説明

火災の危険性を減少させるための不活性化方法

防火または消火システムの故障の際に、この不活性化方法は、密閉された保護領域内の火災の危険性を低減させ、ここで、非常動作段階は、そこにある可燃材料の着火及び/又は再着火を防止するために十分に長いので、その領域の酸素濃度は、特定の期間において動作濃度以下に位置する制御濃度に維持されることができる。制御濃度は、予備の第2供給源によって非常動作段階において維持される。あるいは、制御濃度と動作濃度は、安全マージンを形成し、第1供給源の故障の際に設計濃度まで低減されることができ、酸素含有量の成長曲線は、所定期間内にその領域に対して決定された制限濃度に達し、それは、可燃材料の着火及び/又は再着火を防止し続けるために十分に長い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、密閉された保護領域内の火災の危険性を低減させる不活性化装置及び方法に関するものであり、保護領域内の酸素濃度は、第1供給源から酸素置換気体を供給することによって、定義される制御範囲を用いて定義される期間にわたって動作濃度以下に位置する制御濃度に維持される。
【背景技術】
【0002】
密閉された領域における防火又は消火のための不活性化方法は、消火技術として知られている。この方法を用いて得られる消火の効果は、酸素置換の原理に基づいている。標準の周囲空気が21体積%の酸素と78体積%の窒素と1体積%の他の気体とからなることは知られている。消火目的において、影響を受ける領域内の窒素濃度は、例えば不活性気体として純粋な窒素を供給することによってさらに増加され、それによって酸素濃度は低減される。酸素濃度が約15体積%以下に落ちた場合に消火効果が達成されるということは周知の事実である。影響を受ける領域に存在する可燃物に依存して、酸素濃度のさらなる低下、例えば12体積%への低下は要求されるかも知れない。この酸素濃度において、ほとんどの可燃物はもはや燃焼することができない。
【0003】
この“不活性気体消火システム”で使用される酸素置換気体は、通常、特別の付属空間内のボンベ内に圧縮状態で保管される。さらに、酸素を置換する気体を製造する装置を使用することが考えられる。これらのボンベ、及び/又は、酸素を置換する気体を製造するこの装置は、不活性気体消火システムの第1供給源を構成する。ここで必要であれば、それから、その気体は第1供給源からパイプシステム及び相当する吐出しノズルを介して影響を受ける領域に導入される。
【0004】
その関連する不活性気体消火システムは、通常、第1供給源から測定領域に酸素置換気体を急激供給するための装置と空気中の火災パラメータを検知するための火災検知装置とを少なくとも含む。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、第1供給源に影響する故障が発生した場合でも保護領域内の可燃物の着火または再着火を効果的に防止することができる不活性化方法及び不活性気体消火システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
最も高く可能な安全レベルにおいて完全な防火及び/又は不活性気体消火システムを設計することは、安全要求に応じるために故障の結果としてシステム停止の場合を考慮した装備と詳細な調整(ロジスティック)を必要とする。防火及び/又は不活性気体消火システムのプロジェクト設計段階において、そのシステムを可能な限り急速で円滑に再始動させることができる全ての尺度が考慮されるものの、不活性気体技術による不活性化は、特定の問題を付随し、安全機構の性能の観点で明らかな限界がある。所定の動作濃度以下である制御濃度への保護領域内の酸素濃度の低下段階及び/又は制御段階中における故障の可能性が比較的低くなるように不活性気体消火システムを設計することが可能であることが分かり、特に従来技術から知られる不活性化方法は、もし故障が原因で第1供給源が完全に、又は少なくとも部分的に機能しなくなった場合に、保護領域内の酸素濃度の再着火防止レベルが早期に超過されることを防止する可能性を提供しないので、制御濃度は延長された期間、いわゆる非常動作段階において要求されたレベルに維持されなければならないということをその問題はしばしば生じる。
【0007】
再着火段階とは、消火段階に続く期間を示し、その期間において保護領域内の酸素濃度は、保護領域内に存在する材料の新たな着火を防止するために、定義されるレベル(いわゆる、再着火防止レベル)を超えてはいけない。再着火防止レベルは、保護領域内の火災荷重に依存し、実験に基づいて決定される酸素濃度である。独VdS指針(German VdS Guideline)によると、保護領域に放水した時、保護領域内の酸素濃度は、放水の開始(消火段階)に続く最初の60秒間以内に例えば13.8体積%の再着火防止レベルに到達しなければならない。さらに、再着火防止レベルは、消火段階の終点に続く10分間以内に超過されてはならない。このため、消火段階において保護領域内で火災が完全に消火されることが提供される。
【0008】
従来文献から知られる不活性化方法で検知信号が発せられると、酸素濃度は可能な限り急速にいわゆる動作濃度まで低減される。要求される不活性気体は、不活性気体消火システムの第1供給源によって提供される。“動作濃度”という用語は、いわゆる設定濃度以下のレベルとして解釈されるべきである。設定濃度は、保護領域内に存在するあらゆる材料の燃焼が効果的に防止される保護領域内の酸素濃度である。保護領域の設定濃度を定義するとき、安全目的において一般的に、保護領域内のあらゆる材料の燃焼が防止される限界からマージン(余裕分)が差し引かれる。保護領域内で動作濃度に達すると、酸素濃度は、動作濃度以下の制御濃度に通常維持される。
【0009】
制御濃度は、不活性化された保護領域内の残留酸素濃度における制御範囲であり、再着火段階において酸素濃度はその範囲内に維持される。制御範囲は、上限、すなわち不活性気体消火システムの第1供給源における開始(オン)閾値と、下限、すなわち不活性気体消火システムの第1供給源における停止(オフ)閾値とで定義される。再着火段階において、制御濃度は、不活性気体を繰り返し供給することによってこの制御範囲内に維持される。不活性気体は、通常、第1供給源の役割をする不活性気体消火システムの収容器、すなわち、酸素置換気体を製造する装置(窒素発生器のような)、ガス容器、または、バッファ装置から提供される。故障または不具合の際には、保護領域内の酸素濃度が時期尚早に増加し、再着火防止レベルが超過され、それによって再着火段階が短縮され、保護領域内の火災が完全に消火される保証を排除するだろう。
【0010】
不活性気体消火システム及び/又は不活性化方法の安全要求事項に関する上述の問題から進んで、第1供給源に影響する故障が発生した際にも保護領域内の可燃物の着火または再着火を効果的に防止するために非常動作段階が十分に長くなるように、文献の記載から知られ、上記に説明された不活性化方法をさらに発展させることは、本発明の目的である。本発明の他の目的は、本方法を実施するために対応する不活性気体消火システムを提供することである。
【0011】
この目的は、非常動作期間における制御濃度が第1供給源(主要供給源)の故障の際に第2供給源(補助供給源)によって維持されるという第1実施形態として上記のタイプの独創的な不活性化方法を用いて達成される。
【0012】
この目的は、さらに前述の不活性化方法を用いて達成され、制御濃度と動作濃度は、保護領域の所定の設定濃度の下まで低減され、故障安全マージンを形成し、第1供給源の故障の際に、酸素含有量の成長曲線は、所定の時間内のみで保護領域の所定の制限濃度に達する。
【0013】
さらに、本発明に内在する技術的な問題は、上記の方法を実行するための装置を用いて解決され、その装置は、第1供給源及び/又は第2供給源が酸素置換気体を製造する装置、バッファ容器(バッファボリューム)、脱酸素機または類似物からなる。
【0014】
本発明の利点は、簡単に使用できると同時に、密閉された保護領域内で火災の危険性を減少させるための非常に効果的な不活性化方法を達成することができ、故障、すなわち、例えば第1供給源の故障の場合でさえも、保護領域内の制御濃度を調整するために使用される不活性気体が供給され始め、制御濃度は第2供給源(第1実施形態)によって非常動作期間に維持される。
【0015】
本明細書中における“第1供給源”という用語は、窒素発生器、不活性気体が圧縮形態で存在する気体容器(ガスボトル)アレイ、または、異なる種類のバッファ容器のような不活性気体容器を示すものとして解釈されるべきである。
【0016】
本発明の重要な一側面は、2つのシステムを互いに分離させ、不活性化方法の故障の多発性を低下させるために、第2供給源が第1供給源の予備として構成されるということである。このため、第2供給源は、第1供給源の故障の際に非常動作期間において制御濃度を維持するために設計され、その期間は、保護領域内において、例えば少なくとも10分間の再着火段階、または8時間の非常動作段階を提供することができるように十分に長く、その間、保護領域内の酸素濃度は再着火防止レベルを超えないことが提供される。勿論、第2供給源をあらゆる任意の非常動作期間に一致させることが考えられる。
【0017】
第2実施形態は、制限濃度が例えば保護領域における再着火防止レベルになるように設定される。これは、保護領域の可燃材料がもはや再着火されないことを保証するレベルの酸素濃度である。ある特定の期間の後にのみ酸素濃度の成長曲線が閾値レベルに達するので、最初から動作濃度を大幅に低減させることが提供される。この所定の期間は、例えば、消火システムにおいては10、30または60分であり、防火システムにおいては8、24または36時間であり、予備部品を持った保守技術員が到着し、再着火段階及び/又は非常動作段階の実施を可能にするまで、酸素濃度は、再着火防止レベルを超えることはなく、従って、保護領域内の可燃材料の着火及び/又は再着火を効果的に防止する。保護室(領域)の設定濃度以下に動作濃度を定義することによって動作濃度を低減することは、故障安全マージンを形成し、本発明による不活性化方法の上記の実施形態に対する代替案を提供し、第1供給源が故障した場合における非常動作期間において、所定の値以下に、好ましくは再着火防止レベル以下に酸素濃度が維持されることを同様に保証する。
【0018】
勿論、2つの手段を結合することも考えられる。非常動作期間を延長するために、動作制限、例えば一時的なアクセスの制限のような更なる手段を採ることも可能である。
【0019】
本発明による装置は、前記の方法を実施する可能性を提供する。このために、第1供給源及び/又は第2供給源は、酸素置換気体を供給する装置、不活性気体が圧縮形態で存在するシリンダー配列(シリンダアレイ)、他のタイプのバッファ容器または酸素除去装置、または、その類似物のようなあらゆる容器である。酸素置換気体を供給する代わりに、例えば燃料電池によって、その領域の空気中から酸素を除去することが考えられる。トラック上に蒸発器を有する消化剤タンクのように、固定型及び移動型の両方の設置が第2供給源として可能である。第1供給源と第2供給源との切り替えは、手動でも自動でも行われる。
【0020】
ある好ましい方法では、動作濃度は、保護領域における所定の設定濃度と等しいか実質的に等しい。さらに本方法を発展させると、この方法は、保護領域における不活性気体及び/又は消化剤の消費を、動作濃度が保護領域内の酸素濃度において定義され、その濃度において保護領域の材料がもはや着火されない最適なレベルに低減させることを可能にする。設定濃度を定義するとき、保護領域の材料がもはや可燃性ではなくなる濃度からマージンを推論することは好ましい。
【0021】
故障安全マージンは、その保護領域に適切な換気回数、特に保護領域におけるn50レベル、及び/又は、保護領域と周囲領域との間の圧力差を考慮して決定されることが特に好ましい。影響を受ける保護領域への本発明による方法の最良の可能な適応を可能にするために、目的領域のn50値が増加するにつれて、故障安全マージンは増加するように提供される。
【0022】
特に好ましい実施形態では、設定濃度は、そのシステムの安全保障機構の性能をさらに増加させるために、保護領域において定義された制限濃度以下に安全マージンによって低減されることが提供される。このように、例えば、第2供給源が用意されるまでの期間、その酸素濃度が再着火防止レベル及び/又は制限濃度以下であり続けることが保障される。制限濃度及び/又は換気回数n50を考慮して安全マージンを決定することが考えられ、これは、S=α([OLuft]−GK)を意味し、ここで、Sは安全マージンであり、[OLuft]は保護領域の空気の酸素濃度であり、GK=再着火防止レベルであり、αは所定の因子である。従って、α=20%、[OLuft]=20.9体積%、GK=16体積%において、安全マージンはS=1体積%になり、α=20%、[OLuft]=20.9体積%、GK=13体積%において、安全マージンはS=1.6体積%になる。
【0023】
さらに、特に好ましい実施形態では、火災パラメータを検知するために検知器が提供され、ここで、もし酸素濃度が予め高いレベルであって、ぼや又は火災が検知されたとき、保護領域の酸素濃度は、急速に制御濃度まで低減される。
【0024】
本発明による不活性化方法をさらに設計することによって、例えば多段式の不活性化方法を実施することも可能である。
【0025】
本発明によれば、保護領域は初めにそれ相応により高いレベルを有し、例えば、人間がそこに進入することは可能である。より高いこのレベルはその領域の空気の濃度(21体積%)であるか、初期又は基本不活性化レベル、例えば17体積%である。第1に、保護領域の酸素濃度は、例えば17体積%の所定の基本不活性化レベルに低減され、そして、それから、さらに火災時の制御濃度である特定の完全不活性化レベルまで低減される。酸素濃度が17体積%の基本不活性レベルは、人間や動物を如何なる危険にも晒さないので、依然として彼らは困難なくその部屋に入ることができる。完全不活性化レベル及び/又は制御濃度は、ぼや(初期火災)の検知に続いて調整されることができ、しかしながら、いずれにしてもその影響される部屋に人間が入らない夜間においてこのレベルを調整することが考えられる。濃度制御を用いて保護領域内の全ての材料の可燃性は、その材料がもはや可燃物ではなくなるまで低減される。予備の第2供給源を提供すること、あるいは、その上に酸素濃度を低減することによって、ここで第1供給源の故障の際でさえも十分な防火が補償されるので、不活性化方法の安全保障機構の性能がさらに増加されることが有利に達成される。
【0026】
制御範囲は、好ましくはおおよそ±0.2体積%であり、保護領域内の制御濃度の前後0.2体積%の酸素濃度でしかない。これは上限及び下限閾値によって定義される範囲であり、約0.4体積%であり、好ましくは0.4体積%しか離れていない。2つの閾値は、第1供給源が故障した際に目的値を維持し、又は達成するために、第2供給源が作動又は停止される残留酸素濃度を設定する。勿論、制御範囲において桁違いの値も同様に考えられる。
【0027】
影響される保護領域に対する不活性化方法の最良の可能な適用を達成するために、保護領域の酸素濃度は、換気回数、特に保護領域のn50レベル、及び/又は保護領域と周囲領域との間の圧力差を考慮して制御されることが本発明による好ましい不活性化方法では提供される。これは、50Paの周囲領域に対して生じた圧力差において現在の体積に対する生成された漏れ体積流量の関係を設定するレベルである。そのため、n50レベルは、保護領域の気密度の尺度であり、したがって、第1供給源の安全機構性能の観点で不活性気体消火システムの寸法決定及び/又は不活性化方法の設計において重要な変数である。
【0028】
50レベルは、保護領域を画定する包囲構成物の気密性を算定することができるように、いわゆるブロワドア測定(blower door measurement)によって決定されることが好ましい。このため、10から60Paの標準化された高圧力または低圧力が保護領域内で生成される。空気は、包囲構成物の漏れ表面を通って外側に漏れ、又は、そこから浸透する。対応する測定装置は、測定に必要な圧力差、例えば50Paを維持するために要求される体積流量を測定する。その後、測定プログラムは、標準化された方法で生成された50Paの圧力差に関係するn50値を算定する。ブロワドア測定は、本発明による不活性化方法の具体的な設計の前に、特に本発明によって提供される、第1供給源の予備である第2供給源の設計の前に、及び/又は、他の不活性化方法の故障安全マージンの設計の前に実行されるべきである。
【0029】
本発明による方法の特に好ましい更なる発展では、保護領域内の制御濃度を維持するために必要な消火剤量は、n50換気回数を考慮して算出される。従って、n50値の関数として第1供給源及び/又は第2供給源の総量や容量を設計することは可能であり、そのために保護領域にそれを正確に適用することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
本発明による方法は、ここに図を参照してより詳細に説明される。
【0031】
図1は、本発明に従う不活性化方法の第1実施形態による酸素含有量の動作濃度と制御濃度とを有し、第2供給源によって維持される、保護領域における酸素濃度の時間に対する経過の部分図を示す。
【0032】
図2は、本発明に従う不活性化方法の第2実施形態による酸素含有量の動作濃度と制御濃度とを有し、保護領域の設定濃度以下に低減される、保護領域における酸素濃度の時間に対する経過の部分図を示す。
【0033】
図3は、第1の不活性化方法で実施される、本発明に従う方法の第2実施形態による保護領域の酸素濃度の経過図を示す。
【0034】
図1は、本発明に従う不活性化方法の第1実施形態による酸素含有量の動作濃度BKと制御濃度RKとを有し、第2供給源によって維持される、保護領域における酸素濃度の時間に対する経過の部分図を示す。図示されたグラフにおいて、y軸は保護領域における酸素含有量を示し、x軸は時間を示す。この場合、保護領域の酸素含有量は、いわゆる完全不活性レベル、すなわち、動作濃度BKより低い制御濃度RKまで既に低減されている。
【0035】
図1に概略的に示された想定(シナリオ)では、動作濃度BKは設定濃度AKに正確に一致する。設定濃度AKは、その保護領域に特有の制限濃度GKより原則的に低い、保護領域における酸素濃度値である。制限濃度GKは、しばしば“再着火防止レベル”とも称させるが、それは、所定の物質が所定の発火源を用いてももはや着火されない、保護領域の雰囲気の酸素濃度に関連する。制限濃度GKのそれぞれの値は、実験的に決定されなければならず、設計濃度AKを決定するための基準になる。このため、安全マージンは制限濃度GKから推定される。
【0036】
原則、動作濃度BKは、設定濃度AKを超えてはならない。不活性気体消化システム及び/又は採用した不活性方法に安全概念(セーフティコンセプト)を考慮して、動作濃度BKは求められている。不活性気体消化システムの運転費(オペレーティングコスト)を可能な限り低く維持するために、所望の保護レベル以上の酸素濃度のいかなる減少も消化剤及び/又は不活性気体の増加された使用に関連するので、動作濃度BKと設計濃度AKとの間のマージンを可能な限り小さくすることが好ましい。
【0037】
図1に示された酸素濃度の時間に対する経過では、さらに、制御濃度RKが提供され、それは制御範囲の中心に位置し、制御範囲の上限は、動作濃度BKに一致している。制御濃度RKは、保護領域内で酸素濃度によって変動されるある濃度値を示す。その変動は制御範囲内で起こるように提供される。制御範囲内の酸素含有量が上限値(この場合、動作濃度BK)に達すると、その後、不活性気体を供給することによって制御範囲の下限値に達するまで保護領域内の酸素含有量が再び低減されるとすぐに保護領域への不活性気体のさらなる供給は中断される。従って、制御範囲の上限値は、不活性気体を供給するための上限閾値に一致し、調整範囲の下限値は、保護領域への不活性気体のさらなる供給が中断される下限閾値に一致する。すなわち、上限閾値は、第1または第2供給源の起動点に一致し、下限閾値は、第1または第2供給源の停止点に一致する。
【0038】
本発明によれば、第1供給源の故障の場合でさえも、十分に長い間、制御濃度RK前後の制御範囲内に酸素濃度が維持されるということが提供される。このために、第2供給源は第1供給源の予備として配置されるということが提供される。保護領域の酸素含有量が設定濃度AKを超えない、従って、保護領域内の材料の着火が引き続き防止される非常動作段階が十分に提供されるように、第1供給源から不活性気体が供給される時間、及び、第1供給源の故障の際に第2供給源によって制御濃度RKが維持される非常動作期間は、長いことが好ましい。
【0039】
図2は、本発明に従う不活性化方法の第2実施形態による酸素含有量の動作濃度BKと制御濃度RKとを有し、保護領域の設定濃度AK以下に低減される、保護領域における酸素濃度の時間に対する経過の部分図を示す。図1との相違点は、この場合には設定濃度AKが動作濃度BKと一致しないということである。それどころか、関連のある制御範囲に加えて、動作濃度BKと制御濃度RKは、故障安全マージン(ASA:failure safety margin)に相当する設計濃度AKと動作濃度BKとの間のマージンに伴って下方に移動される。図2に示された想定(シナリオ)では、保護領域内の酸素濃度は、第1供給源をオンまたはオフすることによって制御濃度RK前後の制御範囲内に維持される。このために、第1供給源の故障の際に、保護領域の酸素濃度の成長曲線が所定の期間内でのみ制限濃度BK及び/又は再着火防止レベルに達するように故障安全マージンASAは選択されるということが提供される。この期間は、好ましくは非常動作段階が保証されるように選択され、防火及び/又は消火システムが再始動される前に保護領域内の着火及び/又は再着火を防止し続けるために十分に長い。
【0040】
図3は、ここで実施された不活性化方法で本発明に従う方法の第2実施形態による保護領域の酸素濃度の経過を示す。上記の図1及び図2に既に説明されたように、y軸は保護領域内の酸素濃度を示し、x軸は時間を示す。図3に示されるように、最初は、保護領域内は21体積%の酸素濃度である。
【0041】
時刻tにおける防火システムの開始によって続く初期予防低下段階によって、保護領域内の酸素濃度は制御濃度RKまで急速に低減される。図示されるように、保護領域内の酸素濃度は、時刻tにおいて再着火防止レベル及び/又は制限濃度GKに達し、時刻tにおいて制御濃度RKに達する。tからtまでの期間は、初期低下段階と称される。
【0042】
保護領域内に存在する材料が初期低下段階に続いて着火することを防止するために、防火段階は、効果的な防火のために初期低下段階の直ぐ後に続いて行われる。この段階中、保護領域内の酸素濃度は、再着火防止レベル及び/又は制限濃度GK以下に維持される。通常、不活性気体及び/又は酸素置換気体は、制御濃度RKの前後及び/又は動作濃度BK以下に制御範囲内の酸素濃度を維持するために必要とされるので、第1供給源から保護領域に供給される。
【0043】
第1供給源が故障の場合には、本発明によれば、制限濃度GKと動作濃度BKとの間の故障安全マージンASAが非常に大きいので、酸素濃度の成長曲線は、所定期間z内に制限濃度GKまでしか達せず、従って、十分に長い非常動作段階を実現することができるということが提供される。
【0044】
説明目的のために、図3は図2の拡大で示された部分を示すことを指摘する。
【0045】
本発明の典型的な実施形態が記述されたが、ここで様々な修正が行われ得ることは当業者にとって明らかであり、添付された特許請求の範囲はその目的の範囲内でそのような修正や変形を含むものである。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明に従う不活性化方法の第1実施形態による酸素含有量の動作濃度と制御濃度とを有し、第2供給源によって維持される、保護領域における酸素濃度の時間に対する経過の部分図を示す。
【図2】本発明に従う不活性化方法の第2実施形態による酸素含有量の動作濃度と制御濃度とを有し、保護領域の設定濃度以下に低減される、保護領域における酸素濃度の時間に対する経過の部分図を示す。
【図3】第1の不活性化方法で実施される、本発明に従う方法の第2実施形態による保護領域の酸素濃度の経過図を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1供給源から酸素置換気体を供給することによって保護領域内の酸素濃度が所定の制御範囲を用いて所定の期間にわたって動作濃度(BK)以下に位置する制御濃度(RK)に維持される、密閉された保護領域内における火災の危険性を減少させるための不活性化方法であり、
非常動作期間における前記制御濃度(RK)は、前記第1供給源の故障の際に第2供給源によって維持されることを特徴とする不活性化方法。
【請求項2】
前記動作濃度(BK)は、前記保護領域に対して定義される設定濃度(AK)と等しいか実質的に等しいことを特徴とする請求項1に記載の不活性化方法。
【請求項3】
前記制御濃度(RK)と動作濃度(BK)は、前記保護領域に対して定義される前記設定濃度(AK)以下まで低減され、故障安全マージン(ASA)を形成し、前記第1供給源の故障の際に、前記酸素濃度の成長曲線は、所定時間内のみで前記保護領域に対して定義される制限濃度(GK)に達することを特徴とする請求項1に記載の不活性化方法。
【請求項4】
前記故障安全マージン(ASA)は、前記保護領域における適切な換気回数、特に前記保護領域におけるn50値、及び/又は、前記保護領域と周囲領域との間の圧力差を考慮して決定される、請求項3に記載の不活性化方法。
【請求項5】
前記設定濃度(AK)は、安全マージン(S)によって前記保護領域に対して定義される前記制限濃度(GK)以下に低減される、請求項3または4に記載の不活性化方法。
【請求項6】
火災パラメータを検知するための検知器をさらに含み、
前記保護領域内の酸素濃度は、前記酸素濃度が予め高かった場合に、ぼや又は火災を検知することによって急速に前記制御濃度に低減される、請求項2〜5の何れか一項に記載の不活性化方法。
【請求項7】
前記制御範囲は、前記制御濃度(RK)の前後において酸素濃度の約±0.2体積%である、請求項1〜6の何れか一項に記載の不活性化方法。
【請求項8】
前記保護領域内の酸素濃度は、前記換気回数、特に、前記保護領域のn50値、及び/又は、前記保護領域と周囲領域との圧力差を考慮して制御される、請求項1〜7の何れか一項に記載の不活性化方法。
【請求項9】
前記保護領域内の制御濃度(RK)を維持するための前記消化剤は、前記目的領域の換気回数、特に、前記保護領域のn50値、及び/又は、前記目的領域と周囲領域との圧力差を考慮して算定される、請求項1〜8の何れか一項に記載の不活性化方法。
【請求項10】
前記第1供給源及び/又は第2供給源は、酸素置換気体を製造する装置、シリンダー配列、バッファ容器、脱酸素装置、又は、その類似物であることを特徴とする請求項1〜9の何れか一項に記載の不活性化方法を実施するための装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2007−516755(P2007−516755A)
【公表日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−545948(P2006−545948)
【出願日】平成16年11月23日(2004.11.23)
【国際出願番号】PCT/EP2004/013285
【国際公開番号】WO2005/063337
【国際公開日】平成17年7月14日(2005.7.14)
【出願人】(506215250)アムロナ・アーゲー (16)
【Fターム(参考)】