説明

火災監視消火・放水制御システム

【課題】火災発生時にスプリンクラーからの放水を適切に止めることにより、不必要な放水による水損を抑え、住居の水浸しによる2次的な損害を防止する。
【解決手段】携帯端末20と通信可能で止水バルブ7を制御する制御装置11を備え、火災報知器9が火災発生を検知すると、制御装置11は、止水バルブ7を開けるとともに、携帯端末20に火災発生信号と温度センサ10による温度データおよび監視カメラ16による画像データを送信する。室温が72℃程度に上昇すると、スプリンクラー6から放水が開始され、制御装置11が、温度センサ10による室温低下を検知するか、または携帯端末20から放水停止信号を受信すると、止水バルブ7を閉めて放水を停止する。携帯端末20からの信号によりヒータ15に通電して放水を開始することもできる。スプリンクラーとして乾式開放型を使用することもできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スプリンクラーを備えた住宅用の火災監視消火・放水制御システムに関し、特に火災が発生した場合のスプリンクラーの作動を適切に制御することのできるシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
住宅火災における死傷者の多くは「逃げ遅れ」が原因であることが統計的に明かになっており、その予防のためには、火災発生をいち早く家人に報知し、状況に応じて初期消火に努めるか、または避難を開始することが肝要である。その対策として、まずは火災発生を報知するための火災報知器の設置が有効であり、行政においても、全国的には2006年6月から全ての新築住宅に住宅用火災警報器(火災報知器)を設置することが義務付けられるようになった。さらに、初期消火のための機器として、劇場などの不特定多数の人が出入りする施設や地上31メートルを越える建物あるいは一定床面積以上の防火対象物などにスプリンクラーの設置が義務付けられており、住宅にもその設置が推奨されている。このような住宅用スプリンクラーを使用した消火装置としては、例えば特許文献1に提案されている例がある。この装置は、火災感知器が異常を感知すると、その信号が制御部材に入力されてスプリンクラーを旋回させるとともに、炎検出器が炎を検出すると、その信号が制御部材に入力されて火災位置が判断され、散水ノズルがその火災位置の方向へ旋回して散水が行われるものである。この装置によれば、火災位置へスプリンクラーの散水ノズルを向けて散水するので、初期消火性能が向上するとともに、水損を少なくすることができると記載されている。また、特許文献2には、宅内の火災を検知して異常検知を出力する宅内システムと、この宅内システムと通信網を介して接続され、宅内システムから異常検知を入力して監視員に通知する監視センターとからなる火災監視システムが記載されており、宅内システムが火災を検知した場合には、そのことをインターネットを通じて複数の家人の携帯電話に通報する例が示されている。
【特許文献1】特開平7−8571号公報
【特許文献1】特開2005−115537号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来のスプリンクラーを使用した住宅用の消火システムでは、初期消火には有効であるが、スプリンクラーの放水を直ちに停止させる機能がないため、人が水道の元栓または止水バルブを止めない限り、水が出っぱなしになるという問題があった。火災が鎮火した後でも水が出っぱなしになることは、不必要な部分への水災害が発生し、アパートやマンションのような共同住宅では階下に水が漏れて2次的な損害を発生させることがあり、その弁済補償のために多大な費用がかかるという問題があった。また、従来の火災監視システムでは、火災の発生を携帯電話を通じて家人に通報できるものの、消火するシステムがないため、家人に通報したとしても、家人は急いで自宅に戻って消火器で消火するか、消防車が到着するもで待つしかなく、初期消火に手間取るという問題があった。
【0004】
本発明は、このような従来の問題を解決するためになされたもので、火災発生時にスプリンクラーからの放水を適切に制御することにより、スプリンクラーからの不必要な放水による水損を抑え、住居の水浸しによる2次的な損害を防止することができる火災監視消火・放水制御システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の火災監視消火・放水制御システムは、住宅内の水道配管に接続されて火災発生時に放水を行うスプリンクラーと、宅内の火災発生による第1の設定温度または煙を感知して火災発生信号を出力する火災報知器と、前記スプリンクラーの放水により宅内の雰囲気温度が前記設定温度よりも低い第2の設定温度に達したことを検出する温度センサと、前記水道配管に配備されて前記スプリンクラーへの給水を開閉する止水バルブと、前記火災報知器から火災発生信号を受信した後、前記温度センサにより第2の設定温度に達したことが検出された場合に、前記止水バルブを閉塞制御して前記スプリンクラーからの放水を停止する制御装置とを備えたことを特徴とする。
【0006】
この構成により、火災発生時にスプリンクラーからの放水を、温度センサからの温度情報により自動的にかつ適切なタイミングで止めることができ、スプリンクラーからの不必要な放水による水損を抑えることができ、住居の水浸しによる2次的な損害を防止することができる。火災報知器における第1の設定温度とは概ね60℃前後であり、温度センサにおける第2の設定温度とは概ね35℃前後であり、スプリンクラーが放水を開始する温度は72℃程度である。したがって、異常発熱があって室内の温度が60℃程度に上昇すると、火災報知器がこれを感知して警報ブザーを鳴らして家人に火災の危険を知らせ、家人がこれを応じて、例えば火元となるガス栓を締めたり、カーテンに燃え移った火を消したり、初期消火に努めることで、火災が大事に至るのを防止することができる。また、運悪く火が燃え上がった場合には、室温が上昇して72℃程度になると、スプリンクラーヘッドが熱により開いて放水が開始され、消火が行われる。消火により火災が鎮火すると室温が下がるので、その温度が35℃程度になると、その温度情報を制御装置11が受信して止水バルブを閉じるので、それ以上の放水が中止され、室内が水浸しになるのを防止することができる。
【0007】
また、本発明の火災監視消火・放水制御システムは、インターネットに接続されてデータ通信が可能な携帯端末を備え、前記制御装置は、前記携帯端末との間でデータの送受信が可能な通信機能を有し、前記火災報知器から火災発生信号を受信すると前記携帯端末に火災発生を報知し、前記携帯端末からスプリンクラー放水停止信号を受信するか、または前記温度センサにより第2の設定温度に達したことが検出された場合に、前記止水バルブを閉塞して前記スプリンクラーからの放水を停止することを特徴とする。この構成により、火災発生時にスプリンクラーからの放水を、温度センサからの温度情報または携帯端末からの放水停止信号により適切なタイミングで止めることができる。例えば、火災発生の報知を携帯端末で受けた家人が直ぐに自宅に戻って、火災の状況を見て室温が35℃に下がる前にスプリンクラーの放水を停止させることができる。または、制御装置から温度センサの温度データを10秒毎に携帯端末に送信して、携帯端末を携帯する家人がその温度情報を見ながら室温が35℃に下がる前に放水停止信号を送出してスプリンクラーの放水を停止させることができる。そのような操作ができない場合でも、室温が35℃に下がれば自動的にスプリンクラーの放水を停止させることができる。
【0008】
また、本発明の火災監視消火・放水制御システムは、前記制御装置に接続されて前記宅内に配備された監視カメラを備え、前記制御装置は、前記携帯端末に火災発生を報知する際に前記温度センサによる温度データおよび前記監視カメラによる画像データを共に送出することを特徴とする。この構成により、火災発生の報知を受けた携帯端末は、制御装置から送られてきた温度データおよび画像データを見て、適正なタイミングで放水停止信号を送出することができ、室温が35℃に下がる前でもスプリンクラーの放水を停止させることができる。
【0009】
また、本発明の火災監視消火・放水制御システムは、前記スプリンクラーまたはその近傍に前記制御装置に接続されて前記スプリンクラーに放水を開始させる温度に加熱するためのヒータと、前記制御装置に接続されて前記スプリンクラーからの放水を検出する放水検出手段とを備え、前記制御装置は、前記携帯端末からスプリンクラー放水開始信号を受信した場合に、前記ヒータに通電して前記スプリンクラーからの放水を開始させ、前記放水検出手段からの放水検出信号により前記ヒータへの通電を停止することを特徴とする。この構成により、火災発生の報知を受けた携帯端末は、制御装置から送られてきた温度データおよび画像データを見ながら火災発生時の状況に応じて、スプリンクラーからの放水を早めに行って火災による被害を最小限に抑えることができる。
【0010】
また、本発明の火災監視消火・放水制御システムは、住宅内の水道配管に接続されて火災発生時に放水を行う乾式開放型のスプリンクラーと、前記スプリンクラーの上流側の水道配管に設けられた止水バルブと、宅内の雰囲気温度を検出して出力する温度センサと、宅内の火災発生による熱または煙を感知して火災発生信号を出力する火災報知器と、前記火災報知器から火災発生信号を受信した後、前記温度センサにより火災が発生したことを示す第1の設定温度が検出された場合に、前記止水バルブを開放制御して前記スプリンクラーからの放水を開始し、前記温度センサにより火災が鎮火したことを示す第2の設定温度が検出された場合に、前記止水バルブを閉塞制御して前記スプリンクラーからの放水を停止する制御装置とを備えたことを特徴とする。この構成により、火災発生時にスプリンクラーからの放水を、温度センサからの温度情報により自動的にかつ適切なタイミングで開始および停止することができ、スプリンクラーからの不必要な放水による水損を抑えることができ、住居の水浸しによる2次的な損害を防止することができる。また、再燃した場合には、温度センサからの温度情報により再び放水を開始し、停止することができる。また、構成がより簡単になるので、低コストで効率的な火災監視消火・放水制御システムを実現することができる。さらに、制御装置は、火災報知器からの火災発生信号を家人が保持する携帯端末に送信することにより、スプリンクラーからの放水を、携帯端末から送られてきた放水開始信号に基づき開始し、放水停止信号に基づき停止させることができる。さらに、制御装置は、温度センサによる温度データおよび監視カメラによる画像データを携帯端末に送信することにより、携帯端末では外部から住宅内の火災の状況を把握することができ、携帯端末から放水開始信号または放水停止信号を適切なタイミングで送ることにより、スプリンクラーからの不必要な放水による水損および2次的な損害を効果的に防止することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、火災発生時にスプリンクラーからの放水を、温度センサからの温度情報または携帯端末からの信号により自動的にかつ適切なタイミングで制御することができ、スプリンクラーからの不必要な放水による水損を抑えることができるとともに、住居の水浸しによる2次的な損害を防止することができる。したがって、水浸しによる2次的な損害を憂慮するためにスプリンクラーの導入をためらう人々にもスプリンクラーの設置を促すことができ、火災による人的および物的損害を未然に抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
(第1の実施の形態)
以下、本発明の第1の実施の形態について、図面を用いて説明する。図1は本発明の火災監視消火・放水制御システムの全体構成を示す概略図である。図1において、この火災監視消火・放水制御システムは、住宅外の水道本管1に元栓を介して分岐部3により一般生活用給水管と分岐された合成樹脂製の分岐配管3を備え、この分岐配管3には、管内を流れる水量を検出する流量センサ4と、流量センサ4の下流側に分岐継手5を介して接続されたスプリンクラー6と、分岐継手5とスプリンクラー6との配管の途中に設けられた止水バルブ7とが配備され、分岐配管3の最下流には水洗便器8の給水口が接続されている。スプリンクラー6は、市販されている一般的な湿式構造のもので、室内温度が設定温度、例えば72℃になると、スプリンクラーヘッド内のフューズが溶けてデフレータが降下し、放水が開始されるものである。スプリンクラー6と同じ天井には火災報知器9および温度センサ10が取り付けられている。火災報知器9は、室内の温度が火災発生により第1の設定温度T1に達したかまたは火災による煙を感知して火災発生信号を出力する。温度センサ10は、スプリンクラー6の放水により室内の雰囲気温度が設定温度T1よりも低い設定温度T2に達したことを検知するためのものである。これらの流量センサ4、止水バルブ7、火災報知器9、温度センサ10は、制御装置11のインターフェース(IF)部12に接続されている。制御装置11は、宅内に配置された上記機器に接続されたIF部12から信号を受け取り、IF部12を介して各機器を制御するマイクロプロセッサまたはパソコンからなる制御部13と、外部との無線通信を行う無線部14とを備えている。制御部13としてパソコンを使用する場合、IF部12は使用する機器に付属しているものを使用することができ、無線部14は、パソコンに接続して使用するデータ通信可能な携帯電話、PHS、PDAなどを利用することができる。
【0013】
流量センサ4からの水量信号は、制御装置11において判定され、水洗便器8を使用した場合の流量ではオン信号を出力せず、スプリンクラー6が作動した場合の流量でオン信号を出力するように、しきい値が設定されている。止水バルブ7は、ソレノイドで制御される自動開閉弁であり、制御装置11からオン信号を受けてバルブを開放し、オフ信号を受けてバルブを閉塞する。火災報知器9は、熱式の場合、概ね60℃前後の設定温度T1の室温で火災発生信号を出力し、図示されない警報ブザーまたはベルを鳴動させる。警報ブザーまたはベルは、火災報知器9に設けても、宅内の別の箇所に配線を介して設けてもよい。温度センサ10は、熱電対、金属測温抵抗体、サーミスタなどの温度センサが使用され、パソコンに接続されて温度データをパソコンに取り込むように構成された市販の温度センサを使用することができる。なお、設定温度60℃(T1)、35℃(T2)および放水開始温度72℃は、本システムを使用する環境によって適宜変更され得るものである。
【0014】
制御装置11のIF部12にはまた、スプリンクラー6またはそれに近接して設けられたヒータ15と、室内を撮影して映像データを出力する監視カメラ16とが接続されている。ヒータ15は、温度立ち上がり特性の高いシーズドヒータがスプリンクラー6のフューズ近くに配置されており、制御装置11からの動作信号により通電を開始してスプリンクラー6を72℃程度まで加熱して放水させるとともに、分岐配管3に設けられた流量センサ4により、スプリンクラー6の放水開始を検出してその検出信号により通電を停止する。監視カメラ16は、CCDイメージセンサと信号処理部とを有するもので、映像信号をIF部12に出力し、制御部13で圧縮された画像データに変換する。制御装置11の無線部14は、制御部13に接続されたデータ通信が可能な携帯電話機、PHS、PDAなどであり、基地局17、インターネット18、基地局19をそれぞれ経由して、この住宅の家人が携帯する携帯端末20(携帯電話機、PHS、PDAなど)と無線通信が可能である。なお、図1には理解を容易にするために各機器が1台ずつ示されているが、図2に示すように、必要に応じて複数の部屋に配置された復数の機器が使用され、住宅内の複数階にそれぞれ設備することも可能である。監視カメラ16は居間や台所などに適宜配置される。また、火災報知器9に付属する警報ブザーまたはベルもまた住宅内の必要箇所に配置される。分岐配管3は、必要に応じてループ状に配管される。
【0015】
次に、本実施の形態における動作について、図1および図3を参照して説明する。通常状態においては、水道本管1からの水道水は、分岐部2から一般家庭用給水管を通じて台所や風呂場などに給水され、分岐管3を通じてスプリンクラー6および水洗便器8に給水されている。水洗便器8から日常的に分岐管3内の水が排出されることにより、分岐管3内に水が滞留するいわゆる「死に水」が防止される。止水バルブ7は、35℃程度の常温では閉じるように制御されているので、常温ではスプリンクラー6から放水されることはない。制御装置11は常に電源オンの状態にあり、宅内で火災が発生すると、その熱または煙により火災報知器9が作動し、火災報知器9からの火災発生信号が制御装置11に送出される(ステップS1)。これにより、制御装置11は、火災発生と判断し、メモリに登録された携帯端末20の電話番号および火災発生メッセージを読み出して携帯端末20に通知するとともに、止水バルブ7に信号を送って止水バルブ7を開放し、監視カメラ16の電源をオンする(ステップS2)。なお、監視カメラ16の電源は、制御装置11に連動して常時オンになるように設定してもよい。火災報知器9から火災発生信号が出力されるのは、室温が60℃の設定温度T1になった時であり、止水バルブ7が開いてもまだスプリンクラー6のフューズが溶けていないので、放水は開始されない。この温度T1は火災の初期段階であり、住宅内に家人が居れば、警報ブザーまたはベルが鳴るので火災発生を知ることができ、直ちに消火に必要な処置を取ることができる。
【0016】
監視カメラ16の電源がオンすると、監視カメラ16は室内の撮影を開始し、その映像信号を制御装置11に送り、制御装置11は、映像信号を携帯端末20に対応するMPEG、GIF、JPEGなどの方式を用いて圧縮された画像データに変換し、温度センサ10からの温度データとともに、10秒毎に携帯端末20に送信する(ステップS3)。なお、家人が複数員で構成され、それぞれが携帯端末20を携帯している場合には、それぞれの携帯端末20に送信し、最初に信号を送り返した携帯端末20に優先権を与えるものとする。携帯端末20を携帯する家人がこの住宅の近くに居る場合には、制御装置11からの火災発生の通報により直ちに家に駆けつけて消火に当ることができる場合もある。その場合には、その家人は携帯端末20から制御装置11に向けて放水開始信号を発信することができる、制御装置11は、その放水開始信号を受信すると(ステップS4)、後述するように割り込み処理に入る。
【0017】
火災報知器9から火災発生信号が出力された後、火災がさらに進行して室温が72℃まで上昇すると、スプリンクラー6のフューズが溶けて、放水が開始される。この間、制御装置11は、携帯端末20から放水停止信号を受信したかどうかを監視しており(ステップS5)、放水停止信号を受信した場合には、止水バルブ7に信号を送って止水バルブ7を閉塞させ、放水を停止させる(ステップS7)。携帯端末20から放水停止信号を受信しなかった場合には、温度センサ10からの温度情報をもとに室温が35℃程度に下がったかどうかを調べ(ステップS6)、35℃程度に下がった場合には鎮火したものと判断して、止水バルブ7に信号を送って放水を停止させ(ステップS7)、処理を終了する。
【0018】
ステップ4において、制御装置11が携帯端末20から放水開始信号を受信すると、図4に示すように、制御装置11は、まずヒータ15に通電してスプリンクラー6の温度を72℃程度まで急上昇させ(ステップS11)、スプリンクラー6から放水を開始させる。そして、分岐配管3の流量センサ4からの信号によりスプリンクラー6からの放水が検出されると(ステップS12)、ヒータ15への通電を停止し(ステップS13)、図3のステップ5に戻り、携帯端末20から放水停止信号を受信したかどうかを監視する。以降は、図2のステップ6から7、または直接ステップ7へ進み、処理を終了する。
【0019】
このように、本発明の第1の実施の形態によれば、住宅内の分岐配管3に接続されて火災発生を検知して放水を開始するスプリンクラー6と、宅内の火災発生による第1の設定温度である60℃程度を感知して火災発生信号を出力する火災報知器9と、スプリンクラー6の放水により宅内の雰囲気温度が60℃よりも低い第2の設定温度である35℃程度を検出するための温度センサ10と、分岐配管3に配備されてスプリンクラー6の放水を停止する止水バルブ7と、スプリンクラー6を加熱して放水を開始させるためのヒータ15と、室内を撮影して映像信号を出力する監視カメラ16と、止水バルブ7を制御してスプリンクラー6からの放水を停止する制御装置11と、インターネット18に接続されてデータ通信が可能な携帯端末20とを備えているので、制御装置11は、火災発生時のスプリンクラー6からの放水を、温度センサ10による温度情報にまたは携帯端末20から送られてきた放水停止信号に基づき、適切に停止させることができる。また、温度センサ10による温度データおよび監視カメラ16による画像データを携帯端末20に10秒毎に送ることにより、外部から住宅内の火災の状況を把握することができ、携帯端末20から放水開始または放水停止の指示を適切に行うことにより、スプリンクラー6からの不必要な放水による水損および2次的な損害を防止することができる。また、本実施の形態では、流量センサ4、スプリンクラー6、止水バルブ7、火災報知器9、温度センサ10、ヒータ15、監視カメラ16などとして市販の機器を使用しているので、火災監視消火・放水制御システムを安価に構築することができる。
【0020】
なお、以上の説明では、火災報知器9をスプリンクラー6と別体で構成した例について説明したが、スプリンクラー6として、スプリンクラーヘッドがカバーで覆われ、フューズが2段構造になっていて、第1段目のフューズが60℃程度で溶けると、カバーが外れてスプリンクラーヘッドが露出するとともに、カバーが外れることにより内部の近接スイッチがオンして火災発生を通報し、さらに第2段目のフューズが溶けると放水が開始される構造のものを使用すれば、火災報知器9とスプリンクラー6とを一体化することができる。また、温度センサ10もスプリンクラー6や監視カメラ16などと一体に構成することができる。さらに、装置構成を節約する場合には、監視カメラ16の設置を省略し、携帯端末20には、火災発生報知とともに温度センサ10からの温度データのみを送出するように構成してもよい。
【0021】
また、上記実施の形態では、スプリンクラー6からの放水を検出する検出手段として流量センサ4を用いたが、別の検出手段として、スプリンクラー6のフューズが溶けてデフレクターが降下するのを検出する近接スイッチやリードスイッチ、フォトスイッチなど、または放水を検出する赤外線センサ、静電容量型センサなどを使用することができる。
【0022】
また、宅内の天井に分岐配管3に接続された散水または放水ノズルを備えた炎センサユニットを設け、ユニットヘッドの走査により炎の赤外線を検出し、炎の揺らぎを検出することにより制御装置11で火災位置を演算し、その火災位置へ散水または放水ノズルを向けて消火するシステムを本実施の形態に追加してもよい。
【0023】
また、監視カメラ16として、市販されている防犯用の移動物体検出機能付きの監視カメラを利用して火災位置を検出し、散水または放水ノズルを火災位置に向けて消火したり、火災位置を示す画像データを携帯端末20に送信するようにしてもよい。その他、本実施の形態を適宜変更することができる。
【0024】
(第2の実施の形態)
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。上記第1の実施の形態では、湿式のスプリンクラーを利用しているが、その代わりに乾式開放型のスプリンクラーを使用して、制御装置11が、温度センサ10からの温度情報または携帯端末20からの放水開始信号により止水バルブ7を開放して放水を開始し、また、温度センサ10からの温度情報または携帯端末20からの放水停止信号により止水バルブ7を閉塞して放水を停止するようにしたものである。
【0025】
図5は本実施の形態における火災監視消火・放水制御システムの全体構成を示す概略図である。図1に示した第1の実施の形態と同じ符号を付したものは同じ機能を有するものであり、重複した説明は省略する。図1に示した火災監視消火・放水制御システムと本実施の形態が異なる点は、湿式のスプリンクラー6の代わりに乾式開放型のスプリンクラー21が使用され、流量センサ4およびヒータ15がなく、止水バルブ7は、温度センサ10の温度情報に基づいて制御装置11により開閉制御されることである。すなわち、住宅内の分岐配管3に接続されて火災発生時に放水を行う乾式開放型のスプリンクラー21と、スプリンクラー21の上流側の水道配管に設けられたソレノイドにより開閉制御される自動開閉弁である止水バルブ7と、宅内の雰囲気温度を検出して出力する温度センサ10と、宅内の火災発生による熱または煙を感知して火災発生信号を出力する火災報知器9と、火災報知器9から火災発生信号を受信した後、温度センサ10により火災が発生したことを示す第1の設定温度が検出された場合に、止水バルブ7を開放制御してスプリンクラー21からの放水を開始するとともに、温度センサ10により火災が鎮火したことを示す第2の設定温度が検出された場合に、止水バルブ7を閉塞制御してスプリンクラー21からの放水を停止する制御装置11と、室内を撮影する監視カメラ16とを備えている。IF部12、制御部13および無線部14を有する制御装置11の無線部14は、基地局17、インターネット18、基地局19をそれぞれ経由して、この住宅の家人が携帯する携帯端末20(携帯電話機、PHS、PDAなど)と無線通信が可能である。
【0026】
本実施の形態の場合、火災が発生したことを示す第1の設定温度は、第1の実施の形態における放水開始温度である72℃前後がよく、また、火災が鎮火したことを示す第2の設定温度は、第1の実施の形態における放水停止温度である35℃程度でよいが、これらの設定温度は使用環境等に合わせて任意に変更可能である。乾式開放型のスプリンクラー21は、感熱部分がなく、水を噴出する吐出口が開いているだけの単純な構造を有する。したがって、止水バルブ7が閉じているときは放水されず、止水バルブ7が開いているときに放水が行われる。制御装置11は、温度センサ10が第1の設定温度を検出すると、止水バルブ7を開けてスプリンクラー21からの放水を開始し、温度センサ10が第2の設定温度を検出すると、止水バルブ7を閉じてスプリンクラー21からの放水を停止するように制御する。また、制御装置11は、スプリンクラー21からの放水を、携帯端末20から送られてきた放水開始信号に基づき開始し、また、携帯端末20から送られてきた放水停止信号に基づき停止させることができる。さらに、制御装置11は、温度センサ10による温度データおよび監視カメラ16による画像データを携帯端末20に10秒毎に送ることにより、携帯端末20では外部から住宅内の火災の状況を把握することができ、携帯端末20から放水開始信号または放水停止信号を適切なタイミングで送ることにより、スプリンクラー21からの不必要な放水による水損および2次的な損害を効果的に防止することができる。
【0027】
このように、本発明の第2の実施の形態によれば、火災発生時にスプリンクラー21からの放水を、温度センサ10からの温度情報または携帯端末20からの信号により自動的にかつ適切なタイミングで開始および停止することができ、スプリンクラー21からの不必要な放水による水損を抑えることができるとともに、住居の水浸しによる2次的な損害を防止することができる。また、再燃した場合には、温度センサ10からの温度情報または携帯端末20からの信号により、制御装置11が再び止水バルブ7を開けて放水を開始し、鎮火した場合には止水バルブ7を再び閉じて放水を停止することができるので、再燃の懸念を払拭することができる。また、構成がより簡単になるので、低コストで効率的な火災監視消火・放水制御システムを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の第1の実施の形態における火災監視消火・放水制御システムの構成を示す概略図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態における火災監視消火・放水制御システムの別の構成を示す概略図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態における火災監視消火・放水制御システムの動作を示すフロー図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態における火災監視消火・放水制御システムの割り込み動作を示すフロー図である。
【図5】本発明の第2の実施の形態における火災監視消火・放水制御システムの構成を示す概略図である。
【符号の説明】
【0029】
1 水道本管
2 分岐部
3 分岐配管
4 流量センサ
5 分岐継手
6 スプリンクラー(湿式)
7 止水バルブ
8 水洗便器
9 火災報知器
10 温度センサ
11 制御装置
12 インターフェース(IF)部
13 制御部
14 無線部
15 ヒータ
16 監視カメラ
17 基地局
18 インターネット
19 基地局
20 携帯端末
21 スプリンクラー(乾式開放型)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
住宅内の水道配管に接続されて火災発生時に放水を行うスプリンクラーと、宅内の火災発生による第1の設定温度または煙を感知して火災発生信号を出力する火災報知器と、前記スプリンクラーの放水により宅内の雰囲気温度が前記設定温度よりも低い第2の設定温度に達したことを検出する温度センサと、前記水道配管に配備されて前記スプリンクラーへの給水を開閉する止水バルブと、前記火災報知器から火災発生信号を受信した後、前記温度センサにより第2の設定温度に達したことが検出された場合に、前記止水バルブを閉塞制御して前記スプリンクラーからの放水を停止する制御装置とを備えたことを特徴とする火災監視消火・放水制御システム。
【請求項2】
インターネットに接続されてデータ通信が可能な携帯端末を備え、前記制御装置は、前記携帯端末との間でデータの送受信が可能な通信機能を有し、前記火災報知器から火災発生信号を受信すると前記携帯端末に火災発生を報知し、前記携帯端末からスプリンクラー放水停止信号を受信するか、または前記温度センサにより第2の設定温度に達したことが検出された場合に、前記止水バルブを閉塞して前記スプリンクラーからの放水を停止することを特徴とする請求項1記載の火災監視消火・放水制御システム。
【請求項3】
前記制御装置に接続されて前記宅内に配備された監視カメラを備え、前記制御装置は、前記携帯端末に火災発生を報知する際に前記温度センサによる温度データおよび前記監視カメラによる画像データを共に送出することを特徴とする請求項2記載の火災監視消火・放水制御システム。
【請求項4】
前記スプリンクラーまたはその近傍に前記制御装置に接続されて前記スプリンクラーに放水を開始させる温度に加熱するためのヒータと、前記制御装置に接続されて前記スプリンクラーからの放水を検出する放水検出手段とを備え、前記制御装置は、前記携帯端末からスプリンクラー放水開始信号を受信した場合に、前記ヒータに通電して前記スプリンクラーからの放水を開始させ、前記放水検出手段からの放水検出信号により前記ヒータへの通電を停止することを特徴とする請求項3記載の火災監視・放水制御システム。
【請求項5】
住宅内の水道配管に接続されて火災発生時に放水を行う乾式開放型のスプリンクラーと、前記スプリンクラーの上流側の水道配管に設けられた止水バルブと、宅内の雰囲気温度を検出して出力する温度センサと、宅内の火災発生による熱または煙を感知して火災発生信号を出力する火災報知器と、前記火災報知器から火災発生信号を受信した後、前記温度センサにより火災が発生したことを示す第1の設定温度が検出された場合に、前記止水バルブを開放制御して前記スプリンクラーからの放水を開始し、前記温度センサにより火災が鎮火したことを示す第2の設定温度が検出された場合に、前記止水バルブを閉塞制御して前記スプリンクラーからの放水を停止する制御装置とを備えたことを特徴とする火災監視消火・放水制御システム。
【請求項6】
インターネットに接続されてデータ通信が可能な携帯端末を備え、前記制御装置は、前記携帯端末との間でデータの送受信が可能な通信機能を有し、前記火災報知器から火災発生信号を受信すると前記携帯端末に火災発生を報知し、前記携帯端末からスプリンクラー放水停止信号を受信するか、または前記温度センサにより第2の設定温度に達したことが検出された場合に、前記止水バルブを閉塞して前記スプリンクラーからの放水を停止することを特徴とする請求項5記載の火災監視消火・放水制御システム。
【請求項7】
前記制御装置に接続されて前記宅内に配備された監視カメラを備え、前記制御装置は、前記携帯端末に火災発生を報知する際に前記温度センサによる温度データおよび前記監視カメラによる画像データを共に送出することを特徴とする請求項6記載の火災監視消火・放水制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−213307(P2007−213307A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−32336(P2006−32336)
【出願日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【出願人】(506046377)
【Fターム(参考)】