説明

漏水検知装置

【課題】漏水を迅速に検知することができる漏水検知装置を提供する。
【解決手段】温水洗浄装置10は、ストレーナ11、緊急遮断弁12、上流側流量計13、電磁弁14、温水タンク15、下流側流量計16、洗浄ノズル17及び制御回路18から構成されている。電磁弁14が開弁し、上流側流量計13の流量Rが一定になってから所定時間が経過した時間帯A’において、下流側流量計16の流量Rが一定であるか否かが確認される。流量Rが一定でないと、漏水ありと判定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はトイレ用の温水洗浄装置の水漏れを検知する漏水検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
便器に備えられ、洗浄ノズルから温水を噴射して人体臀部の温水洗浄を行う温水洗浄装置は、現在において広く用いられている。この温水洗浄装置に漏水検知装置を設置することが特開2000−179024号に記載されている。
【0003】
同号では、止水栓に接続された給水元管の下流側が、分岐栓によって2本のサプライ管に分岐され、該サプライ管の一方が洗浄タンクに接続され、他方が局部洗浄装置に接続されている。この給水元管に漏水検知装置が設置されている。この漏水検知装置は、流量センサと、この流量センサの検出流量に基づいて漏水の有無を判断する制御部とを有している。
【0004】
この漏水検知装置の制御内容は次の通りである。洗浄タンクに給水するときの給水流量は毎分3リットル以上であり、また、給水タンクを満水にするための給水時間は10分以下である。従って、流量センサが毎分3リットル以上の流量を10分間以上継続して検出すると、洗浄タンクへの給水に漏水があるものと判定する。
【0005】
また、局部洗浄装置に給水するときの給水流量は毎分3リットル未満であり、また、通常、局部洗浄装置が20分以上継続して使用されることはない。従って、流量センサが毎分3リットル未満の流量を20分間以上継続して検出すると、局部洗浄装置に漏水があるものと判定する。
【特許文献1】特開2000−179024号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特開2000−179024号の漏水検知装置では、漏水の検知に長時間(10分又は20分)かかるという問題がある。
【0007】
本発明は、漏水を迅速に検知することができる漏水検知装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明(請求項1)の漏水検知装置は、洗浄ノズルと、該洗浄ノズルに温水を供給するための温水タンクと、該温水タンクへの給水及び給水停止を行う弁とを有する温水洗浄装置に設置される漏水検知装置において、該弁よりも上流側に設置された第1の流量検出手段と、該温水タンクの下流側に設置された第2の流量検出手段と、該第1の流量検出手段の流量及び該第2の流量検出手段の流量に基づいて、漏水が発生しているか否かを判定する判定手段と、を有することを特徴とするものである。
【0009】
請求項2の漏水検知装置は、請求項1において、前記判定手段は、前記第1の流量検出手段の検出流量が一定の所定流量となってから所定時間経過後において、前記第2の流量検出手段の流量が経時的に変動するときに、漏水と判定するものであることを特徴とする。
【0010】
請求項3の漏水検知装置は、請求項1において、前記判定手段は、1回の前記弁の開動作及び閉動作に伴って流れた水の積算量を比較するものであって、前記第1の流量検出手段で検出される流量の積算量が前記第2の流量検出手段で検出される流量の積算量よりも多いときに、漏水と判定するものであることを特徴とする。
【0011】
請求項4の漏水検知装置は、請求項1において、前記判定手段は、前記弁を開弁してから所定時間が経過して該第1の流量検出手段の検出流量及び該第2の流量検出手段の検出流量が安定した状態において両者が異なるときに、漏水と判定するものであることを特徴とする。
【0012】
請求項5の漏水検知装置は、請求項1ないし4のいずれか1項において、前記弁よりも上流側に緊急遮断弁を有しており、前記判定手段は、漏水と判定すると、該緊急遮断弁を閉弁させるものであることを特徴とする。
【0013】
請求項6の漏水検知装置は、請求項1ないし5のいずれか1項において、前記判定手段が漏水と判定した場合に動作する警報発生手段を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明(請求項1)の漏水検知装置によると、弁よりも上流側及び温水タンクよりも下流側の2箇所に流量計が設置されているため、これら2個の流量計の流量に基づいて漏水が発生しているか否かを判定することにより、漏水を迅速に検知することができる。
【0015】
請求項2では、判定手段は、第1の流量検出手段の検出流量が一定となってから所定時間経過後において、第2の流量検出手段の検出流量が一定とならない(経時的に変動する)ときに、漏水と判定するように構成されている。この場合、温水洗浄装置の使用時間内の極く短時間で漏水を検知することができる。
【0016】
請求項3では、判定手段は、1回の温水洗浄における第1の流量検出手段の検出流量の積算量が第2の流量検出手段の検出流量の積算量よりも多いときに、漏水と判定するように構成されている。このように積算量を対比することにより、漏水の有無を高精度にて判定することができる。
【0017】
請求項4では、判定手段は、弁を開弁してから所定時間が経過して第1の流量検出手段の検出流量及び第2の流量検出手段の検出流量とが安定した状態において両者に差があるときに、漏水と判定するように構成されている。この場合、温水洗浄装置の使用時間内の極く短時間で漏水を検知することができる。
【0018】
請求項5では、弁よりも上流側に緊急遮断弁を有しており、判定手段は、漏水と判定すると、該緊急遮断弁を閉弁するように構成されている。この場合、漏水量を少量に抑えることができる。
【0019】
請求項6では、漏水と判定されたときに作動する警報発生手段を備えており、修理等の処置を速やかに行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0021】
第1図は実施の形態に係る漏水検知装置を備えた温水洗浄装置のブロック図、第2図は第1図の漏水検知装置を備えたトイレルームを示す斜視図である。第3図は給水流量の経時変化図であり、(a)は第1図の上流側流量計13の給水流量の経時変化図、(b)は下流側流量計16の給水流量の経時変化図である。
【0022】
第2図の通り、洋風便器1の後部上面に便座ボックス2が設置され、該便座ボックス2に便座3及び便蓋4が取り付けられている。
【0023】
トイレルームの壁面には給水管5の末端が突出しており、この給水管5の末端に止水栓6が取り付けられている。この止水栓6は、給水ホース7を介して、便座ボックス2内に設置された温水洗浄装置10のストレーナ11(第1図)に接続されている。
【0024】
この温水洗浄装置10は、第1図の通り、ストレーナ11、緊急遮断弁12、上流側流量計13、電磁弁14、温水タンク15、下流側流量計16、洗浄ノズル17及び制御回路18から構成されている。弁12,14が開の場合、ストレーナ11を通過した水が、緊急遮断弁12、上流側流量計13及び電磁弁14を介して温水タンク15に流入する。この温水タンク15内の温水が、温水タンク15の流出口から下流側流量計16を介して洗浄ノズル17に供給される。
【0025】
流量計13,16としては、羽根車式、超音波式のものなど、100cc/min程度の微小流量も検出可能な高精度のものが好適である。温水タンク15は、密閉容器内にヒータが設置された密閉式タンクである。
【0026】
制御回路18は、後述するリモコン20からの操作信号に基づき、電磁弁14の開閉制御及び温水タンク15内のヒータの制御を行うと共に、流量計13,16の検出流量に基づいて漏水の判定を行うように構成されている。
【0027】
トイレルーム壁面にリモコン20が設置されており、このリモコン20には、温水洗浄開始/停止スイッチ21の他、水温調節スイッチ、水量調節スイッチ、フラッシュスイッチ等の各種スイッチが配置されている。このリモコン20からの信号が光、電波等によって制御手段18に送信される。
【0028】
<漏水がない場合の検出流量の経時変化>
次に、第3図を参照して、流量計13から流量計16までの系路に漏水がない場合の検出流量の経時変化について説明する。なお、温水タンク15は密閉式であり、常時満水とされている。また、緊急遮断弁12は開弁状態とされている。
【0029】
第3図(a)の通り、時刻tにおいて電磁弁14が開弁すると、上流側流量計13の検出流量Rは徐々に増加し、時刻tにおいて検出流量Rは安定した一定値となる。時刻tにおいて電磁弁14が閉弁すると、検出流量Rは徐々に低下し、時刻tにおいて検出流量Rは0となる。
【0030】
下流側流量計16の検出流量Rは、第3図(b)の通り、時刻t(電磁弁14の開弁時刻)から若干の時間が経過した時刻tにおいて、増加し始める。そして、検出流量Rが一定となる時刻tから若干の時間tが経過した時刻tにおいて、検出流量Rは安定した一定値となる。時刻tにおいて電磁弁14が閉弁すると、その後若干の時間が経過した時刻tから検出流量Rは徐々に低下し、時刻tにおいて検出流量Rは0となる。
【0031】
このように時刻t、t間、t、t間、t、t間およびt、t間にタイムラグが生じるのは、電磁弁14が開弁して温水タンク15に水道水圧が加わると、温水タンク15が多少膨脹するためである。温水タンク15の容積が1.0〜1.5L程度の場合、このタイムラグは、例えば2〜3秒程度の極く短時間である。
【0032】
流量計13から流量計16の間に漏水がない場合、検出流量Rが一定となっている時間帯(時間帯A)及び検出流量Rが一定となっている時間帯(時間帯A’)の長さは等しい。また、この時間帯A,A’における検出流量R(図中のC)と検出流量R(図中のC’)は同量となる。時刻t〜t間における検出流量Rの積算量Bと時刻t〜tの間の検出流量Rの積算量B’は同量となる。
【0033】
<漏水の判定例1(請求項2の判定例)>
上流側流量計13と下流側流量計16との間に漏水が発生していると、第3図(b)のtからtの時間帯A’において下流側流量計16の検出流量Rが安定せず、変動することがある。そこで、このような場合には、漏水ありと判定し、緊急遮断弁12を閉弁する。
【0034】
本判定例によると、温水洗浄装置の使用中に漏水の有無を判定することができる。また、漏水と判定されると、緊急遮断弁12が閉弁されるため、それ以上の漏水が回避される。
【0035】
<漏水の判定例2(請求項3の判定例)>
上流側流量計13と下流側流量計16との間で漏水がある場合には検出流量Rの積算量(第3図(b)のB’)が検出流量Rの積算量(第3図(a)のB)よりも少量となる。従って、この場合には漏水ありと判定し、緊急遮断弁12を閉弁する。
【0036】
本判定例によると、温水洗浄の終了直後に、漏水の有無を判定することになる。本判定例では、検出流量Rの積算量と検出流量Rの積算量とを比較するため、正確に漏水を判定することができる。
【0037】
<漏水の判定例3(請求項4の判定例)>
上流側流量計13と下流側流量計16との間に漏水が発生していると、第3図の時間帯A,A’が重畳する時間帯(時刻t〜t)のように上流側流量計13の検出流量R及び下流側流量計16の検出流量Rが安定した状態において、両者に差が生じる。即ち、C’がCよりも小さいものとなる。このような場合には、漏水ありと判定し、緊急遮断弁12を閉弁させる。
【0038】
本判定例によると、温水洗浄装置の使用中に漏水の有無を判定することができる。
【0039】
<別の実施の形態>
本実施の形態は本発明の一例であり、本発明は上記実施の形態に限定されるものではない。
【0040】
例えば、上記の請求項2,3,4の判定例では、それぞれ、流量Rが一定か否か、流量Rの積算量が流量Rの積算量よりも多量であるか否か、流量Rと流量Rが同量であるか否かの3つの要素によって漏水の有無を判定しているが、これら3要素のうちの2要素又は3要素に基づいて漏水の有無を判定してもよい。この場合、いずれか1要素でも漏水と判定した場合に漏水ありの最終判定を行うようにしてもよく、2要素又は3要素が漏水と判定した場合に漏水ありの最終判定を行うようにしてもよい。
【0041】
本発明では、温水洗浄装置の非使用時(電磁弁14の閉弁時)に流量計13又は16が流水を検出するときには漏水と判定してもよい。
【0042】
本発明では、漏水ありと判定されたときに警報を発生させるようにしてもよい。警報発生手段としては、ブザー、ベルあるいは警告灯などが例示されるが、これに限定されない。
【0043】
上記の緊急遮断弁12は止水栓6に設けられてもよい。この場合、制御回路18と緊急遮断弁12とを接続する信号線は給水ホース7に沿わせて設けるのが好適である。
【0044】
上記実施の形態では電磁弁14が用いられているが、電動式の切替弁などを用いてもよいことは明らかである。なお、ストレーナ11は省略されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】実施の形態に係る漏水検知装置を備えた温水洗浄装置のブロック図である。
【図2】第1図の漏水検知装置を備えたトイレルームを示す斜視図である。
【図3】給水流量の経時変化図である。
【符号の説明】
【0046】
10 温水洗浄装置
11 ストレーナ
12 緊急遮断弁
13 上流側流量計
14 電磁弁
15 温水タンク
16 下流側流量計
17 ノズル
18 制御回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄ノズルと、該洗浄ノズルに温水を供給するための温水タンクと、該温水タンクへの給水及び給水停止を行う弁とを有する温水洗浄装置に設置される漏水検知装置において、
該弁よりも上流側に設置された第1の流量検出手段と、
該温水タンクの下流側に設置された第2の流量検出手段と、
該第1の流量検出手段の流量及び該第2の流量検出手段の流量に基づいて、漏水が発生しているか否かを判定する判定手段と、
を有することを特徴とする漏水検知装置。
【請求項2】
請求項1において、前記判定手段は、前記第1の流量検出手段の検出流量が一定の所定流量となってから所定時間経過後において、前記第2の流量検出手段の流量が経時的に変動するときに、漏水と判定するものであることを特徴とする漏水検知装置。
【請求項3】
請求項1において、前記判定手段は、1回の前記弁の開動作及び閉動作に伴って流れた水の積算量を比較するものであって、前記第1の流量検出手段で検出される流量の積算量が前記第2の流量検出手段で検出される流量の積算量よりも多いときに、漏水と判定するものであることを特徴とする漏水検知装置。
【請求項4】
請求項1において、前記判定手段は、前記弁を開弁してから所定時間が経過して該第1の流量検出手段の検出流量及び該第2の流量検出手段の検出流量が安定した状態において両者が異なるときに、漏水と判定するものであることを特徴とする漏水検知装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項において、前記弁よりも上流側に緊急遮断弁を有しており、
前記判定手段は、漏水と判定すると、該緊急遮断弁を閉弁させるものであることを特徴とする漏水検知装置。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1項において、前記判定手段が漏水と判定した場合に動作する警報発生手段を備えたことを特徴とする漏水検知装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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