説明

無線盗聴防止装置

【課題】従来の電磁波を減衰させる方法では、若干ながらも電磁波の漏洩がある欠点を有していた。
【解決手段】本発明による無線盗聴防止装置は、盗聴防止用電磁波発生装置[1]、無線LAN盗聴防止装置のアンテナ部[2]、盗聴防止用電磁波発生装置[1]と無線LAN盗聴防止装置[2]とを接続する電磁波伝送用ケーブル[3]で構成される。盗聴防止用電磁波発生装置[1]は、ランダム信号を変調し、変調した信号と電磁波を混合させ、この混合信号を無線LAN盗聴防止装置のアンテナ部[2]に出力する。無線LAN盗聴防止装置のアンテナ部[2]は、回転装置[4]、アンテナ[5]、雨水防止カバー[6]で構成される。回転装置[4]は、アンテナ[5]を回転させる装置であり、盗聴防止用電磁波発生装置[1]から電磁波が放射されている時は、常に回転する機能を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線の盗聴防止に関し、特に、無線LANの盗聴防止を行う装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
情報化の進展に伴い、オフィスビル等において電磁波を利用した通信が進んでいる。特に、無線LANシステムの普及に応じて、コンピュータの機密保持や盗聴防止等のセキュリティ面から建物内部と外部との電磁遮蔽に対する要求が高まっている。従来の電磁遮蔽の方法は、例えば、特開2001−288833号公報に示されるように、建物の構造部材により電磁波を減衰させる方法である。
【特許文献1】特開2001−288833号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の電磁波を減衰させる方法では若干ながらも電磁波の漏洩があり盗聴防止の目的には適さない。また、オフィスビル内で構造部材の変更に伴う工事が発生するため、オフィス活動の中断が発生するという問題が生じる。
【課題を解決するための手段】
【0004】
かかる課題を解決するため、本発明による無線盗聴防止装置は、盗聴防止用信号を発生する信号発生部と、前記盗聴防止用信号を電磁波として出力するアンテナ部とを有し、アンテナ部は、360度回転する回転部を有し、前記盗聴防止用信号を電磁波として出力するときに、水平方向に対して下部方向に指向性を持たせて出力することを特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
本発明による無線LAN盗聴防止装置および無線LAN盗聴防止方法によれば、オフィスビルの屋内に影響を及ぼすことなく、盗聴される可能性のあるオフィスビルの屋外からの盗聴を防止することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明の第1の実施形態について図面を参照して説明する。
【0007】
(A)第1の実施形態
(A−1)第1の実施形態の構成
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る無線LAN盗聴防止装置の構成を示す図である。
【0008】
図1の無線LAN盗聴防止装置の構成は、盗聴防止用電磁波発生装置[1]、無線LAN盗聴防止装置のアンテナ部[2]、盗聴防止用電磁波発生装置[1]と無線LAN盗聴防止装置[2]とを接続する電磁波伝送用ケーブル[3]で構成される。盗聴防止用電磁波発生装置[1]は、後述、説明される。無線LAN盗聴防止装置のアンテナ部[2]は、回転装置[4]、アンテナ[5]、雨水防止カバー[6]で構成される。回転装置[4]は、アンテナ[5]を回転させる装置であり、盗聴防止用電磁波発生装置[1]から電磁波が放射されている時は、常に回転する機能を有する。アンテナ[5]は、指向性が鋭く、側面や後方への電磁波漏洩も少ない利得・ビーム幅以外の周波数特性を持たず、無線LANの周波数に利用できる空中線アンテナである。例えば、アンテナ[5]は、パラボラアンテナや八木アンテナ(八木アンテナ)が利用される。防止カバー[6]は、回転装置[4]とアンテナ[5]を雨水から錆びることを防止するものである。防止カバー[6]の側面と底面は、電磁波の減衰量が少ない材質を持つが、防止カバー[6]の上面は、電磁波の減衰量が多い材質を使用している。
【0009】
図2は、本発明の第1の実施の形態に係る盗聴防止用電磁波発生装置[1]のプロックダイヤグラムを示す図である。
【0010】
盗聴防止用電磁波発生装置[1]のプロックダイヤグラムは、ランダム信号発生部[11]、FM変調部[12]、PLL[13]、周波数混合部[14]、電カ増幅部[15]で構成される。ランダム信号発生部[11]は、白色雑音とならない無意味なデータをランダムに発生させ、FM変調部[12]へ出カする。FM変調部[12]は、ランダム信号発生部[11]の信号を入カとして、無線LANで使われる電波形式へ変調され、周波数混合部[14]へ出カする。PLL[13]は、無線LANで用いられる周波数の電磁波を生成して、周波数混合部[14]へ出カする。周波数混合部[14]は、FM変調部[12]で変調された周波数とPLL[13]で生成された無線LANで用いられる周波数を混合させ、電カ増幅部[15]へ出カする。電カ増幅部[15]は、周波数混合部[14]から出カされる電磁波を増幅する機能を有する。電カ増幅部[15]は、電磁波伝送用ケーブル[3]を経由してアンテナ[5]と接続されている。アンテナ[5]は、増幅された電磁波を出力する。
【0011】
図3は、本発明の第1の実施の形態に係る無線LAN盗聴防止装置の設置例を示す図である。
【0012】
通常、無線LAN盗聴防止装置のアンテナ部[2]は、建物[21]に支えられた支柱ポール[22]で建物の屋外に固定される。盗聴防止用電磁波発生装置[1]は、建物[21]に設置され電磁波伝送用ケーブル[3]を通じて、建物の屋外にある無線LAN盗聴防止装置のアンテナ部[2]と接続される。第1の電磁的シールド領域(セル)[23]は、アンテナ[5]を中心とした領域となり、無線LAN盗聴防止装置のアンテナ部[2]から放射される電磁波の到達範囲を示す。第2の電磁的シールド領域[24]は、アンテナ[5]を中心とした領域となり、第1の電磁的シールド領域(セル)[23]より小さい領域である。第2の電磁的シールド領域[24]は、回転装置[4](:図1)より回転されたアンテナ[5](:図1)の指向特性から無線LAN盗聴防止装置のアンテナ部[2]を頂点とする円錐型の範囲を示し、無線LAN盗聴防止装置のアンテナ部[2]から放射される電磁波は、到達されない。
【0013】
ここで、第1の電磁的シールド領域(セル)[23]と第2の電磁的シールド領域(セル)[24]は、アンテナ[5]の指向性により定まり、、無線LAN盗聴防止装置のアンテナ部[2]から放射される電磁波は、第1の電磁的シールド領域(セル)[23]と第2の電磁的シールド領域(セル)[24]との間に、盗聴を防止したい信号の領域を包含するように出力される。また、無線LAN盗聴防止装置のアンテナ部[2]から放射される電磁波において、アンテナから放射される幅の領域は、便宜上直線にて表しているが、実際は、アンテナの利得パターンに依存した領域となる。
【0014】
無線LAN AP[25]は、無線LANのアクセスポイントである。無線LAN AP[25]は、電磁波の放射出カを柔軟に調整する事が可能であり、建物[21]の屋外への電磁波到達をできるだけ少なくするよう電磁波の放射出力を調整して設置される。無線LANアクセスポイントの電波到達範囲[26]は、無線LAN AP[25]から放射される電磁波の到達範囲を示す。
【0015】
(A−2)第1の実施形態の動作
第1の実施形態の動作は、図1〜図3を用いて説明される。
【0016】
まず、建物[21](:図3)の内部にある盗聴防止用電磁波発生装置[1](:図1、図3)のランダム信号発生部[11](:図2)からランダムなデータが発生し出カされると、ランダムなデータは、FM変調部[12](:図2)にて、無線LANで使われる電波形式に変調され、PLL[13](:図2)にて生成された無線LANの周波数で用いられる電磁波と周波数混合部[14](:図2)に混合され、電カ増幅部[15](:図2)にて盗聴防止用電磁波として増幅生成される。
【0017】
生成された盗聴防止用電磁波は、電磁波伝送用ケーブル[3](:図1、図3)を伝送して、建物[21](:図3)の屋外に設置される無線LAN盗聴防止装置のアンテナ部[2](:図1、図3)の回転装置[4](:図1)へ到達して、アンテナ[5](:図1)へ到達する。この時、回転装置[4](:図1)は、回転して無線LAN盗聴防止用電磁波をアンテナ[5](:図1)から放射しながらアンテナ[5](:図1)を回転させる。
【0018】
回転してるアンテナ[5](:図1)から放射される盗聴防止用電磁波は、第1の電磁的シールド領域(セル)[23](:図3)の電磁波到達範囲を形成する。
【0019】
このとき、建物[21](:図3)の内部にある無線LAN AP[25](:図3)から放射された無線LANの電磁波の一部となる電波到達範囲[26](:図3)における第1の領域[27](:図3)は、第2の電磁的シールド領域[24](:図3)に包含されるため、建物の内部は盗聴防止用竜磁波に影響されることなく無線LANの送受信を行うことができる。
【0020】
一方、建物[21](:図3)の内部にある無線LAN AP[25](:図3)から放射された無線LANの電磁波の一部となる電波到達範囲[26](:図3)における第2の領域[28](:図3)は、第1の電磁的シールド領域(セル)[23](:図3)に包含されるため、FM変調の特性から電界強度の強い盗聴防止用電磁波に妨害され無線LANの受信ができない。また、第1の電磁的シールド領域(セル)[23](:図3)から外の範囲では建物[21](:図3)の内部にある無線LAN AP[25](:図3)から放射された無線LANの電磁波が到達しないため無線LANの受信ができない。
【0021】
つまり、建物の屋外である電磁的シールド領域(セル)[23](:図3)とその外では、無線LAN AP[25](:図3)から放射された無線LANの電磁波を受信することができないため、無線LANの盗聴をすることができない。
【0022】
(A−3)第1の実施形態の効果
以上のように、無線LAN盗聴防止装置から無線LANアクセスポイントより放射される周波数と同一の妨害波を放射する事により、建物の屋内では無線LANの電磁波が到達できるため通信ができ、建物の屋外では屋内の無線LANアクセスポイントより漏洩する電磁波は無線LAN盗聴防止装置から放射される電磁波に妨害され電磁的シールド領域外に漏洩しないため建物の屋外にある電磁的シールド領域内及び電磁的シールド領域外で盗聴することができない。よって、オフィスビルの屋内に影響を及ぼすことなく盗聴される可能性のあるオフ7スビルの屋外からの盗聴を防止することができると言う効果が得られる。
【0023】
(B)他の実施形態
本発明は、無線LANアクセスポイントの電波到達領域の範囲を狭めることを特徴とするものであるので、盗聴防止用電磁波発生装置とアンテナの周波数を変更することにより、屋内PHS、ワイヤレスマイク、ワイヤレス電話機の盗聴防止装置にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る無線LAN盗聴防止装置の構成を示す図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係る盗聴防止用電磁波発生装置のプロックダイヤグラムを示す図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係る無線LAN盗聴防止装置の設置例を示す図である。
【符号の説明】
【0025】
1・・・盗聴防止用電磁波発生装置。
2・・・無線LAN盗聴防止装置のアンテナ部。
3・・・電磁波伝送用ケーブル。
4・・・回転装置。
5・・・アンテナ。
6・・・雨水防止カバー。
11・・・ランダム信号発生部。
12・・・FM変調部。
13・・・PLL。
14・・・周波数混合部。
15・・・電カ増幅部。
21・・・建物。
22・・・支柱ポール。
23・・・第1の電磁的シールド領域(セル)。
24・・・第2の電磁的シールド領域(セル)。
25・・・無線LAN AP。
26・・・無線LANアクセスポイントの電波到達範囲。
27・・・第1の通信領域。
28・・・第2の通信領域。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
盗聴防止用信号を発生する信号発生部と、
前記盗聴防止用信号を電磁波として出力するアンテナ部とを有し、
前記アンテナ部は、
360度回転する回転部を有し、
前記盗聴防止用信号を電磁波として出力するときに、水平方向に対して下部方向に指向性を持たせて出力すること
を特徴とする無線盗聴防止装置。
【請求項2】
請求項1に記載の無線盗聴防止装置において、
前記信号発生部は、
ランダム信号を発生するランダム信号発生部と、
前記ランダム信号を変調して、変調信号を出力する変調部と、
電磁波を生成する電磁波発生部と、
前記変調信号と電磁波を混合させて、混合信号を出力する周波数混合部と
を有することを特徴とする無線盗聴防止装置。
【請求項3】
請求項1に記載の無線盗聴防止装置において、
前記アンテナ部と前記回転部とを収容するカバーを有し、
前記カバーは、
前記カバーの側面と底面は、前記カバーの上面に比べて、電磁波の減衰量が少ない材質を構成されていること
を特徴とする無線盗聴防止装置。
【請求項4】
請求項1に記載の無線盗聴防止装置において、
前記指向性とは、盗聴を防止したい信号の領域を包含するように、前記アンテナ部を中心とした第1の領域と第1の領域より小さく前記アンテナ部を中心とした第2の領域の間に、前記盗聴防止用信号を電磁波として出力すること
を特徴とする無線盗聴防止装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−267010(P2007−267010A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−89377(P2006−89377)
【出願日】平成18年3月28日(2006.3.28)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【Fターム(参考)】