説明

無線受信機

【課題】ヘテロダイン検波方式またはホモダイン検波方式に基づいて受信波を検波する無線受信機に関し、構成が大幅に複雑化することなく、従来例に比べて消費電力を大幅に、かつ安定に節減できる。
【解決手段】ヘテロダイン検波方式またはホモダイン検波方式に基づいて受信波を検波する検波手段12と、前記検波手段に入力される前記受信波のレベルと既定の閾値とを比較し、前記レベルが前記閾値を下回るときに、前記検波手段12、または前記検波手段12およびその後段に対する駆動電力の供給を規制する電力制御手段13とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘテロダイン検波方式またはホモダイン検波方式に基づいて受信波を検波する無線受信機に関する。
【背景技術】
【0002】
業務用の無線通信装置のように、送信端が定常的には送信を行わず、その送信端によって送信が行われる時点を予測ができない無線装置の受信端では、受信波が到来し得る最長のインターバル以下の頻度で受信波を監視する間欠受信方式が適用されている。
【0003】
図2は、間欠受信方式が適用された無線受信機の構成例を示す図である。
アンテナ21の給電点は高周波増幅器22の入力に接続され、その高周波増幅器22の出力は第一の周波数変換器23および第二の周波数変換器24を介して信号処理部25の入力に接続される。信号処理部25が有する第一および第二の制御出力は、第一の周波数変換器23および第二の周波数変換器24の制御入力にそれぞれ接続される。信号処理部25の出力には、上記アンテナ21に到来した受信波で示されるシンボル列あるいは伝送情報の列が得られる。電源制御部26には図示されない電源回路によって直流電力が供給され、その電源制御部26の出力は、上記高周波増幅器22、第一の周波数変換器23、第二の周波数変換器24および信号処理部25の電源端子に接続される。
【0004】
このような構成の無線受信機では、電源制御部26は、アンテナ21に受信波が到来し得る最長のインターバル以下の周期(頻度)で間欠的に、高周波増幅器22、第一の周波数変換器23、第二の周波数変換器24および信号処理部25に既述の直流電力を供給する。
【0005】
各部は、このような直流電力が電源制御部26によって供給される期間には、以下の通りに連係する。
【0006】
高周波増幅器22は、アンテナ22に到来した(到来する可能性がある)受信波をその受信波の占有帯域に制限して取り込み、かつ増幅する。第一の周波数変換器23は、このようにして高周波増幅器22を介して与えられる受信波を信号処理部25の配下で周波数変換することにより第一の中間周波信号を生成する。第二の周波数変換器24は、この第一の中間周波信号をさらに信号処理部25の配下で周波数変換することにより第二の中間周波信号を生成する。
【0007】
信号処理部25は、このような第二の中間周波信号をディジタル信号に変換し、ディジタル領域において、復調および信号判定を行うことによりシンボル列を生成し、さらに、伝送路復号化(誤り訂正処理)を行うことにより伝送情報の列を生成する。
【0008】
このように図2に示す無線受信機では、アンテナ21に受信波が到来しない期間に、高周波増幅器22、第一の周波数変換器23、第二の周波数変換器24および信号処理部25に駆動電力が供給される時間率が低く抑えられるため、総合的な消費電力の節減が図られる。
【0009】
なお、本発明に関連する先行技術としては、以下に列記する特許文献1および特許文献2がある。
【0010】
(1) 「通話音声、制御データ等のデータ信号(S1)を受信するための受信部(10)を有する受信機(1)を設け、前記受信部は、局部発振信号(S10)を出力するための局部発振回路(100)と、前記局部発振回路の動作電源を供給するための局部発振電源回路(101)と、前記局部発振信号及び前記受信機にて受信される到来電波信号を混合して中間周波数を生成し検波して受信信号(S11)を出力するための受信回路(102)と、前記受信回路の動作電源を供給するための受信電源回路(103)と、前記局部発振回路にて生成される前記局部発振信号の信号レベルを検知するための局部発振レベル監視回路(104)と、前記受信回路からの前記受信信号が入力され間欠受信する受信動作制御信号(S12)を前記局部発振電源回路に出力するための制御回路(105)と、前記局部発振レベル監視回路にて前記局部発振信号が検知されて前記局部発振回路の安定発振状態を示す安定発振状態信号(S13)及び前記受信動作制御信号が入力されて両信号のアンド条件下で前記受信電源回路を制御するためのAND回路(106)とを備える」ことにより、「受信機における消費電力を抑えて低電力化を図るとともに、間欠受信の動作を安定かつ正常に行う」点に特徴がある間欠データ受信装置…特許文献1
【0011】
(2) 「RF帯の受信信号を入力し、IF信号に変換して出力する受信回路20と、前記IF信号からTMCC信号を復調し、前記TMCC信号に含まれるTMCC情報を出力するとともに、シンボルタイミング信号及びフレームタイミング信号を出力するTMCC復調回路21と、TMCC復調回路21から出力される少なくとも1フレーム期間のTMCC情報を入力し、TMCC情報の誤りを訂正する誤り訂正回路22と、前記誤り訂正後のTMCC情報を入力し、該TMCC情報に含まれる所定の情報を抽出して出力するTMCC情報抽出回路23と、前記シンボルタイミング信号及び前記フレームタイミング信号を入力し、フレーム間間欠受信動作を行うように前記受信回路の全体又は一部への電源供給を制御する制御回路24とを備える」ことにより、「受信回路の低消費電力化とTMCC情報の受信及び判定における所要時間の短縮化を両立する」点に特徴があるTMCC信号受信装置…特許文献2
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2009−111818号公報
【特許文献2】特開2009−152999号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ところで、上述した従来例では、高周波増幅器22、第一の周波数変換器23、第二の周波数変換器24および信号処理部25の駆動電力は、アンテナ21に受信波が到来しない期間にも供給され得る。したがって、このような受信波が到来する期間の予測が困難である場合には、消費電力の節減は、必ずしも十分には図られていなかった。
【0014】
しかし、このような無用な電力の消費は、特に、バッテリで駆動される小型の端末装置では、サイズ(体積)や重量の節減を阻み、かつ充電が行われることなく待ち受け可能な期間が短くなる大きな要因であった。
【0015】
本発明は、構成が大幅に複雑化することなく、従来例に比べて消費電力を大幅に、かつ安定に節減できる無線受信機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
請求項1に記載の発明では、検波手段は、ヘテロダイン検波方式またはホモダイン検波方式に基づいて受信波を検波する。電力制御手段は、前記検波手段に入力される前記受信波のレベルと既定の閾値とを比較し、前記レベルが前記閾値を下回るときに、前記検波手段、または前記検波手段およびその後段に対する駆動電力の供給を規制する。
すなわち、受信波のレベルが閾値を下回る期間には、上記検波手段およびその後段は、駆動電力が供給されないため、無用に電力を消費することがない。
【0017】
請求項2に記載の発明では、検波手段は、受信波に対して複数N回に亘って周波数変換が行われるヘテロダイン検波方式に基づいて前記受信波を検波する。電力制御手段は、前記検波手段が前記受信波に施すn(1≦n≦(N−1))回の周波数変換により得られた中間周波信号のレベルと既定の閾値とを比較し、前記レベルが前記閾値を下回るときに、前記n回の周波数変換に関与しない前記検波手段の部位、または前記部位および前記部位の後段に対する駆動電力の供給を規制する。
すなわち、受信波のレベルが閾値を下回る期間には、上記n回路の周波数変換に関与しない検波手段の部位、またはこのような部位およびその後段は、駆動電力が供給されないため、無用に電力を消費することがない。
【0018】
請求項3に記載の発明では、請求項1または請求項2に記載の無線受信機において、間欠制御手段は、前記電力制御手段に対する駆動電力の供給を間欠的に行う。
すなわち、電力制御手段は、間欠的に稼働することにより、既述のレベルと閾値との比較に併せて、その比較の結果に基づく駆動電力の供給の規制を行う。
【0019】
請求項4に記載の発明では、請求項3に記載の無線受信機において、前記間欠制御手段は、前記受信波が到来し得る頻度より高い頻度で、前記電力制御手段に対する駆動電力の供給を間欠的に行う。
すなわち、電力制御手段が間欠的に稼働する頻度は、受信波が到来し得る頻度より高く設定される。
【0020】
請求項5に記載の発明では、請求項1ないし請求項4の何れか1項に記載の無線受信機において、前記電力制御手段は、前記検波手段が行う検波により得られた信号を処理する手段の配下で、前記駆動電力の供給を規制する。
すなわち、本発明に係る無線受信機の出力に所望の処理を施す系や装置の状態や振る舞いに柔軟に適応した形態による消費電力の節減が可能となる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、受信波が到来する期間が予測できない装置や系においても、消費電力が節減され、その受信波に対する応答が確度高く安定に実現される。
【0022】
また、本発明では、消費電力の節減に関して、受信波に対する応答の遅れが許容される限度における歯止めが設定される。
さらに、本発明は、多様な系や装置に対する適用が可能となる。
【0023】
したがって、本発明が適用された装置やシステムでは、所望の性能が確保されつつランニングコストが削減され、信頼性が総合的に高められる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施形態を示す図である。
【図2】間欠受信方式が適用された無線受信機の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態について詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態を示す図である。
図において、図2に示すものと機能および構成が同じものについては、同じ符号を付与し、ここではその説明を省略する。
【0026】
本実施形態と図2に示す従来例との構成の相違点は、以下の通りである。
(1) 信号処理部25に代えて信号処理部11が備えられる。
(2) 第一の周波数変換器23の出力に接続され、かつ出力が信号処理部11の対応する入力に接続された検波回路12が備えられる。
【0027】
(3) 電源制御部26に代えて電源制御部13が備えられる。
(4) 高周波増幅器22、第一の周波数変換器23、信号処理部11および検波回路12には、電源制御部13と共に、図示されない電源回路によって直流電力が直接供給される。
(5) 電源制御部13の制御入力には、信号処理部11の対応する出力ポートが接続される。
(6) 電源制御部13の出力は、高周波増幅器22および第一の周波数変換器23の電源端子には接続されず、第二の周波数変換器24の電源端子に接続される。
【0028】
以下、本実施形態の動作を説明する。
高周波増幅器22、第一の周波数変換器23、検波回路12および信号処理部11は、電源制御部13と共に、既述の電源回路によって直流電力が供給され、以下の通りに定常的に連係して作動する。
【0029】
高周波増幅器22は、アンテナ22の給電点を介して与えられる(可能性がある)受信波を従来例と同様に増幅する。第一の周波数変換器23は、このようにして高周波増幅器22を介して与えられる受信波を従来例と同様に周波数変換することにより第一の中間周波信号を生成する。
【0030】
検波回路12は、このような第一の中間周波信号のレベルを求める。信号処理部11は、そのレベルが既定の閾値thを超える期間として、アンテナ21に受信波が到来している期間(以下、「受信波到来期間」という。)を識別する。
【0031】
受信波到来期間には、信号処理部11は、以下の処理を行う。
(1) 内部に備えられたハードウェア資源およびソフトウェア信号の内、後述する復調や信号判定の処理に供される資源(以下、「特定資源」という。)の稼働を許容する。
(2) 電源制御部13を介して第二の周波数変換器24に既述の直流電力を供給する。
【0032】
第二の周波数変換器24は、上記第一の中間周波信号を周波数変換することにより第二の中間周波信号を生成する。
【0033】
信号処理部11は、このような第二の中間周波信号をディジタル信号に変換し、ディジタル領域において、例えば、復調および信号判定を行うことによりシンボル列を生成し、さらに、伝送路復号化(誤り訂正処理)を行うことにより伝送情報の列を生成する。
【0034】
すなわち、第二の周波数変換器24と、信号処理部11に含まれる既述の特定資源とに対する駆動電力の供給は、受信波到来期間に限定される。
したがって、本実施形態によれば、従来例に比べて構成が大幅に変更されることなく、消費電力の節減が確度高く安定に図られる。
【0035】
なお、本実施形態では、第二の周波数変換器24に対して供給されるべき直流電力の断続は、信号処理部11の配下で作動する電源制御部13によって行われている。
しかし、このような直流電力の断続は、例えば、検波回路12によって識別された受信波到来期間に限って電源制御部13が自律的に行ってもよい。
【0036】
また、本実施形態では、検波回路12は、既述の受信波が周波数変換されることによって得られた第一の中間周波信号を検波することによって、その第一の中間周波信号のレベルを求めている。
しかし、このようなレベルは、例えば、以下の値の何れかに基づいて求められてもよい。
【0037】
(1) 高周波増幅器22の消費電流(消費電力)の換算値
(2) 高周波増幅器22によって出力される受信波のレベル
(3) 高周波増幅器22を構成する複数段の増幅器の内、最終段以外の所望の段の消費電流(消費電力)の換算値
【0038】
(4) 高周波増幅器22を構成する複数段の増幅器の内、最終段以外の所望の段から出力される受信波のレベル
(5) ヘテロダイン検波のために周波数変換(複数回に亘って行われてもよい。)を行う周波数変換器の消費電流(消費電力)の換算値
(6) ヘテロダイン検波のために周波数変換(複数回に亘って行われてもよい。)を行う周波数変換器によって出力される中間周波信号のレベル
【0039】
さらに、本実施形態では、本発明は、ダブルスーパーヘテロダイン方式の無線受信機に適用されている。
【0040】
しかし、本発明は、このようなダブルスーパーヘテロダイン方式に限定されず、例えば、シングルスーパーヘテロダイン方式、あるいはホモダイン検波(ダイレクトコンバージョン)方式の無線受信機と、受信波が3回以上に亘って周波数変換される無線受信機との何れにも同様に適用可能である。
【0041】
また、本実施形態では、既述の受信波到来期間に限って、特定資源と第二の周波数変換器24とに対する駆動電力が供給されている。
【0042】
しかし、このように受信波到来期間以外において駆動電力の供給が規制されるべきハードウェアは、上述した特定資源および第二の周波数変換器24に限定されず、受信波到来期間以外に稼働することによって電力が無用に消費され、あるいは好ましくない事象が発生する要因となるハードウェアであるならば、如何なるものであってもよい。
【0043】
さらに、本実施形態では、信号処理部11に備えられた資源の内、電源制御部13を介して既述の直流電力の断続を実現する資源と、その電源制御部13とには、駆動電力が定常的に供給されている。
しかし、このような資源、またはその資源および電源制御部13は、受信波が到来し得るインターバルより短い頻度(周期)で駆動電力が供給されてもよい。
【0044】
また、本実施形態では、第一の中間周波信号(受信波)のレベルは、駆動電力が定常的に供給される検波回路12によって常時監視されている。
しかし、このようなレベルを求める検波回路12は、間欠的にあるいは周期的にアンテナ21に到来した受信波に対する応答の遅れが許容されるならば、例えば、その受信波がアンテナ21に到来し得る頻度より高い頻度で駆動電力が間欠的に供給されてもよい。
【0045】
さらに、既述の閾値thは、必ずしも一定の値でなくてもよく、例えば、以下に列記するように、アンテナ21に到来した受信波に対する応答が確実に、あるいは所望の確度で実現される多様な値に適宜更新されてもよい。
(1) 本発明が移動通信系に適用された場合には、ゾーン構成、周波数配置、チャネル構成に適合し、かつ既定のチャネル制御やハンドオーバーが所望の確度で実現される値
【0046】
(2) 本発明が適用された装置やシステムの稼働状況や過程に適合(整合)した値
(3) 本発明が適用された装置やシステムが稼働する環境に適合(整合)した値
【0047】
また、本発明は、上述した実施形態に限定されず、本発明の範囲において多様な実施形態の構成が可能であり、構成要素の全てまたは一部に如何なる改良が施されてもよい。
【符号の説明】
【0048】
11,25 信号処理部
12 検波回路
13,26 電源制御部
21 アンテナ
22 高周波増幅器
23 第一の周波数変換器
24 第二の周波数変換器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘテロダイン検波方式またはホモダイン検波方式に基づいて受信波を検波する検波手段と、
前記検波手段に入力される前記受信波のレベルと既定の閾値とを比較し、前記レベルが前記閾値を下回るときに、前記検波手段、または前記検波手段およびその後段に対する駆動電力の供給を規制する電力制御手段と
を備えたことを特徴とする無線受信機。
【請求項2】
受信波に対して複数N回に亘って周波数変換が行われるヘテロダイン検波方式に基づいて前記受信波を検波する検波手段と、
前記検波手段が前記受信波に施すn(1≦n≦(N−1))回の周波数変換により得られた中間周波信号のレベルと既定の閾値とを比較し、前記レベルが前記閾値を下回るときに、前記n回の周波数変換に関与しない前記検波手段の部位、または前記部位および前記部位の後段に対する駆動電力の供給を規制する電力制御手段と
を備えたことを特徴とする無線受信機。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の無線受信機において、
前記電力制御手段に対する駆動電力の供給を間欠的に行う間欠制御手段を備えた
ことを特徴とする無線受信機。
【請求項4】
請求項3に記載の無線受信機において、
前記間欠制御手段は、
前記受信波が到来し得る頻度より高い頻度で、前記電力制御手段に対する駆動電力の供給を間欠的に行う
ことを特徴とする無線受信機。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4の何れか1項に記載の無線受信機において、
前記電力制御手段は、
前記検波手段が行う検波により得られた信号を処理する手段の配下で、前記駆動電力の供給を規制する
ことを特徴とする無線受信機。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−130094(P2011−130094A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−285408(P2009−285408)
【出願日】平成21年12月16日(2009.12.16)
【出願人】(000004330)日本無線株式会社 (1,186)
【Fターム(参考)】