説明

無線機および無線機の周波数記憶読出方法

【課題】ユーザが意識せずとも、一度設定された周波数を自動的に記憶することで、以前の通信状態を再現する。
【解決手段】無線機100は、周波数データの増減操作および周波数データの読み出し操作を受け付ける操作部120と、無線信号を電気信号に変換し、周波数データが示す周波数に対応する電気信号を抽出する受信回路112と、操作部を通じた増減操作に応じて受信回路に用いられている周波数データを変更する周波数変更部136と、所定時間の計時を実行するタイマ122と、周波数データを保持可能な記憶部126と、受信回路に用いられている周波数データが、周波数変更部によって、タイマで計時される所定時間変更されなかった場合、受信回路に用いられている周波数データを記憶部に記憶する記憶制御部138と、操作部を通じた読み出し操作に応じて、記憶部に記憶された周波数データを読み出す周波数読出部140とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線信号を電気信号に変換し、任意の周波数に対応する電気信号を抽出する無線機および無線機の周波数記憶読出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
AM放送、FM放送といった、予め周波数が定められた電波を受信し、主として音声を出力するラジオ受信機には、受信する周波数を感覚的に調整できるダイヤルや周波数を所定の間隔で上下させるスイッチといった操作部が設けられている。ユーザは当該操作部を操作することで所望する周波数を設定することが可能となる。しかし、ユーザは、過去に受信した周波数をメモリーチャンネルに記憶するといった操作をしていないかぎり、現在設定されている周波数しか把握できない。
【0003】
このような操作部が設けられたラジオ受信機において、放送局の受信回数をその放送局に対応させて記憶し、受信回数が多い放送局、すなわち、ユーザが頻繁に聴いていると予測される放送局を自動的に選局する技術が公開されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−8400号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1で示された技術では、対象となる無線信号の周波数が予め定まっており、かつ放送局数も限られているので上述した自動選局を行うことができる。しかし、アマチュア無線通信のように、受信可能な無線信号が広範囲に不特定多数存在し、かつそのような無線信号が不定期に生じているような場合にはかかる特許文献1の技術を適用することができない。また、特許文献1の技術では、過去長期間に渡って受信した回数に基づき周波数が選択されてしまうので、アマチュア無線通信のように、直前に利用していた周波数のみを知りたい場合に、その周波数を抽出することができなかった。
【0006】
アマチュア無線通信を行う場合、同調操作を通じて目的の無線局を選んでから、または、空いている周波数を探してから、無線通信を開始する周波数を決めている。無線通信を開始する際に、何度も同調操作を繰り返す場合、その途中における周波数等の設定を一時的に保存するため、ユーザは、手動で当該周波数を記憶するための操作入力を行い、周波数を示す周波数データを保存していた。このようにユーザが周波数を記憶するための手動操作入力を随時実行することで、少し前に設定した周波数を再現することが可能となる。しかし、手動の操作入力は煩わしく、また、その操作入力を失念してしまうと、過去に設定した周波数を再現する術が無く、以前の周波数には戻せなくなるといった問題が生じていた。
【0007】
本発明は、このような課題に鑑み、ユーザが意識せずとも、一度設定された周波数を自動的に記憶することで、以前の通信状態を再現することが可能な無線機および無線機の周波数記憶読出方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の無線機は、周波数データの増減操作および周波数データの読み出し操作を受け付ける操作部と、無線信号を電気信号に変換し、周波数データが示す周波数に対応する電気信号を抽出する受信回路と、操作部を通じた増減操作に応じて受信回路に用いられている周波数データを変更する周波数変更部と、所定時間までの計時を実行するタイマと、周波数データを保持可能な記憶部と、受信回路に用いられている周波数データが、周波数変更部によって、タイマで計時される所定時間変更されなかった場合、受信回路に用いられている周波数データを記憶部に記憶する記憶制御部と、操作部を通じた読み出し操作に応じて、記憶部に記憶された周波数データを読み出す周波数読出部と、を備えることを特徴とする。
【0009】
記憶制御部は、周波数データを記憶部に記憶すると、周波数変更部によって変更された周波数データが示す周波数と、記憶部に記憶された周波数データが示す周波数との差分が所定の周波数範囲を越えるまで、所定時間の計時を進行させないとしてもよい。
【0010】
記憶制御部は、記憶部に記憶された周波数データが上限数に達している場合、最も過去の周波数データに新たな周波数データを上書きしてもよい。
【0011】
記憶制御部は、周波数データと共に電波形式を示すモードデータも記憶部に記憶してもよい。
【0012】
操作部は、回動可能なロータリーエンコーダであり、周波数変更部は、ロータリーエンコーダの回転量に基づく変化量で、その回転方向に応じて周波数データが示す周波数を増減してもよい。
【0013】
上記課題を解決するために、本発明の無線機の周波数記憶読出方法は、無線信号を電気信号に変換し、周波数データが示す周波数に対応する電気信号を抽出し、ユーザによる増減操作に応じて周波数データを変更し、周波数データが所定時間変更されなかった場合、周波数データを記憶部に記憶し、ユーザによる読み出し操作に応じて、記憶部に記憶した周波数データを読み出すことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の無線機は、ユーザが意識せずとも、無線信号受信のための同調操作で一度設定された周波数を自動的に記憶することができ、以前の通信状態を再現することが可能となる。したがって、同調操作において、周波数を記憶するための手動の操作入力を失念してもその周波数に戻ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】無線機の電気的な構成を示した機能ブロック図である。
【図2】受信回路の概略的な構成を示した機能ブロック図である。
【図3】操作部の一例を示した説明図である。
【図4】無線機の周波数記憶読出方法の処理の流れを示すフローチャートである。
【図5】無線機の周波数記憶読出方法の処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0017】
(無線機100)
図1は、無線機100の電気的な構成を示した機能ブロック図である。無線機100は、アンテナ110(110a、110b)と、受信回路112と、信号出力部114と、マイクロホン116と、送信回路118と、操作部120と、タイマ122と、表示部124と、記憶部126と、中央制御部128とを含んで構成される。
【0018】
アンテナ110は、利用する周波数帯域に応じて複数種類(本実施形態では2本)設けられ、無線信号(電磁波)を電気信号に変換するため、または、電気信号を無線信号として放射するために用いられる。
【0019】
受信回路112は、アンテナ110で受信した無線信号を電気信号に変換し、内部的に保持されている周波数データが示す周波数に対応する電気信号を抽出する。
【0020】
図2は、受信回路112の概略的な構成を示した機能ブロック図である。無線信号がアンテナ110を通じて受信されると、帯域通過フィルタ(BPF:Band Pass Filter)152を通じて所望する周波数帯域のRF(Radio Frequency)信号のみが抽出され、AGC(Automatic Gain Control)アンプ154によって信号レベルが一定になるようにゲインが調整される。
【0021】
周波数シンセサイザ156は、PLL(Phase Locked Loop)技術に基づく分周器や位相比較器から構成され、後述する周波数設定部134を通じて、周波数データが示す周波数の信号を出力する。周波数シンセサイザ156から出力された信号は、AGCアンプ154で信号レベルが一定になったRF信号とミキサ158で掛け合わされ、生成された和信号成分と差信号成分のうち帯域通過フィルタ160によって差信号成分であるIF(Intermediate Frequency)信号のみが抽出される。こうして、生成されたIF信号は、IF集積回路(IFIC)162において目的のベースバンド信号が抽出され、出力アンプ164を通じて信号出力部114に出力される。
【0022】
信号出力部114は、例えばスピーカやヘッドホンで構成され、受信回路112で抽出された電気信号を例えば音声として出力する。
【0023】
マイクロホン116は、コンデンサマイク、ダイナミックマイク、リボンマイク、圧電マイク、カーボンマイク等で構成され、音声等の空気振動を電気信号に変換する。
【0024】
送信回路118は、受信回路112と同様に構成され、マイクロホン116で変換された音声等の電気信号を、周波数データが示す周波数に対応する電気信号に重畳し、アンテナ110を通じて出力する。以下では、理解を容易にするため、受信回路112の動作を挙げて説明しているが、当然送信回路118についても同様の動作が適用できることは言うまでもない。
【0025】
操作部120は、摘み、押圧スイッチ、十字キー、ジョイスティック、表示部124に重畳されたタッチパネル等で構成され、例えば、周波数データ(周波数データが示す周波数)の増減操作や周波数データの読み出し操作といったユーザの操作入力を受け付ける。図3は、操作部120の一例を示した説明図である。ここでは、操作部120の一部として、回動可能な摘み170と、摘み170に連動して回動可能なインクリメンタル方式のロータリーエンコーダ172と、パルスカウンタ174とが設けられ、ユーザによる周波数の増減操作を受け付ける。パルスカウンタ174は、ロータリーエンコーダ172から出力される、位相が90度異なる2相のエンコード信号を通じて摘み170の回転量と回転方向とを導出する。そしてパルスカウンタ174は、導出した摘み170の回転量と回転方向を中央制御部128に出力する。このように、ユーザは、摘み170を回動するのみといった容易な増減操作で、受信する周波数を調整することができる。
【0026】
また、操作部120としての2つの押圧スイッチ(UPスイッチ、DOWNスイッチ)を通じて、ユーザによる周波数の増減操作を受け付けることもできる。この場合、押圧スイッチの一方(UPスイッチ)が周波数のインクリメントスイッチとして機能し、他方(DOWNスイッチ)が周波数のデクリメントスイッチとして機能する。これらの押圧スイッチを短時間押圧すると、所定周波数単位、例えば1Hz単位で周波数が増減し、長時間押圧すると(所謂長押しすると)、これより大きい周波数単位、例えば10Hz単位で周波数が増減する。
【0027】
タイマ122は、図示しない基準クロックを用いて、所定時間の計時を実行する。例えば、タイマ122は、後述する記憶制御部138のリセット信号に応じて計時を開始し、計時された値を逐次中央制御部128に出力する。計時すべき所定時間が予め定められている場合、タイマ122は、その所定時間に達すると、リセット信号が生じるまで計時を停止してもよいし、所定時間を超えて計時し続けてもよい。
【0028】
表示部124は、液晶ディスプレイ、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ、ドットマトリクスLED(Light Emitting Diode)、7セグメントLED等で構成され、後述する表示制御部132の制御指令に基づいて、例えば、現在受信している無線信号の周波数(周波数データが示す周波数)を表示する。
【0029】
記憶部126は、HDD(Hard Disk Drive)、フラッシュメモリ、不揮発性RAM(Random Access Memory)等で構成され、記憶制御部138の制御指令に基づいて、周波数データを所定の上限数まで保持する。
【0030】
中央制御部128は、中央処理装置(CPU)や信号処理装置(DSP:Digital Signal Processor)、プログラム等が格納されたROM、ワークエリアとしてのRAM等を含む半導体集積回路により、無線機100全体を管理および制御する。また、中央制御部128は、表示制御部132と、周波数設定部134と、周波数変更部136と、記憶制御部138と、周波数読出部140としても機能する。
【0031】
表示制御部132は、現在受信回路112に用いられている周波数データを表示部124に出力し、その周波数データが示す周波数を表示させる。ユーザは、かかる周波数を視認しつつ、周波数の増減操作を実行することで、大凡目的とする周波数を設定することができる。
【0032】
周波数設定部134は、周波数データが示す周波数を受信回路112の周波数シンセサイザ156に設定する。また、利用する周波数帯域に応じて、アンテナ110a、110bの切換を要する場合、その切換を指示する。こうして、受信回路112では、設定された周波数に対応する電気信号が抽出される。
【0033】
周波数変更部136は、操作部120を通じたユーザによる増減操作に応じて、受信回路112に用いられている周波数データを変更する。例えば、ユーザが摘み170を増減操作すると、周波数変更部136は、摘み170に連動して回転するロータリーエンコーダ172の回転量に基づく変化量で、その回転方向に応じて周波数データが示す周波数を増減(例えば、時計回りに回動すると周波数を加算、逆時計回りに回動すると周波数を減算)する。
【0034】
記憶制御部138は、受信回路112に用いられている周波数データが、周波数変更部136によって、タイマ122で計時される所定時間変更されなかった場合、受信回路112に用いられている周波数データを記憶部126に記憶する。具体的に、記憶制御部138は、ユーザによる増減操作の有無を監視し、その増減操作により周波数変更部136が機能すると、所定時間の計時をリセットすべくリセット信号をタイマ122に送信する。また、増減操作が所定時間行われなかった場合、すなわち、リセット信号が送信されないままタイマ122の計時が所定時間に達した場合、記憶制御部138は、新たな増減操作をトリガにそのとき受信回路112に用いられている周波数データを記憶部126に記憶する。ここで、記憶制御部138は、所定時間に達した後、新たな増減操作を通じて周波数データを記憶部126に記憶しているが、かかる場合に限らず、所定時間に達したことのみにより周波数データを記憶部126に記憶してもよい。
【0035】
また、ここでは、記憶制御部138が増減操作や周波数変更部136を監視する例を挙げて説明したが、かかる場合に限られず、例えば、記憶制御部138が周波数設定部134の設定動作や周波数シンセサイザ156の動作を監視することで、周波数データの変更を検知することもできる。
【0036】
また、記憶制御部138は、周波数データを記憶部126に記憶すると、周波数変更部136によって新たに変更された周波数データが示す周波数と、記憶部126に記憶された周波数データが示す周波数との差分が所定の周波数範囲を越えるまで、所定時間の計時を進行させないまたは開始させない。具体的に、周波数データが記憶され、さらにユーザによる増減操作に応じて周波数データが変更されると、記憶制御部138は、その変更された周波数データが示す周波数と、記憶部126に記憶された最新の周波数データが示す周波数との差分を導出し、その導出した値と所定の周波数範囲とを比較して導出した値が所定の周波数範囲より小さい間は、タイマ122をリセットし続けて、所定時間の計時を進行させない。そして、記憶制御部138は、導出した値が所定の周波数範囲を超えたら所定時間の計時を進行させる。
【0037】
こうすることで、設定された周波数と実質的に等しい周波数と見なせる所定の周波数範囲の微調整に対して、周波数データが重複して記憶されるのを回避でき、記憶部126の記憶領域の無用な占有を防止することが可能となる。また、実質的に等しい周波数が複数記憶され、後述する周波数の読み出し操作において不要に選択肢が増える事態を回避することもできる。
【0038】
記憶制御部138は、所定時間が経過し周波数データを記憶する際、記憶部126に記憶された周波数データが上限数に達している場合、すなわち、周波数データの記憶領域として許容される数に達している場合、最も過去の周波数データに新たな周波数データを上書きする。
【0039】
アマチュア無線通信を行う場合、上述したように、同調操作を通じて目的の無線局を選んでから、または、空いている周波数を探してから、無線通信を開始する周波数を決めている。このような無線通信を開始する際に何度も同調操作を繰り返す場合、以前設定した周波数の中でも、現在の周波数の空き状態が反映された比較的新しい周波数が必要になることが多い。したがって、新たな周波数データが生じると、優先順位の低い最も過去の周波数データを削除してその領域を確保し、そこに新たな周波数データを記憶することで、記憶部126の記憶領域を有効利用することができる。
【0040】
さらに、記憶制御部138は、周波数データが周波数変更部136によって所定時間変更されなかった場合、周波数データと共にモードデータやアンテナデータも記憶部126に記憶する。モードデータは、無線通信の電波形式であり、例えば、AM、FM、FSK(Frequency Shift Keying)、CW(Continuous Wave)、USB(Upper Sideband)、LSB(Lower Sideband)等を含む。また、アンテナデータは、周波数帯域に応じて選択されたアンテナ、例えば、アンテナ110aまたは110bの識別子(ANT1、ANT2)である。さらに、記憶制御部138は、送信回路118に関して、周波数データと共に送信パワー(TX Power)を記憶することもできる。このように、モードデータやアンテナデータも記憶することで、ユーザは、周波数のみならず、その周波数を設定した時の電波形式や使用アンテナを参照することが可能となる。
【0041】
周波数読出部140は、操作部120を通じたユーザによる読み出し操作に応じて、記憶部126に記憶された周波数データを読み出す。ここでは、記憶制御部138によって自動的に記憶された周波数が再度読み出され、以後の様々な処理に用いられる。例えば、周波数設定部134が、周波数読出部140が読み出した周波数データが示す周波数を周波数シンセサイザ156に設定したり、周波数読出部140が、読み出した周波数データを現在の周波数データと置き換えたりする。
【0042】
かかる構成により、手動で増減操作を何度も実行する無線機100に対して、煩わしくなりがちな周波数を記憶するための手動の操作入力をユーザが行わなくても、一度設定された周波数を再現することが可能となる。したがって、同調操作において、周波数を記憶するための操作入力を失念したとしてもその周波数に戻ることができる。
【0043】
また、記憶部126に複数の周波数データが記憶されている場合、周波数読出部140は、操作部120を通じた増減操作に応じて、その複数の周波数データの中から1の周波数データをユーザに選択させる。例えば、周波数読出部140は、操作部120を通じてユーザによる読み出し操作を受け付けると、記憶部126に記憶された周波数データを読み出し、操作部120の増減操作に応じて、読み出す周波数データを時系列に(例えば、増操作で古い周波数データに、減操作で新しい周波数データに)順次変更して、読み出した周波数データが示す周波数を表示部124に表示させる。ここで、他の押圧スイッチ(決定スイッチ)を通じた決定操作が為されると、そのときに表示された周波数を示す周波数データが以後の処理に用いられる。こうして、周波数データが複数ある場合においても、ユーザは、過去における適切な周波数を抽出することが可能となる。
【0044】
(無線機の周波数記憶読出方法)
さらに、上述した無線機100を用いて周波数を記憶し、その記憶された周波数を読み出す周波数記憶読出方法も提供される。図4および図5は、無線機の周波数記憶読出方法の処理の流れを示すフローチャートである。特に、図4では、周波数データが記憶部126に記憶される処理を、図5では、その記憶された周波数データを読み出す処理を説明している。
【0045】
当該無線機100では、受信回路112が、無線信号を電気信号に変換し、周波数データが示す周波数に対応する電気信号を抽出して、信号出力部114がその抽出した電気信号を出力している。初期状態において、周波数範囲判定のための判定フラグと、周波数データの記憶許可のための許可フラグはいずれもリセットされているとする。
【0046】
図4に示すように、操作部120の特に摘み170に対するユーザによる増減操作を検出すると(S200におけるYES)、周波数変更部136は、その増減操作に応じて、周波数データを変更する(S202)。すると周波数設定部134によりその周波数データが示す周波数が受信回路112の周波数シンセサイザ156に設定され、受信回路112では、その周波数の電気信号を抽出することができる。そして、タイマ122がリセットされる(S204)。かかるタイマ122は、常に計時し続けており、所定時間に達するとリセットされるまで所定時間の計時を停止する。ここでは、まだ許可フラグがセットされていないので(S206におけるNO)、増減操作検出ステップS200を繰り返す。
【0047】
ユーザの増減操作を検出していない間(S200におけるNO)、記憶制御部138は、周波数データと前回データ(直前に記憶部126に記憶した周波数データ)との差分が所定の周波数範囲内であり、かつ、周波数範囲判定のための判定フラグがセットされているか否かを判定し(S208)、差分が所定の周波数範囲内であり、かつ、判定フラグがセットされていれば(S208におけるYES)、タイマ122をリセットして所定時間の計時を進行させない(S210)。
【0048】
このとき、増減操作に応じて周波数データが変更され、前回データとの差分が所定の周波数範囲を越えると(S208におけるNO)、記憶制御部138は、判定フラグをリセットする(S212)。このように判定フラグがリセットされることで、たとえ周波数データが前回データの所定の周波数範囲内に再度戻ったとしても所定範囲判定ステップS208において判定フラグがセットされていない(NO)と判定されるので、タイマ122のリセットが行われず、結果的に所定時間の計時が進行する。
【0049】
続いて、記憶制御部138は、タイマ122を参照して、リセットされてから所定時間が経過したか否か判定し(S214)、所定時間が経過しない間(S214におけるNO)、増減操作検出ステップS200を繰り返す。所定時間が経過すると(S214におけるYES)、記憶制御部138は、周波数データが周波数変更部136によって所定時間変更されなかったと判断し、そのときの周波数データを前回データの候補として一旦保持し(S216)、周波数データの記憶処理を許可するため許可フラグをセットすると共に(S218)、所定範囲判定ステップS208を有効にするため、判定フラグをセットする(S220)。こうして、周波数データを記憶するための増減操作のトリガ待ち状態に移行する。
【0050】
所定時間が経過した後に増減操作が検出されると(S200におけるYES)、今度は、許可フラグがセットされているので(S206におけるYES)、記憶制御部138は、記憶領域に空きがあるか否か判定して(S222)、空き領域があれば(S222におけるYES)、空き領域に、前回データ候補として保持されている周波数データを記憶し(S224)、空き領域がなければ(S222におけるNO)、最も過去の周波数データに、この保持されている新たな周波数データを上書きする(S226)。
【0051】
そして、記憶制御部138は、前回データとして当該記憶された周波数データを設定し(S228)、周波数データの重複記憶を回避すべく許可フラグをリセットする(S230)。
【0052】
このようにして周波数データが記憶部126に記憶されると、ユーザは、異なるタイミングでこの記憶された周波数データを読み出すことができる。図5に示すように、周波数読出部140は、ユーザによる周波数データの読み出し操作を検出すると(S250におけるYES)、記憶部126に記憶された最新の周波数データを読み出し(S252)、表示部124に表示させる(S254)。このとき、ユーザによる増減入力を検出すると(S256におけるYES)、周波数読出部140は、その増減入力に応じ、周波数データの記憶されているアドレスを1つずつ古い方、または新しい方に順次変更して、そのアドレスに対応する周波数データを読み出し(S258)、表示部124に表示させる(S260)。
【0053】
ユーザの増減操作を検出していない間に(S256おけるNO)、ユーザの決定操作を検出すると(S262におけるYES)、周波数設定部134は、その周波数データが示す周波数を受信回路112の周波数シンセサイザ156に設定し(S264)、受信回路112では、その周波数の電気信号を抽出することができる。そして、読み出し操作検出ステップS250を繰り返す。また、ユーザの決定操作を検出するまでは(S262におけるNO)、増減操作検出ステップS256を繰り返す。
【0054】
かかる無線機の周波数記憶読出方法においても、ユーザが意識せずとも、無線信号受信のための同調操作で一度設定された周波数を自動的に記憶することができ、以前の通信状態を再現することが可能となる。したがって、同調操作において、周波数を記憶するための手動の操作入力を失念してもその周波数に戻ることができる。
【0055】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0056】
なお、本明細書の無線機の周波数記憶読出方法における各工程は、必ずしもフローチャートとして記載された順序に沿って時系列に処理する必要はなく、並列的あるいはサブルーチンによる処理を含んでもよい。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明は、無線信号を電気信号に変換し、任意の周波数に対応する電気信号を抽出する無線機および無線機の周波数記憶読出方法に利用することができる。
【符号の説明】
【0058】
100 …無線機
112 …受信回路
114 …信号出力部
120 …操作部
126 …記憶部
132 …表示制御部
136 …周波数変更部
138 …記憶制御部
140 …周波数読出部
172 …ロータリーエンコーダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周波数データの増減操作および周波数データの読み出し操作を受け付ける操作部と、
無線信号を電気信号に変換し、周波数データが示す周波数に対応する電気信号を抽出する受信回路と、
前記操作部を通じた増減操作に応じて前記受信回路に用いられている周波数データを変更する周波数変更部と、
所定時間の計時を実行するタイマと、
周波数データを保持可能な記憶部と、
前記受信回路に用いられている周波数データが、前記周波数変更部によって、前記タイマで計時される所定時間変更されなかった場合、前記受信回路に用いられている周波数データを記憶部に記憶する記憶制御部と、
前記操作部を通じた読み出し操作に応じて、前記記憶部に記憶された周波数データを読み出す周波数読出部と、
を備えることを特徴とする無線機。
【請求項2】
前記記憶制御部は、周波数データを前記記憶部に記憶すると、前記周波数変更部によって変更された周波数データが示す周波数と、前記記憶部に記憶された周波数データが示す周波数との差分が所定の周波数範囲を越えるまで、前記所定時間の計時を進行させないことを特徴とすることを特徴とする請求項1に記載の無線機。
【請求項3】
前記記憶制御部は、前記記憶部に記憶された周波数データが上限数に達している場合、最も過去の周波数データに新たな周波数データを上書きすることを特徴とする請求項1または2に記載の無線機。
【請求項4】
前記記憶制御部は、周波数データと共に電波形式を示すモードデータも前記記憶部に記憶することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の無線機。
【請求項5】
前記操作部は、回動可能なロータリーエンコーダであり、
前記周波数変更部は、ロータリーエンコーダの回転量に基づく変化量で、その回転方向に応じて周波数データが示す周波数を増減することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の無線機。
【請求項6】
無線信号を電気信号に変換し、周波数データが示す周波数に対応する電気信号を抽出し、
ユーザによる増減操作に応じて前記周波数データを変更し、
前記周波数データが所定時間変更されなかった場合、前記周波数データを記憶部に記憶し、
ユーザによる読み出し操作に応じて、前記記憶部に記憶した周波数データを読み出すことを特徴とする無線機の周波数記憶読出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−188420(P2011−188420A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−54271(P2010−54271)
【出願日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【出願人】(000003595)株式会社ケンウッド (1,981)
【Fターム(参考)】