説明

濁度計

【課題】 測定液に混入した気泡の影響を受け難い濁度計を実現する。
【解決手段】 測定液中に光を透過させた際に生じる散乱光の大きさを基にして、測定液の濁度を検出する濁度計において、測定液を貯留する測定液槽と、この測定液槽の中央付近に測定光束を照射する投光部と、この測定光束から生じる散乱光を受光する受光部と、前記測定液槽の下部から上部に向かって測定液槽内に測定液を流入させる測定液入口と、前記測定液槽の下部に設けられた測定液出口と、前記測定液槽の上部に設けられた気泡出口とを具備したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定液中に光を透過させた際に生じる散乱光の大きさを基にして、測定液の濁度を検出する濁度計に関するものである。さらに詳しくは、測定液槽への測定液の供給方法を改良して、測定液に混入した気泡の影響を軽減した濁度計に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図3は、従来の濁度計の一例を示す構成図である。図において、10は測定液を貯留する測定液槽であり、測定液槽10においては、測定液が測定液入口101から流入し、測定液出口102から流出している。20は測定液槽10に測定光束を照射する投光部、30は測定液槽10を透過した透過光や散乱光を受光する受光部である。また、これらは、測定液槽10内に空気(気泡)が溜まるのを防止したり、測定液の流れをスムーズにするために、水平から3度傾けた状態で支柱40に固定されている。
【0003】
図示の装置を透過散乱型の濁度計であるとすると、測定液槽10(測定液)を介して得られる散乱光の光量は、測定液の濁度により変化するので、受光部30から得られる透過光と散乱光との量の比により、測定液の濁度を求めることができる。
【0004】
【特許文献1】特開2003−57230号公報(第4頁 第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、測定液に気泡が混入すると、気泡により測定光が散乱され、正しい濁度が測定できなくなってしまう。
通常、測定液槽10の前段にオーバーフロータンク(図示せず)を設け、この中で気泡を分離して、気泡のない測定液を測定液槽10に供給するように構成してはいるが、温度変化や圧力変動などにより発生する気泡は、完全に除去しきれず、測定液槽10に流れ込んでしまうことがある。
【0006】
大きな気泡は、測定液槽10内で上昇し、測定光束を横切るが、これによる出力変動は比較的瞬間的なものであるので、異常処理(前回の測定値より設定したある値より大きな場合は異常とみなし設定回数までは前回値を代わりに割り付ける)によりデータを排除したり、スムージング(移動平均)処理により、濁度計の指示としての影響を極力少なくすることができる。
【0007】
これに対して、小さな気泡は、液中をゆっくりと動き、測定光路中に長く留まるので、散乱光の量を変化させたり、測定窓に付着して光路の断面積の減少させたりして、誤差要因となってしまう。
【0008】
本発明は、上記のような従来装置の欠点をなくし、測定液に混入した気泡の影響を受け難い濁度計を実現することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記のような目的を達成するために、本発明の請求項1では、測定液中に光を透過させた際に生じる散乱光の大きさを基にして、測定液の濁度を検出する濁度計において、測定液を貯留する測定液槽と、この測定液槽の中央付近に測定光束を照射する投光部と、この測定光束から生じる散乱光を受光する受光部と、前記測定液槽の下部から上部に向かって測定液槽内に測定液を流入させる測定液入口と、前記測定液槽の下部に設けられた測定液出口と、前記測定液槽の上部に設けられた気泡出口とを具備したことを特徴とする。
【0010】
請求項2では、請求項1の濁度計において、前記気泡出口は、前記測定液出口に比べて口径が小さいことを特徴とする。
【0011】
請求項3では、請求項1または2の濁度計において、前記測定液槽は、前記測定光束の周方向に湾曲した底部を有することを特徴とする。
【0012】
請求項4では、請求項1乃至3のいずれかの濁度計において、前記測定液出口は、前記測定液入口に対して前記測定液槽における対辺の位置に配置されたことを特徴とする。
【0013】
請求項5では、請求項1乃至4のいずれかの濁度計において、前記気泡出口は、前記測定液入口に対して前記測定液槽における対角の位置に配置されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
このように、測定液槽の下部より上方に向かって測定液を流入させ、測定液槽の反対側に測定液出口および気泡出口を設けるように構成すると、測定液槽の上部で気泡を分離させ、気泡出口から排出することができ、測定液に混入した気泡の影響を受け難い濁度計を実現することができる。
また、測定液槽の中に縦方向の旋回流ができ、測定液槽内における測定液の入れ替わりを促進して、より応答性の良い濁度計を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を用いて、本発明の濁度計を説明する。
【実施例1】
【0016】
図1および図2は、本発明の濁度計の一実施例を示す構成図である。図において、前記図3と同様のものは、同一符号を付して示す。図1は測定液槽と測定光学系との関係を示す平面図である。11は測定光束24を測定液槽10に導入する投光側窓、12は測定液槽10から透過光および散乱光を導出する受光側窓である。13は測定液槽10に測定液を流入させる測定液入口、14は測定液槽10から測定液を流出させる測定液出口である。測定液は測定液入口13から測定液槽10に入り、測定液出口14から排出される。
【0017】
投光部20において、21は測定光を発生させる光源、22は光源21からの出射された測定光を平行光(測定光束24)にするレンズ、23は絞りである。受光部30において、31は透過光を受光する透過光受光素子、32、33は散乱光を受光する散乱光受光素子である。投光部20と受光部30とは、測定液槽10の投光側窓11および受光側窓12を介して対抗配置されている。
【0018】
透過光受光素子31は測定光束24のほぼ中心付近に配置されて、測定液中を直進する透過光を受光し、散乱光受光素子32、33は透過光受光素子31の周囲に配置されて、測定液により散乱された散乱光を受光する。
【0019】
したがって、透過光受光素子31の受光出力と散乱光受光素子32、33の受光出力とを演算することにより、測定液の濁度に対応した測定出力を得ることができる。
【0020】
図2は測定液槽10における測定液入口13などの配置状態を示す断面図である。図に示されるように、測定液入口13および測定液出口14は測定液槽10の下部に、しかも底部18を挟んで対辺の位置に設けられ、測定液入口13は測定液槽10の下部から上部に向かって測定液を流入させている。15は測定液出口14を測定液槽10の上部に誘導する出口通路、16は測定液槽10の上部に設けられた気泡出口であり、気泡出口16は測定液入口13とは対角の位置に配置され、出口通路15に連通している。また、気泡出口16は測定液出口14に比べて、小さな口径を有する孔である。17は保守などの際に測定液槽10内の測定液を排出する排液口である。
【0021】
このように構成された濁度計(測定液槽10)においては、測定液槽10内に流入した測定液は、図示のように、縦方向の旋回流となり、槽内を巡回し、一部は測定液出口14を介して測定液槽10外に排出される。
【0022】
ここで、測定液と一緒に入った気泡は、測定光束の位置(中央部)を通ることなく、測定液槽10の上部まで導かれ、測定液と分離されて、気泡出口16から排出される。
また、この旋回流は、測定液槽10全体の測定液を流動させ、測定液槽10における測定液の入れ替わりを促進するので、応答性を良くすることができる。
【0023】
さらに、図示の如く、測定液槽10の底部18を測定光束の周方向に湾曲した形状とすると、測定液入口13から流入する測定液により、測定液槽下部の測定液が連行されて上昇するのを助け、測定液槽下部に測定液が淀んでしまうのを防止することができる。
【0024】
なお、測定液槽10内の旋回流は、測定液中の懸濁物質が槽内に沈殿してしまうのを防止する効果もあり、測定精度をいっそう高めることができる。
【0025】
以上説明したように、測定液槽10の下部より上方に向かって測定液を流入させ、測定液槽10の反対側に測定液出口14および気泡出口16を設けるように構成すると、測定液槽10の上部で気泡を分離させ、気泡出口16から排出することができ、測定液に混入した気泡の影響を受け難い濁度計を実現することができる。
また、測定液槽10の中に縦方向の旋回流ができ、測定液槽10内における測定液の入れ替わりを促進して、より応答性の良い濁度計を実現することができる。
【0026】
なお、上記説明においては、本発明を透過散乱式の濁度計に適用した場合を例示したが、濁度計の形式はこれに限られるものではなく、例えば、直角散乱式の濁度計であっても同様の作用効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の濁度計の一実施例を示す構成図であり、測定液槽と測定光学系との関係を示す平面図である。
【図2】本発明の濁度計の一実施例を示す構成図であり、測定液槽における測定液入口などの配置状態を示す断面図である。
【図3】従来の濁度計の一例を示す構成図である。
【符号の説明】
【0028】
10 測定液槽
11 投光側窓
12 受光側窓
13、101 測定液入口
14、102 測定液出口
15 出口通路
16 気泡出口
17 排液口
18 底部
20 投光部
21 光源
22 レンズ
23 絞り
24 測定光束
30 受光部
31 透過光受光素子
32、33 散乱光受光素子
40 支柱


【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定液中に光を透過させた際に生じる散乱光の大きさを基にして、測定液の濁度を検出する濁度計において、測定液を貯留する測定液槽と、この測定液槽の中央付近に測定光束を照射する投光部と、この測定光束から生じる散乱光を受光する受光部と、前記測定液槽の下部から上部に向かって測定液槽内に測定液を流入させる測定液入口と、前記測定液槽の下部に設けられた測定液出口と、前記測定液槽の上部に設けられた気泡出口とを具備したことを特徴とする濁度計。
【請求項2】
前記気泡出口は、前記測定液出口に比べて口径が小さいことを特徴とする請求項1に記載の濁度計。
【請求項3】
前記測定液槽は、前記測定光束の周方向に湾曲した底部を有することを特徴とする請求項1または2に記載の濁度計。
【請求項4】
前記測定液出口は、前記測定液入口に対して前記測定液槽における対辺の位置に配置されたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の濁度計。
【請求項5】
前記気泡出口は、前記測定液入口に対して前記測定液槽における対角の位置に配置されたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の濁度計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−234606(P2006−234606A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−50236(P2005−50236)
【出願日】平成17年2月25日(2005.2.25)
【出願人】(000006507)横河電機株式会社 (4,443)
【Fターム(参考)】