説明

炭化硼素質焼結体およびその製造方法

【課題】高い硬度を有する炭化硼素質焼結体は、研削抵抗が大きいため、研削加工時のクラックの伝播の効率が悪く、加工性が低という問題があった。
【解決手段】炭化硼素を主成分とし、グラファイトおよび炭化珪素を含み、気孔を有する炭化硼素質焼結体からなり、前記グラファイトが前記気孔を規定する気孔規定面に主として存在させることで、高い硬度を維持したままで研削加工性の高い焼結体を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高硬度で且つ研削加工性に優れた炭化硼素質焼結体およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、炭化硼素は、軽量で、ダイヤモンドや立方晶窒化硼素に次ぐ高い硬度を有するのに加えて、高い機械的強度を有することから、耐摩耗材などに使用されている。このような特性を有する炭化硼素を用いて作製される炭化硼素質焼結体において、上述した炭化硼素の特性の一つである高い硬度を有効に生かすには、この炭化硼素質焼結体の焼結性を充分に高める必要がある。しかし、炭化硼素は難焼結性であるため、通常の焼結技術では炭化硼素質焼結体における焼結性を充分に高めることが困難であった。そこで、炭化硼素質焼結体における焼結性を充分に高める技術が開発され、例えば特許文献1に開示されている。
【0003】
特許文献1では、α−炭化珪素、炭化硼素、炭素、およびコークス化すると炭素を形成する有機物質からなる微粒状混合物を非加圧焼成して得られた焼結体を、圧力伝達媒質としての不活性ガスを用いる高圧オートクレーブ内で再圧縮することにより炭化硼素質焼結体を得る技術が開示されている。そして、この技術により得られる炭化硼素質焼結体は、その焼結性が充分に高められていることから、高い相対密度を有していた。
【特許文献1】特公平2−053387号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1で開示される技術により得られた炭化硼素質焼結体は、上述の焼成方法を用いることで高い相対密度を有することから、高い硬度を有するが、通常、焼結体に研削加工を施す際には、焼結体中の気孔にクラックを発生させ、そのクラックを他の気孔の周囲に伝播させて加工を進行させる。しかし、炭化硼素質焼結体は気孔の周囲にも主に炭化硼素が存在しており、研削加工時のクラックの発生、伝播を効率よく行うことができず、所望の形状に研削加工する際に加工速度が非常に遅く、また研削抵抗が大きいため、形状を高精度に加工し難く、研削加工性が低いものであった。さらには、研削加工の加工速度を上げるべく過剰の負荷を与えて研削加工を行うと、その負荷応力に起因して炭化硼素質焼結体に欠けが発生しやすく、形状によっては破壊するおそれもあるという問題があった。
【0005】
本発明は、このような問題を解決すべく案出されたものであり、高硬度で且つ研削加工性に優れた炭化硼素質焼結体およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る炭化硼素質焼結体は、炭化硼素を主成分とし、グラファイトおよび炭化珪素を含み、複数の気孔を有するものであって、前記グラファイトは、主として前記気孔を規定する気孔規定面において少なくとも一部が露出するように存在することを特徴としている。ここで、気孔規定面とは、気孔という空間を仕切る(規定する)面を意味している。
【0007】
本炭化硼素質焼結体は、断面視において断面が露見する前記気孔の該断面における前記気孔規定面の長さの総和をLaとし、該気孔規定面において前記グラファイトが露出している部位の長さの総和をLpとしたとき、(Lp/La)が0.3以上であるのが好ましい。
【0008】
本炭化硼素質焼結体において前記グラファイトは、その含有量が前記炭化硼素質焼結体100質量%に対して1質量%以上20質量%以下であり、前記炭化珪素は、その含有量が前記炭化硼素質焼結体100質量%に対して0.1質量%以上10質量%以下であるのが好ましい。
【0009】
本炭化硼素質焼結体において前記グラファイトは、前記気孔規定面に少なくとも一部が露出しているものの存在比率が全体の80%以上であるのが好ましい。
【0010】
本炭化硼素質焼結体において前記グラファイトは、その結晶形状が異方性形状であるのが好ましい。ここで、異方性形状とは、結晶粒子が、例えば、板状、柱状、針状などのようにアスペクト比が1より大きい形状であることを意味する。また、アスペクト比とは、所定断面におけるグラファイトの最大長さとなる線分を長軸とし、その長軸の中心を通り且つその長軸と垂直な線分を短軸とした場合の、長軸の長さを短軸の長さで割った比率を意味する。
【0011】
本炭化硼素質焼結体において前記グラファイトは、その長径の平均値が1μm以上15μm以下であるのが好ましい。ここで、長径とは、異方性形状の結晶における長軸(アスペクト比を表す長軸)の長さを意味する。
【0012】
本炭化硼素質焼結体において前記炭化硼素質焼結体は、その気孔率が10%以下であるのが好ましい。
【0013】
本炭化硼素質焼結体において前記炭化硼素質焼結体は、その気孔率が1%以上6%以下であるのが好ましい。
【0014】
本発明に係る炭化硼素質焼結体の製造方法は、炭化硼素に炭化珪素およびグラファイトを添加、調合して原料を得る調合工程と、前記原料を含む成形材料を成形して成形体を得る成形工程と、前記成形体を焼成する焼成工程とを含む方法であって、前記焼成工程は、前記成形体中の前記グラファイトを第1基準温度で溶解させる溶解工程と、前記第1基準温度より高い第2基準温度に昇温した後で冷却することにより、前記溶解工程において溶解したグラファイトを析出させる析出工程とを含むことを特徴としている。
【0015】
本製造方法において前記焼成工程は常圧焼成であるのが好ましい。
【0016】
本製造方法において前記第1基準温度は2100℃以上2300℃以下であり、前記第2基準温度は2200℃以上2350℃以下であるのが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明の炭化硼素質焼結体では、グラファイトが主として気孔を規定する気孔規定面において少なくとも一部が露出するように存在している。つまり、本炭化硼素質焼結体では、炭化硼素より剛性の低いグラファイトが研削加工時にクラックが伝播し易い気孔の周囲に主として存在しているため、研削加工時において隣り合う気孔間におけるクラックの伝播が発生し易くなる。また、上述のように研削加工性が高められるため、気孔率を過度に高めなくてすみ、その分、高い硬度を維持することが可能となる。したがって、本炭化硼素質焼結体では、炭化硼素の特性の一つである高い硬度を有効に生かしつつ、研削加工性も充分に高めることができる。
【0018】
本発明の炭化硼素質焼結体は、断面視において断面が露見する気孔の該断面における気孔規定面の長さの総和をLaとし、該気孔規定面においてグラファイトが露出している部位の長さの総和をLpとしたときの(Lp/La)が0.3以上であることから、高い硬度を確保しつつ、より研削加工性を高い焼結体を得ることができる。
【0019】
本発明の炭化硼素質焼結体は、グラファイトの含有量が炭化硼素質焼結体100質量%に対して1質量%以上20質量%以下であり、炭化珪素の含有量が炭化硼素質焼結体100質量%に対して0.1質量%以上10質量%以下であることから、常圧焼成においても炭化硼素質焼結体の焼結性を充分に高めることができ、焼結体を高硬度に保持することができる。
【0020】
本発明の炭化硼素質焼結体は、グラファイトにおける、気孔規定面に少なくとも一部が露出しているものの存在比率が全体の80%以上である場合、高い硬度を確保しつつ、研削加工性を充分に高めるうえで好適である。
【0021】
本発明の炭化硼素質焼結体は、グラファイトの結晶形状が異方性形状である場合、研削加工時にグラファイトの結晶の長手方向に沿ってクラックが伝播し易く、クラックの伝播に方向性を持たせることができるため、クラックが分散して伝播するのを抑制でき、より研削加工性の高い焼結体を得ることができる。
【0022】
また、グラファイトの長径の平均値が1μm以上15μm以下である場合、研削加工時にある気孔を起点として生じたクラックが近傍の気孔へ効率よく伝播するため、より研削加工性の高い焼結体を得ることができる。
【0023】
本発明の炭化硼素質焼結体は、気孔率が10%以下(特に、1%以上6%以下)であることから、研削加工性を充分に高めつつ、より高硬度の焼結体を得ることができる。
【0024】
本発明の炭化硼素質焼結体の製造方法は、焼成工程において、成形体中のグラファイトを第1基準温度で溶解させる溶解工程と、第1基準温度より高い第2基準温度に昇温した後で冷却することにより、溶解工程において溶解したグラファイトを析出させる析出工程とが行われる。これにより、主として気孔を規定する気孔規定面において少なくとも一部が露出するようにグラファイトが存在する炭化硼素質焼結体を適切に製造することができる。つまり、本製造方法は、炭化硼素質焼結体において気孔規定面に少なくとも一部が露出しているグラファイトの存在比率を高めるうえで好適である。
【0025】
本製造方法において、焼成工程が常圧焼成である場合、クラック発生の起点となる気孔を所定の気孔率で形成することができるため、高い硬度を確保しつつ、研削加工性が充分に高められた炭化硼素質焼結体を製造するうえで好適である。
【0026】
本製造方法において、第1基準温度が2100℃以上2300℃以下であり、第2基準温度が2200℃以上2350℃以下である場合、炭化硼素質焼結体において気孔規定面に少なくとも一部が露出しているグラファイトの存在比率を高めるうえで好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明に係る炭化硼素質焼結体について説明する。
【0028】
本発明に係る炭化硼素質焼結体は、炭化硼素を主成分とし、グラファイトおよび炭化珪素を含んでなり、複数の気孔を有するものである。主成分である炭化硼素は、軽量でありながら、高い硬度、剛性を有するものである。含有するグラファイトおよび炭化珪素は、炭化硼素質焼結体の焼成工程において焼結助剤として作用し、焼成中にそれぞれが溶解して液相を生成し、さらに固相焼結の機構により炭化硼素の緻密化を促進する。その後、焼成が終了し焼結体が冷却される段階では炭化硼素の粒界に広がっている液相のグラファイトおよび炭化珪素が析出する。その結果、高い硬度、剛性、圧縮強度を有する炭化硼素質焼結体を得ることができる。
【0029】
ここで、炭化硼素が主成分であることは、蛍光X線分析法による定量分析にて確認することができ、焼結体中に占める炭化硼素の含有量が50質量%以上であることによって確認することができる。また、炭化硼素質焼結体中のグラファイトおよび炭化珪素は例えばCuKα線を用いたX線回折法で同定することによって確認できる。
【0030】
本発明の炭化硼素質焼結体は、複数の気孔を有しており、含有されているグラファイトが主としてこの気孔を規定する気孔規定面に、その一部が露出するように存在していることが重要である。
【0031】
気孔規定面とは、気孔という空間を仕切る(規定する)面を意味しており、この気孔規定面にグラファイトの少なくとも一部が露出、即ち気孔の近傍または隣接してグラファイトが存在することを意味する。また、気孔規定面に少なくとも一部が露出するグラファイトの存在比率は、炭化硼素質焼結体中のグラファイト100%に対して50%以上であればよい。
【0032】
炭化硼素質焼結体を所望の形状に研削加工する際、先ず焼結体内のある気孔を起点としてクラックが発生し、それが気孔の近傍または隣接する他の気孔に伝播することにより加工が進行していくのであるが、本発明の炭化硼素質焼結体は気孔を有することで、緻密な炭化硼素質焼結体と比べて低応力でクラックが発生しやすく、気孔から気孔へ伝播しやすいため研削加工性の高い、即ち快削性を有する焼結体を得ることができる。また、グラファイトの少なくとも一部が気孔規定面に露出するように主として存在することにより、気孔を起点として発生したクラックが他の気孔へ伝播する際、気孔規定面に一部が露出するグラファイトにより気孔から剥離したり、グラファイト自身を破壊したりすることで、気孔規定面に露出するグラファイトを介して他の気孔へとクラックが伝播し易くなり、研削加工性の高い、即ち、快削性を有する焼結体を得ることができる。
【0033】
なお、炭化硼素質焼結体の快削性は、研削抵抗値を測定することで判断でき、研削抵抗値が低い程、快削性が高くなる。研削抵抗とは、一定条件下で焼結体に穴開け加工を行う際の研削抵抗(N)を水晶圧電式動力計により検出するものである。具体的には、例えば、直径80mm×厚さ10mmの円板状の炭化硼素質焼結体からなる研削抵抗測定用試料を作製し、マシニングセンタ(大阪機工株式会社製のVM4II型立形)にこの試料の一方の主面を固定する。次いで、#120のダイヤモンドを電着した外径5mmのコアドリルをマシニングセンタに取り付け、ドリルに注水しながらドリルの回転数2000rpm、送り速度2mm/分で、試料の他方主面に垂直方向に穴開け加工する。この加工中に、ドリルの長手方向の研削抵抗(N)を水晶圧電式動力計(KISTLER株式会社製水晶圧電式動力計TYPE9254)により検出する。
【0034】
グラファイトの存在状態は、本発明の炭化硼素質焼結体断面の表面または研磨面を、X線マイクロアナライザーによるカーボンの元素マッピングおよび二次電子像の観察により、観察面の気孔周辺のグラファイトの分布状態を見ることによって確認できる。また、気孔規定面に少なくとも一部が露出するグラファイトの存在比率は、上記表面または研磨面の任意箇所の二次電子像を倍率1000倍にて観察し、存在するグラファイトの結晶の個数を全体として、これに占める気孔規定面に少なくとも一部が露出するグラファイトの結晶の個数の割合から算出することができる。
【0035】
さらには、炭化硼素質焼結体におけるグラファイトは、前記気孔規定面に少なくとも一部が露出しているものの存在比率が全体の80%以上であることが好ましい。
【0036】
炭化硼素質焼結体中のグラファイトのうち80%以上という大部分が気孔規定面にその一部が露出するように存在することでクラックの伝播に寄与するグラファイトの割合が多くなり、焼結体の研削加工性をより高いものとすることができる。一方、気孔規定面に少なくとも一部が露出しているグラファイトの存在比率は高いほど研削加工性が高いが、焼結体内のグラファイトが気孔規定面に集中して存在し過ぎると、焼結体におけるグラファイトの分散度が小さくなり、焼結助剤としての効果が充分に発揮されず、焼結性が悪くなり、その結果、十分に硬度が高い焼結体を得ることができないため、その割合は95%以下とすることがより好ましい。ただし、気孔規定面が焼結体全体に分散している場合はこの限りではない。
【0037】
本発明の炭化硼素質焼結体は、断面視において断面が露見する前記気孔の該断面における前記気孔規定面の長さの総和をLaとし、該気孔規定面において前記グラファイトが露出している部位の長さの総和をLpとしたとき、(Lp/La)が0.3以上であることが好ましい。
【0038】
図1は本発明の炭化硼素質焼結体を断面視した際の断面図を模式的に表したものである。図1において、1は主成分の炭化硼素、2は気孔、3はグラファイト、4は炭化珪素を模式的に示しており、炭化硼素はその結晶構造を省略して示している。
【0039】
ここで、断面における前記気孔規定面の長さの総和Laとは、焼結体をある断面において断面視した際に、その断面に露見する気孔2の前記気孔規定面の長さ、即ち、断面に露見した気孔2の前記断面上における気孔2の長さの総和であり、気孔規定面において前記グラファイト3が露出している部位の長さの総和をLpとは、焼結体をある断面において断面視した際に、その断面上に露出するグラファイト3の周囲の長さの総和である。それぞれの長さの総和の比(Lp/La)を0.3以上とすることにより、気孔規定面におけるグラファイト3の占める割合を限定することとなり、気孔規定面におけるグラファイト3の露出割合を高いものにできるため、気孔2を起点としたクラックがどのような方向で発生しても、または進展してもグラファイト3が存在する確率が高くなるため、グラファイト3を介してクラックの伝播を高め、さらに研削加工性の高い終結体を得ることができる。一方、(Lp/La)が0.3未満となると、気孔規定面におけるグラファイト3の露出割合が低く、快削性が低下するばかりでなく、加工方向による快削性のばらつきが生じやすい。また、この(Lp/La)は0.6以上とすることがより好ましく、さらに快削性を高めることができる。
【0040】
なお、断面における前記気孔規定面の長さの総和Laおよび気孔規定面においてグラファイトが露出している部位の長さの総和Lpは、前記断面の研磨面にて、任意箇所の二次電子像を倍率×1000で観察し、その観察結果を画像解析にて測定することにより得られる。
【0041】
炭化硼素質焼結体における前記グラファイトは、その含有量が前記炭化硼素質焼結体100質量%に対して1質量%以上20質量%以下であり、前記炭化珪素は、その含有量が前記炭化硼素質焼結体100質量%に対して0.1質量%以上10質量%以下であることが好ましい。
【0042】
炭化硼素は化学式ではBCと表されるが、一般的に硼素原子と炭素原子のモル比B/Cが化学式の4.0より大きくなる性質がある。つまり、炭素が硼素に対して不足している状態となるため、常圧焼成を行っても緻密化が促進し難い。そこで、グラファイトを上記含有量とすることで、モル比B/Cを4.0に近づけることが可能となり、常圧焼成においても緻密化が促進される。また、炭化珪素を上記含有量とすることで、緻密化を促進し、適宜気孔率を調整することができる。これにより、快削性に加え、常圧焼成においても焼結性が高く、高密度、高硬度の焼結体とすることができる。一方、炭化硼素質焼結体のグラファイトおよび炭化珪素の含有量が上記の範囲から外れた場合、焼結体の相対密度が低下しやすく、それにともない気孔率が増加しやすい。その結果、硬度をより高いものにすることができないという恐れがある。グラファイトの含有量は、5質量%以上10質量%以下がより好ましく、炭化珪素の含有量は0.5質量%以上5質量%以下がより好ましく、より硬度の高い焼結体を得ることができる。
【0043】
なお、炭化硼素質焼結体中のグラファイト、炭化珪素のそれぞれの含有量は、ICP(Inductively Coupled Plasma)発光分析法を用いて測定することができる。
【0044】
また、前記グラファイトは、その結晶粒子が異方性形状であることが好ましい。前記異方性形状とは、結晶粒子が、例えば、板状、柱状、針状などのようにアスペクト比が1より大きい形状であることを意味する。なお、アスペクト比とは、所定断面におけるグラファイトの最大長さとなる線分を長軸とし、その長軸の中心を通り且つその長軸と垂直な線分を短軸とした場合の、長軸の長さを短軸の長さで割った比率を意味するものである。グラファイトがこのような異方性形状とすることで、グラファイトの結晶粒子の長手方向(長径方向)に沿ってクラックが伝播し易くなるため、気孔を起点として発生したクラックがこの気孔の気孔規定面に一部が露出するグラファイトの長手方向に沿って伝播しやすく、その近傍または隣接して存在する気孔の気孔規定面に一部が露出するグラファイトの長手方向に沿って伝播しやすく、この伝播を繰り返して研削加工できるため、より研削加工性の高い焼結体を得ることができる。
【0045】
また、結晶粒子の形状が異方性形状を成すグラファイトは、その長径の平均値が1μm以上15μm以下であることが好ましく、気孔を起点として発生したクラックをこの気孔の近傍または隣接する気孔へさらに効率よく伝播させることができるため、研削加工性をより高めることができる。一方、長径の平均値が1μm未満となると、クラックが効率よく伝播せず、15μmを超えると、クラックは伝播するものの所望の加工形状に沿って伝播しにくくなる。
【0046】
なお、グラファイトの長径の平均値は、炭化硼素質焼結体の研磨面にて、任意箇所の二次電子像を倍率×1000で観察しこの観察面でn=25個のグラファイトの結晶粒子の長径を測定し、その平均値を算出することで得られる。
【0047】
本発明の炭化硼素質焼結体は、その気孔率が10%以下であることが好ましい。炭化硼素質焼結体はグラファイトの一部が気孔規定面に露出して存在するため、研削加工時のクラックを効率よく伝播させるため研削加工性が高められる。そのため、焼結体の気孔率を過度に高めなくても充分に高い研削加工性を有する焼結体を得ることができ、したがって、その気孔率を10%以下として、炭化硼素の特性の一つである高い硬度を維持したまま、研削加工性も充分に高めることができる。さらには、気孔率を1%以上6%以下とすることで、充分に高い硬度、高い研削加工性を有する焼結体を得ることができる。
【0048】
なお、焼結体の気孔率は、JIS R 2205に準拠してアルキメデス法により測定して得られるものである。
【0049】
前記炭化硼素における硼素含有濃度は、70質量%以上であることが好ましい。これにより、高硬度、高強度の機械的強度の高い焼結体とすることができる。硼素含有濃度が70質量%より低いと炭化硼素質焼結体に占める炭化硼素の割合が少なくなり、硬度、強度が低下し、相応しくない。なお、炭化硼素質焼結体中の硼素含有濃度はICP(Inductively Coupled Plasma)発光分析法を用いて測定することができる。
【0050】
次に本発明の炭化硼素質焼結体の製造方法について説明する。
【0051】
本発明の炭化硼素質焼結体の製造方法として、炭化硼素にグラファイトおよび炭化珪素を添加、調合して原料を得る調合工程、前記原料を含む成形材料を成形して成形体を得る成形工程、前記成形体を焼成する焼成工程とを含み、各工程について以下、詳細に説明する。
【0052】
第1に、炭化硼素にグラファイトおよび炭化珪素を添加、調合して原料を得る調合工程について説明する。
【0053】
例えば、平均粒径(D50)が0.5μm以上2μm以下である炭化硼素粉末を準備する。この炭化硼素粉末は、BとCのモル比(B/C比)が化学量論比4の粉末すなわちBCの組成からなる粒子で構成される粉末の他に、次のような粉末を用いることができる。すなわち、炭化硼素(BC)は、BとCに対して広い固溶領域を有しているため、市販の炭化硼素粉末にはBとCのモル比(B/C比)が化学量論比4の粉末だけでなく、B/C比が3.5以上4未満、またはB/C比が4よりも大きく10以下の範囲の粉末、例えばB13等の混入した粉末や、フリーカーボン、硼酸(B(OH))、無水硼酸(B)、鉄(Fe)、アルミニウム(Al)、ケイ素(Si)などが混入した粉末も存在しており、このような炭化硼素粉末であってもよい。これらの粉末を用いた場合、焼結助剤としてグラファイト粉末および炭化珪素粉末をこれら粉末に添加することで、焼成中、機械的圧力を印加しなくても、焼結させることができる。炭化硼素粉末は、平均粒径0.5〜2μmの微細な粉末であることが望ましいが、平均粒径が例えば20μm程度と大きな粒径の粉末や、この粉末を予備粉砕した炭化硼素粉末も使用可能である。ここで、予備粉砕は、粉砕メディアを使用しないジェットミル等による粉砕であることが、不純物の混入を少なくするために好ましい。
【0054】
この炭化硼素粉末に対して、グラファイトおよび炭化珪素の粉末をそれぞれ添加する。得られる焼結体におけるグラファイトの含有量を炭化硼素質焼結体100質量%に対して1質量%以上20質量%以下、炭化珪素の含有量を炭化硼素質焼結体100質量%に対して0.1質量%以上10質量%以下とするには、グラファイト粉末を炭化硼素粉末に対し、1質量%以上20質量%以下、炭化珪素粉末を0.1質量%以上10質量%以下とすればよい。
【0055】
炭化硼素質焼結体に含まれるグラファイトは(002)面からの半値幅が狭く結晶性の高いグラファイトを用いるのが好ましく、このようなグラファイト粉末として、例えば高配向熱分解グラファイト(HOPG)粉末を用いればよい。
【0056】
さらに、焼結助剤として、グラファイト粉末、炭化珪素粉末以外に焼結を促進させるために、元素周期律表第4族、5族、6族より選ばれる金属元素の硼化物や、元素周期律表第3属から選ばれる金属元素の酸化物のうち少なくともいずれか1種を添加してもよい。好ましくは硼化ジルコニウム(ZrB)、硼化チタン(TiB)、硼化クロム(CrB)の硼化物や酸化イットリウム(Y)の酸化物である。
【0057】
そして、準備した炭化硼素粉末、グラファイト粉末および炭化珪素粉末、さらにその他の焼結助剤を回転ミル、振動ミル、ビーズミル等のミルに投入し、水、アセトン、イソプロピルアルコール(IPA)のうち少なくともいずれか1種とともに湿式混合し、スラリーを作製する。粉砕用メディアは、表面にイミド樹脂を被覆したメディア、窒化硼素質、炭化珪素質、窒化珪素質、ジルコニア質、アルミナ質等の各種焼結体からなるメディアを使用することができるが、不純物として混入の影響の少ない材質である窒化硼素質焼結体からなるメディア、または表面にイミド樹脂を被覆したメディアが好ましい。また、得られるスラリーの粘度を下げる目的で粉砕前に分散剤を添加してもよい。
【0058】
次いで、得られたスラリーを乾燥して乾燥粉体を作製する。この乾燥の前に、スラリーを目開きが#200よりも小さいメッシュに通して粗大な不純物やゴミを除去し、さらに磁力を用いた除鉄機で除鉄するなどの方法で、鉄およびその化合物を除去することが好ましい。また、スラリーにパラフィンワックスやポリビニルアルコール(PVA)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリエチレンオキサイド(PEO)、アクリル系樹脂などの有機バインダーをスラリー中の粉末100質量部に対して1〜10質量部添加、混合することが、後述する成形の際に、成形体のクラックや割れ等の発生を抑制できるので好ましい。スラリーの乾燥方法としては、スラリーを容器に入れて加熱、乾燥させてもよいし、スプレードライヤーで乾燥させても良く、または他の方法で乾燥させても何ら問題ない。
【0059】
第2に、得られた原料粉末を含む成形材料を成形して成形体を得る成形工程として、得られた乾燥粉体を周知の成形方法、例えば成形型を用いた粉末加圧成形法、静水圧を利用した等方加圧成形法を用いて、相対密度45%以上70%以下の所望の形状とする。
【0060】
なお、成形体が有機バインダーを含む場合には、500℃以上900℃以下の温度で、窒素ガス雰囲気下にて有機バインダーを脱脂する。
【0061】
第3に、前記得られた成形体を焼成する焼成工程として、得られた成形体を焼成炉を用いて焼成する。焼成炉として黒鉛性の抵抗発熱体により加熱する焼成炉を用い、この焼成炉中に成形体を載置する。好ましくは、成形体全体を囲うことのできる焼成用容器中(以下、これらを焼成用治具と記す。)に載置する。これは、焼成炉内の雰囲気中等から成形体に付着する可能性のある異物(例えば黒鉛製発熱体や炭素製断熱材から飛散する炭素片や、焼成炉中に組み込まれている他の無機材質製の断熱材の小片等)の付着を防止するためであり、さらには成形体からの揮発成分の飛散を防止するためである。焼成用治具の材質は黒鉛質のものが望ましく、炭化珪素質焼結体またはこれらの複合物からなり、さらには成形体全体を焼成用治具で囲うことが好ましい。
【0062】
次いで、焼成用治具に載置した成形体を焼成炉内に配置し、アルゴンガス中またはHeガス中のいずれか、もしくは真空中で焼成を行う。
【0063】
ここで、本発明の炭化硼素質焼結体の製造方法の焼成工程においては、前記成形体中のグラファイトを第1基準温度で溶解させる溶解工程と、前記第1基準温度より高い第2基準温度に昇温した後で冷却することにより、前記溶解工程において溶解したグラファイトを析出させる析出工程とを含むことが重要である。これにより、グラファイトの少なくとの一部が主として気孔を規定する気孔規定面に露出して存在させることができる。
【0064】
これは、第1基準温度では焼結助剤として添加した炭化珪素とともにグラファイトが溶解して、主成分である炭化硼素の粒界に行き渡り、第1基準温度以上の第2基準温度では溶解した液相の炭化珪素およびグラファイトを介して炭化硼素の焼結および粒成長が進む。さらにその後冷却することで、炭化硼素の粒界に存在する液相のグラファイトが一部の析出したグラファイトへ徐々に物質移動し、柱状、板状等の異方性のあるグラファイトが形成される。その時、析出したグラファイトにより炭化硼素の再配列が起こり、気孔が形成され、その結果、グラファイトが気孔まわりを取り囲む形になり、グラファイトが気孔を規定する気孔規定面に主として存在する状態となるのである。特に、第1基準温度およびその温度での保持時間をコントロールすることで、グラファイトの溶解および、炭化硼素の粒界への拡散が制御でき、その結果、グラファイトの結晶形状を調整することができる。これにより、柱状、板状等の異方性のあるグラファイトを形成することができる。また、グラファイトの結晶形状において、その長径の平均値が1μm以上15μm以下とするには、第2基準温度から1800℃付近までの冷却速度を800℃/時間以上1300℃/時間以下に制御することが好ましい。ただし、1800℃から常温までの冷却速度は、グラファイトの結晶の長径に影響しないため特に制御する必要はない。
【0065】
また、前記焼成工程は常圧焼成であることが好ましい。これにより、気孔率が10%以下の焼結体を得ることができる。また、第2基準温度およびその温度での保持時間をコントロールすることで焼結の進行を制御でき、その気孔率を1%以上6%以下に調整でき、加えて寸法、形状の制限が少ない炭化硼素質焼結体とすることができる。熱間等方圧加圧法(HIP)等の加圧焼成によると、焼成用容器等の焼成用治具が小さいため、成形体の寸法や形状に制約があり、さらに焼成装置の価格が高く、また工程でのコストも高くなる。
【0066】
前記第1基準温度は2100℃以上2300℃以下であり、前記第2基準温度は2200℃以上2350℃以下とすることが好ましい。これにより、炭化硼素質焼結体の焼成工程において、グラファイトの充分な溶融、炭化硼素の高い焼結性、ならびにグラファイトの析出が起こり、前記気孔規定面に少なくとも一部が露出しているグラファイトの存在比率を80%以上にすることができ、快削性の高い炭化硼素質焼結体とすることができる。また、得られた焼結体の断面視において断面が露見する前記気孔の該断面における前記気孔規定面の長さの総和をLaとし、該気孔規定面において前記グラファイトが露出している部位の長さの総和をLpとしたとき、(Lp/La)が0.3以上とするには、第1基準温度から第2基準温度までの昇温速度を1000℃/時間以上1200℃/時間以下に制御することが好ましい。
【0067】
具体的には、2100℃以上2300℃以下の第1基準温度の温度域で10分以上10時間以下保持した後、2200℃以上2350℃以下の第2基準温度の温度域で10分以上20時間以下保持して、相対密度90%以上に緻密化させる。昇温速度は1℃/分以上30℃/分以下が好ましい。また、上記の時間保持とは、所定の温度範囲内に滞在した時間の合計を意味し、例えば一定温度で保持する時間や、昇温時間、降温時間が保持時間に含まれる。なお、2000℃以上で保持する場合には炭化硼素、添加物成分の分解が生じるので、アルゴンガスまたはHeガス中で保持することが望ましい。
【0068】
また、緻密化をより促進するために、開気孔率が5%以下となった段階で、さらに高圧のガスで加圧してもよい。この加圧方法としては、高圧GPS(Gas Pressure Sintering)法や熱間等方加圧(HIP:hot isostatic press)法により、ガス圧1〜300MPaで加圧する方法を用いることが好ましく、これによって相対密度を特に95%以上に高めることができる。また、必要に応じてホットプレス法やSPS(Spark Plasma Sintering)法のように機械的圧力を印加する方法で焼結しても構わない。
【実施例】
【0069】
以下、本発明の実施例を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0070】
炭化硼素粉末としてFeを0.2質量%含有するD50=0.65μm、D90=1.40μmの粉末(D90/D50=2.2)と、焼結助剤としてグラファイト、炭化珪素の粉末をそれぞれ表1に示す焼結体組成になるよう秤量し、窒化硼素質焼結体からなる粉砕用メディアと共に回転ミルに投入してアセトン中で12時間混合し、スラリーを作製した。得られたスラリーを目開き#200のナイロン製メッシュに通して粗大なゴミ等を除去後、120℃で乾燥後、目開き#40のナイロン製メッシュで整粒して、原料粉末を作製した。
【0071】
得られた原料粉末を金型を用いた粉末加圧成形法を用いて、相対密度58%になるように成形し、直径6mm、高さ15mmの円柱状成形体を作製し、成形体に含まれる有機成分を600℃で窒素ガスをフローしながら脱脂した。
【0072】
次に、黒鉛性の抵抗発熱体により加熱する焼成炉を用い、グラファイト質焼結体からなる焼成用容器に脱脂後の成形体を載置し、昇温速度を20℃/分として昇温し、1600℃未満まで真空雰囲気、1600℃以上を110kPaのアルゴンガス雰囲気とした。昇温中、表1に示す第1基準温度で1時間以上3時間以下保持した後、更に昇温して表1に示す第2基準温度で1時間以上2時間以下焼成して、外径5mm、高さ12.5mmの円柱形状の試料No.1〜17をそれぞれ作製した。
【0073】
得られた試料からサンプルを切り出して、実施の形態にそれぞれ記載した方法を用いてX線回折法、ICP発光分析法によるサンプル中のグラファイト、炭化珪素の同定および定量、アルキメデス法による気孔率の測定、SEM、画像解析を用いたグラファイトの気孔規定面における存在比率およびLp/La比率、グラファイトの長径平均値、ならびにJIS R 1610に定められたビッカース硬さ試験方法により荷重9.807N(1kgf)でそれぞれ測定し、表1の焼結体特性に示した。
【0074】
なお、研削抵抗の測定用試料は、同様な製造方法にて直径80mm、厚さ10mmの円板状の試料を作製して評価した。
【0075】
また、比較例の試料として、熱間等法圧加圧法(HIP)を採用した以外は実施例と同様にして評価した。
【表1】

【0076】
表1からわかるように、気孔を規定する気孔規定面に少なくともグラファイトの一部が露出しているものの割合が50%以上である本発明の試料(No.2〜7,10〜16,18,19)は、硬度が15GPa以上であり、研削抵抗が790N以下と、高い硬度を維持し、且つ研削加工性の高い焼結体であることがわかった。
【0077】
特に、断面視において断面が露見する前記気孔の該断面における前記気孔規定面の長さの総和をLa、該気孔規定面において前記グラファイトが露出している部位の長さの総和をLpの比率(Lp/La)が0.3以上の試料(No.2〜7,10〜15,18,19)は、研削抵抗が770N以下とより低く、研削加工性がより高い焼結体であることがわかった。
【0078】
グラファイトの含有量が炭化硼素質焼結体100質量%に対して1質量%以上20質量%以下であり、炭化珪素の含有量が0.1質量%以上10質量%以下の試料(No.3〜6,10〜16,18,19)は、硬度が25GPa以上となり、より高い硬度を維持する焼結体であることがわかった。
【0079】
グラファイトが気孔規定面に少なくとも一部が露出しているものの存在比率が全体の80%以上の試料(No.4〜7,12〜14,18,19)は、研削抵抗が770N以下であり、研削加工性がより高い焼結体であることがわかった。
【0080】
グラファイトの結晶形状において、その長径の平均値が1μm以上15μm以下の試料(No.2〜5,10〜15,18,19)は、硬度が18GPa以上であり、研削抵抗が770N以下と、より高い硬度を維持し、且つ研削加工性がより高い焼結体であることがわかった。
【0081】
炭化硼素質焼結体中の気孔率が10%以下の試料(No.3〜6,10〜16,18,19)は、硬度が25GPa以上となり、より高い硬度を維持する焼結体であることがわかった。さらに、気孔率が1%以上6%以下の試料(No.4,11,12,14,15,18,19)は、硬度が29GPa以上であり、研削抵抗が770N以下と、より高い硬度を維持し、且つ研削加工性がより高い焼結体であることがわかった。
【0082】
また、製造方法における焼成工程の第1基準温度を2100℃以上2300℃以下とし、第2基準温度を2200℃以上2350℃以下として製造される試料(No.2〜7,10〜15,18,19)は、研削抵抗が770N以下であり、研削加工性がより高い焼結体を製造することができることがわかった。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明の炭化硼素質焼結体を断面視した際の様子を模式的に表した断面図である。
【符号の説明】
【0084】
1:炭化硼素
2:気孔
3:グラファイト
4:炭化珪素

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化硼素を主成分とし、グラファイトおよび炭化珪素を含み、複数の気孔を有する炭化硼素質焼結体であって、前記グラファイトは、主として前記気孔を規定する気孔規定面において少なくとも一部が露出するように存在することを特徴とする、炭化硼素質焼結体。
【請求項2】
断面視において断面が露見する前記気孔の該断面における前記気孔規定面の長さの総和をLaとし、該気孔規定面において前記グラファイトが露出している部位の長さの総和をLpとしたとき、(Lp/La)が0.3以上である、請求項1に記載の炭化硼素質焼結体。
【請求項3】
前記グラファイトは、その含有量が前記炭化硼素質焼結体100質量%に対して1質量%以上20質量%以下であり、前記炭化珪素は、その含有量が前記炭化硼素質焼結体100質量%に対して0.1質量%以上10質量%以下である、請求項1または2に記載の炭化硼素質焼結体。
【請求項4】
前記グラファイトは、前記気孔規定面に少なくとも一部が露出しているものの存在比率が全体の80%以上である、請求項1から3のいずれか一つに記載の炭化硼素質焼結体。
【請求項5】
前記グラファイトは、その結晶形状が異方性形状である、請求項1から4のいずれか一つに記載の炭化硼素質焼結体。
【請求項6】
前記グラファイトは、その長径の平均値が1μm以上15μm以下である、請求項5に記載の炭化硼素質焼結体。
【請求項7】
前記炭化硼素質焼結体は、その気孔率が10%以下である、請求項1から6のいずれか一つに記載の炭化硼素質焼結体。
【請求項8】
前記炭化硼素質焼結体は、その気孔率が1%以上6%以下である、請求項7に記載の炭化硼素質焼結体。
【請求項9】
炭化硼素にグラファイトおよび炭化珪素を添加、調合して原料を得る調合工程と、前記原料を含む成形材料を成形して成形体を得る成形工程と、前記成形体を焼成する焼成工程とを含む炭化硼素質焼結体の製造方法であって、
前記焼成工程は、前記成形体中の前記グラファイトを第1基準温度で溶解させる溶解工程と、前記第1基準温度より高い第2基準温度に昇温した後で冷却することにより、前記溶解工程において溶解したグラファイトを析出させる析出工程とを含むことを特徴とする、炭化硼素質焼結体の製造方法。
【請求項10】
前記焼成工程は常圧焼成である、請求項9に記載の炭化硼素質焼結体の製造方法。
【請求項11】
前記第1基準温度は2100℃以上2300℃以下であり、前記第2基準温度は2200℃以上2350℃以下である、請求項9または10に記載の炭化硼素質焼結体の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2008−133160(P2008−133160A)
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−320965(P2006−320965)
【出願日】平成18年11月29日(2006.11.29)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】