説明

無線機

【課題】電力効率の高い無線機を提供する。
【解決手段】
電力増幅器20から出力される信号の一部を方向性結合器30で取り出す。また、整流回路60で直流信号に変換し、制御回路70で送信信号10の制御を行う。さらに、電力増幅器20の出力が一定となるように制御する送信出力制御回路において、整流回路60と制御回路70間に充電回路80を接続して、回路に流れる信号の一部で充電を行う。これにより、無線機の送信部1に流れる信号を熱として浪費するのではなく、信号の一部を用いて充電を行い再利用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線機に係り、特に無線機の送信出力制御回路に流れる信号の一部を利用し充電を行い、再利用する無線機に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、デジタル無線である携帯電話や無線通信網の発達、又は低消費電力が求められるセンサネットワーク等の発展により、各種無線機の電力の低減が課題となっている。
従来から、無線機の送信部には、アンテナ負荷が変動した場合や無線機の電源電圧が変動した際にも送信出力が一定の値となるように、送信出力制御回路が備わっている。
【0003】
ここで、図8を参照して、従来の送信出力制御回路(APC回路)を備えた無線機の送信部3の構成について説明する。
従来の送信部3は、送信信号10、電力増幅器20、方向性結合器30、LPF40、アンテナ50、整流回路160、制御回路70を備えている。
送信信号10は、電波出力のために変調された出力信号である。
電力増幅器20は、電波出力用のLNA(Low Noise Amplifier)等である。電力増幅器20は、送信信号10を入力し、所望の出力が得られるように一定の利得で電力増幅を行う。
方向性結合器30は、同軸線路等の伝送線路上に挿入し、所定方向に伝搬される電力の一部を別の結合ポート(coupled port)に取り出す方向性結合器(directional coupler)等である。方向性結合器30は、結合ポート用の入力端子31、出力端子32、順方向結合端子33、逆方向結合端子34を備えている。方向性結合器30は、電力増幅器20からの出力信号を、入力端子31へ入力する。そして、方向性結合器30は、入力端子31から入力された信号を、出力端子32へ出力する。ここで、方向性結合器30は、入力端子31から入力された信号を、所定の結合量をもって順方向結合端子33へ出力する。また、方向性結合器30は、逆方向結合端子34へは、入力端子31から入力した信号をほぼ出力しない。また、方向性結合器30の順方向結合端子33は、整流回路160へ接続される。
LPF40は、電波出力用の低域通過フィルタ(Low−pass filter、LPF)であり、出力端子32から出力された信号のうち、所定周波数以下の信号を通過させる。
アンテナ50は、各種アンテナや送信設備等であり、変調され増幅された信号を電波として放射、又は入力する。
【0004】
整流回路160は、順方向結合端子33から入力された交流信号を、直流信号に変換して制御回路70へ出力する部位である。
制御回路70は、入力された直流信号から、電力増幅部20の出力電力が所望の値となっているかを監視する回路である。制御回路70は、出力電力が所望の値となるように、送信信号10に対して電力の制御を行う。
以上の構成により、アンテナ負荷が変動した場合や無線機の電源電圧が変動した場合において、制御回路70から送信信号10に対して、無線機の送信出力が一定の値となるように適切な制御を行うことができる。
【0005】
このような従来のAPC回路を備えた無線機として特許文献1を参照すると、送信信号を生成する送信信号生成部と、前記送信信号生成部で生成された送信信号を電力増幅する増幅部と、前記増幅部の出力レベルに応じて前記増幅部の利得を制御するAPC回路と、前記送信信号生成部と前記増幅部の間に設けられるスイッチ回路と、少なくとも前記スイッチ回路と前記APC回路の動作を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記APC回路の動作を開始させた後、所定時間経過後に前記スイッチ回路を導通させて前記増幅部に前記送信信号生成部で生成された送信信号を入力させることを特徴とする無線機が記載されている(以下、従来技術1とする。)。
従来技術1によると、増幅部の出力に一時的な低下は発生せず、送信立ち上がり時にアンテナ出力が瞬時低下するのを回避する無線機を実現することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−11320号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来技術1を含む従来のAPC回路を備えた無線機の送信部3では、方向性結合器30の順頂方向結合端子33から出力された信号は、すべて整流回路160と制御回路70において熱として浪費されていた。
このため、より電力効率が高い無線機の送信部が求められていた。
【0008】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、上述の課題を解消することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の無線機は、送信信号を電力増幅する電力増幅器と、該電力増幅器から入力された信号の一部を取り出す方向性結合器と、該方向性結合器から取り出した交流信号を直流信号に変換する整流回路と、該整流回路からの出力から前記電力増幅器の出力が一定の出力となるように送信信号の制御を行う制御部とを有する送信部を備える無線機において、前記送信部は、充電回路を前記整流回路と前記制御部との間に備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、従来は熱として浪費していた電力を、充電回路を通して回収して再利用することができるので、電源利用効率の高い送信部を備えた無線機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る無線機の送信部1の制御構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係る処理の整流回路60の構成を示す回路図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係る制御回路70の構成を示す回路図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態に係る充電回路80の構成を示す回路図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態に係る充電回路80で充電した電力の使用方法の一例を示す概念図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態に係る無線機の送信部1の制御構成を示すブロック図である。
【図7】本発明の第2の実施の形態に係る充電回路100の構成を示す回路図である。
【図8】従来のAPC回路を備えた無線機の送信部3の制御構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<第1の実施の形態>
まず、本発明の第1の実施の形態に係る無線機の送信部1について、図面を参照して詳しく説明する。
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る無線機の送信部1のブロック図である。
本実施形態の送信部1は、送信信号10、電力増幅器20、方向性結合器30、LPF40、アンテナ50、整流回路60、制御回路70(制御部)、充電回路80を備えている。
ここで、送信信号10、電力増幅器20、方向性結合器30、LPF40、アンテナ50は、図8の従来の送信部3と同様の機能を備える構成部位である。
本発明の第1の実施の形態に係る無線機の送信部1は、方向接合器30の順方向結合端子33に、制御回路70と、充電回路80とが接続されている。入力端子81は、整流回路60からの直流信号の入力端子である。
【0013】
図2は、整流回路60の具体的な構成例を示す回路図である。
本実施形態の整流回路60は、整流器であるダイオード62と、電荷を蓄積するコンデンサ63とを備えている。ダイオード62、コンデンサ63とも伝送路を流れる高周波信号に対応する部品を用いる。
整流回路60は、入力端子61から入力された交流信号を、ダイオード62を通して半波整流し、コンデンサ63の充電を行う。
整流回路60は、このコンデンサ63で充電された電力を、出力端子64から直流信号として取り出すことができる。
【0014】
図3は、制御回路70の具体的な構成例を示す回路図である。
本実施形態の制御回路70は、分圧用の抵抗72、73と、電圧比較器である電圧比較部74とを備えている。また、入力インピーダンスZaは、制御回路70の入力インピーダンスである。
制御回路70は、入力端子71から入力された直流信号を抵抗72、73で分圧して、電圧比較部74に入力する。
電圧比較部74では、所定の基準電圧と入力電圧とを比較して、電力増幅器20の出力が一定となるように制御信号を出力端子75から出力する。
【0015】
図4は、充電回路80の具体的な構成例を示す回路図である。
充電回路80は、入力端子81に、ダイオード82と、抵抗83と、コンデンサ84とを直列に接続して備えている。さらに、抵抗83とコンデンサ84との間にコンデンサ84に充電された電力を取り出すための放電端子85を接続している。入力インピーダンスZcは、充電回路80の入力インピーダンスである。
ダイオード82は、コンデンサ84に蓄えた電力が入力端子81に逆流するのを防ぐために備える。
また、抵抗83は、入力インピーダンスZcを調整するために備える。
【0016】
上述の図1〜図4を参照して、本実施の形態の具体的な動作について説明する。
まず、無線機の送信信号10は、電力増幅器20で増幅され、方向性結合器30を通過して、LPF40で高調波の除去を行い、アンテナ50へ給電される。
このとき、電力増幅器20で増幅された信号の一部は、方向性結合器30の順方向結合端子33から出力される。
この信号は、整流回路60の入力端子61に入力され、ダイオード62により整流される。
この整流された信号の電位よりコンデンサ63の電位が低い場合、コンデンサ63が充電される。
また、整流された信号の電位よりコンデンサ63の電位が高い場合、コンデンサ63が放電し、出力端子64から直流信号が出力される。
コンデンサ63は、無線機が送信中は、この充電と放電を繰り返し行う。
【0017】
コンデンサ63が放電する場合、出力端子64を介して直流信号として出力される。この直流信号は、制御回路70と充電回路80に入力される。
制御回路70では、電圧比較部74に、コンデンサ63の電圧に比例した電圧が入力される。
電圧比較部74は、この入力電圧と所定の基準電圧とを比較し、電力増幅器20の出力が一定となるように、制御信号を出力端子75から出力する。
【0018】
充電回路80では、ダイオード82、抵抗83を通過した直流信号がコンデンサ84に入力され、コンデンサ84の充電が行われる。
放電端子85は、コンデンサ84に充電された電力を直流信号として取り出し、無線機で再利用する。
【0019】
(直流信号の再利用方法)
次に、図5を参照して、放電端子85から出力された直流信号の再利用方法の一例について説明する。
本実施形態において、無線機での直流信号の再利用として、所定の低消費電力デバイス92に対して電力の供給を行う等の方法を用いることができる。
図5において、放電端子入力91は、充電回路80の放電端子85に接続されている。
低消費電力デバイス92は、無線機に備えられた各種の低消費電力のデバイスである。低消費電力デバイス92として、例えば、携帯電話用のLSI(Large Scale Integration)、低消費電力の無線コントローラ、例えばZigBee規格のコントローラ等を用いることができる。なお、制御回路70の少なくとも一部を、低消費電力デバイス92として用いることもできる。
電源93は、無線機の電源であり、低消費電力デバイス92に供給可能な電圧に変換された電源を用いる。
電圧監視部94は、放電端子入力91の電圧で低消費電力デバイス92が駆動可能か否かを監視する部位である。電圧監視部94としては、一般的な電圧監視IC(Integrated Circuit)等を用いることができる。
スイッチ95は、一般的な電子スイッチである。
【0020】
電圧監視部94は、放電端子入力91の電圧で低消費電力デバイス92が駆動可能な場合は、放電端子入力91から電力供給を行うようにスイッチ95の制御を行う。
逆に、電圧監視部94は、放電端子入力91の電圧で低消費電力デバイス92が駆動不可能な場合は、電源93から電力供給を行うようにスイッチ95の制御を行う。
以上の再利用方法により、低消費電力デバイス92に電力を充電回路から供給、再利用することで無線機の電源効率を上げることができる。
【0021】
以上のように構成することで、以下のような効果を得ることができる。
本発明の第1の実施の形態に係る送信部1は、従来の送信部3の構成に加えて、整流回路と制御回路間に充電回路を並列に接続している。
これにより、第1の実施の形態方向性結合器30の順方向結合端子33から出力された信号の一部を充電回路で充電し、再利用することができる。
つまり、無線機の送信出力制御回路に流れる信号を熱として浪費するのではなく、信号の一部を用いて充電を行い再利用することで、無線機の電源効率を上げることができる。
【0022】
また、本発明の無線機は、送信信号10と、送信信号10を電力増幅する電力増幅器20と、電力増幅器20から入力された信号の一部を取り出す方向性結合器30と、方向性結合器30から取り出した交流信号を直流信号に変換する整流回路60と、整流回路60からの出力から電力増幅器30の出力が一定の出力となるように送信信号の制御を行う制御部70とを有する無線機の送信部1において、整流回路60と制御部70の間に充電回路80を備えることを特徴とする。
【0023】
<第2の実施の形態>
次に、本発明の第2の実施の形態に係る無線機の送信部2について、図面を参照して詳しく説明する。
送信部2は、第1の実施の形態の送信部1と同様の機能を有する、送信信号10、電力増幅器20、方向性結合器30、LPF40、アンテナ50、整流回路60、制御回路70を備えている。
これに加えて、送信部2は、充電回路100とダイオード110とを備えている。つまり、送信部2では、方向性結合器30の逆方向結合端子34が、整流のためのダイオード110と充電回路100とに直列に接続されている。
また、入力端子101は、整流回路60からの直流信号の入力端子である。
【0024】
次に、図7を参照して、本発明の第2の実施の形態に係る充電回路100の詳細を説明する。
充電回路100は、第1の実施の形態の充電回路80(図4参照)と同様の機能を備える充電回路である。つまり、ダイオード102はダイオード82と、抵抗103は抵抗83と、コンデンサ104はコンデンサ84と、放電端子105は放電端子85とそれぞれ同様の部位である。また、入力インピーダンスZcは、充電回路100の入力インピーダンスである。
これに加えて、充電回路100は、抵抗103とコンデンサ104の間にダイオード110の接続端子107がある部分が、第1の実施の形態の充電回路80と異なっている。
つまり、充電回路100では、ダイオード110により整流された直流信号も、コンデンサ104を充電する。
【0025】
このような本実施形態の送信部2の構成により、無線機送信時のアンテナからの反射波についても、熱として消費するのではなく、コンデンサ104へ充電することが可能となる。
よって、第1の実施の形態の充電回路80よりも、更に充電効率を向上させることができる。
【0026】
また、本発明の無線機は、送信部2が、方向性結合器30に入力されるアンテナ50からの反射波の一部を、前記方向性結合器30から取り出して、交流信号を直流信号に変換する整流回路60に入力して、整流回路60の出力により充電を行う充電回路100を備えることを特徴とする。
なお、上述の第1又は第2の実施の形態に係る各ダイオードについては、単なる半波整流用のダイオードではなく、ダイオードブリッジ等の各種整流回路を用いることもできる。
【0027】
なお、上記実施の形態の構成及び動作は例であって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して実行することができることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0028】
1、2、3 送信部
10 送信信号
20 電力増幅器
30 方向性結合器
31 入力端子
32 出力端子
33 順方向結合端子
34 逆方向結合端子
40 LPF
50 アンテナ
60、160 整流回路
61、71、81、101 入力端子
62、82、102 ダイオード
63、84、104 コンデンサ
64、75 出力端子
70 制御回路
72、73、83、103 抵抗
74 電圧比較部
80、100 充電回路
85、105 放電端子
91 放電端子入力
92 低消費電力デバイス
93 電源
94 電圧監視部
95 スイッチ
107 接続端子
110 ダイオード
Za、Zc 入力インピーダンス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信信号を電力増幅する電力増幅器と、該電力増幅器から入力された信号の一部を取り出す方向性結合器と、該方向性結合器から取り出した交流信号を直流信号に変換する整流回路と、該整流回路からの出力から前記電力増幅器の出力が一定の出力となるように送信信号の制御を行う制御部とを有する送信部を備える無線機において、
前記送信部は、充電回路を前記整流回路と前記制御部との間に備える
ことを特徴とする無線機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−98894(P2013−98894A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−242077(P2011−242077)
【出願日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ZIGBEE
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】