説明

熱可塑性樹脂製建材

【課題】 ドロマイトのか焼物又は、ドロマイトのか焼・消化物を含有する、安価で抗菌性が高く、床材、幅木、腰壁、壁装材などの建材として利用可能な色調や外観及び耐摩耗性を備えた熱可塑性樹脂製建材を提供すること。
【解決手段】 ドロマイトのか焼物又は、ドロマイトのか焼・消化物を熱可塑性樹脂に含有させて建材とすることであり、さらに、合成樹脂の劣化や着色が抑制され、様々な意匠の付与が可能となるように、熱可塑性樹脂製建材に酸化防止剤、安定剤、着色防止剤の中から選ばれた1種類以上の化合物を含有させることであり、抗菌性能を十分に発揮させるため、熱可塑性樹脂製建材が多層構造の場合、少なくともその最表面にドロマイトのか焼物又は、ドロマイトのか焼・消化物を含有させるようにしたことである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドロマイトのか焼物又は、ドロマイトのか焼・消化物を含有する組成物からなる特に抗菌性に優れた熱可塑性樹脂製建材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
院内感染や食中毒といった、細菌が発生源となった事例が社会問題化したことをきっかけにして抗菌製品が注目されるようになり、現在では繊維や衣類、キッチン用品、トイレタリー、家電製品、建材等、生活空間の中にあらゆる抗菌製品が利用されている。このことは建材についても同様であり、主に製造・加工時に抗菌剤を添加することにより製品に抗菌性を付与しているのが現状である。
【0003】
現在提供されている樹脂用抗菌・防カビ剤には、大きく分けて有機系と無機系とに区別できる。
有機系の抗菌・防カビ剤には、従来から殺菌剤として知られた薬剤の中で、樹脂製品の加工時の加熱に耐えることができ、且つ樹脂製品に練り込んだ状態で持続性を有する安定なものが用いられており、代表的な有機系抗菌・防カビ剤には、2-(4-チアゾリル)-ベンズイミダゾール、N-(フルオロジクロロメチルチオ)-フタルイミド、2,3,5,6-チトクロロ-4-(メチルスルホニル)-ピリジン、10,10´-オキシビスフェノキシアルシン、トリメトキシシリル-プロピルオクタデシルアンモニウムクロライド、2-n-オクチル-4-イソチリアゾン-3-オン、ビス(2-ピリジルチオ-1-オキシド)亜鉛等がある。
【0004】
しかしながら、こうした有機系抗菌・防カビ剤は、揮発・溶出により樹脂組成物の加工製品より環境に拡散し即効効果を示すため、その有効期限が比較的短く、そして人体への影響が比較的強いといえる。また、有機系抗菌・防カビ剤の中には催奇性の疑いのあるものや、廃棄物が毒性を有するものもあるなど、その安全性の確保に難点がある。
また、有機系抗菌・防カビ剤には樹脂組成物の加工温度において、単品での耐熱性はあるが、樹脂組成物に添加した場合には、それ以下の温度で分解して樹脂を黄変させたり、成型に悪影響を及ぼす場合もある。更には、抗菌・防カビ剤自体の潜在的毒性やガス化した場合の毒性、熱分解物の毒性など加工、使用、廃棄の全ての段階において安全であることが望まれるような用途では、特にその安全性の確保に難点があるといえる。加えて、こうした有機系抗菌・防カビ剤は、比較的高価である。
【0005】
他方、無機系の抗菌・防カビ剤としては、銀、銅、亜鉛等の抗菌性金属を、燐酸ジルコニウム、ゼオライト、ヒドロキシアパタイト、シリカ・アルミナ、シリカゲル等の無機イオン交換体ないし多孔質体の担体に担持した金属置換型の抗菌・防カビ剤がほとんどであり、中でも抗菌・防カビ効果が高く安全性の高い銀系無機抗菌剤が一般に多く使用されている。こうした無機系の抗菌・防カビ剤では、有機系抗菌・防カビ剤のような上記諸問題は生じないものの、有効成分である金属イオンが触媒的に母材樹脂を劣化させたり、銀系無機抗菌剤では、特に光(紫外線)により金属銀に変化し変色し易いなど耐光性に難点があるものもある。また、これらの無機系抗菌剤・防カビ剤に使用されている金属が、人体に対して金属アレルギーを発症させることも懸念されている。加えて、こうした無機系の抗菌・防カビ剤は、無機イオン交換体や多孔質体に担持させる必要があり、所定の製造工数を要するため比較的高価である。
【0006】
こうした従来の無機系抗菌・防カビ剤は、有機系抗菌・防カビ剤のような揮発・溶出はほとんど起こさず、加工製品等の樹脂製品の表面に分散したものが細菌、カビ類と接触することによって初めて効果を生じるため、母材樹脂(或いは樹脂表面に抗菌性塗膜を形成する場合には、該塗膜原料である塗料の樹脂成分)に所定の比率で従来既知の無機系抗菌・防カビ剤を添加混入して樹脂組成物(或いは樹脂表面に抗菌性塗膜)を加工しても十分な抗菌性を発揮するものを製造することはできない。
【0007】
一方、近年、酸化カルシウムや酸化マグネシウムなどの金属酸化物に抗菌性能があることが報告されている(特許文献1)。これらは、天然鉱物や天然廃棄物などを原料としているため比較的安価であり、有機系抗菌・防カビ剤に比べて安全性も高いことが知られている。また、抗菌性を有する樹脂組成物として、消石灰と生石灰をプラスチックに添加する方法も提案されている(特許文献2)。
【0008】
他方、床材、幅木、腰壁、壁装材などの建材は、内装や外装の装飾用として使用されるため、色や柄、耐摩耗性、表面外観などが製品価値を大きく左右する。しかし、前述の開示された技術に示された酸化カルシウム、酸化マグネシウム、消石灰や生石灰などを用い、建材を製造した場合、加工時に母材樹脂を着色や劣化させてしまう問題や、表面外観や耐摩耗性の悪化などが起こり、製品価値を低下させてしまう恐れがあった。また、これらの問題を改善し、抗菌性が高く、色や柄、表面外観、耐摩耗性などの優れた建材を製造する方法については、前述の開示された技術には何ら示されていない。
【0009】
【特許文献1】特開2001-58188
【特許文献2】特開2000-302615
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、ドロマイトのか焼物又は、ドロマイトのか焼・消化物を含有する、安価で抗菌性が高く、床材、幅木、腰壁、壁装材などの建材として利用可能な色調や外観及び耐摩耗性を備えた熱可塑性樹脂製建材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る熱可塑性樹脂製建材は、ドロマイトのか焼物又は、ドロマイトのか焼・消化物を含有することを特徴とするものである(請求項1)。
【0012】
更に、本発明に係る熱可塑性樹脂製建材は、酸化防止剤、安定剤、着色防止剤の中から選ばれた1種類以上の化合物を含有するものとすることで、合成樹脂の劣化や着色が抑制され、様々な意匠の付与が可能となる(請求項2)。
【0013】
加えて、本発明に係る熱可塑性樹脂製建材が多層構造であって、少なくともその最表面にドロマイトのか焼物又は、ドロマイトのか焼・消化物を含有することで、抗菌性能を十分に発揮するものとすることができる(請求項3)。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る熱可塑性樹脂製建材によれば、床材、幅木、腰壁、壁装材などの建材として利用可能な外観及び耐摩耗性を備え、しかも抗菌性に優れたものを比較的安価に提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明を実施するための最良の形態について詳しく説明する。
本発明に係る熱可塑性樹脂製建材は、ドロマイトのか焼物又は、ドロマイトのか焼・消化物を熱可塑性樹脂に添加してなる組成物からなる。
【0016】
ここで挙げたドロマイトとは、カルシウムとマグネシウムの複合炭酸塩鉱物(化学組成CaCO・MgCO、もしくはCa・Mg(CO)を指し、一般には復塩を形成しているが、本発明の効果を妨げない限り、複塩を形成していないものでもかまわない。また、ドロマイトは天然に産出されるもの以外に、化学合成によっても製造することができ、本発明には天然品、合成品のいずれも使用することができるが、工業的に利用する上では安価な点から天然品が好ましい。
【0017】
天然のドロマイトは、通常、CaO/MgOで表わされる複塩のモル比が0.70〜1.63の範囲であり、CaCOをCaO換算9〜40重量%程度、MgCOをMgO換算で10〜38重量%程度含有しており、本発明にもこのようなドロマイトを利用することができる。また、天然のドロマイトは主成分の炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム以外に、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、炭酸鉄(II)等を含んでいるが、これら由来の成分は、本発明における効果を損なわない程度の量であれば問題はない。
【0018】
本発明には上記のドロマイトをか焼又は、か焼・消化した化合物を用いる。ドロマイトのか焼は、700℃以上の温度で行われ、好ましくは900〜1300℃の温度範囲である。また、か焼物の消化(水和)は、湿式及び乾式のいずれの方式も可能である。
【0019】
ドロマイトを加熱すると2段階で熱分解が起こることが知られている。すなわち、炭酸マグネシウム部分が700〜800℃で炭酸ガスを放出して熱分解し酸化マグネシウムになり、炭酸カルシウム部分が900〜950℃で炭酸ガスを放出して熱分解し酸化カルシウムとなる。また、消化により酸化マグネシウムや酸化カルシウムが水和され、水酸化マグネシウムや水酸化カルシウムとなる。しかし、本発明に使用されるドロマイトのか焼物又は、ドロマイトのか焼・消化物としては、ドロマイトに含まれるマグネシウムやカルシウムの炭酸塩を、完全に酸化物や水酸化物に化学変化させたもの以外に、本発明の効果を妨げない限り、か焼後にも未反応の炭酸塩が残存していてもよく、また消化後にも未反応の酸化物が残存していてもかまわない。
【0020】
本発明で使用するドロマイトのか焼物又は、ドロマイトのか焼・消化物は、機械的な微粒子化手段により、後加工に適した粒系に調整できる。機械的微粒子化手段としては、ジェットミル、ロールミル、ボールミル、ハンマーミル、インパクトミル、ウイレーミル、ポットミル、グラインドミル、ディスクミル、ホモナイザー、ペイントシェイカー、ビーズミルなどの、乾式及び湿式の粉砕方法を用いることができる。さらに、得られた微粒子を篩や風力などの分級装置によって分級し、目的とする粒子径の抗菌剤を得ることもできる。
【0021】
さらに、本発明で使用するドロマイトのか焼物又は、ドロマイトのか焼・消化物を表面処理することにより、熱可塑性樹脂との親和性が向上し、再凝集を防止して分散性を増大することができ、又、加工時の樹脂の変色を防止することができる。
表面処理剤としては、ステアリン酸、オレイン酸、12−ヒドロキシステアリン酸などの高級脂肪酸、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ベヘン酸アルミニウムなどの脂肪酸金属塩、チタン系やシラン系などのカップリング剤、界面活性剤などを挙げることができ、表面処理の方法としては、例えば前記したドロマイトのか焼物又は、ドロマイトのか焼・消化物の粉砕を、ドロマイトのか焼物又は、ドロマイトのか焼・消化物と表面処理剤を混合して行うなど、公知の方法を使用することができる。
【0022】
本発明で使用される熱可塑性樹脂には特に制約はなく、ハロゲン系、非ハロゲン系に関わらず使用が可能である。
【0023】
ハロゲン系合成樹脂としては、例えばポリ塩化ビニル、エチレン−塩化ビニル共重合体、プロピレン−塩化ビニル共重合体、塩化ビニル−アクリル系樹脂共重合体、塩化ビニル−ウレタン共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体などのポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、フッ素系樹脂などが挙げられ、これらを1種単独でも2種以上を組み合わせても使用できる。
【0024】
非ハロゲン系合成樹脂としては、例えばポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、エチレンおよび/またはプロピレンと炭素数4〜20のαオレフィンとの共重合、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、エチレン−ビニルエステル共重合体、ポリオレフィン系エラストマーなどのポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン、スチレン−ブタジエン共重合体(SBS)、スチレン−イソプレン共重合体(SIS)、スチレン系エラストマーなどのポリスチレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタテート、ポリ(エチレン−シクロヘキサンジメチレン)テレフタレート、ポリエステル系エラストマーなどのポリエステル系樹脂、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリメタクリル酸ブチル、メタクリル酸メチルとメタクリル酸ブチルなどとの共重合体、アイオノマーなどのアクリル系樹脂、ナイロンなどのポリアミド系樹脂、ポリウレタン、ポリウレタン系エラストマーなどのポリウレタン系樹脂などが挙げられ、これらを1種単独でも2種以上を組み合わせても使用できる。
【0025】
これらの熱可塑性樹脂の中、価格、柔軟性、難燃性等の点でハロゲン系樹脂が好ましく、その中でも特にポリ塩化ビニル系樹脂が好ましい。
【0026】
前記、ドロマイトのか焼物又は、ドロマイトのか焼・消化物を、熱可塑性樹脂製に含有させる方法としては特に制限はないが、例えば前記、ドロマイトのか焼物又は、ドロマイトのか焼・消化物を熱可塑性樹脂に添加し、熱可塑性樹脂の軟化温度以上で溶融混練する方法を挙げることができる。
【0027】
ドロマイトのか焼物又は、ドロマイトのか焼・消化物を熱可塑性樹脂に添加する場合、その添加量は、熱可塑性樹脂100重量部に対し、0.5〜200重量部が好ましく、さらに好ましくは1〜70重量部である。添加量が0.5重量部未満では、ドロマイトのか焼物又は、ドロマイトのか焼・消化物が持つ抗菌性能が弱化する傾向があり、添加量が200重量部を超えると、建材として使用する際の外観や耐摩耗性など建材として必要とされる物性が低下する傾向がある。
【0028】
ドロマイトのか焼物又は、ドロマイトのか焼・消化物を熱可塑性樹脂に添加し、熱可塑性樹脂の軟化温度以上で溶融混練する場合、前述したドロマイトのか焼物又は、ドロマイトのか焼・消化物の他に、発明の目的を逸脱しない限りにおいて、必要に応じて、無機質充填材として、マイカ、タルク、シリカ、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、カオリン、クレー、パイロフェライト、ベントナイト、セサリナイト、ゼオライト、ネフェリンシナイト、アパタルジャイト、ウオラストナイト、フェライト、ケイ酸カルシウム、三酸化アンチモン、酸化チタン、酸化鉄、二硫化モリブデン、黒鉛、石こう、ガラスビーズ、ガラスパウダー、ガラスバルーン、ガラスファイバー、石英、石英ガラス、ガラス繊維、チタン酸カリウム繊維などの添加が可能であり、これらは単独或いは2種以上混合して使用できる。
この際、これらの無機充填材の表面をシランカップリング剤等で表面処理して補強効果を高めたものを使用することが好ましいが、本発明に用いる無機質充填材としては、表面処理を施していない無機質充填材も使用可能である。
【0029】
また、上記した無機質充填剤の他に、木粉、籾殻、植物繊維、合成繊維等の有機充填剤を添加することも可能である。更に、水酸化アルミニウム、水酸化バリウム、水酸化ジルコニウム、酸化錫の水和物、ハイドロタルサイト等の水和金属化合物等の公知の難燃剤を添加することにより、建材自体の難燃性を向上させることができるようになる。
【0030】
更に、本発明の熱可塑性樹脂製建材には、必要に応じてフェノール系,亜リン酸エスエル系,チオエーテル系等の各種酸化防止剤、脂肪酸の金属塩、ヒドロキシ脂肪酸の金属塩、アルキル乳酸の金属塩等の金属石鹸系安定剤、アルキル錫メルカプチド系、アルキル錫マレート系、アルキル錫カルボキシレート系等の有機錫系安定剤、三塩基性硫酸鉛、二塩基性亜リン酸鉛、ステアリン酸鉛等の鉛系安定剤、ハイドロタルサイト等の塩素捕捉剤、βジケトン類、多価アルコールさらには、PF-、SbF-、AsF-、ClO-、BF-などの周期律表の第13族、第15族及び第17族の元素を含む無機化合物のアニオンと、Na、Li、Ag、Mg2+、Ca2+、Zn2+などの周期律表の第1族、第2族及び第12族の元素のカチオンとの組み合わせからなる着色防止剤(例えば、過塩素酸ナトリウム)、ベンゾフェノン系,ベンゾトリアゾール系,サリシレート系等の紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系の光安定剤、有機顔料、無機顔料を添加することもできる。加えて、結晶核剤、アンチブロッキング剤、可塑剤、離型剤、スリップ剤、防曇剤、防錆剤、難燃助剤、発泡剤、発泡助剤などを必要に応じて添加してもよい。
【0031】
上記の酸化防止剤や金属石鹸系、有機錫系、鉛系などの安定剤、βジケトン類や前記周期律表の第13族、第15族及び第17族の元素を含む無機化合物のアニオンと、周期律表の第1族、第2族及び第12族の元素のカチオンとの組み合わせからなる着色防止剤は、熱可塑性樹脂の劣化や着色を防止することを主目的に添加される配合剤であり、本発明で使用するドロマイトのか焼物又は、ドロマイトのか焼・消化物を熱可塑性樹脂に添加して溶融混練する場合、組成物の劣化や着色を防止する目的で使用することが好ましい。
これらの中でも、フェノール系や亜リン酸エステル系の酸化防止剤、金属石鹸系安定剤、有機錫系安定剤、βジケトン類や過塩素酸ナトリウム等の着色防止剤が特に好ましい。
これらの添加剤は、熱可塑性樹脂100重量部に対して、それぞれ0.1〜10重量部の添加が一般的である。
【0032】
本発明の熱可塑性樹脂製建材が多層構造であって、少なくともその最表面に、本発明で使用されるドロマイトのか焼物又は、ドロマイトのか焼・消化物を含有することで、抗菌性能が十分に発揮されるものとすることができる。熱可塑性樹脂の最表面に抗菌性能を付与する方法としては特に制限はないが、上記のドロマイトのか焼物又は、ドロマイトのか焼・消化物と前述の熱可塑性樹脂組成物からなる層を表面層とし、上記と同様の材料から成る層を裏層とした2層以上で構成することで得ることができる。但し、2層以上で構成した際の裏層には上記のドロマイトのか焼物又は、ドロマイトのか焼・消化物に関しては添加、未添加どちらでもよい。
【0033】
また、建材を表面層と裏層を有する2層以上で形成する場合、表面層を除くいずれかの層を発泡層とすることによって、クッション性に優れた建材とすることができる。発泡層を構成する組成物に特に制限はないが、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン-1、エチレンと炭素数3以上のα-オレフィンとの共重合樹脂、エチレンとカルボキシル基含有モノマーのとの共重合樹脂、オレフィン系熱可塑性エラストマー、スチレン-オレフィンブロック共重合樹脂、スチレン系エラストマー、ポリスチレン、ポリアミド、アクリル樹脂、ポリウレタン等のポリマーの1種または2種以上を含む組成物などが挙げられる。
【0034】
上記発泡層を発泡させる場合、公知の発泡剤や発泡装置を使用することが可能である。発泡剤としては、アゾジカルボン酸アミド(ADCA),アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)等のアゾ系化合物、P,P’-オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド(OBSH)等のスルホニルヒドラジド化合物、ジニトロソペンタメチレンテトラミン(DPT)等のニトロソ化合物などの有機系熱分解型発泡剤や炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムなどの無機系の熱分解型発泡剤等を挙げることができる。また、押出機等で直接発泡体を得る方法では、窒素ガス、炭酸ガス、水、或いはブタン,ヘプタン等の炭化水素ガス等を使用することも可能である。
【0035】
上記発泡層の厚みとしては、一般的に0.1〜50mm程度が好ましく、より好ましくは0.5〜3.5mm程度である。発泡層の発泡倍率としては、通常1.1〜30倍程度で、好ましい範囲は1.5〜15倍程度である。また、発泡層は架橋を施すことも可能であるが、リサイクルの面では未架橋の発泡層が好ましい。発泡層と他の層との積層は、熱接着や接着剤または接着性樹脂を介して積層することが可能である。
【0036】
本発明の熱可塑性樹脂製建材は、寸法安定性を向上させるために、各層の層間及び/又は最裏面の少なくとも1箇所に基材を設けることが好ましい。使用する基材としては、織布、不織布、紙、ガラスクロス、金属箔等が挙げられる。
【0037】
更に本発明に係る熱可塑性樹脂製建材は、表面または表面層の裏面、若しくは表面層と接する層の表面に印刷模様を付与することにより、意匠性に優れた建材を得ることができる。表面に印刷模様を付与する場合、その印刷面は表面を完全に覆うことのない程度であることが望ましい。このときの被覆面積が全体の95%未満であるとき、本発明で示す抗菌性能を維持することができる。印刷面が表面層の裏面若しくは表面層と接する層の表面の場合、表面層は透明または模様が認識可能な半透明な層であることが望ましく、このことは、本発明で使用するドロマイトのか焼物又は、ドロマイトのか焼・消化物を熱可塑性樹脂100重量部に対して、25重量部以下の添加とするか、若しくは、本発明で使用するドロマイトのか焼物又は、ドロマイトのか焼・消化物の粒径を3μm以下に調製すれば可能となる。
【0038】
ここで、使用される印刷インキに特に制限はないが、例えば、ポリエステルイソシアネート、ポリエーテルイソシアネート、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、セルロース誘導体等のワニスを単独若しくは混合して各種顔料を添加して着色したもの等を例示できる。
また、印刷する面に他の層を積層する場合には、コロナ放電処理、電子線処理、プラズマ処理等を行うことによりインキ密着性を向上させることができる。更に、コロナ放電処理、電子線処理、プラズマ処理等を施した後、プライマー層を設けることも可能である。プライマーは公知のものが使用可能であり、例えばウレタン系、エポキシ系、アクリル系、塩素系のものが一般的である。
【0039】
本発明に係る熱可塑性樹脂製建材としては、例えば床材、壁紙、巾木、腰壁材などの内装材や防水材、外壁材、屋根材などが考えられる。そして、その形状形態としては、長尺シート状、タイル状、マット状など特に制限はなく、厚さは通常0.1〜20mmの範囲、好ましくは0.2〜5mm程度である。
また、建材を表面層と裏層を有する2層以上で構成した場合、各層の厚みに特に制限はないが、各層を形成する厚みは、0.05mm以上、好ましくは0.1mm以上の層を積層して建材とする。
【0040】
本発明に係る熱可塑性樹脂製建材は、ロール、カレンダー成形機、押出機、射出成形機、ブロー成形機、ラミネート装置、注型成形装置等の公知の設備で成形することができる。
また、チップ状のものを熱により融着または各種バインダーを介して結合して得ることも可能である。
更に、複数の着色を施すことによりマーブル調の模様を付与したり、エンボスにより表面に凹凸を付与することも可能である。
【実施例】
【0041】
本発明を実施例によって更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0042】
表1に示す材料を用い、表2、表3にそれぞれ示した配合割合で実施例1〜8と、比較例1〜8を作製し、抗菌性、耐摩耗性、外観について以下の方法で評価した。
<抗菌性>
JIS Z 2801に準拠して、黄色ブドウ球菌と大腸菌について、ポリエチレンフィルム密着後3時間及び24時間経過した後の生菌数を測定することで抗菌性の評価を行った。
初期菌数:約100,000cfu/ml
[評価結果]
○:所定時間経過後の生菌数が10cfu/ml未満
△:所定時間経過後の生菌数が10cfu/ml以上〜1,000cfu/ml未満
×:所定時間経過後の生菌数が1,000cfu/ml以上
<耐摩耗性>
JIS A 1454に準拠して、テーバー式の摩耗試験機を用いて1000回転での摩耗性を評価した。
[評価結果]
○:摩耗しにくい(摩耗減厚0.1mm未満)
△:使用に問題がない(摩耗減厚0.1mm以上〜0.2mm未満)
×:摩耗しやすい(摩耗減厚0.2mm以上)
<外観>
シートの表面状態について目視により評価した。
[評価結果]
○:非常に良好
△:建材としての使用に問題がない
×:建材として使用不可能
<着色度合い>
シートの着色度合いを目視により評価した。
[評価結果]
○:ほとんど着色なし
△:着色はあるが、建材としての使用に問題がない
×:著しい着色があり、建材として使用不可能
【0043】
<ドロマイトのか焼と消化>
天然ドロマイトを1000℃で焼成し、か焼物を得た後、消化し、ドロマイトのか焼・消化物を得た。得られたドロマイトのか焼・消化物をジェットミルで粉砕し、ドロマイトのか焼・消化物微粒子(以下、抗菌剤と称す)a、bを得た。
【0044】
<焼成マグネサイトの調製>
マグネサイトを500℃で15時間焼成して調製した。
【0045】
<消石灰>
市販品を用いた。
【0046】
<実施例1〜14>
表2および表3に、それぞれ示した材料ならびに配合割合からなる樹脂組成物を、温度175℃の逆L型カレンダー成形機で成形して、シートを作製した。
得られたシートについて、抗菌性、耐摩耗性、外観および着色度合いの評価を行った。その結果を表2および表3に示す。
【0047】
<比較例1〜6>
比較のために、表4に示す材料ならびに配合割合の樹脂組成物を、実施例1〜14と同様にして作製した。
得られたシートについて、抗菌性、耐摩耗性、外観および着色度合いを実施例1〜14と同様に評価した。その結果を表4に示す。
なお、実施例および比較例に使用した材料の特性は、表1に示す通りである。
【0048】
表1
















【0049】
表2

【0050】
表3



【0051】
表4

【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明により、優れた抗菌作用を持つドロマイトのか焼物又は、ドロマイトのか焼・消化物を熱可塑性樹脂に添加することで、より安価で抗菌性に優れ、しかも建材として利用可能な外観及び耐摩耗性を備えた熱可塑性樹脂製建材を提供することができる。
この建材は院内感染や食中毒といった、細菌が発生源となる問題が懸念される施設などに利用することで、より高い安全性と安心感を与えることができる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドロマイトのか焼物又は、ドロマイトのか焼・消化物を含有することを特徴とする熱可塑性樹脂製建材。
【請求項2】
酸化防止剤、安定剤、着色防止剤の中から選ばれた1種類以上の化合物を含有すること、を特徴とする請求項1に記載の熱可塑性樹脂製建材。
【請求項3】
熱可塑性樹脂製建材が多層構造であって、少なくともその最表面にドロマイトのか焼物又は、ドロマイトのか焼・消化物を含有することを特徴とする請求項1若しくは2に記載の熱可塑性樹脂製建材。




【公開番号】特開2006−89335(P2006−89335A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−277385(P2004−277385)
【出願日】平成16年9月24日(2004.9.24)
【出願人】(000010010)ロンシール工業株式会社 (84)
【Fターム(参考)】