説明

漏水検出方法及び漏水検出システム並びにRFIDタグ

【課題】大掛かりな装置を必要とすることなく、既存のRFIDシステムを利用して簡単、確実かつ安価に水漏れを検出することができる漏水検出方法及び漏水検出システム並びにRFIDタグの提供。
【解決手段】LF帯、MF帯、HF帯及びVHF帯のいずれかの周波数帯(たとえば、13.56MHz帯など)で作動するタグ2を配水管の継ぎ目近傍などの水漏れが生じやすい場所に設置し、タグ2とリーダ/ライタ7との間の通信状態の変化に基づいて水漏れの有無を判定する。このHF帯又はVHF帯などの短波帯で作動するタグ2は他の周波数で作動するタグよりも安価であり、汎用のリーダ/ライタ7を利用することができ、かつ、タグアンテナは導線を巻回する構造でありアンテナの形状を水漏れを検出する領域に合わせて自由に変更することができるため、水漏れを簡単、確実かつ安価に検出することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はRFID(Radio Frequency Identification)システム及び該システムを利用した方法に関し、特に、配水管の漏水を検出する漏水検出方法及び漏水検出システム並びにRFIDタグに関する。
【背景技術】
【0002】
各種建造物内部や天井裏などに張り巡らされているエアコンのドレン管などの配水管は水漏れによる被害を防止するために定期的に検査が行われる。この水漏れの検査は、配水管が設置されている狭いスペース内で、作業者が配水管の継ぎ目を1つ1つ目視で確認したり触診するなどの方法によって行われるが、配水管は壁の内側や天井の裏などの狭く、かつ、照明のない暗い場所に設置されているため、水漏れを目視や触診で確認することは容易ではなく、検査に熟練を要すると共にわずかな水漏れは見落としてしまう危険性があった。特に、エアコンのドレン管はその表面が保温材で覆われており、たとえドレン管に水漏れが発生したとしても保温材から水が滲み出ていなければ、目視や触診によって水漏れを確認することは困難である。
【0003】
そこで、このような作業者の熟練に頼る作業を自動化すべく、様々な装置や方法が提案されている。例えば、特開2004−245618号公報には、水道管から水漏れ時に発生する音を計測することができる振動センサと、この振動センサで得られる信号を複数の周波数帯に分離する周波数分離器と、この周波数分離器で分離された単周波数波形のうち判断に必要な周波数のみを合算し、音波形に戻す逆変換装置と、この逆変換装置により出力される特徴集音波形と判定基準値とを比較し、水漏れを判定する判定器とを備えた漏水検知装置が開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開2004−245618号公報(第3−6頁、第5図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載の方法では、亀裂や継ぎ目から漏れる水漏れ音の周波数成分を比較するために大掛かりな装置が必要であり、水漏れの検査にコストがかかってしまう。更に、このような方法では複数の配水管が複雑に配置されている場合に、どの部分で水漏れが発生しているかを特定するのは困難である。
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであって、その主たる目的は、大掛かりな装置を必要とすることなく、既存のRFIDシステムを利用して簡単、確実かつ安価に水漏れを検出することができる漏水検出方法及び漏水検出システム並びにRFIDタグを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の漏水検出方法は、配水管の継ぎ目近傍に設置される、LF帯、MF帯、HF帯及びVHF帯のいずれかの周波数帯で作動する1以上のRFIDタグと、前記RFIDタグと通信を行うリーダ又はリーダ/ライタとを用いた漏水検出方法であって、前記継ぎ目から前記RFIDタグに流れ込む漏水による通信状態の変化に基づいて前記漏水を検出するものである。
【0008】
本発明においては、前記RFIDタグの表面、裏面又は表裏面の少なくとも一部に吸水材を配設し、該吸水材により、前記漏水を前記RFIDタグの表面、裏面又は表裏面に滞留させる構成、前記RFIDタグの表面又は裏面の少なくとも一方に案内溝を形成し、該案内溝により、前記漏水を前記RFIDタグの表面又は裏面に誘導する構成、又は、前記RFIDタグの前記配水管設置面に軟磁性材を配設し、該軟磁性材により、前記配水管の構成材料又は前記配水管内部の水による影響を抑制する構成とすることができる。
【0009】
また、本発明の漏水検出システムは、配水管の継ぎ目近傍に設置される、LF帯、MF帯、HF帯及びVHF帯のいずれかの周波数帯で作動する1以上のRFIDタグと、前記RFIDタグと通信を行うリーダ又はリーダ/ライタとを少なくとも備える漏水検出システムであって、前記継ぎ目から前記RFIDタグに流れ込む漏水による通信状態の変化を検出する手段を備え、該手段により前記通信状態の変化に基づく前記漏水の検出を可能とすることを特徴とする漏水検出システム。
【0010】
本発明においては、前記RFIDタグの表面、裏面又は表裏面の少なくとも一部に、前記漏水を吸収し滞留させる吸水材が配設されている構成、前記RFIDタグの表面又は裏面の少なくとも一方に、前記漏水を前記RFIDタグの表面又は裏面に誘導する案内溝を備える構成、又は、前記RFIDタグの前記配水管設置面に、軟磁性材が配設されている構成とすることができる。
【0011】
また、本発明においては、前記リーダ又は前記リーダ/ライタに、前記RFIDタグと通信できない場合、又は、前記通信状態が予め定めた基準状態よりも悪い場合に、漏水有りと判定する漏水判定手段を備える構成とすることもできる。
【0012】
また、本発明のRFIDタグは、配水管の継ぎ目近傍に設置される、LF帯、MF帯、HF帯及びVHF帯のいずれかの周波数帯で作動するRFIDタグであって、その表面、裏面又は表裏面の少なくとも一部に、前記漏水を吸収し滞留させる吸水材を備えるものである。
【0013】
また、本発明のRFIDタグは、配水管の継ぎ目近傍に設置される、LF帯、MF帯、HF帯及びVHF帯のいずれかの周波数帯で作動するRFIDタグであって、その表面又は裏面の少なくとも一方に、前記漏水を前記RFIDタグのアンテナの表面又は裏面に誘導する案内溝を備えるものである。
【0014】
本発明においては、更に、前記RFIDタグの前記配水管設置面に、軟磁性材を備える構成とすることができる。
【0015】
このように、本発明では、配水管の継ぎ目近傍などの水漏れが生じやすい箇所にLF帯、MF帯、HF帯及びVHF帯のいずれかの周波数帯で作動するRFIDタグを設置し、RFIDタグとリーダ又はリーダ/ライタとの間の通信状態の変化に基づいて水漏れの有無を判定しているため、大掛かりな装置を必要とせず、既存のRFIDシステムを利用して水漏れを安価に検出することができる。また、LF帯、MF帯、HF帯及びVHF帯のいずれかの周波数帯で作動するRFIDタグのタグアンテナは導線を巻回する構造であり、タグアンテナの形状を水漏れを検出する領域に合わせて変更することができるため、水漏れを簡単かつ確実に検出することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の漏水検出方法及び漏水検出システム並びにRFIDタグによれば、大掛かりな装置を必要とすることなく、わずかな水漏れであっても簡単、確実かつ安価に検出することができる。
【0017】
その理由は、LF帯、MF帯、HF帯及びVHF帯のいずれかの周波数帯(たとえば、13.56MHz帯など)で作動するRFIDタグを配水管の継ぎ目近傍などの水漏れが生じやすい箇所に設置し、RFIDタグとリーダ又はリーダ/ライタとの間の通信状態の変化に基づいて水漏れの有無を判定しているからである。
【0018】
また、LF帯、MF帯、HF帯及びVHF帯のいずれかの周波数帯で作動するRFIDタグは、他の周波数帯で作動するRFIDタグよりも安価であり、かつ、導線を巻回する構造であり、タグアンテナの形状を水漏れを検出する領域に合わせて変更することができるため、水漏れを簡単かつ確実に検出することができるからである。また、RFIDタグの表面又は裏面の少なくとも一部に、漏れ出た水を吸収、保持する吸収材を配設したり、RFIDタグの表面又は裏面の少なくとも一方に、漏れ出た水をRFIDタグの表面又は裏面に誘導する案内溝を設けたり、RFIDタグの配水管設置面にスペーサや軟磁性材を配設して配水管内部の水の影響を抑制することによって、水漏れの検出精度を高めることができるからである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
上述したように、従来、配水管の水漏れの検査は目視や触診により行っていたが、狭くかつ暗い場所で配水管の水漏れを検出することは容易ではない。そこで、特許文献1などに水漏れを自動的に検出する装置が開示されているが、従来の方法では装置が大掛かりになり、また、水漏れ箇所を特定できないなどの問題があった。
【0020】
一方、近年、ICチップを備えたタグとリーダ又はリーダ/ライタとの間でデータの通信を行うRFIDシステムが様々な用途に利用されるようになってきている。このRFIDシステムは、使用する周波数帯に応じて通信可能な距離が異なり、LF帯、MF帯、HF帯又はVHF帯などの周波数帯で作動するものや、UHF帯やSHF帯などの高周波帯で作動するものなどがある。
【0021】
そこで、本願発明者は、先願(特願2005−78524号)において、高周波帯で作動するRFIDタグを配水管の継ぎ目などの水漏れが発生しやすい箇所に設置して、そのRFIDタグとリーダ又はリーダ/ライタとの間の通信状態の変化に基づいて漏水の有無を判定する漏水検出方法及び漏水検出システム並びにRFIDタグを開示している。この先願では、RFIDタグが使用する高周波数の電磁波は水に吸収されやすい性質を利用しているために、高感度で漏水を検知することができる。
【0022】
しかしながら、高周波帯で作動するRFIDタグは、現在普及しているLF帯、MF帯、HF帯又はVHF帯などの周波数帯で作動するRFIDタグに比べて価格が割高になっており、また、安価かつ様々な形状の短波帯のリーダ/ライタを利用することができないため、システム全体のコストが増加してしまう。また、高周波帯で作動するRFIDタグのタグアンテナは線状の形状(ダイポールアンテナ、モノポールアンテナなど)であり、その検知範囲は狭く、タグアンテナの形状を自由に変更することが難しいため、配水管から漏れる水が流れる方向を考慮してRFIDタグの設置箇所を決定しなければならず、実装上の制約も多い。
【0023】
そこで、本発明では、様々な形状や大きさが存在し、実装上の制約が少ないLF帯、MF帯、HF帯及びVHF帯のいずれかの周波数帯(好ましくは13.56MHz帯)で作動するRFIDタグを配水管の継ぎ目などの水漏れが発生しやすい箇所に設置して、そのRFIDタグとリーダ又はリーダ/ライタとの間の通信状態の変化(通信距離の低下や共振周波数のずれ、通信不能になるなど)に基づいて漏水の有無を判定可能にしている。以下、その具体的構成について、図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0024】
まず、本発明の第1の実施例に係る漏水検出方法及び漏水検出システム並びにRFIDタグについて、図1乃至図8を参照して説明する。図1は、本実施例の漏水検出システムの構成を模式的に示す図であり、図2は本実施例のタグの構造を示す図である。また、図3は、本実施例のタグを配水管の継ぎ目に設置した状態を模式的に示す図であり、図4及び図5は、水漏れが発生した状態を模式的に示す図である。また、図6は、本実施例のタグを利用して水漏れをリーダ又はリーダ/ライタで検知する方法を模式的に示す図である。
【0025】
図1に示すように、本実施例の漏水検出システム1は、LF帯、MF帯、HF帯及びVHF帯のいずれかの周波数帯(好ましくは、13.56MHz帯)で作動する1以上のタグ2と、タグ2とデータの交信を行うリーダ又はリーダ/ライタ(以下、リーダ/ライタ7とする。)とからなる。上記タグ2は、共振回路を構成するタグアンテナ3とコンデンサ(ICチップ4に容量を備える場合には必ずしも必要ではない。)と情報を記憶するICチップ4とを備え、内蔵する電源又はリーダ/ライタ7から供給される電源を用いて駆動される。また、上記リーダ/ライタ7は、タグ2と交信するリーダ/ライタアンテナ8と、送受信信号を変換するための通信回路9aや送受信信号をデコードするための演算処理回路9b等の制御部9とを備えている。なお、本実施例で利用するタグ2はICチップ4を備える構成としているが、複数のタグ2の各々を識別する必要がない場合には、ICチップ4を備える必要はない。
【0026】
上記タグ2は、図2に示すように、変形可能なプラスチックフィルムなどからなる基材5の上に、導線6を巻回して形成したタグアンテナ3とICチップ4とが配置され、タグアンテナ3とICチップ4とが接続されて構成される。また、基材5のタグアンテナ3が配置される面と反対側の面(裏面)には粘着材10が配設され、タグ2を水漏れの検知箇所に固定できるように構成されている。
【0027】
なお、図2の構造は例示であり、タグアンテナ3の構造や形状、材質等は特に限定されない。例えば、タグアンテナ3を構成する導線6の径、巻回の数、巻回の方法などは任意であり、タグアンテナ3のアンテナ軸に磁芯を備えても構わない。また、タグアンテナ3は、基材5上の金属膜をエッチングして形成してもよいし、基材5上に導線を固定して形成してもよい。なお、図2ではタグアンテナ3及びICチップ4が露出する構造としているが、タグ2全体をフィルムなどの保護材で保護する構造としてもよい。
【0028】
また、図2では基材5の裏面側に粘着材10を配設しているが、表面側に粘着材10を配設してもよいし、表面又は裏面の一部に粘着材10を配設してもよい。また、タグ2を固定する手段は粘着材10に限らず、たとえば、予め配水管側に粘着材を配設してもよいし、配水管にタグ2を嵌め込む爪のような固定治具を設けてもよいし、リング形状のタグ2を検知箇所に巻きつけてもよい。
【0029】
そして、上記構成のタグ2を配水管の水漏れが生じやすい箇所に設置する。例えば、図3に示すように、天井12に備え付けられるパッケージエアコン11に接続されているドレン管の水漏れを検知する場合には、タグ2はパイプ13と継ぎ手14の接続箇所近傍に粘着材10により固定され、発泡ポリエチレンなどで形成された保温材15で覆われる。なお、タグ2の設置箇所は任意であり、配水管(パイプ13や継ぎ手14)の上部でも側部でもよい。また、タグ2の設置形態も任意であり、配水管に直接貼り付けてもよいし、タグ2を配水管の周囲に巻き付けるようにしてもよいし、保温材15の上に設置してもよい。また、タグ2の設置個数も任意であり、複数の箇所にタグ2を設置してもよいし、各々の設置箇所に複数のタグ2を設置してもよい。
【0030】
上記構成において、ドレン管に水漏れが発生した場合は、図4に示すようにパイプ13と継ぎ手14との継ぎ目から水が漏れ出し、漏れ出た水16がタグ2の少なくとも一部を覆う。そして、タグ2は漏れ出た水16によって電磁波が吸収されて通信距離が短くなったり、漏れ出た水16によってタグアンテナ3のインピーダンスが変化して共振周波数がずれるなどして通信状態が劣化したり、ICチップ4が破壊されて通信不能になる。また、図5に示すようなパイプ13にタグ2を設置した場合でも、継ぎ目から漏れ出た水16がパイプ13を伝ってタグ2のタグアンテナ3に到達するため、同様の通信状態の劣化や通信不能などの障害が発生する。
【0031】
なお、図4及び図5に示す漏水状態は例示であり、漏れ出た水16がタグ2のタグアンテナ3の表面又は裏面の少なくとも一部に広がっていれば十分に通信状態を変化させることが可能である。
【0032】
このようなタグ2が設置されたドレン管の水漏れの検知は、図6に示すように、検査の作業者がリーダ/ライタ7(好ましくは持ち運びが容易なハンディタイプのリーダ/ライタ)をタグ2にかざすことによって行われる。すなわち、水漏れが発生していない場合には、タグ2とリーダ/ライタ7との間で正常にデータの通信が行われるが、水漏れが発生している場合には、タグ2が漏れ出た水16で覆われることによって、通信状態の劣化や通信不能などの通信状態の変化が起こる。
【0033】
従って、タグ2とリーダ/ライタ7とを通信状態の変化に基づいて、通信状態が正常であれば水漏れがなく、通信状態の劣化や通信不能などの通信状態の変化があれば水漏れが発生していると判断することができるため、簡単かつ確実に水漏れを検出することができる。特に、配水管が保温材15で覆われている場合には、保温材15を剥がすことなく水漏れを検出できるため、保温材15に係る工事、作業などが容易になる。
【0034】
なお、漏水の有無を作業者自身が判定してもよいが、例えば、リーダ/ライタ7の制御部9に漏水判定手段を設け、通信不能又は通信状態が予め定めた基準状態よりも悪い場合に水漏れがあると判定して、ランプなどによって検査者に知らせる構成としてもよいし、リーダ/ライタ7を予めタグ2との通信できる場所に設置して通信状態を監視し、水漏れを検出したときに、光や音などを用いて報知する構成としてもよい。
【0035】
また、タグ2を複数設置した場合にリーダ/ライタ7では各々のタグ2を識別することができるため、予めタグ2と設置箇所とを対応付けるテーブルを設けておけば水漏れが発生している箇所も特定することができる。更に、ICチップ4に検査日時、検査実施者などの検査記録を保存できるため、検査履歴を確保することができ、検査の効率を向上させることができる。
【0036】
このように、本実施例の構成によれば、配水管の接続部分などの漏水しやすい箇所に、LF帯、MF帯、HF帯及びVHF帯のいずれかの周波数帯で作動するタグ2を設置し、タグ2とリーダ/ライタ7との間の通信状態の変化(通信状態の劣化や通信不能)に基づいて水漏れの有無を判定しているため、簡単かつ確実に漏水を検出することができる。特に、配水管が保温材15などで覆われていたり、巻きつけられている場合には、保温材15を剥がすことなく水漏れを検知することができる。
【実施例2】
【0037】
次に、本発明の第2の実施例に係る漏水検出方法及び漏水検出システム並びにRFIDタグについて、図7乃至図10を参照して説明する。図7乃至図10は、本実施例のタグの構造を模式的に示す図である。
【0038】
前記した第1の実施例では、基材5上にタグアンテナ3とICチップ4とが配置され、その基材5に必要に応じて粘着材10が配設されたタグ2を用いたが、これらタグ2の構成材料は、通常、水をはじきやすい性質を有するため、漏水の量が少ない場合に漏れ出た水16がタグアンテナ3の表面や裏面に滞留せず通信状態が変化しない恐れがある。また、水漏れが継続的に生じている場合はいつ検査しても水漏れを検出することが可能であるが、水漏れが断続的に生じている場合に、水漏れが止まっているときに検査しても水漏れを検出することができない恐れもある。そこで、本実施例では、わずかな水漏れや断続的な水漏れであっても確実に検出することができるように、漏れ出た水をタグ2の表面又は裏面に保持できるようにしている。
【0039】
具体的に説明すると、本実施例のタグ2は、図7(a)に示すように、配水管の形状に合わせて変形可能なプラスチックフィルムなどからなる基材5の上に、導線6を巻回したLF帯、MF帯、HF帯及びVHF帯のいずれかの周波数帯で作動するタグアンテナ3とICチップ4とが配置され、タグアンテナ3及びICチップ4の表面には、スポンジなどの吸水性のある材料(吸水材17と呼ぶ。)が配設されている。そして、基材5には必要に応じてタグ2を設置箇所に固定する粘着材10が配設されている。このような吸水材17を備えるタグ2では、配水管の接続箇所から漏れ出た水は吸水材17に吸収されて保持されるため、わずかな水漏れや断続的な水漏れであっても確実に検出することができる。
【0040】
なお、吸水材17は水を吸収して一定期間保持することができるものであればよく、例えば、適当な大きさの孔や隙間が形成されたフィルタや紙、綿などの毛細管現象により水を吸い込むことができる材料や、水分を吸収してゲル化する材料などを用いることができる。
【0041】
また、図7では、タグ2の表面に吸水材17を配設したが、タグアンテナ3の下部に水があっても通信状態が変化することから、図8に示すように、タグ2の裏面(基材5の下層)に吸水材17を配設し、必要に応じて吸水材17の裏面に粘着材10を配設する構成としてもよい。
【0042】
また、図7では、タグ2の表面の全面を吸水材17で覆う構造としたが、タグ2がフィルムなどの保護材によって保護されていない場合、図9に示すように巻回する導線6の内側にICチップ4を覆わないように吸水材17を配設してもよいし、ICチップ4を覆うように吸水材17を配設して、水が漏れた場合にICチップ4が破壊されて通信不能になるようにしてもよい。同様に、吸水材17をタグ2の裏面の一部に配設してもよいし、表面と裏面の各々の一部に吸水材17を配設してもよい。
【0043】
また、図7乃至図9では、タグ2の表面又は裏面の一方に吸水材17を配設したが、吸水効果を高めるために、図10に示すように、タグ2の表面及び裏面の双方に吸水材17を配設してもよいし、タグ2全体を覆うように吸水材17を配設(例えば、袋状の吸水材17の内部にタグ2を配設)してもよい。
【0044】
このように、本実施例の構成によれば、配水管の接続部分などの漏水しやすい箇所に、LF帯、MF帯、HF帯及びVHF帯のいずれかの周波数帯で作動するタグ2を設置し、かつ、タグ2の表面又は裏面の少なくとも一部に吸水材17を配設しているため、漏れ出た水をタグ2の表面又は裏面に滞留させることができ、わずかな水漏れや断続的な水漏れであっても確実に検出することができる。
【実施例3】
【0045】
次に、本発明の第3の実施例に係る漏水検出方法及び漏水検出システム並びにRFIDタグについて、図11乃至図13を参照して説明する。図11乃至図13は、本実施例のタグの構造を模式的に示す図である。
【0046】
前記した第1及び第2の実施例では、タグ2を単独又は吸水材17を配設して配水管に設置したが、タグ2を設置する箇所の環境などによって、タグ2とリーダ/ライタ7との間で行われる通信が影響を受け、通信状態が変化する可能性がある。そこで本実施例では、通信状況を変化させる要因を抑制するためのタグ2の構造を提案する。
【0047】
第1は、配水管の中を流れる水によって電磁波の吸収や共振周波数のずれなどが生じて通信状態が変化することを防止するための構造である。具体的には、配水管の肉厚が薄い場合にタグ2の基材5を厚くしたり、図11(a)に示すように、第1の実施例で示した構造のタグ2の基材5の裏面にスペーサ18を配設し、基材5やスペーサ18によってタグ2のタグアンテナ3を配水管から離して(好ましくは3〜5mm程度)、内部に流れる水の影響を抑制する。また、図11(b)から(d)に示すように、第2の実施例で示したタグ2の裏面にスペーサ18を配設し、同様に内部に流れる水の影響を抑制する。
【0048】
上記スペーサ18は、任意の材料を用いて形成することができるが、例えばプラスチック(誘電率2〜3)やゴムなどを用いるとスペーサ18の誘電率が大きくなり、その結果、スペーサ18自身によるロスが大きくなるため、内部に気泡が混在する発泡ウレタンなどの多孔質プラスチック(誘電率1.1〜1.2)や多孔質ゴムなどを用いることが好ましい。
【0049】
第2は、タグ2を設置する配水管などが鉄や銅などの金属材料で形成されている場合に金属材料に流れる渦電流によりタグ2が作動しなくなったり、通信距離が小さくなったりすることを防止するための構造である。具体的には、図12(a)に示すように、第1の実施例で示した構造のタグ2の基材5の裏面に軟磁性材19を配設し、タグ2の磁束を軟磁性材19の内部を通過させることによって、配水管などを形成する金属材料の影響を抑制する。また、図12(b)から(d)に示すように、第2の実施例で示したタグ2の裏面に軟磁性材19を配設し、同様に配水管などを形成する金属材料の影響を抑制する。
【0050】
この軟磁性材19は、一般的な軟磁性材や、本願発明者の先願(特開2002−215321号公報)に記載された方法を用いて製造された軟磁性材を利用してもよいが、損失を低減させるために、極めて微細な軟磁性金属の粉末をプラスチックまたはゴムと複合化したものを用いることもできる。
【0051】
なお、図13で示すように、スペーサ18と軟磁性材19とを重ねてタグ2に配設するように構成してもよい。この場合、スペーサ18と軟磁性材19の重ね合わせの順序は任意であり、第1及び第2の実施例で示したタグ2のいずれに配設しても構わない。
【0052】
このように、本実施例の構成によれば、配水管の接続部分などの漏水しやすい箇所に、LF帯、MF帯、HF帯及びVHF帯のいずれかの周波数帯で作動するタグ2を設置し、タグ2の裏面にスペーサ18を配設しているため、配水管内部の流れる水によるタグ2とリーダ/ライタ7との通信に対する影響を抑制することができる。また、タグ2の裏面に軟磁性材19を配設しているため、配水管を構成している金属材料によるタグ2とリーダ/ライタ7との通信に対する影響を抑制することができる。すなわち、通信を変化させる要因を抑制し、水漏れを確実に検出できる状態を保つことができる。
【実施例4】
【0053】
次に、本発明の第4の実施例に係る漏水検出方法及び漏水検出システム並びにRFIDタグについて、図14及び図15を参照して説明する。図14及び図15は、本実施例のタグの構造を模式的に示す図である。
【0054】
前記した第2の実施例では、タグ2の表面又は裏面の少なくとも一方に吸水材17を配設して漏れ出た水を滞留させていたが、タグ2のタグアンテナ3表面又は裏面に漏れ出た水を確実に誘導することができればよいことから、例えば、図14(b)に示すように、基材5の裏面に案内溝20を配設する構成とすることもできる。この構造では、漏れ出た水は案内溝20に沿ってタグアンテナ3の下部に誘導され、表面張力で案内溝20内部に滞留するため、わずかな水漏れであっても効率的に検出することが可能となる。
【0055】
なお、この案内溝20の形や深さ、方向などは特に限定されず、例えば、図14(a)(b)に示すようにタグ2の長手方向に沿って案内溝20を形成してもよいし、図14(c)に示すように、基材5に溝を特別に設けることなく、裏面の一部に粘着材10を配設し、粘着材10が配設されない部分を案内溝20として利用してもよい。
【0056】
また、図15(a)に示すように、タグ2の表面に保護材21が形成される構造の場合は、タグ2表面の保護材21に案内溝20を設けてもよいし、表面と裏面の双方に案内溝20を設けてもよい。また、図14及び15では一方向に案内溝20を設けたが、格子状の案内溝20を設けたり、湾曲又は屈曲する形状の案内溝20を設けたりしてもよい。また、前記した第2又は第3の実施例に示した構造に案内溝20を付加してもよい。
【0057】
このように、本実施例の構成によれば、配水管の接続部分などの漏水しやすい箇所に、LF帯、MF帯、HF帯及びVHF帯のいずれかの周波数帯で作動するタグ2を設置し、かつ、タグ2の表面又は裏面の少なくとも一方に案内溝20を形成しているため、漏れ出た水をタグ2の表面又は裏面に誘導することができ、わずかな水漏れや断続的な水漏れであっても確実に検出することができる。
【0058】
なお、上記各実施例では、配水管を例にして説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、たとえば、装置の漏水を検出するなど、漏水の検出全般に適用することができる。また、上記各実施例では、タグ2の構造に特徴を持たせたが、漏れ出た水をタグ2の表面又は裏面に効率的に誘導するために、配水管の表面の、タグ2と配水管の継ぎ目との間の経路上に案内溝を設けてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は、水の有無で通信状態が変化することを利用した任意のシステムに適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の第1の実施例に係る漏水検出システムの構成を模式的に示す図である。
【図2】本発明の第1の実施例に係るタグの構成を示す図である。
【図3】本発明の第1の実施例に係るタグの設置状態を模式的に示す図である。
【図4】本発明の第1の実施例に係るタグの設置状態(漏水時)を模式的に示す図である。
【図5】本発明の第1の実施例に係るタグの設置状態(漏水時)のバリエーションを示す図である。
【図6】本発明の第1の実施例に係る漏水の検知方法を模式的に示す図である。
【図7】本発明の第2の実施例に係るタグの構成を示す図を示す図である。
【図8】本発明の第2の実施例に係るタグのバリエーションを示す図である。
【図9】本発明の第2の実施例に係るタグのバリエーションを示す図である。
【図10】本発明の第2の実施例に係るタグのバリエーションを示す図である。
【図11】本発明の第3の実施例に係るタグの構成を示す図である。
【図12】本発明の第3の実施例に係るタグのバリエーションを示す図である。
【図13】本発明の第3の実施例に係るタグのバリエーションを示す図である。
【図14】本発明に第4の実施例に係るタグの構成を示す図である。
【図15】本発明の第4の実施例に係るタグのバリエーションを示す図である。
【符号の説明】
【0061】
1 漏水検出システム
2 タグ
3 タグアンテナ
4 ICチップ
5 基材
6 導線
7 リーダ/ライタ
8 リーダ/ライタアンテナ
9 制御部
9a 通信回路
9b 演算処理回路
10 粘着材
11 パッケージエアコン
12 天井
13 パイプ
14 継ぎ手
15 保温材
16 漏れ出た水
17 吸水材
18 スペーサ
19 軟磁性材
20 案内溝
21 保護材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配水管の継ぎ目近傍に設置される、LF帯、MF帯、HF帯及びVHF帯のいずれかの周波数帯で作動する1以上のRFIDタグと、前記RFIDタグと通信を行うリーダ又はリーダ/ライタとを用いた漏水検出方法であって、
前記継ぎ目から前記RFIDタグに流れ込む漏水による通信状態の変化に基づいて前記漏水を検出することを特徴とする漏水検出方法。
【請求項2】
前記RFIDタグの表面、裏面又は表裏面の少なくとも一部に吸水材を配設し、該吸水材により、前記漏水を前記RFIDタグの表面、裏面又は表裏面に滞留させることを特徴とする請求項1記載の漏水検出方法。
【請求項3】
前記RFIDタグの表面又は裏面の少なくとも一方に案内溝を形成し、該案内溝により、前記漏水を前記RFIDタグの表面又は裏面に誘導することを特徴とする請求項1記載の漏水検出方法。
【請求項4】
前記RFIDタグの前記配水管設置面に軟磁性材を配設し、該軟磁性材により、前記配水管の構成材料又は前記配水管内部の水による影響を抑制することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一に記載の漏水検出方法。
【請求項5】
配水管の継ぎ目近傍に設置される、LF帯、MF帯、HF帯及びVHF帯のいずれかの周波数帯で作動する1以上のRFIDタグと、前記RFIDタグと通信を行うリーダ又はリーダ/ライタとを少なくとも備える漏水検出システムであって、
前記継ぎ目から前記RFIDタグに流れ込む漏水による通信状態の変化を検出する手段を備え、該手段により前記通信状態の変化に基づく前記漏水の検出を可能とすることを特徴とする漏水検出システム。
【請求項6】
前記RFIDタグの表面、裏面又は表裏面の少なくとも一部に、前記漏水を吸収し滞留させる吸水材が配設されていることを特徴とする請求項5記載の漏水検出システム。
【請求項7】
前記RFIDタグの表面又は裏面の少なくとも一方に、前記漏水を前記RFIDタグの表面又は裏面に誘導する案内溝が形成されていることを特徴とする請求項5記載の漏水検出システム。
【請求項8】
前記RFIDタグの前記配水管設置面に、軟磁性材が配設されていることを特徴とする請求項5乃至7のいずれか一に記載の漏水検出システム。
【請求項9】
前記リーダ又は前記リーダ/ライタに、前記RFIDタグと通信できない場合、又は、前記通信状態が予め定めた基準状態よりも悪い場合に、漏水有りと判定する漏水判定手段を備えることを特徴とする請求項5乃至8のいずれか一に記載の漏水検出システム。
【請求項10】
配水管の継ぎ目近傍に設置される、LF帯、MF帯、HF帯及びVHF帯のいずれかの周波数帯で作動するRFIDタグであって、
その表面、裏面又は表裏面の少なくとも一部に、前記継ぎ目からの漏水を吸収し滞留させる吸水材を備えることを特徴とするRFIDタグ。
【請求項11】
配水管の継ぎ目近傍に設置される、LF帯、MF帯、HF帯及びVHF帯のいずれかの周波数帯で作動するRFIDタグであって、
その表面又は裏面の少なくとも一方に、前記継ぎ目からの漏水を前記RFIDタグのアンテナの表面又は裏面に誘導する案内溝を備えることを特徴とするRFIDタグ。
【請求項12】
更に、前記RFIDタグの前記配水管設置面に、軟磁性材を備えることを特徴とする請求項10又は11に記載のRFIDタグ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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