無線通信システムおよび無線通信方法
【課題】より負荷の小さい信号処理にて近距離MIMO通信を実現する。
【解決手段】
第1のアンテナ素子と、第2のアンテナ素子と、を具備する第1の無線通信装置と、第3のアンテナ素子と、第4のアンテナ素子と、前記第3のアンテナ素子が受信した信号に対して90度の位相回転を付与する移相部と、前記第4のアンテナ素子が受信した信号と、前記移相部が位相回転した信号とを合成する合成部と、を具備する第2の無線通信装置と、を具備する。
【解決手段】
第1のアンテナ素子と、第2のアンテナ素子と、を具備する第1の無線通信装置と、第3のアンテナ素子と、第4のアンテナ素子と、前記第3のアンテナ素子が受信した信号に対して90度の位相回転を付与する移相部と、前記第4のアンテナ素子が受信した信号と、前記移相部が位相回転した信号とを合成する合成部と、を具備する第2の無線通信装置と、を具備する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信システムおよび無線通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、限られた周波数帯域で数メガビット毎秒[Mbps]〜数ギガビット毎秒[Gbps]程度の高速無線通信を実現しようとする検討が進められている。その中で、送受信に用いるアンテナ数の増大に比例して通信容量を増大可能なMIMO(Multiple-Input Multiple-Output)通信が注目されている。MIMO通信では、マルチパス環境を利用して複数の信号を同時に通信することで、周波数帯域を広げることなく無線区間の通信速度を向上することが可能である。
【0003】
一方、近年、RF−IDに代表される近距離通信が検討されており、また、ミリ波やUWB(Ultra-Wide-Band)通信を利用した近距離・高速通信が注目されている。また、近距離通信にMIMO技術を適用することも可能であり、コンクリート壁などの障害物内部を伝搬路として用いる近距離超高速無線中継システムが提案されている。例えば、非特許文献1では、近傍界であれば壁などにより送受信アレーアンテナの見通しが無い場合でも、MIMO通信を用いて高速通信が可能であることが示されている。MIMO通信では広い周波数帯域が不要であるため周波数資源の有効利用を図ることができる。
【0004】
また、本願発明者等は、非特許文献2および3において、送受信アレーアンテナが開口と比べて近接する近距離MIMO通信について、その基本特性を示している。例えば、非特許文献2では、送受信アレーアンテナ間の距離に対する空間相関特性と信号対雑音比(SNR:Signal-to-Noise Ratio)の関係を考慮することによってアレーアンテナの最適な素子間隔を求められることが示されている。
【0005】
ここで、非特許文献2では、チャネル容量を増大するための検討が行われている。これに加えて、実際のMIMO通信を実現するためには送受信における信号処理技術が必要である。そこで、非特許文献3では、MIMO通信の最適送受信方法として知られている固有モード伝送(以下、EM−BFと称する)の特性と、受信側のみで信号処理を行う方法として知られているゼロフォーシング(以下、ZFと称する)の特性とが比較されている。そして、非特許文献2で示したアレーアンテナの最適な素子間隔では、EM−BFの特性とZFの特性とがほぼ一致することが示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】G. J. Foschini and M. J. Gans、「Capacity when using diversity at transmit and receive sites and the Rayleigh-faded matrix channel is unknown at the transmitter」、Proc. WINLAB Workshop on Wireless Information Network、1996年3月
【非特許文献2】関,西森,本間,西川、「近距離超高速中継システム」、信学技報、AP2008-124、2008年11月
【非特許文献3】本間,西森,関,溝口、「近傍MIMO通信における通信容量の評価」、信学技報、AP2008-125、2008年11月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
EM−BFやZFでは、ディジタル信号レベルにおける逆行列の計算や固有値展開といった負荷の大きい信号処理が必要となってしまう。より負荷の小さい信号処理にて近距離MIMO通信を実現できれば、通信システムの製造コストや消費電力の低減や、装置の小型化を図り得る。
【0008】
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、その目的は、より負荷の小さい信号処理にて近距離MIMO通信を実現可能な無線通信システムおよび無線通信方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は上述した課題を解決するためになされたもので、本発明の一態様による無線通信システムは、第1の通信装置が具備する第1のアンテナ素子と第2のアンテナ素子とを含む第1のアレーアンテナと、第2の通信装置が具備する第3のアンテナ素子と第4のアンテナ素子とを含む第2のアレーアンテナとが配置される無線通信システムであって、前記第1の通信装置が、前記第1のアレーアンテナと前記第2のアレーアンテナとの距離に対して、チャネル容量が最大となる間隔に、前記第1のアンテナ素子と前記第2のアンテナ素子との間の距離が選択された前記第1のアレーアンテナを具備し、前記第2の通信装置が、前記第1のアレーアンテナと前記第2のアレーアンテナとの距離に対して、チャネル容量が最大となる間隔に、前記第3のアンテナ素子と前記第4のアンテナ素子との間の距離が選択された前記第2のアレーアンテナと、前記第3のアンテナ素子から入力された信号を分岐させ、一部の信号に対して90度の位相回転を付与し、位相回転が付与された信号と位相回転が付与されていない信号とを出力する第1の重み付け手段と、前記第4のアンテナ素子から入力された信号を分岐させ、一部の信号に対して90度の位相回転を付与し、位相回転が付与された信号と位相回転が付与されていない信号とを出力する第2の重み付け手段と、前記第1の重み付け手段の出力のうち位相回転が付与されていない信号と前記第2の重み付け手段の出力のうち位相回転が付与された信号とを合成して復号する第1の復号手段と、前記第1の重み付け手段の出力のうち位相回転が付与された信号と前記第2の重み付け手段の出力のうち位相回転が付与されていない信号とを合成して復号する第2の復号手段と、を具備することを特徴とする。
【0010】
また、本発明の一態様による無線通信システムは、上述の無線通信システムであって、前記第2のアンテナ素子は、前記第1のアンテナ素子との距離に関して、MIMO通信の固有モード通信法におけるチャネル容量が最大となる位置に配置されることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の一態様による無線通信システムは、上述の無線通信システムであって、前記第2のアンテナ素子は、前記第1のアンテナ素子との距離に関して、MIMO通信のゼロフォーシング法におけるチャネル容量が最大となる位置に配置されることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の一態様による無線通信システムは、上述の無線通信システムであって、前記第1のアンテナ素子と、前記第2のアンテナ素子とは、それぞれ、2つの信号を互いに直交する偏波にて送信し、前記第3のアンテナ素子と、前記第4のアンテナ素子とは、前記互いに直交する偏波を、偏波の角度毎に独立して受信することを特徴とする。
【0013】
また、本発明の一態様による無線通信システムは、第1の通信装置が具備する第1〜第4のアンテナ素子を含む第1のアレーアンテナと、第2の通信装置が具備する第5〜第8のアンテナ素子とを含む第2のアレーアンテナとが配置される無線通信システムであって、前記第1の通信装置が、前記第1のアレーアンテナと前記第2のアレーアンテナとの距離に対して、チャネル容量が最大となる間隔に、前記第1〜第4のアンテナ素子の間の距離が選択された前記第1のアレーアンテナを具備し、前記第2の通信装置が、前記第1のアレーアンテナと前記第2のアレーアンテナとの距離に対して、チャネル容量が最大となる間隔に、前記第5〜第8のアンテナ素子の間の距離が選択された前記第2のアレーアンテナと、前記第5〜第8のアンテナ素子から入力された信号の各々を分岐させ、アンテナ素子毎に、分岐された信号の一部に90度の位相回転を付与し、他の一部に180度の位相回転を付与し、位相回転が付与されていない信号と、90度の位相回転が付与された信号と、180度の位相回転が付与された信号とを出力する重み付け手段と、前記重み付け手段が出力する信号のうち、前記第5のアンテナ素子から入力された信号と、前記第6のアンテナ素子から入力され90度の位相回転が付与された信号と、前記第7のアンテナ素子から入力され90度の位相回転が付与された信号と、前記第8のアンテナ素子から入力され180度の位相回転が付与された信号とを合成して復号する第1の復号手段と、前記重み付け手段が出力する信号のうち、前記第6のアンテナ素子から入力された信号と、前記第5のアンテナ素子から入力され90度の位相回転が付与された信号と、前記第8のアンテナ素子から入力され90度の位相回転が付与された信号と、前記第7のアンテナ素子から入力され180度の位相回転が付与された信号とを合成して復号する第2の復号手段と、前記重み付け手段が出力する信号のうち、前記第7のアンテナ素子から入力された信号と、前記第5のアンテナ素子から入力され90度の位相回転が付与された信号と、前記第8のアンテナ素子から入力され90度の位相回転が付与された信号と、前記第6のアンテナ素子から入力され180度の位相回転が付与された信号とを合成して復号する第3の復号手段と、前記重み付け手段が出力する信号のうち、前記第8のアンテナ素子から入力された信号と、前記第6のアンテナ素子から入力され90度の位相回転が付与された信号と、前記第7のアンテナ素子から入力され90度の位相回転が付与された信号と、前記第5のアンテナ素子から入力され180度の位相回転が付与された信号とを合成して復号する第4の復号手段と、を具備することを特徴とする。
【0014】
また、本発明の一態様による無線通信システムは、上述の無線通信システムのいずれか複数と、前記複数の無線通信システムを互いに電磁的にシールドするシールド手段と、を具備することを特徴とする。
【0015】
また、本発明の一態様による無線通信方法は、第1の通信装置が具備する第1のアンテナ素子と第2のアンテナ素子とを含む第1のアレーアンテナと、第2の通信装置が具備する第3のアンテナ素子と第4のアンテナ素子とを含む第2のアレーアンテナとが配置され、前記第1の通信装置は、前記第1のアレーアンテナと前記第2のアレーアンテナとの距離に対して、チャネル容量が最大となる間隔に、前記第1のアンテナ素子と前記第2のアンテナ素子との間の距離が選択された前記第1のアレーアンテナを具備し、前記第2の通信装置は、前記第1のアレーアンテナと前記第2のアレーアンテナとの距離に対して、チャネル容量が最大となる間隔に、前記第3のアンテナ素子と前記第4のアンテナ素子との間の距離が選択された前記第2のアレーアンテナを具備する無線通信システムの無線通信方法であって、前記第3のアンテナ素子から入力された信号を分岐させ、一部の信号に対して90度の位相回転を付与し、位相回転が付与された信号と位相回転が付与されていない信号とを出力する第1の重み付けステップと、前記第4のアンテナ素子から入力された信号を分岐させ、一部の信号に対して90度の位相回転を付与し、位相回転が付与された信号と位相回転が付与されていない信号とを出力する第2の重み付けステップと、前記第1の重み付けステップの出力のうち位相回転が付与されていない信号と前記第2の重み付けステップの出力のうち位相回転が付与された信号とを合成して復号する第1の復号ステップと、前記第1の重み付けステップの出力のうち位相回転が付与された信号と前記第2の重み付けステップの出力のうち位相回転が付与されていない信号とを合成して復号する第2の復号ステップと、を具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、より負荷の小さい信号処理にて近距離MIMO通信を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1の実施形態における無線通信システムシステムの概略構成を示す構成図である。
【図2】近距離MIMO通信におけるアンテナ素子の配置例を示す説明図である。
【図3】2×2の近距離MIMO通信におけるチャネル容量特性の説明図である。
【図4】図3で説明した近距離MIMO通信にてZFを用いた際の、アンテナ素子間隔と、送受信間の位相差および振幅比との関係を示す説明図である。
【図5】送受信間隔Dと、当該送受信間隔に基づいて定まる最適素子間隔doptにおける、受信ウエイトの位相差θwと、振幅比ratioとの関係を示す説明図である。
【図6】同実施形態の無線通信システムにおけるアンテナ素子の配置を決定する処理手順を示すフローチャートである。
【図7】本発明の第2の実施形態における無線通信システムの概略構成を示す構成図である。
【図8】本発明の第3の実施形態における無線通信システムの概略構成を示す構成図である。
【図9】同実施形態の通信装置におけるアンテナの配置を示す説明図である。
【図10】同実施形態のウエイト演算回路における重み付け合成を示す説明図である。
【図11】本発明の第4の実施形態における、複数対のアンテナを具備する無線通信システムの、受信側のアンテナ素子の配置例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<第1の実施形態>
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態における無線通信システムの概略構成を示す構成図である。同図において、無線通信システム1は、通信装置(第1の無線通信装置)100と、通信装置(第2の無線通信装置)200とを具備する。通信装置100は、送信部111〜112と、アンテナ素子(第1のアンテナ素子)121と、アンテナ素子(第2のアンテナ素子)122とを具備する。通信装置200は、アンテナ素子(第3のアンテナ素子)211と、アンテナ素子(第4のアンテナ素子)212と、ウエイト演算回路220と、受信部251〜252とを具備する。ウエイト演算回路220は、分配器221〜222と、90度移相器231〜232と、合成器241と、合成器242とを具備する。
【0019】
無線通信システム1は、2×2MIMO(2入力2出力のMIMO)通信方式にて、通信装置100から通信装置200への、2系列(系列S11および系列S12)のデータの通信(送信および受信)を行う。
なお、本実施形態では、通信装置100から通信装置200への通信について説明するが、これに加えて、無線通信システム1が、通信装置200から通信装置100への通信を行うようにしてもよい。この場合、通信装置200から通信装置100への通信方式として、様々なものを用いることができる。例えば通信装置200から通信装置100への通信も、通信装置100から通信装置200への通信と同様、本発明を適用した通信方式にて行われるようにしてもよいし、あるいは、他の通信方式にて行われるようにしてもよい。
【0020】
通信装置100では、信号の重み付けを行う必要がない。このため、通信装置100として、2×2MIMO方式の近距離通信における、一般的な通信装置を用いることができる。
送信部111は、データ系列S11(のデータ)を取得し、符号化や変調(デジタルデータからベースバンド信号への変調、および、送信周波数の信号への変調)等の処理を行ってデータ系列S11の送信信号を生成し、生成した送信信号をアンテナ素子121に出力する。同様に、送信部112は、データ系列S12のデータを取得し、符号化や変調等の処理を行ってデータ系列S12の送信信号を生成し、生成した送信信号をアンテナ素子122に出力する。
【0021】
ここで、データ系列S11とデータ系列S12とは、互いに独立した系列であってもよいし、相関を有する系列であってもよい。通信装置100は、これらのデータ系列を、例えば、通信装置100に接続されたコンピュータなど通信装置100の外部から取得する。
また、送信部111および送信部112が行う変調の方式としては、様々なものを用いることができる。例えば、送信部111および112が、QPSK(Quadrature Phase-Shift Keying)方式にて変調を行うようにしてもよいし、あるいは、1024QAM(Quadrature Amplitude Modulation)方式にて変調を行うようにしてもよい。さらには、送信部111および112が、伝搬路の状態に応じて変調方式を選択する適応変調を行うようにしてもよい。ただし、近距離MIMO通信においては、送信アンテナと受信アンテナとの距離が近いため、伝搬路の状態が安定していることが期待される。かかる場合、送信部111および送信部112が固定の変調方式に変調を行うようにすることで、回路構成を簡単化し、通信装置100の小型軽量化および製造コスト削減や、通信装置100と通信装置200との制御データの通信量の抑制を図ることができる。
【0022】
アンテナ素子121は、送信部111から出力される送信信号を無線送信する。同様に、アンテナ素子122は、送信部112から出力される送信信号を無線送信する。ここで、アンテナ素子121とアンテナ素子122との間隔は、後述する最適素子間隔doptに設定されている。この最適素子間隔doptは、後述するように、アンテナ素子121とアンテナ素子211との距離に応じて定められる所定の距離(MIMO通信の固有モード伝送法におけるチャネル容量が最大となる距離、あるいは、MIMO通信のゼロフォーシング法におけるチャネル容量が最大となる距離)である。
【0023】
また、図2を用いて後述するように、アンテナ素子121とアンテナ素子122とは、同一平面状に配置される。以下では、同一平面上に配置される複数のアンテナ素子を具備するアンテナをアレーアンテナと称する。すなわち、アンテナ素子121とアンテナ素子122とでアレーアンテナを構成する。
【0024】
通信装置200は、通信装置100から送信される信号から各系列のデータを抽出する。
アンテナ素子211と、アンテナ素子212とは、いずれも、アンテナ素子121から送信される無線信号と、アンテナ素子122から送信される無線信号とを、両無線信号が合成された無線信号として受信する。そして、アンテナ素子211は、受信した信号を分配器221に出力し、アンテナ素子212は、受信した信号を分配器222に出力する。
【0025】
ここで、アンテナ素子211とアンテナ素子212との間隔は、上記のアンテナ素子121およびアンテナ素子122と同様、後述する最適素子間隔doptに設定されている。そして、アンテナ素子211は、アンテナ素子121に対向して、アンテナ素子121から距離Dの位置に配置されている。
【0026】
また、アンテナ素子212は、アンテナ素子122に対向して、アンテナ素子122から距離Dの位置に配置されている。すなわち、アンテナ素子212は、アンテナ素子122に対向して、当該アンテナ素子122との距離が、アンテナ素子121とアンテナ素子211との距離と等しい位置、かつ、アンテナ素子211との距離が、アンテナ素子121とアンテナ素子122との距離と等しい位置に配置されている。
アンテナ素子121とアンテナ素子122の場合と同様、アンテナ素子211とアンテナ素子212とは、アレーアンテナを構成する。
【0027】
ウエイト演算回路220は、アンテナ素子211が受信した信号およびアンテナ素子212が受信した信号に対する位相回転や合成を行って、データ系列を抽出する。
分配器221は、アンテナ素子211が受信した信号を2分配して、90度移相器231と合成器241とに出力する。分配器222は、アンテナ素子212が受信した信号を2分配して、90度移相器232と合成器242とに出力する。
【0028】
90度移相器231は、分配器221が受信した信号に対して90度の位相回転を付与して(すなわち、位相を90度進めて)、合成器242に出力する。90度移相器232は、分配器222から出力された信号の移相を90度回転して、合成器241に出力する。
【0029】
合成器241は、分配器221から出力される信号と、90度移相器232から出力される信号とを合成する。すなわち、合成器241は、アンテナ素子211が受信した信号と、アンテナ素子212が受信して90度移相器232が90度の移相回転を行った信号とを合成する。
ここでいう信号の合成は、信号の重ね合わせ(足し合わせ)である。合成器241は、当該合成によって、アンテナ素子121が送信するデータ系列S11の信号に対応するデータ系列S11’の信号を生成する。合成器241は、合成によって得られた信号を、受信部251に出力する。
【0030】
ここで、分配器221と90度移相器231とで、本発明における第1の重み付け手段を構成する。すなわち、アンテナ素子211から入力された信号を、分配器221が2分岐させ、90度移相器231が、一部の信号に対して90度の位相回転を付与して、位相回転が付与された信号と位相回転が付与されていない信号とを出力する。また、分配器222と90度移相器232とで、本発明における第2の重み付け手段を構成する。すなわち、アンテナ素子212から入力された信号を、分配器222が2分岐させ、90度移相器232が、一部の信号に対して90度の位相回転を付与して出力する。
【0031】
合成器241は、例えば、分配器を逆に使用する(すなわち、分配器における出力端子に、分配器221から出力される信号と、90度移相器232から出力される信号とを入力し、分配器における入力端子から信号を取り出す)ことによって実現される。
【0032】
同様に、合成器242は、分配器222から出力される信号と、90度移相器231から出力される信号とを合成する。すなわち、合成器242は、アンテナ素子212が受信した信号と、アンテナ素子211が受信して90度移相器231が90度の移相回転を行った信号とを合成する。
合成器242は、当該合成によって、アンテナ素子122が送信するデータ系列S12の信号に対応するデータ系列S12’の信号を生成する。合成器242は、合成によって得られた信号を、受信部252に出力する。
合成器242は、例えば、分配器を逆に使用することによって実現される。
【0033】
受信部251は、合成器241から出力される信号に対して復調や復号化等の処理を行って、データ系列S11’(のデータ)を生成する。受信部251は、生成したデータ系列を、例えば通信装置200(受信部251)に接続されたコンピュータなど、通信装置200の外部に出力する。
ここで、合成器241と受信部251とで、本発明における第1の復号手段を構成する。すなわち、合成器241が、第1の重み付け手段の出力のうち位相回転が付与されていない信号と第2の重み付け手段の出力のうち位相回転が付与された信号とを合成し、受信部251が、合成部241の合成した信号を復号する。
【0034】
受信部252は、合成器242から出力される信号に対して復調や復号化等の処理を行って、データ系列S12’を生成する。受信部252は、生成したデータ系列を、例えば通信装置200(受信部252)に接続されたコンピュータなど、通信装置200の外部に出力する。
ここで、合成器242と受信部252とで、本発明における第2の復号手段を構成する。すなわち、合成器242が、第1の重み付け手段の出力のうち位相回転が付与された信号と第2の重み付け手段の出力のうち位相回転が付与されていない信号とを合成し、受信部252が、合成部242の合成した信号を復号する。
【0035】
次に、図2〜図5を参照して、本実施形態におけるアンテナ素子の間隔および受信ウエイトについて説明する。
図2は、近距離MIMO通信におけるアンテナ素子の配置例を示す説明図である。
同図において、送信側のアンテナ素子数と受信側のアンテナ素子数とは、いずれもM(Mは、M≧2の正整数)である。これら送信側のアンテナ素子ETj(jは、1≦j≦Mの正整数)は、平面PT上に配置され、また、受信側のアンテナ素子ERi(iは、1≦i≦Mの正整数)は、平面PR上に配置されている。
なお、同図では垂直偏波のアンテナ素子が示されているが、本発明の適用範囲はこれに限らない。例えば水平偏波のアンテナ素子など様々なアンテナ素子を本発明に係る無線通信システムに用いることができる。
【0036】
図2において、平面PTと平面PRとの距離は、距離Dとなっている。以下では、この平面PTと平面PRとの距離を「送受信間隔」と称する。
ここで、送受信間隔Dは、アレーアンテナの開口長と同程度の距離に設定される。ここでいうアレーアンテナの開口長と同程度の距離は、近距離MIMO通信を示す距離であり、送受信間隔に対してアンテナ素子間の距離に対して無視できない距離である。例えば、送受信間隔Dは、30〜300ミリメートルの範囲で設定される。
また、送信側、受信側共に、アンテナ素子間隔は、距離dである。より具体的には、送信側のアンテナ素子は、縦(図2に示すy軸方向)横(図2に示すx軸方向)共に、距離dの等間隔で配置されている。また、受信側のアンテナ素子は、送信側のアンテナ素子に対向して、縦横共に、距離dの等間隔で配置されている。
【0037】
同図に示す3次元直交座標系を用いて送信側のアンテナ素子ETjの座標をQj=(xTj,yTj,0)で示し、受信側のアンテナ素子ERiの座標をPi=(xRi,yRi,D)で示すと、座標Qjから座標Piへのベクトルrij(明細書においては、行列ないしベクトルを示す太字表記を省略する。以下同様)は、式(1)で示される。
【0038】
【数1】
【0039】
なお、送信側のアンテナ素子の座標として、例えば、平面PTにおけるアンテナ素子の中心座標を用いる。同様に、受信側のアンテナ素子の座標として、例えば、平面PRにおけるアンテナ素子の中心座標を用いる。
また、アンテナ素子間における応答値hijは、式(2)で示される。
【0040】
【数2】
【0041】
ここで、角度θijおよびφijと、距離γijとを組み合わせた(θij、φij、γij)で、ベクトルrijを極座標にて示す。なお、図2に示すように、角度θは、z軸の正の向きからy軸の正の向きへの角度を示し、角度φは、x軸の正の向きからy軸の正の向きへの角度を示す。
また、波長λ0は、図2のアンテナ素子間で送受信される電波の、自由空間における波長を示し、周波数k(=2π/λ0)は、当該電波の周波数を示す。
【0042】
また、ベクトルETとERとは、ベクトルrijの極座標表示における角度θijおよびφijの関数であり、それぞれ、送信側のアンテナ素子と受信側のアンテナ素子との、利得の平方根を示す。
また、ベクトルrijの極座標表示における距離γijは、式(3)にて示される。
【0043】
【数3】
【0044】
また、EM−BFのチャネル容量(1秒かつ1Hzに送信可能なビット数の上限)CEM-BF[ビット毎秒毎ヘルツ(bit/s/Hz)]は、式(4)にて示される。
【0045】
【数4】
【0046】
ここで、Ptは送信電力を示し、σ2は雑音電力を示す。また、λiは、チャネル行列(M×M行列)の相関行列(HHH、または、HHH)を固有値分解することで得られる固有値を示す。
【0047】
また、ZFのチャネル容量CZF[ビット毎秒毎ヘルツ]は、式(5)にて示される。
【0048】
【数5】
【0049】
ここで、ベクトル||wi||は、送信側のアンテナ素子ETiにおけるZFによるウエイト(アンテナ素子ETiが送信する電波における、各データ系列に対する重み付け)の列ベクトルを示す。
また、ZFにおける受信ウエイト行列(受信側の各アンテナ素子が受信した電波を合成する際の重み付け)は、以下の式で示される。
【0050】
【数6】
【0051】
図3は、2×2の近距離MIMO通信におけるチャネル容量特性の説明図である。
同図(a)に示すように、ここでは送受信側共に、アンテナ素子数M=2となっており、また、送受信間隔D=120ミリメートルに設定されている。また、各アンテナ素子の偏波は垂直偏波となっている。
【0052】
かかる近距離MIMO通信において、アンテナ素子間隔とチャネル容量との関係は、図3(b)のようになる。ここで、アンテナ素子間隔を、波長λ0との相対距離で示している。また、線L311は、式(4)に基づいて算出される、EM−BFにおけるチャネル容量を示し、線L312は、式(5)に基づいて算出される、ZFにおけるチャネル容量を示す。
同図(b)に示されるように、EM−BFとZFとのいずれにおいても、チャネル容量が最大となる素子間隔(以下、「最適素子間隔」と称する)が存在する。また、EM−BFとZFとで、同じ素子間隔(d=1λ)においてチャネル容量が最大となっている。
【0053】
また、当該近距離MIMO通信における固有値分布は、図3(c)のようになる。同図(c)において、最適素子間隔d=1λでは、第1固有値と2固有値とは、いずれも、信号対雑音比と同じ値となっている。すなわち、最適素子間隔d=1λにて、MIMOにおける最適条件を満たしていることになる。
【0054】
図4は、図3で説明した近距離MIMO通信にてZFを用いた際の、アンテナ素子間隔と、送受信間の位相差および振幅比との関係を示す説明図である。
ここで、2×2MIMO通信における上記のチャネル行列Hを、式(7)のように表す。
【0055】
【数7】
【0056】
要素hij(i,jは、それぞれ2以下の正整数)は、送信側のアンテナ素子ETjから受信側のアンテナ素子ETiへの伝搬路の位相および振幅の変化率を、例えば複素数表現にて示す。
また、2×2MIMO通信における上記の受信ウエイト行列(行列W)を、式(8)のように表す。
【0057】
【数8】
【0058】
要素wij(i,jは、それぞれ2以下の正整数)は、受信側のアンテナ素子ERjが受信した信号を、i番目の受信回路に供給する際に付与する重みを示す。ここで、i番目の受信回路は、送信側のアンテナ素子ETiが送信するi番目のデータ系列(の信号)に対応するデータ系列を生成する回路である。すなわち、要素wijは、i番目のデータ系列を抽出するために、アンテナ素子ERjが受信した信号に対して付与する重みを示す。
図4(a)において、線L411は、チャネルの位相差θH=tan-1(h12/h11)を示す。また、線L412は、受信ウエイトの位相差θw=tan-1(w12/w11)を示す。
【0059】
ここで、図3にて示される最適素子間隔d=1λ0において、チャネルの位相差θHと受信ウエイトの位相差θwとの位相差が180度となっている。図3において、チャネル容量は、振動しながら最適素子間隔d=1λ0を含む幾つかのアンテナ素子間隔において極大となっており、図4では、これらのアンテナ素子間隔において、チャネルの位相差θHと受信ウエイトの位相差θwとの位相差が180度となっている。
また、最適素子間隔d=1λ0での受信ウエイトの位相差θwは、ほぼ90度となっている。
また、図4(b)において、線L421は、振幅比ratio=|w11|/|w12|を示す。同図に示すように、最適素子間隔d=1λ0での振幅比ratioは、1.1程度となっている。
【0060】
図5は、送受信間隔Dと、当該送受信間隔に基づいて定まる最適素子間隔doptにおける、受信ウエイトの位相差θwと、振幅比ratioとの関係を示す説明図である。同図(a)に示すように、送受信間隔Dが30〜300ミリメートルとなる範囲において、アンテナ素子間隔dを、最適素子間隔doptに設定した場合の、受信ウエイトの位相差θwと、振幅比ratioとを、同図(b)に示している。
なお、式(1)および式(2)に示されるように、最適素子間隔doptは、送受信間隔Dに応じて変化する。送受信間隔Dと、最適素子間隔doptとの関係は、表1のようになる。
【0061】
【表1】
【0062】
図5において、線L511は、受信ウエイトの位相差θwを示し、線L512は、振幅比ratioを示す。
ここで、線L511で示される受信ウエイトの位相差θwは、送受信間隔Dの各値に対して約90度と、ほぼ一定の値を示している。
すなわち、式(1)および(2)に示されるように、最適素子間隔doptは、送受信間隔Dに応じて変化するが、最適素子間隔doptにおける受信ウエイトの位相差θwは、ほぼ一定の値となっている。なお、送受信間隔Dが大きくなるにつれて、振幅比ratioの値は1に近くなっている。
【0063】
線L511に示される受信ウエイトの位相差θwによれば、アンテナ素子間隔dが、式(2)に基づいて算出される最適素子間隔doptとなっている状態において、振幅の比を無視すれば、受信側のアンテナ素子間における位相差を90度とすればよいことになる。
すなわち、アンテナ素子間隔dが最適素子間隔doptとなっている状態では、アンテナ素子121からアンテナ素子212への経路長は、アンテナ素子121からアンテナ素子211への経路長よりも4分の1波長(位相差90度)程度長くなる。同様に、アンテナ素子122からアンテナ素子211への経路長は、アンテナ素子122からアンテナ素子212への経路長よりも4分の1波長程度長くなる。
【0064】
このように、送信アンテナと受信アンテナとの距離にかかわらず、チャネル容量が最大となる最適素子間隔においては、ZFにおける受信ウエイトが、ほぼ一定である。
そこで、通信装置200(図1)において、合成器241は、アンテナ素子211が受信した信号と、アンテナ素子212が受信した信号に90度の位相回転を行った信号とを合成する。また、合成器242は、アンテナ素子212が受信した信号と、アンテナ素子211が受信した信号に90度の位相回転を行った信号とを合成する。すなわち、合成器241および合成器242は、受信信号受信ウエイトの位相差90度にて合成を行う。
ここで、通信装置200における受信ウエイト行列Wanalogは、式(9)にて示される。
【0065】
【数9】
【0066】
一方、送受信間隔D=120ミリメートルの場合、2×2の近距離MIMO通信における、ZFによる受信ウエイト行列は、式(10)にて示される。
【0067】
【数10】
【0068】
なお、式(10)では、対角項の値が1となるように規格化している。
ここで、式(9)と式(10)とを比較すると、対角項の値は、いずれも「1」で同じである。また、式(10)の非対角項では、虚部の値の大きさ「0.8879」の大きさが、実部の値の大きさ「0.0415」に対して非常に大きく、虚部の値が支配的となっている。従って、式(10)の非対角項の値は、式(9)の非対角項の値「j」と同等といえ、行列全体においても式(10)は式(9)と同等といえる。
【0069】
このように、図1に示す構成によってZFの場合と同等の受信ウエイト行列を得ることができる。従って、無線通信システム1では、ZFの場合と同様のチャネル容量を得ることができる。
なお、式(9)と式(10)とで非対角項の値が異なるのは、図4に示されるように、振幅比ratioが約1.1であるのに対し、本発明によるウエイトではこれを無視しているためである。
【0070】
次に、図6を参照して、アンテナ素子の配置の決定方法について説明する。
図6は、無線通信システム1におけるアンテナ素子の配置を決定する処理手順を示すフローチャートである。当該処理は、例えば、無線通信システム1のユーザが行う。
【0071】
まず、無線通信システム1を使用する環境における送受信間隔Dを決定する(ステップS101)。例えば、建築物の壁の両面にアンテナ素子を配置して当該壁を透過させる通信を行う場合、当該壁の厚さを送受信間隔Dとする。
次に、図2のモデルおよび式(2)〜(5)を用いて、アンテナ素子間隔dと、ZFのチャネル容量CZFとの関係を求める(ステップS102)。例えば、幾つかのアンテナ素子間隔dについてチャネル容量CZFを算出し、図3(b)のようにアンテナ素子間隔とチャネル容量との関係を示すグラフを生成する。
【0072】
そして、アンテナ素子間隔dと、ZFのチャネル容量CZFとの関係に基づいて、チャネル容量を最大とする最適素子間隔doptを決定する(ステップS103)。例えば、ステップS102で生成したグラフにおいてチャネル容量が最大となるアンテナ素子間隔を最適素子間隔doptとする。
その後同図の処理を終了し、得られた最適素子間隔doptにてアンテナを配置して、無線通信システム1を用いた通信を行う。
【0073】
なお、図3(b)に示されるように、ZFにおける最適素子間隔と、EM−BFにおける最適素子間隔とは一致する。そこで、ステップS102において、アンテナ素子間隔dと、ZFのチャネル容量CZFとの関係に代えて、アンテナ素子間隔dと、EM−BFのチャネル容量CDM-BFとの関係を求めるようにしてもよい。この場合も、ステップS103では、チャネル容量CDM-BFを最大とする最適素子間隔doptを決定する。
【0074】
以上のように、ウエイト演算回路220(図1)では、受信信号を分配する分配器211および212と、分配された受信信号の位相を90度回転させる90度移相器231および232と、受信信号と移相回転された信号とを合成する合成器241および242を具備する非常に簡単な構成で、近距離MIMO通信における重み付けを行うことができる。
【0075】
なお、式(9)における振幅と式(10)における振幅との差は1デシベル(dB)以下であり、ケーブルの線路の長さを調整することで両者の差をほぼ同じにすることが可能である。このように、無線通信システム1では、より負荷の小さい信号処理にて近距離MIMO通信を実現することができる。これにより、無線通信システムの製造コストや消費電力の低減や、装置の小型化を図り得る。
【0076】
なお、図1の構成では、受信側にウエイト演算回路を構成しているが、送信側にこの回路を設け、受信側を図1の送信側と同様、アンテナ素子と受信部とが直接接続される構成としてもよい。
具体的には、送信部111が出力する信号(データ系列S11)に対して90度の位相回転を行ってアンテナ素子121から送信し、また、当該送信部111が出力する信号を位相回転せずにアンテナ素子122から送信する。これによって、アンテナ素子211が受信する信号において、アンテナ素子121が送信するデータ系列S11の信号と、アンテナ素子122が送信するデータ系列S11の信号との位相が一致して互いに強め合う。そこで、アンテナ素子211が受信する信号を受信部251に出力することで、データ系列S11に対応するデータ系列S11’を抽出し得る。
同様に、送信部112が出力する信号(データ系列S12)に対して90度の位相回転を行ってアンテナ素子122から送信し、また、当該送信部112が出力する信号を位相回転せずにアンテナ素子121から送信する。これによって、アンテナ素子212が受信する信号において、アンテナ素子121が送信するデータ系列S12の信号と、アンテナ素子122が送信するデータ系列S12の信号との位相が一致して互いに強め合う。そこで、アンテナ素子212が受信する信号を受信部252に出力することで、データ系列S12に対応するデータ系列S12’を抽出し得る。
このように、ウエイト演算回路は、送信側の通信装置または受信側の通信装置のいずれか一方が具備していればよい。従って、他方の通信装置として、ウエイト演算回路を具備しない、さらに簡単な構成の装置を用いることができる。
【0077】
<第2の実施形態>
なお、第1の実施形態における無線通信システム1では、各アンテナ素子が異なる位置に配置されているが、互いに直交する偏波を送受信するアンテナ素子を同じ位置に配置するようにしてもよい。第2の実施形態では、かかるアンテナ素子を具備する無線通信システムについて説明する。
【0078】
図7は、本発明の第2の実施形態における無線通信システムの概略構成を示す構成図である。同図において、無線通信システム2は、通信装置(第1の無線通信装置)300と、通信装置(第2の無線通信装置)400とを具備する。通信装置300は、送信部311〜314と、アンテナ素子321〜324とを具備する。通信装置400は、アンテナ素子411〜414と、ウエイト演算回路420と、受信部451〜454とを具備する。ウエイト演算回路420は、分配器421〜424と、90度移相器(移相部)431〜434と、合成器(合成部)441〜444とを具備する。
【0079】
送信部311〜314は、送信部111〜112と同様、それぞれデータ系列S21〜S24を取得し、符号化や変調等の処理を行ってデータ系列S21〜S24の送信信号を生成し、生成した送信信号をアンテナ素子321〜324に出力する。
アンテナ素子321〜324は、送信部311〜314から出力される送信信号を無線送信する。詳細については後述する。
【0080】
アンテナ素子411〜424は、アンテナ素子321〜324から送信される信号を受信して、それぞれ、分配器421〜424に出力する。詳細については後述する。
分配器421〜424は、分配器221〜222と同様、アンテナ素子411〜424から出力される信号を分配して出力する。
90度移相器431〜434は、90度移相器231〜232と同様、分配器421〜424から出力される信号に対して90度の位相回転を行う。
【0081】
合成器441〜444は、合成器241〜144と同様、位相回転されていない受信信号と、90度位相回転された受信信号とを合成して、受信部451〜254に出力する。
受信部451〜254は、受信部251〜152と同様、合成器441から出力される信号に対して復調や復号化等の処理を行って、データ系列S21’〜S24’(のデータ)を生成する。
【0082】
ここで、アンテナ素子321とアンテナ素子323とは、その中心を合わせて(すなわち、図2で説明した座標が同じになる位置に)配置されて第1のアンテナ素子を構成し、2つの信号を互いに直交する偏波にて送信する。すなわち、アンテナ素子321が送信する偏波(電波)と、アンテナ素子323が送信する偏波とは、互いに直交する。
同様に、アンテナ素子322とアンテナ素子324とは、その中心を合わせて配置されて第2のアンテナ素子を構成し、2つの信号を互いに直交する偏波にて送信する。すなわち、アンテナ素子322が送信する偏波と、アンテナ素子324が送信する偏波とは、互いに直交する。
また、アンテナ素子321〜324でアレーアンテナを構成する。すなわち、アンテナ素子321〜324は、同一平面上に配置されている。
【0083】
ここで、アンテナ素子322が送信する偏波は、アンテナ素子121が送信する偏波と同じ傾きである。また、アンテナ素子324が送信する偏波は、アンテナ素子323が送信する偏波と同じ傾きである。より具体的には、アンテナ素子121とアンテナ素子122とは、縦方向(図2に示すy軸の方向)に設置されて垂直偏波を送信する。また、アンテナ素子323とアンテナ素子324とは、横方向(図2に示すx軸の方向)に設置されて水平偏波を送信する。
ただし、本発明の適用範囲は、垂直偏波と水平偏波とに限らず、アンテナ素子321およびアンテナ素子322が送信する偏波と、アンテナ素子323およびアンテナ素子324が送信する偏波とが互いに直交していればよい。
【0084】
受信側では、アンテナ素子411とアンテナ素子413とは、その中心を合わせて配置されて第3のアンテナ素子を構成し、アンテナ素子321〜324から送信される互いに直交する偏波を、偏波の角度毎に独立して受信する。より具体的には、アンテナ素子411は、アンテナ素子321に対向して、送受信間隔Dにて、アンテナ素子321と同じく縦方向に配置されて、アンテナ素子121が送信する垂直偏波とアンテナ素子122が送信する垂直偏波とを受信する。また、アンテナ素子413は、アンテナ素子323に対向して、送受信間隔Dにて、アンテナ素子323と同じく横方向に配置されて、アンテナ素子323が送信する水平偏波とアンテナ素子324が送信する水平偏波とを受信する。
【0085】
また、アンテナ素子412とアンテナ素子414とは、その中心を合わせて配置されて第4のアンテナ素子を構成し、アンテナ素子321〜324から送信される互いに直交する偏波を、偏波の角度毎に独立して受信する。より具体的には、アンテナ素子412は、アンテナ素子322に対向して、送受信間隔Dにて、アンテナ素子322と同じく縦方向に配置されて、アンテナ素子121が送信する垂直偏波とアンテナ素子122が送信する垂直偏波とを受信する。また、アンテナ素子414は、アンテナ素子324に対向して、送受信間隔Dにて、アンテナ素子324と同じく横方向に配置されて、アンテナ素子323が送信する水平偏波とアンテナ素子324が送信する水平偏波とを受信する。
また、アンテナ素子411〜414でアレーアンテナを構成する。すなわち、アンテナ素子411〜414は、同一平面上に配置されている。
【0086】
そして、これら第1〜第4のアンテナ素子は、第1の実施形態における第1〜第4のアンテナ素子と同様に、送受信間隔Dおよび最適素子間隔doptにて配置されている。すなわち、第1のアンテナ素子と第2のアンテナ素子との間隔、および、第3のアンテナ素子と第4のアンテナ素子との間隔は、最適素子間隔doptとなっている。また、第1のアンテナ素子と第3のアンテナ素子との間隔、および、第2のアンテナ素子と第4のアンテナ素子との間隔は、送受信間隔Dとなっている。
【0087】
ここで、本願発明者等は、近距離MIMO通信において、直交する偏波(例えば、垂直偏波と水平偏波、あるいは、+−45度の偏波)の間では完全に相関を0にできることを見出している(例えば、西森,関,本間,平賀,溝口、「近距離MIMO通信に適した通信方法に関する検討」、信学技報、AP2009-83、2009年9月参照)。
【0088】
かかる性質を利用して、無線通信システム2では、互いに直交する2つの偏波を用いて、4つのデータ系列を送受信する。いわば、無線通信システム2は、垂直偏波を用いた2×2の近距離MIMO通信システムと、水平偏波を用いた2×2の近距離MIMO通信システムを具備して、これら2×2の近距離MIMO通信システムの各々で2つのデータ系列を送受信することで、4つのデータ系列(S21〜S24)を送受信する。
【0089】
このように、互いに直交する偏波を用いることで、無線通信システム2では、無線通信システム1の2倍のデータ系列の通信を行うことでき、かつ、無線通信システム2においてアンテナ素子の配置に必要な領域は、無線通信システム1において必要な領域と同様とすることができる。
【0090】
<第3の実施形態>
なお、本発明の適用範囲は、2×2MIMO通信に限らない。第3の実施形態では、本発明を4×4MIMO通信に適用した場合について説明する。
図8は、本発明の第3の実施形態における無線通信システムの概略構成を示す構成図である。同図において、無線通信システム3は、通信装置(第1の無線通信装置)500と、通信装置(第2の無線通信装置)600とを具備する。通信装置500は、送信部511〜514と、アンテナ素子521〜524(第1のアンテナ素子〜第4のアンテナ素子)とを具備する。通信装置600は、アンテナ素子611〜614(第5のアンテナ素子〜第8のアンテナ素子)と、ウエイト演算回路620と、受信部651〜654とを具備する。
【0091】
送信部511〜514は、送信部111〜112と同様、それぞれデータ系列S31〜S34を取得し、符号化や変調等の処理を行ってデータ系列S31〜S34の送信信号を生成し、生成した送信信号をアンテナ素子521〜524に出力する。
アンテナ素子521〜524は、アンテナ素子121〜122と同様、送信部311〜314から出力される送信信号を無線送信する。
【0092】
アンテナ素子611〜624は、アンテナ素子211〜212と同様、アンテナ素子521〜524から送信される信号を受信して、それぞれ、ウエイト演算回路620に出力する。
ウエイト演算回路620は、アンテナ素子411〜624から出力される信号に重み付けをして合成し、受信部651〜654に出力する。詳細については後述する。
受信部451〜254は、受信部251〜152と同様、合成器441から出力される信号に対して復調や復号化等の処理を行って、データ系列S31’〜S34’(のデータ)を生成する。
【0093】
図9は、通信装置600におけるアンテナの配置を示す説明図である。
ここで、アンテナ素子521〜524とアンテナ素子211〜614とは、図2で説明したように、送受信間隔Dおよび最適素子間隔doptにて送信側と受信側とで対向して配置されている。
そして、ウエイト演算回路620は、分配器621〜624を具備して、アンテナ素子211〜614の出力する受信信号を、4つに分配する。
【0094】
図10は、ウエイト演算回路620における重み付け合成を示す説明図である。
ウエイト演算回路620は、90度移相器631a〜637bと、180度移相器632〜638とを具備し、分配器621〜624から出力される信号に対して位相回転を行う。
さらに、ウエイト演算回路620は、合成器641〜644を具備し、アンテナ素子211〜614から出力される信号や位相回転された信号を合成する。
【0095】
ここで、ウエイト演算回路620により得られる受信ウエイト行列は、式(11)のようになる。
【0096】
【数11】
【0097】
一方、4×4の近距離MIMO通信にてZFにより得られる受信ウエイト行列は、式(12)のようになる。
【0098】
【数12】
【0099】
この式(12)において、対角項の値「1」は、式(11)の対角項の値「1」と同じである。また、式(12)の要素w12、w13、w21、w24、w31、w34、w42およびw43の値「−0.09+0.89j」は、虚部の値の大きさ「0.89」が、実部の値の大きさ「0.09」に対して非常に大きく、虚部の値が支配的となっている、従って、これらの要素の値は、式(11)において対応する各要素の値「j」と同等といえる。また、式(12)の要素w14、w23、w32、w41の値「−0.78−0.04j」は、実部の値の大きさ「0.78」が、虚部の値の大きさ「0.04」に対して非常に大きく、実部の値が支配的となっている、従って、これらの要素の値は、式(11)において対応する各要素の値「−1」と同等といえる。以上より、行列全体においても式(11)は式(12)と同等といえる。
【0100】
このように、図8に示す構成によってZFの場合と同等の受信ウエイト行列を得ることができる。従って、無線通信システム3では、ZFの場合と同様のチャネル容量を得ることができる。
なお、式(12)では振幅比が1.14〜1.27となるが、式(11)おいては、式(9)の場合と同様、振幅比を無視している。
【0101】
以上のように、ウエイト演算回路620では、ウエイト演算回路220の場合と同様、分配器と移相器と合成器とを具備する非常に簡単な構成で、近距離MIMO通信における重み付けを行うことができる。
【0102】
<第4の実施形態>
なお、無線通信システムが、複数対のアンテナを具備するようにしてもよい。
図11は、複数対のアンテナを具備する無線通信システムの、受信側のアンテナ素子の配置例を示す説明図である。
【0103】
同図において、無線通信システム4が具備する、3組の受信側のアンテナ素子711a〜711dと712a〜712dと713a〜713dとが示されている。この無線通信システム4は、図8に示す無線通信システム3と同等の無線通信システムを3系統備えている。また、シールド板791〜793は、無線通信システム4が具備するアンテナを、この系統毎に区切る電磁シールドである。
また、ウエイト演算回路731は、2つの90度移相器741aおよび741bと、18度移相器751と、合成器761とを具備して、アンテナ素子711a〜711dのいずれか1つが受信した信号(位相回転を付与しない)と、他の2つが受信した信号にそれぞれ90度の位相回転を付与した信号と、残りの1つが受信した信号に180度の位相回転を付与した信号とを合成する。
また、受信部771は、受信部651(図8)と同様、合成器761から出力される信号に対して復調や復号化等の処理を行う。
【0104】
アンテナ素子711a〜711dは、図8のアンテナ素子611〜614と同等の、受信側のアンテナ素子であり、アンテナ素子611〜614と同様に、同一平面上に最適素子間隔doptで配置されてアレーアンテナを構成する。そして、無線通信システム3の場合と同様に、送信側のアンテナ素子が、アンテナ素子711a〜711dの各々に対向して、図2を用いて説明したのと同様に送受信間隔Dにて配置されており、また、図9と同様、送信側、受信側共に、アンテナ素子の間隔は、最適素子間隔doptとなっている。
【0105】
また、アンテナ素子711a〜711dを含む1系統の無線通信システムは、図8で説明したのと同様の構成を有する。すなわち、送信側のアンテナ素子の各々には、異なる送信部がそれぞれ1つ接続され、また、受信側のアンテナ素子711a〜711dは、ウエイト演算回路を介して4つ(受信側のアンテナ素子数と同数)の受信部に接続されている。
【0106】
なお、アンテナ素子711a〜711dが接続されるウエイト演算回路は、無線通信システム3と同様のものであってもよい。あるいは、図11に示すように、アンテナ素子711a〜711dが、マトリックス・スイッチ721を介してウエイト演算回路731に接続されるようにしてもよい。
【0107】
図11に示す構成では、マトリックス・スイッチ721が、アンテナ素子711a〜711dとウエイト演算回路731との接続関係を切り替えて、図10に示すデータ系列S31’を出力する接続と同様の接続、データ系列S32’を出力する接続と同様の接続、データ系列S33’を出力する接続と同様の接続、データ系列S34’を出力する接続と同様の接続を順に生成する。マトリックス・スイッチ721は、この一連の接続の切替を、1データの送信時間内に行う。
【0108】
これにより、図11に示す構成では、1つのウエイト演算回路および1つの受信部で、4つのデータ系列のデータを順に取得する。そして、例えば、無線通信システム4に接続されるコンピュータで4つのデータ系列を抽出(分離)する。
【0109】
アンテナ素子712a〜712dにおいても、アンテナ素子711a〜711dの場合と同様の、1系統の無線通信システムが構成される。また、アンテナ素子713a〜713dにおいても、アンテナ素子711a〜711dの場合と同様の、1系統の無線通信システムが構成される。そして、ある系統において出力された電波が他の系統に漏洩しないように、シールド板791〜793によって系統毎に電磁的に遮断されている。
【0110】
このように、複数の無線通信システムを互いに電磁的にシールドして配置することで、無線通信システムの数に応じた数のデータ系列を通信し得る。例えば、無線通信システム4は、3系統の無線通信システムを具備して、無線通信システム3の3倍のデータ量を通信し得る。
【0111】
以上、この発明の実施形態を図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【符号の説明】
【0112】
1、2、3 無線通信システム
100、200、300、400、500、600 通信装置
111〜112、311〜314、511〜514 送信部
121〜122、211〜212、321〜324、411〜414、521〜524、611〜614 アンテナ素子
220、420、620 ウエイト演算回路
221〜222、421〜424、621〜624 分配器
231〜232、431〜434、631a〜637b 90度移相器
632〜638 180度移相器
241〜242、441〜444、641〜644 合成器
251〜252、451〜454、651〜654 受信部
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信システムおよび無線通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、限られた周波数帯域で数メガビット毎秒[Mbps]〜数ギガビット毎秒[Gbps]程度の高速無線通信を実現しようとする検討が進められている。その中で、送受信に用いるアンテナ数の増大に比例して通信容量を増大可能なMIMO(Multiple-Input Multiple-Output)通信が注目されている。MIMO通信では、マルチパス環境を利用して複数の信号を同時に通信することで、周波数帯域を広げることなく無線区間の通信速度を向上することが可能である。
【0003】
一方、近年、RF−IDに代表される近距離通信が検討されており、また、ミリ波やUWB(Ultra-Wide-Band)通信を利用した近距離・高速通信が注目されている。また、近距離通信にMIMO技術を適用することも可能であり、コンクリート壁などの障害物内部を伝搬路として用いる近距離超高速無線中継システムが提案されている。例えば、非特許文献1では、近傍界であれば壁などにより送受信アレーアンテナの見通しが無い場合でも、MIMO通信を用いて高速通信が可能であることが示されている。MIMO通信では広い周波数帯域が不要であるため周波数資源の有効利用を図ることができる。
【0004】
また、本願発明者等は、非特許文献2および3において、送受信アレーアンテナが開口と比べて近接する近距離MIMO通信について、その基本特性を示している。例えば、非特許文献2では、送受信アレーアンテナ間の距離に対する空間相関特性と信号対雑音比(SNR:Signal-to-Noise Ratio)の関係を考慮することによってアレーアンテナの最適な素子間隔を求められることが示されている。
【0005】
ここで、非特許文献2では、チャネル容量を増大するための検討が行われている。これに加えて、実際のMIMO通信を実現するためには送受信における信号処理技術が必要である。そこで、非特許文献3では、MIMO通信の最適送受信方法として知られている固有モード伝送(以下、EM−BFと称する)の特性と、受信側のみで信号処理を行う方法として知られているゼロフォーシング(以下、ZFと称する)の特性とが比較されている。そして、非特許文献2で示したアレーアンテナの最適な素子間隔では、EM−BFの特性とZFの特性とがほぼ一致することが示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】G. J. Foschini and M. J. Gans、「Capacity when using diversity at transmit and receive sites and the Rayleigh-faded matrix channel is unknown at the transmitter」、Proc. WINLAB Workshop on Wireless Information Network、1996年3月
【非特許文献2】関,西森,本間,西川、「近距離超高速中継システム」、信学技報、AP2008-124、2008年11月
【非特許文献3】本間,西森,関,溝口、「近傍MIMO通信における通信容量の評価」、信学技報、AP2008-125、2008年11月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
EM−BFやZFでは、ディジタル信号レベルにおける逆行列の計算や固有値展開といった負荷の大きい信号処理が必要となってしまう。より負荷の小さい信号処理にて近距離MIMO通信を実現できれば、通信システムの製造コストや消費電力の低減や、装置の小型化を図り得る。
【0008】
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、その目的は、より負荷の小さい信号処理にて近距離MIMO通信を実現可能な無線通信システムおよび無線通信方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は上述した課題を解決するためになされたもので、本発明の一態様による無線通信システムは、第1の通信装置が具備する第1のアンテナ素子と第2のアンテナ素子とを含む第1のアレーアンテナと、第2の通信装置が具備する第3のアンテナ素子と第4のアンテナ素子とを含む第2のアレーアンテナとが配置される無線通信システムであって、前記第1の通信装置が、前記第1のアレーアンテナと前記第2のアレーアンテナとの距離に対して、チャネル容量が最大となる間隔に、前記第1のアンテナ素子と前記第2のアンテナ素子との間の距離が選択された前記第1のアレーアンテナを具備し、前記第2の通信装置が、前記第1のアレーアンテナと前記第2のアレーアンテナとの距離に対して、チャネル容量が最大となる間隔に、前記第3のアンテナ素子と前記第4のアンテナ素子との間の距離が選択された前記第2のアレーアンテナと、前記第3のアンテナ素子から入力された信号を分岐させ、一部の信号に対して90度の位相回転を付与し、位相回転が付与された信号と位相回転が付与されていない信号とを出力する第1の重み付け手段と、前記第4のアンテナ素子から入力された信号を分岐させ、一部の信号に対して90度の位相回転を付与し、位相回転が付与された信号と位相回転が付与されていない信号とを出力する第2の重み付け手段と、前記第1の重み付け手段の出力のうち位相回転が付与されていない信号と前記第2の重み付け手段の出力のうち位相回転が付与された信号とを合成して復号する第1の復号手段と、前記第1の重み付け手段の出力のうち位相回転が付与された信号と前記第2の重み付け手段の出力のうち位相回転が付与されていない信号とを合成して復号する第2の復号手段と、を具備することを特徴とする。
【0010】
また、本発明の一態様による無線通信システムは、上述の無線通信システムであって、前記第2のアンテナ素子は、前記第1のアンテナ素子との距離に関して、MIMO通信の固有モード通信法におけるチャネル容量が最大となる位置に配置されることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の一態様による無線通信システムは、上述の無線通信システムであって、前記第2のアンテナ素子は、前記第1のアンテナ素子との距離に関して、MIMO通信のゼロフォーシング法におけるチャネル容量が最大となる位置に配置されることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の一態様による無線通信システムは、上述の無線通信システムであって、前記第1のアンテナ素子と、前記第2のアンテナ素子とは、それぞれ、2つの信号を互いに直交する偏波にて送信し、前記第3のアンテナ素子と、前記第4のアンテナ素子とは、前記互いに直交する偏波を、偏波の角度毎に独立して受信することを特徴とする。
【0013】
また、本発明の一態様による無線通信システムは、第1の通信装置が具備する第1〜第4のアンテナ素子を含む第1のアレーアンテナと、第2の通信装置が具備する第5〜第8のアンテナ素子とを含む第2のアレーアンテナとが配置される無線通信システムであって、前記第1の通信装置が、前記第1のアレーアンテナと前記第2のアレーアンテナとの距離に対して、チャネル容量が最大となる間隔に、前記第1〜第4のアンテナ素子の間の距離が選択された前記第1のアレーアンテナを具備し、前記第2の通信装置が、前記第1のアレーアンテナと前記第2のアレーアンテナとの距離に対して、チャネル容量が最大となる間隔に、前記第5〜第8のアンテナ素子の間の距離が選択された前記第2のアレーアンテナと、前記第5〜第8のアンテナ素子から入力された信号の各々を分岐させ、アンテナ素子毎に、分岐された信号の一部に90度の位相回転を付与し、他の一部に180度の位相回転を付与し、位相回転が付与されていない信号と、90度の位相回転が付与された信号と、180度の位相回転が付与された信号とを出力する重み付け手段と、前記重み付け手段が出力する信号のうち、前記第5のアンテナ素子から入力された信号と、前記第6のアンテナ素子から入力され90度の位相回転が付与された信号と、前記第7のアンテナ素子から入力され90度の位相回転が付与された信号と、前記第8のアンテナ素子から入力され180度の位相回転が付与された信号とを合成して復号する第1の復号手段と、前記重み付け手段が出力する信号のうち、前記第6のアンテナ素子から入力された信号と、前記第5のアンテナ素子から入力され90度の位相回転が付与された信号と、前記第8のアンテナ素子から入力され90度の位相回転が付与された信号と、前記第7のアンテナ素子から入力され180度の位相回転が付与された信号とを合成して復号する第2の復号手段と、前記重み付け手段が出力する信号のうち、前記第7のアンテナ素子から入力された信号と、前記第5のアンテナ素子から入力され90度の位相回転が付与された信号と、前記第8のアンテナ素子から入力され90度の位相回転が付与された信号と、前記第6のアンテナ素子から入力され180度の位相回転が付与された信号とを合成して復号する第3の復号手段と、前記重み付け手段が出力する信号のうち、前記第8のアンテナ素子から入力された信号と、前記第6のアンテナ素子から入力され90度の位相回転が付与された信号と、前記第7のアンテナ素子から入力され90度の位相回転が付与された信号と、前記第5のアンテナ素子から入力され180度の位相回転が付与された信号とを合成して復号する第4の復号手段と、を具備することを特徴とする。
【0014】
また、本発明の一態様による無線通信システムは、上述の無線通信システムのいずれか複数と、前記複数の無線通信システムを互いに電磁的にシールドするシールド手段と、を具備することを特徴とする。
【0015】
また、本発明の一態様による無線通信方法は、第1の通信装置が具備する第1のアンテナ素子と第2のアンテナ素子とを含む第1のアレーアンテナと、第2の通信装置が具備する第3のアンテナ素子と第4のアンテナ素子とを含む第2のアレーアンテナとが配置され、前記第1の通信装置は、前記第1のアレーアンテナと前記第2のアレーアンテナとの距離に対して、チャネル容量が最大となる間隔に、前記第1のアンテナ素子と前記第2のアンテナ素子との間の距離が選択された前記第1のアレーアンテナを具備し、前記第2の通信装置は、前記第1のアレーアンテナと前記第2のアレーアンテナとの距離に対して、チャネル容量が最大となる間隔に、前記第3のアンテナ素子と前記第4のアンテナ素子との間の距離が選択された前記第2のアレーアンテナを具備する無線通信システムの無線通信方法であって、前記第3のアンテナ素子から入力された信号を分岐させ、一部の信号に対して90度の位相回転を付与し、位相回転が付与された信号と位相回転が付与されていない信号とを出力する第1の重み付けステップと、前記第4のアンテナ素子から入力された信号を分岐させ、一部の信号に対して90度の位相回転を付与し、位相回転が付与された信号と位相回転が付与されていない信号とを出力する第2の重み付けステップと、前記第1の重み付けステップの出力のうち位相回転が付与されていない信号と前記第2の重み付けステップの出力のうち位相回転が付与された信号とを合成して復号する第1の復号ステップと、前記第1の重み付けステップの出力のうち位相回転が付与された信号と前記第2の重み付けステップの出力のうち位相回転が付与されていない信号とを合成して復号する第2の復号ステップと、を具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、より負荷の小さい信号処理にて近距離MIMO通信を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1の実施形態における無線通信システムシステムの概略構成を示す構成図である。
【図2】近距離MIMO通信におけるアンテナ素子の配置例を示す説明図である。
【図3】2×2の近距離MIMO通信におけるチャネル容量特性の説明図である。
【図4】図3で説明した近距離MIMO通信にてZFを用いた際の、アンテナ素子間隔と、送受信間の位相差および振幅比との関係を示す説明図である。
【図5】送受信間隔Dと、当該送受信間隔に基づいて定まる最適素子間隔doptにおける、受信ウエイトの位相差θwと、振幅比ratioとの関係を示す説明図である。
【図6】同実施形態の無線通信システムにおけるアンテナ素子の配置を決定する処理手順を示すフローチャートである。
【図7】本発明の第2の実施形態における無線通信システムの概略構成を示す構成図である。
【図8】本発明の第3の実施形態における無線通信システムの概略構成を示す構成図である。
【図9】同実施形態の通信装置におけるアンテナの配置を示す説明図である。
【図10】同実施形態のウエイト演算回路における重み付け合成を示す説明図である。
【図11】本発明の第4の実施形態における、複数対のアンテナを具備する無線通信システムの、受信側のアンテナ素子の配置例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<第1の実施形態>
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態における無線通信システムの概略構成を示す構成図である。同図において、無線通信システム1は、通信装置(第1の無線通信装置)100と、通信装置(第2の無線通信装置)200とを具備する。通信装置100は、送信部111〜112と、アンテナ素子(第1のアンテナ素子)121と、アンテナ素子(第2のアンテナ素子)122とを具備する。通信装置200は、アンテナ素子(第3のアンテナ素子)211と、アンテナ素子(第4のアンテナ素子)212と、ウエイト演算回路220と、受信部251〜252とを具備する。ウエイト演算回路220は、分配器221〜222と、90度移相器231〜232と、合成器241と、合成器242とを具備する。
【0019】
無線通信システム1は、2×2MIMO(2入力2出力のMIMO)通信方式にて、通信装置100から通信装置200への、2系列(系列S11および系列S12)のデータの通信(送信および受信)を行う。
なお、本実施形態では、通信装置100から通信装置200への通信について説明するが、これに加えて、無線通信システム1が、通信装置200から通信装置100への通信を行うようにしてもよい。この場合、通信装置200から通信装置100への通信方式として、様々なものを用いることができる。例えば通信装置200から通信装置100への通信も、通信装置100から通信装置200への通信と同様、本発明を適用した通信方式にて行われるようにしてもよいし、あるいは、他の通信方式にて行われるようにしてもよい。
【0020】
通信装置100では、信号の重み付けを行う必要がない。このため、通信装置100として、2×2MIMO方式の近距離通信における、一般的な通信装置を用いることができる。
送信部111は、データ系列S11(のデータ)を取得し、符号化や変調(デジタルデータからベースバンド信号への変調、および、送信周波数の信号への変調)等の処理を行ってデータ系列S11の送信信号を生成し、生成した送信信号をアンテナ素子121に出力する。同様に、送信部112は、データ系列S12のデータを取得し、符号化や変調等の処理を行ってデータ系列S12の送信信号を生成し、生成した送信信号をアンテナ素子122に出力する。
【0021】
ここで、データ系列S11とデータ系列S12とは、互いに独立した系列であってもよいし、相関を有する系列であってもよい。通信装置100は、これらのデータ系列を、例えば、通信装置100に接続されたコンピュータなど通信装置100の外部から取得する。
また、送信部111および送信部112が行う変調の方式としては、様々なものを用いることができる。例えば、送信部111および112が、QPSK(Quadrature Phase-Shift Keying)方式にて変調を行うようにしてもよいし、あるいは、1024QAM(Quadrature Amplitude Modulation)方式にて変調を行うようにしてもよい。さらには、送信部111および112が、伝搬路の状態に応じて変調方式を選択する適応変調を行うようにしてもよい。ただし、近距離MIMO通信においては、送信アンテナと受信アンテナとの距離が近いため、伝搬路の状態が安定していることが期待される。かかる場合、送信部111および送信部112が固定の変調方式に変調を行うようにすることで、回路構成を簡単化し、通信装置100の小型軽量化および製造コスト削減や、通信装置100と通信装置200との制御データの通信量の抑制を図ることができる。
【0022】
アンテナ素子121は、送信部111から出力される送信信号を無線送信する。同様に、アンテナ素子122は、送信部112から出力される送信信号を無線送信する。ここで、アンテナ素子121とアンテナ素子122との間隔は、後述する最適素子間隔doptに設定されている。この最適素子間隔doptは、後述するように、アンテナ素子121とアンテナ素子211との距離に応じて定められる所定の距離(MIMO通信の固有モード伝送法におけるチャネル容量が最大となる距離、あるいは、MIMO通信のゼロフォーシング法におけるチャネル容量が最大となる距離)である。
【0023】
また、図2を用いて後述するように、アンテナ素子121とアンテナ素子122とは、同一平面状に配置される。以下では、同一平面上に配置される複数のアンテナ素子を具備するアンテナをアレーアンテナと称する。すなわち、アンテナ素子121とアンテナ素子122とでアレーアンテナを構成する。
【0024】
通信装置200は、通信装置100から送信される信号から各系列のデータを抽出する。
アンテナ素子211と、アンテナ素子212とは、いずれも、アンテナ素子121から送信される無線信号と、アンテナ素子122から送信される無線信号とを、両無線信号が合成された無線信号として受信する。そして、アンテナ素子211は、受信した信号を分配器221に出力し、アンテナ素子212は、受信した信号を分配器222に出力する。
【0025】
ここで、アンテナ素子211とアンテナ素子212との間隔は、上記のアンテナ素子121およびアンテナ素子122と同様、後述する最適素子間隔doptに設定されている。そして、アンテナ素子211は、アンテナ素子121に対向して、アンテナ素子121から距離Dの位置に配置されている。
【0026】
また、アンテナ素子212は、アンテナ素子122に対向して、アンテナ素子122から距離Dの位置に配置されている。すなわち、アンテナ素子212は、アンテナ素子122に対向して、当該アンテナ素子122との距離が、アンテナ素子121とアンテナ素子211との距離と等しい位置、かつ、アンテナ素子211との距離が、アンテナ素子121とアンテナ素子122との距離と等しい位置に配置されている。
アンテナ素子121とアンテナ素子122の場合と同様、アンテナ素子211とアンテナ素子212とは、アレーアンテナを構成する。
【0027】
ウエイト演算回路220は、アンテナ素子211が受信した信号およびアンテナ素子212が受信した信号に対する位相回転や合成を行って、データ系列を抽出する。
分配器221は、アンテナ素子211が受信した信号を2分配して、90度移相器231と合成器241とに出力する。分配器222は、アンテナ素子212が受信した信号を2分配して、90度移相器232と合成器242とに出力する。
【0028】
90度移相器231は、分配器221が受信した信号に対して90度の位相回転を付与して(すなわち、位相を90度進めて)、合成器242に出力する。90度移相器232は、分配器222から出力された信号の移相を90度回転して、合成器241に出力する。
【0029】
合成器241は、分配器221から出力される信号と、90度移相器232から出力される信号とを合成する。すなわち、合成器241は、アンテナ素子211が受信した信号と、アンテナ素子212が受信して90度移相器232が90度の移相回転を行った信号とを合成する。
ここでいう信号の合成は、信号の重ね合わせ(足し合わせ)である。合成器241は、当該合成によって、アンテナ素子121が送信するデータ系列S11の信号に対応するデータ系列S11’の信号を生成する。合成器241は、合成によって得られた信号を、受信部251に出力する。
【0030】
ここで、分配器221と90度移相器231とで、本発明における第1の重み付け手段を構成する。すなわち、アンテナ素子211から入力された信号を、分配器221が2分岐させ、90度移相器231が、一部の信号に対して90度の位相回転を付与して、位相回転が付与された信号と位相回転が付与されていない信号とを出力する。また、分配器222と90度移相器232とで、本発明における第2の重み付け手段を構成する。すなわち、アンテナ素子212から入力された信号を、分配器222が2分岐させ、90度移相器232が、一部の信号に対して90度の位相回転を付与して出力する。
【0031】
合成器241は、例えば、分配器を逆に使用する(すなわち、分配器における出力端子に、分配器221から出力される信号と、90度移相器232から出力される信号とを入力し、分配器における入力端子から信号を取り出す)ことによって実現される。
【0032】
同様に、合成器242は、分配器222から出力される信号と、90度移相器231から出力される信号とを合成する。すなわち、合成器242は、アンテナ素子212が受信した信号と、アンテナ素子211が受信して90度移相器231が90度の移相回転を行った信号とを合成する。
合成器242は、当該合成によって、アンテナ素子122が送信するデータ系列S12の信号に対応するデータ系列S12’の信号を生成する。合成器242は、合成によって得られた信号を、受信部252に出力する。
合成器242は、例えば、分配器を逆に使用することによって実現される。
【0033】
受信部251は、合成器241から出力される信号に対して復調や復号化等の処理を行って、データ系列S11’(のデータ)を生成する。受信部251は、生成したデータ系列を、例えば通信装置200(受信部251)に接続されたコンピュータなど、通信装置200の外部に出力する。
ここで、合成器241と受信部251とで、本発明における第1の復号手段を構成する。すなわち、合成器241が、第1の重み付け手段の出力のうち位相回転が付与されていない信号と第2の重み付け手段の出力のうち位相回転が付与された信号とを合成し、受信部251が、合成部241の合成した信号を復号する。
【0034】
受信部252は、合成器242から出力される信号に対して復調や復号化等の処理を行って、データ系列S12’を生成する。受信部252は、生成したデータ系列を、例えば通信装置200(受信部252)に接続されたコンピュータなど、通信装置200の外部に出力する。
ここで、合成器242と受信部252とで、本発明における第2の復号手段を構成する。すなわち、合成器242が、第1の重み付け手段の出力のうち位相回転が付与された信号と第2の重み付け手段の出力のうち位相回転が付与されていない信号とを合成し、受信部252が、合成部242の合成した信号を復号する。
【0035】
次に、図2〜図5を参照して、本実施形態におけるアンテナ素子の間隔および受信ウエイトについて説明する。
図2は、近距離MIMO通信におけるアンテナ素子の配置例を示す説明図である。
同図において、送信側のアンテナ素子数と受信側のアンテナ素子数とは、いずれもM(Mは、M≧2の正整数)である。これら送信側のアンテナ素子ETj(jは、1≦j≦Mの正整数)は、平面PT上に配置され、また、受信側のアンテナ素子ERi(iは、1≦i≦Mの正整数)は、平面PR上に配置されている。
なお、同図では垂直偏波のアンテナ素子が示されているが、本発明の適用範囲はこれに限らない。例えば水平偏波のアンテナ素子など様々なアンテナ素子を本発明に係る無線通信システムに用いることができる。
【0036】
図2において、平面PTと平面PRとの距離は、距離Dとなっている。以下では、この平面PTと平面PRとの距離を「送受信間隔」と称する。
ここで、送受信間隔Dは、アレーアンテナの開口長と同程度の距離に設定される。ここでいうアレーアンテナの開口長と同程度の距離は、近距離MIMO通信を示す距離であり、送受信間隔に対してアンテナ素子間の距離に対して無視できない距離である。例えば、送受信間隔Dは、30〜300ミリメートルの範囲で設定される。
また、送信側、受信側共に、アンテナ素子間隔は、距離dである。より具体的には、送信側のアンテナ素子は、縦(図2に示すy軸方向)横(図2に示すx軸方向)共に、距離dの等間隔で配置されている。また、受信側のアンテナ素子は、送信側のアンテナ素子に対向して、縦横共に、距離dの等間隔で配置されている。
【0037】
同図に示す3次元直交座標系を用いて送信側のアンテナ素子ETjの座標をQj=(xTj,yTj,0)で示し、受信側のアンテナ素子ERiの座標をPi=(xRi,yRi,D)で示すと、座標Qjから座標Piへのベクトルrij(明細書においては、行列ないしベクトルを示す太字表記を省略する。以下同様)は、式(1)で示される。
【0038】
【数1】
【0039】
なお、送信側のアンテナ素子の座標として、例えば、平面PTにおけるアンテナ素子の中心座標を用いる。同様に、受信側のアンテナ素子の座標として、例えば、平面PRにおけるアンテナ素子の中心座標を用いる。
また、アンテナ素子間における応答値hijは、式(2)で示される。
【0040】
【数2】
【0041】
ここで、角度θijおよびφijと、距離γijとを組み合わせた(θij、φij、γij)で、ベクトルrijを極座標にて示す。なお、図2に示すように、角度θは、z軸の正の向きからy軸の正の向きへの角度を示し、角度φは、x軸の正の向きからy軸の正の向きへの角度を示す。
また、波長λ0は、図2のアンテナ素子間で送受信される電波の、自由空間における波長を示し、周波数k(=2π/λ0)は、当該電波の周波数を示す。
【0042】
また、ベクトルETとERとは、ベクトルrijの極座標表示における角度θijおよびφijの関数であり、それぞれ、送信側のアンテナ素子と受信側のアンテナ素子との、利得の平方根を示す。
また、ベクトルrijの極座標表示における距離γijは、式(3)にて示される。
【0043】
【数3】
【0044】
また、EM−BFのチャネル容量(1秒かつ1Hzに送信可能なビット数の上限)CEM-BF[ビット毎秒毎ヘルツ(bit/s/Hz)]は、式(4)にて示される。
【0045】
【数4】
【0046】
ここで、Ptは送信電力を示し、σ2は雑音電力を示す。また、λiは、チャネル行列(M×M行列)の相関行列(HHH、または、HHH)を固有値分解することで得られる固有値を示す。
【0047】
また、ZFのチャネル容量CZF[ビット毎秒毎ヘルツ]は、式(5)にて示される。
【0048】
【数5】
【0049】
ここで、ベクトル||wi||は、送信側のアンテナ素子ETiにおけるZFによるウエイト(アンテナ素子ETiが送信する電波における、各データ系列に対する重み付け)の列ベクトルを示す。
また、ZFにおける受信ウエイト行列(受信側の各アンテナ素子が受信した電波を合成する際の重み付け)は、以下の式で示される。
【0050】
【数6】
【0051】
図3は、2×2の近距離MIMO通信におけるチャネル容量特性の説明図である。
同図(a)に示すように、ここでは送受信側共に、アンテナ素子数M=2となっており、また、送受信間隔D=120ミリメートルに設定されている。また、各アンテナ素子の偏波は垂直偏波となっている。
【0052】
かかる近距離MIMO通信において、アンテナ素子間隔とチャネル容量との関係は、図3(b)のようになる。ここで、アンテナ素子間隔を、波長λ0との相対距離で示している。また、線L311は、式(4)に基づいて算出される、EM−BFにおけるチャネル容量を示し、線L312は、式(5)に基づいて算出される、ZFにおけるチャネル容量を示す。
同図(b)に示されるように、EM−BFとZFとのいずれにおいても、チャネル容量が最大となる素子間隔(以下、「最適素子間隔」と称する)が存在する。また、EM−BFとZFとで、同じ素子間隔(d=1λ)においてチャネル容量が最大となっている。
【0053】
また、当該近距離MIMO通信における固有値分布は、図3(c)のようになる。同図(c)において、最適素子間隔d=1λでは、第1固有値と2固有値とは、いずれも、信号対雑音比と同じ値となっている。すなわち、最適素子間隔d=1λにて、MIMOにおける最適条件を満たしていることになる。
【0054】
図4は、図3で説明した近距離MIMO通信にてZFを用いた際の、アンテナ素子間隔と、送受信間の位相差および振幅比との関係を示す説明図である。
ここで、2×2MIMO通信における上記のチャネル行列Hを、式(7)のように表す。
【0055】
【数7】
【0056】
要素hij(i,jは、それぞれ2以下の正整数)は、送信側のアンテナ素子ETjから受信側のアンテナ素子ETiへの伝搬路の位相および振幅の変化率を、例えば複素数表現にて示す。
また、2×2MIMO通信における上記の受信ウエイト行列(行列W)を、式(8)のように表す。
【0057】
【数8】
【0058】
要素wij(i,jは、それぞれ2以下の正整数)は、受信側のアンテナ素子ERjが受信した信号を、i番目の受信回路に供給する際に付与する重みを示す。ここで、i番目の受信回路は、送信側のアンテナ素子ETiが送信するi番目のデータ系列(の信号)に対応するデータ系列を生成する回路である。すなわち、要素wijは、i番目のデータ系列を抽出するために、アンテナ素子ERjが受信した信号に対して付与する重みを示す。
図4(a)において、線L411は、チャネルの位相差θH=tan-1(h12/h11)を示す。また、線L412は、受信ウエイトの位相差θw=tan-1(w12/w11)を示す。
【0059】
ここで、図3にて示される最適素子間隔d=1λ0において、チャネルの位相差θHと受信ウエイトの位相差θwとの位相差が180度となっている。図3において、チャネル容量は、振動しながら最適素子間隔d=1λ0を含む幾つかのアンテナ素子間隔において極大となっており、図4では、これらのアンテナ素子間隔において、チャネルの位相差θHと受信ウエイトの位相差θwとの位相差が180度となっている。
また、最適素子間隔d=1λ0での受信ウエイトの位相差θwは、ほぼ90度となっている。
また、図4(b)において、線L421は、振幅比ratio=|w11|/|w12|を示す。同図に示すように、最適素子間隔d=1λ0での振幅比ratioは、1.1程度となっている。
【0060】
図5は、送受信間隔Dと、当該送受信間隔に基づいて定まる最適素子間隔doptにおける、受信ウエイトの位相差θwと、振幅比ratioとの関係を示す説明図である。同図(a)に示すように、送受信間隔Dが30〜300ミリメートルとなる範囲において、アンテナ素子間隔dを、最適素子間隔doptに設定した場合の、受信ウエイトの位相差θwと、振幅比ratioとを、同図(b)に示している。
なお、式(1)および式(2)に示されるように、最適素子間隔doptは、送受信間隔Dに応じて変化する。送受信間隔Dと、最適素子間隔doptとの関係は、表1のようになる。
【0061】
【表1】
【0062】
図5において、線L511は、受信ウエイトの位相差θwを示し、線L512は、振幅比ratioを示す。
ここで、線L511で示される受信ウエイトの位相差θwは、送受信間隔Dの各値に対して約90度と、ほぼ一定の値を示している。
すなわち、式(1)および(2)に示されるように、最適素子間隔doptは、送受信間隔Dに応じて変化するが、最適素子間隔doptにおける受信ウエイトの位相差θwは、ほぼ一定の値となっている。なお、送受信間隔Dが大きくなるにつれて、振幅比ratioの値は1に近くなっている。
【0063】
線L511に示される受信ウエイトの位相差θwによれば、アンテナ素子間隔dが、式(2)に基づいて算出される最適素子間隔doptとなっている状態において、振幅の比を無視すれば、受信側のアンテナ素子間における位相差を90度とすればよいことになる。
すなわち、アンテナ素子間隔dが最適素子間隔doptとなっている状態では、アンテナ素子121からアンテナ素子212への経路長は、アンテナ素子121からアンテナ素子211への経路長よりも4分の1波長(位相差90度)程度長くなる。同様に、アンテナ素子122からアンテナ素子211への経路長は、アンテナ素子122からアンテナ素子212への経路長よりも4分の1波長程度長くなる。
【0064】
このように、送信アンテナと受信アンテナとの距離にかかわらず、チャネル容量が最大となる最適素子間隔においては、ZFにおける受信ウエイトが、ほぼ一定である。
そこで、通信装置200(図1)において、合成器241は、アンテナ素子211が受信した信号と、アンテナ素子212が受信した信号に90度の位相回転を行った信号とを合成する。また、合成器242は、アンテナ素子212が受信した信号と、アンテナ素子211が受信した信号に90度の位相回転を行った信号とを合成する。すなわち、合成器241および合成器242は、受信信号受信ウエイトの位相差90度にて合成を行う。
ここで、通信装置200における受信ウエイト行列Wanalogは、式(9)にて示される。
【0065】
【数9】
【0066】
一方、送受信間隔D=120ミリメートルの場合、2×2の近距離MIMO通信における、ZFによる受信ウエイト行列は、式(10)にて示される。
【0067】
【数10】
【0068】
なお、式(10)では、対角項の値が1となるように規格化している。
ここで、式(9)と式(10)とを比較すると、対角項の値は、いずれも「1」で同じである。また、式(10)の非対角項では、虚部の値の大きさ「0.8879」の大きさが、実部の値の大きさ「0.0415」に対して非常に大きく、虚部の値が支配的となっている。従って、式(10)の非対角項の値は、式(9)の非対角項の値「j」と同等といえ、行列全体においても式(10)は式(9)と同等といえる。
【0069】
このように、図1に示す構成によってZFの場合と同等の受信ウエイト行列を得ることができる。従って、無線通信システム1では、ZFの場合と同様のチャネル容量を得ることができる。
なお、式(9)と式(10)とで非対角項の値が異なるのは、図4に示されるように、振幅比ratioが約1.1であるのに対し、本発明によるウエイトではこれを無視しているためである。
【0070】
次に、図6を参照して、アンテナ素子の配置の決定方法について説明する。
図6は、無線通信システム1におけるアンテナ素子の配置を決定する処理手順を示すフローチャートである。当該処理は、例えば、無線通信システム1のユーザが行う。
【0071】
まず、無線通信システム1を使用する環境における送受信間隔Dを決定する(ステップS101)。例えば、建築物の壁の両面にアンテナ素子を配置して当該壁を透過させる通信を行う場合、当該壁の厚さを送受信間隔Dとする。
次に、図2のモデルおよび式(2)〜(5)を用いて、アンテナ素子間隔dと、ZFのチャネル容量CZFとの関係を求める(ステップS102)。例えば、幾つかのアンテナ素子間隔dについてチャネル容量CZFを算出し、図3(b)のようにアンテナ素子間隔とチャネル容量との関係を示すグラフを生成する。
【0072】
そして、アンテナ素子間隔dと、ZFのチャネル容量CZFとの関係に基づいて、チャネル容量を最大とする最適素子間隔doptを決定する(ステップS103)。例えば、ステップS102で生成したグラフにおいてチャネル容量が最大となるアンテナ素子間隔を最適素子間隔doptとする。
その後同図の処理を終了し、得られた最適素子間隔doptにてアンテナを配置して、無線通信システム1を用いた通信を行う。
【0073】
なお、図3(b)に示されるように、ZFにおける最適素子間隔と、EM−BFにおける最適素子間隔とは一致する。そこで、ステップS102において、アンテナ素子間隔dと、ZFのチャネル容量CZFとの関係に代えて、アンテナ素子間隔dと、EM−BFのチャネル容量CDM-BFとの関係を求めるようにしてもよい。この場合も、ステップS103では、チャネル容量CDM-BFを最大とする最適素子間隔doptを決定する。
【0074】
以上のように、ウエイト演算回路220(図1)では、受信信号を分配する分配器211および212と、分配された受信信号の位相を90度回転させる90度移相器231および232と、受信信号と移相回転された信号とを合成する合成器241および242を具備する非常に簡単な構成で、近距離MIMO通信における重み付けを行うことができる。
【0075】
なお、式(9)における振幅と式(10)における振幅との差は1デシベル(dB)以下であり、ケーブルの線路の長さを調整することで両者の差をほぼ同じにすることが可能である。このように、無線通信システム1では、より負荷の小さい信号処理にて近距離MIMO通信を実現することができる。これにより、無線通信システムの製造コストや消費電力の低減や、装置の小型化を図り得る。
【0076】
なお、図1の構成では、受信側にウエイト演算回路を構成しているが、送信側にこの回路を設け、受信側を図1の送信側と同様、アンテナ素子と受信部とが直接接続される構成としてもよい。
具体的には、送信部111が出力する信号(データ系列S11)に対して90度の位相回転を行ってアンテナ素子121から送信し、また、当該送信部111が出力する信号を位相回転せずにアンテナ素子122から送信する。これによって、アンテナ素子211が受信する信号において、アンテナ素子121が送信するデータ系列S11の信号と、アンテナ素子122が送信するデータ系列S11の信号との位相が一致して互いに強め合う。そこで、アンテナ素子211が受信する信号を受信部251に出力することで、データ系列S11に対応するデータ系列S11’を抽出し得る。
同様に、送信部112が出力する信号(データ系列S12)に対して90度の位相回転を行ってアンテナ素子122から送信し、また、当該送信部112が出力する信号を位相回転せずにアンテナ素子121から送信する。これによって、アンテナ素子212が受信する信号において、アンテナ素子121が送信するデータ系列S12の信号と、アンテナ素子122が送信するデータ系列S12の信号との位相が一致して互いに強め合う。そこで、アンテナ素子212が受信する信号を受信部252に出力することで、データ系列S12に対応するデータ系列S12’を抽出し得る。
このように、ウエイト演算回路は、送信側の通信装置または受信側の通信装置のいずれか一方が具備していればよい。従って、他方の通信装置として、ウエイト演算回路を具備しない、さらに簡単な構成の装置を用いることができる。
【0077】
<第2の実施形態>
なお、第1の実施形態における無線通信システム1では、各アンテナ素子が異なる位置に配置されているが、互いに直交する偏波を送受信するアンテナ素子を同じ位置に配置するようにしてもよい。第2の実施形態では、かかるアンテナ素子を具備する無線通信システムについて説明する。
【0078】
図7は、本発明の第2の実施形態における無線通信システムの概略構成を示す構成図である。同図において、無線通信システム2は、通信装置(第1の無線通信装置)300と、通信装置(第2の無線通信装置)400とを具備する。通信装置300は、送信部311〜314と、アンテナ素子321〜324とを具備する。通信装置400は、アンテナ素子411〜414と、ウエイト演算回路420と、受信部451〜454とを具備する。ウエイト演算回路420は、分配器421〜424と、90度移相器(移相部)431〜434と、合成器(合成部)441〜444とを具備する。
【0079】
送信部311〜314は、送信部111〜112と同様、それぞれデータ系列S21〜S24を取得し、符号化や変調等の処理を行ってデータ系列S21〜S24の送信信号を生成し、生成した送信信号をアンテナ素子321〜324に出力する。
アンテナ素子321〜324は、送信部311〜314から出力される送信信号を無線送信する。詳細については後述する。
【0080】
アンテナ素子411〜424は、アンテナ素子321〜324から送信される信号を受信して、それぞれ、分配器421〜424に出力する。詳細については後述する。
分配器421〜424は、分配器221〜222と同様、アンテナ素子411〜424から出力される信号を分配して出力する。
90度移相器431〜434は、90度移相器231〜232と同様、分配器421〜424から出力される信号に対して90度の位相回転を行う。
【0081】
合成器441〜444は、合成器241〜144と同様、位相回転されていない受信信号と、90度位相回転された受信信号とを合成して、受信部451〜254に出力する。
受信部451〜254は、受信部251〜152と同様、合成器441から出力される信号に対して復調や復号化等の処理を行って、データ系列S21’〜S24’(のデータ)を生成する。
【0082】
ここで、アンテナ素子321とアンテナ素子323とは、その中心を合わせて(すなわち、図2で説明した座標が同じになる位置に)配置されて第1のアンテナ素子を構成し、2つの信号を互いに直交する偏波にて送信する。すなわち、アンテナ素子321が送信する偏波(電波)と、アンテナ素子323が送信する偏波とは、互いに直交する。
同様に、アンテナ素子322とアンテナ素子324とは、その中心を合わせて配置されて第2のアンテナ素子を構成し、2つの信号を互いに直交する偏波にて送信する。すなわち、アンテナ素子322が送信する偏波と、アンテナ素子324が送信する偏波とは、互いに直交する。
また、アンテナ素子321〜324でアレーアンテナを構成する。すなわち、アンテナ素子321〜324は、同一平面上に配置されている。
【0083】
ここで、アンテナ素子322が送信する偏波は、アンテナ素子121が送信する偏波と同じ傾きである。また、アンテナ素子324が送信する偏波は、アンテナ素子323が送信する偏波と同じ傾きである。より具体的には、アンテナ素子121とアンテナ素子122とは、縦方向(図2に示すy軸の方向)に設置されて垂直偏波を送信する。また、アンテナ素子323とアンテナ素子324とは、横方向(図2に示すx軸の方向)に設置されて水平偏波を送信する。
ただし、本発明の適用範囲は、垂直偏波と水平偏波とに限らず、アンテナ素子321およびアンテナ素子322が送信する偏波と、アンテナ素子323およびアンテナ素子324が送信する偏波とが互いに直交していればよい。
【0084】
受信側では、アンテナ素子411とアンテナ素子413とは、その中心を合わせて配置されて第3のアンテナ素子を構成し、アンテナ素子321〜324から送信される互いに直交する偏波を、偏波の角度毎に独立して受信する。より具体的には、アンテナ素子411は、アンテナ素子321に対向して、送受信間隔Dにて、アンテナ素子321と同じく縦方向に配置されて、アンテナ素子121が送信する垂直偏波とアンテナ素子122が送信する垂直偏波とを受信する。また、アンテナ素子413は、アンテナ素子323に対向して、送受信間隔Dにて、アンテナ素子323と同じく横方向に配置されて、アンテナ素子323が送信する水平偏波とアンテナ素子324が送信する水平偏波とを受信する。
【0085】
また、アンテナ素子412とアンテナ素子414とは、その中心を合わせて配置されて第4のアンテナ素子を構成し、アンテナ素子321〜324から送信される互いに直交する偏波を、偏波の角度毎に独立して受信する。より具体的には、アンテナ素子412は、アンテナ素子322に対向して、送受信間隔Dにて、アンテナ素子322と同じく縦方向に配置されて、アンテナ素子121が送信する垂直偏波とアンテナ素子122が送信する垂直偏波とを受信する。また、アンテナ素子414は、アンテナ素子324に対向して、送受信間隔Dにて、アンテナ素子324と同じく横方向に配置されて、アンテナ素子323が送信する水平偏波とアンテナ素子324が送信する水平偏波とを受信する。
また、アンテナ素子411〜414でアレーアンテナを構成する。すなわち、アンテナ素子411〜414は、同一平面上に配置されている。
【0086】
そして、これら第1〜第4のアンテナ素子は、第1の実施形態における第1〜第4のアンテナ素子と同様に、送受信間隔Dおよび最適素子間隔doptにて配置されている。すなわち、第1のアンテナ素子と第2のアンテナ素子との間隔、および、第3のアンテナ素子と第4のアンテナ素子との間隔は、最適素子間隔doptとなっている。また、第1のアンテナ素子と第3のアンテナ素子との間隔、および、第2のアンテナ素子と第4のアンテナ素子との間隔は、送受信間隔Dとなっている。
【0087】
ここで、本願発明者等は、近距離MIMO通信において、直交する偏波(例えば、垂直偏波と水平偏波、あるいは、+−45度の偏波)の間では完全に相関を0にできることを見出している(例えば、西森,関,本間,平賀,溝口、「近距離MIMO通信に適した通信方法に関する検討」、信学技報、AP2009-83、2009年9月参照)。
【0088】
かかる性質を利用して、無線通信システム2では、互いに直交する2つの偏波を用いて、4つのデータ系列を送受信する。いわば、無線通信システム2は、垂直偏波を用いた2×2の近距離MIMO通信システムと、水平偏波を用いた2×2の近距離MIMO通信システムを具備して、これら2×2の近距離MIMO通信システムの各々で2つのデータ系列を送受信することで、4つのデータ系列(S21〜S24)を送受信する。
【0089】
このように、互いに直交する偏波を用いることで、無線通信システム2では、無線通信システム1の2倍のデータ系列の通信を行うことでき、かつ、無線通信システム2においてアンテナ素子の配置に必要な領域は、無線通信システム1において必要な領域と同様とすることができる。
【0090】
<第3の実施形態>
なお、本発明の適用範囲は、2×2MIMO通信に限らない。第3の実施形態では、本発明を4×4MIMO通信に適用した場合について説明する。
図8は、本発明の第3の実施形態における無線通信システムの概略構成を示す構成図である。同図において、無線通信システム3は、通信装置(第1の無線通信装置)500と、通信装置(第2の無線通信装置)600とを具備する。通信装置500は、送信部511〜514と、アンテナ素子521〜524(第1のアンテナ素子〜第4のアンテナ素子)とを具備する。通信装置600は、アンテナ素子611〜614(第5のアンテナ素子〜第8のアンテナ素子)と、ウエイト演算回路620と、受信部651〜654とを具備する。
【0091】
送信部511〜514は、送信部111〜112と同様、それぞれデータ系列S31〜S34を取得し、符号化や変調等の処理を行ってデータ系列S31〜S34の送信信号を生成し、生成した送信信号をアンテナ素子521〜524に出力する。
アンテナ素子521〜524は、アンテナ素子121〜122と同様、送信部311〜314から出力される送信信号を無線送信する。
【0092】
アンテナ素子611〜624は、アンテナ素子211〜212と同様、アンテナ素子521〜524から送信される信号を受信して、それぞれ、ウエイト演算回路620に出力する。
ウエイト演算回路620は、アンテナ素子411〜624から出力される信号に重み付けをして合成し、受信部651〜654に出力する。詳細については後述する。
受信部451〜254は、受信部251〜152と同様、合成器441から出力される信号に対して復調や復号化等の処理を行って、データ系列S31’〜S34’(のデータ)を生成する。
【0093】
図9は、通信装置600におけるアンテナの配置を示す説明図である。
ここで、アンテナ素子521〜524とアンテナ素子211〜614とは、図2で説明したように、送受信間隔Dおよび最適素子間隔doptにて送信側と受信側とで対向して配置されている。
そして、ウエイト演算回路620は、分配器621〜624を具備して、アンテナ素子211〜614の出力する受信信号を、4つに分配する。
【0094】
図10は、ウエイト演算回路620における重み付け合成を示す説明図である。
ウエイト演算回路620は、90度移相器631a〜637bと、180度移相器632〜638とを具備し、分配器621〜624から出力される信号に対して位相回転を行う。
さらに、ウエイト演算回路620は、合成器641〜644を具備し、アンテナ素子211〜614から出力される信号や位相回転された信号を合成する。
【0095】
ここで、ウエイト演算回路620により得られる受信ウエイト行列は、式(11)のようになる。
【0096】
【数11】
【0097】
一方、4×4の近距離MIMO通信にてZFにより得られる受信ウエイト行列は、式(12)のようになる。
【0098】
【数12】
【0099】
この式(12)において、対角項の値「1」は、式(11)の対角項の値「1」と同じである。また、式(12)の要素w12、w13、w21、w24、w31、w34、w42およびw43の値「−0.09+0.89j」は、虚部の値の大きさ「0.89」が、実部の値の大きさ「0.09」に対して非常に大きく、虚部の値が支配的となっている、従って、これらの要素の値は、式(11)において対応する各要素の値「j」と同等といえる。また、式(12)の要素w14、w23、w32、w41の値「−0.78−0.04j」は、実部の値の大きさ「0.78」が、虚部の値の大きさ「0.04」に対して非常に大きく、実部の値が支配的となっている、従って、これらの要素の値は、式(11)において対応する各要素の値「−1」と同等といえる。以上より、行列全体においても式(11)は式(12)と同等といえる。
【0100】
このように、図8に示す構成によってZFの場合と同等の受信ウエイト行列を得ることができる。従って、無線通信システム3では、ZFの場合と同様のチャネル容量を得ることができる。
なお、式(12)では振幅比が1.14〜1.27となるが、式(11)おいては、式(9)の場合と同様、振幅比を無視している。
【0101】
以上のように、ウエイト演算回路620では、ウエイト演算回路220の場合と同様、分配器と移相器と合成器とを具備する非常に簡単な構成で、近距離MIMO通信における重み付けを行うことができる。
【0102】
<第4の実施形態>
なお、無線通信システムが、複数対のアンテナを具備するようにしてもよい。
図11は、複数対のアンテナを具備する無線通信システムの、受信側のアンテナ素子の配置例を示す説明図である。
【0103】
同図において、無線通信システム4が具備する、3組の受信側のアンテナ素子711a〜711dと712a〜712dと713a〜713dとが示されている。この無線通信システム4は、図8に示す無線通信システム3と同等の無線通信システムを3系統備えている。また、シールド板791〜793は、無線通信システム4が具備するアンテナを、この系統毎に区切る電磁シールドである。
また、ウエイト演算回路731は、2つの90度移相器741aおよび741bと、18度移相器751と、合成器761とを具備して、アンテナ素子711a〜711dのいずれか1つが受信した信号(位相回転を付与しない)と、他の2つが受信した信号にそれぞれ90度の位相回転を付与した信号と、残りの1つが受信した信号に180度の位相回転を付与した信号とを合成する。
また、受信部771は、受信部651(図8)と同様、合成器761から出力される信号に対して復調や復号化等の処理を行う。
【0104】
アンテナ素子711a〜711dは、図8のアンテナ素子611〜614と同等の、受信側のアンテナ素子であり、アンテナ素子611〜614と同様に、同一平面上に最適素子間隔doptで配置されてアレーアンテナを構成する。そして、無線通信システム3の場合と同様に、送信側のアンテナ素子が、アンテナ素子711a〜711dの各々に対向して、図2を用いて説明したのと同様に送受信間隔Dにて配置されており、また、図9と同様、送信側、受信側共に、アンテナ素子の間隔は、最適素子間隔doptとなっている。
【0105】
また、アンテナ素子711a〜711dを含む1系統の無線通信システムは、図8で説明したのと同様の構成を有する。すなわち、送信側のアンテナ素子の各々には、異なる送信部がそれぞれ1つ接続され、また、受信側のアンテナ素子711a〜711dは、ウエイト演算回路を介して4つ(受信側のアンテナ素子数と同数)の受信部に接続されている。
【0106】
なお、アンテナ素子711a〜711dが接続されるウエイト演算回路は、無線通信システム3と同様のものであってもよい。あるいは、図11に示すように、アンテナ素子711a〜711dが、マトリックス・スイッチ721を介してウエイト演算回路731に接続されるようにしてもよい。
【0107】
図11に示す構成では、マトリックス・スイッチ721が、アンテナ素子711a〜711dとウエイト演算回路731との接続関係を切り替えて、図10に示すデータ系列S31’を出力する接続と同様の接続、データ系列S32’を出力する接続と同様の接続、データ系列S33’を出力する接続と同様の接続、データ系列S34’を出力する接続と同様の接続を順に生成する。マトリックス・スイッチ721は、この一連の接続の切替を、1データの送信時間内に行う。
【0108】
これにより、図11に示す構成では、1つのウエイト演算回路および1つの受信部で、4つのデータ系列のデータを順に取得する。そして、例えば、無線通信システム4に接続されるコンピュータで4つのデータ系列を抽出(分離)する。
【0109】
アンテナ素子712a〜712dにおいても、アンテナ素子711a〜711dの場合と同様の、1系統の無線通信システムが構成される。また、アンテナ素子713a〜713dにおいても、アンテナ素子711a〜711dの場合と同様の、1系統の無線通信システムが構成される。そして、ある系統において出力された電波が他の系統に漏洩しないように、シールド板791〜793によって系統毎に電磁的に遮断されている。
【0110】
このように、複数の無線通信システムを互いに電磁的にシールドして配置することで、無線通信システムの数に応じた数のデータ系列を通信し得る。例えば、無線通信システム4は、3系統の無線通信システムを具備して、無線通信システム3の3倍のデータ量を通信し得る。
【0111】
以上、この発明の実施形態を図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【符号の説明】
【0112】
1、2、3 無線通信システム
100、200、300、400、500、600 通信装置
111〜112、311〜314、511〜514 送信部
121〜122、211〜212、321〜324、411〜414、521〜524、611〜614 アンテナ素子
220、420、620 ウエイト演算回路
221〜222、421〜424、621〜624 分配器
231〜232、431〜434、631a〜637b 90度移相器
632〜638 180度移相器
241〜242、441〜444、641〜644 合成器
251〜252、451〜454、651〜654 受信部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の通信装置が具備する第1のアンテナ素子と第2のアンテナ素子とを含む第1のアレーアンテナと、第2の通信装置が具備する第3のアンテナ素子と第4のアンテナ素子とを含む第2のアレーアンテナとが配置される無線通信システムであって、
前記第1の通信装置が、前記第1のアレーアンテナと前記第2のアレーアンテナとの距離に対して、チャネル容量が最大となる間隔に、前記第1のアンテナ素子と前記第2のアンテナ素子との間の距離が選択された前記第1のアレーアンテナを具備し、
前記第2の通信装置が、
前記第1のアレーアンテナと前記第2のアレーアンテナとの距離に対して、チャネル容量が最大となる間隔に、前記第3のアンテナ素子と前記第4のアンテナ素子との間の距離が選択された前記第2のアレーアンテナと、
前記第3のアンテナ素子から入力された信号を分岐させ、一部の信号に対して90度の位相回転を付与し、位相回転が付与された信号と位相回転が付与されていない信号とを出力する第1の重み付け手段と、
前記第4のアンテナ素子から入力された信号を分岐させ、一部の信号に対して90度の位相回転を付与し、位相回転が付与された信号と位相回転が付与されていない信号とを出力する第2の重み付け手段と、
前記第1の重み付け手段の出力のうち位相回転が付与されていない信号と前記第2の重み付け手段の出力のうち位相回転が付与された信号とを合成して復号する第1の復号手段と、
前記第1の重み付け手段の出力のうち位相回転が付与された信号と前記第2の重み付け手段の出力のうち位相回転が付与されていない信号とを合成して復号する第2の復号手段と、を具備すること
を特徴とする無線通信システム。
【請求項2】
前記第2のアンテナ素子は、前記第1のアンテナ素子との距離に関して、MIMO通信の固有モード通信法におけるチャネル容量が最大となる位置に配置されることを特徴とする請求項1に記載の無線通信システム。
【請求項3】
前記第2のアンテナ素子は、前記第1のアンテナ素子との距離に関して、MIMO通信のゼロフォーシング法におけるチャネル容量が最大となる位置に配置されることを特徴とする請求項1に記載の無線通信システム。
【請求項4】
前記第1のアンテナ素子と、前記第2のアンテナ素子とは、それぞれ、2つの信号を互いに直交する偏波にて送信し、
前記第3のアンテナ素子と、前記第4のアンテナ素子とは、前記互いに直交する偏波を、偏波の角度毎に独立して受信する
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の無線通信システム。
【請求項5】
第1の通信装置が具備する第1〜第4のアンテナ素子を含む第1のアレーアンテナと、第2の通信装置が具備する第5〜第8のアンテナ素子とを含む第2のアレーアンテナとが配置される無線通信システムであって、
前記第1の通信装置が、前記第1のアレーアンテナと前記第2のアレーアンテナとの距離に対して、チャネル容量が最大となる間隔に、前記第1〜第4のアンテナ素子の間の距離が選択された前記第1のアレーアンテナを具備し、
前記第2の通信装置が、
前記第1のアレーアンテナと前記第2のアレーアンテナとの距離に対して、チャネル容量が最大となる間隔に、前記第5〜第8のアンテナ素子の間の距離が選択された前記第2のアレーアンテナと、
前記第5〜第8のアンテナ素子から入力された信号の各々を分岐させ、アンテナ素子毎に、分岐された信号の一部に90度の位相回転を付与し、他の一部に180度の位相回転を付与し、位相回転が付与されていない信号と、90度の位相回転が付与された信号と、180度の位相回転が付与された信号とを出力する重み付け手段と、
前記重み付け手段が出力する信号のうち、前記第5のアンテナ素子から入力された信号と、前記第6のアンテナ素子から入力され90度の位相回転が付与された信号と、前記第7のアンテナ素子から入力され90度の位相回転が付与された信号と、前記第8のアンテナ素子から入力され180度の位相回転が付与された信号とを合成して復号する第1の復号手段と、
前記重み付け手段が出力する信号のうち、前記第6のアンテナ素子から入力された信号と、前記第5のアンテナ素子から入力され90度の位相回転が付与された信号と、前記第8のアンテナ素子から入力され90度の位相回転が付与された信号と、前記第7のアンテナ素子から入力され180度の位相回転が付与された信号とを合成して復号する第2の復号手段と、
前記重み付け手段が出力する信号のうち、前記第7のアンテナ素子から入力された信号と、前記第5のアンテナ素子から入力され90度の位相回転が付与された信号と、前記第8のアンテナ素子から入力され90度の位相回転が付与された信号と、前記第6のアンテナ素子から入力され180度の位相回転が付与された信号とを合成して復号する第3の復号手段と、
前記重み付け手段が出力する信号のうち、前記第8のアンテナ素子から入力された信号と、前記第6のアンテナ素子から入力され90度の位相回転が付与された信号と、前記第7のアンテナ素子から入力され90度の位相回転が付与された信号と、前記第5のアンテナ素子から入力され180度の位相回転が付与された信号とを合成して復号する第4の復号手段と、を具備すること
を特徴とする無線通信システム。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の複数の無線通信システムと、
前記複数の無線通信システムを互いに電磁的にシールドするシールド手段と、を具備することを特徴とする無線通信システム。
【請求項7】
第1の通信装置が具備する第1のアンテナ素子と第2のアンテナ素子とを含む第1のアレーアンテナと、第2の通信装置が具備する第3のアンテナ素子と第4のアンテナ素子とを含む第2のアレーアンテナとが配置され、
前記第1の通信装置は、前記第1のアレーアンテナと前記第2のアレーアンテナとの距離に対して、チャネル容量が最大となる間隔に、前記第1のアンテナ素子と前記第2のアンテナ素子との間の距離が選択された前記第1のアレーアンテナを具備し、
前記第2の通信装置は、前記第1のアレーアンテナと前記第2のアレーアンテナとの距離に対して、チャネル容量が最大となる間隔に、前記第3のアンテナ素子と前記第4のアンテナ素子との間の距離が選択された前記第2のアレーアンテナを具備する無線通信システムの無線通信方法であって、
前記第3のアンテナ素子から入力された信号を分岐させ、一部の信号に対して90度の位相回転を付与し、位相回転が付与された信号と位相回転が付与されていない信号とを出力する第1の重み付けステップと、
前記第4のアンテナ素子から入力された信号を分岐させ、一部の信号に対して90度の位相回転を付与し、位相回転が付与された信号と位相回転が付与されていない信号とを出力する第2の重み付けステップと、
前記第1の重み付けステップの出力のうち位相回転が付与されていない信号と前記第2の重み付けステップの出力のうち位相回転が付与された信号とを合成して復号する第1の復号ステップと、
前記第1の重み付けステップの出力のうち位相回転が付与された信号と前記第2の重み付けステップの出力のうち位相回転が付与されていない信号とを合成して復号する第2の復号ステップと、を具備すること
を特徴とする無線通信方法。
【請求項1】
第1の通信装置が具備する第1のアンテナ素子と第2のアンテナ素子とを含む第1のアレーアンテナと、第2の通信装置が具備する第3のアンテナ素子と第4のアンテナ素子とを含む第2のアレーアンテナとが配置される無線通信システムであって、
前記第1の通信装置が、前記第1のアレーアンテナと前記第2のアレーアンテナとの距離に対して、チャネル容量が最大となる間隔に、前記第1のアンテナ素子と前記第2のアンテナ素子との間の距離が選択された前記第1のアレーアンテナを具備し、
前記第2の通信装置が、
前記第1のアレーアンテナと前記第2のアレーアンテナとの距離に対して、チャネル容量が最大となる間隔に、前記第3のアンテナ素子と前記第4のアンテナ素子との間の距離が選択された前記第2のアレーアンテナと、
前記第3のアンテナ素子から入力された信号を分岐させ、一部の信号に対して90度の位相回転を付与し、位相回転が付与された信号と位相回転が付与されていない信号とを出力する第1の重み付け手段と、
前記第4のアンテナ素子から入力された信号を分岐させ、一部の信号に対して90度の位相回転を付与し、位相回転が付与された信号と位相回転が付与されていない信号とを出力する第2の重み付け手段と、
前記第1の重み付け手段の出力のうち位相回転が付与されていない信号と前記第2の重み付け手段の出力のうち位相回転が付与された信号とを合成して復号する第1の復号手段と、
前記第1の重み付け手段の出力のうち位相回転が付与された信号と前記第2の重み付け手段の出力のうち位相回転が付与されていない信号とを合成して復号する第2の復号手段と、を具備すること
を特徴とする無線通信システム。
【請求項2】
前記第2のアンテナ素子は、前記第1のアンテナ素子との距離に関して、MIMO通信の固有モード通信法におけるチャネル容量が最大となる位置に配置されることを特徴とする請求項1に記載の無線通信システム。
【請求項3】
前記第2のアンテナ素子は、前記第1のアンテナ素子との距離に関して、MIMO通信のゼロフォーシング法におけるチャネル容量が最大となる位置に配置されることを特徴とする請求項1に記載の無線通信システム。
【請求項4】
前記第1のアンテナ素子と、前記第2のアンテナ素子とは、それぞれ、2つの信号を互いに直交する偏波にて送信し、
前記第3のアンテナ素子と、前記第4のアンテナ素子とは、前記互いに直交する偏波を、偏波の角度毎に独立して受信する
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の無線通信システム。
【請求項5】
第1の通信装置が具備する第1〜第4のアンテナ素子を含む第1のアレーアンテナと、第2の通信装置が具備する第5〜第8のアンテナ素子とを含む第2のアレーアンテナとが配置される無線通信システムであって、
前記第1の通信装置が、前記第1のアレーアンテナと前記第2のアレーアンテナとの距離に対して、チャネル容量が最大となる間隔に、前記第1〜第4のアンテナ素子の間の距離が選択された前記第1のアレーアンテナを具備し、
前記第2の通信装置が、
前記第1のアレーアンテナと前記第2のアレーアンテナとの距離に対して、チャネル容量が最大となる間隔に、前記第5〜第8のアンテナ素子の間の距離が選択された前記第2のアレーアンテナと、
前記第5〜第8のアンテナ素子から入力された信号の各々を分岐させ、アンテナ素子毎に、分岐された信号の一部に90度の位相回転を付与し、他の一部に180度の位相回転を付与し、位相回転が付与されていない信号と、90度の位相回転が付与された信号と、180度の位相回転が付与された信号とを出力する重み付け手段と、
前記重み付け手段が出力する信号のうち、前記第5のアンテナ素子から入力された信号と、前記第6のアンテナ素子から入力され90度の位相回転が付与された信号と、前記第7のアンテナ素子から入力され90度の位相回転が付与された信号と、前記第8のアンテナ素子から入力され180度の位相回転が付与された信号とを合成して復号する第1の復号手段と、
前記重み付け手段が出力する信号のうち、前記第6のアンテナ素子から入力された信号と、前記第5のアンテナ素子から入力され90度の位相回転が付与された信号と、前記第8のアンテナ素子から入力され90度の位相回転が付与された信号と、前記第7のアンテナ素子から入力され180度の位相回転が付与された信号とを合成して復号する第2の復号手段と、
前記重み付け手段が出力する信号のうち、前記第7のアンテナ素子から入力された信号と、前記第5のアンテナ素子から入力され90度の位相回転が付与された信号と、前記第8のアンテナ素子から入力され90度の位相回転が付与された信号と、前記第6のアンテナ素子から入力され180度の位相回転が付与された信号とを合成して復号する第3の復号手段と、
前記重み付け手段が出力する信号のうち、前記第8のアンテナ素子から入力された信号と、前記第6のアンテナ素子から入力され90度の位相回転が付与された信号と、前記第7のアンテナ素子から入力され90度の位相回転が付与された信号と、前記第5のアンテナ素子から入力され180度の位相回転が付与された信号とを合成して復号する第4の復号手段と、を具備すること
を特徴とする無線通信システム。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の複数の無線通信システムと、
前記複数の無線通信システムを互いに電磁的にシールドするシールド手段と、を具備することを特徴とする無線通信システム。
【請求項7】
第1の通信装置が具備する第1のアンテナ素子と第2のアンテナ素子とを含む第1のアレーアンテナと、第2の通信装置が具備する第3のアンテナ素子と第4のアンテナ素子とを含む第2のアレーアンテナとが配置され、
前記第1の通信装置は、前記第1のアレーアンテナと前記第2のアレーアンテナとの距離に対して、チャネル容量が最大となる間隔に、前記第1のアンテナ素子と前記第2のアンテナ素子との間の距離が選択された前記第1のアレーアンテナを具備し、
前記第2の通信装置は、前記第1のアレーアンテナと前記第2のアレーアンテナとの距離に対して、チャネル容量が最大となる間隔に、前記第3のアンテナ素子と前記第4のアンテナ素子との間の距離が選択された前記第2のアレーアンテナを具備する無線通信システムの無線通信方法であって、
前記第3のアンテナ素子から入力された信号を分岐させ、一部の信号に対して90度の位相回転を付与し、位相回転が付与された信号と位相回転が付与されていない信号とを出力する第1の重み付けステップと、
前記第4のアンテナ素子から入力された信号を分岐させ、一部の信号に対して90度の位相回転を付与し、位相回転が付与された信号と位相回転が付与されていない信号とを出力する第2の重み付けステップと、
前記第1の重み付けステップの出力のうち位相回転が付与されていない信号と前記第2の重み付けステップの出力のうち位相回転が付与された信号とを合成して復号する第1の復号ステップと、
前記第1の重み付けステップの出力のうち位相回転が付与された信号と前記第2の重み付けステップの出力のうち位相回転が付与されていない信号とを合成して復号する第2の復号ステップと、を具備すること
を特徴とする無線通信方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−55604(P2013−55604A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−194084(P2011−194084)
【出願日】平成23年9月6日(2011.9.6)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【出願人】(304027279)国立大学法人 新潟大学 (310)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月6日(2011.9.6)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【出願人】(304027279)国立大学法人 新潟大学 (310)
【Fターム(参考)】
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