説明

炭化水素系原料処理システムおよび方法

炭化水素系原料処理システムは、炭化水素系原料の処理のための化石燃料の消費量、環境負荷、およびコストを低減することができる。炭化水素系原料処理システムは、廃棄物(51)、廃プラスチック(52)、パイロシリスタール(53)、炭化水素系重質残渣油(54)、およびバイオマス(55)等の有機物を熱分解ガス化し熱源用ガスを生成するガス化炉(10)を備える。また、炭化水素系原料処理システムは、ガス化炉(10)で得られた熱源用ガスを用いて炭化水素系原料を熱分解する分解炉(101)を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭化水素系原料処理システムおよび方法に関し、特に石油精製プロセスや石油化学プロセスのように炭化水素系原料を分解炉で熱分解または改質炉で改質して処理する炭化水素系原料処理システムおよび方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エチレンはポリエチレンをはじめ、ポリプロピレンや酢酸エチル等の工業製品の原料であり、化学工業の基本原料の1つである。エチレンはナフサ等の炭化水素系原料を熱分解、精製して製造している。また炭化水素の熱分解において副生するプロピレンやエタン、プロパン等も工業原料として利用されている。
【0003】
また、水素は石油精製プロセスにおいて、脱硫やアルキル化剤等として大量に必要であり、日本においてはその多くをナフサあるいは液化石油ガス(LPG)等の炭化水素を蒸気改質して製造している。したがって、ガソリンや軽油等の製品製造において、SOx等の環境負荷低減の目的等から、より高い脱硫度の必要性が生じた場合には脱硫のために大量の水素が必要となり、その結果、大量の化石燃料が使われることになる。
【0004】
<エチレン製造プロセス>
図1はエチレン製造システムを示すブロック図である。図1に示すように、エチレン製造システムは、分解炉101、熱交換器102、オイルクエンチ塔103、水クエンチ塔104、圧縮機105、酸性ガス除去工程106、脱水塔107、ガス分離・精製工程108からなる。ナフサに稀釈用蒸気を添加し、原料201を生成する。原料201は分解炉101の反応管101a内に供給され、予熱気化された後高温、低圧、短滞留時間で熱分解される。過分解を防ぐため反応管内101aの出口直後に生成ガス急冷用の熱交換器102を設けている。さらに、生成ガスはオイルクエンチ塔103、水クエンチ塔104で冷却され、生成ガスから熱回収される。
【0005】
冷却されたガスを多段の圧縮機105で0.5気圧程度から30気圧以上程度まで昇圧する。昇圧後HS、COなどの酸性ガスは酸性ガス除去工程106で冷却ガスから除去され、さらに冷却ガスが脱水塔107で脱水された後、不要ガス成分分離などを行うガス分離・精製工程108を経て、その結果製品エチレン202が得られる。
【0006】
図1に示すように、ガス分離・精製工程108は、脱メタン塔109、脱エタン塔110、脱プロパン111、メチルアセチレンプロパジエン水添反応器112、エチレン精留塔113、プロピレン精留塔114、コールドボックス115、アセチレン水添反応器116等で構成される。ガス分離・精製工程108では、水素リッチガス203、テールガス204、プロピレン205、炭素数4以上の炭化水素(C4+)206、エタン207、プロパン208、およびオフガス209等が分離される。なお、図1のガス分離・精製工程108の構成は一例であり、他の構成のプロセスもある。
【0007】
分解炉101には複数の反応管101aが配置されており、炭化水素のC−C結合を800〜900℃程度の高温、0.2MPa程度の低圧、無触媒下で分解し低級炭化水素を生成する。反応管101a内の原料であるナフサの滞留時間は0.1〜0.2秒程度以下と極めて短い時間である。分解炉101は、反応管101a外の炉内空間にバーナ(図示せず)が配置され、ガス分離・精製工程108からのオフガス209を燃料として空気210で燃焼させることで分解炉101内を昇温・温度維持している。エタン207やプロパン208等も分解炉101内で燃料として用いられることもある。また、オフガス209やエタン207、プロパン208等だけでは分解炉101の温度維持が十分な熱量を得られない場合、ナフサ211等の化石燃料を燃料として分解炉101内で使用している。
【0008】
燃焼用の空気210は分解炉101から排出される出口排ガス212の顕熱を利用して予熱している。また、反応管101a内での温度が一定になるようにナフサ211等のオフガス209やエタン207、プロパン208等の供給量が調整される。また、原料201であるナフサ等の炭化水素は分解炉101の出口ガスの顕熱で予熱されてから101の反応管101aに供給される。反応管101aの出口に熱交換器102(例えば、ボイラ)が設置され、ガスを急冷することで反応を止め過分解による製品(エチレン202)収率の低下を防止している。
【0009】
<水素製造プロセス>
水素製造方法としては、水蒸気改質、部分酸化、水蒸気改質と部分酸化を組合わせた方法の3つがある。近年、ナフサやLPG等の炭化水素を水蒸気改質して水素を製造する方法が広く採用されている。この方法は炭化水素と水蒸気を800〜850℃で触媒上で接触反応させるもので次の吸熱反応である。
+nHO⇔nCO+(n+m/2)H (吸熱反応)
さらに、生成した一酸化炭素は次の水性ガスシフト反応により水素に転換される。
CO+HO⇔CO+H (発熱反応)
上記2つの反応ではいずれも触媒が必要となり、ニッケル担持型の触媒がその代表例である。
【0010】
図2は蒸気改質方法の水素製造システムを示すブロック図である。水素製造システムは、原料231としてナフサやLPG等の炭化水素を用い、図2に示すように、該原料231を脱硫する脱硫反応器131、脱硫した原料231を水蒸気で改質する予備改質器132、生成する一酸化炭素から水性ガスシフト反応によって水素に転換するシフトコンバータ135、水素を分離する分離器137および水素圧力変動吸着(水素PSA)装置138からなる。
【0011】
常温において液体である原料を加熱して気化して改質炉133に供給する。原料の加熱には改質炉133の排気ガス236の廃熱を用いることもある。原料の水蒸気改質反応は触媒上で行うため被毒成分である硫黄を除去する必要がある。高硫黄原料を用いる場合には、脱硫反応器131において気化させた原料中の脱硫をする。原料ガスは水蒸気とともに改質炉133内の改質反応管133aに供給される。改質反応管133aには触媒が充填されており、改質反応管133aではその触媒としてニッケル担持型のものが一般的に用いられている。原料ガスを改質反応管133aの上流側に配置された予備改質器132で予改質する場合もある。原料ガスは改質反応管133a入口で450〜650℃であり、改質反応管133a出口で700〜950℃である。すなわち、改質反応は600℃程度から950℃程度の温度域で、改質炉133内の改質反応管133aに外部熱源から熱が供給される。
【0012】
改質炉133の熱源は水素精製工程(水素PSA装置138)のオフガス232およびナフサやLPG233等の炭化水素燃料233の空気234による燃焼熱である。改質炉133内の改質反応管133aの出口で熱交換器134で熱交換して冷却された後、生成された一酸化炭素はシフトコンバータ135において水性ガスシフト反応により水素に転換され、熱交換器136を通り、分離器137で凝縮したコンデンセート237が分離された後、水素PSA138にてオフガス232と分離して水素230を回収する。水素230を分離した残りのオフガス232は、上述したように改質炉133用熱源として利用される。また、水素230の一部はリサイクル水素235として原料231に混合し、原料231の水素濃度を高める場合もある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上記のように従来のエチレン製造システムや水素製造システムでは、分解炉や改質炉の熱源用燃料としてナフサやLPG等の化石燃料を大量に使用するため、エチレンおよび水素製造が高コストとなるという問題があった。
【0014】
本発明は上述の点に鑑みてなされたもので、炭化水素系原料の処理のための化石燃料の消費量、環境負荷、およびコストを低減することができる炭化水素系原料処理システムを提供することを本発明の第1の目的とする。
【0015】
炭化水素系原料の処理のための化石燃料の消費量、環境負荷、およびコストを低減することができる炭化水素系原料処理方法を提供することを本発明の第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の第1の態様によれば、炭化水素系原料の処理のための化石燃料の消費量、環境負荷、およびコストを低減することができる炭化水素系原料処理システムが提供される。上記炭化水素系原料処理システムは、廃棄物、炭化水素系重質残渣油、および有機物の少なくとも1つを熱分解ガス化し熱源用ガスを生成するガス化炉を備える。また、上記炭化水素系原料処理システムは、上記ガス化炉で得られた熱源用ガスを用いて炭化水素系原料を熱分解する分解炉を備える。すなわち、上記炭化水素系原料処理システムは、エチレン製造プロセスなどにおいて炭化水素系原料を熱分解する分解炉のための熱源として可燃ガスを用いている。可燃ガスは、種々の廃棄物、石油精製プロセスや石油化学プロセスから排出される重油などの炭化水素系重質残渣油、およびバイオマスなどの有機物の少なくとも1つの熱分解ガス化により生成される。上記分解炉はエチレン製造プロセスの分解炉であってもよい。
【0017】
このように、廃棄物、炭化水素系重質残渣油、および有機物の少なくとも1つの熱分解ガス化により熱源用ガスが生成される。熱源用ガスは、炭化水素系原料を熱分解する分解炉のための熱源として用いられる。したがって、炭化水素系原料の処理のための化石燃料の消費量、環境負荷、およびコストを低減することができる。
【0018】
上記ガス化炉は、廃棄物、炭化水素系重質残渣油、および有機物の少なくとも1つの熱分解ガス化による第1のガスと、熱分解ガス化残渣の燃焼による第2のガスとを分離して生成するよう構成されていてもよい。熱分解ガス化により生成された第1のガス(生成ガス)を、熱分解ガス化残渣の燃焼により生成される第2のガス(燃焼ガス)が混ざること(稀釈すること)なく取り出すことができる。したがって、少量の第1のガスからでも高い発熱量を得ることができ、分解炉を高温に維持することができる。また、分解炉が高温に維持されるので、第1のガスが不純物を含んでいても分解炉で燃焼を行うことができる。
【0019】
上記第2のガスは酸素を含有するので、上記分解炉の熱源用ガスとして用いることができる。したがって、分解炉に供給される燃焼用空気の量を抑えることができる、また、第2のガスの顕熱を効果的に利用することができる。このように、炭化水素系原料の処理のための化石燃料の消費量、環境負荷、およびコストをより効果的に低減することができる。
【0020】
上記炭化水素系原料処理システムは、上記第2のガスによって空気を予熱するための熱交換器と、上記分解炉に予熱された空気を供給するための通路とを備えていてもよい。この場合には、第2のガスが空気を予熱するために用いられるので、第2のガスの熱を有効に利用することができる。このように、炭化水素系原料の処理のための化石燃料の消費量、環境負荷、およびコストをより効果的に低減することができる。
【0021】
本発明の第2の態様によれば、炭化水素系原料の処理のための化石燃料の消費量、環境負荷、およびコストを低減することができる炭化水素系原料処理システムが提供される。上記炭化水素系原料処理システムは、廃棄物、炭化水素系重質残渣油、および有機物の少なくとも1つを熱分解ガス化し熱源用ガスを生成するガス化炉を備える。上記炭化水素系原料処理システムは、上記ガス化炉で得られた熱源用ガスを用いて炭化水素系原料を改質する改質炉を備える。すなわち、上記炭化水素系原料処理システムは、水素製造プロセスなどにおいて炭化水素系原料を改質する改質炉のための熱源として可燃ガスを用いている。可燃ガスは、種々の廃棄物、石油精製プロセスや石油化学プロセスから排出される重油などの炭化水素系重質残渣油、およびバイオマスなどの有機物の少なくとも1つの熱分解ガス化により生成される。上記改質炉は水素製造プロセスの改質炉であってもよい。
【0022】
このように、廃棄物、炭化水素系重質残渣油、および有機物の少なくとも1つの熱分解ガス化により熱源用ガスが生成される。熱源用ガスは、炭化水素系原料を改質する改質炉のための熱源として用いられる。したがって、炭化水素系原料の処理のための化石燃料の消費量、環境負荷、およびコストを低減することができる。
【0023】
上記ガス化炉は、廃棄物、炭化水素系重質残渣油、および有機物の少なくとも1つの熱分解ガス化による第1のガスと、熱分解ガス化残渣の燃焼による第2のガスとを分離して生成するよう構成されていてもよい。熱分解ガス化により生成された第1のガス(生成ガス)を、熱分解ガス化残渣の燃焼により生成される第2のガス(燃焼ガス)が混ざること(稀釈すること)なく取り出すことができる。したがって、少量の第1のガスからでも高い発熱量を得ることができ、改質炉を高温に維持することができる。また、改質炉が高温に維持されるので、第1のガスが不純物を含んでいても改質炉で燃焼を行うことができる。
【0024】
上記第2のガスは酸素を含有するので、上記改質炉の熱源用ガスとして用いることができる。したがって、改質炉に供給される燃焼用空気の量を抑えることができる、また、第2のガスの顕熱を効果的に利用することができる。このように、炭化水素系原料の処理のための化石燃料の消費量、環境負荷、およびコストをより効果的に低減することができる。
【0025】
上記炭化水素系原料処理システムは、上記第2のガスによって空気を予熱するための熱交換器と、上記改質炉に予熱された空気を供給するための通路とを備える。この場合には、第2のガスが空気を予熱するために用いられるので、第2のガスの熱を有効に利用することができる。このように、炭化水素系原料の処理のための化石燃料の消費量、環境負荷、およびコストをより効果的に低減することができる。
【0026】
本発明の第3の態様によれば、炭化水素系原料の処理のための化石燃料の消費量、環境負荷、およびコストを低減することができる炭化水素系原料処理方法が提供される。上記炭化水素系原料処理方法によれば、廃棄物、炭化水素系重質残渣油、および有機物の少なくとも1つが熱分解ガス化されて熱源用ガスが生成される。上記熱源用ガスは炭化水素系原料を熱分解する分解炉に供給される。すなわち、上記炭化水素系原料処理方法は、エチレン製造プロセスなどにおいて炭化水素系原料を熱分解する分解炉のための熱源として可燃ガスを用いている。可燃ガスは、種々の廃棄物、石油精製プロセスや石油化学プロセスから排出される重油などの炭化水素系重質残渣油、およびバイオマスなどの有機物の少なくとも1つの熱分解ガス化により生成される。上記分解炉はエチレン製造プロセスの分解炉であってもよい。
【0027】
本発明の第4の態様によれば、炭化水素系原料の処理のための化石燃料の消費量、環境負荷、およびコストを低減することができる炭化水素系原料処理方法が提供される。上記炭化水素系原料処理方法によれば、廃棄物、炭化水素系重質残渣油、および有機物の少なくとも1つが熱分解ガス化されて熱源用ガスが生成される。上記熱源用ガスは炭化水素系原料を改質する改質炉に供給される。すなわち、上記炭化水素系原料処理方法は、水素製造プロセスなどにおいて炭化水素系原料を改質する改質炉のための熱源として可燃ガスを用いている。可燃ガスは、種々の廃棄物、石油精製プロセスや石油化学プロセスから排出される重油などの炭化水素系重質残渣油、およびバイオマスなどの有機物の少なくとも1つの熱分解ガス化により生成される。上記改質炉は水素製造プロセスの改質炉であってもよい。
【0028】
本発明の上述した目的ならびにその他の目的および効果は、本発明の好ましい実施形態を一例として図示した添付図面と照らし合わせれば、以下に述べる説明から明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明の炭化水素系原料処理システムの実施の形態例を添付の図面に基づいて説明する。下記の実施形態において、同一の部分は図1および図2で示されるものと同じ符号が付されている。
【0030】
本発明の目的の1つは、廃棄物、廃プラスチック、またはバイオマスなどの固体物、多量の炭素を含むパイロシリスタールなどの炭化水素系重質残渣油が熱源として使用された場合においても、エチレン製造システムにおいて連続的かつ安定的に使用することができる炭化水素系原料処理システムを提供することにある。安定火炎が分解炉に形成されて分解炉の温度および圧力が安定化される場合、熱分解パイプがダスト等で摩耗しない場合、パイプ上のダスト等の蓄積により熱伝達速度が下がらない場合、または塩素成分または硫黄成分などの酸性ガス成分によって腐食が起こらない場合に、安定した運転を行うことができる。一定の成分および一定の発熱量を有するガスを一定流量で供給すれば、安定火炎を形成することができる。
【0031】
このため、本発明の目的の1つは、廃棄物、廃プラスチック、またはバイオマスなどの固体物、多量の炭素を含むパイロシリスタールなどの炭化水素系重質残渣油を用いつつ、多量のダストや塩素成分または硫黄成分などの酸性ガス成分を含まず、一定の成分および一定の発熱量を有する可燃ガスを、一定流量で連続的に供給することができるエチレン製造システムを提供することにある。
【0032】
図3は本発明の第1の実施形態に係る炭化水素系原料処理システムを示すブロック図である。図3に示すように、炭化水素系原料処理システムは、ガス化室11と燃焼室12を具備するガス化炉10を設けている。ガス61,62は、ガス化室11と燃焼室12からそれぞれ別々に排出される。ガス化炉10は、図1に示すように、エチレン製造システムに構成され、炭化水素系原料処理システムを形成する。
【0033】
そして該ガス化炉10のガス化室11に廃棄物51、廃プラスチック52、パイロシリスタール53、炭化水素系重質残渣油54、およびバイオマス55等の有機物のいずれか、またはこれらの複数の混合物を投入し、投入された原料はガス化室11で熱分解ガス化され、可燃性ガスを含むガス61を生成する。生成されたガス61は、エチレン製造システムの分解炉101に熱源用ガスとして供給される。すなわち、ガス化炉10で廃棄物、炭化水素系重質残渣油や有機物等を熱分解ガス化して得られた生成ガス61をナフサ等の化石燃料の代替としてエチレン製造システムの分解炉101に供給している。
【0034】
分解炉101はガス燃焼用に設計されている。したがって、廃棄物51や廃プラスチック52あるいはバイオマス等の固体物は、そのまま熱源として該分解炉101に供給することは難しい。さらにそのまま分解炉101に供給し得たとしても固体であるため固定物中の揮発分以外の固定炭素分の燃焼には時間がかかる等安定した燃焼を得、そこから安定した熱を得ることが難しい。また、パイロシリスタール53等の炭化水素系重質残渣油のように炭素分が多いものは、そのままで分解炉101に供給しても揮発しない固定炭素分が分解炉101に残りその燃焼に時間がかかり安定して燃焼し、熱を得ることは難しい。本実施例では、これらの物質をガス化炉10のガス化室11において先に熱分解ガス化してから、得られた生成ガス61を分解炉101の熱源用ガスとして利用することで上記問題を解決した。
【0035】
本実施例においては、ガス化炉10がガス化室11と燃焼室12とを含んでいるため、廃棄物や廃プラスチックあるいはバイオマス等の固体物の場合においてもガス化室11の温度などの条件を制御しつつ、熱分解ガス化を行うことができる。したがって、生成61ガスは一定の成分および一定の発熱量を有することができ、化石燃料に代えて分解炉101に供給することができる。特に、流動床ガス化炉の場合には、原料の供給量が変化しても、流動層の高さを制御することでその変化を吸収することができる。このように、原料の供給量による生成ガスの圧力変動を防止することができる。また、熱源として用いた原料の熱分解ガス化により生成された残渣の燃焼により灰が生成される。したがって、本実施例においては、ガス化室11および燃焼室12は互いに分離され、残渣の生成ガス61と燃焼ガス62を別々に生成することができるので、生成ガス61はほとんど灰分を含んでいない。さらに、流動床炉の場合、ガス化室における空塔速度は、燃焼室におけるそれよりも低いため、ガス化室の生成ガスに混じる流動媒体の量は燃焼室のそれよりも少なくなる。したがって、少量のダストを含む生成ガス61を分解炉101に供給することができる。さらに、塩素や硫黄を捕捉する脱塩剤や脱硫剤、例えば石灰石をガス化炉10に混合することで、塩素成分または硫黄成分をほとんど含まない生成ガス61を分解炉101に供給することができる。
【0036】
本実施例において、ガス化炉10のガス化室11で生成した可燃ガスを含む生成ガス61は分解炉101に供給され、エチレン製造プロセスのオフガス209と燃焼用の空気210と共に燃焼される。オフガス209と空気210は生成されたガス61から分離して、分解炉101に供給される。分解炉101の反応管101aにナフサ等の炭化水素系原料の熱分解に必要な熱を供給する。
【0037】
なお、分解炉101の反応管101aを出て熱交換器102で急冷された熱分解ガス213は、オイルクエンチ塔103、水クエンチ塔104、圧縮機105、酸性ガス除去工程106、脱水塔107を経てガス分離・精製工程108(図1参照)に供給される。熱交換器102の下流側で行われる処理は、図1と関連して記述されたものと同一であるから、その説明は省略する。
【0038】
図4はガス化炉10の一例として内部循環流動床ガス化炉20の構成例を示す図である。図4に示すように、内部循環流動床ガス化炉20はガス化室21と燃焼室22を具備し、該ガス化室21と燃焼室22の間には仕切壁23が設けられている。また、燃焼室22には仕切壁25、26で熱回収室221、流動媒体沈降室222および主燃焼室223が設けられている。ガス化室21および燃焼室22の下方に流動媒体(砂等の微粒子)が充填されている。図4に示すように、燃焼室22の下方から流動媒体を流動させる流動化ガスとして空気57が供給され、ガス化室21の下方から流動媒体を流動させる流動化ガスとして蒸気56が供給されるようになっている。
【0039】
上記構成の内部循環流動床ガス化炉20において、ガス化室21の流動媒体は矢印63に示すように流動媒体循環路(図示せず)を通って燃焼室22の主燃焼室223に流入するようになっており、主燃焼室223で炭素分等の燃焼により高温となった流動媒体は矢印64に示すように仕切壁26を越えて流動媒体沈降室222に流入し、さらに流動媒体沈降室222の流動媒体は仕切壁23の下に設けられた穴を通ってガス化室21に流入するようになっている。すなわち、ガス化室21と燃焼室22の間では流動媒体は循環している。
【0040】
また、主燃焼室223の流動媒体は矢印65に示すように、仕切壁25を越えて熱回収室221に流入し、仕切壁25の下に設けられた穴を通って主燃焼室223へ流入するようになっている。すなわち、主燃焼室223と熱回収室221の間では流動体は循環している。
【0041】
上記構成の内部循環流動床ガス化炉20において可燃物60がガス化室に定量的に供給される。可燃物60は、廃棄物51、廃プラスチック52、パイロシリスタール53、炭化水素系重質残渣油54、およびバイオマス55またはそれらの有機物(図3参照)の混合物からなる。これにより、可燃物60の揮発成分が熱分解され、熱分解生成物となる。ガス化室21では、可燃物60の熱分解で炭素を多く含む残渣が生じる。該残渣は流動媒体と共に、矢印63に示すように燃焼室22に移動し、可燃物60の炭素成分は該燃焼室22内で燃焼する。この燃焼熱により流動媒体は高温となる。そして、高温となった流動媒体は矢印64に示すようにガス化室21に流入し、ガス化室21に投入される可燃物60の熱分解に寄与する。
【0042】
また、揮発分が多く固定炭素が少ない可燃物60を熱分解する場合、矢印63で示される流動媒体に同伴し、燃焼室22に移動する炭素分が少ないため、燃焼室22での燃焼量が少なく、ガス化室21で必要とする熱量を確保することができない。このような場合は、燃焼室22側にも可燃物60を供給し、燃焼室22での燃焼量を補う。
【0043】
上記のように、廃棄物51、廃プラスチック52、パイロシリスタール53、炭化水素系重質残渣油54、バイオマス55等のいずれかまたはそれらの有機物の混合物からなる可燃物60を内部循環流動床ガス化炉20のガス化室21に導入して熱分解し、熱分解されない炭素分を流動媒体と共に燃焼室22へ移動させ、炭素分を選択的に燃焼させることができる。
【0044】
図4に示す内部循環流動床ガス化炉20においては、流動媒体の循環量を変化させることで、ガス化室21および燃焼室22の流動層の温度を制御することができる。したがって、生成ガスが一定の成分および一定の発熱量を有するように、ガス化室に供給される原料の量に応じて流動媒体の循環量を調整することにより、ガス化室21および燃焼室22の流動層の温度を調整して、生成ガスの成分を制御することができる。
【0045】
このように内部循環流動床ガス化炉20のガス化室21に廃棄物51、廃プラスチック52、パイロシリスタール53および炭化水素系重質残渣油54、およびバイオマス55のいずれか、またはそれらの有機物の混合物を含む可燃物60を導入して熱分解ガス化する。得られる生成ガス61をエチレン製造システムの分解炉101に熱源用ガスとして供給することで、従来のエチレン製造システムで使用されている化石燃料の代替とすることができ、エチレン製造の低コスト化を図ることができると共に、システムから排出される二酸化炭素の排出削減にも寄与できる。
【0046】
生成ガス61に同伴するダスト分が多い場合、凝縮や付着物による生成ガスダクトの閉塞等のトラブルを防止するため、予め生成ガス61を洗浄するようにしてもよい。ガス化炉10から分解炉101までの距離が長く、生成ガスダクトの放熱による温度降下によって高分子炭化水素や水蒸気等が凝縮するおそれがある場合、生成ガス61は同様の理由で洗浄してもよい。これらの場合はオイルスクラバを用いて生成ガス61を洗浄するのがよい。
【0047】
流動床ガス化炉は流動層を有することから、気流層ガス化炉に比べて、不燃物(固体物)耐性に優れている。また、流動床ガス化炉は気流層ガス化炉より、投入される可燃物のカロリー変動、量の変動があっても、プロセスは安定的に運転できる。特に図4に示すような内部循環流動床ガス化炉を用いる場合には、不燃物排出をガス化室21の炉底から行うことにより有価金属を未酸化の状態で回収できるから、内部循環流動床ガス化炉は部分燃焼流動床ガス化炉よりも効果が大きい。また、不燃物排出を燃焼室22の炉底から行うことにより、不燃物をクリーニングされた状態で回収できる。
【0048】
内部循環流動床ガス化炉20の場合、流動媒体に石灰石を用いて、ガス化室21と燃焼室22の間を石灰石を循環させることにより、ガス化室21でCOを生石灰(CaO)が吸収して石灰石(CaCO)となり、燃焼室22でCaCOが熱分解されてCaOとなって、CaOは流動媒体と共にガス化室21に運ばれCOの吸収に利用されるようにすることができる。このようにすることで、COの極めて少ない可燃ガスが生成ガス61として得られる。すなわち、より高カロリーの可燃ガスを生成ガス61として回収できる。
【0049】
炉内触媒や吸収剤粒子を使う場合、内部循環流動床ガス化炉20のようにガス化室21(還元雰囲気)と燃焼室22(酸化雰囲気)の間を粒子が循環することで、粒子が受ける酸化還元繰返し効果により、触媒や吸収の粒子はガス化室21で効率的に働けるように燃焼室22で再生・活性化される。例えば、脱塩を目的とし流動媒体に石灰石(CaCO)粒子を用いる場合、燃焼室22で熱分解してCaOとなったCaCO粒子がガス化室21で塩素分を吸収してCaClとなり、燃焼室22でCaClは分解されてCaOに戻る。
【0050】
図5は本発明の第2の実施形態に係る炭化水素系原料処理システムを示すブロック図である。図5に示すように、炭化水素系原料処理システムは、ガス化室11と燃焼室12を具備するガス化炉10を設けている。ガス61,62は、ガス化室11と燃焼室12からそれぞれ別々に排出される。ガス化炉10は、図1に示すように、エチレン製造システムに構成され、炭化水素系原料処理システムを形成する。
【0051】
そして該ガス化炉10のガス化室11に廃棄物51、廃プラスチック52、パイロシリスタール53、炭化水素系重質残渣油54、およびバイオマス55等の有機物のいずれか、またはこれらの複数の混合物を投入し、投入された原料はガス化室11で熱分解ガス化され、可燃性ガスを含むガス61を生成する。生成されたガス61は、エチレン製造システムの分解炉101に熱源用ガスとして供給される。さらに、ガス化室11で熱分解ガス化によって発生した熱分解残渣を燃焼室12で燃焼して燃焼ガス62を生成し、燃焼ガス62も熱源としてエチレン製造システムの分解炉101に供給するようにしている。
【0052】
このようにすることで、燃焼室12からの燃焼ガス62は酸素を含むことから、分解炉101の燃焼用の空気210の供給量を低減できる。さらに、燃焼ガス62は800℃〜1000℃程度の高温ガスであることからその顕熱を分解炉101に供給することにより、ガス化炉10に供給する可燃物の熱を分解炉101で有効に利用できる。
【0053】
なお、分解炉101の反応管101aを出て熱交換器102で急冷された熱分解ガス213は、オイルクエンチ塔103、水クエンチ塔104、圧縮機105、酸性ガス除去工程106、脱水塔107を経てガス分離・精製工程108(図1参照)に供給される。熱交換器102の下流側で行われるプロセスは、図1に関連して記述されたものと同一であるから、その説明は省略する。
【0054】
図6は本発明の第3の実施形態に係る炭化水素系原料処理システムを示すブロック図である。図6に示すように、炭化水素系原料処理システムは、ガス化室11と燃焼室12を具備するガス化炉10を設けている。ガス61,62は、ガス化室11と燃焼室12からそれぞれ別々に排出される。ガス化炉10は、図1に示すように、エチレン製造システムに構成され、炭化水素系原料処理システムを形成する。
【0055】
そして該ガス化炉10のガス化室11に廃棄物51、廃プラスチック52、パイロシリスタール53、炭化水素系重質残渣油54、およびバイオマス55等の有機物のいずれか、またはこれらの複数の混合物を投入し、投入された原料はガス化室11で熱分解ガス化され、可燃性ガスを含むガス61を生成する。生成されたガス61は、エチレン製造システムの分解炉101に熱源用ガスとして供給される。さらに、ガス化室11で熱分解ガス化によって発生した熱分解残渣を燃焼室12で燃焼して燃焼ガス62を生成し、燃焼ガス62も熱源としてエチレン製造システムの分解炉101に供給するようにしている。また、炭化水素系原料処理システムはガス化炉10の燃焼室12の下流側に燃焼ガス熱交換器13および空気210を分解炉101に供給する通路15を設けている。そして、該燃焼ガス熱交換器13に燃焼ガス62を供給し、該燃焼ガス62の顕熱を利用して分解炉101に供給する燃焼用の空気210を予熱している。
【0056】
このように構成することによって、燃焼ガス62は800℃〜1000℃程度の高温ガスであることから、その顕熱を分解炉101に供給することになり、ガス化炉10に供給する可燃物の熱を分解炉101で有効に利用できる。
【0057】
なお、図6では、燃焼用の空気210の予熱を燃焼ガス熱交換器13だけで行うように構成しているが、2段若しくはより多段で空気210の予熱を行ってもよい。例えば、分解炉101の出口の熱交換器102および燃焼ガス熱交換器13で空気210を予熱してもよい。
【0058】
なお、分解炉101の反応管101aを出て熱交換器102で急冷された熱分解ガス213は、オイルクエンチ塔103、水クエンチ塔104、圧縮機105、酸性ガス除去工程106、脱水塔107を経てガス分離・精製工程108(図1参照)に供給される。熱交換器102の下流側で行われるプロセスは、図1に関連して記述されたものと同一であるから、その説明は省略する。
【0059】
なお、上記第1、第2、第3の実施例においては、炭化水素系原料処理システムとして分解炉を具備するエチレン製造システムを挙げているが、炭化水素系原料処理システムの分解炉はエチレン製造システムの分解炉に限定されるものではない。該分解炉は、エチレン以外の炭化水素(例えば、LPG等の軽質ガス等)が生成される炭化水素系原料の熱分解を行う分解炉であってもよい。
【0060】
図7は本発明の第4の実施形態に係る炭化水素系原料処理システムを示すブロック図である。図7に示すように、炭化水素系原料処理システムは、ガス化室11と燃焼室12を具備するガス化炉10を設けている。ガス61,62は、ガス化室11と燃焼室12からそれぞれ別々に排出される。ガス化炉10は、図1に示すように、エチレン製造システムに構成され、炭化水素系原料処理システムを形成する。
【0061】
そして該ガス化炉10のガス化室11に廃棄物51、廃プラスチック52、パイロシリスタール53、炭化水素系重質残渣油54、およびバイオマス55等の有機物のいずれか、またはこれらの複数の混合物を投入し、投入された原料はガス化室11で熱分解ガス化され、可燃性ガスを含むガス61を生成する。生成されたガス61は、エチレン製造システムの分解炉101に熱源用ガスとして供給される。すなわち、ガス化炉10で廃棄物、炭化水素系重質残渣油や有機物等を熱分解ガス化して得られた生成ガス61をナフサ等の化石燃料の代替としてエチレン製造システムの分解炉101に供給している。
【0062】
本実施例において、ガス化炉10のガス化室11で生成した可燃ガスを含む生成ガス61は改質炉133に供給され、水素製造プロセスの水素PSAオフガス232と燃焼用の空気234と共に、燃焼される。水素PSAオフガス232と燃焼用の空気234は生成ガス61から別々に分解炉101に供給される。改質炉133の反応管133aにナフサ等の炭化水素系原料の改質に必要な熱を供給する。また、ガス化炉10には、流動床ガス化炉の1つである図4に示す内部循環型流動床ガス化炉20を用いてもよい。なお、水素製造プロセスの動作は図2の水素製造プロセスと同じであるその説明は省略する。
【0063】
このようにガス化炉10のガス化室11に廃棄物51、廃プラスチック52、パイロシリスタール53および炭化水素系重質残渣油54、およびバイオマス55のいずれか、またはそれらの有機物の混合物を含む可燃物60を導入して熱分解ガス化する。燃焼ガスを含む、得られる生成ガス61を水素製造システムの改質炉133に熱源用ガスとして供給することで、従来のエチレン製造システムで使用されている化石燃料の代替とすることができ、エチレン製造の低コスト化を図ることができると共に、システムから排出される二酸化炭素の排出削減にも寄与できる。
【0064】
生成ガス61に同伴するダスト分が多い場合、凝縮や付着物による生成ガスダクトの閉塞等のトラブルを防止するため、予め生成ガス61を洗浄するようにしてもよい。ガス化炉10から改質炉133までの距離が長く、生成ガスダクトの放熱による温度降下によって高分子炭化水素や水蒸気等が凝縮するおそれがある場合、生成ガス61は同様の理由で洗浄してもよい。これらの場合はオイルスクラバを用いて生成ガス61を洗浄するのがよい。
【0065】
図8は本発明の第5の実施形態に係る炭化水素系原料処理システムを示すブロック図である。図8に示すように、炭化水素系原料処理システムは、ガス化室11と燃焼室12を具備するガス化炉10を設けている。ガス61,62は、ガス化室11と燃焼室12からそれぞれ別々に排出される。ガス化炉10は、図1に示すように、エチレン製造システムに構成され、炭化水素系原料処理システムを形成する。
【0066】
そして該ガス化炉10のガス化室11に廃棄物51、廃プラスチック52、パイロシリスタール53、炭化水素系重質残渣油54、およびバイオマス55等の有機物のいずれか、またはこれらの複数の混合物を投入し、投入された原料はガス化室11で熱分解ガス化され、可燃性ガスを含むガス61を生成する。生成されたガス61は、エチレン製造システムの分解炉101に熱源用ガスとして供給される。さらに、ガス化室11で熱分解ガス化によって発生した熱分解残渣を燃焼室12で燃焼して燃焼ガス62を生成し、燃焼ガス62も熱源としてエチレン製造システムの分解炉101に供給するようにしている。
【0067】
このようにすることで、燃焼室12からの燃焼ガス62は酸素を含むことから、改質炉133の燃焼用の空気234の供給量を低減できる。さらに、燃焼ガス62は800℃〜1000℃程度の高温ガスであることからその顕熱を改質炉133に供給することにより、ガス化炉10に供給する可燃物の熱を改質炉133で有効に利用できる。なお、水素製造プロセスの動作は図2の水素製造プロセスと同じであるその説明は省略する。
【0068】
図9は本発明の第6の実施形態に係る炭化水素系原料処理システムを示すブロック図である。図9に示すように、炭化水素系原料処理システムは、ガス化室11と燃焼室12を具備するガス化炉10を設けている。ガス61,62は、ガス化室11と燃焼室12からそれぞれ別々に排出される。ガス化炉10は、図2に示すように、エチレン製造システムに構成され、炭化水素系原料処理システムを形成する。
【0069】
そして該ガス化炉10のガス化室11に廃棄物51、廃プラスチック52、パイロシリスタール53、炭化水素系重質残渣油54、およびバイオマス55等の有機物のいずれか、またはこれらの複数の混合物を投入し、投入された原料はガス化室11で熱分解ガス化され、可燃性ガスを含むガス61を生成する。生成されたガス61は、水素製造システムの分解炉101に熱源用ガスとして供給される。さらに、ガス化室11で熱分解ガス化によって発生した熱分解残渣を燃焼室12で燃焼して燃焼ガス62を生成するようにしている。また、炭化水素系原料処理システムはガス化炉10の燃焼室12の下流側に燃焼ガス熱交換器13および燃焼用空気234を改質炉133に供給する通路16を設けている。そして、該燃焼ガス熱交換器14に燃焼ガス62を供給し、該燃焼ガス62の顕熱を利用して改質炉133に供給する燃焼用の燃焼用空気234を予熱している。
【0070】
このように構成することによっても、燃焼ガス62は800℃〜1000℃程度の高温ガスであることから、その顕熱を改質炉133に供給することになり、ガス化炉10に供給する可燃物の燃焼熱を改質炉133で有効に利用できる。
【0071】
なお、図9では、燃焼用の空気234の予熱を燃焼ガス熱交換器14だけで行うように構成しているが、2段若しくはより多段で燃焼用の空気234の予熱を行ってもよい。例えば、改質炉133の出口の熱交換器134、燃焼ガス熱交換器14および改質炉133の中間部に位置する熱交換器で燃焼用の空気234を予熱してもよい。なお、水素製造プロセスの動作は図2の水素製造プロセスと同じであるのでその説明は省略する。
【0072】
なお、第4、第5および第6の実施例においては、炭化水素系原料処理システムとして改質炉を有する水素製造システムを挙げているが、炭化水素系原料処理システムの改質炉は水素製造プロセスの改質炉に限定されるものではない。該改質炉は、他の炭化水素の改質を行う改質炉であってもよく、例えば炭化水素を水蒸気や水素、炭化水素等の改質剤と共に改質炉に供給して、ガソリンを生成する触媒改質プロセスを行うようにしてもよい。
【0073】
以上本発明の好ましい実施形態の詳細を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明は、石油精製プロセスや石油化学プロセスのように炭化水素系原料を分解炉で熱分解または改質炉で改質して処理する炭化水素系原料処理システムに利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】エチレン製造システムを示すブロック図である。
【図2】水素製造ステムを示すブロック図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る炭化水素系原料処理システムを示すブロック図である。
【図4】図3に示す炭化水素系原料処理システムでガス化炉として用いられる内部循環流動床ガス化炉の構成例を示す断面図である。
【図5】本発明の第2の実施形態に係る炭化水素系原料処理システムを示すブロック図である。
【図6】本発明の第3の実施形態に係る炭化水素系原料処理システムを示すブロック図である。
【図7】本発明の第4の実施形態に係る炭化水素系原料処理システムを示すブロック図である。
【図8】本発明の第5の実施形態に係る炭化水素系原料処理システムを示すブロック図である。
【図9】本発明の第6の実施形態に係る炭化水素系原料処理システムを示すブロック図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃棄物、炭化水素系重質残渣油、および有機物の少なくとも1つを熱分解ガス化し熱源用ガスを生成するガス化炉と、
前記ガス化炉で得られた熱源用ガスを用いて炭化水素系原料を熱分解する分解炉と、
を備えた、炭化水素系原料処理システム。
【請求項2】
前記分解炉はエチレン製造プロセスの分解炉である、請求項1に記載の炭化水素系原料処理システム。
【請求項3】
前記ガス化炉は、廃棄物、炭化水素系重質残渣油、および有機物の少なくとも1つの熱分解ガス化による第1のガスと、熱分解ガス化残渣の燃焼による第2のガスとを分離して生成するよう構成されている、請求項1に記載の炭化水素系原料処理システム。
【請求項4】
前記第2のガスは前記分解炉の熱源用ガスとして用いられる、請求項3に記載の炭化水素系原料処理システム。
【請求項5】
前記第2のガスによって空気を予熱するための熱交換器と、
前記分解炉に予熱された空気を供給するための通路と、
をさらに備えた、請求項3に記載の炭化水素系原料処理システム。
【請求項6】
廃棄物、炭化水素系重質残渣油、および有機物の少なくとも1つを熱分解ガス化し熱源用ガスを生成するガス化炉と、
前記ガス化炉で得られた熱源用ガスを用いて炭化水素系原料を改質する改質炉と、
を備えた、炭化水素系原料処理システム。
【請求項7】
前記改質炉は水素製造プロセスの改質炉である、請求項6に記載の炭化水素系原料処理システム。
【請求項8】
前記ガス化炉は、廃棄物、炭化水素系重質残渣油、および有機物の少なくとも1つの熱分解ガス化による第1のガスと、熱分解ガス化残渣の燃焼による第2のガスとを分離して生成するよう構成されている、請求項6に記載の炭化水素系原料処理システム。
【請求項9】
前記第2のガスは前記改質炉の熱源用ガスとして用いられる、請求項8に記載の炭化水素系原料処理システム。
【請求項10】
前記第2のガスによって空気を予熱するための熱交換器と、
前記改質炉に予熱された空気を供給するための通路と、
をさらに備えた、請求項8に記載の炭化水素系原料処理システム。
【請求項11】
廃棄物、炭化水素系重質残渣油、および有機物の少なくとも1つを熱分解ガス化して熱源用ガスを生成する工程と、
炭化水素系原料を熱分解する分解炉に前記熱源用ガスを供給する工程と、
を備えた、炭化水素系原料処理方法。
【請求項12】
前記分解炉はエチレン製造プロセスの分解炉である、請求項11に記載の炭化水素系原料処理方法。
【請求項13】
前記熱分解ガス化工程は、廃棄物、炭化水素系重質残渣油、および有機物の少なくとも1つの熱分解ガス化による第1のガスと、熱分解ガス化残渣の燃焼による第2のガスとを分離して生成する工程を有する、請求項11に記載の炭化水素系原料処理方法。
【請求項14】
前記第2のガスは前記分解炉の熱源用ガスとして用いられる、請求項13に記載の炭化水素系原料処理方法。
【請求項15】
熱交換によって前記第2のガスで空気を予熱する工程と、
前記分解炉に予熱された空気を供給する工程と、
をさらに備えた、請求項13に記載の炭化水素系原料処理方法。
【請求項16】
廃棄物、炭化水素系重質残渣油、および有機物の少なくとも1つを熱分解ガス化して熱源用ガスを生成する工程と、
炭化水素系原料を改質する改質炉に前記熱源用ガスを供給する工程と、
を備えた、炭化水素系原料処理方法。
【請求項17】
前記改質炉は水素製造プロセスの改質炉である、請求項16に記載の炭化水素系原料処理方法。
【請求項18】
前記熱分解ガス化工程は、廃棄物、炭化水素系重質残渣油、および有機物の少なくとも1つの熱分解ガス化による第1のガスと、熱分解ガス化残渣の燃焼による第2のガスとを分離して生成する工程を有する、請求項16に記載の炭化水素系原料処理方法。
【請求項19】
前記第2のガスは前記改質炉の熱源用ガスとして用いられる、請求項18に記載の炭化水素系原料処理方法。
【請求項20】
熱交換によって前記第2のガスで空気を予熱する工程と、
前記改質炉に予熱された空気を供給する工程と、
をさらに備えた、請求項18に記載の炭化水素系原料処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2007−523218(P2007−523218A)
【公表日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−523457(P2006−523457)
【出願日】平成17年1月27日(2005.1.27)
【国際出願番号】PCT/JP2005/001552
【国際公開番号】WO2005/075343
【国際公開日】平成17年8月18日(2005.8.18)
【出願人】(000000239)株式会社荏原製作所 (1,477)
【Fターム(参考)】