説明

無線装置

【課題】安価で高性能な無線装置を提供する。
【解決手段】本発明における無線装置は、誘電体で形成された第一の基板102と、前記第一の基板の裏面に表面が接合され、前記誘電体の誘電正接より大きい誘電正接の誘電体で形成された第二の基板103と、前記第一の基板102の表面に形成されたアンテナ素子と、前記第二の基板103の裏面に実装され、前記アンテナ素子と電気的に接続された回路チップ140とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線装置に関し、特に、対象物までの距離や位置を測定するレーダ装置等の無線装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車交通における衝突防止などの用途として、高精度の位置検知が実現できるミリ波または準ミリ波を用いた高周波レーダ装置が検討されており、様々なレーダ方式が提案されている。例えば、パルス方式レーダ装置は、送信アンテナからパルス信号を電波として送信し、対象物から反射した電波を受信アンテナで検出する。パルス式レーダ装置は、送信したパルス信号と受信したパルス信号との遅延時間差を算出することで対象物までの距離および位置を測定する。パルス式レーダ装置は、広い周波数帯域を必要とするため、広帯域特性が必要である。
【0003】
ミリ波および準ミリ波のパルス式レーダ装置は、高周波かつ広帯域の周波数を扱うので、チップとアンテナの接続部が重要である。チップとアンテナの接続部に寄生容量などが付加すると、高周波領域では不整合などにより特性が極端に悪くなる。これに対し、寄生成分を極力おさえるため、アンテナとチップが一体化した構造のレーダ装置が知られている。
【0004】
アンテナとチップが一体化した構造のレーダ装置は、基板表面にアンテナ素子が形成され、基板裏面にチップ実装領域が形成される。このような構造のレーダ装置において、基板表面に形成されたアンテナ素子と基板裏面に実装されたチップとの間で高周波信号を伝送するには工夫が必要である。例えば、同軸構造のスルーホールを用いたレーダ装置が知られている(特許文献1および特許文献2参照。)。同軸構造のスルーホールを用いる場合には、スルーホールの周りのグランドと、そのグランド層間を接続するグランド用スルーホールが必要である。
【特許文献1】特開2004−120659号公報
【特許文献2】特開2003−133801号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のアンテナ・チップ一体型レーダ装置におけるグランド用スルーホールは、ビアオンビア構造であり、ビルドアップ方式といった特別な作製工法が用いられる。そのため、作製プロセスが多い等により、高価となってしまうという問題がある。さらに、基板が異なる材料で積層された構造である場合には、アンテナとチップとを接続するスルーホールの設計が非常に難しくなる。
【0006】
一方、高い周波数領域では、基板上の線路損失やアンテナでの損失が大きくなるため、誘電正接が小さく損失が少ない基板を用いる必要がある。
【0007】
図6は、周波数に対する長さ10mmの線路における線路損失特性を示す図である。図6に示すように、誘電正接が大きい基板の線路は、特に高い周波数で損失が増大する。
【0008】
図7は、基板の誘電正接に対する平面パッチアンテナのアンテナ放射効率を示す図である。図7に示すように、誘電正接が大きくなると、アンテナ放射効率が減少する。すなわち、良好なアンテナ特性を得るためには、誘電正接の小さな材料の基板を使う必要がある。しかし、このような高周波基板は非常に高価であるという問題がある。
【0009】
そこで、本発明は、安価で高性能な無線装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明に係る無線装置は、誘電体で形成された第一の基板と、前記第一の基板の裏面に表面が接合され、前記誘電体の誘電正接より大きい誘電正接の誘電体で形成された第二の基板と、前記第一の基板の表面に形成されたアンテナ素子と、前記第二の基板の裏面に実装され、前記アンテナ素子と電気的に接続された回路チップとを備える。
【0011】
これにより、本発明における無線装置は、アンテナ素子を、誘電正接が小さく高周波特性にすぐれた高価な第一の基板上に形成することで、高性能を実現することができる。また、回路チップを誘電正接が大きく安価な第二の基板に実装することで、無線装置を安価に形成することができる。よって、本発明における無線装置は、安価で高性能を実現することができる。
【0012】
また、前記第一の基板および前記第二の基板には、前記第一の基板および前記第二の基板を貫通する第一のスルーホールが形成され、前記第一の基板は、前記アンテナ素子と前記第一のスルーホールとを電気的に接続する第一の配線を備え、前記第二の基板は、前記回路チップと前記第一のスルーホールとを電気的に接続する第二の配線を備えてもよい。
【0013】
これにより、アンテナ素子と回路チップとを、スルーホールを介して電気的に接続することができる。
【0014】
また、前記第二の基板は、積層された複数の基板から形成され、前記第二の基板は、さらに、前記複数の基板の各層間に形成され、電気的に接地され、前記第一のスルーホールを電気的に分離して囲む導体層である接地部を備えてもよい。
【0015】
これにより、第一のスルーホールは同軸構造により形成される。よって、第一のスルーホールの信号伝送特性を向上させることができる。
【0016】
また、前記第一の基板および前記第二の基板には、さらに、前記第一の基板および前記第二の基板を貫通し、前記複数の基板の各層間に形成された接地部を電気的に接続する第二のスルーホールが形成されてもよい。
【0017】
これにより、第二のスルーホールを安価な貫通スルーホールで形成することができる。よって、本発明における無線装置は、安価に形成することができる。
【0018】
また、前記第一の基板および前記第二の基板には、複数の前記第二のスルーホールが形成され、前記複数の第二のスルーホールは、前記第一のスルーホールと隣接する前記第一の配線または前記第二の配線の配線方向の軸に対し対称に配置されてもよい。
【0019】
これにより、接地部により、第一のスルーホールを効率よくシールドすることができる。これにより、同軸構造である第一のスルーホールの信号伝送特性を向上させることができる。
【0020】
また、前記各第二のスルーホールの中心は、前記第一のスルーホールと隣接する前記第一の配線または前記第二の配線の配線方向に対し垂直であり、前記第一のスルーホールの中心を含む軸上に配置されなくともよい。
【0021】
これにより、接地部により、第一のスルーホールを効率よくシールドすることができる。これにより、同軸構造である第一のスルーホールの信号伝送特性を向上させることができる。
【0022】
また、前記第一の基板は、一層から形成される基板であり、前記第一の配線は、前記第一の基板の表面に形成されてもよい。
【0023】
これにより、高価な高周波基板である第一の基板を1層しか用いないので、無線装置のコストを削減することができる。
【0024】
また、前記第一のスルーホールのインピーダンスは、前記第一の配線のインピーダンス以下かつ前記第二の配線のインピーダンス以上、または、前記第一の配線のインピーダンス以上かつ前記第二の配線のインピーダンス以下であってもよい。
【0025】
これにより、アンテナ素子と回路チップとの信号伝送特性を向上させることができる。
また、前記第一の基板の厚さは、前記複数の基板の各層の厚さよりも厚くてもよい。
【0026】
これにより、第一の基板の厚さが厚くなり、第一の基板上に形成されるアンテナ素子および第一の配線の高周波特性を向上させることができる。また、第二の基板を薄くすることにより、コストを削減することができる。よって、本発明における無線装置は、安価で高性能を実現することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明は、安価で高性能な無線装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明に係るレーダ装置の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0029】
本実施の形態におけるレーダ装置は、アンテナ素子を形成する基板表面側に高周波基板を用い、チップが実装される基板裏面側には安価なプリント基板を用いることで、安価で高性能なレーダ装置を実現することができる。また、本実施の形態におけるレーダ装置は、グランド用スルーホールに貫通スルーホールを用いることで安価で高性能なレーダ装置を実現することができる。
【0030】
図1Aは、本実施の形態におけるレーダ装置の断面構造を模式的に示した図である。
図1Aに示すように、本実施の形態におけるレーダ装置は、1層の高周波基板102と4層の実装基板103と、高周波基板102の表面に形成された配線161と、実装基板の裏面に形成された配線162、接続用スルーホール110と、グランド用スルーホール150と、接地導体170と、回路チップ140と、ワイヤ106とを備える。
【0031】
高周波基板102は、レーダ装置を構成する第一の基板であり、誘電正接が小さい誘電体で形成されたプリント配線板である。例えば、高周波基板102は、松下電工製ガラス布基材熱硬化PPO樹脂銅張積層板R−4726である。広帯域なアレーアンテナ特性を実現するため、高周波基板102は、厚膜基板であり、例えば、基板厚は0.5mmである。
【0032】
実装基板103は、レーダ装置を構成する第二の基板であり、高周波基板102の裏面に表面が接合される。実装基板103は、高周波基板102を形成する誘電体の誘電正接より大きい誘電正接の誘電体で形成される。また、実装基板103は、積層された複数の基板から形成される。実装基板103は、誘電正接が大きいが安価なプリント配線板であり、例えば、松下電工製FR−4ガラス布基材エポキシ樹脂多層プリント材料である。また、レーダ装置の低コスト化のために、実装基板103の一層の厚さは、高周波基板102の厚さより薄くする。
【0033】
このように、本実施形態におけるレーダ装置は、誘電正接が異なる基板を張り合わせ、高価な高周波基板102を1層構造とし、安価な実装基板を多層構造とすることで、低コスト化を実現している。
【0034】
また、高周波基板102と実装基板103との組み合わせを、同じ材料の基板を積載するのと同様のプロセスで形成できる組み合わせの基板にすることで、プロセスを複雑化することなく、レーダ装置を形成することができる。
【0035】
接続用スルーホール110は、高周波基板102および実装基板103を貫通し形成される貫通スルーホールである。接続用スルーホールは、配線161と配線162とを電気的に接続する。
【0036】
接地導体170は、実装基板103の各層間に形成され、電気的に接地される。接地導体170は、接続用スルーホール110を電気的に分離して囲む導体層である。すなわち、接続用スルーホール110は、同軸構造のスルーホールである。
【0037】
グランド用スルーホール150は、高周波基板102および実装基板103を貫通し形成される貫通スルーホールである。グランド用スルーホール150は、実装基板103の各層間に形成された接地導体170を電気的に接続する。
【0038】
回路チップ140は、高周波基板の表面に形成されるアンテナ素子が受信した信号の処理等を行うLSIである。
【0039】
ワイヤ106は、回路チップ140と実装基板上の配線162とをワイヤボンディング接続する。
【0040】
図1Bは、本実施の形態におけるレーダ装置の基板表面側(高周波基板側)の平面図である。
【0041】
図1Bに示すように、本実施の形態におけるレーダ装置は、高周波基板102の表面に形成された送信側アレーアンテナ121と、受信側アレーアンテナ122と、送信側接続用スルーホール111と、受信側接続用スルーホール112と、配線161aおよび161bと、分離用導体104とを備える。なお、送信側接続用スルーホール111と受信側接続用スルーホール112とを特に区別しない場合は接続用スルーホール110と表す。また、配線161aと161bとを特に区別しない場合は、配線161と表す。
【0042】
送信側アレーアンテナ121は、高周波基板102の表面に形成され、電波を放出する複数のアンテナ素子120と、送信側フィルタ131と、配線123aとを備える。
【0043】
受信側アレーアンテナ122は、高周波基板の表面に形成され、電波を受信する複数のアンテナ素子120と、受信側フィルタ132と、配線123bとを備える。送信側アレーアンテナ121から、放出された電波は、対象物に反射し、受信側アレーアンテナ122に受信される。
【0044】
送信側アレーアンテナ121および受信側アレーアンテナ122のアンテナ素子120は、マイクロストリップ型の平面パッチアンテナである。マイクロストリップ型の平面パッチアンテナを用いることで送信側アレーアンテナ121および受信側アレーアンテナ122を薄膜化することができる。
【0045】
送信側アレーアンテナ121および受信側アレーアンテナ122は、複数のアンテナ素子120を並べたアレー構造である。これにより、所望のアンテナ利得およびアンテナ放射パターンを容易に実現することができる。
【0046】
配線123aは、高周波基板102の表面に形成され、送信側アレーアンテナ121の複数のアンテナ素子120と送信側フィルタ131とを電気的に接続する。同様に、配線123bは、高周波基板102の表面に形成され、受信側アレーアンテナ122の複数のアンテナ素子120と受信側フィルタ132とを電気的に接続する。配線123aおよび配線123bは、送信側フィルタ131または受信側フィルタ132から、各アンテナ素子120への配線長が等しくなるように形成される。すなわち、各アンテナ素子120への給電方式は、並列給電方式(トーナメント方式)である。これにより、広帯域なアレーアンテナ特性を得ることができる。
【0047】
送信側フィルタ131および受信側フィルタ132は、所定の周波数領域以外の信号をカットするフィルタである。例えば、送信側フィルタ131および受信側フィルタ132は、20〜30GHzの周波数領域以外の信号をカットするバンドパスフィルタである。送信側フィルタ131及び受信側フィルタ132は、例えば、マイクロストリップ並列結合型バンドパスフィルタであり、複数のアンテナ素子120、配線123aおよび配線123bと同一基板上表面に形成される。これにより、レーダ装置の小型および低コスト化ができる。また、送信側フィルタ131および受信側フィルタ132は、フィルタ線路幅を細くし、入出力のインピーダンスを大きくしている。これにより、送信側フィルタ131および受信側フィルタ132の実装面積が小さくなり、送信側フィルタ131および受信側フィルタ132を小型化および高性能化できる。例えば、送信側フィルタ131および受信側フィルタ132の入出力インピーダンスは100Ωである。
【0048】
送信側接続用スルーホール111および受信側接続用スルーホール112は、高周波基板102および実装基板103を貫通し形成される。
【0049】
配線161aは、送信側接続用スルーホール111と、送信側フィルタ131とを電気的に接続する。配線161bは、受信側接続用スルーホール112と、受信側フィルタ132とを電気的に接続する。高周波基板102の表面に形成された第一の配線である配線161aおよび配線123aにより、送信側アレーアンテナ121の複数のアンテナ素子120と送信側接続用スルーホール111とが電気的に接続される。高周波基板102の表面に形成された第一の配線である配線161bおよび配線123bにより、受信側アレーアンテナ122の複数のアンテナ素子120と受信側接続用スルーホール112とが電気的に接続される。
【0050】
分離用導体104は、高周波基板102の表面の送信側アンテナ121と受信側アンテナ122の間に形成された導体である、分離用導体104は、電気的に接地され、送受信間のアイソレーションを向上させる。分離用導体104は、スルーホール105を介し、実装基板103の各層間の接地導体170と接続される。
【0051】
図1Cは、本実施の形態におけるレーダ装置の基板裏面側(チップ実装側)の平面図である。
【0052】
図1Cに示すように、本実施の形態におけるレーダ装置は、基板裏面側の実装基板103の裏面に、送信用チップ141と、受信用チップ142と、配線162aおよび162bとを備える。なお、送信用チップ141と受信用チップ142とを特に区別しない場合は回路チップ140と表す。配線162aと配線162bとを特に区別しない場合は配線162と表す。
【0053】
送信用チップ141は、実装基板103の裏面に実装され、送信側アレーアンテナ121と電気的に接続される。送信用チップ141は、送信側アレーアンテナ121から電波を放出させる信号を出力するLSIである。送信用チップ141は、パルス変調を行うミキサーと、パルス変調された信号を増幅するパワー増幅器等を備える。
【0054】
受信用チップ142は、実装基板103の裏面に実装され、受信側アレーアンテナ122と電気的に接続される。受信用チップ142は、受信側アレーアンテナ122が受信した信号から、対象物までの距離を算出するLSIである。受信用チップ142は、受信側アレーアンテナ122が受信した信号を増幅する低雑音増幅器と、増幅された信号を復調するミキサーと、対象物までの距離を算出する検波回路とを備える。検波回路は、受信信号と遅延回路で送信パルス信号遅延させた遅延信号とを比較する。検波回路は、送信された電波が対象物から反射して戻ってくる間の時間と遅延信号の遅延時間とが同じかどうかを判定し、遅延時間から対象物までの距離を換算する。
【0055】
配線162aは、実装基板103の裏面に形成された第二の配線であり、送信用チップ141と送信側接続用スルーホール111とを電気的に接続する。配線162bは、実装基板103の裏面に形成された第二の配線であり、受信用チップ142と受信側接続用スルーホール112とを電気的に接続する。
【0056】
送信側チップ141および受信側チップ142は、送信アレーアンテナ121および受信アレーアンテナ122からの電波放射の影響を受けないように、送信アレーアンテナ121および受信アレーアンテナ122が形成されている実装基板103の裏面に実装される。これにより、優れた送受アイソレーションが得られる。さらに、送信用チップ141と受信用チップ142は相互干渉を避けるため、送信側アンテナ121と受信側アンテナ122の外側つまり、実装基板103の外側にそれぞれ実装される。
【0057】
送信側アレーアンテナ121または受信側アレーアンテナ122と送信用チップ141または受信用チップ142との間での損失はレーダ感度の悪化の原因となるので、極力少なくする必要がある。また、実装基板103は、誘電正接が大きいため、配線162における信号の高周波領域での損失は大きい。よって、本実施の形態におけるレーダ装置は、接続用スルーホール110に近い位置に回路チップ140を実装する。これにより、配線162の配線長は短くなり、実装基板103における信号の高周波領域での損失を低減することができる。例えば、接続用スルーホール110と回路チップ140との距離は3mm程度である。
【0058】
このように、本実施の形態におけるレーダ装置は、送信側アレーアンテナ111および受信側アレーアンテナ112を高周波基板の表面に形成し、回路チップ140を安価な実装基板103に実装する。これにより、基板全体を高価な高周波基板で形成する場合に比べレーダ装置のコストを削減することができる。
【0059】
また、本実施の形態におけるレーダ装置は、高周波領域の信号の損失に対する影響の大きいアンテナ素子120、配線123a、配線123b、受信側フィルタ131および送信側フィルタを高周波基板102の表面に形成するので、基板全体を高周波基板で形成した場合に対し、特性の減少を抑えることができる。すなわち、本発明は、安価で高性能なレーダ装置を実現することができる。
【0060】
図2Aは、本実施の形態における接続用スルーホール110周辺の概略を示す平面図である。図2Bは、図2Aにおける領域210を拡大した図である。図2B上図は、領域210の平面図である。図2B下図は、図2B上図の断面図である。
【0061】
図2Bに示すように、接続用スルーホール110は、周囲を各層に形成されている接地導体170に囲まれる。接地導体170は、実装基板103の各層間に形成され、電気的に接地された導体層である。接地導体170は、上面から見て接続用スルーホール110を中心とし、円形に削除された形状である。このように、接続用スルーホール110の周囲に接地導体170を配置した同軸構造のスルーホールを用いることで、接続用スルーホール110のインピーダンスを調整することができる。ここで、接続用スルーホール110のインピーダンスは、高周波基板上の配線161のインピーダンスと、実装基板上の配線162と整合するよう設計する。すなわち、接続用スルーホール110のインピーダンスは、高周波基板上の配線161のインピーダンス以下かつ実装基板上の配線162のインピーダンス以上、または、高周波基板上の配線161のインピーダンス以上かつ実装基板上の配線162のインピーダンス以下に設計する。本実施形態では、高周波基板上の配線161のインピーダンスと実装基板側の配線162のインピーダンスと、接続用スルーホール110のインピーダンスとをそれぞれ50Ωとしている。これにより、接続による不整合が起きないので良好な特性を得ることができる。
【0062】
図2Aに示すように、接続用スルーホール110の周囲には、複数のグランド用スルーホール150a、150b、150cおよび150dが形成される。なお、グランド用スルーホール150a、150b、150cおよび150dを特に区別しない場合は、グランド用スルーホール150と表す。
【0063】
グランド用スルーホール150は、高周波基板102および実装基板103を貫通し形成される貫通スルーホールである。グランド用スルーホール150は、実装基板103の各層間に形成された接地導体170を電気的に接続する。グランド用スルーホール150は、基板作製の最後にドリル等で基板の最上部から最下位部まで貫通する穴を形成し、内部をメッキして導電させることにより形成される。貫通スルーホールは、ビルドアップ方式に比べ安価に形成することができる。これにより、本実施の形態におけるレーダ装置を安価に形成することができる。
【0064】
貫通スルーホールを用いた場合、グランド用スルーホール150は高周波基板上の配線161および実装基板上の配線162と重ならないよう設置する必要がある。また、本実施形態におけるレーダ装置は、接続用スルーホール110のサイズおよびグランド用スルーホール150の位置を工夫することで、ビルドアップ方式で作製した構造と同程度の特性が得ることができる。
【0065】
図3は、図2Bにおけるグランド径208に対する接続用スルーホール110の挿入損失を示す図である。図3に示すように、接続用スルーホール110のコア径207に対し、挿入損失が最も小さくなる最適なグランド径208が存在する。また、図3に示すように、接続用スルーホール110のコア径207を小さくすることで良好な特性が得られる。例えば、コア径207を0.3mm、グランド径208を1.4mmとすることで、良好な特性を得ることができる。
【0066】
図2Aに示すように、接続用スルーホール110に接続される高周波基板上の配線161または実装基板上の配線162の配線領域があるため、グランド用スルーホール150を接続用スルーホール110の周囲全方向に作成することはできない。本実施の形態におけるレーダ装置では、グランド用スルーホール150は、接続用スルーホール110の周囲に接続用スルーホール110に対し対称に配置される。複数のグランド用スルーホール150は、接続用スルーホール110と隣接する配線161または配線162の配線方向の軸に対し対称に配置される。すなわち、図2Aに示す軸211に対し、グランド用スルーホール150aおよび150cと、グランド用スルーホール150bおよび150dとが対称に配置される。
【0067】
また、グランド用スルーホール150aおよび150bは、接続用スルーホール110の中心に対し、図2Aにおける上方向にオフセット209を設けて配置される。すなわち、複数のグランド用スルーホール150の中心は、接続用スルーホール110に隣接する配線161または配線162の配線方向に対し垂直であり、接続用スルーホール110の中心を含む軸上に配置されない。
【0068】
図4は、図2Aのグランド用スルーホール150aおよび150bのオフセット209に対する接続用スルーホール110の損失を示している。図4に示すように、グランド用スルーホール150の位置によって挿入損失が変化する。つまり、グランド用スルーホール150の位置と接続用スルーホール110の位置にオフセット209をつけ、対称構造に近づけることで、挿入損失を低減できる。例えば、図4に示すように、オフセット209を0.4mmとすることで、良好な特性を得ることができる。
【0069】
このように、本実施の形態におけるレーダ装置は、接続用スルーホール110に対し、グラント用スルーホール150を最適に配置することで、ビルドアップ方式を用いた場合と同等の特性を得ることができる。また、グランド用スルーホール150を貫通スルーホールとすることで、安価にグランド用スルーホール150を形成できる。よって、本発明は、安価で高性能なレーダ装置を実現することができる。
【0070】
以上より、本実施の形態におけるレーダ装置は、送信側アレーアンテナ111および受信側アレーアンテナ112を高周波基板の表面に形成し、回路チップ140を安価な実装基板103に実装する。これにより、基板全体を高価な高周波基板で形成する場合に比べレーダ装置のコストを削減することができる。
【0071】
また、本実施の形態におけるレーダ装置は、高周波領域の信号の損失に対する影響の大きいアンテナ素子120、配線123a、配線123b、受信側フィルタ131および送信側フィルタを高周波基板102の表面に形成するので、基板全体を高周波基板で形成した場合に対し、特性の減少を抑えることができる。すなわち、本発明は、安価で高性能なレーダ装置を実現することができる。
【0072】
また、高周波基板102と実装基板103との組み合わせを、同じ材料の基板を積載するのと同様のプロセスで形成できる組み合わせの基板にすることで、プロセスを複雑化することなく、レーダ装置を形成することができる。
【0073】
また、同軸構造の接続用スルーホール110を用いることで、信号伝送特性を向上させることができる。さらに、グランド用スルーホール150を、貫通スルーホールで形成する。これにより、安価にグランド用スルーホール150を形成することができる。また、接続用スルーホール110に対し、グラント用スルーホール150を最適に配置することで、高性能なレーダ装置を実現することができる。
【0074】
以上、本発明の実施の形態に係るレーダ装置について説明したが、本発明は、この実施の形態に限定されるものではない。
【0075】
例えば、実装基板103は、テフロン(登録商標)基板、ポリミド基板、アルミナ基板、セラミック基板または紙フェノール基板等であってもよい。
【0076】
また、上記説明では、実装基板103は4層としているが、何層であってもよい。
また、上記説明では、高周波基板102は1層としているが、複数層であってもよい。
【0077】
また、上記説明では、送信側アレーアンテナ121と受信側アレーアンテナ122とを同じ構成としたが、構成や構造が異なっていても良い。また、送信側アレーアンテナ121および受信側アレーアンテナ122は、パッチアンテナとしたがその他のアンテナであってもよい。
【0078】
また、送信側アレーアンテナ121および受信側アレーアンテナ122への給電方法は並列給電方式でなくてもよい。
【0079】
また、上記説明では、送信側フィルタ131および受信側フィルタ132を挿入しているが、どちらか片側だけでもよいし、挿入しなくてもよい。
【0080】
また、上記説明では、送信側フィルタ131および受信側フィルタ132は、特定の周波数領域以外をカットするフィルタとしているが、これに限らない。例えば、送信側フィルタ131および受信側フィルタ132は、特定の周波数領域をカットするフィルタであってもよいし、ローパスフィルタ等であってもよい。また、複数種類のフィルタを併用してもよい。
【0081】
また、上記説明では、回路チップ140と実装基板上の配線162との接続は、ワイヤ106によるワイヤボンディング接続としたが、フリップチップ実装による接続等であってもよい。
【0082】
また、上記説明では、分離用導体104およびスルーホール105を形成したが、分離用導体104がなくてもよいし、分離用導体104にスルーホール105を形成しなくてもよい。
【0083】
また、上記説明では、接地導体170を円形としたがこれに限らない。例えば、接地導体170は、楕円形または多角形等の形状であってもよい。
【0084】
また、上記説明では、接続用スルーホール110と高周波基板上の配線161と実装基板上の配線162を一直線上に配置しているが、直線上でなくても良い。例えば、図5に示すように、高周波基板上の配線161および実装基板上の配線162が上方向から見てグランド層271を介して重なった位置にあってもよい。これにより、グランド用スルーホール150を形成できる領域が増やすことができる。
【0085】
また、上記説明では、接続用スルーホール110を用い、高周波基板上の配線161と実装基板上の配線162とを接続しているが、電磁結合で接続してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明は、無線装置に適用でき、特に、高周波領域を使用する無線通信装置、レーダ装置または車載レーダ装置に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1A】本実施の形態におけるレーダ装置の断面構造を模式的に示す図である。
【図1B】本実施の形態におけるレーダ装置の平面図である。
【図1C】本実施の形態におけるレーダ装置の裏面図である。
【図2A】本発明の実施形態における接続用スルーホール周辺の平面図である。
【図2B】図2Aにおける領域210の拡大図である。
【図3】本発明の実施形態における接続用スルーホールのグランド径に対する損失特性を示す図である。
【図4】本発明の実施形態における接続用スルーホールのオフセットに対する損失特性を示す図である。
【図5】本発明の実施形態の変形例における接続用スルーホール周辺の平面図である。
【図6】誘電正接が異なる材料における長さ10mmの線路損失を示す図である。
【図7】誘電正接に対するアンテナ放射効率を示す図である。
【符号の説明】
【0088】
102 高周波基板
103 実装基板
104 分離用導体
105 スルーホール
106 ワイヤ
110 接続用スルーホール
111 送信側接続用スルーホール
112 受信側接続用スルーホール
120 アンテナ素子
121 送信側アレーアンテナ
122 受信側アレーアンテナ
123a、123b、 161、161a、161b、162、162a、162b 配線
131 送信側フィルタ
132 受信側フィルタ
140 回路チップ
141 送信用チップ
142 受信用チップ
150、150a、150b、150c、150d グランド用スルーホール
170 接地導体
207 コア径
208 グランド径
209 オフセット
210 領域
211 軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体で形成された第一の基板と、
前記第一の基板の裏面に表面が接合され、前記誘電体の誘電正接より大きい誘電正接の誘電体で形成された第二の基板と、
前記第一の基板の表面に形成されたアンテナ素子と、
前記第二の基板の裏面に実装され、前記アンテナ素子と電気的に接続された回路チップとを備える
ことを特徴とする無線装置。
【請求項2】
前記第一の基板および前記第二の基板には、前記第一の基板および前記第二の基板を貫通する第一のスルーホールが形成され、
前記第一の基板は、
前記アンテナ素子と前記第一のスルーホールとを電気的に接続する第一の配線を備え、
前記第二の基板は、
前記回路チップと前記第一のスルーホールとを電気的に接続する第二の配線を備える
ことを特徴とする請求項1記載の無線装置。
【請求項3】
前記第二の基板は、積層された複数の基板から形成され、
前記第二の基板は、さらに、
前記複数の基板の各層間に形成され、電気的に接地され、前記第一のスルーホールを電気的に分離して囲む導体層である接地部を備える
ことを特徴とする請求項2記載の無線装置。
【請求項4】
前記第一の基板および前記第二の基板には、さらに、前記第一の基板および前記第二の基板を貫通し、前記複数の基板の各層間に形成された接地部を電気的に接続する第二のスルーホールが形成される
ことを特徴とする請求項3記載の無線装置。
【請求項5】
前記第一の基板および前記第二の基板には、複数の前記第二のスルーホールが形成され、
前記複数の第二のスルーホールは、前記第一のスルーホールと隣接する前記第一の配線または前記第二の配線の配線方向の軸に対し対称に配置される
ことを特徴とする請求項4記載の無線装置。
【請求項6】
前記各第二のスルーホールの中心は、前記第一のスルーホールと隣接する前記第一の配線または前記第二の配線の配線方向に対し垂直であり、前記第一のスルーホールの中心を含む軸上に配置されない
ことを特徴とする請求項5記載の無線装置。
【請求項7】
前記第一の基板は、一層から形成される基板であり、
前記第一の配線は、前記第一の基板の表面に形成される
ことを特徴とする請求項2〜6記載のうちいずれか一つの無線装置。
【請求項8】
前記第一のスルーホールのインピーダンスは、前記第一の配線のインピーダンス以下かつ前記第二の配線のインピーダンス以上、または、前記第一の配線のインピーダンス以上かつ前記第二の配線のインピーダンス以下である
ことを特徴とする請求項2〜7記載のうちいずれか一つの無線装置。
【請求項9】
前記第一の基板の厚さは、前記複数の基板の各層の厚さよりも厚い
ことを特徴とする請求項3、4、5または6記載の無線装置。

【図1C】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図5】
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