無線LANシステム
【課題】 同一のネットワークに複数の無線基地局が接続された構成をとる無線LANシステムに最適な無線LANシステムを提供する。
【解決手段】 ネットワークに接続されて前記複数の無線基地局の作動を制御する集中制御装置を備え、無線端末識別情報を含んだ無線端末の接続または切断の通知を他の無線基地局からネットワークを介して取得する無線端末識別情報取得手段と、この無線端末識別情報取得手段が取得した無線端末識別情報に基づいて端末属性毎に各無線基地局がそれぞれ接続する無線端末の数を管理する端末接続数管理手段とを備える。
【解決手段】 ネットワークに接続されて前記複数の無線基地局の作動を制御する集中制御装置を備え、無線端末識別情報を含んだ無線端末の接続または切断の通知を他の無線基地局からネットワークを介して取得する無線端末識別情報取得手段と、この無線端末識別情報取得手段が取得した無線端末識別情報に基づいて端末属性毎に各無線基地局がそれぞれ接続する無線端末の数を管理する端末接続数管理手段とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は無線LANシステムに係り、特に同一ネットワークに複数の無線基地局が接続された構成を取る無線LANシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
近時、無線LANシステムが広く適用されている。この無線LANシステムは、例えばネットワークを介して通信を行う際、有線ケーブルが不要であるという利便性からオフィスや家庭、さらには所謂ホットスポットと呼ばれる場所等にも用いられている。この無線LANシステムは、概略的にはパソコン、PDA等の端末と、これらの端末と無線通信を行い、ネットワーク(例えば有線ネットワーク)とで相互にやりとりされるデータの転送を行うアクセスポイント(以下、APと称することがある)を備えて構成される。
【0003】
また、一台のAPでは、収容しきれない複数の端末がある場合、複数のAPを用いて端末を分散する負荷分散が行われている。
この種の無線LANシステムにおいて、端末とAPとの間で行われる通信は、専ら微弱な電力の電波で、例えば周波数2.4GHz帯や5GHz帯の電波を用いて行われる。この無線LANシステムにおける端末は、APが周期的に送信するビーコンと称する報知信号あるいは端末が送信するプローブ要求と呼ばれる基地局探索信号に対する応答としてAPが送信するプローブ応答の受信レベル情報を用いて、平均受信レベルが最大となるAPを選択して接続し、そのAPを介してサービスを受けていた。
【0004】
しかしながら上述した複数のAPを備える無線LANシステムにおいては、例えばホットスポットや会議室のような限定されたエリアで集中的にトラフィックが発生する場合には、AP間でトラフィックに偏りが生じる場合がある。この場合、トラフィックが集中したAPに接続している端末は伝送速度が遅くなるため、安定した性能が保証できないという問題点があった。
【0005】
この種の問題点を解決するべくなされた「アクセスポイントの状態情報に基づいてアクセスポイントを選択する方法」が知られている(例えば、特許文献1を参照)。この方法はAPがビーコンおよびプローブ応答に接続端末数および処理中のトラフィック量情報を付加して送信する一方、端末はビーコンおよびプローブ応答の受信レベル情報だけでなく、その中に含まれる接続端末数および処理中のトラフィック量情報も参照して最適なAPを選択して接続し、そのAPを介してサービスを受けることができる無線LANシステムである。
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の発明を無線LANに適用したとしても、ビーコンやプローブ応答に付加する接続端末数やトラフィック量の情報および端末側で最適なAPを選択するアルゴリズムは標準化されておらず、またメーカ間で仕様が統一されていないため、異なるメーカのAPと通信端末間では負荷分散機能を利用することができなかった。このような問題点を解決するため「無線LANアクセスポイントの負荷分散方式」が知られている(例えば、特許文献2を参照)。
【0007】
この負荷分散方式によれば接続端末数が増減したAPは、あらかじめ設定したグループに属する他のAPに増減した接続端末数を通知するため各APはグループに属するすべてのAPの接続端末数に関する情報を所有している。したがって接続端末数が少ないAPがある場合には端末からの接続要求を受けてもAPが接続を拒否するように動作する。この特許文献2に記載の負荷分散方式は、端末側には負荷分散のための特別な仕組みが不要である。つまり端末は、ビーコンおよびプローブ応答の受信レベル情報を用いて平均受信レベルが最大となるAPを選択して接続を試みればよい。ちなみに選択したAPよりも負荷が低いAPが存在する場合には、接続が拒否され、次に受信レベルが大きいAPに接続を試みることになる。すなわち、特許文献2に記載の技術を実装したAPを使用すれば、通信端末のメーカに依存することなく負荷分散機能を利用することができる。
【0008】
或いは、上述した問題点を解決する「動的負荷分散機能を備えた無線基地局装置」が知られている(例えば、特許文献3を参照)。この無線基地局装置における各APは、接続中のすべての端末に対する送信トラフィックの総量を監視し、このトラフィックの総量が所定の閾値を超えた場合に負荷が集中していると判断して他のAPに負荷分散要求を通知する。負荷分散要求を受け取ったAPは、あらかじめ保持している自APおよび負荷分散要求の送信元APの位置情報から両者間の距離を算出する。そしてAP間の距離が所定の閾値以下であり、かつAP間の距離が所定の閾値以下となるAPの中で送信トラフィック総量が最小である場合には、負荷分散要求の送信元のAPに対して切断端末を指定して切断要求指示を通知する。
【0009】
これらの特許文献に開示される負荷分散方法は、AP毎の接続端末数あるいは送信トラフィックの総量に基づいて行われている。
ところで、最近では無線LANシステムにおいて、データだけでなく音声のようなリアルタイム性を要求されるアプリケーションも利用されるようになってきている。このような遅延や遅延ゆらぎに敏感なアプリケーションの品質を確保するために、2004年に無線LANにおける優先制御の仕組みがIEEE802.11eにおいて標準化されており今後の普及が見込まれている。
【特許文献1】特開2005−57728号公報
【特許文献2】特開2004−140614号公報
【特許文献3】特開2004−320274号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、前述した優先制御に対応した無線LANシステムにおいては、音声フレームはデータフレームよりも優先的に送信されるため、音声フレームで帯域の大半が占有されるとデータフレームはほとんど通信できなくなるという懸念がある。このため、音声アプリケーションを使用する端末が特定のAPに偏って接続すると、そのAPに接続しているパソコン等のデータアプリケーションを使用する通信端末の伝送速度が遅くなってしまうという問題がある。
【0011】
また、1台のAPに接続している通話中の音声端末の数(以下、同時通話数と称する)が増えるに従って、一般に通話品質は劣化する。このため音声アプリケーションを使用する端末が特定のAPに偏って接続されると、トラフィック輻輳時にそのAPに接続している端末の通話品質は劣化しやすくなるという問題がある。
勿論、上述した特許文献1乃至3に開示されるようにAP毎の接続端末数あるいは送信トラフィックの総量に基づく負荷分散を適用したとしても端末の属性が考慮されておらず、上述の課題を解決することができない。つまりこれらの特許文献に記載の負荷分散方法は、AP毎の接続端末数あるいは送信トラフィックの総量に基づいて行われているに過ぎない。
【0012】
本発明は、上述した課題を解決すべくなされたもので、その目的は、同一のネットワークに複数の無線基地局が接続された構成をとる無線LANシステムに最適な無線LANシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述した目的を達成するため本発明の無線LANシステムは、ネットワークに接続された複数の無線基地局とこの無線基地局にアクセスする複数の無線端末とを有する無線LANシステムであって、特に、
前記ネットワークに接続されて前記複数の無線基地局の作動を制御する集中制御装置を備え、
前記無線端末は、自端末と他端末とを識別する端末識別情報と該無線端末が扱う情報種別を示す端末属性情報をそれぞれ保持し、これらの情報を前記無線基地局に通知する一方、
前記無線基地局は、前記無線端末を接続または切断する際に、該無線端末の上記端末識別情報、端末属性情報または該端末属性情報のそれぞれに対応して定義された無線端末識別情報を前記集中制御装置に通知し、
前記集中制御装置は、上記無線端末識別情報を含んだ前記無線端末の接続または切断の通知を他の上記各無線基地局から前記ネットワークを介して取得した前記無線端末識別情報に基づいて前記端末属性毎に上記各無線基地局がそれぞれ接続する前記無線端末の数を管理することを特徴としている。
【0014】
好ましくは前記無線基地局は、前記集中制御装置から前記端末属性毎の接続可否情報を受け取り、前記集中制御装置から接続許可を受けた前記端末属性については上記端末から出される接続要求を許可する一方、該集中制御装置から接続拒否を通知された属性については端末からの接続要求を拒否することが望ましい。
また、前記集中制御装置は、前記無線端末識別情報取得手段が取得した前記無線端末の接続あるいは切断の通知に基づいて前記端末属性毎に上記各無線基地局における前記無線基地局の負荷の偏りを評価し、負荷が集中している上記無線基地局には該端末属性に対する接続拒否を通知する一方、負荷が集中していない上記無線局には当該端末属性に対する接続許可を通知するものとして構成される。
【0015】
したがって上述の無線LANシステムは、集中制御装置より端末属性毎の接続可否情報を受け取る手段を備えており、接続許可を受けた属性については端末からの要求に応じて接続を行なうが、接続拒否を通知された属性については、端末から要求があっても接続を行なわない。
【発明の効果】
【0016】
本発明の請求項1〜3に記載の無線LANシステムによれば、集中制御装置より端末属性毎の接続可否情報を受け取る手段を備えているので、接続許可を受けた属性については端末からの要求に応じて接続を行なうが、接続拒否を通知された属性については、端末から要求があっても接続を行なわないように動作するので、端末属性を考慮した負荷分散機能を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態に係る無線LANシステムについて添付図面を参照しながら説明する。尚、添付図面は、本発明の無線LANシステムが適用される一実施形態を示すものであって、これらの添付図面によって本発明が限定されるものでない。
図1は、本発明の一実施形態に係る無線LANシステムの全体構成を示す図である。この図において10は、複数の通信装置が接続されるネットワークであり、例えばEthernet(登録商標)等の有線LANである。ネットワーク10には、このネットワーク10に接続されて後述する複数の無線端末12と該ネットワーク10間のフレーム転送を仲介する複数の無線基地局11が接続される。図1においては、無線基地局11−1,11−2および負荷分散のための集中制御装置14がネットワーク10に接続されている。また、無線端末12−1〜12−3は、無線LANにより、無線基地局11−1,11−2に接続されている。
【0018】
図1において、無線基地局11−3は、無線基地局11−2に無線伝送路を介して接続されている。無線端末12−4は、このような無線基地局11−3に接続されている端末である。
一方、ネットワーク10は複数の電話回線を収容して公衆網18に接続する構内交換機15にも接続されている。すなわち、無線端末12−1〜12−4は、無線端末同士だけでなく、構内交換機15を仲立ちとして公衆網18との通話ができるようになっている。尚、この図では、集中制御装置14と構内交換機15を分離した装置として図示しているが、一体化して実現すること、すなわち、構内交換機15の内部に集中制御装置14の機能を取り込んで構成してもよい。
【0019】
図2は、本発明の別の実施形態に係る無線LANシステムの全体構成を示す図である。図2に示した無線LANシステムにおける図1の無線LANシステムとの違いは、構内交換機15の代わりに呼制御サーバ17とルータ16を設けた点、および公衆網18の代わりにインターネット網19に接続している点にある。尚、図2においては、集中制御装置14と呼制御サーバ17を分離した装置として図示しているが、一体化して実現すること、すなわち、呼制御サーバ17の内部に集中制御装置14の機能を取り込んで構成しても勿論かまわない。
【0020】
図22は、本発明の無線LANシステムにおける集中制御装置14のブロック構成である。この集中制御装置14は、ネットワーク10を介して無線基地局11との通信を行うための有線通信インタフェース部301、無線基地局11からの負荷分散制御受信フレーム320を解析して処理するための負荷分散制御フレーム解析部302、負荷分散制御フレーム解析部302から出力される負荷分散制御情報322を受けて、負荷分散制御のための状態管理テーブルの更新および応答が必要な負荷分散制御用フレームに対する負荷分散応答フレーム321を生成する負荷分散制御部303、負荷分散制御情報322が接続要求あるいは切断通知のように無線端末接続数管理テーブルの作成に必要な情報である場合に負荷分散制御部303から出力される無線端末接続数管理テーブル作成用負荷分散制御情報323に基づいて無線端末接続数管理テーブル305を作成する無線端末接続数管理テーブル作成部304および無線端末接続数管理テーブル305から構成される。
【0021】
無線端末からの信号の各無線基地局での受信レベルまで考慮して負荷分散を行う場合の集中制御装置14は、さらに基地局受信レベルテーブル作成部309、基地局受信レベルテーブル310および候補基地局受信レベル範囲テーブル311を含む。
システム外部からの干渉の影響まで考慮して負荷分散を行う場合の集中制御装置間14は、さらに干渉電力管理テーブル作成部306、干渉電力管理テーブル307および干渉電力接続数換算テーブル308を含む。
【0022】
図3は、本発明の一実施形態に係る無線LANシステムにおける無線基地局11のブロック構成図である。無線基地局11は、無線信号を送受信するためのアンテナ100、無線信号の送受信のための無線通信インタフェース部101、ネットワーク10への送受信のための有線通信インタフェース部102、無線通信および有線通信のブリッジ動作を行う通信制御部103、無線管理フレームの送受信および自無線基地局に接続している無線端末の管理を行う無線管理部104および負荷分散のために集中制御装置14と通信を行う負荷分散制御部105から構成される。
【0023】
次に、無線基地局11および集中制御装置14の動作について、図3および図4を用いて詳細に説明する。
無線LAN経由で受信した無線受信フレーム110には、通信フレームおよび無線管理フレームの両方が含まれる。ここで、無線管理フレームとは、無線接続を確立および維持するためのものであり、無線端末12および無線基地局11間で伝送される。一方、通信フレームは、上位アプリケーション層で生成されたものであり、無線端末12およびネットワーク10間で伝送される。これら両方の無線受信フレーム110は、通信制御部103に与えられる。
【0024】
これらのうち、通信フレームは、宛先端末が自無線基地局に接続している無線端末でない場合には、有線送信フレーム113として有線通信インタフェース部102に与えられ、さらにネットワーク10に伝送される。宛先端末が自無線基地局に接続している無線端末の場合には、無線送信フレーム111として無線通信インタフェース部101に与えられ、アンテナ100から送信される。またネットワーク10経由で受信した有線受信フレーム112は、通信制御部103を経た後、無線送信フレーム111として無線通信インタフェース部101に与えられてアンテナ100から送信される。
【0025】
一方、無線LAN経由で受信した無線受信フレーム110の中の無線管理フレームは、通信制御部103を経て、無線管理部104に与えられる。具体的にこの無線管理部104の内部ブロック構成を図4に示す。
通信制御部103から無線管理部104に送られる無線管理フレーム114は、無線管理フレーム解析部132に与えられる。この無線管理フレーム解析部132によって無線管理フレームの内容が解析され、無線管理フレーム情報140が無線管理制御部133へ与えられる。無線管理制御部133は、受け取った無線管理フレーム情報140によって無線端末情報が変化した場合、無線端末情報記憶部135の当該無線端末に関する無線端末情報141を更新する。
【0026】
この無線端末情報記憶部135が扱う端末管理テーブルの一例を図5に示す。この図において、無線端末識別子は、MAC(media access control)アドレス等の識別子であってシステム内で固有の無線端末IDである。また、無線接続IDは、各無線基地局11が接続する無線端末に対して一意的に割り当てる識別子である。
端末属性は、その端末が主として使用するアプリケーションに応じて決定される。図5の例では、音声端末およびデータ端末の端末属性が示されている。ここで、音声端末とは、携帯電話のように提供する主サービスが通話であるものである。また、データ端末の例としては、パソコンがある。
【0027】
無線管理制御部133は、必要に応じて受け取った無線管理フレームに対する応答フレームを作成する。応答フレームの例としては、無線接続要求に対する無線接続応答、認証要求に対する認証応答などがある。この無線管理応答フレーム115は、通信制御部103、無線通信インタフェース部101を経て、アンテナ100から無線伝送路上に送信される。
【0028】
また、受け取った無線管理フレームが、無線端末の接続あるいは切断であった場合には、接続・切断監視情報142に基づき、接続・切断監視部134が接続・切断情報118を生成して負荷分散制御部105に与える。次いで負荷分散制御部105は、接続・切断通知のための負荷分散制御送信フレーム123を生成し、有線通信インタフェース部102、ネットワーク10を経て、集中制御装置14に通知する。
【0029】
この負荷分散制御部105と集中制御装置14間の通信のための独自コマンドのフレームフォーマットの一例を図6に示す。図6に示した独自コマンドは、TCP/IPのペイロード上で定義している。また、接続要求および切断要求のメッセージの一例を図7に示す。接続要求および切断要求のメッセージには、無線端末識別子、無線基地局識別子および無線端末属性が含まれる。無線端末識別子は、無線LANシステムの中における無線端末の固有識別子であり、例えば無線端末のMACアドレス等を用いることができる。この無線基地局識別子は、無線LANシステムの中における無線基地局の固有識別子であり、例えば無線基地局のBSS−ID(basic service set identity)を用いてもよい。また無線端末属性は、その無線端末の主要アプリケーションが属するトラフィックカテゴリであり、音声、ビデオ、ベストエフォート等がある。例えば、携帯型電話端末の場合の無線端末属性は、音声となる。
【0030】
一方、集中制御装置14は、受け取った接続・切断通知のための負荷分散制御フレームに基づいて、複数の無線基地局11がそれぞれ接続している無線端末数を無線端末属性ごとに管理する。
以下では、接続・切断通知のための負荷分散制御フレームを受け取ったときの集中制御装置14の動作について、再度、図3を用いて説明する。
【0031】
集中制御装置14が負荷分散制御フレームを受信すると、有線通信インタフェース部301からこれに対応した負荷分散制御受信フレーム320が出力される。負荷分散制御受信フレーム320は、負荷分散制御フレーム解析部302に与えられ、負荷分散制御情報322が出力される。
負荷分散制御部303は、接続・切断通知を含んだ負荷分散制御情報322を受け取ると、無線端末接続数管理テーブル作成部304に対して、無線端末接続数管理テーブル作成用負荷分散制御情報323を出力する。無線端末接続数管理テーブル作成部304は、無線端末接続数管理テーブル作成用負荷分散制御情報323に基づいて、無線基地局ごと、無線端末属性ごとの接続数を求め、無線端末接続数管理テーブル305を作成する。
【0032】
このような集中制御装置14の無線端末接続数管理テーブルの一例を図8に示す。管理テーブル作成の具体的な方法としては、集中制御装置14が接続メッセージを受け取った場合には、対応する接続数を1だけ増加し、切断メッセージを受け取った場合には、対応する接続数を1だけ減少する。接続・切断通知のための負荷分散制御送信フレーム123では、無線端末識別子も一緒に通知されるので、単に接続数だけでなく無線端末識別子と合わせて管理してもよい。この場合、接続メッセージを受け取ったときは、同一の無線端末識別子が管理テーブル上に既に存在していないかどうかを確認し、万一存在する場合には削除することができる。これは、圏外となった無線端末12が、別の無線基地局11に接続した場合、二重登録されることを防止する上で有効である。
【0033】
図8に例示した音声端末については、無線基地局11−1に比べて無線基地局11−2の接続数の方が少ないので、新たに音声端末からの接続メッセージがあった場合、無線基地局11−2に優先的に接続することが望ましい。また、パソコンのようなベストエフォート端末については、無線基地局11−1の接続数が少ないので、この無線基地局11−1に接続することが望ましい。
【0034】
一方、ビデオ端末については、接続数が二つの無線基地局11−1,11−2で同じであるので、どちらの無線基地局に接続してもよい。すなわち、接続数が最小となる無線基地局からの接続メッセージに対しては、接続許可を与え、それ以外の無線基地局からの接続メッセージに対しては接続禁止とする。そして接続数が最小となる無線基地局が複数ある場合には、それらすべてに対して接続許可を与える。
【0035】
接続許可あるいは接続禁止のメッセージをもつ応答フレームは、負荷分散制御部303において生成され、有線通信インタフェース部301においてネットワーク10に送出される。
集中制御装置14から送出される応答フレームは、ネットワーク10を経由して、無線基地局11で受け取られる。
【0036】
以下では、集中制御装置14からの応答フレームを受けたときの無線基地局11の動作について、再度、図4を用いて説明する。
集中制御装置14からの応答信号は、有線通信インタフェース部102を経て、負荷分散制御受信信号124として負荷分散制御部105に与えられる。負荷分散制御部105は、この応答を解析し、接続許可・禁止情報119を無線管理部104に通知する。無線管理部104の中の無線管理制御部133は、この接続許可・禁止情報119に基づき、受け取った無線管理フレームに対する応答を決定し、応答信号である無線管理応答フレーム115を通信制御部103に与える。この応答信号は、無線通信インタフェース部101、アンテナ100を経て、無線伝送路上に送信される。
【0037】
集中制御装置14からの応答フレームである応答メッセージの一例を図9に示す。応答メッセージは接続メッセージに対するものであり、切断メッセージに対する応答メッセージはない。
以上の説明では、無線基地局11が無線接続のための無線管理フレームを受け取った場合に、集中制御装置14に対して接続許可を求め、接続許可を得てから無線接続を行うように動作しているが、集中制御装置14が無線端末接続数管理テーブルに基づき、各無線基地局11に対して、あらかじめ無線端末属性ごとの接続許可/接続禁止を通知する方式を採ることもできる。
【0038】
この場合には、無線基地局11の負荷分散制御部105は、接続・切断情報118を受け取ると、接続通知・切断通知のための負荷分散制御送信フレーム123を生成し、有線通信インタフェース部102、ネットワーク10を経て、集中制御装置14に通知する。集中制御装置14は、接続通知・切断通知のための負荷分散制御フレームの情報に基づいて、無線端末接続数管理テーブルを更新し、最新の無線端末接続数管理テーブルに基づき、各無線基地局11に対して、無線端末属性ごとの接続許可/接続禁止を通知する。
【0039】
集中制御装置14から送出される通知フレームは、ネットワーク10、有線通信インタフェース部102を経て、負荷分散制御部105に与えられる。負荷分散制御部105は、この通知に基づき無線端末属性ごとの接続許可/接続禁止の情報である接続イネーブル情報119を無線管理部104に通知する。無線管理部104の中の無線管理制御部133は、この接続イネーブル情報119を記憶しておき、無線接続のための無線管理フレーム114を受け取った場合には、この情報に基づいて無線接続の許可あるいは禁止を決定し、これに対応した無線管理フレームを生成して通信制御部103に与える。この無線管理フレームは、無線通信インタフェース部101、アンテナ100を経て、無線伝送路上に送信される。この接続イネーブル情報の通知メッセージの一例を図10に示す。イネーブル情報は、各無線端末属性に対応したイネーブルビット(1ビット)からなる。無線接続が禁止の場合には、無線基地局探索要求に対して応答信号を送信しないことにより、無線接続を拒否することもできる。
【0040】
次に、図18を用いて、本発明の無線LANシステムにおける無線端末12のブロック構成について説明する。無線端末12は、無線信号を送受信するためのアンテナ200、無線信号の送受信のための無線通信インタフェース部201、無線管理フレームと通信フレームを無線管理部204および上位のアプリケーション部206に分配する通信制御部203、無線管理フレームの送受信を行う無線管理部204から構成される。
【0041】
無線LAN経由で受信した無線受信フレーム210には、通信フレームおよび無線管理フレームの両方が含まれる。無線受信フレーム210は、通信制御部203を経たのち、アプリケーションフレーム211として上位のアプリケーション部206に転送される。一方、無線LAN経由で受信した無線受信フレーム210の中の無線管理フレームは、通信制御部203を経て、無線管理部204に与えられる。無線管理部204の内部ブロック構成を図19に示す。
【0042】
通信制御部203から無線管理部204に送られる無線管理フレーム212は、無線管理フレーム解析部232に与えられる。ここにおいて、無線管理フレームの内容が解析され、無線管理フレーム情報240が無線管理制御部233へ与えられる。また、無線端末情報記憶部235には、無線端末識別子、無線端末属性、無線接続ID、端末状態などが格納されている。
【0043】
無線端末12は、無線基地局11との無線接続の確立時に、無線管理制御部233が無線管理フレームを生成する。このとき、無線端末情報記憶部235の無線端末識別子および無線端末属性の情報である無線端末情報241を無線基地局11に登録する。この情報は、無線基地局11の無線端末情報記憶部135の端末管理テーブルに記憶される。
ちなみに無線接続時に、無線管理フレームを用いて、無線端末識別子を無線基地局に登録することは、無線LAN標準仕様の範囲内で一般に行われている。一方、無線端末属性という概念は無線LANの標準仕様ではなく、これを無線接続時に無線基地局に登録することについては規定されていない。
【0044】
ところで無線LANの標準仕様によれば、ネットワーク識別子を無線接続時に登録するよう規定されている。本来、無線端末は、無線接続を希望するネットワークのネットワーク識別子を無線接続時に登録しなければならないが、無線LANの標準仕様では無線基地局が複数のネットワーク識別子を使用することを許容している。このため例えば、無線端末属性ごとに異なるネットワーク識別子を使用するものとし、無線端末はその端末属性に対応したネットワーク識別子を用いて登録を行えば、無線LANの標準仕様の範囲内で、すなわち市販の無線端末を使用した場合においても、無線端末属性情報を無線基地局に登録することができる。
【0045】
次に、図20および図21を用いて、本発明の無線LANシステムにおける無線端末12の無線接続の動作について説明する。図20において無線端末12は、最初に無線接続のために無線基地局探索信号をブロードキャストする。この無線基地局探索信号を、無線基地局11−1、無線基地局11−2および無線基地局11−3がそれぞれ受信し、基地局探索応答信号を無線端末12にそれぞれ送信している。図20の例では、この基地局探索応答信号の無線端末12における受信レベルは、無線基地局11−1が最大であり、次が無線基地局11−2からの応答、最も受信レベルが低いのが無線基地局11−3からの応答となっている。このため、無線端末12は、基地局探索応答信号の受信レベルが最も高かった無線基地局11−1に対して、無線接続要求のための無線管理フレームを送信する。この無線管理フレームの中には、無線端末12の無線端末識別子および無線端末属性の情報が含まれている。この無線管理フレームを受信した無線基地局11−1は、集中制御装置14に対して、接続要求のための負荷分散制御送信フレーム123を送信する。この接続要求のための負荷分散制御送信フレーム123には、無線接続を要求している無線端末12の無線端末識別子および無線端末属性の情報が含まれる。
【0046】
一方、集中制御装置14は、無線端末接続数管理テーブルに基づいて、要求された接続要求を許可あるいは禁止の判断を行う。図20は、集中制御装置14より接続許可の応答フレームが無線基地局11−1に送信される伝送シーケンスを示している。
無線基地局11−1は、接続許可の応答フレームを受信すると、該無線端末12に対して、接続許可のための無線管理フレームを生成して送信する。無線端末12が接続許可の無線管理フレームを受信すると無線端末12と無線基地局11−1間の無線接続が確立する。
【0047】
図21は、無線基地局11−1が集中制御装置14に対して、接続要求のための負荷分散制御送信フレーム123を送信するところまでが図20と同一である。しかし図21には、集中制御装置14が無線端末接続数管理テーブルに基づいて、接続禁止の応答フレームを無線基地局11−1に送信することが示されている。この場合、無線基地局11−1は、接続禁止の応答フレームを受信すると、該無線端末12に対して接続拒否のための無線管理フレームを生成して送信する。無線端末12が接続拒否の無線管理フレームを受信すると、無線基地局探索において2番目に受信レベルの大きかった無線基地局11−2を選択して、再度、無線基地局探索信号を送信する。これに対し、無線基地局11−2は無線端末12に向けて基地局探索応答信号を送信する。
【0048】
無線端末12は、無線基地局11−2より基地局探索応答信号を受信すると、無線基地局11−2に対して、無線接続要求のための無線管理フレームを送信する。この無線管理フレームの中にも、無線端末12の無線端末識別子および無線端末属性の情報が含まれている。
一方、無線管理フレームを受信した無線基地局11−2は、集中制御装置14に対して、接続要求のための負荷分散制御フレームを送信する。この接続要求のための負荷分散制御フレームにも、無線接続を要求している無線端末12の無線端末識別子および無線端末属性の情報が含まれている。
【0049】
図21の例では、集中制御装置14は、無線基地局11−2に対して接続許可の応答を送っており、無線基地局11−2はこれを受けて、無線端末に接続許可の無線管理フレームを送信している。
ちなみに複数の無線端末12は、無線端末情報記憶部235によってそれぞれ自端末と他端末とを識別する端末識別情報および上記無線端末12が扱う情報種別を示す端末属性情報をそれぞれ保持し、これらの情報を無線基地局11に通知する無線管理部204を備える一方、無線基地局11は、無線端末12を接続または切断する際に、無線端末12の端末識別情報、端末属性情報または該端末属性情報のそれぞれに対応して定義された無線端末識別情報を集中制御装置14に通知する無線管理部104を備えて構成されている。
【0050】
また集中制御装置14は、無線端末識別情報を含んだ無線端末12の接続または切断の通知を他の各無線基地局11からネットワーク10を介して取得した無線端末識別情報に基づいて端末属性毎に各無線基地局11がそれぞれ接続する無線端末12の数を管理する端末接続数管理手段を備えて構成されているので、集中制御装置14が無線基地局11の負荷状況を判定して適切な負荷分散制御をすることができる。
【0051】
また無線基地局11は、無線管理制御部133によって集中制御装置14から前記端末属性毎の接続可否情報を受け取る一方、集中制御装置14から接続許可を受けた端末属性については無線端末12から出される接続要求を許可する一方、集中制御装置14から接続拒否を通知された属性については無線端末12からの接続要求を拒否しているので無線基地局11の負荷状況に応じた最適な負荷分散制御ができる。
【0052】
尚、集中制御装置14は、取得した無線端末12の接続あるいは切断の通知に基づいて端末属性毎に各無線基地局11における無線基地局11の負荷の偏りを評価し、負荷が集中している無線基地局11には端末属性に対する接続拒否を通知する一方、負荷が集中していない無線基地局11には端末属性に対する接続許可を通知しているので、無線基地局11の負荷状況に応じた最適な負荷分散制御が可能となり実用上多大なる効果を奏する。
【0053】
尚、本発明の無線LANシステムは、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加えてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の一実施形態に係る無線LANシステムの全体構成を示す図。
【図2】本発明の別の実施形態に係る無線LANシステムの全体構成を示す図。
【図3】本発明の一実施形態に係る無線LANシステムにおける無線基地局のブロック構成図。
【図4】図3に示す無線管理部の内部ブロック構成を示す図。
【図5】図3に示す無線管理部の無線端末情報記憶部における端末管理テーブルの一例を示す図。
【図6】無線基地局の負荷分散制御部と集中制御装置間の通信におけるフレームフォーマットの一例を示す図。
【図7】無線基地局の負荷分散制御部と集中制御装置間の通信における接続および切断のメッセージの一例を示す図。
【図8】集中制御装置における無線端末接続数管理テーブルの一例を示す図。
【図9】無線基地局の負荷分散制御部と集中制御装置間の通信における応答メッセージの一例を示す図。
【図10】無線基地局の負荷分散制御部と集中制御装置間の通信における接続イネーブル情報の通知メッセージの一例を示す図。
【図11】無線基地局の負荷分散制御部と集中制御装置間の通信における干渉電力通知メッセージの一例を示す図。
【図12】集中制御装置における干渉電力管理テーブルの一例を示す図。
【図13】干渉電力を接続数に換算するための変換テーブルの一例を示す図。
【図14】集中制御装置における干渉の影響を含めた無線端末接続数管理テーブルの一例を示す図。
【図15】無線基地局の負荷分散制御部と集中制御装置間の通信における基地局探索受信レベル通知メッセージの一例を示す図。
【図16】集中制御装置における無線端末ごとの基地局受信レベルのテーブルの一例を示す図。
【図17】平均受信レベル最大値と平均受信レベル許容範囲との関係の一例を示す図。
【図18】無線端末の概略構成を示すブロック図。
【図19】図18に示す無線端末における無線管理部の内部ブロック構成を示す図。
【図20】無線端末登録動作を示すシーケンス図(登録許可の場合)。
【図21】無線端末登録動作を示すシーケンス図(登録拒否の場合)。
【図22】本発明の一実施形態に係る無線LANシステムにおける集中制御装置のブロック構成図。
【符号の説明】
【0055】
10 ネットワーク
11 無線基地局
12 無線端末
14 集中制御装置
15 構内交換機
16 ルータ
17 呼制御サーバ
18 公衆網
【技術分野】
【0001】
本発明は無線LANシステムに係り、特に同一ネットワークに複数の無線基地局が接続された構成を取る無線LANシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
近時、無線LANシステムが広く適用されている。この無線LANシステムは、例えばネットワークを介して通信を行う際、有線ケーブルが不要であるという利便性からオフィスや家庭、さらには所謂ホットスポットと呼ばれる場所等にも用いられている。この無線LANシステムは、概略的にはパソコン、PDA等の端末と、これらの端末と無線通信を行い、ネットワーク(例えば有線ネットワーク)とで相互にやりとりされるデータの転送を行うアクセスポイント(以下、APと称することがある)を備えて構成される。
【0003】
また、一台のAPでは、収容しきれない複数の端末がある場合、複数のAPを用いて端末を分散する負荷分散が行われている。
この種の無線LANシステムにおいて、端末とAPとの間で行われる通信は、専ら微弱な電力の電波で、例えば周波数2.4GHz帯や5GHz帯の電波を用いて行われる。この無線LANシステムにおける端末は、APが周期的に送信するビーコンと称する報知信号あるいは端末が送信するプローブ要求と呼ばれる基地局探索信号に対する応答としてAPが送信するプローブ応答の受信レベル情報を用いて、平均受信レベルが最大となるAPを選択して接続し、そのAPを介してサービスを受けていた。
【0004】
しかしながら上述した複数のAPを備える無線LANシステムにおいては、例えばホットスポットや会議室のような限定されたエリアで集中的にトラフィックが発生する場合には、AP間でトラフィックに偏りが生じる場合がある。この場合、トラフィックが集中したAPに接続している端末は伝送速度が遅くなるため、安定した性能が保証できないという問題点があった。
【0005】
この種の問題点を解決するべくなされた「アクセスポイントの状態情報に基づいてアクセスポイントを選択する方法」が知られている(例えば、特許文献1を参照)。この方法はAPがビーコンおよびプローブ応答に接続端末数および処理中のトラフィック量情報を付加して送信する一方、端末はビーコンおよびプローブ応答の受信レベル情報だけでなく、その中に含まれる接続端末数および処理中のトラフィック量情報も参照して最適なAPを選択して接続し、そのAPを介してサービスを受けることができる無線LANシステムである。
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の発明を無線LANに適用したとしても、ビーコンやプローブ応答に付加する接続端末数やトラフィック量の情報および端末側で最適なAPを選択するアルゴリズムは標準化されておらず、またメーカ間で仕様が統一されていないため、異なるメーカのAPと通信端末間では負荷分散機能を利用することができなかった。このような問題点を解決するため「無線LANアクセスポイントの負荷分散方式」が知られている(例えば、特許文献2を参照)。
【0007】
この負荷分散方式によれば接続端末数が増減したAPは、あらかじめ設定したグループに属する他のAPに増減した接続端末数を通知するため各APはグループに属するすべてのAPの接続端末数に関する情報を所有している。したがって接続端末数が少ないAPがある場合には端末からの接続要求を受けてもAPが接続を拒否するように動作する。この特許文献2に記載の負荷分散方式は、端末側には負荷分散のための特別な仕組みが不要である。つまり端末は、ビーコンおよびプローブ応答の受信レベル情報を用いて平均受信レベルが最大となるAPを選択して接続を試みればよい。ちなみに選択したAPよりも負荷が低いAPが存在する場合には、接続が拒否され、次に受信レベルが大きいAPに接続を試みることになる。すなわち、特許文献2に記載の技術を実装したAPを使用すれば、通信端末のメーカに依存することなく負荷分散機能を利用することができる。
【0008】
或いは、上述した問題点を解決する「動的負荷分散機能を備えた無線基地局装置」が知られている(例えば、特許文献3を参照)。この無線基地局装置における各APは、接続中のすべての端末に対する送信トラフィックの総量を監視し、このトラフィックの総量が所定の閾値を超えた場合に負荷が集中していると判断して他のAPに負荷分散要求を通知する。負荷分散要求を受け取ったAPは、あらかじめ保持している自APおよび負荷分散要求の送信元APの位置情報から両者間の距離を算出する。そしてAP間の距離が所定の閾値以下であり、かつAP間の距離が所定の閾値以下となるAPの中で送信トラフィック総量が最小である場合には、負荷分散要求の送信元のAPに対して切断端末を指定して切断要求指示を通知する。
【0009】
これらの特許文献に開示される負荷分散方法は、AP毎の接続端末数あるいは送信トラフィックの総量に基づいて行われている。
ところで、最近では無線LANシステムにおいて、データだけでなく音声のようなリアルタイム性を要求されるアプリケーションも利用されるようになってきている。このような遅延や遅延ゆらぎに敏感なアプリケーションの品質を確保するために、2004年に無線LANにおける優先制御の仕組みがIEEE802.11eにおいて標準化されており今後の普及が見込まれている。
【特許文献1】特開2005−57728号公報
【特許文献2】特開2004−140614号公報
【特許文献3】特開2004−320274号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、前述した優先制御に対応した無線LANシステムにおいては、音声フレームはデータフレームよりも優先的に送信されるため、音声フレームで帯域の大半が占有されるとデータフレームはほとんど通信できなくなるという懸念がある。このため、音声アプリケーションを使用する端末が特定のAPに偏って接続すると、そのAPに接続しているパソコン等のデータアプリケーションを使用する通信端末の伝送速度が遅くなってしまうという問題がある。
【0011】
また、1台のAPに接続している通話中の音声端末の数(以下、同時通話数と称する)が増えるに従って、一般に通話品質は劣化する。このため音声アプリケーションを使用する端末が特定のAPに偏って接続されると、トラフィック輻輳時にそのAPに接続している端末の通話品質は劣化しやすくなるという問題がある。
勿論、上述した特許文献1乃至3に開示されるようにAP毎の接続端末数あるいは送信トラフィックの総量に基づく負荷分散を適用したとしても端末の属性が考慮されておらず、上述の課題を解決することができない。つまりこれらの特許文献に記載の負荷分散方法は、AP毎の接続端末数あるいは送信トラフィックの総量に基づいて行われているに過ぎない。
【0012】
本発明は、上述した課題を解決すべくなされたもので、その目的は、同一のネットワークに複数の無線基地局が接続された構成をとる無線LANシステムに最適な無線LANシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述した目的を達成するため本発明の無線LANシステムは、ネットワークに接続された複数の無線基地局とこの無線基地局にアクセスする複数の無線端末とを有する無線LANシステムであって、特に、
前記ネットワークに接続されて前記複数の無線基地局の作動を制御する集中制御装置を備え、
前記無線端末は、自端末と他端末とを識別する端末識別情報と該無線端末が扱う情報種別を示す端末属性情報をそれぞれ保持し、これらの情報を前記無線基地局に通知する一方、
前記無線基地局は、前記無線端末を接続または切断する際に、該無線端末の上記端末識別情報、端末属性情報または該端末属性情報のそれぞれに対応して定義された無線端末識別情報を前記集中制御装置に通知し、
前記集中制御装置は、上記無線端末識別情報を含んだ前記無線端末の接続または切断の通知を他の上記各無線基地局から前記ネットワークを介して取得した前記無線端末識別情報に基づいて前記端末属性毎に上記各無線基地局がそれぞれ接続する前記無線端末の数を管理することを特徴としている。
【0014】
好ましくは前記無線基地局は、前記集中制御装置から前記端末属性毎の接続可否情報を受け取り、前記集中制御装置から接続許可を受けた前記端末属性については上記端末から出される接続要求を許可する一方、該集中制御装置から接続拒否を通知された属性については端末からの接続要求を拒否することが望ましい。
また、前記集中制御装置は、前記無線端末識別情報取得手段が取得した前記無線端末の接続あるいは切断の通知に基づいて前記端末属性毎に上記各無線基地局における前記無線基地局の負荷の偏りを評価し、負荷が集中している上記無線基地局には該端末属性に対する接続拒否を通知する一方、負荷が集中していない上記無線局には当該端末属性に対する接続許可を通知するものとして構成される。
【0015】
したがって上述の無線LANシステムは、集中制御装置より端末属性毎の接続可否情報を受け取る手段を備えており、接続許可を受けた属性については端末からの要求に応じて接続を行なうが、接続拒否を通知された属性については、端末から要求があっても接続を行なわない。
【発明の効果】
【0016】
本発明の請求項1〜3に記載の無線LANシステムによれば、集中制御装置より端末属性毎の接続可否情報を受け取る手段を備えているので、接続許可を受けた属性については端末からの要求に応じて接続を行なうが、接続拒否を通知された属性については、端末から要求があっても接続を行なわないように動作するので、端末属性を考慮した負荷分散機能を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態に係る無線LANシステムについて添付図面を参照しながら説明する。尚、添付図面は、本発明の無線LANシステムが適用される一実施形態を示すものであって、これらの添付図面によって本発明が限定されるものでない。
図1は、本発明の一実施形態に係る無線LANシステムの全体構成を示す図である。この図において10は、複数の通信装置が接続されるネットワークであり、例えばEthernet(登録商標)等の有線LANである。ネットワーク10には、このネットワーク10に接続されて後述する複数の無線端末12と該ネットワーク10間のフレーム転送を仲介する複数の無線基地局11が接続される。図1においては、無線基地局11−1,11−2および負荷分散のための集中制御装置14がネットワーク10に接続されている。また、無線端末12−1〜12−3は、無線LANにより、無線基地局11−1,11−2に接続されている。
【0018】
図1において、無線基地局11−3は、無線基地局11−2に無線伝送路を介して接続されている。無線端末12−4は、このような無線基地局11−3に接続されている端末である。
一方、ネットワーク10は複数の電話回線を収容して公衆網18に接続する構内交換機15にも接続されている。すなわち、無線端末12−1〜12−4は、無線端末同士だけでなく、構内交換機15を仲立ちとして公衆網18との通話ができるようになっている。尚、この図では、集中制御装置14と構内交換機15を分離した装置として図示しているが、一体化して実現すること、すなわち、構内交換機15の内部に集中制御装置14の機能を取り込んで構成してもよい。
【0019】
図2は、本発明の別の実施形態に係る無線LANシステムの全体構成を示す図である。図2に示した無線LANシステムにおける図1の無線LANシステムとの違いは、構内交換機15の代わりに呼制御サーバ17とルータ16を設けた点、および公衆網18の代わりにインターネット網19に接続している点にある。尚、図2においては、集中制御装置14と呼制御サーバ17を分離した装置として図示しているが、一体化して実現すること、すなわち、呼制御サーバ17の内部に集中制御装置14の機能を取り込んで構成しても勿論かまわない。
【0020】
図22は、本発明の無線LANシステムにおける集中制御装置14のブロック構成である。この集中制御装置14は、ネットワーク10を介して無線基地局11との通信を行うための有線通信インタフェース部301、無線基地局11からの負荷分散制御受信フレーム320を解析して処理するための負荷分散制御フレーム解析部302、負荷分散制御フレーム解析部302から出力される負荷分散制御情報322を受けて、負荷分散制御のための状態管理テーブルの更新および応答が必要な負荷分散制御用フレームに対する負荷分散応答フレーム321を生成する負荷分散制御部303、負荷分散制御情報322が接続要求あるいは切断通知のように無線端末接続数管理テーブルの作成に必要な情報である場合に負荷分散制御部303から出力される無線端末接続数管理テーブル作成用負荷分散制御情報323に基づいて無線端末接続数管理テーブル305を作成する無線端末接続数管理テーブル作成部304および無線端末接続数管理テーブル305から構成される。
【0021】
無線端末からの信号の各無線基地局での受信レベルまで考慮して負荷分散を行う場合の集中制御装置14は、さらに基地局受信レベルテーブル作成部309、基地局受信レベルテーブル310および候補基地局受信レベル範囲テーブル311を含む。
システム外部からの干渉の影響まで考慮して負荷分散を行う場合の集中制御装置間14は、さらに干渉電力管理テーブル作成部306、干渉電力管理テーブル307および干渉電力接続数換算テーブル308を含む。
【0022】
図3は、本発明の一実施形態に係る無線LANシステムにおける無線基地局11のブロック構成図である。無線基地局11は、無線信号を送受信するためのアンテナ100、無線信号の送受信のための無線通信インタフェース部101、ネットワーク10への送受信のための有線通信インタフェース部102、無線通信および有線通信のブリッジ動作を行う通信制御部103、無線管理フレームの送受信および自無線基地局に接続している無線端末の管理を行う無線管理部104および負荷分散のために集中制御装置14と通信を行う負荷分散制御部105から構成される。
【0023】
次に、無線基地局11および集中制御装置14の動作について、図3および図4を用いて詳細に説明する。
無線LAN経由で受信した無線受信フレーム110には、通信フレームおよび無線管理フレームの両方が含まれる。ここで、無線管理フレームとは、無線接続を確立および維持するためのものであり、無線端末12および無線基地局11間で伝送される。一方、通信フレームは、上位アプリケーション層で生成されたものであり、無線端末12およびネットワーク10間で伝送される。これら両方の無線受信フレーム110は、通信制御部103に与えられる。
【0024】
これらのうち、通信フレームは、宛先端末が自無線基地局に接続している無線端末でない場合には、有線送信フレーム113として有線通信インタフェース部102に与えられ、さらにネットワーク10に伝送される。宛先端末が自無線基地局に接続している無線端末の場合には、無線送信フレーム111として無線通信インタフェース部101に与えられ、アンテナ100から送信される。またネットワーク10経由で受信した有線受信フレーム112は、通信制御部103を経た後、無線送信フレーム111として無線通信インタフェース部101に与えられてアンテナ100から送信される。
【0025】
一方、無線LAN経由で受信した無線受信フレーム110の中の無線管理フレームは、通信制御部103を経て、無線管理部104に与えられる。具体的にこの無線管理部104の内部ブロック構成を図4に示す。
通信制御部103から無線管理部104に送られる無線管理フレーム114は、無線管理フレーム解析部132に与えられる。この無線管理フレーム解析部132によって無線管理フレームの内容が解析され、無線管理フレーム情報140が無線管理制御部133へ与えられる。無線管理制御部133は、受け取った無線管理フレーム情報140によって無線端末情報が変化した場合、無線端末情報記憶部135の当該無線端末に関する無線端末情報141を更新する。
【0026】
この無線端末情報記憶部135が扱う端末管理テーブルの一例を図5に示す。この図において、無線端末識別子は、MAC(media access control)アドレス等の識別子であってシステム内で固有の無線端末IDである。また、無線接続IDは、各無線基地局11が接続する無線端末に対して一意的に割り当てる識別子である。
端末属性は、その端末が主として使用するアプリケーションに応じて決定される。図5の例では、音声端末およびデータ端末の端末属性が示されている。ここで、音声端末とは、携帯電話のように提供する主サービスが通話であるものである。また、データ端末の例としては、パソコンがある。
【0027】
無線管理制御部133は、必要に応じて受け取った無線管理フレームに対する応答フレームを作成する。応答フレームの例としては、無線接続要求に対する無線接続応答、認証要求に対する認証応答などがある。この無線管理応答フレーム115は、通信制御部103、無線通信インタフェース部101を経て、アンテナ100から無線伝送路上に送信される。
【0028】
また、受け取った無線管理フレームが、無線端末の接続あるいは切断であった場合には、接続・切断監視情報142に基づき、接続・切断監視部134が接続・切断情報118を生成して負荷分散制御部105に与える。次いで負荷分散制御部105は、接続・切断通知のための負荷分散制御送信フレーム123を生成し、有線通信インタフェース部102、ネットワーク10を経て、集中制御装置14に通知する。
【0029】
この負荷分散制御部105と集中制御装置14間の通信のための独自コマンドのフレームフォーマットの一例を図6に示す。図6に示した独自コマンドは、TCP/IPのペイロード上で定義している。また、接続要求および切断要求のメッセージの一例を図7に示す。接続要求および切断要求のメッセージには、無線端末識別子、無線基地局識別子および無線端末属性が含まれる。無線端末識別子は、無線LANシステムの中における無線端末の固有識別子であり、例えば無線端末のMACアドレス等を用いることができる。この無線基地局識別子は、無線LANシステムの中における無線基地局の固有識別子であり、例えば無線基地局のBSS−ID(basic service set identity)を用いてもよい。また無線端末属性は、その無線端末の主要アプリケーションが属するトラフィックカテゴリであり、音声、ビデオ、ベストエフォート等がある。例えば、携帯型電話端末の場合の無線端末属性は、音声となる。
【0030】
一方、集中制御装置14は、受け取った接続・切断通知のための負荷分散制御フレームに基づいて、複数の無線基地局11がそれぞれ接続している無線端末数を無線端末属性ごとに管理する。
以下では、接続・切断通知のための負荷分散制御フレームを受け取ったときの集中制御装置14の動作について、再度、図3を用いて説明する。
【0031】
集中制御装置14が負荷分散制御フレームを受信すると、有線通信インタフェース部301からこれに対応した負荷分散制御受信フレーム320が出力される。負荷分散制御受信フレーム320は、負荷分散制御フレーム解析部302に与えられ、負荷分散制御情報322が出力される。
負荷分散制御部303は、接続・切断通知を含んだ負荷分散制御情報322を受け取ると、無線端末接続数管理テーブル作成部304に対して、無線端末接続数管理テーブル作成用負荷分散制御情報323を出力する。無線端末接続数管理テーブル作成部304は、無線端末接続数管理テーブル作成用負荷分散制御情報323に基づいて、無線基地局ごと、無線端末属性ごとの接続数を求め、無線端末接続数管理テーブル305を作成する。
【0032】
このような集中制御装置14の無線端末接続数管理テーブルの一例を図8に示す。管理テーブル作成の具体的な方法としては、集中制御装置14が接続メッセージを受け取った場合には、対応する接続数を1だけ増加し、切断メッセージを受け取った場合には、対応する接続数を1だけ減少する。接続・切断通知のための負荷分散制御送信フレーム123では、無線端末識別子も一緒に通知されるので、単に接続数だけでなく無線端末識別子と合わせて管理してもよい。この場合、接続メッセージを受け取ったときは、同一の無線端末識別子が管理テーブル上に既に存在していないかどうかを確認し、万一存在する場合には削除することができる。これは、圏外となった無線端末12が、別の無線基地局11に接続した場合、二重登録されることを防止する上で有効である。
【0033】
図8に例示した音声端末については、無線基地局11−1に比べて無線基地局11−2の接続数の方が少ないので、新たに音声端末からの接続メッセージがあった場合、無線基地局11−2に優先的に接続することが望ましい。また、パソコンのようなベストエフォート端末については、無線基地局11−1の接続数が少ないので、この無線基地局11−1に接続することが望ましい。
【0034】
一方、ビデオ端末については、接続数が二つの無線基地局11−1,11−2で同じであるので、どちらの無線基地局に接続してもよい。すなわち、接続数が最小となる無線基地局からの接続メッセージに対しては、接続許可を与え、それ以外の無線基地局からの接続メッセージに対しては接続禁止とする。そして接続数が最小となる無線基地局が複数ある場合には、それらすべてに対して接続許可を与える。
【0035】
接続許可あるいは接続禁止のメッセージをもつ応答フレームは、負荷分散制御部303において生成され、有線通信インタフェース部301においてネットワーク10に送出される。
集中制御装置14から送出される応答フレームは、ネットワーク10を経由して、無線基地局11で受け取られる。
【0036】
以下では、集中制御装置14からの応答フレームを受けたときの無線基地局11の動作について、再度、図4を用いて説明する。
集中制御装置14からの応答信号は、有線通信インタフェース部102を経て、負荷分散制御受信信号124として負荷分散制御部105に与えられる。負荷分散制御部105は、この応答を解析し、接続許可・禁止情報119を無線管理部104に通知する。無線管理部104の中の無線管理制御部133は、この接続許可・禁止情報119に基づき、受け取った無線管理フレームに対する応答を決定し、応答信号である無線管理応答フレーム115を通信制御部103に与える。この応答信号は、無線通信インタフェース部101、アンテナ100を経て、無線伝送路上に送信される。
【0037】
集中制御装置14からの応答フレームである応答メッセージの一例を図9に示す。応答メッセージは接続メッセージに対するものであり、切断メッセージに対する応答メッセージはない。
以上の説明では、無線基地局11が無線接続のための無線管理フレームを受け取った場合に、集中制御装置14に対して接続許可を求め、接続許可を得てから無線接続を行うように動作しているが、集中制御装置14が無線端末接続数管理テーブルに基づき、各無線基地局11に対して、あらかじめ無線端末属性ごとの接続許可/接続禁止を通知する方式を採ることもできる。
【0038】
この場合には、無線基地局11の負荷分散制御部105は、接続・切断情報118を受け取ると、接続通知・切断通知のための負荷分散制御送信フレーム123を生成し、有線通信インタフェース部102、ネットワーク10を経て、集中制御装置14に通知する。集中制御装置14は、接続通知・切断通知のための負荷分散制御フレームの情報に基づいて、無線端末接続数管理テーブルを更新し、最新の無線端末接続数管理テーブルに基づき、各無線基地局11に対して、無線端末属性ごとの接続許可/接続禁止を通知する。
【0039】
集中制御装置14から送出される通知フレームは、ネットワーク10、有線通信インタフェース部102を経て、負荷分散制御部105に与えられる。負荷分散制御部105は、この通知に基づき無線端末属性ごとの接続許可/接続禁止の情報である接続イネーブル情報119を無線管理部104に通知する。無線管理部104の中の無線管理制御部133は、この接続イネーブル情報119を記憶しておき、無線接続のための無線管理フレーム114を受け取った場合には、この情報に基づいて無線接続の許可あるいは禁止を決定し、これに対応した無線管理フレームを生成して通信制御部103に与える。この無線管理フレームは、無線通信インタフェース部101、アンテナ100を経て、無線伝送路上に送信される。この接続イネーブル情報の通知メッセージの一例を図10に示す。イネーブル情報は、各無線端末属性に対応したイネーブルビット(1ビット)からなる。無線接続が禁止の場合には、無線基地局探索要求に対して応答信号を送信しないことにより、無線接続を拒否することもできる。
【0040】
次に、図18を用いて、本発明の無線LANシステムにおける無線端末12のブロック構成について説明する。無線端末12は、無線信号を送受信するためのアンテナ200、無線信号の送受信のための無線通信インタフェース部201、無線管理フレームと通信フレームを無線管理部204および上位のアプリケーション部206に分配する通信制御部203、無線管理フレームの送受信を行う無線管理部204から構成される。
【0041】
無線LAN経由で受信した無線受信フレーム210には、通信フレームおよび無線管理フレームの両方が含まれる。無線受信フレーム210は、通信制御部203を経たのち、アプリケーションフレーム211として上位のアプリケーション部206に転送される。一方、無線LAN経由で受信した無線受信フレーム210の中の無線管理フレームは、通信制御部203を経て、無線管理部204に与えられる。無線管理部204の内部ブロック構成を図19に示す。
【0042】
通信制御部203から無線管理部204に送られる無線管理フレーム212は、無線管理フレーム解析部232に与えられる。ここにおいて、無線管理フレームの内容が解析され、無線管理フレーム情報240が無線管理制御部233へ与えられる。また、無線端末情報記憶部235には、無線端末識別子、無線端末属性、無線接続ID、端末状態などが格納されている。
【0043】
無線端末12は、無線基地局11との無線接続の確立時に、無線管理制御部233が無線管理フレームを生成する。このとき、無線端末情報記憶部235の無線端末識別子および無線端末属性の情報である無線端末情報241を無線基地局11に登録する。この情報は、無線基地局11の無線端末情報記憶部135の端末管理テーブルに記憶される。
ちなみに無線接続時に、無線管理フレームを用いて、無線端末識別子を無線基地局に登録することは、無線LAN標準仕様の範囲内で一般に行われている。一方、無線端末属性という概念は無線LANの標準仕様ではなく、これを無線接続時に無線基地局に登録することについては規定されていない。
【0044】
ところで無線LANの標準仕様によれば、ネットワーク識別子を無線接続時に登録するよう規定されている。本来、無線端末は、無線接続を希望するネットワークのネットワーク識別子を無線接続時に登録しなければならないが、無線LANの標準仕様では無線基地局が複数のネットワーク識別子を使用することを許容している。このため例えば、無線端末属性ごとに異なるネットワーク識別子を使用するものとし、無線端末はその端末属性に対応したネットワーク識別子を用いて登録を行えば、無線LANの標準仕様の範囲内で、すなわち市販の無線端末を使用した場合においても、無線端末属性情報を無線基地局に登録することができる。
【0045】
次に、図20および図21を用いて、本発明の無線LANシステムにおける無線端末12の無線接続の動作について説明する。図20において無線端末12は、最初に無線接続のために無線基地局探索信号をブロードキャストする。この無線基地局探索信号を、無線基地局11−1、無線基地局11−2および無線基地局11−3がそれぞれ受信し、基地局探索応答信号を無線端末12にそれぞれ送信している。図20の例では、この基地局探索応答信号の無線端末12における受信レベルは、無線基地局11−1が最大であり、次が無線基地局11−2からの応答、最も受信レベルが低いのが無線基地局11−3からの応答となっている。このため、無線端末12は、基地局探索応答信号の受信レベルが最も高かった無線基地局11−1に対して、無線接続要求のための無線管理フレームを送信する。この無線管理フレームの中には、無線端末12の無線端末識別子および無線端末属性の情報が含まれている。この無線管理フレームを受信した無線基地局11−1は、集中制御装置14に対して、接続要求のための負荷分散制御送信フレーム123を送信する。この接続要求のための負荷分散制御送信フレーム123には、無線接続を要求している無線端末12の無線端末識別子および無線端末属性の情報が含まれる。
【0046】
一方、集中制御装置14は、無線端末接続数管理テーブルに基づいて、要求された接続要求を許可あるいは禁止の判断を行う。図20は、集中制御装置14より接続許可の応答フレームが無線基地局11−1に送信される伝送シーケンスを示している。
無線基地局11−1は、接続許可の応答フレームを受信すると、該無線端末12に対して、接続許可のための無線管理フレームを生成して送信する。無線端末12が接続許可の無線管理フレームを受信すると無線端末12と無線基地局11−1間の無線接続が確立する。
【0047】
図21は、無線基地局11−1が集中制御装置14に対して、接続要求のための負荷分散制御送信フレーム123を送信するところまでが図20と同一である。しかし図21には、集中制御装置14が無線端末接続数管理テーブルに基づいて、接続禁止の応答フレームを無線基地局11−1に送信することが示されている。この場合、無線基地局11−1は、接続禁止の応答フレームを受信すると、該無線端末12に対して接続拒否のための無線管理フレームを生成して送信する。無線端末12が接続拒否の無線管理フレームを受信すると、無線基地局探索において2番目に受信レベルの大きかった無線基地局11−2を選択して、再度、無線基地局探索信号を送信する。これに対し、無線基地局11−2は無線端末12に向けて基地局探索応答信号を送信する。
【0048】
無線端末12は、無線基地局11−2より基地局探索応答信号を受信すると、無線基地局11−2に対して、無線接続要求のための無線管理フレームを送信する。この無線管理フレームの中にも、無線端末12の無線端末識別子および無線端末属性の情報が含まれている。
一方、無線管理フレームを受信した無線基地局11−2は、集中制御装置14に対して、接続要求のための負荷分散制御フレームを送信する。この接続要求のための負荷分散制御フレームにも、無線接続を要求している無線端末12の無線端末識別子および無線端末属性の情報が含まれている。
【0049】
図21の例では、集中制御装置14は、無線基地局11−2に対して接続許可の応答を送っており、無線基地局11−2はこれを受けて、無線端末に接続許可の無線管理フレームを送信している。
ちなみに複数の無線端末12は、無線端末情報記憶部235によってそれぞれ自端末と他端末とを識別する端末識別情報および上記無線端末12が扱う情報種別を示す端末属性情報をそれぞれ保持し、これらの情報を無線基地局11に通知する無線管理部204を備える一方、無線基地局11は、無線端末12を接続または切断する際に、無線端末12の端末識別情報、端末属性情報または該端末属性情報のそれぞれに対応して定義された無線端末識別情報を集中制御装置14に通知する無線管理部104を備えて構成されている。
【0050】
また集中制御装置14は、無線端末識別情報を含んだ無線端末12の接続または切断の通知を他の各無線基地局11からネットワーク10を介して取得した無線端末識別情報に基づいて端末属性毎に各無線基地局11がそれぞれ接続する無線端末12の数を管理する端末接続数管理手段を備えて構成されているので、集中制御装置14が無線基地局11の負荷状況を判定して適切な負荷分散制御をすることができる。
【0051】
また無線基地局11は、無線管理制御部133によって集中制御装置14から前記端末属性毎の接続可否情報を受け取る一方、集中制御装置14から接続許可を受けた端末属性については無線端末12から出される接続要求を許可する一方、集中制御装置14から接続拒否を通知された属性については無線端末12からの接続要求を拒否しているので無線基地局11の負荷状況に応じた最適な負荷分散制御ができる。
【0052】
尚、集中制御装置14は、取得した無線端末12の接続あるいは切断の通知に基づいて端末属性毎に各無線基地局11における無線基地局11の負荷の偏りを評価し、負荷が集中している無線基地局11には端末属性に対する接続拒否を通知する一方、負荷が集中していない無線基地局11には端末属性に対する接続許可を通知しているので、無線基地局11の負荷状況に応じた最適な負荷分散制御が可能となり実用上多大なる効果を奏する。
【0053】
尚、本発明の無線LANシステムは、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加えてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の一実施形態に係る無線LANシステムの全体構成を示す図。
【図2】本発明の別の実施形態に係る無線LANシステムの全体構成を示す図。
【図3】本発明の一実施形態に係る無線LANシステムにおける無線基地局のブロック構成図。
【図4】図3に示す無線管理部の内部ブロック構成を示す図。
【図5】図3に示す無線管理部の無線端末情報記憶部における端末管理テーブルの一例を示す図。
【図6】無線基地局の負荷分散制御部と集中制御装置間の通信におけるフレームフォーマットの一例を示す図。
【図7】無線基地局の負荷分散制御部と集中制御装置間の通信における接続および切断のメッセージの一例を示す図。
【図8】集中制御装置における無線端末接続数管理テーブルの一例を示す図。
【図9】無線基地局の負荷分散制御部と集中制御装置間の通信における応答メッセージの一例を示す図。
【図10】無線基地局の負荷分散制御部と集中制御装置間の通信における接続イネーブル情報の通知メッセージの一例を示す図。
【図11】無線基地局の負荷分散制御部と集中制御装置間の通信における干渉電力通知メッセージの一例を示す図。
【図12】集中制御装置における干渉電力管理テーブルの一例を示す図。
【図13】干渉電力を接続数に換算するための変換テーブルの一例を示す図。
【図14】集中制御装置における干渉の影響を含めた無線端末接続数管理テーブルの一例を示す図。
【図15】無線基地局の負荷分散制御部と集中制御装置間の通信における基地局探索受信レベル通知メッセージの一例を示す図。
【図16】集中制御装置における無線端末ごとの基地局受信レベルのテーブルの一例を示す図。
【図17】平均受信レベル最大値と平均受信レベル許容範囲との関係の一例を示す図。
【図18】無線端末の概略構成を示すブロック図。
【図19】図18に示す無線端末における無線管理部の内部ブロック構成を示す図。
【図20】無線端末登録動作を示すシーケンス図(登録許可の場合)。
【図21】無線端末登録動作を示すシーケンス図(登録拒否の場合)。
【図22】本発明の一実施形態に係る無線LANシステムにおける集中制御装置のブロック構成図。
【符号の説明】
【0055】
10 ネットワーク
11 無線基地局
12 無線端末
14 集中制御装置
15 構内交換機
16 ルータ
17 呼制御サーバ
18 公衆網
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネットワークに接続された複数の無線基地局とこの無線基地局にアクセスする複数の無線端末とを有する無線LANシステムであって、
前記ネットワークに接続されて前記複数の無線基地局の作動を制御する集中制御装置を備え、
前記無線端末は、自端末と他端末とを識別する端末識別情報と該無線端末が扱う情報種別を示す端末属性情報をそれぞれ保持し、これらの情報を前記無線基地局に通知する一方、
前記無線基地局は、前記無線端末を接続または切断する際に、該無線端末の上記端末識別情報、端末属性情報または該端末属性情報のそれぞれに対応して定義された無線端末識別情報を前記集中制御装置に通知し、
前記集中制御装置は、上記無線端末識別情報を含んだ前記無線端末の接続または切断の通知を他の上記各無線基地局から前記ネットワークを介して取得した前記無線端末識別情報に基づいて前記端末属性毎に上記各無線基地局がそれぞれ接続する前記無線端末の数を管理することを特徴とする無線LANシステム。
【請求項2】
前記無線基地局は、前記集中制御装置から前記端末属性毎の接続可否情報を受け取り、前記集中制御装置から接続許可を受けた前記端末属性については上記端末から出される接続要求を許可する一方、該集中制御装置から接続拒否を通知された属性については端末からの接続要求を拒否するものである請求項1に記載の無線LANシステム。
【請求項3】
前記集中制御装置は、前記無線端末識別情報取得手段が取得した前記無線端末の接続あるいは切断の通知に基づいて前記端末属性毎に上記各無線基地局における前記無線基地局の負荷の偏りを評価し、負荷が集中している上記無線基地局には該端末属性に対する接続拒否を通知する一方、負荷が集中していない上記無線局には当該端末属性に対する接続許可を通知するものである請求項1または2に記載の無線LANシステム。
【請求項1】
ネットワークに接続された複数の無線基地局とこの無線基地局にアクセスする複数の無線端末とを有する無線LANシステムであって、
前記ネットワークに接続されて前記複数の無線基地局の作動を制御する集中制御装置を備え、
前記無線端末は、自端末と他端末とを識別する端末識別情報と該無線端末が扱う情報種別を示す端末属性情報をそれぞれ保持し、これらの情報を前記無線基地局に通知する一方、
前記無線基地局は、前記無線端末を接続または切断する際に、該無線端末の上記端末識別情報、端末属性情報または該端末属性情報のそれぞれに対応して定義された無線端末識別情報を前記集中制御装置に通知し、
前記集中制御装置は、上記無線端末識別情報を含んだ前記無線端末の接続または切断の通知を他の上記各無線基地局から前記ネットワークを介して取得した前記無線端末識別情報に基づいて前記端末属性毎に上記各無線基地局がそれぞれ接続する前記無線端末の数を管理することを特徴とする無線LANシステム。
【請求項2】
前記無線基地局は、前記集中制御装置から前記端末属性毎の接続可否情報を受け取り、前記集中制御装置から接続許可を受けた前記端末属性については上記端末から出される接続要求を許可する一方、該集中制御装置から接続拒否を通知された属性については端末からの接続要求を拒否するものである請求項1に記載の無線LANシステム。
【請求項3】
前記集中制御装置は、前記無線端末識別情報取得手段が取得した前記無線端末の接続あるいは切断の通知に基づいて前記端末属性毎に上記各無線基地局における前記無線基地局の負荷の偏りを評価し、負荷が集中している上記無線基地局には該端末属性に対する接続拒否を通知する一方、負荷が集中していない上記無線局には当該端末属性に対する接続許可を通知するものである請求項1または2に記載の無線LANシステム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
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【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【公開番号】特開2007−28231(P2007−28231A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−207876(P2005−207876)
【出願日】平成17年7月15日(2005.7.15)
【出願人】(000000181)岩崎通信機株式会社 (133)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年7月15日(2005.7.15)
【出願人】(000000181)岩崎通信機株式会社 (133)
【Fターム(参考)】
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