説明

熱可塑性樹脂積層チューブ及び紙袋

【課題】 本発明は、熱可塑性樹脂積層チューブを提供する。
【解決手段】 本発明の熱可塑性樹脂積層チューブAは、複数層の熱可塑性樹脂層1、1・・・が積層一体化されてなる熱可塑性樹脂フィルム2から形成されてなる熱可塑性樹脂積層チューブであって、最外層となる熱可塑性樹脂層1aは、融点が130℃以下の熱可塑性樹脂を含有していると共に、最内層となる熱可塑性樹脂層1bは、融点が140℃以上のポリプロピレン系樹脂を30重量%以上含有しており、最外層となる熱可塑性樹脂層1aの表面にはコロナ放電処理が施されており、上記熱可塑性樹脂フィルム2の厚みが40μm以上であることを特徴とする

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙袋の内袋として用いられる熱可塑性樹脂積層チューブ及びこれを用いた紙袋に関する。
【背景技術】
【0002】
紙袋の内袋として従来からポリオレフィン製のチューブ又は袋が用いられているが、紙袋と内袋とがそれらの開口部において一体化していない場合には、紙袋の開口部を開けても内袋の開口部は開いておらず、別途、内袋の開口部を広げる必要があり、紙袋内に物を充填し或いは取り出すにあたって作業性が悪いといった問題点を有していた。
【0003】
そこで、特許文献1には、クラフト紙の少なくとも一面に合成樹脂フィルムをラミネート加工したシート材からなり、前記合成樹脂フィルムを内面側にした紙袋であって、前記合成樹脂フィルムが、防水防湿性を備える合成樹脂と引張り強度を備える合成樹脂とを共押出しラミネート加工した二層の合成樹脂層から構成されてなる紙袋が提案されている。
【0004】
しかしながら、上記紙袋は、接着剤が広範囲に用いられているために、紙袋を使用後に廃棄するにあたり、分別のためにクラフト紙と合成樹脂フィルムとを分離しようとすると、クラフト紙の表面が剥がれて合成樹脂フィルム側に大量に付着した状態となったり、或いは、合成樹脂フィルムが破れてしまい、クラフト紙の表面に多量に合成樹脂フィルムの一部が残存してしまう事態が発生し、クラフト紙と合成樹脂フィルムとを完全に分離するために多大な労力を要し、廃棄に関して作業性が悪いといった問題点を有していた。
【0005】
【特許文献1】特開2005−41527号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、接着剤を用いることなく紙袋本体の外側からヒートシールすることによって紙袋本体の内面に紙袋の開口部を封止することなく容易に一体化することができると共に、ヒートシール条件を変更することによって紙袋の開口部を容易に封止した状態とすることができ且つ廃棄にあたっては紙袋本体から容易に分離することができる熱可塑性樹脂積層チューブ及びこの熱可塑性樹脂積層チューブを用いた紙袋を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の熱可塑性樹脂積層チューブは、複数層の熱可塑性樹脂層が積層一体化されてなる熱可塑性樹脂フィルムから形成されてなる熱可塑性樹脂積層チューブであって、最外層となる熱可塑性樹脂層は、融点が130℃以下の熱可塑性樹脂を70重量%以上含有していると共に、最内層となる熱可塑性樹脂層は、融点が140℃以上のポリプロピレン系樹脂を30重量%以上含有しており、最外層となる熱可塑性樹脂層の表面にはコロナ放電処理が施されており、上記熱可塑性樹脂フィルムの厚みが40μm以上であることを特徴とする。
【0008】
上記熱可塑性樹脂積層チューブAは、図1及び図2に示したように、複数層の熱可塑性樹脂層1、1・・・が積層一体化されてなる筒状の熱可塑性樹脂フィルム2から構成されてなる。なお、図1では、所定長さを有する熱可塑性樹脂積層チューブを示したが、熱可塑性樹脂積層チューブは長尺状であってもよい。
【0009】
熱可塑性樹脂積層チューブAの熱可塑性樹脂フィルムの各熱可塑性樹脂層1、1・・・を構成している熱可塑性樹脂は、特に限定されず、例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体などのポリエチレン系樹脂、ホモポリプロピレン、ランダムポリプロピレン、エチレン−プロピレンブロック共重合体、プロピレン−α−オレフィン共重合体、プロピレン−酢酸ビニル共重合体などのポリプロピレン系樹脂などのポリオレフィン系樹脂;ポリ塩化ビニル系樹脂;ポリエステル系樹脂;ポリメチルメタクリレート系樹脂;ポリカーボネート系樹脂などが挙げられ、これらは単独で使用されても、二種以上が併用されてもよい。上記熱可塑性樹脂としては、これらの中でも、ポリオレフィン系樹脂が好ましく、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン−プロピレンブロック共重合体がより好ましい。
【0010】
なお、エチレン−α−オレフィン共重合体を構成するα−オレフィンとしては、例えば、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−へキセン、1−オクテンなどが挙げられ、又、プロピレン−α−オレフィン共重合体を構成するα−オレフィンとしては、エチレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−へキセン、1−オクテンなどが挙げられる。
【0011】
そして、各熱可塑性樹脂層には、必要に応じて、その物性を損なわない範囲内において、ヒンダードアミン系光安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、滑剤、アンチブロッキング剤、帯電防止剤、顔料などの添加剤が添加されていてもよい。
【0012】
上記ヒンダードアミン系光安定剤としては、例えば、コハク酸ジメチル−1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン重縮合物、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ポリ{[6−[(1,1,3,3‐テトラメチルブチル)アミノ]−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル][(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]ヘキサメチレン[(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]}などが挙げられ、これらは単独で用いられても、二種以上が併用されてもよい。
【0013】
又、上記酸化防止剤としては、従来公知のものが使用できるが、熱安定剤としての効果を兼ね備えているものが好ましい。このような酸化防止剤としては、例えば、カルボン酸の金属塩、フェノール系抗酸化剤、有機亜燐酸エステルなどのキレーターが挙げられ、単独で用いられても、二種以上が併用されてもよい。
【0014】
そして、上記紫外線吸収剤としては、従来公知のものが使用でき、例えば、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ドデシルオキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノンなどのベンゾフェノン系紫外線吸収剤、2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−アミルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾールなどのベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、サリチル酸エステル系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤などが挙げられ、単独で用いられても、二種以上が併用されてもよい。
【0015】
又、上記滑剤としては、従来公知のものが使用でき、例えば、ステアリン酸アマイドなどの飽和脂肪酸アマイド、エルカ酸アマイド、オレイン酸アマイドなどの不飽和脂肪酸アマイド、エチレンビスステアリン酸アマイドなどのビスアマイドなどが挙げられ、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0016】
上記アンチブロッキング剤としては、従来公知のものが使用でき、例えば、合成シリカ、天然シリカ、炭酸カルシウム、タルクなどが挙げられ、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0017】
そして、上記帯電防止剤としては、従来公知のものが使用でき、例えば、界面活性剤、脂肪酸エステル、アミン系帯電防止剤、アマイド系帯電防止剤などが挙げられ、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0018】
熱可塑性樹脂積層チューブAを構成している熱可塑性樹脂フィルムの熱可塑性樹脂層のうち、最外層となる熱可塑性樹脂層1aは、融点が130℃以下の熱可塑性樹脂を70重量%以上含有していると共に、最内層となる熱可塑性樹脂層1bは、融点が140℃以上のポリプロピレン系樹脂を30重量%以上含有している。なお、本発明において、熱可塑性樹脂の融点は示差走査熱量計(DSC)を用いてJIS K7121に準拠して加熱速度10℃/分にて測定したものをいう。
【0019】
なお、熱可塑性樹脂積層チューブAの熱可塑性樹脂フィルム2は複数層の熱可塑性樹脂層1、1・・・が積層一体化されてなり、上述のように、最外層及び最内層を構成している熱可塑性樹脂は特定の熱可塑性樹脂を含有している一方、最外層及び最内層以外の熱可塑性樹脂層1cは何れの熱可塑性樹脂から構成されていてもよいが、ポリオレフィン系樹脂から構成されていることが好ましい。又、最外層及び最内層以外の熱可塑性樹脂層1c(中間層)を構成する熱可塑性樹脂は互いに同一であっても相違してもよい。図1では、熱可塑性樹脂フィルム2が三層の熱可塑性樹脂層1から形成されている場合を一例として表示したが、熱可塑性樹脂フィルム2は、四層以上の熱可塑性樹脂層1、1・・・から形成されていてもよいのはいうまでもない。
【0020】
最外層となる熱可塑性樹脂層1aは、融点が130℃以下の熱可塑性樹脂を70重量%以上含有している必要があり、融点が130℃以下の熱可塑性樹脂を80〜100重量%含有していることが好ましく、融点が130℃以下の熱可塑性樹脂のみを含有していることがより好ましい。又、最外層となる熱可塑性樹脂層1aを構成している熱可塑性樹脂の融点は、130℃以下であればよいが、105〜130℃が好ましい。そして、最外層となる熱可塑性樹脂層1aを構成する熱可塑性樹脂としては、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレンと直鎖状低密度ポリエチレンとの混合物が好ましく、低密度ポリエチレンと直鎖状低密度ポリエチレンとの混合物がより好ましい。
【0021】
最外層となる熱可塑性樹脂層1aを構成する熱可塑性樹脂が低密度ポリエチレンと直鎖状低密度ポリエチレンとを含有する場合、最外層となる熱可塑性樹脂層1a中における低密度ポリエチレンの含有量は、少ないと、紙袋本体とのシール性が低下し、又は、長時間インパルスシールによる熱融着性が弱くなることなることがある一方、多いと、熱可塑性樹脂積層チューブの強度が弱くなってしまうことがあるので、20〜50重量%が好ましい。同様の理由で、最外層となる熱可塑性樹脂層1a中における直鎖状低密度ポリエチレンの含有量は、50〜80重量%が好ましい。
【0022】
最外層となる熱可塑性樹脂層1aは、融点が130℃以下の熱可塑性樹脂を70重量%以上含有している必要があるのは、熱可塑性樹脂積層チューブAは、後述するように、紙袋本体内に挿入されて紙袋本体の内面に熱融着一体化させて紙袋の内袋として用いられる。そこで、熱可塑性樹脂積層チューブAの最外層となる熱可塑性樹脂層1aを構成する熱可塑性樹脂として、融点が130℃以下の熱可塑性樹脂を含有しているものを用いることによって、紙袋本体の外面からシールバーなどによって熱可塑性樹脂積層チューブAに熱を加えた場合に、最外層となる熱可塑性樹脂層1aが迅速に溶融して紙袋本体の内面と円滑に熱融着一体化できるようにするためである。
【0023】
なお、最外層となる熱可塑性樹脂層1aは融点が130℃以下の熱可塑性樹脂を70重量%以上含有しておればよく、残余の熱可塑性樹脂の融点が130℃を超えていてもよい。これは、融点が130℃以下の熱可塑性樹脂を70重量%以上含有しておれば、たとえ残余の熱可塑性樹脂の融点が130℃を超えていても、全体の70重量%以上を占める融点が130℃以下の熱可塑性樹脂の存在によって、最外層となる熱可塑性樹脂層1aの耐熱性はそれ程向上せず、最内層1b、1b同士を熱融着一体化させることなく、最外層となる熱可塑性樹脂層1aを紙袋本体の内面に容易に熱融着一体化させることができる。
【0024】
更に、熱可塑性樹脂積層チューブAの最外層となる熱可塑性樹脂層1aの表面にはコロナ放電処理が施されている。このように最外層となる熱可塑性樹脂層1aの表面にコロナ放電処理を施すことによって、紙袋本体の内面への熱融着性を改善している。なお、最外層となる熱可塑性樹脂層1aへのコロナ放電処理の条件としては、熱可塑性樹脂積層チューブAの最外層1a表面が、ぬれ張力試験液38.0mN/mを使用して温度23℃、相対湿度50%の標準試験室雰囲気(JIS K7100)で行った試験(JIS K6768)でぬれると判定されるように設定されることが好ましい。
【0025】
一方、最内層となる熱可塑性樹脂層1bは、融点が140℃以上のポリプロピレン系樹脂を30重量%以上含有していることが必要である。これは、上述したように、熱可塑性樹脂積層チューブAの最外層となる熱可塑性樹脂層1aを紙袋本体の内面に熱融着一体化させるために加える熱によって、熱可塑性樹脂積層チューブAの最内層となる熱可塑性樹脂層1b、1b同士が互いに熱融着一体化するのを防止するためである。そして、最内層となる熱可塑性樹脂層1bを構成する熱可塑性樹脂としては、プロピレン成分を50重量%以上含有するエチレン−プロピレンブロック共重合体がより好ましい。
【0026】
熱可塑性樹脂層1b中における融点が140℃以上のポリプロピレン系樹脂の含有量は、少ないと、熱可塑性樹脂積層チューブAと紙袋本体とを熱融着一体化させる際に加えられる熱によって、熱可塑性樹脂積層チューブAの最内層1b、1b同士が熱融着一体化する虞れがあるので、30重量%以上に限定され、40〜100重量%が好ましい。
【0027】
又、熱可塑性樹脂層1bを構成しているポリプロピレン系樹脂の融点は、低いと、熱可塑性樹脂積層チューブAと紙袋本体とを熱融着一体化させる際に加える熱によって、熱可塑性樹脂積層チューブAの最内層1b、1b同士が熱融着一体化する虞れがあるので、140℃以上に限定され、高すぎると、紙袋本体内に物を収納した後の熱可塑性樹脂積層チューブAの開口部の閉塞が困難となることがあるので、140〜170℃が好ましい。
【0028】
なお、最内層となる熱可塑性樹脂層1bは融点が140℃以上のポリプロピレン系樹脂を30重量%以上含有しておればよく、残余の熱可塑性樹脂の融点が140℃未満であってもよい。これは、融点が140℃以上のポリプロピレン系樹脂を30重量%以上含有しておれば、たとえ残余の熱可塑性樹脂の融点が140℃未満であっても、全体の30重量%以上を占める融点が140℃以上のポリプロピレン系樹脂の存在によって、最内層となる熱可塑性樹脂層1bの耐熱性が向上し、最外層となる熱可塑性樹脂層1aを紙袋本体の内面に熱融着一体化させるための加熱条件では、最内層となる熱可塑性樹脂層1bは互いに熱融着一体化しない。
【0029】
そして、熱可塑性樹脂積層チューブAの熱可塑性樹脂フィルムの厚みは、薄いと、熱可塑性樹脂積層チューブを紙袋本体内に挿入し、熱可塑性樹脂積層チューブと紙袋本体とを熱融着一体化させるために紙袋本体の外側から熱を加えた場合に、熱可塑性樹脂積層チューブの最内層となる熱可塑性樹脂層同士が不測に熱融着一体化してしまう虞れがあるので、40μm以上に限定され、40〜120μmが好ましく、50〜90μmがより好ましい。
【0030】
次に、本発明の熱可塑性樹脂積層チューブの製造方法を説明する。熱可塑性樹脂積層チューブの成形方法としては、従来公知の方法が採用されてよく、インフレーション法、Tダイ押出法、カレンダー法などを用いて各熱可塑性樹脂層を構成するフィルムを製膜した後に複数枚のフィルムを重ね合わせて積層一体化して熱可塑性樹脂フィルムを製造し、この熱可塑性樹脂フィルムの幅方向の両端部同士を熱融着一体化して筒状に形成して熱可塑性樹脂積層チューブを製造する方法、各熱可塑性樹脂層を構成する熱可塑性樹脂及び必要に応じて添加される添加剤を複数機の押出機に供給し、これらの押出機を一つのダイに接続してインフレーション法による多層押出法によって筒状の熱可塑性樹脂フィルムからなる熱可塑性樹脂積層チューブを製造する方法などが挙げられ、インフレーション法による多層押出法が好ましい。
【0031】
次に、熱可塑性樹脂積層チューブを用いて紙袋Bを製造する要領について説明する。先ず、紙袋本体3を用意する。この紙袋本体3は、紙袋に用いられている汎用の紙から形成されており、例えば、クラフト紙などから構成されている。
【0032】
紙袋本体3の形態は特に限定されず、例えば、図3に示したように、平面長方形状の底面部31とこの底面部31の四方外周縁から延設された四角筒状の周壁部32とからなる紙袋本体3の他に、一枚の紙を円筒状に形成し且つ一端部を閉塞してなる紙袋本体などが挙げられる。
【0033】
そして、紙袋本体3内に、所定長さに切断された熱可塑性樹脂積層チューブAを挿入し、紙袋本体3の外側からシールバーなどを用いて熱可塑性樹脂積層チューブAを加熱し、熱可塑性樹脂積層チューブAの最外層1aとこれに対向する紙袋本体3の内面とを熱融着一体化することによって紙袋Bを作製することができる(図4参照)。
【0034】
紙袋本体3と熱可塑性樹脂積層チューブAとを熱融着一体化させるに際しては、熱可塑性樹脂積層チューブAの最外層1aのみが溶融し且つ最内層1bが溶融しない温度に熱可塑性樹脂積層チューブAを紙袋本体3の外側から加熱するか、或いは、熱可塑性樹脂積層チューブAを加熱する時間を調節して、熱可塑性樹脂積層チューブの最外層1aを溶融させるものの、最内層1bは溶融しないように調節する必要がある。
【0035】
そして、得られた紙袋内に所望の物を収納した上で、紙袋の開口部をシールバーなどを用いて紙袋の外面から加熱して熱可塑性樹脂積層チューブAを加熱して最内層1bを溶融させて最内層1b、1b同士を熱融着一体化することによって紙袋の開口部を封止することができる。
【発明の効果】
【0036】
本発明の熱可塑性樹脂積層チューブは、上述の如き構成を有しているので、紙袋本体内に挿入して接着剤を用いることなく紙袋本体の外側からヒートシールすることによって、熱可塑性樹脂積層チューブの最内層同士を熱融着させることなく、熱可塑性樹脂積層チューブの最外層を紙袋本体の内面に容易に熱融着一体化することができると共に、ヒートシール条件を変更することによって、熱可塑性樹脂積層チューブの最内層同士を熱融着一体化させて紙袋の開口部を容易に封止した状態とすることもできる。
【0037】
更に、本発明の熱可塑性樹脂積層チューブは、上述のように、接着剤を用いることなく紙袋本体と容易に熱融着一体化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
以下に実施例を挙げて本発明の態様を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例にのみ限定されるものではない。
【0039】
(実施例1〜4、比較例1〜3)
最外層用の第一押出機、中間層用の第二押出機及び最内層用の第三押出機が同一のサーキュラーダイに接続されている成形装置を用意した。表1に示した所定量の直鎖状低密度ポリエチレン(密度:0.920g/cm3、メルトインデックス:1.0g/10分、融点:128℃)及び低密度ポリエチレン(密度:0.924g/cm3、メルトインデックス:3.0g/10分、融点:110℃)を第一押出機に供給して170℃にて溶融混練し、直鎖状低密度ポリエチレン(密度:0.920g/cm3、メルトインデックス:1.0g/10分、融点:128℃)を第二押出機に供給して170℃にて溶融混練し、ポリプロピレン系樹脂としてエチレン−プロピレンブロック共重合体(サンアロマー社製 商品名「Catalloy Adflex KS−021P」、密度:0.890g/cm3、メルトインデックス:0.8g/10分、融点:166℃)、及び、高密度ポリエチレン(密度:0.960g/cm3、メルトインデックス:1.0g/10分、融点:125℃)を表1に示した所定量だけ第三押出機に供給して190℃にて溶融混練し、第一〜三押出機からサーキュラ金型に押出してインフレーション成形を行って、最外層、中間層及び最内層の三層の熱可塑性樹脂層がこの順序で積層一体化され且つ表1に示した厚みを有する筒状の熱可塑性樹脂フィルムからなる熱可塑性樹脂積層チューブを得た。なお、メルトインデックスは、JIS K7210に準拠して190℃、荷重21.18Nの条件下にて測定されたものである。
【0040】
そして、実施例1〜4で得られた熱可塑性樹脂積層チューブについて、最外層となる熱可塑性樹脂層の表面(外面)全面に、ぬれ張力試験液38.0mN/mを使用して温度23℃、相対湿度50%の標準試験室雰囲気(JIS K7100)で行った試験(JIS K6768)でぬれると判定されるような条件にてコロナ放電処理を施した。
【0041】
得られた熱可塑性樹脂積層チューブのシール性を下記の要領で測定し、その結果を表1に示した。
【0042】
(2.4秒シール性)
厚みが70μmのクラフト紙を用いて、縦200mm、横500mmの平面長方形状の底面部とこの底面部の四方外周縁から延設された高さが700mmの四角筒状の周壁部とからなる紙袋本体を作製する一方、熱可塑性樹脂積層チューブを長さ750mmに切断した。
【0043】
次に、紙袋本体内に熱可塑性樹脂積層チューブを挿入すると共に、10mm幅のシールバーを有するインパルスシール機(富士インパルス社製 商品名「TC3000」)を用意し、シールバーを紙袋本体の開口部外面に2.4秒間に亘って押しつけて加熱し、紙袋本体の開口部内周面に熱可塑性樹脂積層チューブを全周に亘って熱融着させて紙袋を作製した。
【0044】
得られた紙袋の開口部において、紙袋本体と熱可塑性樹脂積層チューブとの熱融着の状態、及び、熱可塑性樹脂積層チューブの最内層同士の熱融着の状態を目視観察し、下記基準に基づいて判断した。
【0045】
なお、表1において、「紙袋本体と熱可塑性樹脂積層チューブとの熱融着性」は「紙/チューブ」と、「熱可塑性樹脂積層チューブの最内層同士の熱融着性」は「最内層同士」と表記した。
【0046】
〔紙袋本体と熱可塑性樹脂積層チューブとの熱融着性〕
○:紙袋本体と熱可塑性樹脂積層チューブが完全に熱融着一体化し分離困難であった。
△:紙袋本体と熱可塑性樹脂積層チューブは熱融着していたが容易に分離できた。
×:紙袋本体と熱可塑性樹脂積層チューブは熱融着していなかった。
【0047】
〔熱可塑性樹脂積層チューブの最内層同士の熱融着性〕
○:熱可塑性樹脂積層チューブの最内層同士は全く熱融着していなかった。
△:熱可塑性樹脂積層チューブの最内層同士は熱融着していたが容易に分離できた。
×:熱可塑性樹脂積層チューブの最内層同士が完全に熱融着一体化し分離困難であった

【0048】
(4秒シール性)
「2.4秒シール性」の評価において、シールバーを紙袋本体の外面に2.4秒間の代わりに4秒間に亘って押しつけて加熱したこと以外は「2.4秒シール性」の評価と同様の要領で行い紙袋を作製した。
【0049】
得られた紙袋の開口部において、紙袋本体と熱可塑性樹脂積層チューブとの熱融着の状態、及び、熱可塑性樹脂積層チューブの最内層同士の熱融着の状態を目視観察し、下記基準に基づいて判断した。
【0050】
〔紙袋本体と熱可塑性樹脂積層チューブとの熱融着性〕
○:紙袋本体と熱可塑性樹脂積層チューブが完全に熱融着一体化し分離困難であった。
△:紙袋本体と熱可塑性樹脂積層チューブは熱融着していたが容易に分離できた。
×:紙袋本体と熱可塑性樹脂積層チューブは熱融着していなかった。
【0051】
〔熱可塑性樹脂積層チューブの最内層同士の熱融着性〕
○:熱可塑性樹脂積層チューブの最内層同士が完全に熱融着一体化し分離困難であった

△:熱可塑性樹脂積層チューブの最内層同士は熱融着していたが容易に分離できた。
×:熱可塑性樹脂積層チューブの最内層同士は全く熱融着していなかった。
【0052】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の熱可塑性樹脂積層チューブを示した模式斜視図である。
【図2】本発明の熱可塑性樹脂積層チューブの層状態を示した模式平面図である。
【図3】熱可塑性樹脂積層チューブを用いて紙袋を作製する要領を示した斜視図である。
【図4】熱可塑性樹脂積層チューブを用いた紙袋を示した斜視図である。
【符号の説明】
【0054】
1 熱可塑性樹脂層
1a 最外層となる熱可塑性樹脂層
1b 最内層となる熱可塑性樹脂層
1c 中間層となる熱可塑性樹脂層
2 熱可塑性樹脂フィルム
3 紙袋本体
A 熱可塑性樹脂積層チューブ
B 紙袋

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数層の熱可塑性樹脂層が積層一体化されてなる熱可塑性樹脂フィルムから形成されてなる熱可塑性樹脂積層チューブであって、最外層となる熱可塑性樹脂層は、融点が130℃以下の熱可塑性樹脂を70重量%以上含有していると共に、最内層となる熱可塑性樹脂層は、融点が140℃以上のポリプロピレン系樹脂を30重量%以上含有しており、最外層となる熱可塑性樹脂層の表面にはコロナ放電処理が施されており、上記熱可塑性樹脂フィルムの厚みが40μm以上であることを特徴とする熱可塑性樹脂積層チューブ。
【請求項2】
紙で形成された袋本体の内面に請求項1に記載の熱可塑性樹脂積層チューブがその最外層を上記袋本体の内面に熱融着させることによって一体化されてなることを特徴とする紙袋。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2010−6425(P2010−6425A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−168271(P2008−168271)
【出願日】平成20年6月27日(2008.6.27)
【出願人】(596111276)積水フイルム株式会社 (133)
【Fターム(参考)】