説明

熱可塑性シートを乾燥させる装置および方法

微多孔性熱可塑性シートを乾燥させる装置が記載されている。かかる装置は、少なくとも1種の熱可塑性組成物を含みシートの中にある量の希釈剤を有する多孔性シートを供給するための手段;シートの第1の表面を接触させ乾燥の間にシートを進行方向に搬送するためのローラー;および不活性ガスの流れをシートの第2の表面に方向付けるための少なくとも1つの手段であって、約30°〜約150°の範囲の角度βでこの流れを供給するような位置にある手段;を含む。ここで、βは、ローラーの中心とフィルムがローラーに接触している部分の中点とで形成されるラインと、流れの方向とで形成される角度である。熱可塑性フィルムを乾燥させる関連方法も記載されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2008年9月3日出願の出願番号第61/093,903号および2008年10月7日出願の出願番号第61/103,462号の優先権を主張し、それらは参照により本明細書に組み入れられたものとする。
【0002】
本発明は、熱可塑性シートを乾燥させる装置および方法に関する。より具体的には、本発明の実施形態は、熱可塑性シートを乾燥させる装置および方法に関するものであって、ローラーの中心とシートがローラーに接触している領域の中点とで形成されるラインと、流れの方向とが角度βとなるようにガスが供給されるものである。
【背景技術】
【0003】
熱可塑性シートを製造する一般的な方法は周知である。そのような方法の1つでは、熱可塑性組成物を、プロセス溶媒または希釈剤と通常呼ばれているものと混合する。次いで、熱可塑性組成物と希釈剤との溶液または混合物を少なくとも1つのダイを通して押し出し、ゲル状シートを形成する。
【0004】
次いで、例えば米国特許第4,065,838号に記載の従来のテンター装置を用いてフィルムを延伸させてもよい。通常、テンター装置は、1対の広がっていく搬送路により誘導されてテンタークリップを搬送する2本のエンドレスチェーンに取り付けられた複数のテンタークリップを含む。テンタークリップは、開放位置から閉鎖位置へと切り替わって高分子押出物や高分子フィルム等の材料の織布の端部を把持するように構成されている。
【特許文献1】米国特許第4,065,838号
【0005】
延伸に続き、希釈剤の少なくとも一部を、通常は高揮発性溶媒を用いて、例えば蒸発によって熱可塑性シートから除去する。乾燥延伸を用いる場合には、例えば、希釈剤の一部を除去した後にフィルムを少なくとも1つの平面方向に延伸させ、フィルムがテンタークリップに把持されている間に洗浄溶媒の一部が蒸発し得る。さらなる乾燥を実行する場合には、シートを一連のローラーに搬送することもできる。
【0006】
熱可塑性シートを形成するこのような方法は以前から知られているが、従来の装置および方法では、乾燥プロセス中にシートのムラまたは収縮を生じる場合がある。熱可塑性微多孔膜の作製においては、このような収縮またはムラは微多孔膜の空孔率および透気度に悪影響を及ぼす恐れがある。
【0007】
洗浄溶媒が、このような収縮の原因の1つと考えられている。熱可塑性微多孔膜の作製には、高揮発性洗浄溶媒が一般的に用いられている。したがって、洗浄溶媒の揮発に伴う微多孔膜の収縮力は比較的高くなり得ると考えられてきた。原因が何であれ、この収縮力によって、テンターシステムの把持作用が乾燥延伸中に微多孔膜を傷つける可能性がある。さらには、微多孔膜を多段ローラーで搬送しながら温風で乾燥させると、微多孔膜は機械方向だけでなく横方向にも収縮し、微多孔膜の空孔率および透気度の悪化につながる可能性がある。
【0008】
収縮に対処するために、特開2004−106265号には、高分子含有溶液を支持体上にキャストすること、得られたフィルムを剥がすこと、およびフィルムの上に空気を送ることを含む方法が記載されている。テンターにより、フィルムの溶媒含有量を約3〜8重量%(フィルムの総重量が基準)に調節する。乾燥は、多数の多段ロールでフィルムを搬送しながらフィルム上に温風を送ることによって行われる。多段ロール中での乾燥の間、フィルムの表面温度は、ガラス転移点温度(Tg)より15℃低い温度からTgまでの範囲である。機械方向への伸びは−2%〜3%の範囲内に設定する。
【特許文献2】特開2004−106265号
【0009】
乾燥装置および乾燥方法の設計については徐々に改善がなされてきてはいるが、改善された乾燥デバイスおよび乾燥方法、特に、溶媒の効率的な除去を実現し、さらにはシートの収縮を低減することができるものへの要求は依然としてある。加えてこのようなシステムは揮発性洗浄溶媒の環境コントロールの観点からも有益である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
一態様においては、本発明は、微多孔性熱可塑性シートを乾燥させる装置を提供する。かかる装置は、少なくとも1種の熱可塑性組成物を含みシートの中にある量の希釈剤を有する多孔性シートを供給するための手段;シートの第1の表面を接触させて乾燥の間にシートを進行方向に搬送するためのローラー;および不活性ガスの流れをシートの第2の表面に方向付けるための少なくとも1つの手段であって、約30°〜約150°の範囲の角度βでこの流れを供給するような位置にある手段;を含む。
ここで、βは、ローラーの中心とフィルムがローラーに接触している部分の中点とで形成されるラインと、流れの方向とで形成される角度である。
【0011】
別の態様においては、本発明は、微多孔性熱可塑性シートを乾燥させる方法を提供する。かかる方法は、孔の中にある量の希釈剤を有する熱可塑性シートとローラーとを絶えず接触させておくこと、シートの第2の表面の一部の上に約30°〜約150°の範囲の角度βで不活性ガス流を通すこと、を含む。
ここで、βは、ローラーの中心とフィルムがローラーに接触している部分の中点とで形成されるラインと、流れの方向とで形成される角度である。
【0012】
別の態様においては、本発明の実施形態は、洗浄した熱可塑性シートが乾燥ローラーに到達する前に乾燥しないことが確保されるように設計された装置およびプロセスを提供する。かかる実施形態は、洗浄溶媒の表面と乾燥ローラーの間の距離を適切に選択することにより、少なくとも一部は実現される。
【0013】
装置および方法は、以下の特徴の1つまたは複数をさらに含み得る。
【0014】
不活性ガスは、角度βの形成において、ほぼ機械方向または機械方向のほぼ逆方向に進行し得る。特定の実施形態においては、不活性ガスの流れは機械方向のほぼ逆方向に進行する。
【0015】
本明細書に記載の装置および方法のいくつかの実施形態においては、不活性ガスは、熱可塑性シートの幅にわたる2箇所以上の所定の場所に位置する、2つ以上、特に4つ以上の、独立して動作可能な手段によって供給される。
【0016】
本明細書に記載の装置および方法のさらに別の特定の実施形態においては、装置および方法は、ローラー、および流れまたは不活性ガスを方向付けるための少なくとも1つの手段が、シートの幅にわたる、機械方向の比較的狭い領域r1にわたって所望の溶媒レベルが達成される乾燥を提供するように構成されるような様式で作動する。特定の実施形態においては、r1は1〜約300mmの範囲、好ましくは150mmである。
【0017】
いくつかの実施形態においては、以下の特徴の1つまたは複数によってr1の値は小さくなり得る。例えば、特定の実施形態においては、不活性ガスの流れを方向付けるための少なくとも1つの手段は、ノズル本体を有するノズル、スリット、およびスリットから流れ出る不活性ガスの流れを方向付けることができるガイド板を含む。いくつかの実施形態においては、不活性ガスの流れを方向付けるための少なくとも1つの手段は、ローラーの表面にほぼ沿って湾曲して伸展するガイド板に機能的に連結した出口ポートを含む。いくつかのその他の実施形態においては、不活性ガスは、進行方向のほぼ反対方向に方向付けられる前に進行方向に分配される。不活性ガスの流れは、任意の都合のよい流速で供給されてもよく、ある実施形態においては、不活性ガスの流れを方向付けるための少なくとも1つの手段から出る不活性ガスの流速は、約200〜約500m/秒である。
【0018】
いくつかの実施形態においては、本発明の装置および方法は、ローラー上のフィルムの張力を調整するための張力調整ローラーおよび駆動ローラーも含み、不活性ガスの流れを供給するための少なくとも1つの手段は、不活性ガスの流れをローラーと張力調整ローラーの間の位置に供給する場所にある。
【0019】
特定の実施形態は、熱可塑性シートをローラーに押し付けるためのニップローラーを含み、ローラーに巻かれた熱可塑性シートの張力が約100〜3000、好ましくは200〜2000、より好ましくは300〜1000N−mであるような形で操作される。いずれの好適な搬送速度を用いてもよいが、典型的な熱可塑性シートの搬送速度は約5〜約30m/分の範囲であり得る。通常、張力および速度は、ローラー、張力調整ローラーおよび駆動ローラーの1つまたは複数によって得られる。フィルムの引き裂きを避けるため、ローラー、張力調整ローラーおよび駆動ローラーを協同させて、所望のフィルム張力および速度を得る。
【0020】
さらにその他の実施形態は、不活性ガスの流れが熱可塑性シートに接触した後でその流れを受けるような位置に取入れ部がある排気デバイスを含む。
【0021】
本発明のいくつかの実施形態は、シートの進行方向に対してローラーの前に位置する洗浄槽を含み、かつ洗浄溶媒を含む。ローラーは、洗浄溶媒の沸点より30℃、好ましくは10℃低い温度から洗浄溶媒の沸点より20℃、好ましくは10℃高い温度の範囲の温度に加熱される。洗浄槽は、洗浄溶媒と実質的に非相溶性である第2の溶媒を含んでいてもよい。特定の実施形態においては、洗浄溶媒は塩化メチレンであり、第2の溶媒は水である。
【0022】
本発明のいくつかの実施形態においては、不活性ガスの流れを方向付けるための少なくとも1つの手段を出る不活性ガスの温度は、0℃から洗浄溶媒の沸点より約20℃高い温度、好ましくは約23℃から洗浄溶媒の沸点より約10℃高い温度の範囲である。
【0023】
本明細書に記載の装置および方法は、電池セパレータフィルム等の熱可塑性微多孔膜の作製に特に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1は、本明細書に記載の熱可塑性シートを乾燥させる装置の実施形態を模式的に示す図である。
【0025】
【図2】図2は、本明細書に記載の熱可塑性シートを乾燥させる装置の実施形態における、角度βとガス流の方向との関係を模式的に示す図である。
【0026】
【図3】図3は、本発明の実施形態で用いる、ガスを供給する手段およびガイド板を模式的に示す図である。
【0027】
【図4】図4は、本明細書に記載の、溶媒回収デバイスを用いる熱可塑性シートを乾燥させる装置の実施形態を模式的に示す図である。
【0028】
【図5】図5は、熱可塑性シート内で所望の溶媒レベルを得ることができる領域r1を模式的に描いた図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の実施形態は、熱可塑性シートを乾燥させる装置およびプロセスに関する。かかる装置の1つは、少なくとも1種の熱可塑性組成物を含みシートの中にある量の希釈剤を有する熱可塑性シートを供給するための手段;シートの第1の表面を接触させるためのローラー;および不活性ガスの流れをシートの第2の表面に方向付けるための少なくとも1つの手段であって、約30°〜約150°の範囲の角度βでこの流れを提供するような位置にある手段;を含む。
ここで、βは、ローラーの中心とフィルムがローラーに接触している領域の中点とで形成されるラインと、流れの方向とで形成される角度である。
【0030】
本開示を目的として、用語「不活性ガス」は、気態で膜に接触し、膜からの溶媒除去を容易にする以外は膜の化学的または物理的構造を実質的に変化させることのないいずれかの組成物、と定義される。いくつかの具体的な不活性ガスとしては、窒素、アルゴンおよび空気が挙げられる。
【0031】
本発明の微多孔膜の作製方法においては、溶液は、ポリオレフィン組成物と希釈剤(プロセス溶媒と呼ぶ場合もある)を、通常は加熱しながら合わせることにより調製する。ポリオレフィンを溶解させるのに好適な溶媒の例としては、ノナン、デカン、デカリン、p−キシレン、ウンデカン、ドデカン、パラフィン油等の脂肪族または環状炭化水素、および上記炭化水素と沸点がほぼ等しい鉱油の留分が挙げられる。これらの溶媒は、25℃にて30〜500cSt、好ましくは50〜200cStの粘度を有する。25℃での粘度が30cSt未満の場合は、ムラのある押出しになって溶液を混練するのが困難になる可能性があり、一方で粘度が500cStを超えると、後処理で溶媒を除去するのが困難である。
【0032】
ポリオレフィンまたはその組成物は、いずれかの都合のよい方法で合わせてもよい。ポリオレフィンを合わせるそのような方法の1つとしては、ポリオレフィンと希釈剤を、均一な混合物が得られる温度でその混合物を攪拌することにより、通常は押出機内での混合により混合すること、がある。押出機を用いてポリオレフィンと希釈剤を合わせることは、高濃度のポリオレフィン組成物を使用する場合には特に好ましい。ポリオレフィン組成物は、希釈剤と合わせる前に高分子成分を乾式混合または溶融混合することによって調製することもできる。
【0033】
混合温度は、用いる高分子および溶媒の種類によって変わる。押出機内で混合を行う場合、まずポリオレフィン組成物を、用いるポリオレフィンの種類によって異なるが好ましくはポリオレフィンの融点より30〜100℃高い温度にて押出機に充填する。例えば、ポリエチレンの場合は160〜230℃、好ましくは170〜220℃であり、ポリプロピレンの場合は190〜270℃、好ましくは190〜250℃である。次いで、ポリオレフィン混合領域の下流にて液体溶媒をポリオレフィン組成物に加える。
【0034】
ポリオレフィン組成物の濃度は、全溶液を基準として通常は10〜50重量%、好ましくは20〜40重量%であり、または逆に溶媒の濃度が90〜50重量%、好ましくは80〜60重量%である。ポリオレフィン組成物濃度が10重量%未満(または溶媒濃度が90重量%超)の場合、シートを形成するプロセス中に、ダイの出口で膨張およびネックインが生じやすい。したがって、作製したシートの良好な押出加工性および自立特性を維持するのは困難である。一方、ポリオレフィン組成物濃度が50重量%超(または溶媒濃度が50重量%未満)の場合、作製したシートは、厚さ方向への過剰な収縮、空孔率の低下、および押出加工性の悪化等の種々の問題を抱える恐れがある。したがって、大きな孔を有する微多孔膜の作製は困難である。上記の範囲内でポリオレフィン組成物濃度を変えることによって、膜の透気度を調節することが可能である。
【0035】
次に、溶融かつ混練されたポリオレフィン組成物の加熱溶液を、3〜250μmの範囲の最終膜厚さが確保されるような方法で、直接または別の押出機を介して、ダイ等を通して押し出す。
【0036】
通常、長方形の開口部を有するシートダイがダイとして用いられるが、二重管型中空ダイまたはインフレーションダイ等のいずれの好適なダイを用いてもよい。シートダイを用いる場合、約0.1〜5mmのダイギャップが用いられ、押出プロセスにおいてダイを140℃〜250℃の範囲の温度に加熱する。ダイの温度は、当技術分野では公知の通り、選択するポリオレフィン組成物によって変わる。ある実施形態においては、20〜30cm/分〜15m/分のキャスティングロール速度が用いられる。
【0037】
混合物は、ダイを通って押し出されると同時に冷却され、ゲル様特性を有する押出物が形成される。通常、押出物は、最低でも50℃/分の速度にて、90℃以下、好ましくは80〜30℃に冷却することによって形成される。一実施形態においては、押出物は、冷却空気や例えば水またはその他の液体等の冷却媒体との直接接触、冷却液で温度を下げて作動しているロールとの接触によって冷却される。特定の実施形態においては、押出物を冷却ロールに接触させることが好ましい。しかし、押出物を冷却するその他の好適な手段も当業者には明らかであろう。
【0038】
押出物を冷却ロールとの接触によって冷却する場合、ロールは、押出物の中で最もTmが低いポリオレフィンのTmの40〜90℃以内、特に30℃以内、または押出物の大部分を占めるポリオレフィンのTmの40〜90℃以内、特に30℃以内で作動させてもよい。冷却ロールの温度が過度に高い場合は、シートの冷却速度が遅くなり過ぎて、ポリオレフィンのラメラ構造の輪郭を作る壁の厚さを十分に厚くすることができない。その結果、溶媒の除去が困難になり膜透気度が低下する。冷却ロールの温度が過度に低い場合は、押出物の急冷が急速になり過ぎて、孔径が小さく透気度が低い、過度に圧縮された押出物が生じる。押出物は、1〜20m/分、好ましくは3〜10m/分で引取られる。これらの範囲内でも低めの引取り速度が通常は好ましい。
【0039】
次いで、所望により押出物を、テンター法、ロール法、カレンダー法またはそれらの組合せ等の通常の方法で、一定の延伸倍率で延伸してシートを形成する。延伸は、一軸延伸または二軸延伸、言い換えれば、機械方向のみ、横方向のみ、または両方向であってもよい。二軸延伸の場合は、押出物を縦および横方向に同時にまたは順次に延伸してもよい。特定の実施形態においては同時延伸が好ましい。
【0040】
延伸温度は、ポリオレフィン結晶分散温度から結晶融点の10℃以上までの範囲、好ましくは、結晶分散温度から結晶融点までの範囲であるべきである。超高分子量ポリエチレンを含有するポリエチレン組成物については、例えば、90〜140℃の範囲、100〜130℃の範囲がより好ましい。ポリエチレン組成物の場合は、90〜140℃の範囲が好ましく、90〜125℃の範囲がより好ましい。延伸温度が融点の約10℃上よりも高いと、所望の分子配向を実現することはより困難である。一方、延伸温度が結晶分散温度よりも低いと、延伸プロセス中に引き裂かれることのないシートを作製することがより困難である。
【0041】
延伸倍率は、機械方向(MD)または横方向(TD)のいずれにおいても制限はない。好ましくは、総延伸倍率(すなわち、延伸後のフィルムの面積と延伸前のフィルムの面積の比率)は約2〜約400であり、より好ましくは約15〜約400である。
【0042】
次いで、延伸したシートを溶媒で洗浄し、残留した希釈剤を除去する。この溶媒除去処理に用いる溶媒は、ペンタン、ヘキサンおよびヘプタン等の炭化水素、塩化メチレンおよび四塩化炭素等の塩素化炭化水素、トリフルオロエタン等の塩素化炭化水素、ならびにジエチルエーテルおよびジオキサン等のエーテルを含む、揮発性溶媒であってもよい。これらの揮発性溶媒は、単独で用いても、組み合わせて用いてもよく、何を選択するかは、ポリオレフィン組成物の溶解に用いる不揮発性溶媒の種類によって決まる。溶媒による洗浄法としては、溶媒による抽出法、溶媒を噴霧する方法またはそれらの組合せが挙げられる。いずれかの所望のレベルを得ることができるが、洗浄は通常、残留する希釈剤の量が約1重量%未満に減少するように設計されている。
【0043】
図1および2は、洗浄溶媒20を含む熱可塑性シート1を乾燥させる装置の特定の一実施形態を示している。しかしながら、本明細書中の図は、単に概略を示すものであって、熱可塑性シート1または生じる膜の微多孔性構造に関する情報を伝えることは意図していない、ということを留意すべきである。本実施形態の装置は、洗浄溶媒20および随意である第2の溶媒21を含む洗浄浴2を含む。第2の溶媒21は、通常は洗浄溶媒20より低い濃度を有し、洗浄溶媒20とは実質的に非相溶性である。本明細書を目的として、動作条件下にて2つの溶媒の間に目に見える相分離がある場合、2つの溶媒は「実質的に非相溶性」である。
【0044】
洗浄溶媒20を用いて、希釈剤の少なくとも一部、好ましくは大部分、より好ましくは実質的に全てを、延伸したシート1から除去する。延伸したシート1からの希釈剤相の除去は、シートの孔の中の希釈剤の少なくとも一部、好ましくは大部分、より好ましくは実質的に全てを、より揮発性の高い洗浄溶媒20に置き換えるために行われる。したがって、洗浄溶媒20を適切に選択すると、希釈剤が詰まったままの孔がより少なくなるため、最終膜の空孔率および透気度が改善される。いくつかの好適な洗浄溶媒20としては、揮発性有機溶媒、好ましくはハロゲン化有機溶媒が挙げられる。例えば、好適な洗浄溶媒20としては、塩化メチレンまたは四塩化炭素等の塩素化炭化水素、COCHおよびCOC等のハイドロフルオロエーテル、ならびにCOCFまたはCOC等のパーフルオロエーテルが挙げられる。特定の実施形態においては、塩化メチレンが好適な洗浄溶媒20である。いくつかの実施形態においては、塩化メチレンとハイドロフルオロエーテルの共沸混合物が流動パラフィン希釈剤を除去するのに非常に有効である。
【0045】
洗浄浴2から失われる洗浄溶媒20の量は、実質的に非相溶性である第2の溶媒21を洗浄槽2に供給することで低減することができる。非相溶性であり洗浄溶媒より濃度が低い第2の溶媒21を選択することにより、洗浄槽2から抜け出る洗浄溶媒20の量が少なくなる。洗浄溶媒20との相溶性が低く洗浄溶媒20より濃度が低いいずれの溶媒も、特に制限なく用いることができる。好ましくは、第2の溶媒21は洗浄溶媒20より沸点が高い。重要ではないが、好適な第2の溶媒21の1つとして水が挙げられる。
【0046】
洗浄槽2の中の洗浄溶媒20の量は重要ではない。しかしながら、本発明のある実施形態においては、洗浄槽は、延伸したシート100重量部あたり約300〜30,000重量部を含む。通常、洗浄温度は約5℃〜40℃、好ましくは約15℃〜約30℃である。洗浄温度は、従来の方法を用いて洗浄浴2を加熱することにより上昇させてもよい。しかしながら、通常は洗浄溶媒20の温度は80℃以下が好ましい。
【0047】
必須ではないが、洗浄工程は、希釈剤の残留量が、熱可塑性組成物を溶解させるため、希釈剤の量の約1重量%以下となるまで、延伸したシート1を一連の洗浄浴2に連続して通すことによって行ってもよい。いくつかの実施形態においては、1つまたは複数のワイパー61は、ローラー3に運ばれる洗浄溶媒20の量を減少させるために、洗浄槽2とローラー3の間の位置にある。
【0048】
実質的に非相溶性である第2の溶媒21の量も、通常は重要ではない。しかしながら、第2の溶媒21が存在する場合、その量は、洗浄浴2の中の洗浄溶媒20の表面を覆うのに十分な量であるべきである。
【0049】
洗浄槽2を通過した後、洗浄されたシート1はローラー3に搬送される。一実施形態においては、牽引を行い、洗浄されたシート1をローラー3に押し付けるためのニップローラー30も含まれる。通常は、プロセス中のシートの収縮を軽減するためには、このような配置が望ましい。実質的に非相溶性である第2の溶媒21の水平面からローラー3までの長さLは、通常は30〜500mmの範囲である。長さLが500mmを超えると、洗浄溶媒20の揮発によってシート1の収縮が生じる場合がある。
【0050】
特定の実施形態においては、長さLは、シート1がローラー3に到達する前に乾燥しないことを確保するように選択される。したがって、特定の実施形態においては、長さLの範囲は、約30mm〜約250mm、30mm〜約100mm、または30mm〜約75mmである。Lの値の範囲の下限は、30mm、35mm、40mm、45mm、50mmまたは100mmであってもよい。長さLの上限は、いくつかの実施形態においては、40、45、50、60、75、80、90、100、200または300であってもよい。これらの上限および下限にわたる範囲が明示的に開示されていることが想定される。好適な長さLの選択は、進行速度および洗浄溶媒の選択等の作業条件によって変わってくることを理解されたい。
【0051】
ローラー3は一定の位置に固定されているため、通常はその回転軸は洗浄されたシート1の横方向とほぼ平行である。ローラー3の軸方向長さは、少なくとも洗浄されたシート1の幅と同じ幅であるべきであり、その結果シート1の幅全体がローラー3と接触する。
【0052】
ローラー3の直径は、通常は30〜400mm、または50〜300mm、75〜150mmである。直径が30mm未満の場合、ローラー3とシート1との接触面積が小さ過ぎてローラー3の熱をシート1に十分に伝達することが困難になり得るが、直径が400mmを超えると、シート1に適切な張力を加えることが困難になり得る。シート1の搬送速度は、個々のプロセスの具体的な要件に応じて調節可能であるが、搬送速度は通常は5〜30m/分の範囲である。約8〜25m/分の搬送速度がいくつかの特定の実施形態において用いられる。搬送速度が5m/分未満の場合、生産効率が悪化する。一方、搬送速度が約30m/分を超えると、シートを十分に乾燥させることが困難になり得る。シート1の収縮を抑えるためには、通常はローラー3を1つだけ用いるが、しかしながら、収縮が容認し難いほど過密にならない場合は、2つ以上のロールを設けてもよい。
【0053】
ローラー3は、必ずではないが通常は加熱される。望ましい加熱温度は、希釈剤、洗浄溶媒20、および第2の溶媒21の蒸気圧、ならびにある程度は、シート1の中のこれらの溶媒の量によって決まる。通常は、ローラー3は、洗浄溶媒の沸点より30℃低い温度から洗浄溶媒20の沸点より20℃高い温度以下の範囲の温度で動作する。乾燥ロールの温度は、水の凍結を避けるためには0℃超であることが好ましい。いくつかの実施形態においては、ローラー3の温度範囲の下限は洗浄溶媒20の沸点の5℃下である。同様に、ローラー3が動作する温度の上限は、洗浄溶媒20の沸点より5℃高い温度以下である。特定の実施形態においては、ローラー3の温度は、洗浄溶媒20の温度の5℃下から洗浄溶媒20の温度の約10℃上の温度までの範囲の温度に維持される。ローラーの温度が高すぎると、洗浄溶媒20の急激な揮発が起こる恐れがあり、望ましくない収縮が誘発される場合がある。当然ながら、ローラー3の温度が低すぎると、乾燥プロセス中にシート1を乾燥させることが困難になり得る。
【0054】
本発明は、不活性ガスの流れをシート1の表面に供給するための手段も含む。いずれの従来の手段を用いてもよいが、その手段は、少なくとも、不活性ガス流をシート1の表面に向けて方向付けるノズル4を含むべきである。ノズル4は、この流れがシート1の幅のほぼ全体にわたって流れるように構成された湾曲したガイド板5を含むことが好ましい。
【0055】
図2は、ガスが流れる角度βとローラー3の関係を示したものである。図2に示す通り、不活性ガスを供給するための手段は、ローラー3の中心Bとシート1がローラー3に接触している領域の中点Aとで形成される想像線ABに対する角度βで不活性ガスを供給する。通常、不活性ガスを供給するための手段は、約30°〜約150°、約45°〜約135°、約60°〜約115°または約85°〜約95°の角度βでガスが流れるような位置にある。湾曲したガイド板5を用いる場合、角度βは、不活性ガスがノズル4を出ると同時に流れていく方向を基準に測定する。
【0056】
シート1の幅のほぼ全体にわたって流れることに加えて、不活性ガスの流れは、シート1の進行方向(すなわち機械方向)のほぼ逆方向に流れる。本明細書で用いる用語「機械方向のほぼ逆」とは、フィルムの機械方向の逆の方向に対して約10°以内、5℃以内もしくはそれ以下、または平行であり、かつフィルムまたはシートの表面の接線に対し10°以内、約5°以内または0°の角度の方向、を意味する。通常、方向は、不活性ガスの流れが、不活性ガスの流れを方向付けるための少なくとも1つの手段を出る地点で決められる。
【0057】
次に図3を参照すると、特定の実施形態で用いる、不活性ガスの流れを証明するための手段の具体的な構成が記載されている。図3に描いた実施形態においては、ノズル4は、スリット400を有するノズル本体40、スリット400から流れ出る不活性ガスの方向を変えるためのL字形断面のガイド板41、およびガイド板41と共にスリット様出口ポート43を形成するガイド板42を含む。スリット400は連続的であっても断続的であってもよいが、連続的なスリットが好ましい。ノズル4の形状は通常は管状であるが、望ましい流速で機械方向のほぼ反対方向へ不活性ガスを吹き出すことが可能でありさえすれば、形状は重要ではない。いくつかの実施形態においては、ノズル4は、スリット様出口ポート43の代わりにいくつかの円筒状出口ポートを含んでいてもよい。円筒状出口ポートはベンチュリ効果を利用することができるため、シート1の孔から洗浄溶媒20を除去するのに役立つ。
【0058】
続けて図3を参照すると、本発明の特定の実施形態では、ベンチュリ効果が用いられてシート1の孔から残留洗浄溶媒20を除去するのに役立つが、ノズル4の出口ポート43とシート1の間の空間d2は、約1〜約5mm、好ましくは約1〜約3mmの範囲とする。
【0059】
本発明の実施形態は、所望によって、ノズル4の出口ポート43から乾燥ロール3の表面にほぼ沿って伸展する湾曲したガイド板5を含む。湾曲したガイド板5は、ノズル4の出口ポート43の上側のガイド板42の横断面と接触していてもよい。不活性ガスは、湾曲したガイド板5を設けることによってローラー3に沿って均一に分布させることができ、空気/不活性ガスの流れと微多孔性シート1との接触面積を増加させることができる。したがって、洗浄溶媒20および第2の溶媒21は、シート1の進行方向に対してほぼ逆方向に流れる不活性ガスによって、湾曲したガイド板5のほぼ末端部(上流側の端部)で除去することができる。
【0060】
図3に描写されてもいるように、湾曲したガイド板5の下流端部とシート1の間の空間d3は、好ましくは2〜10mm、より好ましくは3〜7mmに設定される。同様に、湾曲したガイド板5の末端とシート1の間の空間d4は、好ましくは2〜10mm、より好ましくは3〜7mmに設定される。シートの可視性を高めるため、湾曲したガイド板5は、ガラスまたはアクリル樹脂等の透明な材料で形成されることが好ましい。湾曲したガイド板5の末端とシート1の間の空間d4がノズル4の出口ポート43とシート1の間の空間d2より広くなるように構成することは、いくつかの実施形態において有益であり得る。特定の実施形態においては、d2より広い空間d4を設けることが有益であり得る。
【0061】
いくつかの実施形態においては、ノズル4の出口ポート43における不活性ガスの流速は、200〜500m/秒、または250〜400m/秒であってもよいが、流速は重要ではない。流速が200m/秒未満の場合、シートを十分に乾燥させることが困難になり得る。一方、流速が速いとシート1の望ましくない収縮を防止することが困難になることがある。不活性ガスの流速は、ノズル本体40内のガス圧力および出口ポート43の間隙d1を変えることにより調節することができる。一実施形態においては、ノズル4の出口ポート43の間隙d1は、1〜5mm、または1〜3mmであってもよい。
【0062】
図4は、溶媒20および21の蒸気ならびに不活性ガスの流れを除去するように有利に位置付けられた、随意であるバッフル6を含む装置の実施形態を示している。バッフルのそのような位置の1つは、ニップローラー30の上側の近くである。バッフル6の構造は重要ではなく、したがって、溶媒蒸気の一部を回収することができるいずれのバッフルを用いてもよい。一実施形態においては、バッフル6は、ニップローラー30からのシート1に付着している、洗浄溶媒20および実質的に非相溶性である第2の溶媒21の量を低減することができるような位置にある。
【0063】
図4に描写されてもいるように、随意であるバッフル6は、バッフル6に連結している、吸引ポンプ7および分離タンク8と一緒に用いてもよい。別の構成においては、随意であるバッフル6は、フードまたは換気扇等の換気デバイスに置き換えてもよい。いずれの場合においても、洗浄溶媒20および第2の溶媒21の蒸気は、随意である吸引ポンプ7で回収して随意である分離タンク8に通すことができ、そこで溶媒を回収し再利用することができる。
【0064】
次に図5を参照すると、シート1の外観は、通常、残留溶媒レベルが許容可能なレベルまで下がると、概ね透明から不透明に変化することが観察された。したがって、溶媒のレベルは多くの方法で測定することができるが、透明から不透明への変化を光学的に判定することが、許容可能なレベルの残留溶媒が得られたことを判定する都合よい方法となる。特定の実施形態においては、微多孔膜内の所望の残留溶媒レベルがフィルムの幅にわたる比較的狭いバンドまたは領域r1にわたって実現されるように、上記の特徴の1つまたは複数を設定する。いくつかの実施形態においては、所望の溶媒レベルが得られる領域r1がローラー3で生じるように、本発明の特徴を設定する。フィルムの特性は、フィルム1のレベルを超えて大幅に偏るべきではないため、所望の溶媒レベルが達成される領域r1の値は小さい方が好ましい。通常は、r1の範囲は、1mm〜300mm、好ましくは3mm〜200mm、より好ましくは5mm〜100mm、特に50〜105mmである。他の特定の設定においては、r1は10mm〜約80mm、または約20〜30mmである。
【0065】
フィルムの幅が大きくなるにつれて、均一に乾燥させることの困難さが通常は増すため、フィルムの幅と比較して範囲r1を考慮することが有用となり得る。いくつかの実施形態においては、透明から不透明への変化の範囲r1は、以下の範囲内である。
【数1】

式中、Wはフィルムの幅である。特定の実施形態においては、比率r1/Wの上限は約0.01、約0.033、約0.015または約0.006であり、下限は約0.001、0.006、0.01または0.02の範囲である。0.005〜約0.04の範囲の比率r1/Wは、本発明の特徴の特定組合せによって実現することができる。
【0066】
記載された装置これらの特徴のうちの2つ以上をに提供することも有益である。したがって、本発明の実施形態は、不活性ガスの流れを供給するための2つ以上の別々の手段を提供し得る。例えば、そのような実施形態の1つとしては、膜1の幅全体にわたって隣接した位置にある、2つ以上、好ましくは3つ、4つまたは5つの別々のノズル4、ガイド板41または湾曲したガイド板5が挙げられる。このような構成においては、不活性ガスの流れを供給するための各手段は、個々に調節または制御することができ、それによって、微多孔膜が残留溶媒の所望のレベルを達成する領域r1を縮小させるためにプロセスパラメータを調整するための順応性がより高まる。
【0067】
乾燥後、限定するものではないが、乾燥延伸、熱硬化加熱処理、屈曲、またはスリッティング等の随意の処理を、いくつでも膜1に行ってよい。
【0068】
上記で実証した通り、本発明の実施形態は、熱可塑性フィルムの作製に有用な、新規な方法および装置を提供する。この方法および装置は、以下の利点の1つまたは複数を有する。第1に、横方向への収縮を改善することができる。いくつかの例において、微多孔性フィルムによって空孔率またはシャットダウン温度が改善された。上述のように作製された微多孔性ポリオレフィン膜は高透過性の膜である。微多孔性フィルムの所望の特性は、本明細書に記載の装置および方法に関連する、種々の成分変数およびプロセス変数のパラメータを調整することにより得ることができる。そのような変数のいくつかとして、ライン速度、不活性ガスの流速および温度、不活性ガスを供給するための手段の配置、ならびにフィルムの進路に対するその相対角度が挙げられる。これらの条件について記載してきたが、実施の詳細次第では特定の値に調整することが必要となり得る。このような調整は当業者の能力の範囲内である。当業者は、本発明の1つまたは複数の実施形態のその他の特徴およびさらなる利点も認識できる。
【0069】
限られた数の実施形態に関して本発明を記載してきたが、ある実施形態の具体的な特徴が本発明の他の実施形態に起因するものとすべきではない。どの実施形態も、本発明の全ての態様を代表するものではない。その上、そこからの修正例および変更例も存在する。例えば、生じた微多孔性ポリオレフィン膜を、必要に応じて、プラズマ照射による親水性処理、界面活性剤による含浸、表面移植、または特性を向上または修正するためのその他のプロセスに付してもよい。他の実施形態においては、本組成物は、記載された要素から本質的になるか、または記載された要素からなる。最後に、本明細書中に具体的に列挙していない1つまたは複数の構成要素または工程を含まない実施形態が明示的に開示されているということを考慮すべきである。添付の特許請求の範囲は、本発明の範囲内に含まれるそのような修正例および変更例の全てを包含することを意図している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性シートを乾燥させる装置であって、
少なくとも1種の熱可塑性組成物を含みシートの中に希釈剤を有する熱可塑性シートを供給するための手段、
シートの第1の表面と接触するローラー、
不活性ガスの流れをシートの第2の表面に方向付けるための少なくとも1つの手段であって、該手段が、約30°〜約150°の範囲の角度βでこの流れを提供するような位置にある、手段
を含む熱可塑性シートの乾燥装置。
ここで、βは、ローラーの中心とフィルムがローラーに接触している領域の中点とで形成されるラインと、流れの方向とで形成される角度である。
【請求項2】
前記不活性ガスの流れがほぼ進行方向である、請求項1に記載の熱可塑性シートの乾燥装置。
【請求項3】
流れがほぼ進行方向の逆に方向付けられる、請求項1に記載の熱可塑性シートの乾燥装置。
【請求項4】
不活性ガスの流れを方向付けるための少なくとも1つの手段が、ノズル本体、スリット、およびスリットから流れ出る不活性ガスの流れを方向付けることができるガイド板を有するノズルを含む、請求項1または2に記載の熱可塑性シートの乾燥装置。
【請求項5】
不活性ガスの流れを方向付けるための少なくとも1つの手段が、ローラーの表面にほぼ沿って伸展する湾曲したガイド板に機能的に連結した出口ポートをさらに含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の熱可塑性シートの乾燥装置。
【請求項6】
不活性ガスの流れを方向付けるための少なくとも1つの手段が、ローラーの幅に関して2つ以上の所定の位置にある独立して動作可能な2つ以上の手段を含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の熱可塑性シートの乾燥装置。
【請求項7】
不活性ガスの流れを方向付けるための少なくとも1つの手段が、ローラーの幅に関して異なる4つ以上の位置にある独立して動作可能な4つ以上の手段を含む、請求項6に記載の熱可塑性シートの乾燥装置。
【請求項8】
ローラーがシートの進行方向に駆動する、請求項1〜7のいずれか一項に記載の熱可塑性シートの乾燥装置。
【請求項9】
ローラー、および不活性ガスの流れを方向付けるための少なくとも1つの手段が、熱可塑性シート中の所望の溶媒レベルが1mm〜300mmである機械方向の範囲r1を形成するように構成される、請求項1〜8のいずれか一項に記載の熱可塑性シートの乾燥装置。
【請求項10】
ローラー上のフィルムの張力を調整するための張力調整ローラーおよび駆動ローラーをさらに含み、
不活性ガスの流れを供給するための少なくとも1つの手段が、不活性ガスの流れをローラーと張力調整ローラーの間の場所に供給する位置にある、請求項1〜9のいずれか一項に記載の熱可塑性シートの乾燥装置。
【請求項11】
熱可塑性シートをローラーに押し付けるためのニップローラーをさらに含む、請求項1〜10のいずれか一項に記載の熱可塑性シートの乾燥装置。
【請求項12】
不活性ガスの流れが熱可塑性シートに接触した後で不活性ガスの流れを受ける位置に取入れ部がある排気デバイスをさらに含む、請求項1〜11のいずれか一項に記載の熱可塑性シートの乾燥装置。
【請求項13】
熱可塑性シートの搬送速度が5〜30m/分である、請求項1〜12のいずれか一項に記載の熱可塑性シートの乾燥装置。
【請求項14】
シートの進行方向に対してローラーの上流に位置する、洗浄溶媒を含む洗浄槽であって、ローラーが洗浄溶媒の沸点より30℃低い温度から洗浄溶媒の沸点より20℃高い温度の範囲の温度に加熱される洗浄槽、をさらに含む、請求項1〜13のいずれか一項に記載の熱可塑性シートの乾燥装置。
【請求項15】
不活性ガスの流れを方向付けるための少なくとも1つの手段を出る不活性ガスの温度が、室温から洗浄溶媒の沸点より10℃上までの範囲である、請求項14に記載の熱可塑性シートの乾燥装置。
【請求項16】
洗浄浴が、洗浄溶媒と実質的に非相溶性である第2の溶媒をさらに含む、請求項14に記載の熱可塑性シートの乾燥装置。
【請求項17】
洗浄溶媒が塩化メチレンであり、第2の溶媒が水である、請求項16に記載の熱可塑性シートの乾燥装置。
【請求項18】
熱可塑性シートを乾燥させる装置であって、
熱可塑性シートの第1の表面を接触させるためのローラー、
不活性ガスの流れをシートの第2の表面に方向付けるための少なくとも1つの手段であって、該手段が、約45°〜約135°の範囲の角度βでこの流れを提供するような位置にある、手段を含み、
ローラー、および流れまたは不活性ガスを方向付けるための少なくとも1つの手段が、熱可塑性シート中の所望の溶媒レベルが10mm〜80mmの範囲である範囲r1を形成するように構成される、熱可塑性シートの乾燥装置。
ここで、βは、ローラーの中心とフィルムがローラーに接触している領域の中点とで形成されるラインと、流れの方向とで形成される角度である。
【請求項19】
シートの孔の中にある量の希釈剤を有する熱可塑性シートとローラーとを絶えず接触させておくことと、シートの第2の表面の一部の上に約30°〜約150°の範囲の角度βで不活性ガス流を通すこととを含む、熱可塑性シートを乾燥させる方法。
ここで、βは、ローラーの中心とフィルムがローラーに接触している領域の中点とで形成されるラインと、流れの方向とで形成される角度である。
【請求項20】
流れがほぼ進行方向に方向付けられる、請求項19に記載の熱可塑性シートを乾燥させる方法。
【請求項21】
流れがほぼ進行方向の逆に方向付けられる、請求項19に記載の熱可塑性シートを乾燥させる方法。
【請求項22】
シートを張力調整ローラーおよび駆動ローラーに通すことによりローラー上のフィルムの張力を調整することをさらに含み、
不活性ガスの流れを供給するための少なくとも1つの手段が、不活性ガスの流れをローラーと張力調整ローラーの間の場所に供給する位置にある、請求項19〜21のいずれか一項に記載の熱可塑性シートを乾燥させる方法。
【請求項23】
熱可塑性シートの一部の上に不活性ガスを通すことが、熱可塑性シートの幅に沿った所定の領域の上に、2つ以上の不活性ガスの流れを個々に通すことを含む、請求項19〜22のいずれか一項に記載の熱可塑性シートを乾燥させる方法。
【請求項24】
熱可塑性シートの一部の上に不活性ガスを通すことが、熱可塑性シートのほぼ幅全体に沿った所定の位置の上に、4つ以上の不活性ガスの流れを個々に通すことを含む、請求項23に記載の熱可塑性シートを乾燥させる方法。
【請求項25】
不活性ガスを吹き出すための少なくとも1つの手段の出口ポートから伸展する湾曲したガイド板が、熱可塑性シートの第2の表面にほぼ沿った方向に不活性ガスを方向付ける、請求項19〜24のいずれか一項に記載の熱可塑性シートを乾燥させる方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2012−501869(P2012−501869A)
【公表日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−508744(P2011−508744)
【出願日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際出願番号】PCT/JP2009/064896
【国際公開番号】WO2010/026904
【国際公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【出願人】(510157580)東レ東燃機能膜合同会社 (31)
【Fターム(参考)】