説明

照明用LEDランプの電源装置および照明システム

【課題】位相制御された交流電力をLEDランプの電源電力に変換して供給する電源装置であって、電力ロスを増大させることなく、かつ、突入電流による位相制御装置の誤動作を確実に防止できる照明用LEDランプの電源装置を供給することにある。
【解決手段】交流電力が供給される一対の入力端子3,4に対して並列接続されるノイズ防止用コンデンサC1と、一方の入力端子3およびコンデンサC1の間に接続される突入電流制限回路5と、コンデンサC1を通過する交流電力をLEDランプ2の電源電力に変換する変換回路7とを備える。突入電流制限回路5は、コイルL1および抵抗R1を並列接続した回路を有する。位相制御された交流電力が供給された際、導通直後にコンデンサC1に流入する突入電流が突入電流制限回路5によって制限される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は照明用LEDランプの電源装置および照明システムに関し、特に、電源装置における調光機能の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ハロゲンランプなどの白熱ランプ用の調光機能を備えた電源装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。調光機能とは、照明器具の照度を適宜変更する機能であり、白熱ランプの調光には、位相制御方式の調光器が広く用いられている。
近年、長寿命などの特徴を持つLEDランプの高出力化が進み、従来型ランプに代えて街路灯、車のヘッドライトなどにLEDランプを用いる試みがある。このような現状に対し、発明者は、従来型ランプに用いられてきた既存の調光器をそのまま、LED照明の調光器として用いる研究を鋭意行ってきた。白熱ランプの調光器を用いてLEDランプを調光することができれば、LED照明の利便性を高める上で、非常に好都合である。
【0003】
上記の特許文献1に記載の電源装置は、点灯スイッチ、位相制御回路および白熱ランプの直列回路によって構成され、商用の交流電源に接続されている。位相制御回路は、トライアックを有し、トライアックに対して可変抵抗およびコンデンサの直列回路が並列に接続されている。可変抵抗及びコンデンサ間の接続点とトライアックのゲートとの間にトリガ素子(ダイアック)が接続され、可変抵抗の抵抗値が調光つまみの操作により変化するようになっている。
【0004】
このような調光回路では、点灯スイッチのオンによってトライアックがすぐに導通するわけではなく、まず位相制御回路の可変抵抗およびコンデンサに交流電源が供給される。そして、可変抵抗およびコンデンサの時定数に基づくタイミングでトリガ素子からトライアックに向けてトリガ信号が出力される。トライアックは、トリガ信号の入力時から交流電圧波形の半周期が終わるまでの間、オンとなり、白熱ランプへ点灯電流を供給する。
【0005】
調光の際、調光つまみを回動操作して、可変抵抗の抵抗値を変化させる。すると、抵抗値の変化に応じて交流電圧波形に対するトリガ信号の位相が変化し、トライアックのオン期間が長短する。これにより、白熱ランプへの負荷電流が変化し、白熱ランプの明るさが変更される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭51−116068号公報
【特許文献2】特開2004−296205号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
通常、交流電源を用いてLEDランプを点灯させるには、交流電力をLEDランプに適応できる所定の電源電力に変換する変換回路が必要となる。従って、前記特許文献1に記載の電源装置を用いて、位相制御された交流電力をLEDランプに供給する場合には、位相制御回路と、LEDランプとの間に変換回路を設ける必要がある。
【0008】
このような変換回路を設ける場合、交流電源からの電源ノイズを除去するためのノイズ除去回路を併設させる場合が多い。図4(A)に、交流電源51、位相制御回路52、ノイズ除去回路53、変換回路54およびLEDランプ55を有する回路構成を示す。
交流電力が位相制御されない通常の電圧波形のものであれば、交流の半周期においてゼロから連続的に上昇する電圧が、ノイズ除去回路53を構成するコンデンサC1に印加される。
しかしながら、図4(A)のように位相制御された交流電力を供給する場合、トライアック56がオンとなる瞬間に、ゼロ電圧からではなく、いきなり大きな電圧がコンデンサC1に印加され、コンデンサC1に過大な瞬時電流が流れる。このため、トライアック56の誤動作が発生してしまう。誤動作とは、トライアック56がオンした直後、過大な瞬時電流によって電圧が降下し、トライアック56がすぐにオフして非導通状態になってしまう現象を指す。以降、このような過大な瞬時電流のことを突入電流と呼ぶ。
【0009】
突入電流によって、位相制御回路52が誤動作すると、ランプ電流が低下し、LEDランプ55にチラツキが発生してしまう。従って、特許文献1の電源回路をLEDランプに用いる場合には、LEDランプにチラツキが生じないように、位相制御回路の誤動作を防止する対策が必要となる(第1の課題)。
【0010】
これに対して、特許文献2に記載のLEDランプ用の電源装置は、図4(B)に示すように、位相制御回路52よりもLEDランプ側において、交流電源51に対して並列接続された並列抵抗RHを有する。並列抵抗RHは、白熱ランプの発熱により生じるランプ抵抗に似た機能があり、コンデンサC1への突入電流を防止する。
【0011】
しかしながら、特許文献2の電源装置では、並列抵抗RHがコンデンサC1と並列に接続されているので、常時、並列抵抗RHに電流が流れ、特に交流電圧の振幅が大きい期間には大きな電流が流れてしまう。このように並列抵抗RHは、電源装置における電力ロスの原因となっている(第2の課題)。
【0012】
並列抵抗RHは、前述の第1の課題の対策のために設けられたものであるから、白熱ランプ用の電源装置をLEDランプに使用するための代償と考えれば、このような電力ロスの増加は容認できるとも考えられる。しかしながら、近年では、LED照明の改善が目覚しく、消費電力・明るさともに増加している。従って、LED照明の効率(lm/W)の改善のためには、並列抵抗RHによる電力ロスが無視できなくなってきた。
特許文献2の技術において、並列抵抗RHに流れる電流が必要最小限となるように抵抗値を選択することで、並列抵抗RHによる電力ロスを最小化できるが、照明負荷の接続台数に応じて可変抵抗を適切に調節するのは容易ではなく、非常に手間がかかる。また、常時接続されている並列抵抗RHには、交流電圧の振幅が大きい期間には大きな入力電流が流れるため、抵抗値が必要以上に大きいと、その分の電力ロスも無視できなくなる。従って、並列抵抗RHの抵抗値は低めに設定する必要がある。一方、位相制御回路の誤動作を確実に防止するためには、並列抵抗RHの抵抗値を高めに設定してある程度の余裕を持たせることが好ましい。このように、並列抵抗RHを用いて、誤動作防止と電力ロスの低減との効果を両立させるのは非常に困難であった。
【0013】
従って、本発明の目的は、白熱ランプに供給される位相制御された交流電力を用いて、LEDランプに電源電力を供給する場合であっても、前記第1、第2の課題を解決することができ、つまり、電力ロスを増大させることなく、かつ、突入電流による位相制御装置の誤動作を確実に防止できる照明用LEDランプの電源装置および照明システムを供給することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の課題を解決するために本発明にかかる照明用LEDランプの電源装置は、交流電力を所定の電源電力に変換してLEDランプに供給するものであって、
前記交流電力が供給される一対の入力端子と、
前記一対の入力端子に対して並列接続されるコンデンサと、
前記入力端子の一方および前記コンデンサの一端の間に接続される突入電流制限回路と、
前記突入電流制限回路および前記コンデンサを通過する交流電力を前記LEDランプの電源電力に変換する変換回路と、を備える。
前記突入電流制限回路は、コイルおよび抵抗を並列接続した回路を有する。
各半周期の途中で交流電流を導通させることにより位相制御された交流電力が前記入力端子に供給される場合、前記突入電流制限回路は、前記交流電流の導通直後に前記入力端子から前記コンデンサに短絡的に流入する電流を制限することを特徴とする。
【0015】
ここで、交流電力を予め位相制御する方法としては、例えば、トライアックを用いた位相制御装置を交流電源と本発明の電源装置との間に接続して、各半周期の途中でトライアックをオンさせることで交流電流を導通させるという方法を採用できる。
また、本発明では、交流電流の導通直後に入力端子からコンデンサに短絡的に流入する電流のことを瞬時電流と呼び、特に、位相制御の誤動作の原因となるような過大な瞬時電流を突入電流と呼ぶものとする。以降、本発明のコンデンサをC1、突入電流制限回路の抵抗をR1、コイルをL1として説明する。
【0016】
本発明において、交流電流が導通する直前における、コンデンサC1のインピーダンスはゼロであり、コイルL1のインピーダンスは無限大である。導通した瞬間に入力端子に印加される交流電圧をV1とすると、突入電流制限回路への瞬時電流の最大値は、V1/R1で示される。従って、瞬時電流の最大値は、抵抗R1により決定されると言える。導通後は、コンデンサC1に印加される電圧が徐々に増加し、また、コイルL1に流れる電流も増加する。従って、定常状態に達するとコイルL1および抵抗R1の並列回路のインピーダンスは、コイルL1の抵抗成分のみとなり、ゼロに近い抵抗値となる。つまり、突入電流制限回路の抵抗R1が接続されていない状態と等しくなる。
【0017】
従って、本発明によれば、突入電流制限回路を設けたことにより、位相制御によって半周期の途中で交流電流が導通しても、コンデンサC1への瞬時電流が抵抗R1により制限されるので、突入電流の発生を防止することができる。これにより、位相制御におけるトライアックなどのオン・オフの切り替え(スイッチング)の誤動作を防止でき、点弧ミスを無くせる。
また、コイルL1を抵抗R1に対して並列接続したことにより、導通から次の半周期までの定常状態においては、突入電流制限回路の抵抗値がゼロに近くなり、抵抗R1を設けたことによる電力ロスを避けることができる。
以上の回路構成を備えた本発明の電源装置によれば、従来の白熱ランプ用の位相制御装置を用いる場合であっても、点弧ミスおよび電力ロスの増大が生じることなく、所定の電源電力をLEDランプに供給することができ、LEDランプの照度を調整することができる。
【0018】
また、コイルL1は、インダクタンスが大きいほど突入電流の制限機能が良くなるという特性を有する。しかし、コイルL1のインダクタンスが大き過ぎると、コイルL1によって交流電流の流れが制限されたり、交流電流の波形が歪んだりする可能性がある。一方、コイルL1のインダクタンスが小さ過ぎると、突入電流の制限機能が低下する。以上のことから、本発明の電源装置において、前記交流電力を100V以上、120V以下として、前記LEDランプの負荷を1W以上、100W以下とした場合、前記コイルとして100μH以上、10mH以下のインダクタンスを有するチョーク・コイルを用いることが好ましい。
【0019】
また、抵抗R1は、その抵抗値が大きいほど突入電流の最大値の制限機能が良くなるという特性を有する。しかし、抵抗値が大き過ぎると、コイルL1の作用が顕著に現れ、逆起電力によって交流電流の位相が遅れてしまう可能性がある。一方、抵抗値が小さ過ぎると、突入電流の制限機能が悪くなってしまう。以上のことから、本発明の電源装置において、前述の100μH以上、10mH以下のインダクタンスを有するチョーク・コイルを用いた場合、前記抵抗の抵抗値を1Ω〜100Ωとすることが好ましい。
【0020】
また、本発明に係る照明システムは、
各半周期の途中で交流電流を導通させることにより位相制御された交流電力を出力する位相制御装置と、
前記位相制御装置からの交流電力を分岐する分岐装置と、
前記分岐装置にそれぞれ接続される複数の照明器具と、を備え、
前記複数の照明器具は、白熱ランプとLEDランプとを少なくとも1つずつ有し、
前記LEDランプは、請求項1または2記載の電源装置を介して前記分岐装置に接続されていることを特徴とする。
【0021】
本発明によれば、既設の白熱ランプ用の位相制御装置をそのまま使って、簡単に低コストでLEDランプの調光を実施できる。また、突入電流による他の照明器具の動作への影響の心配もない。
【発明の効果】
【0022】
以上の回路構成を備えた本発明の電源装置および照明システムによれば、白熱ランプに供給される位相制御された交流電力を用いて、LEDランプに電源電力を供給する場合であっても、電源装置での電力ロスを増大させることなく、かつ、突入電流による位相制御装置の誤動作を確実に防止することができる。従って、チラツキが生じたり、効率の低下を招いたりすることなく、LEDランプの調光を実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施形態にかかる照明用LEDランプの電源装置の回路構成の説明図である。
【図2】図1の電源装置を用いた照明用LEDランプの照明システムの全体構成の説明図である。
【図3】(A)は、位相制御された交流電力の電圧波形を示す図であり、(B)は、比較例として本発明の突入電流制限回路を有さない電源装置を用いた場合の電流波形を示す図であり、(C)は、図1の電源装置を用いた場合の電流波形を示す図である。
【図4】(A)は、従来の電源装置の概略回路構成の説明図であり、(B)は、従来の他の電源装置の概略回路構成の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面に基づき本発明にかかる照明用LEDランプの電源装置1の好適な一実施形態について説明する。
図1に示すように、電源装置1は、位相制御された交流電力を所定の電源電力に変換してLEDランプ2に供給するためのものであって、一対の入力端子3,4と、突入電流制限回路5と、ノイズ除去回路6と、変換回路7とを備えている。
【0025】
入力端子3,4は、位相制御装置8を介して交流電源9に接続されている。すなわち、位相制御装置8は、交流電源と一方の入力端子3との間に設けられ、位相制御された交流電力を電源装置1に供給する。ここで、位相制御とは、電源装置1に印加する交流電圧が半周期中の所定期間だけオフとなるように、各半周期の途中で交流電力を導通させる制御のことを示す。位相制御装置8の具体的な構成は特に制限されるものではないが、本実施形態では、トライアックを有する位相制御装置8を用いて、交流の各半周期の途中でトライアックをオンさせることで、位相制御された交流電流を電源装置1に供給する場合を説明する。
また、LEDランプ2は、変換回路7に接続されている。
【0026】
突入電流制限回路5は、一方の入力端子3に接続されており、コイルL1および抵抗R1を並列接続した回路を有する。突入電流制限回路5は、交流電源からノイズ防止用コンデンサC1,C2に向けて、位相制御の導通直後に短絡的に流入する電流を制限するために設けられている。
なお、一方の入力端子3には、図1のように第1接続点31、第2接続点32、第3接続点33がこの順番に直列接続されている。また、他方の入力端子4には、第4接続点34が接続されている。前述の突入電流制限回路5を構成するコイルL1および抵抗R1は、第1接続点31および第2接続点32の間に並列接続されている。
【0027】
ノイズ除去回路6は、突入電流制限回路5および他方の入力端子4に対して並列接続されており、1組のノイズ防止用コンデンサC1,C2と、コモンモードのチョークコイルT1とを有して構成され、交流電力に含まれるノーマルモードのノイズをノイズ防止用コンデンサC1,C2が除去し、コモンモードのノイズをチョークコイルT1が阻止する。
第1のノイズ防止用コンデンサC1は、突入電流制御回路5および他方の入力端子4に対して並列接続されている。チョークコイルT1は、ノイズ防止用コンデンサC1のLEDランプ側に接続され、第2のノイズ防止用コンデンサC2は、さらにLEDランプ側に並列接続されている。
なお、ノイズ防止用コンデンサC1と後述する変換回路7とは、第3接続点33および第4接続点34に対して並列接続されている。
【0028】
変換回路7は、ノイズ除去回路6を通過する交流電力をLEDランプ2の電源電力に変換するためのものであり、ダイオードブリッジからなる整流回路11と、スイッチング素子Q1のオン・オフに伴う高周波電流のバイパスコンデンサC3からなる平滑回路12と、DC-DC変換回路13とを備えて構成される。
整流回路11は、ノイズ除去回路6を通過した交流電力から直流電力を発生させる。直流電力は、平滑回路12でわずかに平滑化されて、DC-DC変換回路13に送られる。
【0029】
DC-DC変換回路13は、第2のノイズ防止用コンデンサC2に対して、整流回路11および平滑回路12とともに並列接続され、高周波電流のバイパスコンデンサC3の両端に発生する全波整流波形を制御回路15が認識可能な電圧値まで抵抗R2,R3で分圧し制御回路15に交流信号波形を入力する。
制御回路15は、絶縁型オペアンプ14からの信号に基づき、LEDランプ2の電流値が設定された電流値となるように、スイッチング素子Q1をオンさせるパルス幅を制御する。これと同時に制御回路15は、抵抗R2,R3で分圧された全波整流波形の電圧値に比例するようにスイッチング素子Q1のオン・オフ周期を制御し、力率改善をおこなわせるようになっている。
スイッチング素子Q1の切り替えによって、高周波トランスT2に高周波電圧が印加され、LEDランプ側の回路に所定の高周波電力が発生する。発生した高周波電力は、ダイオードD2で整流され、平滑コンデンサC5により平滑化された後、LEDランプ2に供給されるようになっている。
照明用のLEDランプ2は、熱に弱いにも関わらず、低い温度で大量の熱が発生する。従って、放熱板を設けて放熱面積を多く取る必要があり、さらに放熱性能を良くするためにはLEDランプ2と放熱板との絶縁層を薄くする必要がある。そのため、交流電源9と放熱板との絶縁性に関して、LEDランプ2によって絶縁性を確保することが困難となり、本実施形態の電源装置1において絶縁性を確保する必要がある。電源装置1には、絶縁型の高周波トランスT2および絶縁型オペアンプ14を使用して、照明用LEDと交流電源との絶縁をおこなうことができる。
【0030】
本実施形態では、交流電源9の供給電圧を、100V以上、120V以下とし、LEDランプ2の負荷を、1W以上、100W以下としている。
突入電流防止装置5のコイルL1は、インダクタンスが大きいほど突入電流の制限機能が良くなるという特性を有する。しかし、コイルL1のインダクタンスが大き過ぎると、コイルL1によって交流電流の流れが制限されたり、交流電流の波形が歪んだりする可能性がある。一方、コイルL1のインダクタンスが小さ過ぎると、突入電流の制限機能が低下する。以上のことから、本実施形態では、100μH以上、10mH以下のインダクタンスを有するチョーク・コイルを用いている。
【0031】
一方、抵抗R1は、その抵抗値が大きいほど突入電流の最大値の制限機能が良くなるという特性を有する。しかし、抵抗値が大き過ぎると、コイルL1の作用が顕著に現れ、逆起電力によって交流電流の位相が遅れてしまう可能性がある。一方、抵抗値が小さ過ぎると、突入電流の制限機能が悪くなってしまう。以上のことから、本実施形態では、1Ω〜100Ωの抵抗値を有する抵抗を用いている。
【0032】
<調光システムの構成>
図2は、本実施形態の電源装置1を用いた調光システムの一例を示す図である。
調光システムは、交流電力を同時に複数の照明器具に供給し、共通の調光器21を用いて各照明器具を一括して調光するシステムである。調光システムは、交流電源22に接続された調光器21と、分岐装置としてのライティングレール23と、ライティングレール23にそれぞれ接続される複数の照明器具24,25,26とを備えて構成される。
【0033】
調光器21は、前述の位相制御装置8と同様の機能を備えるもので、交流電力を各半周期の途中で交流電流を導通させることにより、交流電源22からの交流電力を位相制御するものである。本実施形態では、トライアックを動作させて導通のオン・オフを切り替えることで照明器具の調光を行う位相制御方式の調光器21を用いている。
【0034】
ライティングレール23は、天井30等に設けられ、調光器21からの交流電力を分岐して、各照明器具24,25,26に供給するためのものである。ライティングレール23は、レール本体内に長手方向に沿って平行に敷設された一対の線状導体を有し、一対の線状導体に接続された照明器具24〜26に交流電源を供給する。
照明器具24〜26は、LEDランプと従来の照明ランプを少なくとも1つずつ有する。本実施形態では、図2のように、ライティングレール23から、LEDランプ24と、ハロゲンランプ25と、白熱ランプ26とがそれぞれ垂下されている。なお、LEDランプ24は、電源装置1を介してライティングレール23に接続されている。
【0035】
このような照明システムにおいて、各照明器具24〜26に位相制御された交流電力を供給する場合の電圧波形および電流波形について図3に基づいて説明する。
図3(A)は、縦軸を電圧V、横軸を時間tとして、調光器21によって位相制御された交流電力の電圧波形を示す図である。図3(B)、(C)では縦軸を電流Iとしている。
比較例として、本実施形態の突入電流制限回路5を有していない電源装置を用いた場合の電流波形を図3(B)に示す。比較例では、調光器21の導通によって電源装置に電圧Vが印加された直後に過大な瞬時電流、すなわち突入電流Iが発生する。この突入電流Iにより電圧降下が生じて、導通し始めた調光器21のトライアックがすぐにオフとなって非導通に切り替わって点弧ミスが起こる。このように突入電流Iは、LEDランプ24のチラツキの原因となる。
一方、本実施形態の突入電流制限回路5を有する電源装置1を用いた場合の電流波形を図3(C)に示す。突入電流制限回路5を設けたことで、突入電流Iが制限され、導通直後の瞬時電流Iが小さくなる。従って、突入電流Iによる電圧降下が起きず、調光器21が正常に位相制御を実行できるので、LEDランプ24にチラツキが生じない。
【0036】
<位相制御された交流電流が印加された際の電源装置の動作>
図1において、交流電流が導通する直前における、ノイズ防止用コンデンサC1,C2のインピーダンスはゼロであり、コイルL1のインピーダンスは無限大である。調光器2のトライアックが導通した瞬間に入力端子に印加される交流電圧をV1とすると、突入電流制限回路5への瞬時電流の最大値は、V1/R1で示される。従って、瞬時電流の最大値は、抵抗R1により決定されると言える。
導通後は、ノイズ防止用コンデンサC1,C2に印加される電圧が徐々に増加し、また、コイルL1に流れる電流も増加する。従って、定常状態に達するとコイルL1および抵抗R1の並列回路のインピーダンスは、コイルL1の抵抗成分のみとなり、ゼロに近い抵抗値となる。つまり、突入電流制限回路5の抵抗R1が接続されていない状態と等しくなる。
【0037】
<本実施形態の効果>
突入電流制限回路5を設けたことにより、位相制御によって半周期の途中で交流電流が導通しても、ノイズ防止用コンデンサC1,C2への瞬時電流が抵抗R1により制限されるので、突入電流の発生を防止することができる。これにより、位相制御におけるトライアックなどのオン・オフの切り替え(スイッチング)の誤動作を防止でき、点弧ミスを無くすことができる。
【0038】
また、コイルL1を抵抗R1に対して並列接続したことにより、導通から次の半周期までの定常状態においては、突入電流制限回路5の抵抗値がゼロに近くなり、抵抗R1を設けたことによる電力ロスを避けることができる。
従って、図2に示す照明システムのように、白熱ランプ用の調光器21から位相制御された交流電力が分岐してLEDランプ24に供給される場合であっても、電源装置1にて点弧ミスおよび電力ロスの増大が生じることなく、電源装置1からLEDランプ24へ所定の電源電力を供給することができ、LEDランプ1の照度を調整することができる。よって、既設の白熱ランプ用の調光器21をそのまま使って簡単に低コストでLEDランプの調光を実施できる。
【0039】
また、LEDランプ系のラインにおいて突入電流の発生を防止できるので、共通の調光器21から分岐してLEDランプ24および既存の白熱ランプ26などを同時に接続した場合であっても、白熱ランプ26など他のラインに設けられる機器の動作に支障が生じることがない。
【0040】
なお、本実施形態では、図2にて複数の照明器具を有する照明システムについて説明したが、本発明の電源装置1としては、分岐装置を介さずに調光器21に直接接続されてもよい。すなわち、一つのLEDランプを単独で調光する照明システムであってもよい。
また、本発明の電源装置1は、図2にて調光器21を介さず直接、交流電源22に接続されてもよい。この場合、電源装置1の突入電流制限回路5に対して、位相制御されない交流電力が印加されることになるが、何ら問題は生じない。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明にかかる照明用LEDランプの電源装置および照明システムは、LEDランプの調光システム、または、既存の照明器具と組み合わせたLEDランプの調光システム、その他のLEDランプの照明システムとして広く利用できる。
【符号の説明】
【0042】
1 電源装置
2、24 LEDランプ
3、4 入力端子
5 突入電流制限回路
7 変換回路
8 位相制御装置としての調光器
9 交流電源
21 分岐装置としてのライティングレール
26 白熱ランプ
C1,C2本発明のコンデンサであるノイズ防止用コンデンサ
L1 突入電流制限回路を構成するコイル
R1 突入電流制限回路を構成する抵抗


【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電力を所定の電源電力に変換してLEDランプに供給する電源装置であって、
前記交流電力が供給される一対の入力端子と、
前記一対の入力端子に対して並列接続されるコンデンサと、
前記入力端子の一方および前記コンデンサの一端の間に接続される突入電流制限回路と、
前記突入電流制限回路および前記コンデンサを通過する交流電力を前記LEDランプの電源電力に変換する変換回路と、
を備え、
前記突入電流制限回路は、コイルおよび抵抗を並列接続した回路を有し、
各半周期の途中で交流電流を導通させることにより位相制御された交流電力が前記入力端子に供給される場合、前記突入電流制限回路は、前記交流電流の導通直後に前記入力端子から前記コンデンサに短絡的に流入する電流を制限することを特徴とする照明用LEDランプの電源装置。
【請求項2】
請求項1記載の照明用LEDランプの電源装置において、
前記交流電力が100V以上、120V以下であり、前記LEDランプの負荷が1W以上、100W以下である場合、
前記コイルは、100μH以上、10mH以下のインダクタンスを有するチョーク・コイルであり、
前記抵抗は、1Ω〜100Ωの抵抗値を有することを特徴とする照明用LEDランプの電源装置。
【請求項3】
各半周期の途中で交流電流を導通させることにより位相制御された交流電力を出力する位相制御装置と、
前記位相制御装置からの交流電力を分岐する分岐装置と、
前記分岐装置にそれぞれ接続される複数の照明器具と、を備え、
前記複数の照明器具は、白熱ランプとLEDランプとを少なくとも1つずつ有し、
前記LEDランプは、請求項1または2記載の電源装置を介して前記分岐装置に接続されていることを特徴とする照明用LEDランプの照明システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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