焦電型赤外線センサおよびその製造方法
【課題】
赤外線受光領域が広く、赤外線検知精度に優れ、電磁シールド性が高い赤外線センサを提供すること。また量産性に優れ、小型で廉価な赤外線センサの製造方法を提供すること。
【解決手段】
回路部品が実装された多層プリント基板からなるベースと、中空構造に加工された多層プリント基板の側面に金属膜層を形成した第1スペーサと第2スペーサからなる枠体を構成し、枠体内に焦電センサ素子を実装した状態で光学フィルタと枠体とベースとを積層して導電性接着剤にて接合する構成にする。また、ベース、第1スペーサ、第2スペーサを集合体で構成し、構成要素を積層接合後にダイシングして個片化する製造方法を採用する。
赤外線受光領域が広く、赤外線検知精度に優れ、電磁シールド性が高い赤外線センサを提供すること。また量産性に優れ、小型で廉価な赤外線センサの製造方法を提供すること。
【解決手段】
回路部品が実装された多層プリント基板からなるベースと、中空構造に加工された多層プリント基板の側面に金属膜層を形成した第1スペーサと第2スペーサからなる枠体を構成し、枠体内に焦電センサ素子を実装した状態で光学フィルタと枠体とベースとを積層して導電性接着剤にて接合する構成にする。また、ベース、第1スペーサ、第2スペーサを集合体で構成し、構成要素を積層接合後にダイシングして個片化する製造方法を採用する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焦電型の赤外線センサに関するものであり、詳しくは赤外線受光領域が広く、電磁シールド性が高く、かつ、量産性に優れた構造の赤外線センサおよびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
セキュリティや自動ドアなどの用途から始まって、近年、省エネや介護などのさまざまな用途で人体検知技術の応用が広がっている。しかし、人感検知に用いられる従来の焦電型の赤外線センサでは、大量生産に適さずサイズも大きく限界があった。それにともなって市場では小型化、高品質、低価格への要望が高まってきた。それらに対して電磁シールド性能の向上やノイズ対策への提案や小型化や生産性の向上への提案がされている。(例えば、特許文献1、特許文献2)
【0003】
以下、特許文献1における従来の焦電型の赤外線センサについて説明する。図15は特許文献1におけるに焦電型の赤外線センサの断面図であり、発明の趣旨を逸脱しない範囲で図面の簡素化を行い、搭載されるFET、コンデンサおよび基板の回路パターンなどは省略した。また、部品名称は発明と同じにしている。図15において、赤外線センサ200は、金属性ステム51に円筒状の金属性キャップ57を接合することによりその枠体を構成している。金属製ステム51には金属性ベース52が載置接続され、さらにスペーサ53を介して基板54が載置されている。基板54には必要な回路パターンが配設され、導電材料からなる支持台55を介して焦電素子56が載置され、基板54との電気的接続がなされている。また、基板54には図示しないFETが載置接続され、基板54と金属性ベース52の間には図示しないコンデンサが載置され電気的に接続されている。GND端子61は図示しない導電性材料からなるスペーサを介して金属製ベース52に固定され基板54に接続し、他の2本の端子60は絶縁材料からなるスペーサ62を介して金属製ベース52に固定され基板54に接続している。金属性キャップ57には方形の窓部が形成され、この窓部には赤外線透過フィルタ58が取り付けられている。このような従来型の金属キャップ構造の赤外線センサでは端子部分や基板のパターン部分にインダクタンスが発生し、外来の高周波ノイズに影響され誤動作しやすいという欠点があり、発明では、コンデンサの載置方法を工夫することにより、基板上のパターンや端子部分に発生する抵抗やインダクタンスの発生を防止し、高周波ノイズに強くした。
【0004】
特許文献2には金属製キャップを持たない例として、表面実装に対応し、上面に方形の開口部を持ち、箱型で金属板を内包したパッケージを枠体とした赤外線センサの例が示されている。方形の開口部に段差を設けて、方形の光学フィルタをはめ込み、その周囲を導電性接着剤にて封止する構造とし、赤外線受光領域を広くし、かつ、電磁シールド性を高めた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−108757号公報
【特許文献2】再公表特許 WO2006−120863号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に示す従来例では、円筒状の金属製のキャップと金属製のステムの組合せによる密閉効果とコンデンサの配設による高周波ノイズ除去効果により電磁シールド性に優れるが、リードによる端子構造や焦電センサ素子の保持構造および各部の電気的接続構造が複雑で生産性が低い点、部品が多く焦電センサ素子の位置精度が出にくい点、外形サイズに比較して赤外線透過フィルタのサイズを大きくできないので赤外線受光領域が狭い点、小型化ができない点などの欠点がある。また特許文献2に示す従来例では、方形箱型構造の金属パッケージを方形の光学フィルタで覆うように封止する構造の採用によって赤外線受光領域は広げることができたが、金属板を内包した樹脂性のパッケージでは密閉効果は限定的であり電磁シールド性は不十分である。また、方形箱型の構造であるため焦電センサ素子やFET、抵抗、コンデンサなどの部品を実装する際、量産性が悪く、また、ハンダ付けなど接合品質の確認が困難で歩留まりの低下などの問題も発生しコスト増加につながる。
【0007】
(発明の目的)
本発明は、上記問題点を解決しようとするものであり、電磁シールド性能に優れ、赤外線受光領域が広く、構造が単純な赤外線センサを提供すると同時に、量産性に優れ、小型で廉価な赤外線センサの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
焦電センサ素子と、赤外線を選択的に通過させる光学フィルタと、焦電センサ素子から出力される信号を処理する回路部を備える焦電型赤外線センサにおいて、回路部品が実装された多層プリント基板からなるベースと、中空構造に加工された多層プリント基板の側面に金属膜層を形成した第1スペーサと第2スペーサからなる枠体を構成し、枠体内に焦電センサ素子を実装した状態で光学フィルタと枠体とベースとを積層して導電性接着剤にて接合することを特徴とする。
【0009】
上記構成によれば、中空構造に加工された第1スペーサと第2スペーサからなる枠体の外側の側面または内側の側面が金属膜層で覆われ、その金属膜層がベースおよび光学フィルタと積層接着されるため、電磁シールド性に優れる。また、光学フィルタは第2スペーサの開口部より大きいため、十分な赤外線受光領域を得られる。また、多層プリント基板からなるベースには第1スペーサおよび第2スペーサが接合されていない状態で回路部品を実装できるので生産性が高い。また、枠体である第2スペーサの開口部に焦電センサ素子のサイズを近づけることができるので小型化できる。
【0010】
第1スペーサに、焦電センサ素子を電気的に接続固定するための受け部と電極を設けると良い。
【0011】
上記構成によれば、第1スペーサ上面に焦電センサ素子が接続固定され、同じ面に第2スペーサが接続固定されるため、焦電センサ素子と光学フィルタとの距離が正確になり、また、傾きも発生しないので赤外線の受光領域が安定化し、受光精度が向上する。
【0012】
第1スペーサと第2スペーサの側面に形成された金属膜層はそれぞれ多層プリント基板の電極と電気的に接続され、かつ、GNDに接続すると良い。
【0013】
上記構成によれば、第1スペーサと第2スペーサの側面に形成された金属膜層は導電性接着剤にて直接GNDに接合接続されるので、端子等の介在がなく、インダクタンスの発生が少なく、外来の高周波ノイズに強い。
【0014】
ベースにおいて、多層プリント基板の少なくとも1つの中間層をGNDに接続すると良い。
【0015】
多層プリント基板からなるベースの中間層が全域にわたって金属膜層となり、GNDに接続するため、赤外線センサの底面および枠体が1つの金属キャップと同等の効果となり、電磁シールド性に優れる。
【0016】
集合基板構造をなすベースと、集合基板構造をなし焦電センサ素子を電気的に接続した第1スペーサと、集合基板構造をなす第2スペーサと、光学フィルタを積層し、導電性接着剤にて接合した後にダイシングにより切り離し個片化することを特徴とする。
【0017】
上記構成によれば、ベースと第1スペーサと第2スペーサは集合体による製造方法を採用することが可能になり、全部品を接合接着した後にダイシングにより個片化ができるので量産性に優れる。
【0018】
集合基板構造をなす第1スペーサまたは、集合基板構造をなす第2スペーサにおける中空構造に加工された多層プリント基板の側面に形成される金属膜層は、直交する2対の辺の一方の辺は、枠形状の外側の側面に金属層が形成され、他方の辺は枠形状の内側の側面に金属層が形成されていると良い。
【0019】
上記構成によれば、ダイシングにより個片化する際、第1スペーサまたは第2スペーサのカットされた一対の外側の側面に対応する内側の側面には金属膜層が形成されている。そのためシールド構造が保たれる。
【0020】
集合基板構造をなす第1スペーサまたは集合基板構造をなす第2スペーサにおける中空構造に加工された多層プリント基板の内側の側面で金属膜層が形成されていない1対の辺に焦電センサ素子を支持するための受け部と電極を設けると良い。
【0021】
上記構成によれば、ダイシングにより個片化する際、集合基板構造をなす第1スペーサまたは集合基板構造をなす第2スペーサの中空構造の内側の側面で金属膜層が無い面に焦電体センサ素子を支持し接続する受け部と電極を設けることにより、その外側の側面には金属膜層が形成されている。そのためシールド構造が保たれる。
【発明の効果】
【0022】
上述の如く本発明によれば、中空構造の第1スペーサおよび第2スペーサの側面が金属膜層で覆われ、その金属膜層とベースおよび光学フィルタとが導電性接着剤を介して接着固定され電気的に接続されるため電磁シールド性に優れ、光学フィルタは第2スペーサの開口部より大きくできるため赤外線受光領域が広く、回路部品を実装しやすい構造で、小型の赤外線センサを提供できる。なお、集合体による製造方法を可能としたことにより、量産性に優れ廉価な赤外線センサの製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1(A)】本発明の第1実施形態による赤外線センサ100を示す斜視図及び断面図である。
【図1(B)】本発明の第1実施形態による赤外線センサ100を示す回路図である。
【図2】第1実施形態のベース10を説明する斜視図及び断面図である。
【図3】第1実施形態の第1スペーサ2を説明する斜視図及び断面図である。
【図4】第1実施形態の第2スペーサ3を説明する斜視図及び断面図である。
【図5】第1実施形態の焦電センサ素子5の接合手順と構成を説明する断面図及び分解斜視図である。
【図6】第1実施形態の光学フィルタ4の接合を説明する斜視図及び断面図である。
【図7】第1実施形態の赤外線センサ全体の積層構成を説明する分解斜視図である。
【図8】本発明の第2実施形態による赤外線センサ100Lの全体構成を示す斜視図及び断面図である。
【図9】第2実施形態の製造方法を説明する全体の分解斜視図及び断面図である。
【図10】第2実施形態のベース10Lの製造方法を説明する斜視図及び断面図である。
【図11】第2実施形態の焦電センサ素子5の接合手順を説明する分解斜視図である。
【図12】第2実施形態の全体の接合手順を説明する分解斜視図である。
【図13】第2実施形態の個片化工程を説明する斜視図である。
【図14】第2実施形態の個片化後の完成形態を説明する斜視図である。
【図15】従来の焦電型赤外線センサの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(第1実施形態)
以下、本発明の好適な実施形態として、図1〜図7を参照して説明する。図1(A)は第1実施形態による赤外線センサ100の斜視図及び断面図である。図1(B)は第1実施形態による赤外線センサ100の回路図である。図2はベース10の構成を、図3は第1スペーサ2の構成を、図4は第2スペーサ3の構成を、図5は第1スペーサ2と焦電センサ素子5と第2スペーサ3の接着手順と焦電センサ素子5の構成を、図6は光学フィルタ4の接着手順を、図7は赤外線センサ100の全体の積層構造を、それぞれ示す。
【0025】
(赤外線センサ100の全体構成)
図1において、図1(a)は赤外線センサ100を組立てた状態の斜視図を示し、(b)は(a)のA−A断面を示し、(c)は回路図を示す。図1(a)において、各構成要素が積層接着された方形の形状であることを示し、下から、ベース10、焦電センサ素子5を電気的に接続固定した第1スペーサ2、第2スペーサ3、光学フィルタ4の順に積層されている。なお、第1スペーサ2と第2スペーサ3は上下の位置関係ではなく、焦電センサ素子5を接続固定する方を第1スペーサ2とする。
【0026】
次に、図1(b)を参照して、構造を説明する。ベース10は多層プリント基板からなり、上層プリントパターンには赤外線センサ100に必要な回路部品であるリーク抵抗7および図示しないFET8が実装されている。また、ベース10の下層プリントパターンは表面実装が可能なパターンが形成されている。第1スペーサ2は中空構造に加工された多層プリント基板からなり、側面に金属膜層を形成した枠体機能と焦電センサ素子5を受ける受け部と電極機能を有する。第2スペーサ3は中空構造に加工された多層プリント基板からなり、側面に金属膜層を形成した枠体機能を有する。光学フィルタ4は選択的に赤外線を透過させる機能を持つ。
【0027】
ベース10の上面には、第1スペーサ2が導電性接着剤6を介して積層接着される。第1スペーサ2の内側の凸部2A、2Bには焦電センサ素子5が導電性接着剤6を介して接着固定されている。第1スペーサ2の高さは、焦電センサ素子5の下方に回路素子を実装するための空間と焦電センサ素子5自身への熱的影響を受けないための中空保持の空間を考慮して決めている。焦電センサ素子5の詳細構造については後述する。また、第2スペーサ3は第1スペーサ2の上面に導電性接着剤6を介して積層接着されており、焦電センサ素子5の外形より少し大きな開口形状を持っている。第2スペーサ3の上面には光学フィルタ4が導電性接着剤6を介して積層接着されている。上記構成により、ベース10と第1スペーサ2と第2スペーサ3と光学フィルタ4は各接着面が導電性接着剤6を介して電気的、機械的に接続固定され、かつ、完全密閉構造となっている。図1(c)には赤外線センサ100の回路構成を示す。焦電センサ素子5はFET8のゲート8aとGND端子9の間に接続されている。リーク抵抗7は焦電センサ素子5に並列にFET8のゲート8aとGND端子9の間に接続されている。なお、赤外線センサ100の基本回路は公知であり、本実施形態も同様の構成となっている。
【0028】
(ベース10の構成)
次に、図2(a)、(b)を参照してベース10の構成について説明する。図2(a)はベース1に回路部品を実装した状態の斜視図であり、図2(b)は(a)のB−B断面図である。多層プリント基板からなるベース1の上層1aにはプリントパターンが形成され、リーク抵抗7およびFET8(電界効果トランジスタ)がハンダ付け等により実装されるが枠体等の障害物が無い状態で作業が可能である。下層1cには同様にプリントパターンが形成され、表面実装が可能なパターンが構成されている。中間層1bは、パターン全面をGNDとして使用し、上層1a、下層1cとは所定の場所において図示しないビアによって接続している。以上、説明した如く、回路部品を実装したベース10は下層1cに自身の表面実装が可能なパターン構成を持ち、中間層1bにはシールド専用のパターン構成を持っている。
【0029】
(第1スペーサ2の構成)
次に、図3を参照して第1スペーサ2の構成について説明する。図3において、(a)は第1スペーサ2の斜視図であり、(b)、(c)はそれぞれ(a)のC−C断面図、D−D断面図である。中空構造に加工された多層プリント基板の側面に金属膜層を形成し、互いに向き合う一対の辺の内側の2つの面には凸部2Aと2Bが形成され、焦電センサ素子5を機械的、電気的に接続固定するための受け部となっている。一方の受け部である2Aは絶縁層2aの上層パターン、下層パターン、および内側の側面に形成された金属膜層2dおよび外側の側面に形成された金属膜層2cに覆われている。他方の受け部である2B部は絶縁層2aの内側側面が金属膜層2bに覆われているが、上層パターン、下層パターンからは分離されていて、ベース10に接続固定されると実装されたFET8のゲートに接続される(図1(b)、(c)参照)。なお、内側の2つの面に形成された凸部2Aおよび2Bの両側の側面2eは受け部の凸形状を作りだすために加工された面であり金属膜層は削除されている。また、互いに向き合い凸部を有する面に直交する1対の辺において、枠形状の内側の側面には金属膜層2dが形成され、外側の側面には金属膜層2cが形成されている。
【0030】
(第2スペーサ3の構成)
次に、図4を参照して第2スペーサ3の構成について説明する。図4において、(a)は第2スペーサ3の斜視図であり(b)、(c)はそれぞれE−E断面図、F−F断面図である。中空構造に加工された多層プリント基板の側面に金属膜層を形成し、直交する2対の辺の内側の側面には金属膜層3dが形成され、上層パターン、下層パターンと接続している。また、直交する2対の辺の外側の側面には金属膜層3cが形成され上層パターン、下層パターンと接続している。
【0031】
(焦電センサ素子5の構成)
次に、図5を参照して焦電センサ素子5の構成について説明する。図5において、(a)は第1スペーサ2と焦電素子5と第2スペーサ3の断面図を示し、(b)は焦電センサ素子5の分解斜視図を示す。図5(a)において第1スペーサ2に形成された受け部2Aと2Bに導電接着剤6を介して焦電センサ素子5が載置され、電気的に接続固定される。次に導電接着剤6を介して第2スペーサ3が第1スペーサ2の上面に載置され、電気的に接続固定される。このように、第1スペーサ2と焦電センサ素子5と第2スペーサ3の組立体20は事前に組立てておくことが可能である。次に、図5(b)において、焦電センサ素子5の構成について説明する。チタン酸ジルコン酸鉛などからなる焦電体14の赤外線受光側に受光電極11aと12aが配設され、狭い連結部13によって電気的に接続している。受光電極11aと12aには焦電体基板14を挟んで対向電極11bと12bがそれぞれ対向配置されている。受光電極11aと対向電極11bは受光素子部11を、受光電極12aと対向電極12b補償素子部12をそれぞれ形成し、焦電センサ素子5を形成している。焦電センサ素子5には2つの電極接続部11f、12fが設けられている。なお、焦電センサ素子5は公知であり、本実施形態も同様の構成となっている。
【0032】
(光学フィルタ4の構成)
次に、図6を参照して光学フィルタ4の構成について説明する。図6において、(a)は第2スペーサ3と光学フィルタ4の構成を示す斜視図、(b)はG−G断面、(c)はH−H断面である。第2スペーサ3の上面に導電接着剤6を介して光学フィルタ4が接続固定されている。光学フィルタ4は公知であり、単結晶シリコンなどからなり選択的に赤外線を透過させる機能を持ち、導電性接着剤6で第2スペーサ3の金属膜層に接着固定することにより電気的に接続される。なお、本実施形態では光学フィルタ4の外形サイズを第2スペーサ3の外形サイズより少し小さくし、若干の位置ズレを許容できる構成になっている。
【0033】
(積層構造)
次に、図7を参照して、積層構造について説明する。図7は赤外線センサ100の各構成要素の分解斜視図である。ベース10、焦電センサ素子5を接続固定した第1スペーサ2、第2スペーサ3、光学フィルタ4の順に接着し組立ができる構造になっている。各構成要素はそれぞれ、導電性接着剤6をスクリーン印刷などの方法によって適量を塗布し位置決めし、接着固定することが可能な構造である。
【0034】
〔赤外線センサ100の動作〕
図1(b)、(c)および図5(b)を参照して赤外線センサ100の動作について説明する。図5(b)において、光学フィルタ4を通過し、受光素子部11と補償素子部12に入射する赤外線P1,P2は人体などの動作により光の量に偏りが発生すると受光素子部11と補償素子部12の分極に差が発生し、出力が得られる。図1(c)において、リーク抵抗7はこの出力を電圧に変換しFET8のゲート8aに加える。FET8のドレイン端子8bには電源電圧が加えられている。これにより焦電センサ素子5の出力に応じた電圧信号がソース端子8cに出力される。なお、図1(b)において、θは受光可能な角度を示し、θが大きいほど広い受光領域が得られる。
【0035】
〔実施形態の効果〕
以上説明した第1実施形態によれば、次に示す効果が得られる。
【0036】
(1)中空構造に加工された第1スペーサ2および第2スペーサ3からなる枠体の外側の側面または内側の側面が金属膜層で覆われ、その金属膜層がベース1および光学フィルタ4と積層接着され、GNDに接続されるため、電磁シールド性に優れる。また、金属製のキャップや金属を内包した樹脂パッケージが不要となった。
【0037】
(2)光学フィルタ4は第2スペーサ3の開口部より大きいため、広い赤外線受光領域を得られる。また、焦電センサ素子5の外形に対して、第2スペーサ3の開口部を近づけることができるので小型化ができる。
【0038】
(3)多層プリント基板からなるベース1には枠体が接合されていない状態で回路部品を実装できるので量産性に優れる。また、実装部品の接合品質の確認が容易である。
【0039】
(4)焦電センサ素子5と光学フィルタ4は第2スペーサ3の1部品のみを介して対向配置されるので、その距離と角度はバラツキが少なく安定しており、検知精度に優れる。また、焦電センサ素子5の保持と接続が平易な構造であり組立易い。また、第1スペーサ2と第2スペーサ3の高さを変えることにより、焦電センサ素子5の高さ方向の位置をコントロールして受光領域の変更や焦電センサ素子5の下方空間の変更が容易に行える。
【0040】
なお、本発明に係る赤外線センサ100は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、接着の順番について、第1スペーサ2と焦電センサ素子5と第2スペーサ3の組立体20をサブアッセンブリーにする工程としたが、ベース10に第1スペーサ集合体2を接合後に焦電センサ素子5を実装し接合する手順でも良い。また、焦電センサ素子5の取付け安定性と熱遮蔽性を考慮して、第1スペーサ2の受け部2A、2Bは、その幅や数を変更することができる。また、凸部2A、2Bのそれぞれの両側に加工された金属膜層の無い面2eの幅は加工方法に応じて変更ができる。また、第2スペーサ3の側面の金属膜層がすべての面にあるとしたが、4つの辺を内側または外側の側面のいずれかの金属膜層で構成してもよい。また、実施形態では第1スペーサ2と第2スペーサ3はそれぞれ多層プリント基板で作成したが樹脂の一体成形で作成し、MIDによる構成も可能である。光学フィルタ4はその外形サイズを第2スペーサ3の外形サイズより小さくしたが製造方法によっては同じサイズでも良い。
【0041】
(第2実施形態と製造方法)
次に、第2実施形態による赤外線センサ100Lの製造方法について、図8〜図14を参照して説明する。図8は赤外線センサ集合体100Lの組立後の構成を、図9は赤外線センサ集合体100Lの積層構成および第1スペーサ集合体2Lと第2スペーサ集合体3Lの金属膜層の構成を、図10はベース集合体10Lの製造方法を、図11は第1スペーサ集合体2L、第2スペーサ集合体3Lの構造と焦電センサ素子5との組立手順を、図12は全体の組立手順を、図13はダイシングによる個片化工程を、図14は個片化された赤外線センサ100Lの完成形態を、それぞれ示す。
【0042】
(赤外線センサ集合体100Lの全体構成)
図8を参照して、赤外線センサ集合体100Lの組立完成後の状態を説明する。図8(a)は集合体の組立後の状態を示し、(b)は(a)におけるI−I断面を示す。図8(a)において、赤外線センサ集合体100Lには複数の赤外線センサ100Lが配設されている。本実施例では4個の赤外線センサ100Lが配設されている。また、赤外線センサ集合体100Lには溝30が3つ配設され、各溝30の間に各赤外線センサ100Lが配列されている。(b)において、各溝30に挟まれた赤外線センサ100Lの断面を示す。
【0043】
次に、図9を参照して赤外線センサ集合体100Lの積層構造を説明する。図9(a)は赤外線センサ集合体100Lの積層構成の分解斜視図であり、(b)は(a)のJ−J断面を示し、(c)は(a)のK−K断面を示す。図9(a)において、下から、ベース集合体10L、焦電センサ素子5を接合接続した第1スペーサ集合体2L、第2スペーサ集合体3L、光学フィルタ4の順に積層可能な構造になっていて、各構成要素はそれぞれ、導電性接着剤6をスクリーン印刷などの方法によって適量を塗布し位置決めし、接着固定することができる。なお、第1スペーサ集合体2Lと第2スペーサ集合体3Lは上下の位置関係ではなく、焦電センサ素子5を接続固定する方を第1スペーサ集合体2Lとする。図示しない複数の位置決め孔をベース集合体10L、第1スペーサ集合体2L、第2スペーサ集合体3Lにそれぞれ設け、治具による位置決めが可能である。または、ベース集合体1L、第1スペーサ集合体2L、第2スペーサ集合体3Lに設けられた各溝30を位置決めに用いても良い。次に図9(b)、(c)を参照して第1スペーサ集合体2L、第2スペーサ集合体3Lの金属膜層の構成について説明する。図9(b)において、多層プリント基板からなる第2スペーサ集合体3Lは溝30の両側側面には金属膜層3cが、方形の中空構造内部の両側側面には金属膜層3dが形成され、上面と下面のパターン面とそれぞれ接続し、絶縁層3aを覆っている。他の素子部についても同様である。なお、第2スペーサ集合体3Lの周囲の縁部分は便宜上パターンが削除されているが、全面を金属膜層が覆っていてもよい。次に図9(c)において、第1スペーサ集合体2Lについて説明するが、図9(b)と同じ構成要素には同様の番号を付し重複する説明を省略する。図9(b)に示す第1スペーサ集合体2Lの金属膜層が第2スペーサ集合体3Lの金属膜層が異なるところは焦電体素子5の受け部の電極2bが分離されていることであり、図3に示す金属膜層2bの構成と同じである。
【0044】
(ベース集合体10Lの構成と手順)
次に、図10を参照してベース集合体10Lの回路部品の実装について説明する。図10において、(a)は部品を実装したベース集合体10Lの斜視図であり、(b)は1つのセンサ部のM部拡大図を示し、(c)はそのN−N断面を示す。図10において、図2と同じ構成要素には同一番号を付し、重複する説明を省略する。図10に示すベース集合体10Lが図2に示すベース10と異なるところは集合体構成になっており、溝30に挟まれて各素子部が配設されていることである。なお、回路部品の実装については、クリームハンダ印刷など一連の前処理後、図示しない実装機にセットし、リーク抵抗7、FET8を必要数量実装し、図示しないリフロー工程でハンダ付けを行うことができる。また、次工程の枠体を接合する前の段階で回路部品の実装が可能なため、極めて作業性が良い。以上の手順により、部品実装されたベース集合体10Lを得る。
【0045】
(焦電センサ素子5と枠体の接合手順)
次に、図11を参照して枠体と焦電センサ素子5との接合について説明する。図11(a)は第1スペーサ集合体2Lと焦電センサ素子5と第2スペーサ集合体3Lの接合手順を示す分解斜視図であり、(b)は(a)のP部拡大図を示し、(c)はQ部拡大図を示す。図11(a)において、図5(a)と同じ構成要素には同一番号を付し、重複する説明を省略する。11(a)に示す組立体20Lが図5(a)に示す組立体20と異なるところは、第1スペーサ2と第2スペーサ3がそれぞれ集合体になっていることである。なお、図11(b)P部拡大図と(c)Q部拡大図はそれぞれ、図3(a)と図4(a)に対応しており、中空構造の内側の側面については同じ構成であるため重複する説明を省略する。第1スペーサ集合体2Lと焦電センサ素子5、第2スペーサ集合体3Lの接合は、導電性接着剤6をスクリーン印刷などの方法によって適量を塗布し、図示しない実装機にセットし、焦電センサ素子5をそれぞれの素子部に位置決めして接着固定する。以上により、第1スペーサ集合体2L、焦電センサ素子5、第2スペーサ集合体3Lの組立体20Lを得る。
【0046】
(光学フィルタ4および全体の接合手順)
次に、図12を参照して光学フィルタ4および全体の接合手順について説明する。前述の組立体20Lの裏面に予め、導電性接着剤6をスクリーン印刷などの方法によって適量を塗布し、前述の回路部品が実装されたベース集合体10Lに位置決めして接合する。次に、接合された組立集合体20Lの上面に導電性接着剤6をスクリーン印刷などの方法によって適量を塗布し図示しない実装機にセットし、光学フィルタ4をそれぞれのセンサ部に実装し接着固定し、電気的に接続する。これにより、赤外線センサ集合体100Lを得る。
【0047】
(ダイシングによる個片化)
次に、図13を参照してダイシングによる個片化について説明する。図13において、図示しないダイシング装置に赤外線センサ集合体100Lをセットし、矢印の方向に順にダイシングブレード40を用いて切断する。すでに積層接着されたベース集合体10L、第1スペーサ集合体2L,第2スペーサ集合体3Lには前述した溝30が設けられているため、図示した矢印の方向に切断するだけでよく直交方向には切断しないで、個片化することができる。これにより、赤外線センサ100Lを得る。なお、実際のダイシング工程の詳細については省略する。
【0048】
次に、図14を参照して個片化された赤外線センサ100Lについて説明する。図14(a)は個片化された赤外線センサ100Lの斜視図であり、(b)は個片化された第1スペーサ集合体2Lの斜視図であり、(c)は個片化された第2スペーサ集合体3Lの斜視図である。図14(a)において、ダイシングにより切断された2つの面に直交する2つの面(溝30に相当)にはそれぞれ金属膜層2c、3cが形成されているが、ダイシング面には第1スペーサ集合体2Lの金属膜層の無い面2fと第2スペーサ集合体3Lの金属膜層の無い面3fが現れている。しかし、図14(b)に示すように、第1スペーサ集合体2Lの内側の側面には金属膜層2dが形成されており、また、図14(c)に示すように、第2スペーサ集合体3Lの内側側面すべてに金属膜層3dが形成されている。これにより、赤外線センサ100Lは、第1スペーサ集合体2Lまたは第2スペーサ集合体3Lの外側の側面または内側の側面のいずれかに金属膜層が形成されていることになる。以上により、赤外線センサ100Lにおいて、底面はベース1Lの中間層の金属膜層に覆われ、側面は第1スペーサ集合体2Lと第2スペーサ集合体3Lの金属膜層に覆われ、上面は光学フィルタ4に覆われ、電磁シールドに優れた構造を得る。
【0049】
〔実施形態の効果〕
以上説明した第2実施形態とその製造方法によれば、次に示す効果が得られる。
【0050】
(1)ベース集合体10L、焦電センサ素子5を接合した第1スペーサ集合体2L、第2スペーサ集合体3L、光学フィルタ4による積層構造となっており、導電性接着剤6を介して、決められた手順に従って積層し接合する工程を繰り返すことにより組立ができるので、製造工程が単純で量産性に優れる。
【0051】
(2)ベース集合体10Lの回路部品の実装工程において、枠体などの障害物が無い状態で、一般的な表面実装機を使用することが可能であり、量産性に優れ、安価な製造方法を実現できる。また、実装部品の接合品質の確認が容易で品質に優れる。
【0052】
(3)多層プリント基板からなるベース1、第1スペーサ2、第2スペーサ3を集合体による製造方法を採用することが可能になり、極めて量産性に優れる。しかも、完全な密閉構造のため、工程上の対防塵性も良く高品質な製品が得られる。
【0053】
なお、本発明に係る赤外線センサ100Lは上記実施形態に限定されるものではない。焦電センサ素子5の実装について、第1スペーサ集合体2L、焦電センサ素子5、第2スペーサ集合体3Lの組立体20Lをサブアッセンブリーにする工程としたが、ベース集合体10Lに第1スペーサ集合体2Lを接合後に焦電センサ素子5を実装し接合する手順でも良い。また、第2スペーサ集合体3Lの中空構造の内側の側面の金属膜層はすべての面に有る必要はなく、ダイシングにより切断された面に直交する面には無くても良い。また、導電性接着剤6の塗布はスクリーン印刷による方法としたが、ディスペンサによる定量塗布方法でもよいし、シート状のものを採用してもよい。また、ベース集合体1Lの下層1cには表面実装が可能なパターンを形成したとしたが、リード端子を付加することもできる。また、中空構造に加工された多層プリント基板の側面に形成する金属膜層は無電解Niメッキ工法やMID工法などが可能である。赤外線センサ集合体100Lの取り個数を4個としたが、これに限定されるものではなく複数個であれば良い。
【符号の説明】
【0054】
1、1L ベース(多層プリント基板)
10、10L ベース(部品実装)
1a、1b、1c、1d 上層、中間層、下層、絶縁層
2、2L 第1スペーサ(多層プリント基板)
2A、2B 焦電センサ素子の受け部および電極
2a 絶縁層
2b 電極(金属膜層)
2c 外側側面を形成する金属膜層
2d 内側側面を形成する金属膜層
2e 内側側面で金属膜層が無い面
2f 外側側面で金属膜層が無い面
3、3L 第2スペーサ(多層プリント基板)
3a 絶縁層
3c 外側側面を形成する金属膜層
3d 内側側面を形成する金属膜層
3f 外側側面で金属膜層が無い面
4 光学フィルタ
5 焦電センサ素子
6 導電性接着剤
9 GND端子
40 ダイシングブレード
100、100L 赤外線センサ
【技術分野】
【0001】
本発明は、焦電型の赤外線センサに関するものであり、詳しくは赤外線受光領域が広く、電磁シールド性が高く、かつ、量産性に優れた構造の赤外線センサおよびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
セキュリティや自動ドアなどの用途から始まって、近年、省エネや介護などのさまざまな用途で人体検知技術の応用が広がっている。しかし、人感検知に用いられる従来の焦電型の赤外線センサでは、大量生産に適さずサイズも大きく限界があった。それにともなって市場では小型化、高品質、低価格への要望が高まってきた。それらに対して電磁シールド性能の向上やノイズ対策への提案や小型化や生産性の向上への提案がされている。(例えば、特許文献1、特許文献2)
【0003】
以下、特許文献1における従来の焦電型の赤外線センサについて説明する。図15は特許文献1におけるに焦電型の赤外線センサの断面図であり、発明の趣旨を逸脱しない範囲で図面の簡素化を行い、搭載されるFET、コンデンサおよび基板の回路パターンなどは省略した。また、部品名称は発明と同じにしている。図15において、赤外線センサ200は、金属性ステム51に円筒状の金属性キャップ57を接合することによりその枠体を構成している。金属製ステム51には金属性ベース52が載置接続され、さらにスペーサ53を介して基板54が載置されている。基板54には必要な回路パターンが配設され、導電材料からなる支持台55を介して焦電素子56が載置され、基板54との電気的接続がなされている。また、基板54には図示しないFETが載置接続され、基板54と金属性ベース52の間には図示しないコンデンサが載置され電気的に接続されている。GND端子61は図示しない導電性材料からなるスペーサを介して金属製ベース52に固定され基板54に接続し、他の2本の端子60は絶縁材料からなるスペーサ62を介して金属製ベース52に固定され基板54に接続している。金属性キャップ57には方形の窓部が形成され、この窓部には赤外線透過フィルタ58が取り付けられている。このような従来型の金属キャップ構造の赤外線センサでは端子部分や基板のパターン部分にインダクタンスが発生し、外来の高周波ノイズに影響され誤動作しやすいという欠点があり、発明では、コンデンサの載置方法を工夫することにより、基板上のパターンや端子部分に発生する抵抗やインダクタンスの発生を防止し、高周波ノイズに強くした。
【0004】
特許文献2には金属製キャップを持たない例として、表面実装に対応し、上面に方形の開口部を持ち、箱型で金属板を内包したパッケージを枠体とした赤外線センサの例が示されている。方形の開口部に段差を設けて、方形の光学フィルタをはめ込み、その周囲を導電性接着剤にて封止する構造とし、赤外線受光領域を広くし、かつ、電磁シールド性を高めた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−108757号公報
【特許文献2】再公表特許 WO2006−120863号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に示す従来例では、円筒状の金属製のキャップと金属製のステムの組合せによる密閉効果とコンデンサの配設による高周波ノイズ除去効果により電磁シールド性に優れるが、リードによる端子構造や焦電センサ素子の保持構造および各部の電気的接続構造が複雑で生産性が低い点、部品が多く焦電センサ素子の位置精度が出にくい点、外形サイズに比較して赤外線透過フィルタのサイズを大きくできないので赤外線受光領域が狭い点、小型化ができない点などの欠点がある。また特許文献2に示す従来例では、方形箱型構造の金属パッケージを方形の光学フィルタで覆うように封止する構造の採用によって赤外線受光領域は広げることができたが、金属板を内包した樹脂性のパッケージでは密閉効果は限定的であり電磁シールド性は不十分である。また、方形箱型の構造であるため焦電センサ素子やFET、抵抗、コンデンサなどの部品を実装する際、量産性が悪く、また、ハンダ付けなど接合品質の確認が困難で歩留まりの低下などの問題も発生しコスト増加につながる。
【0007】
(発明の目的)
本発明は、上記問題点を解決しようとするものであり、電磁シールド性能に優れ、赤外線受光領域が広く、構造が単純な赤外線センサを提供すると同時に、量産性に優れ、小型で廉価な赤外線センサの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
焦電センサ素子と、赤外線を選択的に通過させる光学フィルタと、焦電センサ素子から出力される信号を処理する回路部を備える焦電型赤外線センサにおいて、回路部品が実装された多層プリント基板からなるベースと、中空構造に加工された多層プリント基板の側面に金属膜層を形成した第1スペーサと第2スペーサからなる枠体を構成し、枠体内に焦電センサ素子を実装した状態で光学フィルタと枠体とベースとを積層して導電性接着剤にて接合することを特徴とする。
【0009】
上記構成によれば、中空構造に加工された第1スペーサと第2スペーサからなる枠体の外側の側面または内側の側面が金属膜層で覆われ、その金属膜層がベースおよび光学フィルタと積層接着されるため、電磁シールド性に優れる。また、光学フィルタは第2スペーサの開口部より大きいため、十分な赤外線受光領域を得られる。また、多層プリント基板からなるベースには第1スペーサおよび第2スペーサが接合されていない状態で回路部品を実装できるので生産性が高い。また、枠体である第2スペーサの開口部に焦電センサ素子のサイズを近づけることができるので小型化できる。
【0010】
第1スペーサに、焦電センサ素子を電気的に接続固定するための受け部と電極を設けると良い。
【0011】
上記構成によれば、第1スペーサ上面に焦電センサ素子が接続固定され、同じ面に第2スペーサが接続固定されるため、焦電センサ素子と光学フィルタとの距離が正確になり、また、傾きも発生しないので赤外線の受光領域が安定化し、受光精度が向上する。
【0012】
第1スペーサと第2スペーサの側面に形成された金属膜層はそれぞれ多層プリント基板の電極と電気的に接続され、かつ、GNDに接続すると良い。
【0013】
上記構成によれば、第1スペーサと第2スペーサの側面に形成された金属膜層は導電性接着剤にて直接GNDに接合接続されるので、端子等の介在がなく、インダクタンスの発生が少なく、外来の高周波ノイズに強い。
【0014】
ベースにおいて、多層プリント基板の少なくとも1つの中間層をGNDに接続すると良い。
【0015】
多層プリント基板からなるベースの中間層が全域にわたって金属膜層となり、GNDに接続するため、赤外線センサの底面および枠体が1つの金属キャップと同等の効果となり、電磁シールド性に優れる。
【0016】
集合基板構造をなすベースと、集合基板構造をなし焦電センサ素子を電気的に接続した第1スペーサと、集合基板構造をなす第2スペーサと、光学フィルタを積層し、導電性接着剤にて接合した後にダイシングにより切り離し個片化することを特徴とする。
【0017】
上記構成によれば、ベースと第1スペーサと第2スペーサは集合体による製造方法を採用することが可能になり、全部品を接合接着した後にダイシングにより個片化ができるので量産性に優れる。
【0018】
集合基板構造をなす第1スペーサまたは、集合基板構造をなす第2スペーサにおける中空構造に加工された多層プリント基板の側面に形成される金属膜層は、直交する2対の辺の一方の辺は、枠形状の外側の側面に金属層が形成され、他方の辺は枠形状の内側の側面に金属層が形成されていると良い。
【0019】
上記構成によれば、ダイシングにより個片化する際、第1スペーサまたは第2スペーサのカットされた一対の外側の側面に対応する内側の側面には金属膜層が形成されている。そのためシールド構造が保たれる。
【0020】
集合基板構造をなす第1スペーサまたは集合基板構造をなす第2スペーサにおける中空構造に加工された多層プリント基板の内側の側面で金属膜層が形成されていない1対の辺に焦電センサ素子を支持するための受け部と電極を設けると良い。
【0021】
上記構成によれば、ダイシングにより個片化する際、集合基板構造をなす第1スペーサまたは集合基板構造をなす第2スペーサの中空構造の内側の側面で金属膜層が無い面に焦電体センサ素子を支持し接続する受け部と電極を設けることにより、その外側の側面には金属膜層が形成されている。そのためシールド構造が保たれる。
【発明の効果】
【0022】
上述の如く本発明によれば、中空構造の第1スペーサおよび第2スペーサの側面が金属膜層で覆われ、その金属膜層とベースおよび光学フィルタとが導電性接着剤を介して接着固定され電気的に接続されるため電磁シールド性に優れ、光学フィルタは第2スペーサの開口部より大きくできるため赤外線受光領域が広く、回路部品を実装しやすい構造で、小型の赤外線センサを提供できる。なお、集合体による製造方法を可能としたことにより、量産性に優れ廉価な赤外線センサの製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1(A)】本発明の第1実施形態による赤外線センサ100を示す斜視図及び断面図である。
【図1(B)】本発明の第1実施形態による赤外線センサ100を示す回路図である。
【図2】第1実施形態のベース10を説明する斜視図及び断面図である。
【図3】第1実施形態の第1スペーサ2を説明する斜視図及び断面図である。
【図4】第1実施形態の第2スペーサ3を説明する斜視図及び断面図である。
【図5】第1実施形態の焦電センサ素子5の接合手順と構成を説明する断面図及び分解斜視図である。
【図6】第1実施形態の光学フィルタ4の接合を説明する斜視図及び断面図である。
【図7】第1実施形態の赤外線センサ全体の積層構成を説明する分解斜視図である。
【図8】本発明の第2実施形態による赤外線センサ100Lの全体構成を示す斜視図及び断面図である。
【図9】第2実施形態の製造方法を説明する全体の分解斜視図及び断面図である。
【図10】第2実施形態のベース10Lの製造方法を説明する斜視図及び断面図である。
【図11】第2実施形態の焦電センサ素子5の接合手順を説明する分解斜視図である。
【図12】第2実施形態の全体の接合手順を説明する分解斜視図である。
【図13】第2実施形態の個片化工程を説明する斜視図である。
【図14】第2実施形態の個片化後の完成形態を説明する斜視図である。
【図15】従来の焦電型赤外線センサの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(第1実施形態)
以下、本発明の好適な実施形態として、図1〜図7を参照して説明する。図1(A)は第1実施形態による赤外線センサ100の斜視図及び断面図である。図1(B)は第1実施形態による赤外線センサ100の回路図である。図2はベース10の構成を、図3は第1スペーサ2の構成を、図4は第2スペーサ3の構成を、図5は第1スペーサ2と焦電センサ素子5と第2スペーサ3の接着手順と焦電センサ素子5の構成を、図6は光学フィルタ4の接着手順を、図7は赤外線センサ100の全体の積層構造を、それぞれ示す。
【0025】
(赤外線センサ100の全体構成)
図1において、図1(a)は赤外線センサ100を組立てた状態の斜視図を示し、(b)は(a)のA−A断面を示し、(c)は回路図を示す。図1(a)において、各構成要素が積層接着された方形の形状であることを示し、下から、ベース10、焦電センサ素子5を電気的に接続固定した第1スペーサ2、第2スペーサ3、光学フィルタ4の順に積層されている。なお、第1スペーサ2と第2スペーサ3は上下の位置関係ではなく、焦電センサ素子5を接続固定する方を第1スペーサ2とする。
【0026】
次に、図1(b)を参照して、構造を説明する。ベース10は多層プリント基板からなり、上層プリントパターンには赤外線センサ100に必要な回路部品であるリーク抵抗7および図示しないFET8が実装されている。また、ベース10の下層プリントパターンは表面実装が可能なパターンが形成されている。第1スペーサ2は中空構造に加工された多層プリント基板からなり、側面に金属膜層を形成した枠体機能と焦電センサ素子5を受ける受け部と電極機能を有する。第2スペーサ3は中空構造に加工された多層プリント基板からなり、側面に金属膜層を形成した枠体機能を有する。光学フィルタ4は選択的に赤外線を透過させる機能を持つ。
【0027】
ベース10の上面には、第1スペーサ2が導電性接着剤6を介して積層接着される。第1スペーサ2の内側の凸部2A、2Bには焦電センサ素子5が導電性接着剤6を介して接着固定されている。第1スペーサ2の高さは、焦電センサ素子5の下方に回路素子を実装するための空間と焦電センサ素子5自身への熱的影響を受けないための中空保持の空間を考慮して決めている。焦電センサ素子5の詳細構造については後述する。また、第2スペーサ3は第1スペーサ2の上面に導電性接着剤6を介して積層接着されており、焦電センサ素子5の外形より少し大きな開口形状を持っている。第2スペーサ3の上面には光学フィルタ4が導電性接着剤6を介して積層接着されている。上記構成により、ベース10と第1スペーサ2と第2スペーサ3と光学フィルタ4は各接着面が導電性接着剤6を介して電気的、機械的に接続固定され、かつ、完全密閉構造となっている。図1(c)には赤外線センサ100の回路構成を示す。焦電センサ素子5はFET8のゲート8aとGND端子9の間に接続されている。リーク抵抗7は焦電センサ素子5に並列にFET8のゲート8aとGND端子9の間に接続されている。なお、赤外線センサ100の基本回路は公知であり、本実施形態も同様の構成となっている。
【0028】
(ベース10の構成)
次に、図2(a)、(b)を参照してベース10の構成について説明する。図2(a)はベース1に回路部品を実装した状態の斜視図であり、図2(b)は(a)のB−B断面図である。多層プリント基板からなるベース1の上層1aにはプリントパターンが形成され、リーク抵抗7およびFET8(電界効果トランジスタ)がハンダ付け等により実装されるが枠体等の障害物が無い状態で作業が可能である。下層1cには同様にプリントパターンが形成され、表面実装が可能なパターンが構成されている。中間層1bは、パターン全面をGNDとして使用し、上層1a、下層1cとは所定の場所において図示しないビアによって接続している。以上、説明した如く、回路部品を実装したベース10は下層1cに自身の表面実装が可能なパターン構成を持ち、中間層1bにはシールド専用のパターン構成を持っている。
【0029】
(第1スペーサ2の構成)
次に、図3を参照して第1スペーサ2の構成について説明する。図3において、(a)は第1スペーサ2の斜視図であり、(b)、(c)はそれぞれ(a)のC−C断面図、D−D断面図である。中空構造に加工された多層プリント基板の側面に金属膜層を形成し、互いに向き合う一対の辺の内側の2つの面には凸部2Aと2Bが形成され、焦電センサ素子5を機械的、電気的に接続固定するための受け部となっている。一方の受け部である2Aは絶縁層2aの上層パターン、下層パターン、および内側の側面に形成された金属膜層2dおよび外側の側面に形成された金属膜層2cに覆われている。他方の受け部である2B部は絶縁層2aの内側側面が金属膜層2bに覆われているが、上層パターン、下層パターンからは分離されていて、ベース10に接続固定されると実装されたFET8のゲートに接続される(図1(b)、(c)参照)。なお、内側の2つの面に形成された凸部2Aおよび2Bの両側の側面2eは受け部の凸形状を作りだすために加工された面であり金属膜層は削除されている。また、互いに向き合い凸部を有する面に直交する1対の辺において、枠形状の内側の側面には金属膜層2dが形成され、外側の側面には金属膜層2cが形成されている。
【0030】
(第2スペーサ3の構成)
次に、図4を参照して第2スペーサ3の構成について説明する。図4において、(a)は第2スペーサ3の斜視図であり(b)、(c)はそれぞれE−E断面図、F−F断面図である。中空構造に加工された多層プリント基板の側面に金属膜層を形成し、直交する2対の辺の内側の側面には金属膜層3dが形成され、上層パターン、下層パターンと接続している。また、直交する2対の辺の外側の側面には金属膜層3cが形成され上層パターン、下層パターンと接続している。
【0031】
(焦電センサ素子5の構成)
次に、図5を参照して焦電センサ素子5の構成について説明する。図5において、(a)は第1スペーサ2と焦電素子5と第2スペーサ3の断面図を示し、(b)は焦電センサ素子5の分解斜視図を示す。図5(a)において第1スペーサ2に形成された受け部2Aと2Bに導電接着剤6を介して焦電センサ素子5が載置され、電気的に接続固定される。次に導電接着剤6を介して第2スペーサ3が第1スペーサ2の上面に載置され、電気的に接続固定される。このように、第1スペーサ2と焦電センサ素子5と第2スペーサ3の組立体20は事前に組立てておくことが可能である。次に、図5(b)において、焦電センサ素子5の構成について説明する。チタン酸ジルコン酸鉛などからなる焦電体14の赤外線受光側に受光電極11aと12aが配設され、狭い連結部13によって電気的に接続している。受光電極11aと12aには焦電体基板14を挟んで対向電極11bと12bがそれぞれ対向配置されている。受光電極11aと対向電極11bは受光素子部11を、受光電極12aと対向電極12b補償素子部12をそれぞれ形成し、焦電センサ素子5を形成している。焦電センサ素子5には2つの電極接続部11f、12fが設けられている。なお、焦電センサ素子5は公知であり、本実施形態も同様の構成となっている。
【0032】
(光学フィルタ4の構成)
次に、図6を参照して光学フィルタ4の構成について説明する。図6において、(a)は第2スペーサ3と光学フィルタ4の構成を示す斜視図、(b)はG−G断面、(c)はH−H断面である。第2スペーサ3の上面に導電接着剤6を介して光学フィルタ4が接続固定されている。光学フィルタ4は公知であり、単結晶シリコンなどからなり選択的に赤外線を透過させる機能を持ち、導電性接着剤6で第2スペーサ3の金属膜層に接着固定することにより電気的に接続される。なお、本実施形態では光学フィルタ4の外形サイズを第2スペーサ3の外形サイズより少し小さくし、若干の位置ズレを許容できる構成になっている。
【0033】
(積層構造)
次に、図7を参照して、積層構造について説明する。図7は赤外線センサ100の各構成要素の分解斜視図である。ベース10、焦電センサ素子5を接続固定した第1スペーサ2、第2スペーサ3、光学フィルタ4の順に接着し組立ができる構造になっている。各構成要素はそれぞれ、導電性接着剤6をスクリーン印刷などの方法によって適量を塗布し位置決めし、接着固定することが可能な構造である。
【0034】
〔赤外線センサ100の動作〕
図1(b)、(c)および図5(b)を参照して赤外線センサ100の動作について説明する。図5(b)において、光学フィルタ4を通過し、受光素子部11と補償素子部12に入射する赤外線P1,P2は人体などの動作により光の量に偏りが発生すると受光素子部11と補償素子部12の分極に差が発生し、出力が得られる。図1(c)において、リーク抵抗7はこの出力を電圧に変換しFET8のゲート8aに加える。FET8のドレイン端子8bには電源電圧が加えられている。これにより焦電センサ素子5の出力に応じた電圧信号がソース端子8cに出力される。なお、図1(b)において、θは受光可能な角度を示し、θが大きいほど広い受光領域が得られる。
【0035】
〔実施形態の効果〕
以上説明した第1実施形態によれば、次に示す効果が得られる。
【0036】
(1)中空構造に加工された第1スペーサ2および第2スペーサ3からなる枠体の外側の側面または内側の側面が金属膜層で覆われ、その金属膜層がベース1および光学フィルタ4と積層接着され、GNDに接続されるため、電磁シールド性に優れる。また、金属製のキャップや金属を内包した樹脂パッケージが不要となった。
【0037】
(2)光学フィルタ4は第2スペーサ3の開口部より大きいため、広い赤外線受光領域を得られる。また、焦電センサ素子5の外形に対して、第2スペーサ3の開口部を近づけることができるので小型化ができる。
【0038】
(3)多層プリント基板からなるベース1には枠体が接合されていない状態で回路部品を実装できるので量産性に優れる。また、実装部品の接合品質の確認が容易である。
【0039】
(4)焦電センサ素子5と光学フィルタ4は第2スペーサ3の1部品のみを介して対向配置されるので、その距離と角度はバラツキが少なく安定しており、検知精度に優れる。また、焦電センサ素子5の保持と接続が平易な構造であり組立易い。また、第1スペーサ2と第2スペーサ3の高さを変えることにより、焦電センサ素子5の高さ方向の位置をコントロールして受光領域の変更や焦電センサ素子5の下方空間の変更が容易に行える。
【0040】
なお、本発明に係る赤外線センサ100は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、接着の順番について、第1スペーサ2と焦電センサ素子5と第2スペーサ3の組立体20をサブアッセンブリーにする工程としたが、ベース10に第1スペーサ集合体2を接合後に焦電センサ素子5を実装し接合する手順でも良い。また、焦電センサ素子5の取付け安定性と熱遮蔽性を考慮して、第1スペーサ2の受け部2A、2Bは、その幅や数を変更することができる。また、凸部2A、2Bのそれぞれの両側に加工された金属膜層の無い面2eの幅は加工方法に応じて変更ができる。また、第2スペーサ3の側面の金属膜層がすべての面にあるとしたが、4つの辺を内側または外側の側面のいずれかの金属膜層で構成してもよい。また、実施形態では第1スペーサ2と第2スペーサ3はそれぞれ多層プリント基板で作成したが樹脂の一体成形で作成し、MIDによる構成も可能である。光学フィルタ4はその外形サイズを第2スペーサ3の外形サイズより小さくしたが製造方法によっては同じサイズでも良い。
【0041】
(第2実施形態と製造方法)
次に、第2実施形態による赤外線センサ100Lの製造方法について、図8〜図14を参照して説明する。図8は赤外線センサ集合体100Lの組立後の構成を、図9は赤外線センサ集合体100Lの積層構成および第1スペーサ集合体2Lと第2スペーサ集合体3Lの金属膜層の構成を、図10はベース集合体10Lの製造方法を、図11は第1スペーサ集合体2L、第2スペーサ集合体3Lの構造と焦電センサ素子5との組立手順を、図12は全体の組立手順を、図13はダイシングによる個片化工程を、図14は個片化された赤外線センサ100Lの完成形態を、それぞれ示す。
【0042】
(赤外線センサ集合体100Lの全体構成)
図8を参照して、赤外線センサ集合体100Lの組立完成後の状態を説明する。図8(a)は集合体の組立後の状態を示し、(b)は(a)におけるI−I断面を示す。図8(a)において、赤外線センサ集合体100Lには複数の赤外線センサ100Lが配設されている。本実施例では4個の赤外線センサ100Lが配設されている。また、赤外線センサ集合体100Lには溝30が3つ配設され、各溝30の間に各赤外線センサ100Lが配列されている。(b)において、各溝30に挟まれた赤外線センサ100Lの断面を示す。
【0043】
次に、図9を参照して赤外線センサ集合体100Lの積層構造を説明する。図9(a)は赤外線センサ集合体100Lの積層構成の分解斜視図であり、(b)は(a)のJ−J断面を示し、(c)は(a)のK−K断面を示す。図9(a)において、下から、ベース集合体10L、焦電センサ素子5を接合接続した第1スペーサ集合体2L、第2スペーサ集合体3L、光学フィルタ4の順に積層可能な構造になっていて、各構成要素はそれぞれ、導電性接着剤6をスクリーン印刷などの方法によって適量を塗布し位置決めし、接着固定することができる。なお、第1スペーサ集合体2Lと第2スペーサ集合体3Lは上下の位置関係ではなく、焦電センサ素子5を接続固定する方を第1スペーサ集合体2Lとする。図示しない複数の位置決め孔をベース集合体10L、第1スペーサ集合体2L、第2スペーサ集合体3Lにそれぞれ設け、治具による位置決めが可能である。または、ベース集合体1L、第1スペーサ集合体2L、第2スペーサ集合体3Lに設けられた各溝30を位置決めに用いても良い。次に図9(b)、(c)を参照して第1スペーサ集合体2L、第2スペーサ集合体3Lの金属膜層の構成について説明する。図9(b)において、多層プリント基板からなる第2スペーサ集合体3Lは溝30の両側側面には金属膜層3cが、方形の中空構造内部の両側側面には金属膜層3dが形成され、上面と下面のパターン面とそれぞれ接続し、絶縁層3aを覆っている。他の素子部についても同様である。なお、第2スペーサ集合体3Lの周囲の縁部分は便宜上パターンが削除されているが、全面を金属膜層が覆っていてもよい。次に図9(c)において、第1スペーサ集合体2Lについて説明するが、図9(b)と同じ構成要素には同様の番号を付し重複する説明を省略する。図9(b)に示す第1スペーサ集合体2Lの金属膜層が第2スペーサ集合体3Lの金属膜層が異なるところは焦電体素子5の受け部の電極2bが分離されていることであり、図3に示す金属膜層2bの構成と同じである。
【0044】
(ベース集合体10Lの構成と手順)
次に、図10を参照してベース集合体10Lの回路部品の実装について説明する。図10において、(a)は部品を実装したベース集合体10Lの斜視図であり、(b)は1つのセンサ部のM部拡大図を示し、(c)はそのN−N断面を示す。図10において、図2と同じ構成要素には同一番号を付し、重複する説明を省略する。図10に示すベース集合体10Lが図2に示すベース10と異なるところは集合体構成になっており、溝30に挟まれて各素子部が配設されていることである。なお、回路部品の実装については、クリームハンダ印刷など一連の前処理後、図示しない実装機にセットし、リーク抵抗7、FET8を必要数量実装し、図示しないリフロー工程でハンダ付けを行うことができる。また、次工程の枠体を接合する前の段階で回路部品の実装が可能なため、極めて作業性が良い。以上の手順により、部品実装されたベース集合体10Lを得る。
【0045】
(焦電センサ素子5と枠体の接合手順)
次に、図11を参照して枠体と焦電センサ素子5との接合について説明する。図11(a)は第1スペーサ集合体2Lと焦電センサ素子5と第2スペーサ集合体3Lの接合手順を示す分解斜視図であり、(b)は(a)のP部拡大図を示し、(c)はQ部拡大図を示す。図11(a)において、図5(a)と同じ構成要素には同一番号を付し、重複する説明を省略する。11(a)に示す組立体20Lが図5(a)に示す組立体20と異なるところは、第1スペーサ2と第2スペーサ3がそれぞれ集合体になっていることである。なお、図11(b)P部拡大図と(c)Q部拡大図はそれぞれ、図3(a)と図4(a)に対応しており、中空構造の内側の側面については同じ構成であるため重複する説明を省略する。第1スペーサ集合体2Lと焦電センサ素子5、第2スペーサ集合体3Lの接合は、導電性接着剤6をスクリーン印刷などの方法によって適量を塗布し、図示しない実装機にセットし、焦電センサ素子5をそれぞれの素子部に位置決めして接着固定する。以上により、第1スペーサ集合体2L、焦電センサ素子5、第2スペーサ集合体3Lの組立体20Lを得る。
【0046】
(光学フィルタ4および全体の接合手順)
次に、図12を参照して光学フィルタ4および全体の接合手順について説明する。前述の組立体20Lの裏面に予め、導電性接着剤6をスクリーン印刷などの方法によって適量を塗布し、前述の回路部品が実装されたベース集合体10Lに位置決めして接合する。次に、接合された組立集合体20Lの上面に導電性接着剤6をスクリーン印刷などの方法によって適量を塗布し図示しない実装機にセットし、光学フィルタ4をそれぞれのセンサ部に実装し接着固定し、電気的に接続する。これにより、赤外線センサ集合体100Lを得る。
【0047】
(ダイシングによる個片化)
次に、図13を参照してダイシングによる個片化について説明する。図13において、図示しないダイシング装置に赤外線センサ集合体100Lをセットし、矢印の方向に順にダイシングブレード40を用いて切断する。すでに積層接着されたベース集合体10L、第1スペーサ集合体2L,第2スペーサ集合体3Lには前述した溝30が設けられているため、図示した矢印の方向に切断するだけでよく直交方向には切断しないで、個片化することができる。これにより、赤外線センサ100Lを得る。なお、実際のダイシング工程の詳細については省略する。
【0048】
次に、図14を参照して個片化された赤外線センサ100Lについて説明する。図14(a)は個片化された赤外線センサ100Lの斜視図であり、(b)は個片化された第1スペーサ集合体2Lの斜視図であり、(c)は個片化された第2スペーサ集合体3Lの斜視図である。図14(a)において、ダイシングにより切断された2つの面に直交する2つの面(溝30に相当)にはそれぞれ金属膜層2c、3cが形成されているが、ダイシング面には第1スペーサ集合体2Lの金属膜層の無い面2fと第2スペーサ集合体3Lの金属膜層の無い面3fが現れている。しかし、図14(b)に示すように、第1スペーサ集合体2Lの内側の側面には金属膜層2dが形成されており、また、図14(c)に示すように、第2スペーサ集合体3Lの内側側面すべてに金属膜層3dが形成されている。これにより、赤外線センサ100Lは、第1スペーサ集合体2Lまたは第2スペーサ集合体3Lの外側の側面または内側の側面のいずれかに金属膜層が形成されていることになる。以上により、赤外線センサ100Lにおいて、底面はベース1Lの中間層の金属膜層に覆われ、側面は第1スペーサ集合体2Lと第2スペーサ集合体3Lの金属膜層に覆われ、上面は光学フィルタ4に覆われ、電磁シールドに優れた構造を得る。
【0049】
〔実施形態の効果〕
以上説明した第2実施形態とその製造方法によれば、次に示す効果が得られる。
【0050】
(1)ベース集合体10L、焦電センサ素子5を接合した第1スペーサ集合体2L、第2スペーサ集合体3L、光学フィルタ4による積層構造となっており、導電性接着剤6を介して、決められた手順に従って積層し接合する工程を繰り返すことにより組立ができるので、製造工程が単純で量産性に優れる。
【0051】
(2)ベース集合体10Lの回路部品の実装工程において、枠体などの障害物が無い状態で、一般的な表面実装機を使用することが可能であり、量産性に優れ、安価な製造方法を実現できる。また、実装部品の接合品質の確認が容易で品質に優れる。
【0052】
(3)多層プリント基板からなるベース1、第1スペーサ2、第2スペーサ3を集合体による製造方法を採用することが可能になり、極めて量産性に優れる。しかも、完全な密閉構造のため、工程上の対防塵性も良く高品質な製品が得られる。
【0053】
なお、本発明に係る赤外線センサ100Lは上記実施形態に限定されるものではない。焦電センサ素子5の実装について、第1スペーサ集合体2L、焦電センサ素子5、第2スペーサ集合体3Lの組立体20Lをサブアッセンブリーにする工程としたが、ベース集合体10Lに第1スペーサ集合体2Lを接合後に焦電センサ素子5を実装し接合する手順でも良い。また、第2スペーサ集合体3Lの中空構造の内側の側面の金属膜層はすべての面に有る必要はなく、ダイシングにより切断された面に直交する面には無くても良い。また、導電性接着剤6の塗布はスクリーン印刷による方法としたが、ディスペンサによる定量塗布方法でもよいし、シート状のものを採用してもよい。また、ベース集合体1Lの下層1cには表面実装が可能なパターンを形成したとしたが、リード端子を付加することもできる。また、中空構造に加工された多層プリント基板の側面に形成する金属膜層は無電解Niメッキ工法やMID工法などが可能である。赤外線センサ集合体100Lの取り個数を4個としたが、これに限定されるものではなく複数個であれば良い。
【符号の説明】
【0054】
1、1L ベース(多層プリント基板)
10、10L ベース(部品実装)
1a、1b、1c、1d 上層、中間層、下層、絶縁層
2、2L 第1スペーサ(多層プリント基板)
2A、2B 焦電センサ素子の受け部および電極
2a 絶縁層
2b 電極(金属膜層)
2c 外側側面を形成する金属膜層
2d 内側側面を形成する金属膜層
2e 内側側面で金属膜層が無い面
2f 外側側面で金属膜層が無い面
3、3L 第2スペーサ(多層プリント基板)
3a 絶縁層
3c 外側側面を形成する金属膜層
3d 内側側面を形成する金属膜層
3f 外側側面で金属膜層が無い面
4 光学フィルタ
5 焦電センサ素子
6 導電性接着剤
9 GND端子
40 ダイシングブレード
100、100L 赤外線センサ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
焦電センサ素子と、赤外線を選択的に通過させる光学フィルタと、前記焦電センサ素子から出力される信号を処理する回路部を備える焦電型赤外線センサにおいて、回路部品が実装された多層プリント基板からなるベースと、中空構造に加工された多層プリント基板の側面に金属膜層を形成した第1スペーサと第2スペーサからなる枠体を構成し、前記枠体内に前記焦電センサ素子を実装した状態で前記光学フィルタと枠体とベースとを積層して導電性接着剤にて接合することを特徴とする焦電型赤外線センサ。
【請求項2】
前記第1スペーサに、前記焦電センサ素子を電気的に接続固定するための受け部と電極を設けたことを特徴とする請求項1に記載の焦電型赤外線センサ。
【請求項3】
前記第1スペーサと第2スペーサの側面に形成された金属膜層はそれぞれ多層プリント基板の電極と電気的に接続され、かつ、GNDに接続したことを特徴とする請求項1または2に記載の焦電型赤外線センサ。
【請求項4】
前記ベースにおいて、多層プリント基板の少なくとも1つの中間層をGNDに接続することを特徴とする請求項1〜3に記載の焦電型赤外線センサ。
【請求項5】
集合基板構造をなす前記ベースと、集合基板構造をなし前記焦電センサ素子を電気的に接続固定した前記第1スペーサと、集合基板構造をなす前記第2スペーサと、前記光学フィルタを積層し、導電性接着剤にて接合した後にダイシングにより切り離し個片化することを特徴とする焦電型赤外線センサの製造方法。
【請求項6】
前記集合基板構造をなす前記第1スペーサまたは、前記集合基板構造をなす第2スペーサにおける中空構造に加工された多層プリント基板の側面に形成される金属膜層は、直交する2対の辺の一方の辺は、枠形状の外側の側面に金属層が形成され、他方の辺は枠形状の内側の側面に金属層が形成されている請求項5記載の焦電型赤外線センサの製造方法。
【請求項7】
前記集合基板構造をなす前記第1スペーサまたは前記集合基板構造をなす第2スペーサにおける中空構造に加工された多層プリント基板の内側の側面で金属膜層が形成されていない1対の辺に焦電センサ素子を支持するための受け部と電極を設けたことを特徴とする請求項5または請求項6記載の焦電型赤外線センサの製造方法。
【請求項1】
焦電センサ素子と、赤外線を選択的に通過させる光学フィルタと、前記焦電センサ素子から出力される信号を処理する回路部を備える焦電型赤外線センサにおいて、回路部品が実装された多層プリント基板からなるベースと、中空構造に加工された多層プリント基板の側面に金属膜層を形成した第1スペーサと第2スペーサからなる枠体を構成し、前記枠体内に前記焦電センサ素子を実装した状態で前記光学フィルタと枠体とベースとを積層して導電性接着剤にて接合することを特徴とする焦電型赤外線センサ。
【請求項2】
前記第1スペーサに、前記焦電センサ素子を電気的に接続固定するための受け部と電極を設けたことを特徴とする請求項1に記載の焦電型赤外線センサ。
【請求項3】
前記第1スペーサと第2スペーサの側面に形成された金属膜層はそれぞれ多層プリント基板の電極と電気的に接続され、かつ、GNDに接続したことを特徴とする請求項1または2に記載の焦電型赤外線センサ。
【請求項4】
前記ベースにおいて、多層プリント基板の少なくとも1つの中間層をGNDに接続することを特徴とする請求項1〜3に記載の焦電型赤外線センサ。
【請求項5】
集合基板構造をなす前記ベースと、集合基板構造をなし前記焦電センサ素子を電気的に接続固定した前記第1スペーサと、集合基板構造をなす前記第2スペーサと、前記光学フィルタを積層し、導電性接着剤にて接合した後にダイシングにより切り離し個片化することを特徴とする焦電型赤外線センサの製造方法。
【請求項6】
前記集合基板構造をなす前記第1スペーサまたは、前記集合基板構造をなす第2スペーサにおける中空構造に加工された多層プリント基板の側面に形成される金属膜層は、直交する2対の辺の一方の辺は、枠形状の外側の側面に金属層が形成され、他方の辺は枠形状の内側の側面に金属層が形成されている請求項5記載の焦電型赤外線センサの製造方法。
【請求項7】
前記集合基板構造をなす前記第1スペーサまたは前記集合基板構造をなす第2スペーサにおける中空構造に加工された多層プリント基板の内側の側面で金属膜層が形成されていない1対の辺に焦電センサ素子を支持するための受け部と電極を設けたことを特徴とする請求項5または請求項6記載の焦電型赤外線センサの製造方法。
【図1(A)】
【図1(B)】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図1(B)】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2013−50359(P2013−50359A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−187889(P2011−187889)
【出願日】平成23年8月30日(2011.8.30)
【出願人】(000131430)シチズン電子株式会社 (798)
【出願人】(000001960)シチズンホールディングス株式会社 (1,939)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月30日(2011.8.30)
【出願人】(000131430)シチズン電子株式会社 (798)
【出願人】(000001960)シチズンホールディングス株式会社 (1,939)
【Fターム(参考)】
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