潜熱蓄熱体及び潜熱蓄熱床材
【課題】潜熱蓄熱材Bが封入された容器10内に空気が溜まる空気収容空間12を形成しつつ、容器10上側の床材本体1に対する熱の移動を確実にかつ効率よく行わせる。
【解決手段】床下地材上に施工される潜熱蓄熱床材Aとして、床材本体1と、この床材本体1の下側に配置され、温度に応じて融解及び凝固を繰り返す潜熱蓄熱材Bが封入された容器10とを備えてなり、上記容器10の使用状態で上側になる上壁部10aには、上側に突出する凸部11が設けられ、上記凸部11内に空気収容空間12が形成されている一方、凸部11以外の容器10の上壁部10aには常時上記潜熱蓄熱材Bが接触する蓄熱材接触部15が形成されている。床材本体1の下面には、蓄熱材接触部15に伝熱可能に当接するスペーサ17が積層されて配置されている。
【解決手段】床下地材上に施工される潜熱蓄熱床材Aとして、床材本体1と、この床材本体1の下側に配置され、温度に応じて融解及び凝固を繰り返す潜熱蓄熱材Bが封入された容器10とを備えてなり、上記容器10の使用状態で上側になる上壁部10aには、上側に突出する凸部11が設けられ、上記凸部11内に空気収容空間12が形成されている一方、凸部11以外の容器10の上壁部10aには常時上記潜熱蓄熱材Bが接触する蓄熱材接触部15が形成されている。床材本体1の下面には、蓄熱材接触部15に伝熱可能に当接するスペーサ17が積層されて配置されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潜熱蓄熱材を封入した容器により熱授受対象体に伝熱する潜熱蓄熱体、及び潜熱蓄熱体が設けられた潜熱蓄熱床材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の潜熱蓄熱材を利用した潜熱蓄熱体として、特許文献1に示されるように、潜熱蓄熱材を容器内に封入し、その容器を床材本体の空洞内に収容した蓄熱式暖房床材が知られている。
【0003】
ところで、潜熱蓄熱材は、温度に応じて融解及び凝固を繰り返して蓄熱と放熱を行うが、その相変化により体積変化を起こすため、容器に封入して利用する場合には、体積変化による容器の破損や漏出等を防ぐ目的で、容器内の全体を潜熱蓄熱材で満たさず、空気層を残しておくことが望まれている。この空気層は容器内の容積全体の5〜20%が必要であり、この場合、容器内の残り80〜95%の容積を潜熱蓄熱材が占めることとなる。
【0004】
しかし、上記特許文献1のように、潜熱蓄熱材を封入した容器を床材本体に収容した場合、容器内上部に形成された空気層が室内側となって床材本体との間の熱の移動を妨げるので、潜熱蓄熱材による効果を十分に発揮できないこととなる。
【0005】
そこで、特許文献2に示されように、容器内に潜熱蓄熱材と共に油等の液体を封入し、その液体の層を連通路を介して外部容器に連通させ、潜熱蓄熱材の体積変化に応じて液体を外部容器に対し給排することで、容器内の上部に空気層が形成されるのを防ぐことが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−283481号公報
【特許文献2】特開平6−331217号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、この特許文献2のものでは、潜熱蓄熱材の封入容器の外部に液体給排用の外部容器を別途設ける必要があり、その設置スペースを考慮せねばならないという問題がある。
【0008】
本発明は斯かる点に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、容器と、その上側に配置される床材本体等の熱授受対象体との間の伝熱構造に工夫を凝らすことにより、容器内に空気が溜まる空気収容空間を形成しつつ、容器上側に位置する熱授受対象体に対する熱の移動を確実にかつ効率よく行わせるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的の達成のため、この発明では、容器内の潜熱蓄熱材と容器上側の熱授受対象体との間で伝熱する手段を設けるようにした。
【0010】
具体的には、請求項1の発明では、温度に応じて融解及び凝固を繰り返して蓄熱及び放熱を行う潜熱蓄熱材が封入された容器を備え、容器上側に位置する熱授受対象体に伝熱するための潜熱蓄熱体として、上記容器内の潜熱蓄熱材を常時上記熱授受対象体に伝熱させる伝熱手段が設けられ、上記容器の使用状態で上側になる上壁部には、上側に突出する凸部が設けられ、その凸部内に空気収容空間が形成されている一方、凸部以外の容器の上記上壁部には、常時上記潜熱蓄熱材が接触する蓄熱材接触部が形成されており、伝熱手段は、上記蓄熱材接触部と、該蓄熱材接触部を熱授受対象体に伝熱させる伝熱体とを有し、上記伝熱体は、容器の凸部以外の上壁部上面に配置されかつ熱授受対象体の下面に伝熱可能に当接するスペーサとすることを特徴とする。
【0011】
この請求項1の発明では、潜熱蓄熱材が封入された容器内の使用状態で上側になる上部に空気収容空間が形成され、容器内の潜熱蓄熱材を容器上側の熱授受対象体に常時伝熱させる伝熱手段が設けられているので、容器内の潜熱蓄熱材と容器上側の熱授受対象体とが伝熱手段により常時伝熱状態に維持され、容器内の潜熱蓄熱材と熱授受対象体との間の熱移動が確実にかつ効率よく行われる。
【0012】
また、容器内に空気収容空間が形成されているので、潜熱蓄熱材の体積変化による容器の破損や漏出等を防ぐことができ、液体によって空気収容空間を不要とした場合のように別途外部容器を設ける必要がなく、コンパクトな構造となる。
【0013】
また、容器の上壁部の凸部内に空気収容空間が設けられ、凸部以外の容器上壁部に容器内の潜熱蓄熱材と常時接触する蓄熱材接触部が形成されており、この蓄熱材接触部は伝熱体により熱授受対象体と伝熱可能であるので、容器内の潜熱蓄熱材が容器上壁部の蓄熱材接触部及び伝熱体を経て熱授受対象体と常時伝熱可能となり、容器内の潜熱蓄熱材と熱授受対象体との間の熱移動が確実にかつ効率よく行われる。
【0014】
さらに、容器の凸部以外の上壁部上面にスペーサが配置され、このスペーサは熱授受対象体の下面に伝熱可能に当接しているので、容器内の潜熱蓄熱材が容器の上壁部の蓄熱材接触部及びその上のスペーサを経て熱授受対象体と常時伝熱可能となり、容器内の潜熱蓄熱材と熱授受対象体との間の熱移動が確実にかつ効率よく行われる。
【0015】
請求項3の発明では、請求項1又は2の発明において、上記容器は6つの外壁部を有する直方体からなり、6つの外壁部のうち互いに隣接する3つの外壁部の少なくとも2つが使用状態で上壁部となり、これら少なくとも2つの外壁部にそれぞれ対向する他の外壁部は使用状態で下壁部となる平面に形成されていることを特徴とする。
【0016】
この請求項3の発明では、容器において、互いに隣接する3つの外壁部の少なくとも2つが使用状態で上壁部となり、それら少なくとも2つの外壁部にそれぞれ対向する他の外壁部が使用状態で下壁部となる平面であるので、3つの外壁部の少なくとも2つをそれぞれ上壁部とし、それらに対向する外壁部を下壁部とする少なくとも2つの姿勢で容器を使用することができ、容器の使用態様を種々に変更することができる。
【0017】
請求項4の発明では、潜熱蓄熱床材は、上記請求項1〜10の発明のいずれか1つの潜熱蓄熱体が、熱授受対象体を床材本体として、該床材本体の下側に配設されていることを特徴とする。
【0018】
この請求項4の発明では、熱授受対象体が床材本体であり、この床材本体の下側に潜熱蓄熱体が配設されているので、容器内の潜熱蓄熱材が床材本体と常時伝熱可能で、その潜熱蓄熱材と床材本体との間の熱移動が確実にかつ効率よく行われる潜熱蓄熱床材が得られる。
【発明の効果】
【0019】
以上説明した如く、請求項1の発明によると、潜熱蓄熱材が封入された容器を備え、その上側の熱授受対象体に伝熱するための潜熱蓄熱体として、容器内の使用状態で上側になる上部に空気収容空間を形成し、容器内の潜熱蓄熱材を常時熱授受対象体に伝熱させる伝熱手段を設けたことにより、別途に外部容器を設けることなくコンパクトな構造で、容器内の潜熱蓄熱材と熱授受対象体との間の熱移動を確実にかつ効率よく行わせることができる。
【0020】
また、容器の使用状態で上側になる上壁部に凸部を設け、その凸部内に空気収容空間を形成する一方、凸部以外の上壁部に常時潜熱蓄熱材が接触する蓄熱材接触部を形成し、蓄熱材接触部を伝熱体により熱授受対象体に伝熱させるようにしたことにより、容器内の潜熱蓄熱材を上壁部の蓄熱材接触部を経て熱授受対象体と常時伝熱可能として、容器内の潜熱蓄熱材と熱授受対象体との間の熱移動を確実にかつ効率よく行わせることができる。
【0021】
さらに、伝熱体は、容器の凸部以外の上壁部上面に配置されかつ熱授受対象体の下面に伝熱可能に当接するスペーサとしたことにより、容器内の潜熱蓄熱材を蓄熱材接触部及びスペーサを経て熱授受対象体と常時伝熱可能として、容器内の潜熱蓄熱材と熱授受対象体との間の熱移動を確実にかつ効率よく行わせることができる。
【0022】
請求項3の発明によると、容器は6つの外壁部を有する直方体とし、6つの外壁部のうち互いに隣接する3つの外壁部の少なくとも2つを使用状態で上壁部とし、その2つの外壁部にそれぞれ対向する他の外壁部は使用状態で下壁部となる平面に形成したことにより、少なくとも2つの外壁部をそれぞれ上壁部とし、それらに対向する外壁部を下壁部とする複数の姿勢で容器を使用でき、容器の使用態様を種々に変更することができる。
【0023】
請求項4の発明によると、熱授受対象体を床材本体とし、その床材本体の下側に潜熱蓄熱体が配設されている潜熱蓄熱床材としたことにより、容器内の潜熱蓄熱材が熱授受対象体と常時伝熱可能で、その潜熱蓄熱材と床材本体との間の熱移動が確実にかつ効率よく行われる潜熱蓄熱床材が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1は参考形態1に係る潜熱蓄熱床材の断面図である。
【図2】図2は潜熱蓄熱床材を分解して裏側から見た斜視図である。
【図3】図3は容器の斜視図である。
【図4】図4は容器の変形例を示す図3相当図である。
【図5】図5は容器の上壁部の変形例を示す図1相当図である。
【図6】図6は本発明の実施形態1に係る潜熱蓄熱床材を示す図1相当図である。
【図7】図7は参考形態2に係る潜熱蓄熱床材を示す図1相当図である。
【図8】図8は実施形態1の変形例に係る潜熱蓄熱床材を示す図1相当図である。
【図9】図9は参考形態3に係る潜熱蓄熱床材を示す図1相当図である。
【図10】図10は参考形態4に係る潜熱蓄熱床材を示す図1相当図である。
【図11】図11は参考形態5に係る潜熱蓄熱床材を示す図1相当図である。
【図12】図12は参考形態5の変形例に係る潜熱蓄熱床材を示す図11相当図である。
【図13】図13は実施形態2に係る潜熱蓄熱床材の使用態様を示す断面図である。
【図14】図14は、実施形態2に係る潜熱蓄熱床材の他の使用態様を示す図13相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものでは全くない。
【0026】
(参考形態1)
図2は参考形態1に係る潜熱蓄熱床材A(以下、単に床材ともいう)を分解して裏側から見たものであり、この床材Aは、床材本体1と、この床材本体1に組み付けられた容器10と、裏面蓋材7とを備えており、室内の床部において床下地材(図示せず)上に施工される。
【0027】
上記床材本体1は熱授受対象体を構成している。この床材本体1は通常一般の床材と同様に例えば木質材料等からなり、その裏面には、例えば矩形状に凹陥された複数の容器収容部2,2,…が形成され、この各容器収容部2内に上記容器10が収容されている。床材本体1の裏面には上記裏面蓋材7が一体的に取り付けられて固定されており、この裏面蓋材7により床材本体1の裏面が覆われて、各容器収容部2に容器10が収容された状態で、その開口が閉塞されるようになっている。
【0028】
図3にも示すように、上記容器10は、床材本体1裏面の容器収容部2に嵌合状態で収容可能な大きさの薄板状のもので、例えばアルミニウム等の伝熱材料からなり、図1に示すように、その内部には潜熱蓄熱材Bが封入されている。この容器10の伝熱材料としては、アルミニウムの他に例えばポリエチレンやポリオレフィン、PET、ABS等を用いることができるが、充填する潜熱蓄熱材Bで溶解又は膨潤しないものを用いる必要がある(潜熱蓄熱材Bとしてのパラフィンはオレフィン等を膨潤させる)。また、PET及びポリエチレンの複合体にアルミニウムを蒸着したものを用いることができる。
【0029】
上記潜熱蓄熱材Bは、温度に応じて融解及び凝固を繰り返して蓄熱と放熱を行うもので、融点よりも低い温度で固体となり、融点以上の温度で液体となる(尚、各実施形態及び参考形態を示す図面では液体の状態で示している)。潜熱蓄熱材Bとしては、例えばn−オクタデカン、n−ヘキサデカンが主原料のノルマルパラフィンが用いられる。このノルマルパラフィンは、融点が23〜28℃のもので、基本的に融点よりも低い温度で固体となり、融点以上の高い温度で液体となる。この潜熱蓄熱材Bとしてのノルマルパラフィンは略そのまま容器10としてのアルミニウム容器に封入されて使用され、温度変化に応じて固体・液体と相変化する。ノルマルパラフィンの比重は約0.8である。
【0030】
ノルマルパラフィン以外の潜熱蓄熱材Bとしては、無機水和塩(塩化カルシウム六水和塩、硫酸ナトリウム十水和塩等)、脂肪酸類(パルミチン酸、ミリスチン酸等)、芳香族炭化水素化合物(ベンゼン、p−キシレン等)、エステル化合物(パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル等)、アルコール類(ステアリルアルコール等)、ポリアルキレングリコール等を使用することができる。
【0031】
上記容器10の使用状態で上側(床材本体1側)となる上壁部10aには、上側に突出する複数の凸部11,11,…が設けられている。この各凸部11は上側から見て矩形状となっている。図1に示すように、上記各凸部11は内部が上側に凹陥した空洞状のもので、その内部には容器10内の空間と連通する空気収容空間12(空気層)が形成されており、これら複数の空気収容空間12,12,…の合計の容積は、例えば容器10内空間全体の容積の5〜20%とされ、容器10内空間の残り80〜95%を潜熱蓄熱材Bが占めている。
【0032】
一方、凸部11以外の上壁部10aには蓄熱材接触部15が形成されている。この蓄熱材接触部15は、上記潜熱蓄熱材Bが液相及び固相に相変化してその上面(液相のときは液面)の高さ位置が変化しても常に該上面よりも下側に位置しており、蓄熱材接触部15の内面(下面)が潜熱蓄熱材Bに常時接触している。すなわち、潜熱蓄熱材Bは上面の高さ位置が凸部11内で昇降して変化し、空気収容空間12の容積が変化する。
【0033】
さらに、上記容器10の蓄熱材接触部15を床材本体1に伝熱させる伝熱手段が設けられている。すなわち、床材本体1の下面の容器収容部2内の底面には、該容器収容部2内に容器10を収容したときに容器10の各凸部11を収容するための凸部収容部3が凹陥形成され、この凸部収容部3を除く部分は、容器10の蓄熱材接触部15に伝熱可能に当接する当接部4となっている。そして、この当接部4は一定以上の面積で蓄熱材接触部15を床材本体1に伝熱させる伝熱体となっており、この当接部4及び蓄熱材接触部1で伝熱手段が構成されている。
【0034】
したがって、この参考形態においては、潜熱蓄熱床材Aが室内の床部において床下地材上に施工されたとき、その床材本体1下面の各容器収容部2に容器10が収容され、その容器10内に潜熱蓄熱材Bが封入されているので、この潜熱蓄熱材Bの蓄熱効果により床面ないし室内の温度を一定に保つ恒温効果が得られる。
【0035】
そして、上記潜熱蓄熱材Bが封入された各容器10内の使用状態で上側になる上壁部10aには凸部11,11,…が設けられ、この凸部11以外の上壁部10aに容器10内の潜熱蓄熱材Bと常時接触する蓄熱材接触部15が形成されている。この蓄熱材接触部15は床材本体1に対しその容器収容部2底面の当接部4により一定以上の面積で伝熱可能であるので、容器10内の潜熱蓄熱材Bと床材本体1(熱授受対象体)とは常時伝熱状態に維持される。このことで、容器10内の潜熱蓄熱材Bと床材本体1との間の熱移動が確実にかつ効率よく行われ、上記床面ないし室内の温度の恒温効果を高めることができる。
【0036】
また、容器10の各凸部11内に空気収容空間12が形成されているので、潜熱蓄熱材Bの体積変化による容器10の破損や漏出等を防ぐことができ、容器内に潜熱蓄熱材と共に液体を封入して空気収容空間12を不要とした場合のように液体のための外部容器を別途に設ける必要がなく、床材Aがコンパクトな構造となる。
【0037】
さらに、潜熱蓄熱材Bを封入した容器10が床材本体1と一体的に設けられているので、潜熱蓄熱床材Aを通常の床材と同様に施工するだけで、上記床面等の恒温効果が得られる。
【0038】
尚、この参考形態1では、容器10の上壁部10aの凸部11は矩形状のものとしているが、上側から見て円形や他の形状でもよい。さらには、図4に示すように、容器10の例えば長さ方向に沿って延びる突条のもので構成してもよく、その内部に空気収容空間12が形成されていればよく、参考形態1と同様の作用効果を奏することができる。
【0039】
また、図5に示すように、容器10の凸部11内の下端部を面取り状に傾斜させることもできる。こうすれば、潜熱蓄熱材Bにおいて蓄熱材接触部15下側に生じた空気をスムースに凸部11内の空気収容空間12に案内して、蓄熱材接触部15下面に空気が留まる(空気層が生成する)のを回避することができ、蓄熱材接触部15に潜熱蓄熱材Bを空気を介在させることなく安定して接触させることができる利点がある。
【0040】
(実施形態1)
図6は本発明の実施形態1を示し(尚、以下の各実施形態及び参考形態では図1〜図5と同じ部分は同じ符号を付してその詳細な説明を省略する)、伝熱体(伝熱手段)を変更したものである。
【0041】
すなわち、この実施形態では、床材本体1下面の容器収容部2内の底面には凸部収容部3や当接部4は形成されておらず、平坦な面に設けられている。また、容器10の上壁部10a上面には、凸部11以外の部分に伝熱体としてのスペーサ17が積層されて配置されている。このスペーサ17は、熱伝導性のよい例えばアルミニウム等の材料からなり、その厚さは凸部11の高さと同じかそれよりも厚く、スペーサ17の上面は凸部11上面と同じ又はそれよりも高くなっており、この上面で床材本体1(熱授受対象体)下面の容器収容部2内の底面に伝熱可能に当接するようになっている。
【0042】
したがって、この実施形態の場合、容器10の上壁部10aの凸部11,11,…以外の部分上面にスペーサ17が配置され、このスペーサ17の上端は床材本体1下面の容器収容部2内の底面に伝熱可能に当接しているので、容器10内の潜熱蓄熱材Bが容器10上壁部10aの蓄熱材接触部15及びスペーサ17を経て床材本体1と常時伝熱可能となり、容器10内の潜熱蓄熱材Bと床材本体1との間の熱移動が確実にかつ効率よく行われる。
【0043】
また、上記参考形態1のように、床材本体1に対しその容器収容部2内の底面に凸部収容部3や当接部4を形成する必要がなく、容器10上壁部10a上面の凸部11以外の部分にスペーサ17を配置するだけで済むので、加工や構造が簡単になる。
【0044】
(参考形態2)
図7は参考形態2を示す。この参考形態では、容器10の上壁部10aにおいて凸部11,11間の部分は下側に向かって膨らむように湾曲し、この湾曲した上壁部10aに蓄熱材接触部15が設けられている。
【0045】
そして、容器10内の上面つまり上壁部10aの下面に、各蓄熱材接触部15から凸部11内の下面まで連続して熱伝導層19が配置されている。この熱伝導層19は伝熱体を構成するもので、上壁部10aの下面に伝熱材料がコーティングされたものでもよく、或いは上壁部10aの下面に沿わせて配置した伝熱材料のシート状物でもよく、いずれも伝熱性材料で構成されており、この熱伝導層19を介して蓄熱材接触部15と凸部11上面とを伝熱させるようにしている。
【0046】
さらに、床材本体1下面の容器収容部2内の底面は、実施形態1と同様に平坦面であり、その底面が凸部11上面と伝熱状態で当接するようになっている。
【0047】
したがって、この参考形態においては、容器10内の上壁部10a下面に熱伝導層19が配置され、この熱伝導層19は蓄熱材接触部15から凸部11内の下面まで連続しているので、容器10内の潜熱蓄熱材Bが上壁部10aの蓄熱材接触部15、熱伝導層19及び凸部11を経て、該凸部11上面に当接している床材本体1と常時伝熱可能となる。よって、この参考形態でも参考形態1と同様に、容器10内の潜熱蓄熱材Bと床材本体1との間の熱移動が確実にかつ効率よく行われる。
【0048】
尚、この実施形態1において、図8に示すように、容器10上面の凸部11以外の部分に実施形態2と同様にスペーサ17を配置することもでき、さらに伝熱性が高くなる利点がある。
【0049】
(参考形態3)
図9は本発明の参考形態3を示す。この参考形態では、上記実施形態及び参考形態とは異なり、容器10の上壁部10aに凸部11が設けられておらず、その凸部11以外の上壁部10aにも蓄熱材接触部15は形成されていない。
【0050】
そして、容器10の上壁部10aは基本的に平板状であり、その上壁部10aには、例えばアルミニウム等の伝熱材料からなる伝熱部材としての複数の中実の棒部材22,22,…が挿通されて固定されている。
【0051】
この各棒部材22の下端部(先端部)は下側に膨出した断面円弧状の半球形状をしており、この下端部が容器10内の潜熱蓄熱材Bの上面(液相では液面)よりも下側に位置しており、棒部材22は常時潜熱蓄熱材Bに接触するようになっている。
【0052】
一方、各棒部材22の上面は容器10の上壁部10a上面よりも少し突出していて、容器10上側に位置する床材本体1(熱授受対象体)下面における容器収容部2内の底面に常時接触している。
【0053】
また、この参考形態では、容器10内空間の上部において棒部材22,22,…を除いた部分に複数の空気収容空間12,12,…が形成されており、これら空気収容空間12,12,…の全体の容積は、上記参考形態1と同様に、例えば容器10内の全体の容積の5〜20%とされ、容器10内の残り80〜95%を潜熱蓄熱材Bが占めている。
【0054】
したがって、この参考形態においては、伝熱部材としての棒部材22,22,…が容器10の上壁部10aに挿通されて固定され、この棒部材22,22,…の下端部は潜熱蓄熱材Bに常時接触する一方、上面は床材本体1の下面(容器収容部2内の底面)に常時接触しているので、容器10内の潜熱蓄熱材Bは棒部材22を経て床材本体1と常時伝熱可能となり、容器10内の潜熱蓄熱材Bと床材本体1との間の熱移動が確実にかつ効率よく行われる。
【0055】
また、棒部材22の下端部が半球形状であるので、図5に示す例と同様に、潜熱蓄熱材Bにおいて棒部材22の下端部の下側に生じた空気をスムースに棒部材22周りの空気収容空間12に案内して、棒部材22の下端部下面に空気が留まるのを回避することができ、蓄熱材接触部15に安定して潜熱蓄熱材Bを接触させることができる。
【0056】
(参考形態4)
図10は実施形態5を示し、上記参考形態3において、伝熱部材を変えたものである。すなわち、参考形態3では、伝熱部材が中実の棒部材22であるのに対し、この参考形態では、中空状の棒部材22としている。この中空の棒部材22は例えばアルミニウム等の伝熱材料からなり、その容器10内の下端部は閉塞されかつ下側に膨出した断面円弧状の半球形状をしている。他の構成は参考形態3と同じである。従って、この実施形態でも参考形態3と同様の作用効果が得られる。
【0057】
(参考形態5)
図11は参考形態5を示し、伝熱手段を変更したものである。すなわち、この実施形態では、上記実施形態1と同様に、容器10の上壁部10aに凸部11,11,…が形成され、この凸部11以外の上壁部10aに蓄熱材接触部15が形成されている。
【0058】
そして、実施形態1とは異なり、スペーサ17が設けられていない。また、容器10の上壁部10aにおいて蓄熱材接触部15の上面には熱放射層23が、また床材本体1(熱授受対象体)の裏面(下面)にも同様の熱放射層24がそれぞれ例えば互いに平行となるように形成されている。これらの熱放射層23,24は対応するように互いに同じか略同じ面積を有するようにしてもよい。各放射層23,24は、熱の放射機能を有する層であり、例えば黒体塗料でコーティングして形成される。そして、蓄熱材接触部15の上面の熱放射層23と、床材本体1の裏面(下面)の熱放射層24との間で互いに伝熱可能となっており、これら熱放射層23,24で伝熱手段が構成されている。その他の構成は実施形態1と同様である。
【0059】
したがって、この参考形態では、容器10の上壁部10aには、凸部11以外の部分に蓄熱材接触部15が形成され、この蓄熱材接触部15の上面と床材本体1の裏面(下面)とにそれぞれ熱放射層23,24が互いに伝熱可能に設けられているので、両熱放射層23,24の間で熱が放射熱として伝導されることとなる。その結果、容器10内の潜熱蓄熱材Bが容器10の上壁部10aの蓄熱材接触部15、その上面の熱放射層23及び床材本体1裏面の熱放射層24を経て床材本体1と常時伝熱可能となり、容器10内の潜熱蓄熱材Bと床材本体1との間の熱移動が確実にかつ効率よく行われる。すなわち、実施形態1におけるスペーサ17を要することなく伝熱が可能となる。
【0060】
尚、図12に示すように、上記参考形態2と同様に、容器10の上壁部10aにおいて凸部11,11間の部分を下側に向かって膨らむように湾曲させて、この湾曲した上壁部10aに蓄熱材接触部15を設け、蓄熱材接触部15の上面(容器10外の面)に放射層23を形成する一方、床材本体1の裏面において蓄熱材接触部15に対応する部分に放射層24を形成するようにしてもよい。こうすれば、上記参考形態2と同様の作用効果が得られるとともに、スペーサ17が不要となる。
【0061】
(実施形態2)
図13及び図14は実施形態2を示す。上記各実施形態及び参考形態では、容器10が床材本体1裏面の容器収容部2に嵌合状態で収容可能な大きさの薄板状のものであるのに対し、この実施形態では、容器10は6つの外壁部10b〜10g(側面)を有する直方体からなっている。外壁部10dは、図13及び図14において手前側に位置するものを、また外壁部10gは、図13及び図14において奥側に位置するものをそれぞれ示している。
【0062】
そして、これら6つの外壁部10b〜10gのうち、互いに隣接する3つの外壁部10b,10c,10dの2つ(3つ全部でもよい)が使用状態で上壁部10aとなるようになっている。図示例では、図13上側に示す外壁部10bが上側になるときと、図13右側の外壁部10cが上側になるとき(図14参照)との2つの使用状態が設定されている。そして、これら2つの外壁部10b,10cには、いずれもそれぞれ、参考形態1と同様に、複数の凸部11,11,…が設けられており、各外壁部10b,10cの各凸部11内にそれぞれ空気収容空間12が形成され、凸部11以外の外壁部10b,10cに蓄熱材接触部15が設けられている。容器10内の潜熱蓄熱材Bの容積は、図13上側に示す外壁部10bが上側になるときには、図13に示すように、常に、潜熱蓄熱材Bの上面が各凸部11内に位置し凸部11以外の上壁部10aの蓄熱材接触部15が潜熱蓄熱材Bに接触する一方、図13右側に示す外壁部10cが上側になっても、図14に示すように、常に、潜熱蓄熱材Bの上面が各凸部11内に位置し凸部11以外の上壁部10aの蓄熱材接触部15が潜熱蓄熱材Bに接触するように調整されている。
【0063】
さらに、上記2つの外壁部10b,10cにそれぞれ対向する、図13下側の外壁部10e及び図13左側の外壁部10fは、2つの使用状態で下壁部となる平面に形成されている。尚、対向する残り2つの外壁部10d,10gも平面に形成されている。他の構成は参考形態1と同じであり、床材本体1に組み合わせる場合には、床材本体1の下面の容器収容部2内底面に、上記2つの使用状態のいずれか一方での上壁部10aに対応する凸部収容部3と当接部4とが形成されている。
【0064】
したがって、この実施形態の場合、容器10の6つの外壁部10b〜10gのうち、互いに隣接する3つの外壁部10b〜10dの2つが使用状態で上壁部10aとなり、2つの外壁部10b,10cにそれぞれ対向する他の外壁部10e,10fが使用状態で下壁部となる平面であるので、2つの外壁部10b,10cをそれぞれ上壁部10aとし、それらに対向する外壁部10e,10fを下壁部とする2つの姿勢で容器10を使用することができる。このことにより、容器10の使用態様を2通りに変更することができる。
【0065】
(その他の実施形態)
尚、上記各実施形態及び参考形態は、床材本体1の下面に容器収容部2を形成して、その容器収容部2内に潜熱蓄熱材B封入の容器10を収容し、裏面蓋材7で封蓋した潜熱蓄熱床材Aに係るものであるが、本発明は、潜熱蓄熱材B封入の容器10を床材の下側に配置する床構造であっても適用が可能である。
【0066】
また、本発明は床以外に、潜熱蓄熱材B封入の容器10を、その潜熱蓄熱材Bとの間で熱の授受を行う熱授受対象体の下側に配置するものであれば適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明は、容器内に封入された潜熱蓄熱材と、容器上側に配置された熱授受対象体との間で熱の移動を確実にかつ効率よく行わせることができるので、極めて有用であり、産業上の利用可能性が高い。
【符号の説明】
【0068】
A 潜熱蓄熱床材
B 潜熱蓄熱材
1 床材本体(熱授受対象体)
4 当接部(伝熱体)
10 容器
10a 上壁部
10b〜10g 外壁部
11 凸部
12 空気収容空間
15 蓄熱材接触部(伝熱手段)
17 スペーサ(伝熱体)
【技術分野】
【0001】
本発明は、潜熱蓄熱材を封入した容器により熱授受対象体に伝熱する潜熱蓄熱体、及び潜熱蓄熱体が設けられた潜熱蓄熱床材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の潜熱蓄熱材を利用した潜熱蓄熱体として、特許文献1に示されるように、潜熱蓄熱材を容器内に封入し、その容器を床材本体の空洞内に収容した蓄熱式暖房床材が知られている。
【0003】
ところで、潜熱蓄熱材は、温度に応じて融解及び凝固を繰り返して蓄熱と放熱を行うが、その相変化により体積変化を起こすため、容器に封入して利用する場合には、体積変化による容器の破損や漏出等を防ぐ目的で、容器内の全体を潜熱蓄熱材で満たさず、空気層を残しておくことが望まれている。この空気層は容器内の容積全体の5〜20%が必要であり、この場合、容器内の残り80〜95%の容積を潜熱蓄熱材が占めることとなる。
【0004】
しかし、上記特許文献1のように、潜熱蓄熱材を封入した容器を床材本体に収容した場合、容器内上部に形成された空気層が室内側となって床材本体との間の熱の移動を妨げるので、潜熱蓄熱材による効果を十分に発揮できないこととなる。
【0005】
そこで、特許文献2に示されように、容器内に潜熱蓄熱材と共に油等の液体を封入し、その液体の層を連通路を介して外部容器に連通させ、潜熱蓄熱材の体積変化に応じて液体を外部容器に対し給排することで、容器内の上部に空気層が形成されるのを防ぐことが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−283481号公報
【特許文献2】特開平6−331217号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、この特許文献2のものでは、潜熱蓄熱材の封入容器の外部に液体給排用の外部容器を別途設ける必要があり、その設置スペースを考慮せねばならないという問題がある。
【0008】
本発明は斯かる点に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、容器と、その上側に配置される床材本体等の熱授受対象体との間の伝熱構造に工夫を凝らすことにより、容器内に空気が溜まる空気収容空間を形成しつつ、容器上側に位置する熱授受対象体に対する熱の移動を確実にかつ効率よく行わせるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的の達成のため、この発明では、容器内の潜熱蓄熱材と容器上側の熱授受対象体との間で伝熱する手段を設けるようにした。
【0010】
具体的には、請求項1の発明では、温度に応じて融解及び凝固を繰り返して蓄熱及び放熱を行う潜熱蓄熱材が封入された容器を備え、容器上側に位置する熱授受対象体に伝熱するための潜熱蓄熱体として、上記容器内の潜熱蓄熱材を常時上記熱授受対象体に伝熱させる伝熱手段が設けられ、上記容器の使用状態で上側になる上壁部には、上側に突出する凸部が設けられ、その凸部内に空気収容空間が形成されている一方、凸部以外の容器の上記上壁部には、常時上記潜熱蓄熱材が接触する蓄熱材接触部が形成されており、伝熱手段は、上記蓄熱材接触部と、該蓄熱材接触部を熱授受対象体に伝熱させる伝熱体とを有し、上記伝熱体は、容器の凸部以外の上壁部上面に配置されかつ熱授受対象体の下面に伝熱可能に当接するスペーサとすることを特徴とする。
【0011】
この請求項1の発明では、潜熱蓄熱材が封入された容器内の使用状態で上側になる上部に空気収容空間が形成され、容器内の潜熱蓄熱材を容器上側の熱授受対象体に常時伝熱させる伝熱手段が設けられているので、容器内の潜熱蓄熱材と容器上側の熱授受対象体とが伝熱手段により常時伝熱状態に維持され、容器内の潜熱蓄熱材と熱授受対象体との間の熱移動が確実にかつ効率よく行われる。
【0012】
また、容器内に空気収容空間が形成されているので、潜熱蓄熱材の体積変化による容器の破損や漏出等を防ぐことができ、液体によって空気収容空間を不要とした場合のように別途外部容器を設ける必要がなく、コンパクトな構造となる。
【0013】
また、容器の上壁部の凸部内に空気収容空間が設けられ、凸部以外の容器上壁部に容器内の潜熱蓄熱材と常時接触する蓄熱材接触部が形成されており、この蓄熱材接触部は伝熱体により熱授受対象体と伝熱可能であるので、容器内の潜熱蓄熱材が容器上壁部の蓄熱材接触部及び伝熱体を経て熱授受対象体と常時伝熱可能となり、容器内の潜熱蓄熱材と熱授受対象体との間の熱移動が確実にかつ効率よく行われる。
【0014】
さらに、容器の凸部以外の上壁部上面にスペーサが配置され、このスペーサは熱授受対象体の下面に伝熱可能に当接しているので、容器内の潜熱蓄熱材が容器の上壁部の蓄熱材接触部及びその上のスペーサを経て熱授受対象体と常時伝熱可能となり、容器内の潜熱蓄熱材と熱授受対象体との間の熱移動が確実にかつ効率よく行われる。
【0015】
請求項3の発明では、請求項1又は2の発明において、上記容器は6つの外壁部を有する直方体からなり、6つの外壁部のうち互いに隣接する3つの外壁部の少なくとも2つが使用状態で上壁部となり、これら少なくとも2つの外壁部にそれぞれ対向する他の外壁部は使用状態で下壁部となる平面に形成されていることを特徴とする。
【0016】
この請求項3の発明では、容器において、互いに隣接する3つの外壁部の少なくとも2つが使用状態で上壁部となり、それら少なくとも2つの外壁部にそれぞれ対向する他の外壁部が使用状態で下壁部となる平面であるので、3つの外壁部の少なくとも2つをそれぞれ上壁部とし、それらに対向する外壁部を下壁部とする少なくとも2つの姿勢で容器を使用することができ、容器の使用態様を種々に変更することができる。
【0017】
請求項4の発明では、潜熱蓄熱床材は、上記請求項1〜10の発明のいずれか1つの潜熱蓄熱体が、熱授受対象体を床材本体として、該床材本体の下側に配設されていることを特徴とする。
【0018】
この請求項4の発明では、熱授受対象体が床材本体であり、この床材本体の下側に潜熱蓄熱体が配設されているので、容器内の潜熱蓄熱材が床材本体と常時伝熱可能で、その潜熱蓄熱材と床材本体との間の熱移動が確実にかつ効率よく行われる潜熱蓄熱床材が得られる。
【発明の効果】
【0019】
以上説明した如く、請求項1の発明によると、潜熱蓄熱材が封入された容器を備え、その上側の熱授受対象体に伝熱するための潜熱蓄熱体として、容器内の使用状態で上側になる上部に空気収容空間を形成し、容器内の潜熱蓄熱材を常時熱授受対象体に伝熱させる伝熱手段を設けたことにより、別途に外部容器を設けることなくコンパクトな構造で、容器内の潜熱蓄熱材と熱授受対象体との間の熱移動を確実にかつ効率よく行わせることができる。
【0020】
また、容器の使用状態で上側になる上壁部に凸部を設け、その凸部内に空気収容空間を形成する一方、凸部以外の上壁部に常時潜熱蓄熱材が接触する蓄熱材接触部を形成し、蓄熱材接触部を伝熱体により熱授受対象体に伝熱させるようにしたことにより、容器内の潜熱蓄熱材を上壁部の蓄熱材接触部を経て熱授受対象体と常時伝熱可能として、容器内の潜熱蓄熱材と熱授受対象体との間の熱移動を確実にかつ効率よく行わせることができる。
【0021】
さらに、伝熱体は、容器の凸部以外の上壁部上面に配置されかつ熱授受対象体の下面に伝熱可能に当接するスペーサとしたことにより、容器内の潜熱蓄熱材を蓄熱材接触部及びスペーサを経て熱授受対象体と常時伝熱可能として、容器内の潜熱蓄熱材と熱授受対象体との間の熱移動を確実にかつ効率よく行わせることができる。
【0022】
請求項3の発明によると、容器は6つの外壁部を有する直方体とし、6つの外壁部のうち互いに隣接する3つの外壁部の少なくとも2つを使用状態で上壁部とし、その2つの外壁部にそれぞれ対向する他の外壁部は使用状態で下壁部となる平面に形成したことにより、少なくとも2つの外壁部をそれぞれ上壁部とし、それらに対向する外壁部を下壁部とする複数の姿勢で容器を使用でき、容器の使用態様を種々に変更することができる。
【0023】
請求項4の発明によると、熱授受対象体を床材本体とし、その床材本体の下側に潜熱蓄熱体が配設されている潜熱蓄熱床材としたことにより、容器内の潜熱蓄熱材が熱授受対象体と常時伝熱可能で、その潜熱蓄熱材と床材本体との間の熱移動が確実にかつ効率よく行われる潜熱蓄熱床材が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1は参考形態1に係る潜熱蓄熱床材の断面図である。
【図2】図2は潜熱蓄熱床材を分解して裏側から見た斜視図である。
【図3】図3は容器の斜視図である。
【図4】図4は容器の変形例を示す図3相当図である。
【図5】図5は容器の上壁部の変形例を示す図1相当図である。
【図6】図6は本発明の実施形態1に係る潜熱蓄熱床材を示す図1相当図である。
【図7】図7は参考形態2に係る潜熱蓄熱床材を示す図1相当図である。
【図8】図8は実施形態1の変形例に係る潜熱蓄熱床材を示す図1相当図である。
【図9】図9は参考形態3に係る潜熱蓄熱床材を示す図1相当図である。
【図10】図10は参考形態4に係る潜熱蓄熱床材を示す図1相当図である。
【図11】図11は参考形態5に係る潜熱蓄熱床材を示す図1相当図である。
【図12】図12は参考形態5の変形例に係る潜熱蓄熱床材を示す図11相当図である。
【図13】図13は実施形態2に係る潜熱蓄熱床材の使用態様を示す断面図である。
【図14】図14は、実施形態2に係る潜熱蓄熱床材の他の使用態様を示す図13相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものでは全くない。
【0026】
(参考形態1)
図2は参考形態1に係る潜熱蓄熱床材A(以下、単に床材ともいう)を分解して裏側から見たものであり、この床材Aは、床材本体1と、この床材本体1に組み付けられた容器10と、裏面蓋材7とを備えており、室内の床部において床下地材(図示せず)上に施工される。
【0027】
上記床材本体1は熱授受対象体を構成している。この床材本体1は通常一般の床材と同様に例えば木質材料等からなり、その裏面には、例えば矩形状に凹陥された複数の容器収容部2,2,…が形成され、この各容器収容部2内に上記容器10が収容されている。床材本体1の裏面には上記裏面蓋材7が一体的に取り付けられて固定されており、この裏面蓋材7により床材本体1の裏面が覆われて、各容器収容部2に容器10が収容された状態で、その開口が閉塞されるようになっている。
【0028】
図3にも示すように、上記容器10は、床材本体1裏面の容器収容部2に嵌合状態で収容可能な大きさの薄板状のもので、例えばアルミニウム等の伝熱材料からなり、図1に示すように、その内部には潜熱蓄熱材Bが封入されている。この容器10の伝熱材料としては、アルミニウムの他に例えばポリエチレンやポリオレフィン、PET、ABS等を用いることができるが、充填する潜熱蓄熱材Bで溶解又は膨潤しないものを用いる必要がある(潜熱蓄熱材Bとしてのパラフィンはオレフィン等を膨潤させる)。また、PET及びポリエチレンの複合体にアルミニウムを蒸着したものを用いることができる。
【0029】
上記潜熱蓄熱材Bは、温度に応じて融解及び凝固を繰り返して蓄熱と放熱を行うもので、融点よりも低い温度で固体となり、融点以上の温度で液体となる(尚、各実施形態及び参考形態を示す図面では液体の状態で示している)。潜熱蓄熱材Bとしては、例えばn−オクタデカン、n−ヘキサデカンが主原料のノルマルパラフィンが用いられる。このノルマルパラフィンは、融点が23〜28℃のもので、基本的に融点よりも低い温度で固体となり、融点以上の高い温度で液体となる。この潜熱蓄熱材Bとしてのノルマルパラフィンは略そのまま容器10としてのアルミニウム容器に封入されて使用され、温度変化に応じて固体・液体と相変化する。ノルマルパラフィンの比重は約0.8である。
【0030】
ノルマルパラフィン以外の潜熱蓄熱材Bとしては、無機水和塩(塩化カルシウム六水和塩、硫酸ナトリウム十水和塩等)、脂肪酸類(パルミチン酸、ミリスチン酸等)、芳香族炭化水素化合物(ベンゼン、p−キシレン等)、エステル化合物(パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル等)、アルコール類(ステアリルアルコール等)、ポリアルキレングリコール等を使用することができる。
【0031】
上記容器10の使用状態で上側(床材本体1側)となる上壁部10aには、上側に突出する複数の凸部11,11,…が設けられている。この各凸部11は上側から見て矩形状となっている。図1に示すように、上記各凸部11は内部が上側に凹陥した空洞状のもので、その内部には容器10内の空間と連通する空気収容空間12(空気層)が形成されており、これら複数の空気収容空間12,12,…の合計の容積は、例えば容器10内空間全体の容積の5〜20%とされ、容器10内空間の残り80〜95%を潜熱蓄熱材Bが占めている。
【0032】
一方、凸部11以外の上壁部10aには蓄熱材接触部15が形成されている。この蓄熱材接触部15は、上記潜熱蓄熱材Bが液相及び固相に相変化してその上面(液相のときは液面)の高さ位置が変化しても常に該上面よりも下側に位置しており、蓄熱材接触部15の内面(下面)が潜熱蓄熱材Bに常時接触している。すなわち、潜熱蓄熱材Bは上面の高さ位置が凸部11内で昇降して変化し、空気収容空間12の容積が変化する。
【0033】
さらに、上記容器10の蓄熱材接触部15を床材本体1に伝熱させる伝熱手段が設けられている。すなわち、床材本体1の下面の容器収容部2内の底面には、該容器収容部2内に容器10を収容したときに容器10の各凸部11を収容するための凸部収容部3が凹陥形成され、この凸部収容部3を除く部分は、容器10の蓄熱材接触部15に伝熱可能に当接する当接部4となっている。そして、この当接部4は一定以上の面積で蓄熱材接触部15を床材本体1に伝熱させる伝熱体となっており、この当接部4及び蓄熱材接触部1で伝熱手段が構成されている。
【0034】
したがって、この参考形態においては、潜熱蓄熱床材Aが室内の床部において床下地材上に施工されたとき、その床材本体1下面の各容器収容部2に容器10が収容され、その容器10内に潜熱蓄熱材Bが封入されているので、この潜熱蓄熱材Bの蓄熱効果により床面ないし室内の温度を一定に保つ恒温効果が得られる。
【0035】
そして、上記潜熱蓄熱材Bが封入された各容器10内の使用状態で上側になる上壁部10aには凸部11,11,…が設けられ、この凸部11以外の上壁部10aに容器10内の潜熱蓄熱材Bと常時接触する蓄熱材接触部15が形成されている。この蓄熱材接触部15は床材本体1に対しその容器収容部2底面の当接部4により一定以上の面積で伝熱可能であるので、容器10内の潜熱蓄熱材Bと床材本体1(熱授受対象体)とは常時伝熱状態に維持される。このことで、容器10内の潜熱蓄熱材Bと床材本体1との間の熱移動が確実にかつ効率よく行われ、上記床面ないし室内の温度の恒温効果を高めることができる。
【0036】
また、容器10の各凸部11内に空気収容空間12が形成されているので、潜熱蓄熱材Bの体積変化による容器10の破損や漏出等を防ぐことができ、容器内に潜熱蓄熱材と共に液体を封入して空気収容空間12を不要とした場合のように液体のための外部容器を別途に設ける必要がなく、床材Aがコンパクトな構造となる。
【0037】
さらに、潜熱蓄熱材Bを封入した容器10が床材本体1と一体的に設けられているので、潜熱蓄熱床材Aを通常の床材と同様に施工するだけで、上記床面等の恒温効果が得られる。
【0038】
尚、この参考形態1では、容器10の上壁部10aの凸部11は矩形状のものとしているが、上側から見て円形や他の形状でもよい。さらには、図4に示すように、容器10の例えば長さ方向に沿って延びる突条のもので構成してもよく、その内部に空気収容空間12が形成されていればよく、参考形態1と同様の作用効果を奏することができる。
【0039】
また、図5に示すように、容器10の凸部11内の下端部を面取り状に傾斜させることもできる。こうすれば、潜熱蓄熱材Bにおいて蓄熱材接触部15下側に生じた空気をスムースに凸部11内の空気収容空間12に案内して、蓄熱材接触部15下面に空気が留まる(空気層が生成する)のを回避することができ、蓄熱材接触部15に潜熱蓄熱材Bを空気を介在させることなく安定して接触させることができる利点がある。
【0040】
(実施形態1)
図6は本発明の実施形態1を示し(尚、以下の各実施形態及び参考形態では図1〜図5と同じ部分は同じ符号を付してその詳細な説明を省略する)、伝熱体(伝熱手段)を変更したものである。
【0041】
すなわち、この実施形態では、床材本体1下面の容器収容部2内の底面には凸部収容部3や当接部4は形成されておらず、平坦な面に設けられている。また、容器10の上壁部10a上面には、凸部11以外の部分に伝熱体としてのスペーサ17が積層されて配置されている。このスペーサ17は、熱伝導性のよい例えばアルミニウム等の材料からなり、その厚さは凸部11の高さと同じかそれよりも厚く、スペーサ17の上面は凸部11上面と同じ又はそれよりも高くなっており、この上面で床材本体1(熱授受対象体)下面の容器収容部2内の底面に伝熱可能に当接するようになっている。
【0042】
したがって、この実施形態の場合、容器10の上壁部10aの凸部11,11,…以外の部分上面にスペーサ17が配置され、このスペーサ17の上端は床材本体1下面の容器収容部2内の底面に伝熱可能に当接しているので、容器10内の潜熱蓄熱材Bが容器10上壁部10aの蓄熱材接触部15及びスペーサ17を経て床材本体1と常時伝熱可能となり、容器10内の潜熱蓄熱材Bと床材本体1との間の熱移動が確実にかつ効率よく行われる。
【0043】
また、上記参考形態1のように、床材本体1に対しその容器収容部2内の底面に凸部収容部3や当接部4を形成する必要がなく、容器10上壁部10a上面の凸部11以外の部分にスペーサ17を配置するだけで済むので、加工や構造が簡単になる。
【0044】
(参考形態2)
図7は参考形態2を示す。この参考形態では、容器10の上壁部10aにおいて凸部11,11間の部分は下側に向かって膨らむように湾曲し、この湾曲した上壁部10aに蓄熱材接触部15が設けられている。
【0045】
そして、容器10内の上面つまり上壁部10aの下面に、各蓄熱材接触部15から凸部11内の下面まで連続して熱伝導層19が配置されている。この熱伝導層19は伝熱体を構成するもので、上壁部10aの下面に伝熱材料がコーティングされたものでもよく、或いは上壁部10aの下面に沿わせて配置した伝熱材料のシート状物でもよく、いずれも伝熱性材料で構成されており、この熱伝導層19を介して蓄熱材接触部15と凸部11上面とを伝熱させるようにしている。
【0046】
さらに、床材本体1下面の容器収容部2内の底面は、実施形態1と同様に平坦面であり、その底面が凸部11上面と伝熱状態で当接するようになっている。
【0047】
したがって、この参考形態においては、容器10内の上壁部10a下面に熱伝導層19が配置され、この熱伝導層19は蓄熱材接触部15から凸部11内の下面まで連続しているので、容器10内の潜熱蓄熱材Bが上壁部10aの蓄熱材接触部15、熱伝導層19及び凸部11を経て、該凸部11上面に当接している床材本体1と常時伝熱可能となる。よって、この参考形態でも参考形態1と同様に、容器10内の潜熱蓄熱材Bと床材本体1との間の熱移動が確実にかつ効率よく行われる。
【0048】
尚、この実施形態1において、図8に示すように、容器10上面の凸部11以外の部分に実施形態2と同様にスペーサ17を配置することもでき、さらに伝熱性が高くなる利点がある。
【0049】
(参考形態3)
図9は本発明の参考形態3を示す。この参考形態では、上記実施形態及び参考形態とは異なり、容器10の上壁部10aに凸部11が設けられておらず、その凸部11以外の上壁部10aにも蓄熱材接触部15は形成されていない。
【0050】
そして、容器10の上壁部10aは基本的に平板状であり、その上壁部10aには、例えばアルミニウム等の伝熱材料からなる伝熱部材としての複数の中実の棒部材22,22,…が挿通されて固定されている。
【0051】
この各棒部材22の下端部(先端部)は下側に膨出した断面円弧状の半球形状をしており、この下端部が容器10内の潜熱蓄熱材Bの上面(液相では液面)よりも下側に位置しており、棒部材22は常時潜熱蓄熱材Bに接触するようになっている。
【0052】
一方、各棒部材22の上面は容器10の上壁部10a上面よりも少し突出していて、容器10上側に位置する床材本体1(熱授受対象体)下面における容器収容部2内の底面に常時接触している。
【0053】
また、この参考形態では、容器10内空間の上部において棒部材22,22,…を除いた部分に複数の空気収容空間12,12,…が形成されており、これら空気収容空間12,12,…の全体の容積は、上記参考形態1と同様に、例えば容器10内の全体の容積の5〜20%とされ、容器10内の残り80〜95%を潜熱蓄熱材Bが占めている。
【0054】
したがって、この参考形態においては、伝熱部材としての棒部材22,22,…が容器10の上壁部10aに挿通されて固定され、この棒部材22,22,…の下端部は潜熱蓄熱材Bに常時接触する一方、上面は床材本体1の下面(容器収容部2内の底面)に常時接触しているので、容器10内の潜熱蓄熱材Bは棒部材22を経て床材本体1と常時伝熱可能となり、容器10内の潜熱蓄熱材Bと床材本体1との間の熱移動が確実にかつ効率よく行われる。
【0055】
また、棒部材22の下端部が半球形状であるので、図5に示す例と同様に、潜熱蓄熱材Bにおいて棒部材22の下端部の下側に生じた空気をスムースに棒部材22周りの空気収容空間12に案内して、棒部材22の下端部下面に空気が留まるのを回避することができ、蓄熱材接触部15に安定して潜熱蓄熱材Bを接触させることができる。
【0056】
(参考形態4)
図10は実施形態5を示し、上記参考形態3において、伝熱部材を変えたものである。すなわち、参考形態3では、伝熱部材が中実の棒部材22であるのに対し、この参考形態では、中空状の棒部材22としている。この中空の棒部材22は例えばアルミニウム等の伝熱材料からなり、その容器10内の下端部は閉塞されかつ下側に膨出した断面円弧状の半球形状をしている。他の構成は参考形態3と同じである。従って、この実施形態でも参考形態3と同様の作用効果が得られる。
【0057】
(参考形態5)
図11は参考形態5を示し、伝熱手段を変更したものである。すなわち、この実施形態では、上記実施形態1と同様に、容器10の上壁部10aに凸部11,11,…が形成され、この凸部11以外の上壁部10aに蓄熱材接触部15が形成されている。
【0058】
そして、実施形態1とは異なり、スペーサ17が設けられていない。また、容器10の上壁部10aにおいて蓄熱材接触部15の上面には熱放射層23が、また床材本体1(熱授受対象体)の裏面(下面)にも同様の熱放射層24がそれぞれ例えば互いに平行となるように形成されている。これらの熱放射層23,24は対応するように互いに同じか略同じ面積を有するようにしてもよい。各放射層23,24は、熱の放射機能を有する層であり、例えば黒体塗料でコーティングして形成される。そして、蓄熱材接触部15の上面の熱放射層23と、床材本体1の裏面(下面)の熱放射層24との間で互いに伝熱可能となっており、これら熱放射層23,24で伝熱手段が構成されている。その他の構成は実施形態1と同様である。
【0059】
したがって、この参考形態では、容器10の上壁部10aには、凸部11以外の部分に蓄熱材接触部15が形成され、この蓄熱材接触部15の上面と床材本体1の裏面(下面)とにそれぞれ熱放射層23,24が互いに伝熱可能に設けられているので、両熱放射層23,24の間で熱が放射熱として伝導されることとなる。その結果、容器10内の潜熱蓄熱材Bが容器10の上壁部10aの蓄熱材接触部15、その上面の熱放射層23及び床材本体1裏面の熱放射層24を経て床材本体1と常時伝熱可能となり、容器10内の潜熱蓄熱材Bと床材本体1との間の熱移動が確実にかつ効率よく行われる。すなわち、実施形態1におけるスペーサ17を要することなく伝熱が可能となる。
【0060】
尚、図12に示すように、上記参考形態2と同様に、容器10の上壁部10aにおいて凸部11,11間の部分を下側に向かって膨らむように湾曲させて、この湾曲した上壁部10aに蓄熱材接触部15を設け、蓄熱材接触部15の上面(容器10外の面)に放射層23を形成する一方、床材本体1の裏面において蓄熱材接触部15に対応する部分に放射層24を形成するようにしてもよい。こうすれば、上記参考形態2と同様の作用効果が得られるとともに、スペーサ17が不要となる。
【0061】
(実施形態2)
図13及び図14は実施形態2を示す。上記各実施形態及び参考形態では、容器10が床材本体1裏面の容器収容部2に嵌合状態で収容可能な大きさの薄板状のものであるのに対し、この実施形態では、容器10は6つの外壁部10b〜10g(側面)を有する直方体からなっている。外壁部10dは、図13及び図14において手前側に位置するものを、また外壁部10gは、図13及び図14において奥側に位置するものをそれぞれ示している。
【0062】
そして、これら6つの外壁部10b〜10gのうち、互いに隣接する3つの外壁部10b,10c,10dの2つ(3つ全部でもよい)が使用状態で上壁部10aとなるようになっている。図示例では、図13上側に示す外壁部10bが上側になるときと、図13右側の外壁部10cが上側になるとき(図14参照)との2つの使用状態が設定されている。そして、これら2つの外壁部10b,10cには、いずれもそれぞれ、参考形態1と同様に、複数の凸部11,11,…が設けられており、各外壁部10b,10cの各凸部11内にそれぞれ空気収容空間12が形成され、凸部11以外の外壁部10b,10cに蓄熱材接触部15が設けられている。容器10内の潜熱蓄熱材Bの容積は、図13上側に示す外壁部10bが上側になるときには、図13に示すように、常に、潜熱蓄熱材Bの上面が各凸部11内に位置し凸部11以外の上壁部10aの蓄熱材接触部15が潜熱蓄熱材Bに接触する一方、図13右側に示す外壁部10cが上側になっても、図14に示すように、常に、潜熱蓄熱材Bの上面が各凸部11内に位置し凸部11以外の上壁部10aの蓄熱材接触部15が潜熱蓄熱材Bに接触するように調整されている。
【0063】
さらに、上記2つの外壁部10b,10cにそれぞれ対向する、図13下側の外壁部10e及び図13左側の外壁部10fは、2つの使用状態で下壁部となる平面に形成されている。尚、対向する残り2つの外壁部10d,10gも平面に形成されている。他の構成は参考形態1と同じであり、床材本体1に組み合わせる場合には、床材本体1の下面の容器収容部2内底面に、上記2つの使用状態のいずれか一方での上壁部10aに対応する凸部収容部3と当接部4とが形成されている。
【0064】
したがって、この実施形態の場合、容器10の6つの外壁部10b〜10gのうち、互いに隣接する3つの外壁部10b〜10dの2つが使用状態で上壁部10aとなり、2つの外壁部10b,10cにそれぞれ対向する他の外壁部10e,10fが使用状態で下壁部となる平面であるので、2つの外壁部10b,10cをそれぞれ上壁部10aとし、それらに対向する外壁部10e,10fを下壁部とする2つの姿勢で容器10を使用することができる。このことにより、容器10の使用態様を2通りに変更することができる。
【0065】
(その他の実施形態)
尚、上記各実施形態及び参考形態は、床材本体1の下面に容器収容部2を形成して、その容器収容部2内に潜熱蓄熱材B封入の容器10を収容し、裏面蓋材7で封蓋した潜熱蓄熱床材Aに係るものであるが、本発明は、潜熱蓄熱材B封入の容器10を床材の下側に配置する床構造であっても適用が可能である。
【0066】
また、本発明は床以外に、潜熱蓄熱材B封入の容器10を、その潜熱蓄熱材Bとの間で熱の授受を行う熱授受対象体の下側に配置するものであれば適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明は、容器内に封入された潜熱蓄熱材と、容器上側に配置された熱授受対象体との間で熱の移動を確実にかつ効率よく行わせることができるので、極めて有用であり、産業上の利用可能性が高い。
【符号の説明】
【0068】
A 潜熱蓄熱床材
B 潜熱蓄熱材
1 床材本体(熱授受対象体)
4 当接部(伝熱体)
10 容器
10a 上壁部
10b〜10g 外壁部
11 凸部
12 空気収容空間
15 蓄熱材接触部(伝熱手段)
17 スペーサ(伝熱体)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
温度に応じて融解及び凝固を繰り返して蓄熱及び放熱を行う潜熱蓄熱材が封入された容器を備え、容器上側に位置する熱授受対象体に伝熱するための潜熱蓄熱体であって、
上記容器内の潜熱蓄熱材を常時上記熱授受対象体に伝熱させる伝熱手段が設けられ、
上記容器の使用状態で上側になる上壁部には、上側に突出する凸部が設けられ、
上記凸部内に空気収容空間が形成されている一方、凸部以外の上記上壁部には常時上記潜熱蓄熱材が接触する蓄熱材接触部が形成されており、
伝熱手段は、上記蓄熱材接触部と、該蓄熱材接触部を熱授受対象体に伝熱させる伝熱体とを有し、
伝熱体は、容器の凸部以外の上壁部上面に配置されかつ熱授受対象体の下面に伝熱可能に当接するスペーサであることを特徴とする潜熱蓄熱体。
【請求項2】
請求項1において、
上記凸部内の下端部は、蓄熱材接触部下側に生じた空気を凸部内の空気収容空間に案内するように傾斜していることを特徴とする潜熱蓄熱体。
【請求項3】
請求項1又は2において、
容器は6つの外壁部を有する直方体からなり、6つの外壁部のうち互いに隣接する3つの外壁部の少なくとも2つが使用状態で上壁部となり、
上記少なくとも2つの外壁部にそれぞれ対向する他の外壁部は使用状態で下壁部となる平面に形成されていることを特徴とする潜熱蓄熱体。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1つの潜熱蓄熱体が、熱授受対象体を床材本体として、該床材本体の下側に配設されていることを特徴とする潜熱蓄熱床材。
【請求項1】
温度に応じて融解及び凝固を繰り返して蓄熱及び放熱を行う潜熱蓄熱材が封入された容器を備え、容器上側に位置する熱授受対象体に伝熱するための潜熱蓄熱体であって、
上記容器内の潜熱蓄熱材を常時上記熱授受対象体に伝熱させる伝熱手段が設けられ、
上記容器の使用状態で上側になる上壁部には、上側に突出する凸部が設けられ、
上記凸部内に空気収容空間が形成されている一方、凸部以外の上記上壁部には常時上記潜熱蓄熱材が接触する蓄熱材接触部が形成されており、
伝熱手段は、上記蓄熱材接触部と、該蓄熱材接触部を熱授受対象体に伝熱させる伝熱体とを有し、
伝熱体は、容器の凸部以外の上壁部上面に配置されかつ熱授受対象体の下面に伝熱可能に当接するスペーサであることを特徴とする潜熱蓄熱体。
【請求項2】
請求項1において、
上記凸部内の下端部は、蓄熱材接触部下側に生じた空気を凸部内の空気収容空間に案内するように傾斜していることを特徴とする潜熱蓄熱体。
【請求項3】
請求項1又は2において、
容器は6つの外壁部を有する直方体からなり、6つの外壁部のうち互いに隣接する3つの外壁部の少なくとも2つが使用状態で上壁部となり、
上記少なくとも2つの外壁部にそれぞれ対向する他の外壁部は使用状態で下壁部となる平面に形成されていることを特徴とする潜熱蓄熱体。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1つの潜熱蓄熱体が、熱授受対象体を床材本体として、該床材本体の下側に配設されていることを特徴とする潜熱蓄熱床材。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2013−79801(P2013−79801A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−280840(P2012−280840)
【出願日】平成24年12月25日(2012.12.25)
【分割の表示】特願2011−27739(P2011−27739)の分割
【原出願日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【出願人】(000204985)大建工業株式会社 (419)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年12月25日(2012.12.25)
【分割の表示】特願2011−27739(P2011−27739)の分割
【原出願日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【出願人】(000204985)大建工業株式会社 (419)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]