説明

照明装置および画像読取装置ならびに画像形成装置

【課題】複雑な構造の保持部材を設けることなく、光源を効果的に放熱することを可能にする。
【解決手段】LEDアレー3を固定保持するため、従来のようなLED保持部材を用いずに、第一走行体5に一体に形成した折曲部5aに接着剤などを介してLEDアレー3を直接的に固定保持する。このようにして、LEDアレー3を熱伝導性のよい板金部材で形成された第一走行体5に直接的に取り付けることにより、LEDアレー3の発光により発生した熱を基板2に篭らせることなく、速やかに第一走行体5を介して外部へ逃がすことができる。また、従来のLED保持部材が不要であることから、部品点数を削減できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平板状の基板に複数個の発光素子が列設され、各発光素子からの照射光にて原稿などの被照明体を照明する光源を搭載してなる走査体を備えた照明装置、および、その照明装置を搭載する画像読取装置ならびに画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、原稿に光を照射して原稿画像情報を読み取る画像読取装置において、その光源にキセノンランプを設けてなる構成のものが知られている。
【0003】
近年では、光源の立ち上がりスピードの高速化,省エネルギ化,長寿命化などの要望より、キセノンランプの代替光源として発光ダイオード(LED)を採用する照明装置の構成が実用化されてきている。
【0004】
しかし、近年の生産性向上(読取スピードの向上)の要求より、さらに高い照度が求められるため、LEDへの供給電流の増加、あるいはLED集積個数を多くするための対応が必要となってきた。ところが、前記対応を実施することによって、LEDからの発熱量はより多くなり、これが原因する故障対策として放熱に対する対処が重要な解決課題となっている。
【0005】
そのため従来の照明装置において、光源を走査体に固定保持するために設けられている光源保持部材を熱伝導材にしたり、あるいは、冷却効率を上げるためのフィン,冷却孔などを光源保持部材に設ける工夫を施している(特許文献1,2参照)。
【特許文献1】実開平4−135349号公報
【特許文献2】特許第3336069号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、複雑な形状の光源保持部材を搭載することは、構造の複雑化、およびコストの増加を招くことになり望ましくない。
【0007】
そこで、本発明においては、複雑な構造の保持部材を設けることなく、光源を効果的に放熱することが可能な照明装置、および画像読取装置,画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、平板状の基板に複数個の発光素子が列設されて、各発光素子からの照射光にて被照明体を照明する光源と、該光源および前記被照明体からの反射光を受けて所定の方向へ偏向するミラーおよび前記光源を搭載する走査体とを備えた照明装置において、前記発光素子が列設された前記平板状の基板を、前記走査体に直接的に設置したことを特徴とし、この構成によって、複数個の発光素子が列設された平板状の基板を、直接的に走行体に取り付けることにより、発光素子の発光により発生した熱を基板に篭らせることなく速やかに走査体へ逃がすことができるため、発光素子の発熱が原因する照明上の光学的問題の発生を防ぐことができ、また、従来のような光源を保持部材を介して走査体に設ける構造に比して、部品点数を削減することができる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1記載の照明装置において、平板状の基板を固定保持する走査体に、前記平板状の基板の反りを防止する基板押え部を設けたことを特徴とし、この構成によって、基板の反りが防止されるため、発光素子の発熱による基板の熱膨張によって複数の発光素子における光量ムラが悪化することを抑制することができる。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1記載の照明装置において、平板状の基板を固定保持する走査体に、フィン形状部を設けたことを特徴とし、この構成によって、より効果的に走査体を介して発光素子の熱を発散することができる。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項3記載の照明装置において、フィン形状部を、平板状の基板における発光素子取付け位置下部に設けたことを特徴とし、この構成によって、発光素子の熱が走査体に設けられた放熱フィンへ効率的に伝導し、より効果的に発光素子の熱を発散することができる。
【0012】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4いずれか1項記載の照明装置において、走査体における少なくとも平板状の基板を設ける部分を放熱鋼板にて形成したことを特徴とし、この構成によって、より効果的に走査体を介して発光素子の熱を発散することができる。
【0013】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5いずれか1項記載の照明装置において、走査体が被照明体に沿って移動する走行体であることを特徴とし、走行体に光源を搭載した構成のものにも適用可能である。
【0014】
請求項7に記載の発明は、原稿を照明するための光源および前記原稿からの反射光を所定光路へ導くミラーとを具備する照明部と、前記反射光の光量を画像信号に変換する撮像素子とを具備し、原稿を照射した前記反射光を前記撮像素子上に集光させて画像情報を読み取る画像読取装置において、前記照明部として請求項1〜6いずれか1項記載の照明装置を搭載したことを特徴とし、この構成によって、照明部における発光素子の発熱が原因する光学的問題の発生を防ぐことができるため、良好な画像読取が行われる。
【0015】
請求項8に記載の発明は、画像読取部と、該画像読取部から画像情報を受けて画像形成を行う画像形成部とを具備する画像形成装置において、前記画像読取部として請求項7記載の画像読取装置を搭載したことを特徴とし、この構成によって、画像読取部の照明部における発光素子の発熱が原因する光学的問題の発生を防ぐことができるため、良好な画像形成が行われる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る照明装置によれば、複数個の発光素子が列設された平板状の基板を、直接的に走査体に取り付けることにより、発光素子の発光により発生した熱を基板に篭らせることなく速やかに走査体へ逃がすことができるため、発光素子の発熱が原因する照明上の光学的問題の発生を防ぐことができ、また、従来のような光源を保持部材を介して走査体に設ける構造に比して、部品点数を削減することができる。
【0017】
本発明に係る画像読取装置および画像形成装置によれば、原稿などを照明するための発光素子の発熱が原因する光学的問題の発生を防ぐことができるため、良好な画像読取あるいは画像形成が実現する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の好適な実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0019】
図1は本発明の実施形態を説明するための画像読取装置の内部構造を示す概略構成図、図2は図1の画像読取装置の走査体部分を示す斜視図であり、画像読取装置の光学系ユニット1内には、平板状の基板2に複数の発光素子であるLED(Light Emitting Diode)が列設されて光源を構成するLEDアレー3と第一ミラー4とを具備した照明装置を構成する走査体としての第一走行体5、および第二ミラー6と第三ミラー7とを具備した第二走行体8、およびコンタクトガラス9上の原稿(図示せず)からの反射光像を撮像素子のCCD(charge-coupled device)10上に結像させる結像レンズ11が設けられており、ホストコンピュータ(図示せず)から送られてくる1ライン毎の画像読取要求の信号に応じて、第一走行体5および第二走行体8は、それぞれ2:1の速度でコンタクトガラス9上の原稿に沿って移動しながら、画像の読み取りを逐次行うように構成されている。
【0020】
図3は本実施形態の画像読取装置における第一走行体の構成を示す断面図であり、板材からなる第一走行体5の一部に折曲部5aを形成し、この折曲部5aの上面に、平板状の基板2に複数のLEDが列設されているLEDアレー3が固定保持されている。
【0021】
図4は比較例としての従来の画像読取装置における第一走行体の構成を示す断面図であり、LEDアレー3を第一走行体5に対してLED保持部材12を介して固定保持している。
【0022】
本実施形態では、図3に示すように、LEDアレー3を固定保持するために、図4に示す従来のようなLED保持部材12がなく、第一走行体5に一体に形成された折曲部5aに接着剤などを介してLEDアレー3を直接的に固定保持している。このようにして、LEDアレー3を熱伝導性のよい板金部材で形成された第一走行体5に直接取り付けることにより、LEDアレー3の発光により発生した熱を基板2に篭らせることなく、速やかに第一走行体5を介して外部へ逃がすことができる。また、前記比較例におけるLED保持部材12が不要であることから、部品点数を削減できることになる。
【0023】
本実施形態において、図5に示す断面図と図6に示す図5のA矢視図のように、第一走行体5の折曲部5aに基板2における反りの発生を規制する基板押え部13を設けることが考えられる。図5,図6において、基板押え部材13として、L字状の係止部材を第一走行体5の折曲部5aに設け、基板2の側端部分を係止している。
【0024】
このようにLEDアレー3における第一走行体5の取付け部に、LEDアレー3の熱によって基板2が反ることを防止するための基板押え部13を設けることにより、基板2における熱膨張による変形(反り)の発生を防ぐことができる。
【0025】
基板2の変形(反り)はLEDアレー3における出射光の角度がずれて、照度ムラの原因となってしまい、照明効果あるいは読取効果に悪影響を与える。本例では、基板2が基板押え部13によって押えられているため、前記のような反りの発生が押えられる。
【0026】
基板押え部13は基板2におけるLEDアレー3が実装されている側(熱源に近い場所)に設けることによって、より効果的な熱除去が期待できる。逆に、LEDアレー3の実装面と反対側において熱を逃がすことによって、基板2の割れの発生を防止する効果も期待できる。
【0027】
図7は図3に示す第一走査体の変形例の構成を示す断面図、図8は図7のB矢視図であり、本例では、第一走行体5の折曲部5aにおけるLEDアレー3の取付け部に、放熱用のフィン形状部14を形成している。
【0028】
前記フィン形状部14を設置したことにより、LEDアレー3の発熱によって発生した熱は第一走行体5に伝わる。そして第一走行体5は、原稿の走査動作に際して、走査読取後にホームポジションに戻るように駆動されるが、この動作によって冷却されることになり、走査時の冷却効果を高めることができる。
【0029】
また、フィン形状部14を設けるために生じた第一走行体5における加工用孔5bは、フィン近傍の空気が通り抜け可能となることによって、より冷却効果を高めることができる。
【0030】
また、発熱体であるLEDアレー3の真下にフィン形状部14を配設することにより、放熱効果をさらに高めることができる。
【0031】
さらに、第一走行体5を熱伝導率の高い放熱鋼板などによって形成すれば、より高い放熱効果を期待できる。
【0032】
以上のように、照明装置としての前記構成の第一走行体5を図1,図2に示すような画像読取装置に搭載することにより、第一走行体5におけるLEDアレー3の発熱が原因する光学的問題の発生を防ぐことができるため、良好な画像読取が行われる。
【0033】
図9は本発明に係る画像読取装置を搭載した画像形成装置の実施形態であるレーザプリンタの構成図であり、図1,図2にて説明した画像読取装置の構成部材に対応する部材には同一符号を付して詳しい説明は省略する。
【0034】
本レーザプリンタの画像形成部20は、感光体21、帯電ローラ22、現像装置23、転写ローラ24、クリーニング装置25、定着装置26、光走査装置27、給紙カセット28、レジストローラ対29、給紙コロ30、用紙搬送路31、排紙ローラ32、排紙トレイ33などから構成されているものである。
【0035】
また、画像読取部35は、図1,図2にて説明した画像読取装置の構成と同様なものであって、前記各実施形態の構成のように本発明による第一走行体(照明装置)の改良構造を採用したものである。
【0036】
画像読取部35では、第一走行体5と第二走行体8を走査させて、コンタクトガラス12上の原稿(図示せず)を走査し、原稿からの反射光像をCCD10に結像させる。CCD10において原稿の反射光像を光電変換してアナログ画像信号とし、原稿の読み取りが行われる。そして原稿の読取終了後に、第一走行体5と第二走行体8はホームポジション位置に復帰する。
【0037】
なお、CCD10から出力されたアナログ画像信号は、図示しないアナログ/デジタル変換器によりデジタル画像信号に変換され、画像処理回路を搭載した回路基板において、各々の画像処理(2値化,多値化,階調処理,変倍処理,編集処理など)が施される。
【0038】
画像処理信号は光走査装置27へ出力され、光走査装置27による感光体21に対する光走査にて感光体21の表面に潜像が形成される。感光体21の潜像は現像装置23でトナー現像され、このトナー像が転写ローラ24により用紙に転写される。転写後の用紙は、定着装置26による定着処理を受けた後、排紙ローラ32によって排紙トレイ33へ排出される。
【0039】
このように本画像形成装置において、前記各実施形態の構成のように本発明による第一走行体(照明装置)の改良構造を採用したことにより、画像読取部35の第一走行体5において、LEDアレー3の発熱が原因する光学的問題の発生を防ぐことができるため、良好で高品位の画像形成が可能になる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、複写機,ファクシミリ,スキャナなど画像形成装置における原稿を照明する照明装置、あるいは画像読取装置として適用される。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の実施形態を説明するための画像読取装置の内部構造を示す概略構成図
【図2】図1の画像読取装置の走行体部分を示す斜視図
【図3】本実施形態の画像読取装置における第一走行体の構成を示す断面図
【図4】比較例としての従来の画像読取装置における第一走行体の構成を示す断面図
【図5】本実施形態において基板押え部を設けた構成例を示す断面図
【図6】本実施形態において基板押え部を設けた構成例を示す図5のA矢視図
【図7】本実施形態における第一走査体の変形例の構成を示す断面図
【図8】本実施形態における第一走査体の変形例の構成を示す図7のB矢視図
【図9】本発明に係る画像読取装置を搭載した画像形成装置の実施形態であるレーザプリンタの構成図
【符号の説明】
【0042】
2 基板
3 LEDアレー
4 第一ミラー4
5 第一走行体
5a 折曲部
10 CCD
13 基板押え部
14 フィン形状部
20 画像形成部
35 画像読取部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平板状の基板に複数個の発光素子が列設されて、各発光素子からの照射光にて被照明体を照明する光源と、該光源および前記被照明体からの反射光を受けて所定の方向へ偏向するミラーおよび前記光源を搭載する走査体とを備えた照明装置において、
前記発光素子が列設された前記平板状の基板を、前記走査体に直接的に設置したことを特徴とする照明装置。
【請求項2】
前記平板状の基板を固定保持する前記走査体に、前記平板状の基板の反りを防止する基板押え部を設けたことを特徴とする請求項1記載の照明装置。
【請求項3】
前記平板状の基板を固定保持する前記走査体に、フィン形状部を設けたことを特徴とする請求項1記載の照明装置。
【請求項4】
前記フィン形状部を、前記平板状の基板における発光素子取付け位置下部に設けたことを特徴とする請求項3記載の照明装置。
【請求項5】
前記走査体における少なくとも前記平板状の基板を設ける部分を放熱鋼板にて形成したことを特徴とする請求項1〜4いずれか1項記載の照明装置。
【請求項6】
前記走査体が前記被照明体に沿って移動する走行体であることを特徴とする請求項1〜5いずれか1項記載の照明装置。
【請求項7】
原稿を照明するための光源および前記原稿からの反射光を所定光路へ導くミラーとを具備する照明部と、前記反射光の光量を画像信号に変換する撮像素子とを具備し、原稿を照射した前記反射光を前記撮像素子上に集光させて画像情報を読み取る画像読取装置において、
前記照明部として請求項1〜6いずれか1項記載の照明装置を搭載したことを特徴とする画像読取装置。
【請求項8】
画像読取部と、該画像読取部から画像情報を受けて画像形成を行う画像形成部とを具備する画像形成装置において、
前記画像読取部として請求項7記載の画像読取装置を搭載したことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2009−86593(P2009−86593A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−259771(P2007−259771)
【出願日】平成19年10月3日(2007.10.3)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】