説明

溝掘機

【課題】適切な溝掘作業ができる溝掘機を提供する。
【解決手段】溝掘機1は、トラクタに連結する機体5を備える。機体5には、回転中心軸線を中心として回転しながら圃場の土を掘削して溝を掘る溝掘体41を設ける。機体5には、溝掘体41の進行方向後方で溝を整形する溝整形体42を設ける。機体5には、溝掘体41からの掘削土を開口部80から排出するカバー体81を、溝掘体41を覆うように設ける。カバー体81の開口部80の全体が、側面視で溝掘体41の回転中心軸線よりも進行方向前方に位置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、適切な溝掘作業ができる溝掘機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1に記載された溝掘機が知られている。
【0003】
この従来の溝掘機は、走行車であるトラクタの後部に連結される機体と、機体に設けられ回転しながら圃場の土を掘削して溝を掘る溝掘体と、溝掘体にて掘られた溝を整形する溝整形体と、溝掘体を覆うように設けられ溝掘体からの掘削土を開口部から排出するカバー体とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−209742号公報(図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の溝掘機に用いられたカバー体の形状では、溝掘体からの掘削土が進行方向後方側に向かって飛んでしまい、適切な溝掘作業ができないおそれがある。
【0006】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、適切な溝掘作業ができる溝掘機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の溝掘機は、走行車に連結される機体と、この機体に設けられ、回転中心軸線を中心として回転しながら圃場の土を掘削して溝を掘る溝掘体と、この溝掘体にて掘られた溝を整形する溝整形体と、前記溝掘体を覆うように設けられ、前記溝掘体からの掘削土を開口部から排出するカバー体とを備え、前記カバー体の開口部の全体が、側面視で前記溝掘体の回転中心軸線よりも進行方向前方に位置するものである。
【0008】
請求項2記載の溝掘機は、請求項1記載の溝掘機において、カバー体は、溝掘体からの掘削土が溝際に落下するのを防止する溝際落下防止板部を有し、前記溝際落下防止板部は、側面視で溝掘体と重なるように位置するものである。
【0009】
請求項3記載の溝掘機は、請求項1または2記載の溝掘機において、カバー体の開口部の後端は、側面視で溝掘体の回転中心軸線の近傍に位置するものである。
【0010】
請求項4記載の溝掘機は、請求項1ないし3のいずれか一記載の溝掘機において、カバー体は、溝掘体からの掘削土が進行方向前方側に向かって飛ぶのを防止する前方突出板部を有するものである。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る発明によれば、カバー体の開口部の全体が側面視で溝掘体の回転中心軸線よりも進行方向前方に位置するため、溝掘体からの掘削土が進行方向後方側に向かって飛ぶのを防止でき、適切な溝掘作業ができる。
【0012】
請求項2に係る発明によれば、カバー体の溝際落下防止板部は溝掘体からの掘削土が溝際に落下するのを防止するため、掘削土が溝内に落ちるのを防止でき、より適切な溝掘作業ができる。
【0013】
請求項3に係る発明によれば、カバー体の開口部の後端は側面視で溝掘体の回転中心軸線の近傍に位置するため、溝掘体からの掘削土が進行方向後方側に向かって飛ぶのを効果的に防止でき、より適切な溝掘作業ができる。
【0014】
請求項4に係る発明によれば、カバー体の前方突出板部は溝掘体からの掘削土が進行方向前方側に向かって飛ぶのを防止するため、より適切な溝掘作業ができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施の形態に係る溝掘機の斜視図である。
【図2】同上溝掘機の背面図である。
【図3】同上溝掘機の前進作業状態を示す平面図である。
【図4】同上溝掘機の後進作業状態を示す平面図である。
【図5】同上溝掘機の一部を省略した背面図である。
【図6】同上溝掘機のカバー体の前方斜視図である。
【図7】同上溝掘機のカバー体の後方斜視図である。
【図8】同上溝掘機のカバー体の側面図である。
【図9】同上溝掘機のカバー体の後面図である。
【図10】同上溝掘機のカバー体の平面図である。
【図11】同上溝掘機の溝整形体の前方斜視図である。
【図12】同上溝掘機のカバー体の作用説明図であり、(a)が側面図であり、(b)が後面図である。
【図13】本発明の他の実施の形態に係る溝掘機の第1カバー部材の側面図である。
【図14】本発明のさらに他の実施の形態に係る溝掘機のカバー体の側面図である。
【図15】本発明のさらに他の実施の形態に係る溝掘機のカバー体の後面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の一実施の形態を図面を参照して説明する。
【0017】
図1ないし図5において、1は溝掘機で、この溝掘機1は、例えば走行車であるトラクタ(図示せず)の後部に連結して使用する牽引式の溝形成作業機(農作業機)である。
【0018】
そして、溝掘機1は、トラクタの後部に連結された状態で、圃場においてトラクタの走行(前進走行・後進走行)によりトラクタと一体となって進行方向に向かって移動しながら溝掘作業を行い、圃場に断面略逆台形状をなす凹状の溝Aを形成する。
【0019】
つまり、図3に示すように、前進作業状態時には、溝掘機1はトラクタの前進走行により進行方向(溝掘機1の前方)に向かって移動しながら溝掘作業を行い、また、図4に示すように、後進作業状態時には、溝掘機1はトラクタの後進走行(バック走行)により進行方向(溝掘機1の後方)に向かって移動しながら溝掘作業を行う。
【0020】
溝掘機1は、図示しないトラクタの後部の3点リンク部(作業機昇降装置)に連結された機体5を備え、この機体5は固定機枠2とこの固定機枠2に対して移動可能な可動機枠3とを有している。
【0021】
固定機枠2は、トップマスト6および左右のロワアーム7等にて構成された3点連結部8を有し、この3点連結部8がトラクタの3点リンク部に連結されている。
【0022】
また、固定機枠2は、フレームである主フレーム9と、この主フレーム9に固定的に設けられ入力軸10を回転可能に支持する中空状の入力軸ケース11とを有し、この入力軸10がトラクタのPTO軸に動力伝達手段(図示せず)を介して接続されている。
【0023】
さらに、固定機枠2は、入力軸ケース11の上面から上方に向かって突出する上下方向に略円筒状の伝動フレームである第1伝動フレーム12と、この第1伝動フレーム12の上端部に水平方向に回動可能に設けられ出力軸13を回転可能に支持する中空状の出力軸ケース14とを有している。出力軸13は、例えばギヤおよびシャフト等にて構成された動力伝達手段(図示せず)を介して入力軸10に接続されている。
【0024】
可動機枠3は、固定機枠2の主フレーム9に対して水平方向に平行移動可能(オフセット移動可能)なサブフレームである第1支持フレーム21と、この第1支持フレーム21に水平方向に略180度の範囲内で回動可能に設けられた第2支持フレーム22とを有している。
【0025】
第1支持フレーム21は、互いに離間対向して平行に位置する回動可能な左右1対の回動アーム(平行リンク)23を介して固定機枠2の主フレーム9に連結されている。つまり、回動アーム23の前端部が主フレーム9に回動可能に連結され、回動アーム23の後端部が第1支持フレーム21に回動可能に連結されている。
【0026】
また、可動機枠3は、第2支持フレーム22に固定的に設けられた上下方向に略円筒状の伝動フレームである第2伝動フレーム25と、この第2伝動フレーム25の上端部に水平方向に回動可能に設けられ中間入力軸26を回転可能に支持する中空状の中間入力軸ケース27とを有している。中間入力軸26は、例えばジョイント等にて構成された動力伝達手段28を介して出力軸13に接続されている。
【0027】
さらに、可動機枠3は、第2伝動フレーム25の下端部に固定的に設けられた中空状の第1伝動ケース31と、溝掘機1の作業状態時(前進作業状態時および後進作業状態時)には第1伝動ケース31から斜め下外側方に向かって突出する上下方向に対して傾斜する方向の略円筒状の伝動フレームである第3伝動フレーム32と、この第3伝動フレーム32の下端部に固定的に設けられた中空状の第2伝動ケース33とを有している。
【0028】
第2伝動ケース33は、中空状の伝動ケース本体部34と、この伝動ケース本体部34に脱着可能に設けられ伝動ケース本体部34の外側面全体および前後面の一部を覆う略板状で平面視略コ字状の保護カバー部35とを有している。
【0029】
そして、保護カバー部35は、例えばボルト等の取付具38によって伝動ケース本体部34に取り付けられ、その伝動ケース本体部34に対して脱着可能つまり交換可能となっている。
【0030】
また、保護カバー部35は、伝動ケース本体部34の外側面全体に接触してこの外側面全体を覆う外側方に向かって平面視で凸の略湾曲状の本体板である湾曲板36と、この湾曲板36の前後方向両端部から突出し伝動ケース本体部34の前後面の一部のみを覆う突出板37とにて構成されている。
【0031】
また一方、溝掘機1は、可動機枠3の第2伝動ケース33に回転可能に設けられ水平方向に対して傾斜した傾斜状の回転中心軸線(傾斜軸線)Xを中心として回転しながら圃場の土を掘削して凹状の溝Aを掘る回転式の溝掘体41と、可動機枠3の第2支持フレーム22に連結手段43を介して上下動可能に設けられ溝掘体41にて掘られた溝Aを所定形状、すなわち例えば断面略逆台形状に整形する溝整形体(成形体)42とを備えている。
【0032】
なお、図2に示されるように、溝掘体41の回転中心軸線Xは、進行方向後面視で左下がりの傾斜軸線である。溝掘体41の回転中心軸線Xと水平方向に沿った線Hとがなす角度αは、進行方向後面視で例えば15度〜45度で、好ましくは略35度である。
【0033】
また、図8に示されるように、溝掘体41の回転中心軸線Xは、側面視(内側からの側面視)で上下方向(鉛直方向)に沿った線である。溝掘体41の回転中心軸線Xを中心とする回転方向は、図8の矢印方向であって、側面視で右回りの方向(アップカット方向)である。
【0034】
溝掘体41は、機体5の可動機枠3の第2伝動ケース33によって回転可能に支持され溝掘機1の作業状態時(前進作業状態時および後進作業状態時)には第2伝動ケース33の内側面から斜め下内側方に向かって突出する傾斜軸である回転軸45を有している。なお、回転軸45の軸芯を通る線が回転中心軸線Xである。
【0035】
回転軸45は、進行方向後方から見た場合、つまり進行方向後面視で左下がりの傾斜状となっており、その回転軸45の基端側が第2伝動ケース33内に位置し、その回転軸45の先端側が第2伝動ケース33外に露出している。
【0036】
そして、回転軸45の先端側には、回転中心軸線Xを中心として回転軸45と一体となって駆動回転しながら圃場の土を掘削して跳ね上げて溝Aを掘る曲板状の複数の溝掘爪46が回転軸45を中心として放射状に脱着可能に設けられている。
【0037】
また、図5から明らかなように、傾斜状の回転軸45の基端部にはベベルギヤ51が固着され、このベベルギヤ51には第3伝動フレーム32内に上下端部以外の部分が回転可能に配設された傾斜状のシャフト53の下端部に固着されたベベルギヤ52が噛み合っている。これら2つのベベルギヤ51,52は、第2伝動ケース33内に回転可能に配設されている。
【0038】
さらに、シャフト53の上端部にはベベルギヤ54が固着され、このベベルギヤ54には第2伝動フレーム25内に上下端部以外の部分が回転可能に配設された鉛直状のシャフト56の下端部に固着されたベベルギヤ55が噛み合っている。これら2つのベベルギヤ54,55は、第1伝動ケース31内に回転可能に配設されている。
【0039】
また、シャフト56の上端部にはベベルギヤ57が固着され、このベベルギヤ57には中間入力軸ケース27内に先端部以外の部分が回転可能に配設された水平状の中間入力軸26の基端部に固着されたベベルギヤ58が噛み合っている。これら2つのベベルギヤ57,58は、中間入力軸ケース27内に回転可能に配設されている。
【0040】
そして、出力軸13側からの動力が中間入力軸26に入力されると、この動力はベベルギヤ58、ベベルギヤ57、シャフト56、ベベルギヤ55、ベベルギヤ54、シャフト53、ベベルギヤ52およびベベルギヤ51を経て回転軸45へ伝達され、その結果、溝掘体41の回転軸45が溝掘爪46とともに所定方向に駆動回転する。
【0041】
なお、中間入力軸ケース27内のベベルギヤ57,58、第2伝動フレーム25内のシャフト56、第1伝動ケース31内のベベルギヤ54,55、第3伝動フレーム32内のシャフト53および第2伝動ケース33内のベベルギヤ51,52にて、中間入力軸26からの動力を溝掘体41の回転軸45まで伝達する動力伝達手段60が構成されている。
【0042】
溝整形体42は、図6、図7および図11等に示されるように、溝掘体41の進行方向後方で溝整形を行う溝整形板61と、この溝整形板61から上方に向かって突出する取付用アーム62とを有している。また、溝整形板61にはこの溝整形板61の前面の一部から前方に向かって突出する略三角錐形状の突出部61aが固設され、この突出部61aには略くの字状の板部61bが取り付けられている。
【0043】
連結手段43は、互いに離間対向して平行に位置する上下1対の連結アーム63を有している。連結アーム63の前端部が可動機枠3の第2支持フレーム22のアーム取付部22aに回動可能に連結され、連結アーム63の後端部が溝整形体42の取付用アーム62に回動可能に連結されている。そして、上側の連結アーム63と第2支持フレーム22との間には、溝整形体42を下方に付勢する付勢手段であるガススプリング64が設けられている。
【0044】
また、溝掘機1は、図6ないし図10等に示されるように、機体5の可動機枠3に溝掘体41の上部側を覆うように設けられ溝掘体41からの掘削土を案内して開口部80から側方(斜め上内側方)に向けて排出して飛ばすカバー体81を備えている。カバー体81は、内側方および下方のみに向かって開口する略箱形状に形成されている。
【0045】
そして、カバー体81の開口部80の全体(略全体を含む)が、側面視で溝掘体41の回転中心軸線Xよりも進行方向前方に位置している。図12(a)において、斜線が施された部分が、溝掘体41の溝掘爪46にて跳ね上げられる掘削土をカバー体81内から斜め上内側方に向けて排出するための掘削土排出用の開口部80である。つまり、カバー体81は、内側方に向かって開口する開口部80を前側に有している。また、図8および図12(a)から明らかなように、カバー体81の開口部80の後端は、側面視で溝掘体41の回転中心軸線Xの近傍の前方位置に上下方向に沿って位置している。
【0046】
なお、図示しないが、カバー体81の開口部80の後端が側面視で溝掘体41の回転中心軸線Xの近傍の後方位置に上下方向に沿って位置する構成でもよい。
【0047】
また、カバー体81は、溝掘体41の溝掘爪46からの掘削土が溝際、つまり溝Aの近傍位置に落下するのを防止する傾斜状の溝際落下防止板部82を有している。
【0048】
溝際落下防止板部82は、側面視で溝掘体41の溝掘爪46の先端部の移動領域の一部と重なるように位置し、かつ、溝掘体41の回転中心軸線Xに対して直交する平面上に位置している。そして、溝際落下防止板部82の全体(略全体を含む)が、側面視で溝掘体41の回転中心軸線Xよりも進行方向後方に位置している。つまり、カバー体81は、溝掘体41の側方部の一部分を覆う溝際落下防止板部82を後側の下部に有している。
【0049】
なお、溝際落下防止板部82は、側面視で右下がりの傾斜方向に長手方向を有する板状のもので、この溝際落下防止板部82の下端82aと圃場の表面との間には略三角形状の空間79があり、また、溝際落下防止板部82の前端82bは回転中心軸線Xの近傍の前方位置に上下方向に沿って位置する(図8参照)。
【0050】
さらに、カバー体81は、このカバー体81の前面から前方に向かって突出し溝掘体41の溝掘爪46からの掘削土が進行方向前方側に向かって飛ぶのを防止する水平状の前方突出板部83を有している。
【0051】
ここで、カバー体81は、開口部80を有する略箱形状の本体部材である第1カバー部材86と、この第1カバー部材86の上端部に蝶番88を介して前後方向の回動中心軸線Xを中心として上下方向に回動可能に取り付けられた補助部材である第2カバー部材87と、この第2カバー部材87を第1カバー部材86に対して解除可能に固定する固定手段(図示せず)とを有している。
【0052】
なお、固定手段は、例えば第1カバー部材86に形成された孔89と第2カバー部材87に円弧状に並ぶように形成された複数の孔(調整孔)90の中から選択された孔90とに挿入されたボルトと、このボルトに螺合されたナットとにて構成されている。この固定手段による固定を解除した場合に、第2カバー部材87が第1カバー部材86に対して回動可能となる。つまり、圃場の土の土質等に応じて第2カバー部材87を第1カバー部材86に対して回動調整可能である。そして、第2カバー部材87の傾斜角度によって、開口部80から排出される掘削土の飛距離が設定される。
【0053】
第1カバー部材86は、溝掘体41からの掘削土を案内して開口部80から排出するもので、図6ないし図9等に示されるように、互いに離間対向する前板部91および後板部92を有している。前板部91の上端部と後板部92の上端部とが上板部93にて連結され、前板部91の外側端部と後板部92の外側端部とが側板部94にて連結されている。側板部94には略円形状の切欠部95が形成され、この切欠部95に第2伝動ケース33が挿入されている。
【0054】
前板部91の前面には、直角に折り曲げられた板材からなる前カバー部材96が取り付けられている。前カバー部材96は、前板部91の前面に取り付けられた取付板部97と、この取付板部97の下端部にこの取付板部97に対して直交状に設けられ前板部91の下端部から前方に向かって突出する作用板部98とにて構成されている。そして、前カバー部材96の作用板部98にて、前方突出板部83が構成されている。
【0055】
後板部92の後面には、それぞれ直角に折り曲げられた板材からなる第1下カバー部材(下カバー)101および第2下カバー部材(土飛び規制板)102が取り付けられている。
【0056】
第1下カバー部材101は、後板部92の後面に取り付けられた取付板部103と、この取付板部103の下端部にこの取付板部103に対して直交状に設けられ後板部92の下端部から前方に向かって突出する作用板部104とにて構成されている。同様に、第2下カバー部材102は、後板部92の後面に取り付けられた取付板部105と、この取付板部105の下端部にこの取付板部105に対して直交状に設けられ後板部92の下端部から前方に向かって突出する作用板部106とにて構成されている。そして、第1下カバー部材101の作用板部104と第2下カバー部材102の作用板部106とにて、溝際落下防止板部82が構成されている。なお、第1下カバー部材101の作用板部104の一部と第2下カバー部材102の作用板部106の一部とが互いに重なり合っている。
【0057】
また、第2カバー部材87は、互いに離間対向する前板部111および後板部112を有している。前板部111の上端部と後板部112の上端部とが上板部113にて連結され、この上板部113の端部が蝶番88を介して第1カバー部材86の上板部93の端部に回動可能に取り付けられている。そして、第2カバー部材87の第1カバー部材86に対する上下回動により、第2カバー部材87の上板部113の水平方向に対する傾斜角度が調整可能となっている。すなわち例えば、第2カバー部材87の上板部113は、水平方向に沿った水平状態および進行方向後面視で傾斜角度をもった左上りの傾斜状態に設定可能である。
【0058】
第2カバー部材87の上板部113は、第1カバー部材86の開口部80の上方に位置しており、開口部80から排出された掘削土が第2カバー部材87の上板部113にて案内されるようになっている。
【0059】
なお、図6から明らかなように、カバー体81と溝整形体42とが互いに近接して配設されており、これらカバー体81と溝整形体42との隙間から掘削土が飛び出さないようになっている。
【0060】
また、溝掘体41、溝整形体42およびカバー体81にて、圃場での作業時に溝掘作業を行うオフセット作業手段である作業部70が構成されている。
【0061】
また一方、図3および図4等に示されるように、左側の回動アーム23と第1支持フレーム21の右端部との間には、第1支持フレーム21を固定機枠2の主フレーム9に対して水平方向に平行移動させる第1伸縮駆動手段である移動用シリンダ71が設けられている。さらに、第1支持フレーム21の右端部と第2支持フレーム22との間には、第2支持フレーム22を第1支持フレーム21に対して水平方向に回動させる第2伸縮駆動手段である回動用シリンダ72が設けられている。
【0062】
つまり、これら2つのシリンダ71,72の伸縮動作によって、作業部70が所定の前進作業位置に位置する前進作業状態(図3の状態)、作業部70が所定の後進作業位置に位置する後進作業状態(図4の状態)および作業部70がトラクタの後方に位置する非作業状態(図示せず)に選択的に切換可能となっている。
【0063】
なお、図5から明らかなように、この溝掘機1では、可動機枠3および溝掘体41を進行方向後方から見た場合に、可動機枠3の第1伝動ケース31、第3伝動フレーム32および第2伝動ケース33が、溝掘体41の上方位置に位置する構成となっている。
【0064】
次に、溝掘機1の作用等を説明する。
【0065】
溝掘機1を前進作業状態に設定した状態でトラクタの前進走行により前方へ移動させると、溝掘体41の溝掘爪46が回転中心軸線Xを中心として回転しながら圃場の土を掘削して溝Aを掘り、溝整形体42の溝整形板61がその溝Aを所定形状に整形する。
【0066】
このとき、溝掘体41の溝掘爪46にて掘削されて跳ね上げられた掘削土は、カバー体81にて案内されて開口部80から斜め上内側方に向かって排出され、図1に示す2点鎖線の放物線を描くように、放てきされる。
【0067】
つまり、溝掘体41の溝掘爪46にて跳ね上げられた掘削土は、進行方向前方側や進行方向後方側には飛ばず、カバー体81による案内作用によって進行方向内側方に向かって飛ばされる。
【0068】
このため、掘削土が固定機枠2、可動機枠3および回動アーム23等にはかからず、固定機枠2、可動機枠3および回動アーム23等が掘削土で汚れることがなく、また、例えば後方で作業をする作業者に掘削土がかかることもなく、さらに、隣接する他人の圃場や道路等にまで掘削土が飛んでしまうこともない。
【0069】
なお、圃場の隅部では、溝掘機1を前進作業状態から後進作業状態に切り換えた後、溝掘機1をトラクタの後進走行により後方へ移動させると、前進作業の場合と同様、溝掘体41の溝掘爪46が回転中心軸線Xを中心として回転しながら圃場の土を掘削して溝Aを掘り、溝整形体42の溝整形板61がその溝Aを所定形状に整形し、所定形状の溝Aが圃場の畦際に畦の長手方向に沿って形成される。
【0070】
そして、このような溝掘機1によれば、カバー体81の開口部(土吐出し部)80の全体が、側面視で溝掘体41の回転中心軸線Xよりも進行方向前方に位置するため、溝掘体41からの掘削土が進行方向後方側に向かって飛ぶのを防止でき、よって、安全性を確保しつつ、適切な溝掘作業ができる。
【0071】
また、カバー体81の溝際落下防止板部82は、この溝際落下防止板部82の下端82aと圃場の表面との間に空間79があるので、小石等のかみ込みを防止しつつ、溝掘体41の溝掘爪46からの掘削土が溝際に落下するのを防止するため、掘削土が溝A内に落ちるのを防止でき、より適切な溝掘作業ができる。
【0072】
つまり、図12(a)および(b)に示すように、カバー体81が溝際落下防止板部82を有し、掘削土の一部が溝際落下防止板部82にて案内されつつ溝掘爪46にて持ち回されるので、掘削土が溝際に落下して盛り上るようなことがなく、掘削土は溝Aから所定距離以上離れた位置に落下する。
【0073】
なお、カバー体81が溝際落下防止板部82を有しない場合には、図12(b)の2点鎖線で示すように、掘削土が溝際に落下する。
【0074】
さらに、カバー体81の前方突出板部83は、溝掘体41の溝掘爪46からの掘削土が進行方向前方側に向かって飛ぶのを防止するため、掘削土で機体5が汚れにくくなり、より適切な溝掘作業ができる。
【0075】
なお、上記一実施の形態では、カバー体81が溝際落下防止板部82を有する構成について説明したが、カバー体81が溝際落下防止板部82を有しない構成でもよい。
【0076】
すなわち例えばカバー体81が図13に示す第1カバー部材86を有した構成であっても、開口部80の全体が側面視で溝掘体41の回転中心軸線Xよりも進行方向前方に位置するため、溝掘体41からの掘削土が進行方向後方側に向かって飛ぶのを防止でき、適切な溝掘作業ができる。なお、図13に示す第1カバー部材86は、溝際落下防止板部82を有していない点においてのみ、図8等に示す第1カバー部材86と異なっている。
【0077】
また、例えば図14に示すように、掘削土が溝際に落下するのを確実に防止するために、第2下カバー部材102の作用板部106を前方に延ばして略三角形状にすることで、カバー体81の溝際落下防止板部82を大きくした構成でもよい。
【0078】
さらに、例えば図15に示すように、カバー体81とは別体の溝整形体42を不要とするために、溝掘体41にて掘られた溝Aを整形する溝整形体である溝整形板部42aをカバー体81の第1カバー部材86に一体に設けた構成でもよい。
【0079】
また、カバー体81は、第1カバー部材86および第2カバー部材87を有する構成には限定されず、例えば第1カバー部材86のみで構成したものでもよい。
【0080】
さらに、前進作業状態および後進作業状態に選択的に切換可能なリターン式の溝掘機1について説明したが、例えば前進作業のみ可能な構成でもよい。
【符号の説明】
【0081】
1 溝掘機
5 機体
41 溝掘体
42,42a 溝整形体
80 開口部
81 カバー体
82 溝際落下防止板部
83 前方突出板部
A 溝
X 回転中心軸線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行車に連結される機体と、
この機体に設けられ、回転中心軸線を中心として回転しながら圃場の土を掘削して溝を掘る溝掘体と、
この溝掘体にて掘られた溝を整形する溝整形体と、
前記溝掘体を覆うように設けられ、前記溝掘体からの掘削土を開口部から排出するカバー体とを備え、
前記カバー体の開口部の全体が、側面視で前記溝掘体の回転中心軸線よりも進行方向前方に位置する
ことを特徴とする溝掘機。
【請求項2】
カバー体は、溝掘体からの掘削土が溝際に落下するのを防止する溝際落下防止板部を有し、
前記溝際落下防止板部は、側面視で溝掘体と重なるように位置する
ことを特徴とする請求項1記載の溝掘機。
【請求項3】
カバー体の開口部の後端は、側面視で溝掘体の回転中心軸線の近傍に位置する
ことを特徴とする請求項1または2記載の溝掘機。
【請求項4】
カバー体は、溝掘体からの掘削土が進行方向前方側に向かって飛ぶのを防止する前方突出板部を有する
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一記載の溝掘機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−236583(P2011−236583A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−107113(P2010−107113)
【出願日】平成22年5月7日(2010.5.7)
【出願人】(000188009)松山株式会社 (285)
【Fターム(参考)】