説明

無線通信端末

【課題】階層符号化処理が施されているデータを復調する場合低消費電力化を図ることができる無線通信端末を提供すること。
【解決手段】基本層のデータまたは拡張層のデータを構成するサブキャリアがシンボル毎にデータ信号を含み、サブキャリアを復調する際に、位相平面上のパイロット信号に基づいてデータ信号を補正する等化器133と、信号点の位置から特定される基本層のデータ、拡張層のデータのうち基本層のデータを復調、復号する復調器134、復号器135と、基本層のデータ、拡張層のデータのうち拡張層のデータを復調、復号する復調器136、復号器137と、非節電モードで復調器134、復号器135を駆動させると共に復調器136、復号器137を停止させ、節電モードで復調器134、復号器135および復調器136、復号器137を駆動させる制御部とを備えるように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直交周波数分割多重方式で通信する無線通信端末に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話機、地上デジタル放送、または無線LANなどで用いられる無線通信方式として、直交周波数分割多重方式(OFDM:Orthogonal Frequency Division Multiplexing)に関する技術が数多く提案されている。
【0003】
図8は、従来の無線通信端末の受信部のブロック図である。図8に示した従来の無線通信端末は、RFフロントエンド部12、OFDM復調部83、映像・音声復号部14、表示部15、およびスピーカ16を備えている。
【0004】
RFフロントエンド部12は、アンテナ11を介して受信した無線信号を増幅、フィルタリング、ダウンコンバート、および自動周波数制御(AFC)等を行うようになっている。OFDM復調部83は、入力された直交周波数分割多重方式の信号を復調するようになっている。
【0005】
映像・音声復号部14は、復調されたデジタルデータを映像データまたは音声データに復号するようになっている。表示部15は、復号されたデジタルデータを映像として表示するようになっている。スピーカ16は、復号されたデジタルデータを音声として出力するようになっている。
【0006】
図9は、上述した従来のOFDM復調部のブロック図である。OFDM復調部83は、直交検波器831、FFT部832、チャネル等化器833、サブキャリア復調器836、およびチャネル復号器837を備えている。
【0007】
直交検波器831は、RFフロントエンド部12から入力された信号を検波して直交復調すると共にA/D変換するようになっている。FFT部832は、直交検波器831から出力されたデータを周波数チャネル毎のデータ(各サブキャリアのデータ)に変換するFFT(Fast Fourier Transform)処理を行い、FFT処理して得られた各サブキャリアを出力するようになっている。
【0008】
チャネル等化器833は、パイロット信号を用いて伝送路特性を推定し、推定した伝送路特性に基づいた補正をサブキャリアに対して行うようになっている。
【0009】
次に、等化処理について、さらに詳細に説明する。図10は、OFDMを用いた通信方式の信号を構成する各サブキャリアを示したものである。図10に示すように、各サブキャリアは、データサブキャリアを含む。
【0010】
図11は、FFT出力されたパイロット信号を位相平面(複素平面)上にベクトルとして示したものである。送信される前のパイロット信号は、ベクトルRで表現されており、送信側および受信側で既知であり、受信側でそのままのベクトルRで表現されるベクトルとして受信されるのが理想である。
【0011】
しかしながら、無線の伝送路でノイズまたはマルチパスが発生することにより、または受信側のAFCの処理で誤差が生じる等により、ベクトルR’として受信されてしまう。等化処理は、ベクトルR’をベクトルRになるように位相方向の補正と振幅方向の補正を行うことによって元に戻す処理である。
【0012】
受信側では、受信したときのパイロット信号から伝送路特性を推定し、推定した伝送路特性を用いてデータサブキャリアの等化処理が行われる。また、伝送路特性は、周波数・時間で変化するため、受信側では、複数のパイロット信号から推定された伝送路特性を用いてデータサブキャリアの補間が行われ、各データサブキャリアの伝送路特性を求めることもできる。
【0013】
サブキャリア復調器836は、等化されたデータサブキャリア毎の信号点の位置でデジタルデータを特定するようになっている。チャネル復号器837は、データの誤り訂正処理およびデインターリーブ処理等を施すようになっている。
【0014】
ところで、特許文献1では、階層符号化処理で映像の符号化データが基本層と付加層とに区分されており、無線通信端末が、その符号化データを受信した際、状況に応じて基本層に対応するデータのみを復号するように動作を制限して映像の符号化データを再生することができる(例えば、特許文献1参照)。例えば、基本層に対応するデータとしては、MPEGに対応した動画データのIフレーム等が該当し、付加層に対応するデータとしては、MPEGに対応した動画データのBフレーム及びPフレーム等が該当する。
【特許文献1】特開2003−264767号公報(請求項16)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、特許文献1に開示された従来の無線通信端末に、上述したキャリアに対して等化処理を行う方式を適用した場合、基本層に対応するデータのみを復号するだけで、十分に消費電力を節約することはできないという課題がある。
【0016】
そこで、本発明は、従来の課題を解決するためになされたもので、階層符号化処理が施されている階層符号化データを復調する場合、従来のものと比較して低消費電力化を図ることができ、バッテリ駆動の端末においてさらに長時間利用を可能にする無線通信端末を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の無線通信端末は、直交周波数分割多重方式で送信されるキャリアのうち基本層のデータまたは拡張層のデータを含むサブキャリアがデータ信号を含んでおり、前記サブキャリアを復調する際に、前記キャリアのパイロット信号に基づいて前記データ信号を補正する等化部と、前記等化部で補正された前記基本層のデータおよび前記拡張層のデータのうち前記基本層のデータを処理する基本層データ処理部と、前記等化部で補正された前記基本層のデータおよび前記拡張層のデータのうち前記拡張層のデータを処理する拡張層データ処理部と、節電モードで前記基本層データ処理部を駆動させると共に前記拡張層データ処理部を停止させ、非節電モードで前記基本層データ処理部および前記拡張層データ処理部を駆動させる制御部とを備えた構成を有している。
【0018】
この構成により、節電モードで基本層データ処理部を駆動させると共に拡張層データ処理部を停止させるため、階層符号化データを復調する場合、従来のものと比較して低消費電力化を図ることができ、バッテリ駆動の端末においてさらに長時間利用を可能にする。
【0019】
また、本発明の無線通信端末は、前記等化部が、1つのOFDMシンボルの少なくとも1以上のパイロット信号に基づいて前記データ信号を補正する低精度等化部と、
複数のOFDMシンボルの少なくとも1以上のパイロット信号に基づいて前記データ信号を補正する高精度等化部と、を有し、前記節電モードで、前記制御部は、前記低精度等化部および前記基本層データ処理部を駆動させると共に前記高精度等化部および前記拡張層データ処理部を停止させる構成を有している。
【0020】
この構成により、節電モードで、低精度等化部および基本層データ処理部を駆動させると共に高精度等化部および拡張層データ処理部を停止させるため、低消費電力化を図ることができる。
【0021】
また、本発明の無線通信端末は、前記非節電モードで、前記制御部が、前記高精度等化部、前記基本層データ処理部、および前記拡張層データ処理部を駆動させると共に前記低精度等化部を停止させる構成を有している。
【0022】
この構成により、非節電モードで、高精度等化部、基本層データ処理部、および拡張層データ処理部を駆動させると共に低精度等化部を停止させるため、低消費電力化を図ることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明は、階層符号化データを復調する場合、従来のものと比較して低消費電力化を図ることができる無線通信端末を提供するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0025】
(本発明の第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る無線通信端末の受信部のブロック図である。図1に示した無線通信端末は、RFフロントエンド部12、OFDM復調部13、映像・音声復号部14、表示部15、スピーカ16、入力部17、バッテリ残量測定部18、およびシステム制御部19を備えている。本発明の実施の形態に係る無線通信端末は、例えば携帯電話機であり、受信部だけでなく送信部、映像の表示部や音声の出力部を含むように構成してもよいし、受像機のようなものでもよい。
【0026】
RFフロントエンド部12は、アンテナ11を介して受信した無線信号を増幅、フィルタリング、ダウンコンバート、および自動周波数制御(AFC)等を行うようになっている。
【0027】
図1に示した無線通信端末が受信するデータには、階層符号化処理が施されている。階層符号化処理とは、データを複数の階層に分割し、それぞれの階層毎に符号化するものである。例えば、MPEGに対応した動画データの符号化においては、動画を構成する複数のフレームのうち基本フレーム(Iフレーム)のデータが基本層として符号化され、基本フレームでないフレームのデータが拡張層として符号化される形態がありえる。
【0028】
階層符号化処理がなされている場合、基本層のデータのみでも動画データが再生可能であり、さらに拡張層のデータを用いるとさらに高画質な動画が再生可能である。階層符号化データは、階層毎に変調方式および誤り訂正方式が異なって伝送されることもある。
【0029】
一般的には、基本層のデータが誤りに強い方式で伝送され、拡張層のデータが誤りには弱いが伝送効率の良い方式で伝送される。このような方式で伝送することにより、図1に示した無線通信端末は、受信状態が良ければ、基本層および拡張層の双方のデータを用いて高画質なデータを再生することができ、受信状態が悪くても、基本層だけのデータを用いて最低限のデータを再生することができる。
【0030】
OFDM復調部13は、階層符号化処理に対応したものであり、入力された直交周波数分割多重方式の信号を復調するようになっている。OFDM復調部13の詳細を図2に示す。
【0031】
図2に示したOFDM復調部13は、直交検波器131、FFT部132、チャネル等化器133、基本層キャリア復調器134、基本層チャネル復号器135、拡張層キャリア復調器136、および拡張層チャネル復号器137を備えている。
【0032】
直交検波器131は、RFフロントエンド部12から入力された信号を検波して直交復調すると共にA/D変換するようになっている。FFT部132は、直交検波器131によって出力されたデータを周波数チャネル毎のデータ(各サブキャリアのデータ)に変換するFFT処理を行い、FFT処理して得られた各サブキャリアを出力するようになっている。
【0033】
チャネル等化器133は、パイロット信号を用いて伝送路特性を推定し、推定した伝送路特性に基づいた補正をデータサブキャリアに対して行うようになっている。詳細は、図10および図11にて上述した通りである。
【0034】
図3は、階層符号化処理を行うときのサブキャリア毎の基本層、拡張層のデータの割り付けの一例である。この信号点の配置では基本層のデータを各位相象限に割り当てている。図3では、第1象限は4ビットのうち基本層のデータとして上位2ビットを「00」で割り当て、第2象限は4ビットのうち基本層のデータとして上位2ビットを「10」で割り当て、第3象限は4ビットのうち基本層のデータとして上位2ビットを「11」で割り当て、第4象限は4ビットのうち基本層のデータとして上位2ビットを「01」で割り当てている。
【0035】
また、拡張層のデータをそれぞれの位相象限内の特定の位置に、4ビットのうち下位2ビットを割り当てている。図3から明らかなように基本層のデータは、位相情報のみでデータが判定できる。これに対して拡張層は、位相、振幅の大きさから判定するため、基本層の方が誤りに強い配置となっている。
【0036】
基本層キャリア復調器134は、位相平面の基本層の位置からデジタルデータを特定することで基本層の各サブキャリアのデータを復調するようになっている。基本層チャネル復号器135は、基本層のデータの誤り訂正処理およびデインターリーブ処理等を施すようになっている。
【0037】
拡張層キャリア復調器136は、位相平面の拡張層の位置からデジタルデータを特定することで低拡張層の各サブキャリアのデータを復調するようになっている。拡張層チャネル復号器137は、拡張層のデータの誤り訂正処理およびデインターリーブ処理等を施すようになっている。
【0038】
映像・音声復号部14は、復調されたデジタルデータを映像データまたは音声データに復号するようになっている。表示部15は、復号されたデジタルデータを映像として表示するようになっている。スピーカ16は、復号されたデジタルデータを音声として出力するようになっている。入力部17は、利用者からのキー入力を受け付けるようになっている。
【0039】
バッテリ残量測定部18は、無線通信端末のバッテリ(図示していない)の残量を測定するようになっている。システム制御部19は、無線通信端末に搭載された部材を制御するようになっている。
【0040】
以上のように構成された本発明の第1の実施の形態に係る無線通信端末の動作について図面を用いて説明する。
【0041】
まず、データを復調する際に、非節電モードおよび節電モードの何れかが選択されるようになっている。
【0042】
例えば、定期的にバッテリ残量がシステム制御部19にて監視されており、バッテリ残量測定部18によって測定された残量が所定の値よりも小さい場合、システム制御部19にて節電モードが選択され、バッテリ残量測定部18によって測定された残量が所定の値以上である場合、システム制御部19にて非節電モードが選択されてもよい。また、復調するデータを長時間に視聴等する場合、利用者が入力部17を介してキー操作を行うなどしてシステム制御部19にて節電モードが選択されてもよい。
【0043】
非節電モードが選択された場合、拡張層と基本層のデータ両方が復調されるため、システム制御部19は、基本層キャリア復調器134、基本層チャネル復号器135、拡張層キャリア復調器136、および拡張層チャネル復号器137を動作(電源ON)させる。
【0044】
ここで、無線通信端末が無線信号を受信した場合、FFT部132によって出力された各サブキャリアは、チャネル等化器133に入力され、チャネル等化器133は、FFT部132から出力されたサブキャリアに対し伝送路特性を推定し、推定した伝送路特性を用いて等化処理を行う。次に、チャネル等化器133から出力されたデータが、基本層のデータである場合、基本層キャリア復調器134および基本層チャネル復号器135で処理される。チャネル等化器133から出力されたデータが、拡張層のデータである場合、拡張層キャリア復調器136および拡張層チャネル復号器137で処理される。
【0045】
また、節電モードが選択された場合、基本層のデータだけが復調されるため、システム制御部19は、基本層キャリア復調器134および基本層チャネル復号器135を動作(電源ON)させ、拡張層キャリア復調器136および拡張層チャネル復号器137を停止(電源OFF)させる。
【0046】
ここで、無線通信端末が無線信号を受信した場合、FFT部132によって出力された各サブキャリアは、チャネル等化器133に入力され、チャネル等化器133は、FFT部132から出力されたサブキャリアに対し伝送路特性を推定し、推定した伝送路特性を用いて等化処理を行う。次に、チャネル等化器133から出力されたデータが、基本層のデータである場合、基本層キャリア復調器134および基本層チャネル復号器135で処理される。チャネル等化器133から出力されたデータが、拡張層のデータである場合は、処理されない。
【0047】
以上説明したように、従来の無線通信端末では、階層符号化データを受信した際、状況に応じて基本層に対応するデータのみを復号するように動作を制限するだけであったが、本発明の第1の実施の形態に係る無線通信端末は、節電モードで基本層キャリア復調器134および基本層チャネル復号器135を駆動させると共に拡張層キャリア復調器136および拡張層チャネル復号器137を停止させ、非節電モードで基本層キャリア復調器134および基本層チャネル復号器135および拡張層キャリア復調器136および拡張層チャネル復号器137を駆動させるため、階層符号化データを復調する場合、従来のものと比較して低消費電力化を図ることができ、バッテリ駆動の端末においてさらに長時間利用を可能にする。
【0048】
(本発明の第2の実施の形態)
図4は、本発明の第2の実施の形態に係る無線通信端末の受信部のブロック図である。なお、本発明の第2の実施の形態に係る無線通信端末の構成するブロックのうち、本発明の第1の実施の形態に係るブロックと同じものには、同じ符号を付し、それぞれの説明を省略する。
【0049】
図4に示した無線通信端末は、RFフロントエンド部12、OFDM復調部23、映像・音声復号部14、表示部15、スピーカ16、入力部17、バッテリ残量測定部18、およびシステム制御部19を備えている。
【0050】
OFDM復調部23は、階層符号化処理に対応したものであり、入力された直交周波数分割多重方式の信号を復調するようになっている。OFDM復調部23の詳細を図5に示す。
【0051】
OFDM復調部23は、直交検波器131、FFT部132、高精度チャネル等化器233、低精度チャネル等化器234、基本層キャリア復調器134、基本層チャネル復号器135、拡張層キャリア復調器136、および拡張層チャネル復号器137を備えている。
【0052】
高精度チャネル等化器233は、FFT部132から出力されたサブキャリアに対し伝送路特性を高精度に推定し、推定した伝送路特性を用いて等化処理を行うようになっている。低精度チャネル等化器234は、FFT部132から出力されたサブキャリアに対し伝送路特性を低精度に推定し、推定した伝送路特性を用いて等化処理を行うようになっている。次に、各チャネル等化器について詳細に説明する。
【0053】
図10に示したように、パイロット信号は、キャリア内の特定の位置に配置された既知の信号である。このパイロット信号の割合が多いほど、正確な伝送路推定が可能となるが、その分データに割り振ることができるデータサブキャリアが減ってしまい、データ伝送量が減ってしまう。このため、通常ではデータサブキャリアの数個から十数個程度に一つの割合でパイロット信号が挿入される。実際のデータを運ぶデータサブキャリアの伝送路特性は、パイロット信号から推定される。
【0054】
図6は、サブキャリアの伝送路特性を推測する処理の説明図である。なお、図6は、図10に基づいた図である。サブキャリアの伝送路特性を推測する最も簡単な方法としては、図6(A)に示すようにパイロット信号の近傍のデータサブキャリアのグループの伝送路特性がすべて同じと仮定し、その範囲内のデータサブキャリアすべてを、パイロット信号で求めた伝送路特性を用いて等化するものである。この場合、グループ内での伝送路特性が大きく変化していると、等化処理が正確にできず、誤り率が大きくなってしまうこともある。
【0055】
高精度な伝送路特性の推定方法の例としては、複数のパイロット信号を使用して、サブキャリア毎の伝送路特性を推定するものがある。この場合、図6(B)に示すようにデータサブキャリアの周辺の2つのパイロット信号から線形補間したり、複数のパイロット信号を用いて高次の補間方法を用いて求めることもできる。
【0056】
さらに、図6(C)に示すように、パイロット信号による補間処理は、パイロット信号の挿入位置を時間方向(OFDMシンボル方向)で変えることにより、時間方向からも補間して推定することができる。何れにしろ、正確な伝送路特性を求める場合には、多くの演算量が必要となる。
【0057】
また、高精度チャネル等化器233または低精度チャネル等化器234は、サブキャリア毎に上述して推定された伝送路特性を用いて等化処理を行う。
【0058】
QPSK(Quadrature Phase Shift Keying)やBPSK(Binary Phase Shift Keying)では、位相のみでサブキャリアの信号を表しているため、正確な位相を判定できるように等化するだけでよく、等化処理としては、図7(A)のように位相の補正だけでよい。しかし、QAM(QuadratureAmplitude Modulation)のような方式では位相と振幅でサブキャリアの信号を表しており、等化処理としては、図7(B)に示すように位相の補正と正確な振幅の大きさを求めるための振幅の補正処理が必要となる。
【0059】
ここでの高精度チャネル等化器233の例としては、図6(C)の伝送路特性推定と、図6(B)の等化処理を組み合わせたもの等があげられる。低精度チャネル等化器234の例としては、図6(B)の伝送路特性推定と図7(A)の等化処理を組み合わせたもの等があげられる。なお、当然、これらの処理は、ハードウェアでなくソフトウェアでの実装も可能である。
【0060】
このようにチャネルの等化処理にはさまざまな実現方式があり、それぞれの補間処理方式の選定、回路構成、ソフトの複雑さなどで演算量や消費電力に影響が及ぶ。
【0061】
基本層キャリア復調器134は、高精度チャネル等化器233、低精度チャネル等化器234両方のチャネル等化器によって出力されたどちらかのデータを用いて、位相平面の基本層の位置からデジタルデータを特定することで基本層の各サブキャリアのデータを復調するようになっている。基本層チャネル復号器135は、基本層のデータの誤り訂正処理およびデインターリーブ処理等を施すようになっている。
【0062】
拡張層キャリア復調器136は、高精度チャネル等化器233によって出力されたデータを用いて、位相平面の拡張層の位置からデジタルデータを特定することで低拡張層の各サブキャリアのデータを復調するようになっている。拡張層チャネル復号器137は、拡張層のデータの誤り訂正処理およびデインターリーブ処理等を施すようになっている。
【0063】
以上のように構成された本発明の第2の実施の形態に係る無線通信端末の動作について図面を用いて説明する
まず、データを復調する際に、非節電モードおよび節電モードの何れかが選択されるようになっている。
【0064】
例えば、定期的にバッテリ残量がシステム制御部19にて監視されており、バッテリ残量測定部18によって測定された残量が所定の値よりも小さい場合、システム制御部19にて節電モードが選択され、バッテリ残量測定部18によって測定された残量が所定の値以上である場合、システム制御部19にて非節電モードが選択されてもよい。また、復調するデータを長時間に視聴等する場合、利用者が入力部17を介してキー操作を行うなどしてシステム制御部19にて節電モードが選択されてもよい。
【0065】
非節電モードが選択された場合、拡張層と基本層のデータ両方が復調されるため、システム制御部19は、高精度チャネル等化器233を動作させ、低精度チャネル等化器234を停止(電源OFF)させておく。
【0066】
ここで、無線通信端末が無線信号を受信した場合、FFT部132によって出力された各サブキャリアは、高精度チャネル等化器233に入力され、高精度チャネル等化器233は、FFT部132から出力されたサブキャリアに対し伝送路特性を高精度に推定し、推定した伝送路特性を用いて等化処理を行う。次に、高精度チャネル等化器233から出力されたデータが、基本層のデータである場合、基本層キャリア復調器134および基本層チャネル復号器135で処理される。高精度チャネル等化器233から出力されたデータが、拡張層のデータである場合、拡張層キャリア復調器136および拡張層チャネル復号器137で処理される。
【0067】
また、節電モードが選択された場合、基本層のデータだけが復調されるため、システム制御部19は、低精度チャネル等化器234を動作させ、高精度チャネル等化器233を停止(電源OFF)させておくと共に、拡張層キャリア復調器136、拡張層チャネル復号器137を停止(電源OFF)させる。
【0068】
ここで、無線通信端末が無線信号を受信した場合、FFT部132によって出力された各サブキャリアは、低精度チャネル等化器234に入力され、低精度チャネル等化器234は、FFT部132から出力されたサブキャリアに対し伝送路特性を低精度に推定し、推定した伝送路特性を用いて等化処理を行う。次に、低精度チャネル等化器234から出力されたデータが、基本層のデータである場合、基本層キャリア復調器134および基本層チャネル復号器135で処理される。低精度チャネル等化器234から出力されたデータが、拡張層のデータである場合は、処理されない。
【0069】
以上説明したように、本発明の第2の実施の形態に係る無線通信端末は、非節電モードで、高精度チャネル等化器233、基本層キャリア復調器134、基本層チャネル復号器135、拡張層キャリア復調器136、および拡張層チャネル復号器137を駆動させると共に低精度チャネル等化器234を停止させるため、低消費電力化を図ることができる。また、節電モードでも、基本層キャリア復調器134、基本層チャネル復号器135、および低精度チャネル等化器234を駆動させると共に、高精度チャネル等化器233、拡張層キャリア復調器136、および拡張層チャネル復号器137を停止させるため、低消費電力化を図ることができる。
【0070】
すなわち、本発明の第2の実施の形態では、基本層、拡張層それぞれにより必要となる等化の精度が違うことに着目し、無線通信端末が、それぞれの階層に応じたチャネル等化器を用意し、切り換えて使用することにより、低消費電力化を図るものである。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明にかかる無線通信端末は、階層符号化処理が施されている階層符号化データを復調する場合、従来のものと比較して低消費電力化を図ることができ、バッテリ駆動の端末においてさらに長時間利用を可能にする効果を有し、直交周波数分割多重方式で通信する無線通信端末などとして幅広く有用である。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る無線通信端末の受信部のブロック図
【図2】本発明の第1の実施の形態に係るOFDM復調部の詳細図
【図3】階層符号化処理を行うときのサブキャリア毎の基本層、拡張層のデータの割り付けの一例を示す図
【図4】本発明の第2の実施の形態に係る無線通信端末の受信部のブロック図
【図5】本発明の第2の実施の形態に係るOFDM復調部の詳細図
【図6】サブキャリアの伝送路特性を推測する処理の説明図
【図7】本発明の第2の実施の形態に係る等化処理の説明図
【図8】従来の無線通信端末の受信部のブロック図
【図9】従来のOFDM復調部のブロック図
【図10】OFDMを用いた通信方式の信号を構成する各サブキャリアを示した図
【図11】FFT出力されたパイロット信号を位相平面(複素平面)上にベクトルとして示した図
【符号の説明】
【0073】
11 アンテナ
12 RFフロントエンド部
13、23、83 OFDM復調部
14 映像・音声復号部
15 表示部
16 スピーカ
17 入力部
18 バッテリ残量測定部
19 システム制御部(制御部)
131 直交検波器
132 FFT部
133 チャネル等化器(等化部)
134 基本層キャリア復調器(基本層データ処理部)
135 基本層チャネル復号器(基本層データ処理部)
136 拡張層キャリア復調器(拡張層データ処理部)
137 拡張層チャネル復号器(拡張層データ処理部)
233 高精度チャネル等化器(高精度等化部)
234 低精度チャネル等化器(低精度等化部)
831 直交検波器
832 FFT部
833 チャネル等化器
836 サブキャリア復調器
837 チャネル復号器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直交周波数分割多重方式で送信されるキャリアのうち基本層のデータまたは拡張層のデータを含むサブキャリアがデータ信号を含んでおり、前記サブキャリアを復調する際に、前記キャリアのパイロット信号に基づいて前記データ信号を補正する等化部と、
前記等化部で補正された前記基本層のデータおよび前記拡張層のデータのうち前記基本層のデータを処理する基本層データ処理部と、
前記等化部で補正された前記基本層のデータおよび前記拡張層のデータのうち前記拡張層のデータを処理する拡張層データ処理部と、
節電モードで前記基本層データ処理部を駆動させると共に前記拡張層データ処理部を停止させ、非節電モードで前記基本層データ処理部および前記拡張層データ処理部を駆動させる制御部とを備えたことを特徴とする無線通信端末。
【請求項2】
前記等化部は、1つのOFDMシンボルの少なくとも1以上のパイロット信号に基づいて前記データ信号を補正する低精度等化部と、
複数のOFDMシンボルの少なくとも1以上のパイロット信号に基づいて前記データ信号を補正する高精度等化部と、を有し、
前記節電モードで、前記制御部は、前記低精度等化部および前記基本層データ処理部を駆動させると共に前記高精度等化部および前記拡張層データ処理部を停止させることを特徴とする無線通信端末。
【請求項3】
前記非節電モードで、前記制御部は、前記高精度等化部、前記基本層データ処理部、および前記拡張層データ処理部を駆動させると共に前記低精度等化部を停止させることを特徴とする無線通信端末。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−4102(P2010−4102A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−158820(P2008−158820)
【出願日】平成20年6月18日(2008.6.18)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】