説明

火力配分装置

【課題】移動体間の通信が正常に保たれていない場合であっても、複数の移動体により編成される部隊内で連携を図りつつ各移動体が他の移動体から独立して火力配分処理を実行することができ、部隊全体における火力配分を最適化することができる火力配分装置を提供する。
【解決手段】火力配分実行部は、目標物について、それぞれが属するグループに応じた処理を行う。火力配分実行部は、グループG1に属する全ての目標物を、自艦の火器の射撃目標として設定する。火力配分実行部は、グループG2,G4に属する目標物について、火力配分処理を実行し、その処理の結果に基づいて、どの艦船が対処するかを割り当てる。火力配分実行部は、グループG3に属する全ての目標物を、全て自艦の火器の射撃目標から除外する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、部隊に接近し部隊にとって脅威となる複数の目標物(例えば、航空機、飛翔体等)が探知された際に、それらの複数の目標物の中から、移動体の火器の射撃目標を設定する火力配分装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の部隊防空における火力配分方式では、部隊としての船団に接近する複数の目標物が探知装置によって探知された際に、船団に属する移動体としての艦船が、その船団内の他艦と同期することなく独自のタイミングで、その目標物を火器の射撃目標とするか否かを判断していた。
【0003】
このような火力配分方式では、自艦の探知装置の探知情報(センサ情報)のみを用いており、自艦に対する脅威度が比較的高い目標物を射撃目標とするだけである。このため、船団内の連携の度合いが低下していた。また、船団内の各艦船が同一の目標物を射撃目標として設定してしまう、即ちオーバーシュート(同一の目標物に対して必要以上に割当を行うこと)が発生してしまう場合がある。このような場合、オーバーシュートによって無駄弾が生じてしまい、火力資源の消耗率が高くなる。また、どの艦船も目標物を射撃目標として設定しないような割当漏れが発生することもあった。さらに、船団内の各艦船の残弾数の不均等化等が発生するという問題がある。
【0004】
これに対して、近年では、NCW(Network Centric Warfare)に対応した部隊防空システムの構築が進み、船団内で情報の共有化がなされている。そこで、このような部隊防空システムを利用して、各艦船の火器の残弾数の均等化等、船団内で火力配分の最適化を図りたいとの要望、即ち最適火力配分の要望が高まっている。
【0005】
このような最適火力配分は、資源割当問題の一種と考えることができる。一般的に、この資源割当問題を解くには、1つのマスターが部隊全体の状況を把握して最適化を図り、目標物の配分(割当)を決定する組合せ最適化手法が用いられている。なお、例えば、特許文献1,2に示すような従来の火力配分装置では、組合せ最適化手法によって、同一の艦船における複数の火器の火力配分が実行される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−147552号公報
【特許文献2】特開2006−29651号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、部隊防空における火力配分処理は、運用上の観点により、各艦船が独立して実施する必要があるため、マスターが全体を見渡して全ての艦船に対する火力配分を決定するような手法を適用するのは困難であった。さらに、部隊全体での最適化を図るためには、全艦船の最新の状況に関する情報の取得が必要となる。
【0008】
しかしながら、状況によっては、艦船の通信機能や火器管制機能が障害を受ける場合があり、艦船間の通信のリアルタイム性が常に確保されている保証がなく、場合によって各艦船が互いに最新情報を共有することができない状況が発生する。従って、部隊防空以外の最適火力配分処理やその他の資源割当処理等で用いられる組合せ最適化手法では、目標物に対する火力配分の最適化を図ることが困難であった。
【0009】
さらに、各艦船がマスターとなり、各艦船が全艦船の火力配分を行うアルゴリズムの適用も考えられる。しかしながら、各艦船が独立して火力配分処理を実行しても、自艦の火力配分は自艦で決定する(他艦による自艦に対する火力配分結果を反映しない)。このため、自艦が他艦の火器の射撃目標の設定や、発射スケジュールを管理しても、処理負担が増大して、処理時間が増加してしまう。従って、このようなアルゴリズムを、即応性が求められる部隊防空に適用するのは困難であった。
【0010】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、移動体間の通信が正常に保たれていない場合であっても、複数の移動体により編成される部隊内で連携を図りつつ各移動体が他の移動体から独立して火力配分処理を実行することができ、部隊全体における火力配分を最適化することができる火力配分装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明に係る火力配分装置は、目標物を射撃する火器が搭載された複数の移動体のそれぞれに配備され、複数の移動体で共有される目標物の探知情報に基づいて、その探知情報に含まれる複数の目標物の一部を、自身の移動体の火器の射撃目標として、自身の移動体に割り当てるものであって、火器の残弾数の情報、及び火器の同時に射撃可能な最大値の情報を含む火器情報を、移動体同士の間で送受信する情報送受信部と、情報送受信部によって受信された他の移動体の火器情報、及び自身の移動体の火器情報をそれぞれ記憶する情報記憶部と、探知情報に基づいて、目標物が移動体に及ぼす予測被害に関する指標である脅威度を、移動体毎及び目標物毎に算出する脅威度算出部と、探知情報に含まれる複数の目標物のうち、自身の移動体に対する脅威度が予め設定された閾値を超える目標物を、自身の移動体が対処する目標物の集合である自身対処グループに、自身の移動体に対する脅威度が閾値以下である目標物を、自身の移動体と他の移動体とが互いに分担して対処する目標物の集合である分担対処グループにそれぞれ分類する対象分類部と、自身対処グループに属する目標物を、自身の移動体の火器の射撃目標として、自身の移動体に割り当てる火力配分実行部とを備え、火力配分実行部は、情報記憶部に記憶されている火器情報に基づいて、目標物を対処した後の移動体の火器の残弾数を最小化し、複数の移動体が同一の目標物に対して射撃を行うオーバーシュートの数を最小化するように、分担対処グループに属する全ての目標物を複数の移動体のそれぞれに割り当てて、自身の移動体に割り当てた目標物を、自身の移動体の火器の射撃目標として設定するものである。
【発明の効果】
【0012】
この発明の火力配分装置によれば、火力配分実行部が情報記憶部に記憶されている火器情報に基づいて、目標物を対処した後の移動体の火器の残弾数を最小化し、複数の移動体が同一の目標物に対して射撃を行うオーバーシュートの数を最小化するように、分担対処グループに属する全ての目標物を複数の移動体のそれぞれに割り当てて、自身の移動体に割り当てた目標物を、自身の移動体の火器の射撃目標として設定するので、自身の移動体の火器の射撃目標を独自のタイミングで設定することにより、移動体間の通信が正常に保たれていない場合であっても、複数の移動体により編成される部隊内で連携を図りつつ各移動体が他の移動体から独立して火力配分処理を実行することができ、部隊全体における火力配分を最適化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】この発明の実施の形態1による火力配分装置を示すブロック図である。
【図2】図1の火力配分処理対象分類部による分類処理を説明するための説明図である。
【図3】図1の火力配分実行部による火力配分処理の一例について説明するための説明図である。
【図4】図1の火力配分実行部による火力配分処理の一例について説明するための説明図である。
【図5】図1の火力配分実行部による火力配分処理の一例について説明するための説明図である。
【図6】図1の火力配分実行部による火力配分処理の一例について説明するための説明図である。
【図7】図1の火力配分実行部による火力配分処理の一例について説明するための説明図である。
【図8】この発明の実施の形態2による火力配分装置を示すブロック図である。
【図9】この発明の実施の形態3による火力配分装置を示すブロック図である。
【図10】この発明の実施の形態4による火力配分装置を示すブロック図である。
【図11】図10の再火力配分処理対象抽出部による再火力配分の要否判定処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、この発明を実施するための形態について、図面を参照して説明する。以下の実施の形態では、本発明の部隊を船団とし、艦船を移動体とし、自身の移動体を自艦とし、他の移動体を他艦としてそれぞれ説明する。
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1による火力配分装置を示すブロック図である。図1において、火力配分装置本体100は、自身が設置されている艦船を自艦として認識している。また、火力配分装置本体100は、船団内の自艦以外の艦船を他艦として認識している。さらに、火力配分装置本体100は、自艦の火器(例えば飛翔体の発射装置等:図示せず)の射撃目標や、発射時期の設定等の管制を行う。
【0015】
火力配分装置本体100は、センサ部1、部隊センサ情報収集部2、センサ情報統合記憶部3、部隊情報受信部4、部隊火力配分結果記憶部5、部隊火器情報記憶部6、火力配分処理対象抽出部7、脅威度算出部としての脅威度/会合確率算出部8、火力配分処理対象分類部9、火力配分実行部10、火力配分結果記憶部11、火器情報記憶部12、火器情報更新部13及び情報送信部14を有している。なお、部隊情報受信部4及び情報送信部14によって、情報送受信部が構成されている。
【0016】
センサ部1は、例えばレーダ等のセンサ装置である。また、センサ部1は、所定の探知領域内に位置する目標物を探知し、その探知した目標物を追尾する。この目標物とは、自身が属する船団に接近し、その船団にとって脅威となる物であり、例えば、航空機又は飛翔体等である。また、センサ部1は、目標物を探知すると、その目標物の位置、移動速度、移動方向及び大きさ等を観測する。さらに、センサ部1は、目標物を探知したか否かの状況と、目標物の観測内容とを示す情報であるセンサ観測データ(探知情報)を生成する。また、センサ部1は、生成したセンサ観測データを他艦へ送信する。
【0017】
部隊センサ情報収集部2は、他艦に設けられたセンサ部(図示せず)からのセンサ観測データを受信し収集する。センサ情報統合記憶部3は、センサ部1によって生成された自艦のセンサ観測データと、部隊センサ情報収集部2によって収集された他艦のセンサ観測データとを統合して記憶する。
【0018】
部隊情報受信部4は、船団内の他艦から、火器情報と、火力配分結果情報とを受信する。この火器情報とは、火器の残弾数の情報、火器の利用可否に関する情報、及び火器の同時発射可能数の情報を含む情報である。また、火力配分結果情報とは、火器の射撃目標となっている目標物を示す情報である。
【0019】
部隊火力配分結果記憶部5は、部隊情報受信部4によって受信された他艦の火力配分結果情報と、火力配分結果記憶部11に記憶されている自艦の火力配分結果情報とを統合して記憶する。部隊火器情報記憶部6は、部隊情報受信部4によって受信された他艦の火器情報と、火器情報記憶部12に記憶される自艦の火器情報とを統合して記憶する。
【0020】
火力配分処理対象抽出部7は、センサ情報統合記憶部3に記憶されている船団内の各艦船のセンサ観測データと、部隊火力配分結果記憶部5に記憶されている船団内の各艦船の火力配分結果とを比較し、新たに火力配分処理対象となる目標物の抽出を行う。具体的に、この火力配分処理対象となる目標物とは、船団内の各艦船のセンサ観測データに含まれる全ての目標物のうち、どの艦船の火器の射撃目標として設定されていない目標物である。
【0021】
脅威度/会合確率算出部8は、火力配分処理対象抽出部7によって抽出された目標物の脅威度及び会合確率を、センサ観測データに基づいて、船団の艦船毎に算出する。脅威度/会合確率算出部8により算出される脅威度とは、目標物が艦船に被害を及ぼす確率や、目標物による艦船の予測被害の大きさ等を示す指標である。また、この脅威度は、同じ目標物であっても艦船毎に異なる。
【0022】
従って、脅威度/会合確率算出部8は、1つの目標物に対して、艦船毎に脅威度を算出する必要がある。具体的に、脅威度/会合確率算出部8による脅威度の演算回数は、例えば、目標物の数をmとし、艦船数をnとした場合、m×n回となる。また、脅威度/会合確率算出部8により算出される会合確率とは、艦船の火器の1回の射撃で、その目標物の対処に成功する確率である。なお、会合確率は、各艦船の火器の種別・性能に応じて変化する。
【0023】
ここで、火力配分処理対象抽出部7により抽出される目標物は、船団全体で対処する目標物であり、火力配分処理対象分類部9は、自艦で対処する(即ち、火力配分実行部10の処理対象とする)目標物の絞込みを行う。具体的に、火力配分処理対象分類部9は、火力配分処理対象抽出部7により抽出された複数の目標物を、脅威度/会合確率算出部8により算出された脅威度に基づいて分類し、火力配分実行部10の処理対象とすべき目標物を絞り込む。
【0024】
火力配分実行部10は、センサ情報統合記憶部3、部隊火器情報記憶部6、脅威度/会合確率算出部8、及び火力配分処理対象分類部9からの各種情報に基づいて、火力配分処理を実行し、自艦の火器の射撃目標を設定する。火力配分結果記憶部11は、火力配分実行部10による火力配分処理の実行結果を記憶する。
【0025】
火器情報記憶部12は、自艦の火器情報を記憶する。火器情報更新部13は、火器と通信可能となっており、最新の自艦の火器情報を取得する。また、火器情報更新部13は、火器情報記憶部12に記憶されている火器情報を、最新の火器情報に更新する。情報送信部14は、火力配分結果記憶部11に記憶されている自艦の火力配分結果情報と、火器情報記憶部12に記憶されている自艦の火器情報とを、船団内の他艦に送信する。
【0026】
ここで、火力配分装置本体100は、演算処理部(CPU)、記憶部(ROM、RAM及びハードディスク等)及び信号入出力部を持ったコンピュータ(図示せず)により構成することができる。火力配分装置本体100のコンピュータの記憶部には、図1に示すセンサ部1〜情報送信部14の各機能を実現するためのプログラムが格納されている。
【0027】
次に、艦船間の情報の送受信の方式について説明する。船団内では、艦船同士の間でセンサ観測データを常時送受信している。これにより、船団内の各艦船は、自艦のセンサ観測データと他艦のセンサ観測データとを統合することによって、船団内の目標物の探知状況の情報、即ちセンサ観測データを(100%の状態で)共有している。
【0028】
これに対して、火器情報及び火力配分結果情報の送受信については、艦船の通信機能や火器管制機能が障害を受ける場合があり(通信環境によって受信確率が変化する場合もあり)、艦船間の通信のリアルタイム性が常に確保されている保証がなく、場合によって各艦船が互いに最新情報を共有することができない状況が発生する。また、火器情報及び火力配分結果情報の内容は、艦船内で必要な処理が実行されて決定されるものであるため、リアルタイムに送受信されるものではなく、艦船同士の間で定期的に送受信される。これらの要因により、自艦の火器の射撃目標を設定する際に、各艦船が保持する他艦の火器情報及び火力配分結果情報が最新でない状況が発生する。
【0029】
次に、火力配分処理対象分類部9の機能について具体的に説明する。図2は、図1の火力配分処理対象分類部9による分類処理を説明するための説明図である。図2において、火力配分処理対象分類部9は、火力配分処理対象抽出部7により抽出された目標物を、脅威度/会合確率算出部8によって算出された脅威度に基づいて、以下の4つのグループG1〜G4に分類する。
グループG1:自艦に対する脅威度のみが閾値Hを超える目標物の集合
グループG2:自艦を含め、複数の艦船に対する脅威度が閾値Hを超える目標物の集合
グループG3:自艦以外の他艦に対する脅威度が閾値Hを超える目標物の集合
グループG4:いずれかの他艦に対する脅威度も閾値H以下となる目標物の集合
なお、閾値Hとは、対処しなければ艦船が行動不能となる脅威度に対応する値であり、事前に設定された値である。
【0030】
次に、火力配分実行部10による火力配分処理について具体的に説明する。はじめに、この火力配分処理の概要は、自艦に対する脅威度が事前に定めた閾値Hを越える目標物については、自艦の火器の射撃目標として設定する。また、いずれの艦船に対しても脅威度が閾値H以下の目標物については、各艦船の残弾数及び火力負荷の均等化と、オーバーシュートの数の最小化とを図るべく、自艦の火器の射撃目標として設定するか否かを判断する。なお、火力負荷とは、割当数を火器能力で割った値であり、火器の負担の度合いを示す値である。
【0031】
火力配分実行部10は、目標物について、それぞれが属するグループに応じた処理を行う。また、火力配分実行部10は、グループG1,G2,G3,G4の順に、それぞれのグループに属する目標物を、自艦の火器の射撃目標として設定するか否かを判断する。具体的に、火力配分実行部10は、グループG1に属する全ての目標物を、自艦の火器の射撃目標として設定する。
【0032】
また、火力配分実行部10は、グループG2に属する目標物について、火力配分処理を実行し、その処理の結果に基づいて、どの艦船が対処するかを割り当てる。さらに、火力配分実行部10は、グループG3に属する全ての目標物を、全て自艦の火器の射撃目標から除外する。また、火力配分実行部10は、グループG4に属する目標物について、グループG2とは異なる火力配分処理を実行し、その処理の結果に基づいて、どの艦船が対処するかを割り当てる。従って、グループG1は、自艦の火器が対処する目標物の集合、即ち自身対処グループである。グループG2及びG4は、船団の各艦船の火器が対処する目標物の集合、即ち分担対処グループである。
【0033】
次に、火力配分実行部10のグループG2に対する火力配分処理について具体的に説明する。自艦を含め複数の艦船に対して被害を及ぼす可能性が高い目標物は、該当する艦船のそれぞれがその目標物を射撃目標としてしまうと、オーバーシュートが発生してしまう。そこで、火力配分実行部10は、オーバーシュートの発生を防ぐためにグループG2に属する目標物のそれぞれに対して、優先順位付けを行う。
【0034】
優先順位付けを行う項目は、脅威度、残弾数、火力負荷及び対処可能時間の4つとする。対処可能時間とは、現時刻から被害を受ける前に目標物を対処できる最も遅い射撃時刻までの時間である。ここで、グループG2に属する目標物をMとし、目標物Mの脅威度が閾値Hを超える艦船の集合をSとする。火力配分実行部10は、脅威度、各艦船の火器の残弾数、各艦船の火力負荷、艦船jの目標物Mに対する対処可能時間のそれぞれの順位点に基づいて、次の(1)式の演算を行うことによって、船団内の各艦船の優先度を算出する。そして、その優先度が最大の艦船が対処するものとして決定する。なお、この順位点とは、例えば、集合Sに属する艦船が10隻であれば、順位点は10〜1のいずれかの値をとり、値が大きいほど順位が高いことを示す。
【0035】
【数1】

但し、P(M,j):目標物Mに対する艦船jの優先度
T(M,j):集合Sに属する艦船jに対する目標物Mの脅威度の順位点
R(j):艦船jの残弾数の順位点
F(j):艦船jの火力負荷の順位点
L(M,j):艦船jの目標物Mに対する対処可能時間の順位点
D(M,j):艦船jの目標物Mに対する会合確率の順位点
T、CR、CF、CL、CDは、それぞれの項目の重み付けのための係数であり、値が大きいほどその項目を優先することを示している。
【0036】
次に、火力配分実行部10のグループG4に対する火力配分処理について具体的に説明する。グループG4に属する目標物は、どの艦船に対する脅威度も閾値H以下であるため、基本的にどの艦船に割り当てても差し支えない。そこで、火力配分実行部10は、火力配分処理と、射撃目標選択処理との2段階の処理を実行することによって、自艦の火器の射撃目標とする目標物を設定する。この火力配分処理とは、グループG4に属する目標物を船団内の各艦船に仮想的に割り当てる処理である。また、射撃目標選択処理とは、グループG4に属する複数の目標物の中から、自艦の火器の射撃目標とする目標物を選択する処理である。
【0037】
図3〜7は、図1の火力配分実行部10による火力配分処理の一例について説明するための説明図である。ここでは、船団を編成する艦船数を6(艦船A〜F)とし、グループG4に属する目標物の数を100とした場合の火力配分処理の一例について説明する。なお、図3は、目標物の割当前の時点の各艦船の火器能力及び残弾数を示す。図4は、各艦船の残弾数に基づく均等化割当処理の結果を示す。図5は、図4に示す処理結果(割当結果)から、火力負荷調整処理が1回行われた後の処理結果を示す。図6は、図5に示す処理結果から、火力負荷調整処理を1回行われた後の処理結果を示す。図7は、火力負荷調整処理後の最終的な処理結果を示す。
【0038】
まず、火力配分実行部10は、部隊火器情報記憶部に記憶される他艦及び自艦の火器情報に基づいて、各艦船の火器能力及び割当前の残弾数を把握する。ここで、図3に示すように、各艦船の火器能力及び割当前の残弾数は、それぞれ艦船A={3,50}、艦船B={3,30}、艦船C={4,50}、艦船D={2,40}、艦船E={6,30}、艦船F={4,40}である。なお、これらの括弧内の2つの数字は、1番目の値が火器能力、2番目の値が残弾数を示している。
【0039】
まず、火力配分実行部10は、割当後(目標物を対処した後)の各艦船の残弾数が均等となる均等化割当処理を実行し、グループG4に属する目標物についての各艦船の割当数を決定する。具体的に、火力配分実行部10は、グループG4に属する目標物を全て割り当てた後(割当後、目標物に対して射撃を行った後)の残弾数が均等化されるように、各艦船の割当数を決定する。この処理結果は、図4に示すように、艦船A={26,24,8.67}、艦船B={7,23,2.33}、艦船C={27,23,6.75}、艦船D={16,24,8.00}、艦船E={7,23,1.17}、艦船F={17,23,4.25}である。なお、これらの括弧内の3つの数字は、順に、割当数、割当後の残弾数、火力負荷を示している。従って、各艦船の割当後の残弾数は、23又は24に均等化されている。
【0040】
次に、火力配分実行部10は、各艦船の火力負荷の最大値が予め設定された固定値である火力負荷閾値を超える場合には、火力負荷調整による割当数の調整処理を実行する。そして、火力配分実行部10は、調整処理を実行することによって、火力負荷の最大値が火力負荷閾値以下となるように各艦船の目標物の割当数を調整する。ここで、火力負荷の差を小さくすることに伴って、残弾数が均等化されなくなってしまうので、残弾数の差が、予め設定された固定値である残弾数閾値以下となるようにする。なお、残弾数の均等化を優先するか、火力負荷の均等化を優先するかは実際の運用方式によって決定される。
【0041】
また、火力配分実行部10は、調整処理としての次の第1〜4調整ステップを順に実行することによって、各艦船における目標物の割当数を調整する。
第1調整処理ステップ:火力配分実行部10は、全ての艦船から火力負荷の値が最大である艦船をkとして抽出する。
第2調整処理ステップ:火力配分実行部10は、艦船kの火力負荷が現火力負荷より小さい最大整数となるように艦船kの割当数を減少させる。
第3調整処理ステップ:火力配分実行部10は、船団内の各艦船の残弾数がなるべく均等になるように、かつ全艦船の割当数合計値がグループG4の目標物数と等しくなるように、艦船k以外の艦船の割当数を増加させる。但し、一度火力負荷を下げた艦船がまた火力負荷が上がらないように、艦船k以外でも一度火力負荷を下げた艦船の割当数は増加させないこととする。
第4調整処理ステップ:火力配分実行部10は、最大火力負荷が火力負荷閾値以下となるか、又は残弾数の最大値と最小値の差が残弾数閾値を超える場合に火力配分処理を終了する。
【0042】
ここで、図4に示す処理結果において最も火力負荷が高い艦船は、艦船Aであり、その負荷は8.67と火力負荷閾値の7を超えている。そこで、火力配分実行部10は、艦船Aの火力負荷を8.67よりも小さい最大整数である8に変更する。これとともに、火力配分実行部10は、艦船A以外の艦船の割当後の残弾数が均等化され、且つ、割当数の合計がグループG4の目標物の合計値である100となるように、艦船A以外の艦船の割当数を変更する。このような1回目の火力負荷調整後の処理結果のうち、艦船A、艦船D及び艦船Eのそれぞれの調整後の火力負荷、割当数及び割当後の残弾数は、図5に示すように、艦船A={8.00,24,26}、艦船D={8.50,17,23}、艦船E={1.33,8,22}となる。
【0043】
次に、図5に示す処理結果において最も火力負荷が高い艦船は、艦船Dであり、その火力負荷は8.50であり、火力負荷閾値の7を超えている。そこで、火力配分実行部10は、1回目の火力負荷調整処理と同様の処理、即ち2回目の火力負荷調整処理を実行し、艦船Dの火力負荷を火力負荷閾値に近づける。ここで、艦船Dの火力負荷を8に変更後、単純に艦船D以外の全ての艦船を割当数の調整対象としてしまうと、艦船Aの割当数が増え、1回目の火力負荷調整処理によって減少させた艦船Aの火力負荷がまた増加してしまう。このため、一度でも火力負荷を減少させた艦船は割当数を増やさないようにする。つまり、艦船Dの火力負荷を8に変更後、割当数を増加させる対象から艦船Aは除外する。
【0044】
そして、火力配分実行部10は、このような2回目の火力負荷調整処理を実行することによって、図6に示すような処理結果を得る。これに加えて、火力配分実行部10は、2回目の火力負荷調整処理と同様の処理を繰り返し、各艦船の火力負荷を火力負荷閾値以下となるように、各艦船の割当数を変更する。これによって、火力配分実行部10は、図7に示すような最終的な調整結果を得る。この最終的な調整結果においては、各艦船の火力負荷が火力負荷閾値の7を超えず、かつ割当後の残弾数の最大値と最小値との差が残弾数閾値の10を超えない結果が得られる。
【0045】
次に、火力配分実行部10は、火力配分処理によって得られた各艦船の割当数に基づいて、自艦の割当数を決定する。例えば、図7において、自艦が艦船Aである場合には、火力配分実行部10は、自艦の割当数を21として決定する。火力配分実行部10は、自艦の割当数を決定すると、射撃目標選択処理を実行し、グループG4に属する複数の目標物の中から、火器の射撃目標となる目標物を設定する。この射撃目標設定処理は、グループG4に属する複数の目標物について順位付けを行い、上位W個を火器の射撃目標として設定する。なお、このWは、火力配分処理によって算出された自艦の割当数である。
【0046】
ここで、この射撃目標選択処理について具体的に説明する。例えば、グループG4に属する目標物をNとし、自艦を艦船jとした場合に、火力配分実行部10は、次の(2)式を演算することによって、グループG4に属する複数の目標物について順位付けを行う。そして、火力配分実行部10は、目標物Nの艦船jにおける優先度が高い順に、W個の目標物を自艦の火器の射撃目標として設定する。
【0047】
【数2】

但し、Q(N,j):目標物Nの艦船jにおける優先度
T(N,j):目標物Nの艦船jに対する脅威度の順位点
D(N,j):艦船jの目標物Nに対する会合確率の順位点
L(N,j):艦船jの目標物Nに対する対処可能時間の順位点
T、CD、CLは、それぞれの項目の重み係数であり、値が大きいほどその項目を優先することを示す。
【0048】
従って、火力配分実行部10は、火力配分処理及び射撃目標選択処理を順に実行することによって、グループG4に属する複数の目標物の中から、自艦の火器の射撃目標を設定する。また、各艦船に設けられている火力配分装置本体100のそれぞれが同一の処理を実行することによって、全ての目標物が各艦船の火器の射撃目標として設定され、目標物の撃ち漏らしの発生を抑制可能となる。また、火力配分実行部10が自艦の火器の射撃目標を設定した後、情報送信部14が、自艦の火力配分結果及び火器情報を部隊内の他艦に送信する。
【0049】
上記のような火力配分装置では、火力配分実行部10が部隊火器情報記憶部6に記憶されている火器情報に基づいて、目標物を対処した後の移動体の火器の残弾数を最小化し、複数の移動体が同一の目標物に対して射撃を行うオーバーシュートの数を最小化するように、グループG2に属する全ての目標物を各艦船に割り当てる。そして、火力配分実行部10が、自艦に割り当てた目標物を自艦の火器の射撃目標として設定する。これによって、火力配分実行部10が自艦の火器の射撃目標を独自のタイミングで設定することにより、各艦船間の通信が正常に保たれていない場合であっても、船団内で連携を図りつつ各艦船が他の艦船から独立して火力配分処理を実行することができ、部隊全体における火力配分を最適化することができる。これに加えて、船団の連携度を向上させることができる。
【0050】
実施の形態2.
先の実施の形態1では、火力配分実行部10がグループG2,G4に属する目標物に対する火力配分処理を実行する際に、各艦船の同一グループ外の火力負荷(G1,G2,G4の相互間の火力負荷)を反映させずに、火力配分処理を実行していた。これにより、火力配分実行部10がグループG1,G2,G4の順に優先的に火器の射撃目標を設定しているため、特にグループG4に属する目標物を、火器の射撃目標として設定しても、火力負荷が火力負荷閾値を過剰に超過してしまい、優先度が低い目標物(特にグループG4)の撃ち漏らしが発生する可能性があった。これに対して、実施の形態2では、火力配分実行部10が各艦船の同一グループ外の火力負荷を反映させた上で、グループG2,G4に属する目標物に対する火力配分処理を実行する。
【0051】
図8は、この発明の実施の形態2による火力配分装置の構成を示すブロック図である。図8において、実施の形態2では、火力配分実行部10の機能及び動作が実施の形態1と異なっており、それ以外の機能及び動作は実施の形態1と同様である。このため、ここでは、実施の形態2の火力配分実行部10の動作についてのみ説明する。また、実施の形態2では、船団を編成する艦船をS1,S2,S3,S4の4隻とし、各艦船の火力負荷をL1,L2,L3,L4とし、自艦をS1として説明する。
【0052】
さらに、実施の形態2では、火力配分実行部10が閾値HA及び閾値HBを火力負荷閾値として予め記憶している。この閾値HAは、自艦の火力負荷について他艦を援護可能な余裕度を示す値、即ち他艦の射撃目標を自艦の射撃目標として引き受けることができる火力負荷の値である。閾値HBは、他艦の火力負荷の上限を示す値、即ち超過した場合に射撃目標の対処が困難となる火力負荷の値である。
【0053】
まず、火力配分実行部10は、部隊火力配分結果記憶部5に記憶されている各艦船の火力配分結果、及び部隊火器情報記憶部6に記憶されている各艦船の火器能力に基づいて、現状における各艦船の火力負荷L1,L2,L3,L4を、(未対処の)射撃目標数/火器能力により算出する。次に、火力配分実行部10は、実施の形態1の場合と同様に、グループG1に属する全ての目標物を、自艦の火器の射撃目標として設定する。そして、火力配分実行部10は、グループG1に属する目標物に対する火力配分結果を反映し、自艦S1の火力負荷L1を算出する。
【0054】
その後、火力配分実行部10は、算出した火力負荷L1が閾値HA以下であるか否かを確認する。このときに、火力配分実行部10は、算出した火力負荷L1が閾値HAを超過していることを確認した場合には、グループG2に属する目標物に対する割当処理を実行する。この場合の動作は、実施の形態1と同様である。一方、火力配分実行部10は、算出した火力負荷L1が閾値HA以下であることを確認した場合に、他艦S2,S3,S4の火力負荷L2,L3,L4の少なくともいずれか1つが閾値HBを超過しているか否かを確認する。
【0055】
このときに、火力配分実行部10は、他艦S2,S3,S4の火力負荷L2,L3,L4のいずれも閾値HBを超過していないことを確認した場合に、グループG2に属する目標物に対する割当処理を実行する。この場合の動作は、実施の形態1と同様である。一方、火力配分実行部10は、他艦S2,S3,S4の火力負荷L2,L3,L4の少なくともいずれか1つが閾値HBを超過していることを確認した場合に、該当する他艦を割当対象外として設定する。
【0056】
そして、火力配分実行部10は、残りの艦船だけを割当対象として、グループG2に属する目標物に対する割当処理を実行する。なお、この場合の動作は、火力負荷が閾値HBを超えている他艦を割当対象外としたことを除いて、実施の形態1と同様である。従って、火力配分実行部10は、自艦の火力負荷L1が閾値HA以下で、かつ火力負荷が閾値HBを超えている他艦が1つ以上存在する場合に、該当する他艦を割当対象外とし、残りの艦船だけでグループG2に属する目標物に対する割当処理を実行する。例えば、艦船S2の火力負荷が閾値HBを超えている場合、火力配分実行部10は、S1,S3,S4の3つの艦船だけを割当対象にして、グループG2に属する目標物に対する割当処理を実行する。
【0057】
次に、火力配分実行部10は、グループG2に属する目標物に対する割当処理の結果を反映させるために、自艦の火力負荷L1を再度算出する(再計算を行う)。そして、火力配分実行部10は、火力負荷L1が閾値HA越えているか、火力負荷が閾値HBを超えている他艦が存在しなければ、グループG4に属する目標物に対する火力配分処理を実行する。なお、この場合の動作は、実施の形態1と同様である。
【0058】
一方、火力配分実行部10は、自艦の火力負荷L1が閾値HA以下で、かつ他艦S2,S3,S4の火力負荷L2,L3,L4の少なくともいずれか1つが閾値HBを超過していることを確認した場合に、該当する他艦を割当対象外として設定した上で、グループG4に属する目標物に対する火力配分処理を実行する。なお、この場合の動作は、火力負荷が閾値HBを超えている他艦を割当対象外としたことを除いて、実施の形態1と同様である。
【0059】
従って、実施の形態2の火力配分実行部10は、自艦の火器の単位時間あたりの射撃数である火力負荷が、閾値HA以下であることを確認した場合に、火力負荷が閾値HBを超過している他艦の火器に配分されている目標物を、自身の移動体の火器の射撃目標として設定する。
【0060】
上記のような火力配分装置では、火力配分実行部10が、自艦の火力負荷に余裕があることを確認した場合に、火力負荷が高い他艦を割当対象から除外した上で、グループG2又はG4に属する目標物の割当処理を実行する。この構成により、異なるグループに属する目標物に対する火力負荷が高い他艦について、目標物の割当が抑えられ、特定の艦の火力負荷だけが過剰に高くなることを防ぐことができ、火力負荷を分散させることができる。
【0061】
実施の形態3.
先の実施の形態1,2では、自艦の火器の射撃目標と、他艦の火器の射撃目標とが重複している場合であっても、相互の射撃目標を実際に確認していない。特に、実施の形態2では、自艦の火力負荷に余裕がある場合に、火力負荷が過剰に高くなっている他艦の割当分の目標物を、自艦の火器の射撃目標として引き受けるため、そのまま火器の射撃が開始された際には、オーバーシュートが発生する場合があった。これに対して、実施の形態3では、重複判定部15によって、重複判定処理が実行され、自艦の火器の射撃目標と他艦の火器の射撃目標とが相互に重複しているか否かが確認されて、その重複を避けるように、火力配分実行部10が火力配分処理を実行する。
【0062】
図9は、この発明の実施の形態3における火力配分装置の構成を示すブロック図である。図9において、実施の形態3の火力配分装置本体100は、重複判定部15をさらに有している。ここで、実施の形態3では、火力配分実行部10の機能・動作が異なる以外は実施の形態1あるいは実施の形態2と同様である。このため、ここでは、重複判定部15の動作及び火力配分実行部10の動作についてのみ説明する。
【0063】
まず、実施の形態1又は実施の形態2の火力配分実行部10によるグループG2又はG4の火力配分処理が終了した後に、重複判定部15は、部隊火力配分結果記憶部5に記憶されている各艦船の火力配分結果を取得する。そして、重複判定部15は、取得した各艦船の火力配分結果に基づいて、重複判定処理を実行する。具体的に、重複判定部15は、重複判定処理を実行すると、自艦の火力配分結果と他の艦船の火力配分結果を比較し、自艦に割り当てた目標物と同一の目標物が他艦にも割り当てられているかどうか、即ち目標物の割当が重複しているかどうかを判定する。
【0064】
このときに、重複判定部15によって割当の重複が発生していることが確認された場合、例えば、自艦をS1とし、割当が重複している他艦をS2とすると、火力配分実行部10は、相互に重複している目標物に対する自艦S1及び他艦S2のそれぞれの対処可能時間と会合確率とを比較する。そして、火力配分実行部10は、自艦S1の対処可能時間の方が大きいことを確認した場合には、その重複している射撃目標について、自艦S1の割当(火器の射撃目標としての設定)を解除する。
【0065】
また、火力配分実行部10は、自艦S1及び他艦S2の対処可能時間が互いに同一である場合には、自艦S1の会合確率が他艦S2の会合確率よりも低ければ、その重複している射撃目標について、自艦S1の割当(火器の射撃目標としての設定)を解除する。なお、重複判定部15によって割当の重複が発生していないことが確認された場合には、火力配分実行部10は、現在設定されている自艦の火器の射撃目標を、そのまま射撃目標としたままで保持する。
【0066】
上記のような火力配分装置では、重複判定部15によって重複判定処理が実行され、自艦の火器の射撃目標と他艦の火器の射撃目標とが相互に重複している場合に、その重複を避けるように火力配分実行部10が火力配分処理を実行する。このような機能により、同一の目標物が複数の艦船の火器の射撃目標として設定されるような状況を回避することができ、オーバーシュートの発生を防止することができる。これに加えて、火力資源の消耗率を低減させることができる。
【0067】
なお、実施の形態3では、自艦の火器の射撃目標と他艦の火器の射撃目標とが重複している際に、火力配分実行部10が対処可能時間及び会合確率を基準に、自艦の当該目標物の割当を解除するか否かを決定した。しかしながら、この例に限るものではなく、他の情報を基準に自艦の当該目標物の割当を解除するか否かを決定してもよい。例えば、自艦及び他艦の互いの火器の残弾数や火力負荷を基準に、自艦の当該目標物の割当を解除するか否かを決定してもよい。
【0068】
実施の形態4.
先の実施の形態1〜3では、火力配分処理対象抽出部7は、船団内の各艦船のセンサ観測データに含まれる全目標物のうち、どの艦船へも未割当の目標物のみを抽出していた。これにより、火力配分実行部10は、目標物がある艦船へ割り当てられた後は、目標物やその目標物の対処予定の艦船等に状態変化が生じても、その状態変化に対応した処理を行わなかった。
【0069】
これに対して、この発明の実施の形態4では、火力配分処理対象抽出部7が処理を実行する前に、再火力配分処理対象抽出部16が処理を実行し、再火力配分が必要な目標物を抽出する。そして、再火力配分処理対象抽出部16は、その抽出した目標物について、その目標物を対処予定の艦船への割当を解除する。割当が解除された目標物は、火力配分処理対象抽出部7で再び火力配分の処理対象として抽出される。これにより、火力配分実行部10によって、目標物やその目標物の対処予定の艦船等の状態変化に対応した火力配分が再び行われる。
【0070】
図10は、この発明の実施の形態4による火力配分装置を示すブロック図である。図10において、実施の形態4の火力配分装置本体100は、実施の形態1又は実施の形態2の火力配分装置本体100の構成に加えて、再火力配分処理の対象の目標物を抽出するための再火力配分処理対象抽出部(再火力配分処理対象抽出装置)16をさらに有している。
【0071】
実施の形態4の火力配分実行部10は、火力配分処理を実行した際に、割当時状態情報を生成し、その生成した割当時状態情報を、火力配分結果とともに火力配分結果記憶部11に記憶させる。この割当時状態情報とは、火力配分処理を行った時点における火力配分処理対象の目標物と、自艦とのそれぞれの状態を示す情報である。この割当時状態情報には、例えば、目標物の速度ベクトル、その目標物についての自艦への脅威度、その目標物に対する自艦の対処可能時間、及び自艦の位置等が含まれており、これらの情報は、いずれも火力配分処理の時点の時刻に対応付けられている。
【0072】
火力配分結果記憶部11に記憶された自艦の割当時状態情報は、部隊火力配分結果記憶部5にも記憶される。また、火力配分結果記憶部11に記憶された自艦の割当時状態情報は、情報送信部14によって、自艦の火力配分結果情報及び火器情報とともに、船団内の他艦へ送信される。ここで、実施の形態4の部隊情報受信部4は、船団内の他艦から、割当時状態情報を受ける。この他艦からの割当時状態情報は、他艦の火力配分結果情報とともに、部隊火力配分結果記憶部5に記憶される。従って、船団内の各艦船は、自艦及び他艦の割当時状態情報を共有している。
【0073】
実施の形態4のセンサ部1が生成するセンサ観測データには、自艦の現在位置情報及び現存状態を示す情報が含まれており、他艦からのセンサ観測データには、他艦の現在位置情報及び現存状態を示す情報が含まれている。また、実施の形態4のセンサ情報統合記憶部3は、自艦及び他艦のセンサ観測データとともに、自艦及び他艦の現在位置情報及び現存状態を示す情報を統合して記憶している。
【0074】
再火力配分処理対象抽出部16は、センサ情報統合記憶部3のセンサ観測データと、部隊火力配分結果記憶部5の火力配分結果情報及び割当時状態情報とを用いて、船団のうちいずれかの艦船に割当済の目標物、及び割当済の目標物を対処予定の艦船のそれぞれの状態変化を監視する。そして、再火力配分処理対象抽出部16は、それらの情報を用いて、割当済の目標物、及びその割当済の目標物を対処予定の艦船のそれぞれについて、その割当時から現在までの状態変化量を取得する。
【0075】
そして、再火力配分処理対象抽出部16は、船団内の各艦船のセンサ観測データに含まれている目標物のうち、既にいずれかの艦船(自艦・他艦を問わず)へ割当済みの目標物に対して、再火力配分が必要か否かを判定する。そして、再火力配分処理対象抽出部16は、ある目標物について、再火力配分が必要であると判定した場合、その艦船への目標物の割当を解除する。これとともに、再火力配分処理対象抽出部16は、その目標物が自艦の火器の射撃目標として設定されているときには、その射撃目標としての設定を解除する。
【0076】
次に、再火力配分処理対象抽出部16による再火力配分の要否判定処理と、その再火力配分の要否判定処理の判定基準とについて説明する。ここで、火力配分実行部10による火力配分処理では、目標物の自艦及び他艦に対する脅威度が割当判断の基準となっている。このため、その脅威度に大きな影響があるような目標物又は艦船の状態変化が生じた場合には、目標物を最適な艦船へ火力配分し直す必要がある。これとともに、対処成功率や、対処可能時間等の対処できるか否かに大きく関わってくる事項へ大きな影響があるような状態変化があった場合にも再火力配分が必要となる。そこで、再火力配分の要否判定条件の判定基準は、これらの脅威度、対処成功率及び対処可能時間の内容に対応する基準になっている。
【0077】
図11は、図10の再火力配分処理対象抽出部16による再火力配分の要否判定処理を示すフローチャートである。ここで、図11における複数の閾値は、所定の再火力配分基準であり、再火力配分処理対象抽出部16に予め記憶されているか、又は火力配分装置本体100内の他の機能に記憶されている。また、これらの閾値には、それぞれの判定内容に対応する性質の値が設定されており、これらの閾値は、適宜決定可能な値である。
【0078】
さらに、一般的に、脅威度、対処成功率、及び対処可能時間の算出処理は、計算量が比較的多くなるため、図11に示す条件の判定順序は、計算量がなるべく少なくなるような順序となっている。なお、図11に示す条件の判定順序について、各ステップの計算順序を入れ替えても同様の効果を得ることができる。
【0079】
ここで、再火力配分処理対象抽出部16は、センサ情報統合記憶部3と部隊火力配分結果記憶部5より、自艦又は他艦に割当済みで、かつ、未対処である目標物が存在している場合に、図11の一連の処理を実行する。
【0080】
具体的には、まず、再火力配分処理対象抽出部16は、センサ情報統合記憶部3及び部隊火力配分結果記憶部5に記憶されている情報に基づき、自艦又は他艦に割当済みで、かつ、未対処である目標物が存在していることを確認した場合に、その割当済の目標物を再火力配分の要否判定処理の対象として特定する(以下、「対象目標物」とする)。また、再火力配分処理対象抽出部16は、自艦又は他艦のセンサ観測データに、そのような目標物が複数存在している場合ことを確認した場合には、そのうちの1つを対象目標物として特定する。さらに、再火力配分処理対象抽出部16は、対象目標物を対処予定の艦船(以下、「対象艦船」とする)を、部隊火力配分結果記憶部5に記憶されている情報に基づいて特定する。
【0081】
次に、図11において、ステップS1では、再火力配分処理対象抽出部16は、対象艦船が対象目標物に対して対処不可能となっているか否かを確認する。具体的に、再火力配分処理対象抽出部16は、部隊火器情報記憶部6の情報に基づき対象艦船の火器が使用不可となっているか否か、及び(対象艦船が他艦である場合に)センサ情報統合記憶部3の情報に基づき対象艦船が現存しているか否かを確認する。
【0082】
このときに、再火力配分処理対象抽出部16は、ステップS1で対象艦船が対象目標物に対して対処不可能であることを確認した場合には(ステップS1のYES方向)、ステップS11へ移行する。ステップS11では、再火力配分処理対象抽出部16は、対象目標物について再火力配分が必要であると判断し、その対象目標物を再火力配分対象として抽出する。
【0083】
そして、再火力配分処理対象抽出部16は、火力配分結果記憶部11と部隊火力配分結果記憶部5との情報を更新し、その対象目標物の対象艦船への割当を解除する。また、対象艦船が自艦である場合には、再火力配分処理対象抽出部16は、その対象目標物の火器の射撃目標としての設定も解除する。
【0084】
このステップS1及びステップS11での処理により、対処不可能な状態の艦船に目標物が割当られたままとなることによる打ち漏らしの発生を防ぐ。そして、再火力配分処理対象抽出部16は、対象目標物に関する再火力配分の要否判定処理を終了する。
【0085】
他方、再火力配分処理対象抽出部16は、ステップS1で対象艦船が対象目標物に対して対処可能であることを確認した場合に(ステップS1のNO方向)、ステップS2へ移行する。ステップS2では、再火力配分処理対象抽出部16は、センサ情報統合記憶部3及び部隊火力配分結果記憶部5の情報に基づき対象艦船が割当時から閾値以上移動したか否か確認する。
【0086】
このときに、再火力配分処理対象抽出部16は、対象艦船が割当時から閾値以上移動したことを確認した場合には(ステップS2のYES方向)、ステップS11へ移行し、同様の処理を行う。これは、対象艦船の位置が大きく移動すると脅威度、撃墜確率及び対処可能時間の全てに大きく影響を与える可能性があるためである。
【0087】
また、再火力配分処理対象抽出部16は、ステップS2で対象艦船が割当時から閾値以上移動していないことを確認した場合には(ステップS2のNO方向)、ステップS3へ移行する。ステップS3では、再火力配分処理対象抽出部16は、センサ情報統合記憶部3の情報と部隊火力配分結果記憶部5の情報とに基づいて、現時点の目標物の進行方向が割当時から閾値以上変化したか否かを確認する。
【0088】
このときに、再火力配分処理対象抽出部16は、ステップS3で現時点の対象目標物の進行方向が割当時から閾値以上変化したことを確認した場合には(ステップS3のYES方向)、ステップS11へ移行し、同様の処理を実行する。この対象目標物の進行方向の変化についても、脅威度、撃墜確率及び対処可能時間の全てに大きく影響を与える可能性があるためである。
【0089】
また、再火力配分処理対象抽出部16は、ステップS3で現時点の対象目標物の進行方向が割当時から閾値以上変化していないことを確認した場合には(ステップS3のNO方向)、ステップS4へ移行する。そして、ステップS4では、再火力配分処理対象抽出部16は、センサ情報統合記憶部3及び部隊火力配分結果記憶部5の情報に基づき、現時点の対象目標物の速度が割当時点から閾値以上変化したか否かを確認する。
【0090】
このときに、再火力配分処理対象抽出部16は、ステップS4で現時点の対象目標物の速度が割当時点から閾値以上変化していないことを確認した場合には(ステップS4のNO方向)、割当時点からの対象目標物の脅威度の変化が比較的小さいものと判断し、ステップS9へ移行する。
【0091】
他方、再火力配分処理対象抽出部16は、ステップS4で現時点の対象目標物の速度が割当時点から閾値以上変化したことを確認した場合には(ステップS4のYES方向)、脅威度、対処成功率、対処可能時間へ大きな影響が生じている可能性があるため、ステップS5へ移行する。なお、このステップS4に関する対象目標物の速度変化を確認した段階では、対象目標物の進行方向の変化を確認した場合と比べ、影響は少ないことが予測される。よって、この時点では、まだ再火力配分が必要との判定は行わない。
【0092】
そして、再火力配分処理対象抽出部16は、ステップS5では、対象艦船の対象目標物の対処成功率を再計算し、その対処成功率が閾値未満か否かを確認する。このときに、再火力配分処理対象抽出部16は、対象艦船の対象目標物の対処成功率が閾値未満であることを確認した場合には、ステップS11へ移行し、同様の処理を行う。このステップS5及びステップS11の処理により、対処成功率が比較的低い状態の対象艦船へ割当られたままとなることを防ぐ。
【0093】
他方、再火力配分処理対象抽出部16は、ステップS5で対象艦船の目標物の対処成功率が閾値以上であることを確認した場合には(ステップS5のNO方向)、ステップS6へ移行する。再火力配分処理対象抽出部16は、ステップS6では、割当時の状態における対象艦船への対象目標物の脅威度が、実施の形態1における火力配分処理対象分類部9で用いる閾値Hを超えていたか否かを確認する。
【0094】
このときに、再火力配分処理対象抽出部16は、ステップS6で割当時の状態における対象艦船への対象目標物の脅威度が閾値H以下であることを確認した場合には(ステップS6のNO方向)、脅威度以外の理由で、対象艦船に対象目標物が割り当てられた可能性が比較的高いため、脅威度の変化は無視してステップS8へ移行する。
【0095】
他方、再火力配分処理対象抽出部16は、ステップS6で割当時の状態における対象艦船への対象目標物の脅威度が閾値Hを超えていることを確認した場合には(ステップS6のYES方向)、脅威度が主な理由となって、対象艦船に対象目標物が割り当てられた可能性が比較的高いため、ステップS7へ移行する。
【0096】
そして、再火力配分処理対象抽出部16は、ステップS7では、現在の対象目標物の対象艦船への脅威度を再計算し、その現在の脅威度が閾値H以下であるか否かを確認する。このときに、再火力配分処理対象抽出部16は、ステップS7で現在の対象目標物の脅威度が閾値H以下であることを確認した場合には(ステップS7のYES方向)、ステップS11へ移行し、同様の処理を行う。このステップS7及びステップS11の処理により、脅威度が主な理由となって対象艦船に割り当てられていた対象目標物は、より最適な艦船へ割当られることとなる。
【0097】
他方、再火力配分処理対象抽出部16は、ステップS7で現在の対象目標物の脅威度が閾値Hを超えていることを確認した場合には(ステップS7のNO方向)、再火力配分を実行しても同じ艦船へ割り当てられる可能性が高いため、再火力配分が不要であると判断し、ステップS8へ移行する。
【0098】
そして、再火力配分処理対象抽出部16は、ステップS8では、対象目標物の速度が割当時から比較的大きく変化すると、対象艦船の対処可能時間に大きな影響を与えるため、対象艦船の目標物に対する対処可能時間を再計算し、部隊火力配分結果記憶部5の記憶内容を更新し、ステップS9へ移行する。
【0099】
この後、再火力配分処理対象抽出部16は、ステップS9では、部隊火力配分結果記憶部5の記憶内容に基づき、現時点で対象艦船の対処可能時間分の猶予があるか否かを確認する。このときに、再火力配分処理対象抽出部16は、対象艦船の対処可能時間分の猶予がないことを確認した場合には(ステップS9のNO方向)、ステップS11へ移行し、同様の処理を行う。このステップS9及びステップS11の処理により、時間的に対処が困難な艦船に割り当てられたままとなることを防ぐ。
【0100】
他方、再火力配分処理対象抽出部16は、ステップS9で対象艦船の対処可能時間分の猶予があることを確認した場合には(ステップS4のYES方向)、ステップS10へ移行する。そして、再火力配分処理対象抽出部16は、ステップS10では、対象艦船が対処目標物を対処可能であると判断し、即ち、対象目標物に関して再火力配分不要であると判断し、現在の割当状態を継続する。これにより、再火力配分処理対象抽出部16は、対象目標物に関する再火力配分の要否判断の処理を終了する。
【0101】
また、再火力配分処理対象抽出部16は、ステップS10又はステップS11の後に、他の目標物に関して、再火力配分の要否判断の処理を実行していない場合には、その実行していない目標物を新たな対象目標物として特定し、図11に示す一連の処理を繰り返す。
【0102】
さらに、以上の再火力配分処理対象抽出部16の処理によって目標物の割当が解除された後には、火力配分装置本体100における各機能7〜11が実施の形態1又は実施の形態2の処理を実行する。即ち、再火力配分処理対象抽出部16の処理によって艦船への割当が解除されることによって、火力配分装置本体100における各機能7〜11が、再火力配分を実行する。他の構成及び動作は、実施の形態1又は実施の形態2と同様である。
【0103】
上記のような火力配分装置では、再火力配分処理対象抽出部16によって、いずれかの艦船へ割当済の目標物について再火力配分が必要であると判定された場合に、その目標物の艦船への割当を解除する。割当が解除された目標物について、火力配分装置本体100における各機能7〜11によって再び火力配分が実行される。この構成により、割当時からの状態変化に応じて、その目標物を対処予定の艦船がより最適な艦船へ変更されることから、目標物を撃墜しにくい艦船へ割り当てられたままになることによる撃ち漏らしの発生を防止することができる。これとともに、目標物への対処遅延の発生を防止することができる。これに加えて、より最適な艦船が選択されることによって、より最適な残弾数や火力負荷の均等化を図ることができる。
【0104】
ここで、実施の形態4の火力配分装置のように割当済の目標物の一部を抽出して再火力配分を実行する方式以外にも、割当済の目標物を含めた全ての目標物を処理対象として火力配分処理を火力配分実行部10が実行する方式(以下、「比較方式」とする)が考えられる。しかしながら、この比較方式の場合には、次のような問題点がある。
【0105】
比較方式では、状態変化が小さい割当済の目標物は、再火力配分を実行しても同じ艦船へ割り当てられる可能性が高く、その再火力配分が結果的に無駄な処理となる可能性が高い。また、比較方式では、その目標物に対する全艦船の脅威度を算出し直す必要があり、一般的に、その算出処理の計算量は比較的大きくなる。さらに、火力配分処理は定期的に実行されるため、有限時間内にその処理を完了する必要がある。
【0106】
これらの問題点に対して、実施の形態4の火力配分装置では、変化量が比較的大きな目標物のみを再火力配分処理の対象とするので、処理の無駄を抑えることができるとともに、再火力配分処理に要する時間を比較方式よりも短縮させることができる。また、脅威度の再計算の対象も限定されることから、算出処理の計算量の増加を抑えることができる。
【0107】
また、比較方式のように全ての目標物に対して常に火力配分処理を実行する場合には、ある目標物を対処予定の艦船が頻繁に変更される可能性があり、ユーザが介入しづらくなり、ユーザの意思決定を火力配分処理の結果に反映させることが困難になるという問題も生じる。これに対して、実施の形態4の火力配分装置では、目標物の割当先の変更をある程度限定していることから、ユーザが比較的容易に介入することができ、ユーザの意思決定を火力配分処理の結果に比較的容易に反映させることができる。
【0108】
なお、実施の形態4の再火力配分処理対象抽出部16に関する構成を実施の形態3の火力配分装置本体100に適用することもできる。即ち、実施の形態4の再火力配分処理対象抽出部16と、実施の形態3の重複判定部15とを併用することもできる。
【0109】
また、実施の形態4では、図11に示すように、割当時から現在までの対象目標物の状態変化量(ステップS3,4,6,7)と、割当時から現在までの対象艦船の状態変化量(ステップS1,2,5,9)との両方が、再火力配分の要否判断の基準となっていた。しかしながら、この例に限定するものではなく、これらのいずれか一方のみを再火力配分の要否判断の基準として用いていてもよい。
【0110】
さらに、実施の形態1〜4では、移動体として艦船(自艦及び他艦)を用いたが、本発明の移動体は、艦船等の水上の移動体に限るものではない。例えば、航空機及びヘリコプター等の空中の移動体や、潜水艦等の水中の移動体や、車両等の陸上の移動体を、本発明の移動体として用いたり、それらの複数種の移動体を組み合わせて用いたりしても、実施の形態1〜4と同様の効果を得ることができる。
【0111】
また、実施の形態1〜4では、各艦船のセンサ部によるセンサ観測データ(探知情報)を船団内で共有していたが、探知情報の発生源は、各艦船のセンサ部に限るものではない。例えば、探知情報の発生源は、AWACS(Airborne Warning And Control System:早期警戒管制機)又は監視衛星であってもよい。この他にも、レーダ、AWACS又は監視衛星等を複合して組み合わせて、探知情報の発生源としてもよい。
【符号の説明】
【0112】
1 センサ部(探知装置)、2 部隊センサ情報収集部、3 センサ情報統合記憶部、4 部隊情報受信部、5 部隊火力配分結果記憶部、6 部隊火器情報記憶部、7 火力配分処理対象抽出部、8 脅威度/会合確率算出部(脅威度算出部)、9 火力配分処理対象分類部、10 火力配分実行部、11 火力配分結果記憶部、12 火器情報記憶部、13 火器情報更新部、14 情報送信部、15 重複判定部、16 再火力配分処理対象抽出部、100 火力配分装置本体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
目標物を射撃する火器が搭載された複数の移動体のそれぞれに配備され、前記複数の移動体で共有される前記目標物の探知情報に基づいて、その探知情報に含まれる複数の前記目標物の一部を、自身の前記移動体の前記火器の射撃目標として、前記自身の移動体に割り当てる火力配分装置であって、
前記火器の残弾数の情報、及び前記火器の同時に射撃可能な最大値の情報を含む火器情報を、前記移動体同士の間で送受信する情報送受信部と、
前記情報送受信部によって受信された他の前記移動体の前記火器情報、及び前記自身の移動体の前記火器情報をそれぞれ記憶する情報記憶部と、
前記探知情報に基づいて、前記目標物が前記移動体に及ぼす予測被害に関する指標である脅威度を、前記移動体毎及び前記目標物毎に算出する脅威度算出部と、
前記探知情報に含まれる複数の前記目標物のうち、前記自身の移動体に対する前記脅威度が予め設定された閾値を超える前記目標物を、前記自身の移動体が対処する前記目標物の集合である自身対処グループに、前記自身の移動体に対する前記脅威度が前記閾値以下である前記目標物を、前記自身の移動体と前記他の移動体とが互いに分担して対処する前記目標物の集合である分担対処グループにそれぞれ分類する対象分類部と、
前記自身対処グループに属する前記目標物を、前記自身の移動体の前記火器の射撃目標として、前記自身の移動体に割り当てる火力配分実行部と
を備え、
前記火力配分実行部は、前記情報記憶部に記憶されている前記火器情報に基づいて、前記目標物を対処した後の前記移動体の前記火器の残弾数を最小化し、前記複数の移動体が同一の前記目標物に対して射撃を行うオーバーシュートの数を最小化するように、前記分担対処グループに属する全ての前記目標物を前記複数の移動体のそれぞれに割り当てて、前記自身の移動体に割り当てた前記目標物を、前記自身の移動体の前記火器の射撃目標として設定する
ことを特徴とする火力配分装置。
【請求項2】
前記火力配分実行部は、前記情報記憶部に記憶されている前記火器情報に基づく前記他の移動体の前記火力負荷が、予め設定された火力負荷閾値以下であることを確認した場合に、前記火力負荷が前記火力負荷閾値を超過している前記他の移動体に割り当てられている前記目標物を、前記自身の移動体に割り当てて、その目標物を前記自身の移動体の前記火器の射撃目標として設定する
ことを特徴とする請求項1記載の火力配分装置。
【請求項3】
前記情報送受信部によって前記他の移動体との間で前記火器情報とともに前記他の移動体から受信されて前記情報記憶部に記憶される情報であり前記他の移動体の前記火器に設定されている射撃目標を示す火力配分結果の情報と、前記火力配分実行部による前記自身の移動体の前記火器への前記目標物の火力配分結果の情報とに基づいて、前記自身の移動体及び前記他の移動体の前記火器同士の射撃目標が重複しているか否かを判定する重複判定部
をさらに備え、
前記火力配分実行部は、前記重複判定部によって前記自身の移動体及び前記他の移動体の前記火器同士の射撃目標が重複していると判定された際に、前記自身の移動体及び前記他の移動体の対処可能時間を比較し、前記自身の移動体の対処可能時間の方が前記他の移動体よりも大きいことを確認した場合に、その重複している射撃目標について、前記自身の移動体の前記火器の射撃目標としての設定を解除する
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の火力配分装置。
【請求項4】
前記探知情報には、前記複数の移動体のそれぞれの現在位置及び現存状態を示す情報が含まれており、
前記探知情報、前記情報送受信部が前記他の移動体から受信する情報、及び前記情報記憶部が記憶する情報の少なくともいずれか1つを用いて、前記複数の移動体のうちいずれかの前記移動体に割当済の前記目標物、及び前記割当済の目標物を対処予定の前記移動体のそれぞれの状態変化を監視し、その割当時から現在までの前記割当済の目標物の状態変化量、その割当時から現在までの前記対処予定の前記移動体の状態変化量、及び所定の再火力配分基準の少なくともいずれか1つに基づいて、再火力配分の要否を判定する再火力配分処理対象抽出部
をさらに備え、
前記再火力配分処理対象抽出部は、前記割当済の目標物について再火力配分が必要であると判定した場合に、
前記割当済の目標物についての前記対応予定の移動体への割当を解除するとともに、
前記割当済の目標物が前記自身の移動体の前記火器の射撃目標として設定されているときには、その設定を解除し、
前記脅威度算出部、前記対象分類部及び前記火力配分実行部は、前記再火力配分処理対象抽出部によって前記移動体への割当が解除された前記目標物に対して、それぞれの処理を実行する
ことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の火力配分装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−2172(P2010−2172A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−117738(P2009−117738)
【出願日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】