組成物には、更に必要に応じて脱水剤、物性調整剤、充填剤、老化防止剤などの各種添加剤を適宜添加できる。以下、実施例により本発明を具体的に説明する。
【実施例】
【0013】
実施例1
(a)成分として、分子あたり平均2個のメチルジメトキシシリル基を含有する数平均分子量10,000のプロピレンオキシド重合体150重量部、(c)成分として、エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)製「エピコート828」、商品名)13重量部、炭酸カルシウム300重量部、ポリプロピレングリコール(旭電化工業(株)製「P−3000」、商品名)30重量部を加え、100℃、減圧下で撹拌混合した。ここへ(b)成分として、ジブチル錫塩と正珪酸エチルの反応生成物(日東化成(株)製ネオスタンU−700、商品名)3.5重量部、(d)成分として、ケチミン型硬化剤(日東化成(株)製「エポニットK−100」、商品名)6.5重量部、ビニルトリメトキシシラン(日本ユニカー(株)製「NUCシリコーンA171」、商品名)10重量部、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)「SH−6040」、商品名)2重量部を加え、減圧撹拌して湿気硬化性樹脂組成物を得た。
実施例2
実施例1において、エピコート828を20重量部、エポニットK−100を10重量部とした他は実施例1と同様に行い、湿気硬化性樹脂組成物を得た。
比較例1
実施例1において、(b)成分としてネオスタンU−700 3.5重量部の代わりにジブチル錫化合物(日東化成(株)製「ネオスタンU−220」、商品名)3.5重量部加えた他は実施例1と同様に行い、湿気硬化性樹脂組成物を得た。
【0014】
貯蔵安定性の評価は組成物作成直後の23℃の粘度と上記組成物を容量333ml、アルミニウム箔防湿紙製カートリッジに容量を満たし密閉充填した後、40℃×1ケ月処理後に23℃に戻して粘度を測定し、作成直後に対する1ケ月後の粘度の倍率を求めた。粘度はBS型粘度計(東機産業(株)製、単一円筒型回転粘度計)のローターNo.7を使用し、10rpmでの1分後の23℃における値を測定した。
【0015】
接着強さ試験片はJISA1612−1996の壁・天井ボード用接着剤の接着強さ及びその接着工法の接着強さ試験方法に準じ、3mm厚の不燃化粧板(アイカ工業(株)製アイカセラール、商品名)と陶磁器質タイルを3mm厚のスペーサーを用いて3mm厚みの接着層として接着し23±1℃、50±5%RHの条件で7日間湿気硬化させて接着した。その後、常態と40±1℃の水中に一ヶ月浸せき後の引張試験を行い、常態引張接着強さ、耐水引張接着強さおよびその接着層の破壊状態を比較した。実施例、比較例の接着剤を用いた結果を表1に示す。
【0016】
【表1】

【0017】
注1)貯蔵安定性は作成後40℃で1ケ月保存した後の粘度を作成直後の粘度で除した。
注2)常態引張接着強さは23±1℃、50±5%RHの条件で測定した。
耐水引張接着強さは40℃の水に1ヶ月間、浸せきした後に濡れたままの状態で測定した。
cf 凝集破壊、pf 薄層凝集破壊
【0018】
実施例記載の組成物は40℃で1ケ月保存した後の粘度が1.2倍であり、実用上問題ない範囲である。一方、比較例記載の組成物は粘度が1.5倍となり、作業性の低下が懸念される。
【産業上の利用可能性】
【0019】
建築・土木の高湿環境に曝される分野において、接着剤、コーキング等に耐久性の高いものとなる。住宅などの新築や改修、浴室、トイレ、キッチン周りなどの水がかりとなる部位の壁・天井用化粧板接着剤として有用なものとなる。









































【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)反応性ケイ素基を含有するオキシアルキレン系重合体、(b)ジブチル錫塩と正珪酸エチルの反応生成物、(c)エポキシ樹脂、(d)(c)の潜在性硬化剤となるケチミン化合物を含有することを特徴とする湿気硬化性樹脂組成物。

【公開番号】特開2007−269988(P2007−269988A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−97652(P2006−97652)
【出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【出願人】(000100698)アイカ工業株式会社 (566)
【Fターム(参考)】