説明

無機水硬性バインダーを製造する方法

固形燃料の焼却によって生成される固形生成物、冶金スラグ、地上火災生成物、化石燃料の採掘後の焼却した採鉱の深部の貯鉱由来の生成物、ガラス製造廃棄物、セラミック製造廃棄物、れんが及びコンクリートの建設廃棄物、熱活性化粘土、低結晶火砕岩、堆積ラテライト、ボーキサイト、オパロライト、アロファノライト、珪藻岩、石灰岩、粘土岩及び粘土を含むセットからの人工及び/若しくは天然起源の材料から成る、建築用及び建築製品用のバインダーを製造する方法であって、該材料が、力パルスの作用から成る物理的処理に付され、該物理的処理の間に、被処理材料1gに対して50N〜3×10Nの大きさの力を1×10−6秒〜1×10−2秒の範囲の非常に短時間で作用させることによって機械的エネルギーEtkを被処理材料の粒子に伝えるか、或いは機械的エネルギーEtkを被処理材料の細粒に伝えるか、並びに/又は機械的エネルギーの伝達と共に及び/若しくはその後に、15×10Hz〜15×10Hzの周波数及び10−2T〜10Tの強度を有する交番磁界及び/若しくは変動磁界によって磁気エネルギーEtmをその細粒へ伝えるより多くの後続のパルスを用い、上記磁界は、強磁体が被処理材料に存在すする場合には該強磁体の粒子に、及び/又は機械的エネルギーの伝達の結果として生じた材料の粒子の欠陥の電荷に作用し、その結果、被処理材料の内部エネルギーが増大し、材料の粒子が少なくとも200マイクロメートルまでより細かくなり、同時に、該粒子の再凝集が防止され、被処理材料の化学反応性が高まり、乾燥バインダー及び/又は建築用乾燥材料が得られるか、並びに/或いは、被処理材料の重量をベースにして8.20重量%〜420重量%の量の水を添加し、製品の所望の形状に成形され、及び/又はオートクレーブ処理及び/若しくは乾燥予熱によって硬化することができる成形可能な湿潤バインダー及び/又は成形可能な湿潤材料を得る、方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無機水硬性バインダーを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
今日、種々の産業、特に例えば建設産業又は農業において、バインダーの需要が高い。有機バインダー及び無機バインダーの価格は、特にエネルギーの投入(inputs)の価格上昇に伴って上昇し続けており、特にバインダーの消費量が高い工業分野では、これは大きな経済的負担となる。他方で、いくつかの工業、とりわけエネルギー産業、冶金及び鉱業分野では、廃棄物や使用が困難な副生物が大量に生じている。これらの廃棄物は、環境に対して相当な負担となる。これらの材料のうち、10%〜20%とわずかの割合のみが、調整を加えることに困難の少ない分野において、細骨材の代替として、建築材料の充填剤として、又は、いわゆる「混合」若しくは「灰含有」セメント中のいわゆるポゾラン(puzzolanic)部分として、使用が見出されている。冶金において生じる廃棄物のいくつか、特に水砕スラグの一部は、いわゆる「スラグ」セメントの製造において添加剤として使用されている。近年、水砕スラグ及びいくらかの灰を熱活性化粘土と共に使用していわゆる「ジオポリマー」バインダーを製造する実験が行われている。しかし、それらの製造は比較的要件が厳しく、それらの取り扱いは、従来の建築材料を取り扱う方法とは大きく異なり、また、多くのさらに面倒な事態が伴う。したがって、それらの持つ比較的広範な興味深い特徴にもかかわらず、実際にはわずかな用途しか見出されていない。他の材料、例えば地上火災(ground fires)に起因する材料、露天掘り炭鉱の表土材料、又は焼却した採鉱の深部の貯鉱に由来する材料は、バインダーの製造には全く使用されていない。これらの材料は価格が手頃である。通常、それらの材料には十分なエネルギーが既に入っているため、それらの処理はエネルギー集約的ではない。天然の石からもバインダー及び製品を製造することができるが、これらも使用されていない。それらの石をベースとするまさにそのような代替的なバインダー及び材料は、例えばいかなる建設投資も、セメント工場のようなエネルギーを必要とする工場も必要なく、輸送インフラ及び他の産業部門の発展を確実にすることができるものの、国内の産業活動による大量の廃棄物又は副生物がない国々では、それらの石の使用が特に重要である。
【発明の概要】
【0003】
本発明の着想によると、建築用バインダーの製造をより効果的かつ安価にする上でこれまでに使用されていない可能性を物理的活性化技術の使用において見出すことができ、この活性化は、被処理材料の細粒に対する強力な機械的、磁気的、音響的、又は電気的インパルスの作用を使用し、この物理的活性化は、現在一般的に製造されている建築用バインダー又は他のバインダーの質を高めることができるだけではなく、特に種々の大規模な鉱工業生産において生じる廃棄物材料又は副生物の使用に関して、製造のための原料の基盤を大幅に拡大することもできる。また、機械的活性化は、バインダーを作製するために消費されるエネルギーの量を低減するという形で相当なエネルギーを節減することができる。
【0004】
本発明の主題は、特に建設、修理(rehabilitation)又は固化の目的で適用可能な無機バインダーを製造する方法である。本発明は、ポルトランドクリンカーセメント、非クリンカーセメント及びアルミナセメント並びに硫酸バインダーをベースとした、dastite、水硬性セメント及びローマン石灰(Roman limes)セメントの製造において有利に使用可能である。
【0005】
本発明の本質は、排他的ではないが特に、固形燃料の焼却で生じる固形生成物、冶金スラグ、地上火災由来の生成物、及び化石燃料の採掘後の焼却された廃棄堆積物由来の生成物、ガラス製造廃棄物、セラミクス製造廃棄物、れんが及びコンクリートの廃棄物、熱活性化粘土、低結晶火砕岩、堆積ラテライト、ボーキサイト、オパロライト(opalolite)、アロファノライト(allophanolite)、珪藻岩、石灰岩、粘土岩及び粘土を含む群から選択される人工及び/又は天然起源の材料の粒子が、結晶構造の基本格子の特徴における転位、乱れ、変化の形成、それらのフラクタル性の空間ネットワークにおけるクラック、隙間及び他の欠陥の形成、被処理材料の粒子における活性面、及び上記欠陥上の帯電した活性中心における活性面、及び活性面の形成を結果として生じる機械的エネルギーEtkを被処理材料の粒子に伝える(passing on)ための、並びに/又は、150Hz〜15×10Hzの周波数及び10−2T〜10Tの強度を有する交番磁界及び/若しくは変動磁界であって、被処理材料に強磁性体が存在する場合には該強磁性体の粒子に、及び/又は機械的エネルギーの伝達の結果として生じた材料粒子の欠陥の電荷に作用する交番磁界及び/若しくは変動磁界によって、磁気エネルギーEtmを被処理材料の粒子に伝えるための、少なくとも1つの力インパルス、好ましくはより連続的な力インパルスの作用から成る物理的処理に付され、それによって、被処理材料の粒子の内部エネルギーが増大し、そのような材料の細粒の大きさがより細かくなり、有利には少なくとも200μmまで低減し、かつ同時にその粒子の再凝集が防止されるようにすることにある。本発明に従って提供されるこの処理の目的は、特に、被処理材料の化学反応性を高めることによって、以下の利点、すなわち、加工中に供給されるエネルギーの節減、時間消費の短縮、最終製品の質の改善、加工用原料の適用分野の拡大の少なくとも1つを達成することである。本発明の別の好ましい実施の形態によると、被加工材料の粒子への磁気エネルギーEtmの伝達は、好ましくは、機械的エネルギーEtkの伝達と同時に、又はそのような伝達の後で起こる。本発明の目的上、任意の細粒、結晶若しくは断片、ペレット又はそれらの他の凝集体が、この材料の粒子としてみなされる。好ましい実施の形態の1つによると、粒子の粒度が粗すぎる場合、これらの粒子を最初に、5mm未満の大きさの粒子まで粉砕する。次いで、これらの粒子を、上記で規定したような本発明による加工に付す。
【0006】
機械的エネルギーの伝達における非常に短時間の力の作用によって、被処理材料の内部構造に欠陥が形成されるが、この理由は、そのような短時間の作用では力の作用を相殺する時間がないためである。
【0007】
さらなる有利な実施の形態によると、本発明による処理の前に、及び/又はその進行中に、及び/又はこの物理的処理の後に、被処理材料の重量をベースにして0.50重量%〜80.00重量%の量の化学添加剤を被加工材料に添加し、この化学添加剤は、pHを高め、及び/又はCa、Mg、Fe、Mn、P、Sの元素を含むセットからの元素のイオンを供給する。別の有利な実施の形態によると、被処理材料の重量をベースにして700重量%未満の量の充填剤を、pH値を高めるか又はイオンを供給する上記添加剤と共に、又は独立して添加し、乾燥バインダー及び/又は建築用乾燥材料を得る。別の有利な実施の形態によると、被処理材料の重量をベースにして8.20重量%〜420重量%の量の水を添加して、所望の製品形状に成形することができるか又はオートクレーブ処理及び/若しくは乾燥予熱(warming up)によって硬化することができる、成形可能な湿潤材料を得る。
【0008】
本発明によるさらに有利な実施の形態によると、被処理材料が固形燃料の燃焼で生じる固形生成物である場合、燃焼される固形燃料に添加剤を添加することによってその化学組成を最適化することができ、この添加剤は、Ca、Mg、Fe、Mnを含むセットからの少なくとも1つの元素を、関係式m=m/Xk1+m×Xk2(式中、mは固形燃料1トン当たりに添加される添加剤の重量であり、mは、固形燃料1トン中に含有される灰の重量であり、mは固形燃料1トン中に含有される硫黄の重量であり、Xk1は、その値が添加剤の組成に応じて変わり、常に2〜8の数の範囲(interval)にある係数であり、Xk2は、その値が添加剤の組成に応じて変わり、常に1〜4の数の範囲にある係数である)に従って、燃焼される固形化石燃料中の灰及び硫黄の含量に比例する量で含有する。さらにより好ましい実施の形態によると、この添加剤は、固形燃料と共に燃焼させる前に、単独で又は固形燃料と共に、機械的に活性化することができる。本発明の有利な実施の形態によると、添加剤は、少なくとも30重量%、より有利には40重量%〜80重量%の上記元素を含有する。添加剤は例えば、上記元素の酸化物、その炭酸塩若しくは水酸化物、又はさらにはその元素単独である。
【0009】
有利には、被処理材料の粒度分布(granulometric)及び相成分を、被処理材料の細粒に機械的エネルギーを伝える前に、及び/又はそれと同時に、及び/又はそのような伝達の後で、圧力粒状化(pressure granulation)、及び/又は1mm〜10mmの波長範囲及び10−2W/cm〜10W/cmの強度における1秒〜15×10秒の時間の電磁放射の作用によって最適化する。
【0010】
有利には、被処理材料の粒度分布及び相成分を、被処理材料の細粒への機械的エネルギーの伝達前及び/又はそれと同時に及び/又はその後で、圧力粒状化、及び/又は5秒〜15×10秒の時間150℃〜1500℃へ熱的に予熱することによって最適化する。
【0011】
本発明は、廃棄物又は使用が困難な副生物とみなされることが多い広範な天然材料及び人工材料中に存在するいくつかの物質の化学的性質を物理的に刺激することを使用し、上記物質は、上述の物理的処理の後に水の存在下で水和して新たな相へ再結晶化することができる。これは、上記物質が、水の存在下で反応に入ることができる高揮発性カチオン及びアニオンを十分に有する場合に、特に当てはまる。もちろん、これらの材料の大部分は、未加工状態では、水の存在下で、最適な化学組成を有していたとしても反応することができない。したがって、始めに、これらの材料を、前の段落に記載したように物理的処理に供することが必要である。また、運動エネルギー及び磁気エネルギーの作用を組み合わせるこの物理的処理を使用するという助けによって、他の方法による加工においては使用することができない上記材料を使用することが可能である。主に、これらの材料は結晶構造の割合が高い材料を含む。エネルギーの観点に関して、物理的処理用の機械の磨耗が最小限であることを考慮して、また好適な相成分を考慮すると、これらの材料のうち最良であるのは、750℃〜900℃の範囲の温度で、好ましくはCaをベースとする脱硫剤を使用する固形化石燃料の灰化によって生成される流動化灰の使用である。
【0012】
被処理材料の化学組成が最適ではない場合、すなわち、必要な反応のための十分なアニオン又はカチオンがないため、材料構造の物理的修飾単独では水が存在することのみでは新たに形成される鉱物学的相の形成が可能ではない場合、又は材料自体が、反応を行うために必要なレベルの十分に高いpHを有する環境を作り出すことができない場合、材料中に既に存在する成分の水和作用が起こるように、これらのイオンを送達するか、又は少なくとも環境のpHを調整することができる化学添加剤を使用することが必要である。化学添加剤を使用する必要がある場合、化学添加剤を被処理材料と共に物理的処理に供することが最も好ましい。個々の化学添加剤の量及び性質は、作り出すことが望まれる新たに形成される鉱物相の化学量論的組成に最も合うように選択されるべきである。
【0013】
次いで、上記バインダーに添加することができる充填剤の量は、様々な要因に応じて変わるが(depend on a whole number of factors)、通常は、最も要件の低い用途であっても、バインダーの重量をベースにして700重量%を超える充填剤を添加しても無駄である。
【0014】
上記のように処理される材料及び充填剤の混合物に添加される水の量は、材料及び充填剤中に含有される不活性物質に対する水分活性(hydraulically active)成分の比率及びこれらの構成要素の他の物理的パラメーターに応じて変わる。
【0015】
同様の材料の一般的に使用される処理方法と比較すると、本発明による方法はいくつかの利点を有する。第1の利点は、現在までは埋立地に堆積されていた産業廃棄物等の天然起源及び人工起源両方の様々な材料を、高品質の建築用バインダー及び製品に加工することが可能であり、またこれはセメントをベースとするバインダーを一切使用しないこと、又は上記のような産業がいずれも存在しない場合でも、加工の出発原材料として好適な天然石を使用することが可能であることである。エネルギー消費が少なく原料の価格が低いため、本発明による方法によってこれらの材料から作製されるバインダーは低価格となる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施形態の実施例:
本発明は、その実施形態の以下の実施例からより容易に理解される。それらの実施例は、単に本発明の主題の使用を説明するために役立つものであり、その使用の唯一可能な実施例ではないことを理解することが重要である。それらの実施例は、何らかの限定する意味では明記されておらず、専ら本発明の本質及び利点を明確にするために与えられていることを理解することが重要である。本発明の使用は広範であるため、実際には、本発明を実施例において完全に明記することは不可能である。
【実施例】
【0017】
実施例1:
ケイ酸ニッケル鉱の加工に由来する水砕スラグを使用する混合スラグポルトランドセメントの製造:
ポルトランドクリンカー製造用の原料粉末を、仮焼(pre-calcination)及び焼成する前に、最低でも160m/秒の周速度で動作する5列ローターアセンブリーを備える、両方向への運動を使用する高速破砕機において物理的処理に付す。これによって仮焼、すなわち炭酸カルシウムのCaOへの分解及びCOの放出並びにポルトランドクリンカーの形成、がより迅速になり、この形成は約40%速くなる。従来の技術と比べて、これによって、ポルトランドクリンカーの製造において約25%〜30%のレベルの節減を達成することができる。結果として生じるポルトランドクリンカーを、ケイ酸ニッケル鉱の加工で生じる粉砕した乾燥水砕冶金(metalurgic)スラグとポルトランドクリンカーとの混合物の重量をベースにして、5重量%のエネルゴ(energo)石膏CaSOと共に、65重量%の乾燥水砕冶金スラグと混合する。この混合物を、最低でも350m/秒の周速度を有する慣性遠心分離式自生粉砕ミル内の、ミルの作用層において被処理材料の細粒が移動する方向に対しておおよそ垂直な誘導ベクトルを有する6個の電磁石が配置されているハウジングにおいて物理的処理に付した。この場合、これらの磁石は、10Hzの周波数及び10−1Tの強度の変動磁界を使用して、多くの強磁性粒子を含有する被処理材料に作用する。この技術は、混合スラグポルトランドセメントの製造に関して30%までエネルギーを節減することができる。別の利点は、一般的な技術を使用する粉砕によって製造されるセメントと比較して、製造されるセメントの質がより高いことであり、これらのセメントをベースとする圧縮強度の最終値がより高いコンクリートが誕生する。
【0018】
実施例2:
採炭後の焼却した採鉱の深部の貯鉱の材料に由来する無機乾燥バインダー(dastite)の製造:
採炭後の焼却した採鉱の深部の貯鉱の異なる層に由来する材料を、最初に埋立地において入念に均質化した。次いで、これを約3mmの細粒の大きさまで粉砕した。同時に、25重量%の非水和CaO、遊離水含量が8重量%になるまで最大限に乾燥させた68重量%のエネルゴ石膏、及びセメント製造用の7重量%の鉄調整剤(ferric correction)から成る励起組成物(excitation composition)。この励起混合物を、最低でも110m/秒〜120m/秒の範囲の周速度で動作する3列ローターアセンブリーを備える、両方向への運動を使用する高速破砕機において物理的処理に付す。焼却した廃棄堆積物の均質化及び粉砕された材料を、33.6%の励起混合物と共に、5列ローターアセンブリーを備える、両方向への運動を使用する高速破砕機において、励起混合物が作用本体の3番目の列まで給送されるように物理的処理に付す。ローターの周速度は最低でも130m/秒でなければならない。破砕機の出口スリットには、加工される材料細粒が移動する方向に対して垂直な誘導ベクトルを有する電磁石が配置されている。この場合、これらの磁石は、10Hzの周波数及び1.0Tの強度の変動磁界によって被処理材料に作用する。それによって、水硬性乾燥バインダー(dastite)が得られる。この方法の利点は、本来であれば利用可能な材料として使用することが困難である、採炭後の焼却した採鉱の廃棄堆積物の産業利用が、実現可能な経済的条件で可能であることである。このように製造されたバインダーの別の利点は、コンクリートの製造において、上記廃棄堆積物をポルトランド混合セメントと単に混合することによって、コンクリートの基本的な物理的特性を悪化させることなく、一般的なセメントの半分まで、その代わりとして用いることができることである。このように製造されたコンクリートの加圧水の浸透度の値が低減し、コンクリートが固化する際のわずかな収縮がわずかな膨張となる(最大0.25%)。それによって、コンクリート中の、水の浸出を防止する必要がある種々のジョイント(joint)及びキャビティを密封する優れた特性を有するコンクリートを得ることができる。同時に、このように製造されるdastiteセメント及び一般的なセメントの製造費用に起因して、最大20%の経済的節減を達成することができる。
【0019】
実施例3:
固形化石燃料の流動燃焼に由来する灰から生じる無機乾燥バインダー(dastite)の製造:
乾燥流動飛灰(fly ash:フライアッシュ)と、Caを含有する脱硫添加剤を添加することによって750℃よりも高い温度で固形化石燃料を燃焼させることによって生成した、灰の重量をベースにして少なくとも50重量%のSiO+Alを含有する乾燥流動灰炉底灰とを、燃焼設備によって生成される割合で混合し、最低でも160m/秒の周速度で運動する6列ローターアセンブリーを備える、両方向への運動を使用する高速破砕機において物理的処理に付す。それによって、無機乾燥水硬性バインダーが製造されるが、この製造に関して、いわゆる励起剤(exciters)である化学的活性化化合物を一切添加することなく、流動灰のみを使用することができる。別の利点は、コンクリート中で未処理状態で使用すると、コンクリート中でのエトリンガイトの形成遅延を誘発しコンクリートの分解を引き起こすおそれがあるため、通常の条件下では埋立地材料として以外に他の用途を見出すことが困難である、流動飛灰だけではなく流動炉底灰も、バインダーの製造において使用されることである。結果として生じるバインダーの製造費用は、一般的なセメント又は石灰をベースとするバインダーの製造費用よりも数倍低い。
【0020】
実施例4:
オートクレーブ処理によって予め作製される生成物の生成用の固形化石燃料の灰化したものを粒状化することによって生成される灰に由来する湿潤無機バインダーの製造:
900℃よりも高い温度における固形化石燃料の燃焼で生じる粒状化飛灰(灰の重量をベースにして少なくとも60重量%のSiO+Alを含有する)を、粒状化灰の重量をベースにして、直径0mm〜4mmである400重量%のケイ砂分、22重量%のCaO、5重量%のエネルゴ石膏、及び粒状化灰の重量をベースにして75重量%の水と混合し、この混合物を、最低でも160m/秒の周速度で運動する5列ローターアセンブリーを備える、両方向への運動を使用する高速破砕機において物理的処理に付す。それによって、さらにオートクレーブ処理される建築用要素の形成に好適な湿潤混合物が生成される。この技術は、石灰砂をオートクレーブ処理した製品の一般的な製造と比較していくつかの利点を示す。第1の利点は、これらの製品の最も高価な構成要素であるCaO(石灰)の消費量が数倍少ないことであり、さらに、従来の技術によって製造された商品と比較して製品の強度が約20%高まることである。さらに、これらの製品は炭化(carbonatization)によって分解されにくく、最後に大事なことを述べるが、製品のオートクレーブ中の滞留時間が、通常の条件下の約1/2に短縮される。これはまた、混合物を物理的処理するためのより高いエネルギー消費量を考えると、予め作製される生成物を生成するための総エネルギー費用を、一般的に使用される技術と比較して約30%節減する。
【0021】
実施例5:
エネルゴ石膏からの石膏バインダーの製造:
8重量%未満の遊離水を含有する乾燥させたエネルゴ石膏を、最低でも100m/秒の周速度で運動する3列ローターアセンブリーを備える、両方向への運動を使用する高速破砕機において物理的処理に付す。エネルゴ石膏は、破砕機から振動ガッターへ供給され、ここで、最大で5mmの厚さを有する層に広げられる。エネルゴ石膏は、振動ガッターを通過する間、5×10mmの波長及び2.5×10W/cmの強度の電磁放射の作用に約50秒間暴露される。次いで、この材料を、最低でも120m/秒の周速度で運動する5列ローターアセンブリーを備える、両方向への運動を使用する高速破砕機において物理的処理に付す。これは、アルファ−バサナイト(alpha-bassanite)をベースとする通常の石膏バインダーの特徴と同様の特徴を有する、急速に硬化する石膏バインダーを生成する。圧力を高めた通常の加熱下で熱的脱水することによる、従来の製造方法と比較した利点は、投資に関してより簡単で、安価で、また、エネルギーをおよそ20%〜30%のレベル節減しつつ連続的に動作する装置の使用である。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明の産業上の実施態様の主な分野がこれ以前の段落に記載されており、これは特に、種々の産業生産からの廃棄物材料の用途を大幅に拡大して従来のバインダー及び従来のものではないバインダーを製造することに関連するものであり、これらのバインダーを製造する従来の技術と比較してエネルギーが大幅に節減される。しかし、バインダーは、水と直接混合させて、或る特定の製品、例えばオートクレーブ処理した製品の製造にも用いることができ、この場合、そのようなバインダーの最も高価な構成要素である励起剤の使用を低減することが可能となることによって、エネルギー及び材料の大幅な節減が可能である。この技術の使用によって、現在の移動式クラッシャー及び骨材選別機と同様の大きさの移動式プラントにおいて、ポルトランドセメント、水硬性石灰又は風化石灰(air lime)を経済的に許容可能かつ十分に生産的に製造することが可能となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人工若しくは天然起源の材料又はそれらの組み合わせから無機バインダーを製造する方法であって、
固形燃料の焼却によって生成される材料、冶金スラグ、地上火災生成物、化石燃料の採掘後の焼却した採鉱の廃棄堆積物由来の生成物、ガラス製造廃棄物、セラミック製造廃棄物、れんが及びコンクリートの建設廃棄物、熱活性化粘土、低結晶火砕岩、堆積ラテライト、ボーキサイト、オパロライト、アロファノライト、珪藻岩、石灰岩、粘土岩及び粘土を含むセットからの少なくとも1つの任意の材料が、少なくとも1つの力パルスの作用による物理的処理に付され、該物理的処理の間に、被処理材料1gに対して50N〜3×10Nの大きさの力を1×10−6秒〜1×10−2秒の範囲の非常に短時間で作用させる機械的エネルギーEtk、並びに/又は、150Hz〜15×10Hzの周波数及び10−2T〜10Tの強度を有する交番磁界若しくは変動磁界であって、前記被処理材料に強磁体が存在する場合には該強磁体の粒子に、及び/又は前記機械的エネルギーの伝達の結果として生じた材料粒子の欠陥の電荷に作用する、交番磁界若しくは変動磁界の磁気エネルギーEtmを前記被処理材料の前記粒子に与え、その結果、前記被処理材料の内部エネルギーの値が増大し、該被処理材料の前記粒子がより細かくなり、一方で該粒子の再凝集が防止され、それによって前記被処理材料の化学反応性が高まることを特徴とする、無機バインダーを製造する方法。
【請求項2】
前記人工又は天然起源の材料の前記物理的処理を、10Hz〜5×10Hzの周波数を有する互いに続くより多くの力パルスの作用によって行うことを特徴とする、請求項1に記載の無機バインダーを製造する方法。
【請求項3】
pHを高め、及び/又は少なくともCa、Mg、Fe、Mn、P、Sを含むセットから選択されるイオンを添加する、前記被処理材料の重量に対して0.50重量%〜80.00重量%の量である化学添加剤を、少なくとも1つの力パルスの作用の前、及び/又はその作用の間、及び/又はその作用後に、前記材料に添加することを特徴とする、請求項1又は2に記載の無機バインダーを製造する方法。
【請求項4】
前記被処理材料の重量の700%以下の量の充填剤を該材料にさらに添加して乾燥バインダーを得るか、又は前記被処理材料の重量の8.20%〜420%の量の水も添加して、所望の形状に成形され、並びに/又はオートクレーブ処理及び/若しくは乾燥予熱によって硬化される成形可能な湿潤物質を得ることを特徴とする、請求項3に記載の無機バインダーを製造する方法。
【請求項5】
固形燃料の燃焼中に該固形燃料の燃焼によって既に生じた材料の処理において、Ca、Mg、Fe、Mnを含むセットからの少なくとも1つの元素を含有する添加剤を添加することによって前記材料の化学組成を最適化し、該添加剤は、関係式m=+m/Xk1+m×Xk2(式中、mは前記固形燃料1トン当たりに添加される添加剤の重量であり、mは、前記固形燃料1トン中に含有される灰の重量であり、mは前記固形燃料1トン中に含有される硫黄の重量であり、Xk1は、その値が前記添加剤の組成に応じて変わり、2〜8の範囲にある係数であり、Xk2は、その値が前記添加剤の組成に応じて変わり、1〜4の範囲にある係数である)に従って、灰及び硫黄の含量に比例する量で前記燃料に添加され、最終的に、前記添加剤を、前記固形燃料の灰化の前に、該添加剤単独で又は該固形燃料と共に機械的活性化に付すことを特徴とする、請求項1又は2に記載の無機バインダーを製造する方法。
【請求項6】
前記被処理材料を、該材料の前記粒子に前記機械的エネルギーを伝える前に、及び/又はそれと同時に、及び/又はそのような処理の後で、圧力粒状化、及び/又は1mm〜10mmの波長範囲及び10−2W/cm〜10W/cmの強度における1秒〜15×10秒の時間の電磁放射の作用によって処理し、該被処理材料の粒度分布及び相成分を最適化することを特徴とする、請求項1又は2に記載の無機バインダーを製造する方法。
【請求項7】
前記被処理材料の前記粒子を、該被処理材料の該粒子へ前記機械的エネルギーを伝える前に、及び/又はそれと同時に、及び/又はその後で、圧力によって粒状化するか、及び/又は150℃〜1500℃の範囲の温度まで1秒〜15×10秒の時間加熱し、該被処理材料の粒度分布及び相成分を最適化することを特徴とする、請求項1に記載の無機バインダーを製造する方法。

【公表番号】特表2011−520761(P2011−520761A)
【公表日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−510813(P2011−510813)
【出願日】平成21年5月25日(2009.5.25)
【国際出願番号】PCT/CZ2009/000074
【国際公開番号】WO2009/140933
【国際公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【出願人】(510310255)
【Fターム(参考)】