説明

煙感知器検査装置

【課題】煙感知器検査装置において、簡単な構成により、空気の流れに影響されることなく検査用の煙を煙感知器に効率良く安定に流入可能とし、精度良い検査を可能とする。
【解決手段】煙感知器検査装置1は、検査槽2内に煙粒子を流し、検査槽2内に配置した煙感知器3の性能を検査する装置であって、検査槽2内に煙を発生させる煙発生器4と、煙発生器4により発生され帯電した煙粒子に電界を作用させるための電極Eと、を備え、電極Eによって発生した電界により煙粒子の流速を高めて煙粒子を煙感知器3に流入させる。また、煙感知器検査装置1は、検査槽2内の煙濃度を検出する煙濃度センサSを備え、煙濃度センサSによって検出された煙濃度の値に応じて電極Eに印加する電圧を制御する。これにより、帯電している煙粒子の流速を電界によって高めるので、検査用の煙粒子のみを選択的に煙感知器に流入させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、煙感知器を検査するための検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、一定濃度の煙を検査槽内の回転送風路で循環させて煙感知器の感度特性を検査する煙感知器検査装置においては、煙濃度や風速をより安定させて検査精度を向上する努力が行われている。例えば、煙を送風循環させる検査槽に、煙発生部と複数のクロスフローファンと整流板と複数の風速センサーとを設け、前記各クロスフローファンに対応して前記整流板によって複数の煙流路を形成し、各煙流路に対応してそれぞれ前記風速センサーを配設し当該風速の検出により各クロスフローファンを制御するようにした煙感知器検査装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平11−185182号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述した特許文献1に示されるような煙感知器検査装置においては、クロスフローファンによる送風によって煙を循環させるので、煙検知器周辺の空気が煙とともに煙検知器内部に流入しようとして煙検知器付近に乱流が発生し、その乱流が煙の流入性が低下させてしまうという問題がある。
【0004】
本発明は、上記課題を解消するものであって、簡単な構成により、空気の流れに影響されることなく検査用の煙を煙感知器に効率良く安定して流入させることが可能で精度良く検査できる煙感知器検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を達成するために、請求項1の発明は、検査槽内に煙粒子を流し、該検査槽内に配置した煙感知器の性能を検査する煙感知器検査装置において、前記検査槽内に煙を発生させる煙発生器と、前記煙発生器により発生され帯電した煙粒子に電界を作用させるための電極と、を備え、前記電界により煙粒子の流速を高めて該煙粒子を煙感知器に流入させるものである。
【0006】
請求項2の発明は、請求項1に記載の煙感知器検査装置において、前記検査槽内の煙濃度を検出する煙濃度センサを備え、前記センサによって検出された煙濃度の値に応じて前記電極に印加する電圧を制御するものである。
【0007】
請求項3の発明は、請求項1または請求項2に記載の煙感知器検査装置において、前記電極が前記検査槽内の煙粒子の移動方向に沿って複数配設されており、電圧を印加する電極を煙粒子の流速が高まるように順次切り替えるものである。
【0008】
請求項4の発明は、請求項1または請求項2に記載の煙感知器検査装置において、前記電極が前記煙感知器の煙流入口に近接して配設されているものである。
【0009】
請求項5の発明は、請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の煙感知器検査装置において、前記検査槽内に煙攪拌用のファンを備えたものである。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の発明によれば、帯電している煙粒子の流速を電界によって高めるので、空気の流れに影響されることなく検査用の煙粒子のみを選択的に効率良く安定して煙感知器に流入させることができ精度良い検査が可能となる。
【0011】
請求項2発明によれば、煙濃度に応じて電界強度を変化させることにより、煙検知器に流入する煙濃度を一定に保持する制御が可能となるので、精度良い検査ができる。
【0012】
請求項3の発明によれば、複数配置した電極によって煙粒子の流れ方向や流速を制御できるので、整流板などを用いる場合に比べて流路損失を低く抑えることができ、検査用の煙を煙感知器に効率良く安定して流入させることができ、精度良い検査ができる。
【0013】
請求項4の発明によれば、煙粒子を、より直接的に導いて煙感知器に効率良く安定して流入させることができる。また、煙検知器の周辺のみに電極を配置するので、煙感知器検査装置の小型化が図られる。
【0014】
請求項5の発明によれば、煙を攪拌することにより均一な濃度の煙を煙検知器に供給でき、安定した精度良い検査ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
(第1の実施形態)
図1、図2を参照して第1の実施形態に係る煙感知器検査装置を説明する。煙感知器検査装置1は、検査槽2内に煙粒子を流し、検査槽2内に配置した煙感知器3の性能を検査する装置であって、検査槽2内に煙を発生させる煙発生器4と、煙発生器4により発生され帯電した煙粒子に電界を作用させるための電極Eと、を備え、電極Eによって発生した電界により煙粒子の流速を高めて煙粒子を煙感知器3に流入させるように構成されている。また、煙感知器検査装置1は、検査槽2内の煙濃度を検出する煙濃度センサSを備え、煙濃度センサSによって検出された煙濃度の値に応じて電極Eに印加する電圧を制御するように構成されている。
【0016】
さらに詳述すると、検査槽2は、水平に設置された略直方体形状の容器であり、内部中央に水平に設けた四角形の仕切り板20によって上下に区分されている。検査槽2内で、煙粒子から成る煙は一方方向に流れる。煙粒子の流路は、図1の配置において仕切板20の上方で右から左へ、仕切板20の左端で上から下へ、仕切板20の下方で左から右へ、そして、仕切板20の右端で下から上へと左回りに設定されている。
【0017】
仕切板20で仕切られた上部空間は検査室21であり、その天井部分に煙感知器3が煙感知部30を下向きに突設させて配置され、煙感知器3が対向する仕切板20上の位置に煙濃度センサSが配置されている。煙濃度センサSは、予め較正された煙感知器3を用いることができる。また、煙濃度センサSは、一定の光を常時発生する発光部と、その光を受光する受光部とを用いて構成することもできる。
【0018】
仕切板20の右辺部には紙面奥行き方向に回転軸を有する乱流を発生しない低風速条件のもとで用いるクロスフローファン22が設けられている。クロスフローファン22は、その回転軸に直交する風速を精度よくコントロールすることができる。
【0019】
検査室21の左側には、流路を横切るように電極Eが設けられている。電極Eは、空気や煙粒子の流れを妨げないように形成され、例えば、導電体により網状またはスリット状に形成されている。
【0020】
仕切板20の下部空間は、煙発生室であって、左方に整流板23が設けられ、中央右側寄りに煙発生器4が設けられている。煙発生器4は、任意の枚数の紙片を高温のヒーター上に接触させて発煙させたり、煙粒子の代替としてパラフィンミスト粒子を発生させたりする装置である。煙発生器4によって発生する煙粒子、または煙粒子代替のパラフィンミストを形成する粒子等(以下、総称して煙粒子)は、一般に、その粒子発生時に負に帯電して発生することが知られている。
【0021】
電極Eには、直流電源10の正極が接続されている。直流電源10の負極は、検査槽2の筐体に接地されている。本実施例の場合、前記負極は煙発生器4に接地されている。なお、筐体とは別個に専用の負電極を煙流路の周辺に配置して、その負電極に直流電源10の負極を接続するようにしてもよい。
【0022】
次に、上述のように構成された煙感知器検査装置1の動作を説明する。電極Eに正電圧を印可して電極Eの垂直方向に電界を発生させ、クロスフローファン22を動作させた状態で、煙発生器4によって煙粒子を発生させる。煙粒子は空気の流れに沿って検査室21に流入する。すると、煙粒子のうち、負に帯電した煙粒子は、煙感知器3の前方(下流側)に配置された電極Eからの静電引力を受けて流速を増し、個々の煙粒子のランダムな移動方向が電極Eの方向により整列される。
【0023】
また、煙濃度センサSによって検出された煙濃度の値に応じて、例えば、煙濃度が低い場合には、電極Eに印加する電圧を高めて煙粒子をより多く引き寄せることにより、煙濃度を高めるように制御する。
【0024】
上述のように、本実施形態の煙感知器検査装置1によれば、帯電している煙粒子の流速を電界によって高めることができるので、空気の流れに依存することなく、また空気の乱流などに影響されることなく検査用の煙粒子のみを選択的に効率良く安定して煙感知器3に流入させることができる。空気の流速を抑えて、低風速条件のもとで効率良く煙粒子を煙感知器3に流入させることができ、精度良い検査が可能となる。
【0025】
また、煙の検出濃度に応じて電極Eによる電界強度を変化させることにより、煙検知器3に流入する煙濃度を一定に保持する制御が可能となるので、安定した精度良い検査ができる。
【0026】
(第2の実施形態)
図3を参照して第2の実施形態に係る煙感知器検査装置を説明する。本実施形態における煙感知器検査装置1は、第1の実施形態における電極Eを、煙感知器3の手前側(上流側)に配置したものであり、他の点は第1の実施形態と同様である。
【0027】
本実施形態においては、煙粒子は電極Eを通過した後、煙感知器3に流入する構成とされている。このような電極Eを有効に動作させるには、上流の煙粒子を加速する際に電極Eに電圧を印加し、煙粒子が電極Eを通過する際には煙粒子が電極Eに吸着されないように電源10をオフすればよい。また、煙発生器4を間欠的に動作させることにより、煙粒子の集団をパルス的に発生させ、その煙粒子の集団の移動に同期させて、電極Eに印加する電圧をオン、オフするようにしてもよい。
【0028】
(第3の実施形態)
図4を参照して第3の実施形態に係る煙感知器検査装置を説明する。本実施形態における煙感知器検査装置1は、第1の実施形態における電極Eと電源10とに加え、煙感知器3の上流側に検査槽2内の煙粒子の移動方向に沿って複数配設した電極e1,・・,en(総称して電極e)と、これらの電極eに印加する電圧を、煙粒子の流速が高まるように順次切り替える切替スイッチ12とを備えたものであり、他の点は第1の実施形態と同様である。なお、クロスフローファン22が、電極Eの下流側の位置に設けられているが、第1の実施形態における位置との違いは本質的なものではない。
【0029】
電極e1,・・,enは、上流側からこの順番で、煙粒子の流れる流路に沿って、煙粒子の流れを妨げないように配置されている。煙発生器4で発生された煙粒子は、移動の先々で前方の電極eからの静電引力を受けて加速される。この場合、加速中の煙粒子を減速しないように、後方の所定範囲の電極eは電圧をオフにすればよい。この場合も、煙発生器4を間欠的に動作させることにより、煙粒子の集団をパルス的に発生させ、その煙粒子の集団の移動に同期させて、切替スイッチ12によって、電極eに印加する電圧を次々とオン、オフするようにしてもよい。あるいは、電圧を印加する電極eの切替によって強制的に煙粒子の粗密化を図って煙粒子群とする、いわゆるバンチングを行うようにしてもよい。
【0030】
本実施形態の煙感知器検査装置によれば、上流側の流路に沿うように配置した複数の電極e1,・・,enによって煙粒子の流れ方向制御や流速を高める制御ができるので、整流板などを用いる場合に比べて流路損失を低く抑えることができ、検査用の煙を煙感知器3に効率良く安定流入させることができ、精度良い検査を効率的に行うことができる。
【0031】
(第4の実施形態)
図5乃至図7を参照して第4の実施形態に係る煙感知器検査装置を説明する。本実施形態における煙感知器検査装置1の検査槽2は、図5に示すように、多段円筒形を有する縦型の構成であって、内部下方に不図示の煙発生器を備えている。検査槽2の上端は、Oリング等の封止材25を介して、煙感知器3の表面において終端している。煙感知器3は、複数の煙流入口5を有する煙感知部30を検査槽2の検査室21に望ませて配置されている。また、図5、図6に示すように、煙流入口5に近接して、複数の電極Eが配設されている。各電極Eは、共通の電源10に接続されて、正電圧を印加される。
【0032】
なお、煙感知部30は、遮光壁51によって構成された内部空間と、中心方向から偏向させた多数の煙流入口5を備えて構成されている。前記内部空間には発光部6と受光部7とが設けられ、煙粒子による散乱減光によって煙粒子濃度を検出するようになっている。煙感知部30の外形を、図7(a)(b)に示す。煙感知部30の上部には、配線の導入などのための開口31が開いている。
【0033】
検査槽2の下方Aから流れてきた煙粒子は、煙流入口5から煙感知部30の内部に入り、上部の開口31から、上方Bに向けて流れ出ていく。そこで、電極Eに正電圧を印加することにより、空気の流速を抑えて乱流の発生しない低風速条件のもとで、空気の流れとは独立に、帯電した煙粒子を引きつけて、煙粒子を効率的に煙感知部30内部に流入させることができる。すなわち、本実施形態の煙感知器用検査装置1によれば、煙検知器3の各煙流入口5に検査用の煙を、より直接的に導くことができるので、空気の乱流に邪魔されることなく煙を煙感知器3に効率良く安定して流入させることができる。また、煙検知器3の周辺のみに電極Eを配置できるので、煙感知器検査装置1の小型化が図られる。
【0034】
(第5の実施形態)
図8を参照して第5の実施形態に係る煙感知器検査装置を説明する。本実施形態における煙感知器検査装置1は、第3の実施形態における電極e(電極e1,・・,enの総称)を、煙流路を遮るように配置したものであり、他の点は第3の実施形態と同様である。ただ、電極eは、煙粒子の移動を妨げないように、例えば、目の粗い網状に形成されている。切替スイッチ12を用いて各電極eに電圧を印加する制御などは、第3の実施形態と同様である。本実施形態の煙感知器検査装置1によると、煙粒子を各電極eに垂直に通過させることができるので、第3の実施形態の煙感知器検査装置1に比べて、煙粒子をより煙流路に沿って加速できるという効果がある。
【0035】
(第6の実施形態)
図9を参照して第6の実施形態に係る煙感知器検査装置を説明する。本実施形態における煙感知器検査装置1は、第1の実施形態において、煙発生器4の上流に煙攪拌用のファン6を備え、煙発生器4の下流直近に煙粒子を強制的に負に帯電させるための電子シャワー装置7を備えたものであり、他の点は第3の実施形態と同様である。
【0036】
攪拌用のファン6として、プロペラファンを好適に用いることができる。プロペラファンは、プロペラによって回転軸方向に風速を発生させることにより、煙発生器4で発生させた煙を煙流路内に均一濃度に広げることができる。すなわち、煙を攪拌することにより均一な濃度の煙を煙検知器3に供給でき、安定した精度良い検査ができる。
【0037】
また、電子シャワー装置7は、煙粒子の帯電率を強制的に向上させるので、電極Eによる効果をより高めることができる。
【0038】
なお、本発明は、上記構成に限られることなく種々の変形が可能である。例えば、上述した各実施形態の構成を互いに組み合わせた構成とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る煙感知器検査装置の断面図。
【図2】同上装置の内部斜視図。
【図3】第2の実施形態に係る煙感知器検査装置の断面図。
【図4】第3の実施形態に係る煙感知器検査装置の断面図。
【図5】第4の実施形態に係る煙感知器検査装置の断面図。
【図6】同上装置の断面図。
【図7】(a)は同上装置によって検査される煙感知器の側面図、(b)は同煙感知器の煙感知部の斜視図。
【図8】第5の実施形態に係る煙感知器検査装置の断面図。
【図9】第6の実施形態に係る煙感知器検査装置の断面図。
【符号の説明】
【0040】
1 煙感知器検査装置
2 検査槽
3 煙感知器
4 煙発生器
5 煙流入口
6 プロペラファン
E,e1〜en 電極
S 煙濃度センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査槽内に煙粒子を流し、該検査槽内に配置した煙感知器の性能を検査する煙感知器検査装置において、
前記検査槽内に煙を発生させる煙発生器と、
前記煙発生器により発生され帯電した煙粒子に電界を作用させるための電極と、を備え、
前記電界により煙粒子の流速を高めて該煙粒子を煙感知器に流入させることを特徴とする煙感知器検査装置。
【請求項2】
前記検査槽内の煙濃度を検出する煙濃度センサを備え、前記センサによって検出された煙濃度の値に応じて前記電極に印加する電圧を制御することを特徴とする請求項1に記載の煙感知器検査装置。
【請求項3】
前記電極が前記検査槽内の煙粒子の移動方向に沿って複数配設されており、電圧を印加する電極を煙粒子の流速が高まるように順次切り替えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の煙感知器検査装置。
【請求項4】
前記電極は前記煙感知器の煙流入口に近接して配設されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の煙感知器検査装置。
【請求項5】
前記検査槽内に煙攪拌用のファンを備えたことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の煙感知器検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−9225(P2010−9225A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−166208(P2008−166208)
【出願日】平成20年6月25日(2008.6.25)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】