説明

無線端末

【課題】組立て時に於けるパッキンのずれや捩れを防止し、防水性を高めた無線端末を提供する。
【解決手段】第1の筐体片2と、該第1の筐体片に嵌合部5を介して取付けられ基板16等の無線通信機能を搭載する第2の筐体片3と、前記第1の筐体片と前記第2の筐体片との間に挾み込まれ密着するパッキン4とを具備し、前記第2の筐体片の前記嵌合部には前記パッキンが嵌込まれる溝部6が形成され、前記パッキンの断面の図形中心から偏心した位置に突部17を形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信を行う無線端末、特に防水構造を有する無線端末に関するものである。
【背景技術】
【0002】
完全防水構造の無線端末の場合、しばしばOリング等の防水パッキンが利用される。
【0003】
図7、図8に於いて、従来の無線端末について説明する。無線端末1は筐体を有し、該筐体は第1の筐体片である箱形状の前面ケース2と、該前面ケース2に取付けられ、配線基板等が搭載される第2の筐体片であるシャーシ3とで構成されている。尚、図7は前記前面ケース2と前記シャーシ3とが組立てられた状態を示している。該シャーシ3には円形の断面形状を有するパッキン4が取付けられ、前記シャーシ3の後面(図7中では右側)に図示しないバッテリが装着される様になっている。
【0004】
前記シャーシ3は前面(図7中では左側)に枠状の嵌合部5が全周無端に突設され、該嵌合部5の外周面には全周に亘って連続する溝部6が形成され、前記パッキン4を取付ける際には前記溝部6に前記パッキン4が嵌込まれる。尚、該パッキン4は前記溝部6に嵌入できる様環状となっており、又該溝部6へは伸張した状態で嵌込まれるので、前記パッキン4の全長は前記溝部6全周の長さよりも短くなっている。
【0005】
前記無線端末1を組立てる際には、前記溝部6に前記パッキン4を嵌込み、該パッキン4を取付けた状態で、前記シャーシ3を斜め下方(図7中右下)から斜め上方(図7中左上)に向って前記嵌合部5が嵌合する様に前記前面ケース2に挿入して取付ける。前記シャーシ3の取付け後、ネジ等の固着具7により所要箇所がネジ止めされ、最後にアンテナ8が取付けられ、前記シャーシ3の後面にバッテリ(図示せず)が装着され、前記無線端末1の組立てが完了する。
【0006】
この時、前記嵌合部5に取付けられた前記パッキン4の外寸は、前記前面ケース2の内寸よりも大きくなっているので、前記前面ケース2に前記嵌合部5が挿入された際には、前記パッキン4が前記前面ケース2の内壁によって押圧され、弾性変形により圧縮されることで前記前面ケース2及び前記シャーシ3に密着し、前記前面ケース2と前記シャーシ3が前記パッキン4によってシールされ、前記無線端末1の防水性が確保される。
【0007】
然し乍ら、前記シャーシ3取付けの際に、前記パッキン4には前記シャーシ3の挿入方向とは逆向き、即ち後方及び下方(図7中では右側及び下側)に摩擦による力が作用する。従って前記パッキン4が下方に引延されると共に捩られる。この為、該パッキン4にずれや捩れが生じる場合があり、該パッキン4のずれや捩れにより前記前面ケース2、前記シャーシ3のシール性に不均一を生じ、前記無線端末1の防水性が低下する虞れがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−252719号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は斯かる実情に鑑み、組立て時に於けるパッキンのずれや捩れを防止し、防水性を高めた無線端末を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、第1の筐体片と、該第1の筐体片に嵌合部を介して取付けられ基板等の無線通信機能を搭載する第2の筐体片と、前記第1の筐体片と前記第2の筐体片との間に挾み込まれ密着するパッキンとを具備し、前記第2の筐体片の前記嵌合部には前記パッキンが嵌込まれる溝部が形成され、前記パッキンの断面の図形中心から偏心した位置に突部を形成した無線端末に係るものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、第1の筐体片と、該第1の筐体片に嵌合部を介して取付けられ基板等の無線通信機能を搭載する第2の筐体片と、前記第1の筐体片と前記第2の筐体片との間に挾み込まれ密着するパッキンとを具備し、前記第2の筐体片の前記嵌合部には前記パッキンが嵌込まれる溝部が形成され、前記パッキンの断面の図形中心から偏心した位置に突部を形成したので、組立て時に該突部全体を前記第2の筐体片の前記溝部に確実に収納することができる。よって、組立て時に前記溝部から突出した前記突部が前記第1の筐体片に引っ掛かり、組立て難くするのを防止することができるという優れた効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に於ける前面ケース、パッキン、シャーシを示す斜視図である。
【図2】本発明に於ける前面ケース及びパッキンが取付けられたシャーシを示す側面図である。
【図3】本発明に於ける組立て後の無線端末を示す側面図である。
【図4】本発明に於けるパッキンの平断面図である。
【図5】図3のA−A矢視図である。
【図6】本発明に於けるリブの収納を示す部分拡大側面図である。
【図7】従来の無線端末を示す側面図である。
【図8】図7のC−C矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施例を説明する。
【0014】
図1〜図6に於いて、本発明の無線端末について説明する。尚、図7、図8中と同等のものには同符号を付し、その説明を省略する。又、図3のB−B矢視図は図8と同一である為、図を省略する。
【0015】
無線端末1の筐体は、第1の筐体片である前面ケース2及び第2の筐体片であるシャーシ3によって構成され、前記前面ケース2は、後面が開放され、開口部が形成された箱形状となっており、前面(図1中では左側)に液晶ディスプレイ等の表示部9、ボタンキー等の操作部10を有している。又、前記前面ケース2の上面(図1中では上側)に前記シャーシ3に接続されるアンテナ8等が挿通されるアンテナ挿通孔11を有し、両側面には前記シャーシ3を固定する為のネジ孔12を有している。
【0016】
前記シャーシ3の前面(図1中では左側)には枠状の嵌合部5が全周無端に突設され、該嵌合部5の外周面には溝部6(図8参照)が全周に亘って連続して形成されている。該溝部6は断面形状が矩形であり、前記パッキン4が嵌入可能となっており、前記溝部6の幅は前記パッキン4の直径より僅かに大きく、深さは該パッキン4の直径より浅くなっており、該パッキン4を前記溝部6に嵌入した状態では前記パッキン4の一部が前記溝部6より突出する様になっている。
【0017】
又、該溝部6の所定の箇所(例えば左右に2箇所ずつ)には、該溝部6の断面が逆凸形状となる様該溝部6の中心線と平行な両溝壁面を欠切してリブ収納部13(図5参照)が形成される。又、前記シャーシ3は上面(図1中では上側)に前記アンテナ8等が接続されるアンテナ接続部14を有すると共に、両側面に前記前面ケース2に固定する為のネジ孔15を有し、前面には配線基板16が搭載されている。
【0018】
前記パッキン4はリング状で且つ断面が円形状の弾性部材であり、該パッキン4の所定の箇所(例えば左右に2箇所ずつ)には、該パッキン4の断面の直径に対して対称であり、該直径に直交する他の直径と平行に突出したリブ17,17が形成される。該リブ17,17は所定の厚みと略台形の外形形状を有する突部であり、前記パッキン4を前記溝部6に嵌入した際には、前記リブ17,17の下面が前記溝部6の底面と平行となり、前記リブ収納部13に収納される。
【0019】
図4は前記パッキン4の前記リブ17,17が形成された部分の断面を示している。該リブ17,17が形成されるのは前記パッキン4の断面の図形中心から偏心した位置(図4中では下側)であり、該パッキン4を前記溝部6に嵌込んだ際には、前記パッキン4が前記溝部6から突出すると共に前記リブ17,17が前記溝部6に完全に収納される様になっている。
【0020】
尚、前記溝部6の幅は前記パッキン4の径よりも大きく、前記パッキン4の中心線と直交する側の前記リブ収納部13の幅は前記リブ17部の幅寸法より大きく、前記パッキン4の中心線と平行な側の前記リブ収納部13の幅は前記リブ17の長さよりも長くなっており、前記パッキン4を前記溝部6に嵌入した際には、該溝部6と前記パッキン4との間には隙間が形成される。
【0021】
又、前記リブ収納部13の底面から前記溝部6の底面迄の距離は、前記リブ17,17の下面から前記パッキン4の下端迄の距離よりも短く、該パッキン4を前記溝部6に嵌入させた際には、前記パッキン4が圧縮されるにも拘らず、前記リブ17,17の下面と前記リブ収納部13の底面との間に隙間が形成される。これにより、ある程度のスペースを確保して圧縮する為、より高い防水効果を有することができる。
【0022】
前記無線端末1の組立てを行う際には、先ず前記パッキン4を前記シャーシ3に取付ける。前記パッキン4の取付けは、該パッキン4を伸張させ、前記リブ17,17を前記リブ収納部13に位置合せして前記溝部6に嵌込む。
【0023】
次に、前記シャーシ3を前記前面ケース2の斜め下方より挿入し、前記アンテナ接続部14を前記アンテナ挿通孔11に挿通する。前記アンテナ挿通孔11に挿通した前記アンテナ接続部14を支点として前記シャーシ3を回転させ、前記嵌合部5を前記前面ケース2の開口部に挿入する。
【0024】
この時、図5に示される様に、前記パッキン4は前記前面ケース2の内周面によって押圧されて圧縮変形し、前記パッキン4が圧縮変形することで前記リブ17,17が前記溝部6の底面方向へと変位し、前記リブ17,17の下面が前記リブ収納部13の底面と接触する様になっている。
【0025】
又、前記パッキン4は押圧された状態で前記前面ケース2に挿入されることから、該パッキン4には前記前面ケース2からの摩擦力によって、前記シャーシ3の挿入方向とは逆向き、即ち下方に伸張される力と捩れ方向に捩れる力とが作用する。前記パッキン4に下方への力が加わった場合には、前記リブ17,17が前記リブ収納部13の前記パッキン4の中心線と直交する側面に当接することで前記パッキン4の中心線方向の動きが規制され、該パッキン4に対して捩れ方向への力が加わった場合には、一方の前記リブ17の下面が前記リブ収納部13の底面に当接することで前記パッキン4の捩れ方向の動きが規制される。
【0026】
前記前面ケース2の開口部から前記シャーシ3を挿入し、該シャーシ3を前記前面ケース2に取付けた後、ネジ等の固着具7により、前記ネジ孔12及び前記ネジ孔15を介して前記前面ケース2と前記シャーシ3とをネジ止めし、固定する。最後に、前記アンテナ接続部14にアンテナ8等を接続し、前記シャーシ3の後面に図示しないバッテリを取付けることで、前記無線端末1の組立てが完了する。
【0027】
上述の様に、前記前面ケース2、前記シャーシ3間の防水を行う前記パッキン4に前記リブ17,17を形成し、前記シャーシ3の前記パッキン4を嵌込む前記溝部6に前記リブ17,17を収納可能なリブ収納部13を形成し、前記リブ17,17を前記リブ収納部13に収納する様にしたので、前記シャーシ3を前記ケース2に取付ける際に、前記リブ17,17が前記リブ収納部13の前記パッキン4の中心線と直交する側面と当接することで前記パッキン4に対する中心線方向への動きを規制でき、該パッキン4にずれが発生することを防止し、前記無線端末1の防水性が低下するのを抑制することができる。
【0028】
又、前記リブ17,17の下面が、前記溝部6の底面と平行となる様に形成したので、前記シャーシ3を前記前面ケース2に取付ける際に、何れか一方の前記リブ17の下面が前記リブ収納部13の底面と当接することで前記パッキン4の捩れ方向への動きを規制でき、該パッキン4が捩れることによる防水性の低下を抑制することができる。
【0029】
又、前記リブ17,17を、前記パッキン4の断面の図形中心から偏心した位置に形成し、前記リブ収納部13の深さを前記リブ17,17を完全に収納することができる深さとしたので、前記シャーシ3を前記前面ケース2に取付ける際に、前記溝部6から前記リブ17,17が突出することなく、前記前面ケース2の内縁が前記リブ17,17に引っ掛かり、組立て難くするのを防止することができる。
【0030】
又、前記シャーシ3の取付状態では、前記前面ケース2に前記パッキン4の上端が全長に亘って接触すると共に、前記溝部6の底面に前記パッキン4の下端が全長に亘って接触し、又前記パッキン4を前記溝部6に嵌入した際には前記リブ17,17の上面と前記前面ケース2との間に隙間が形成されると共に、前記リブ17,17の下面と前記リブ収納部13の底面との間に隙間が形成されているので、前記前面ケース2と前記シャーシ3間の防水を行う箇所と、前記パッキン4のずれや回転を防止する箇所が異なる部位となり、前記パッキン4の圧縮変形を前記リブ17,17が阻害せず、防水性を損わない。又、該リブ17,17が形成される方向を、前記溝部6の底面に対して平行とすることにより、前記リブ17,17の前記パッキン4の圧縮変形に対する影響を最小限とすることができ、より高い防水性を発揮できる。
【0031】
更に、前記パッキン4を前記溝部6に嵌込んだ際に、前記パッキン4と前記溝部6壁面との間に隙間が形成されているので、前記シャーシ3取付け時に前記パッキン4が押圧され、圧縮変形するのを阻害せず、より防水性を高めることができる。
【0032】
(付記)
又、本発明は以下の実施の態様を含む。
【0033】
(付記1)第1の筐体片と、該第1の筐体片に嵌合部を介して取付けられ基板等の無線通信機能を搭載する第2の筐体片と、前記第1の筐体片と前記第2の筐体片との間に挾み込まれ密着するパッキンとを具備し、前記第2の筐体片の前記嵌合部には前記パッキンが嵌込まれる溝部が形成され、前記パッキンの断面の図形中心から偏心した位置に突部を形成したことを特徴とする無線端末。
【0034】
(付記2)前記突部は前記パッキンの中心線に対して対称となる様2方向に形成された付記1の無線端末。
【0035】
(付記3)前記パッキンの上端が前記第1の筐体片と全長に亘って密着し、前記パッキンの下端が前記溝部の底面と全長に亘って密着し、前記突部は前記第1の筐体片及び前記溝部と密着しない付記1の無線端末。
【0036】
(付記4)前記突部が形成される方向は、前記パッキンが前記第1の筐体片及び第2の筐体片と密着する面に対して平行である付記1〜付記3の無線端末。
【0037】
(付記5)前記パッキンと前記溝部壁との間には隙間が形成されている付記1の無線端末。
【符号の説明】
【0038】
1 無線端末
2 前面ケース
3 シャーシ
4 パッキン
5 嵌合部
6 溝部
13 リブ収納部
17 リブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の筐体片と、該第1の筐体片に嵌合部を介して取付けられ基板等の無線通信機能を搭載する第2の筐体片と、前記第1の筐体片と前記第2の筐体片との間に挾み込まれ密着するパッキンとを具備し、前記第2の筐体片の前記嵌合部には前記パッキンが嵌込まれる溝部が形成され、前記パッキンの断面の図形中心から偏心した位置に突部を形成したことを特徴とする無線端末。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−34207(P2012−34207A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−172305(P2010−172305)
【出願日】平成22年7月30日(2010.7.30)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】