説明

熱回収式加熱装置

【課題】小型で高出力の蓄熱システムにより、車両始動時の暖機を速やかに行い、かつ暖機後に車両内の熱源に存在する余剰熱を回収して次回の暖機に備えることを可能にする。
【解決手段】化学反応媒体としてのアンモニアの固定化及び脱離が可能に構成されたアンモニアバッファ12と、アンモニアバッファ12から供給されるアンモニアとの化学反応により発熱すると共に熱源からの余剰熱によりアンモニアを脱離させアンモニアバッファ12に戻す化学蓄熱材24が設けられた化学蓄熱反応器14と、を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱回収式加熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
オイルタンク内のオイルをメインポンプによってエンジン各部へ供給し、蓄熱タンク内のオイルをサブポンプによってクランクシャフト周辺へ供給するエンジン潤滑装置が開示されている(特許文献1参照)。
【0003】
この装置では、エンジン始動時に、蓄熱タンクに貯留された高温のオイルが、サブポンプによって、吐出パイプからクランクシャフトの主にジャーナルに向かって吐出される。これにより、クランクシャフト周辺を暖機して、フリクションの低減を図っている。
【0004】
エンジン暖機完了後には、オイルタンクに高温のオイルが貯留される。蓄熱タンク内の高温のオイルは、エンジン始動時に消費されるので、次回の暖機に備えるべく、オイルタンク内の高温のオイルがサブポンプによって蓄熱タンクへ送油され、該蓄熱タンクに再び貯留される。
【0005】
またこの装置では、サブポンプ系からの高温のオイルを、メインポンプ系へも供給することが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−144623号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記した従来例のように、実際のエンジンにおけるクランクシャフト周辺は熱容量が非常に大きく、例えばシャフト部で4kJ/K、エンジンブロックで27kJ/K、コンロッドで0.26kJ/Kである。これらを50K昇温させようとすると、シャフト部で4×50=200kJ/K、エンジンブロックで27×50=1350kJ/K、コンロッドで0.26×50=13kJ/K、計1563kJという大きな熱量が夫々必要となる。
【0008】
また上記した従来例では、エンジン暖機完了後における高温オイルの貯留を示唆しているが、オイルの顕熱容量は相対的に小さく、上記熱量を蓄熱するためには、膨大なオイルを貯留することが必要になる。例えば100℃のオイル(比熱 2.13kJ/kgK、密度 0.852kg/m3 )を利用して、上記1563kJを供給する(50K昇温させる)ために必要なオイルの体積を計算すると、1563/(2.13×50)/0.825-=17m3と大量になり、現実的ではない。更に熱交換効率も含め考慮すると、実現は不可能と思われる。
【0009】
本発明は、上記事実を考慮して、小型で高出力の蓄熱システムにより、車両始動時の暖機を速やかに行い、かつ暖機後に車両内の熱源に存在する余剰熱を回収して次回の暖機に備えることを可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1の発明は、化学反応媒体としてのアンモニアの固定化及び脱離が可能に構成されたアンモニアバッファと、前記アンモニアバッファから供給されるアンモニアとの化学反応により発熱すると共に熱源からの余剰熱によりアンモニアを脱離させ前記アンモニアバッファに戻す化学蓄熱材が設けられた化学蓄熱反応器と、を有している。
【0011】
請求項1に記載の熱回収式加熱装置では、アンモニアバッファから脱離したアンモニアが、化学蓄熱反応器に供給され、該アンモニアと化学蓄熱材との化学反応(配位結合による化学蓄熱反応)により発熱する。化学反応媒体としてアンモニアを用いることで、例えば氷点下のような低温の条件下でも、アンモニアバッファからアンモニアを脱離させることができる。この化学蓄熱反応器が発する熱により、車両の加熱対象を加熱して速やかに暖機を行うことができる。
【0012】
また暖機後には、車両内に大量に存在する熱源の余剰熱を用いて化学蓄熱材からアンモニアを脱離させる。これにより、従来利用できなかった大量の余剰熱を利用することができる。化学蓄熱材から脱離したアンモニアは、化学蓄熱反応器からアンモニアバッファに戻されて再び固定化される。
【0013】
このように、また化学蓄熱材とアンモニアとの配位反応熱を利用することで、高い反応性と大きな蓄熱密度が得られ、システムの小型化及び高出力化が可能となる。そしてこのような小型で高出力の蓄熱システムにより、車両始動時の暖機を速やかに行い、かつ暖機完了後に車両内に存在する余剰熱を回収して次回の暖機に備えることができる。
【0014】
請求項2の発明は、請求項1に記載の熱回収式加熱装置において、前記化学蓄熱材として、金属塩化物が用いられる。
【0015】
請求項2に記載の熱回収式加熱装置では、化学蓄熱材として金属塩化物が用いられているので、安定した繰返し作動が可能となる。
【0016】
請求項3の発明は、請求項2に記載の熱回収式加熱装置において、前記金属塩化物は、アルカリ金属の塩化物、アルカリ土類金属の塩化物、及び遷移金属の塩化物の少なくとも1種である。
【0017】
請求項3に記載の熱回収式加熱装置では、化学蓄熱材として、アルカリ金属の塩化物、アルカリ土類金属の塩化物、及び遷移金属の塩化物の少なくとも1種が用いられているので、安定した繰返し作動が可能となる。
【0018】
請求項4の発明は、請求項3に記載の熱回収式加熱装置において、前記アルカリ金属の塩化物は、LiClであり、前記アルカリ土類金属の塩化物は、MgCl2、CaCl2、SrCl2、BaCl2の少なくとも1種であり、前記遷移金属の塩化物は、MnCl2、CoCl2、NiClの少なくとも1種である。
【0019】
請求項4に記載の熱回収式加熱装置では、アルカリ金属の塩化物、アルカリ土類金属の塩化物、及び遷移金属の塩化物として上記のものが用いられるので、安定した繰返し作動が可能となる。
【0020】
請求項5の発明は、請求項1〜請求項4の何れか1項に記載の熱回収式加熱装置において、前記アンモニアバッファとして、アンモニア吸着器が用いられる。
【0021】
請求項5に記載の熱回収式加熱装置では、アンモニアバッファとして、アンモニア吸着器が用いられるので、アンモニアの蒸気圧の上限を制御することができ、かつ高い反応性の確保が可能となる。
【0022】
請求項6の発明は、請求項5に記載の熱回収式加熱装置において、前記アンモニア吸着器は、平板積層型の熱交換型反応器である。
【0023】
請求項6に記載の熱回収式加熱装置では、アンモニア吸着器が平板積層型の熱交換型反応器であるので、伝熱律速を最小化し、アンモニアの吸着反応及び脱離反応の速度を速めることができる。このため、化学蓄熱反応器での高い熱出力を得ることができる。
【0024】
請求項7の発明は、請求項5又は請求項6に記載の熱回収式加熱装置において、前記アンモニア吸着器の内部には、アンモニア吸着材が充填されている。
【0025】
請求項7に記載の熱回収式加熱装置では、アンモニア吸着器の内部に充填されたアンモニア吸着材により、アンモニアの固定化及び脱離を行うことができる。
【0026】
請求項8の発明は、請求項7に記載の熱回収式加熱装置において、前記アンモニア吸着材は、10nm以下の細孔を有する多孔体である。
【0027】
請求項8に記載の熱回収式加熱装置では、アンモニア吸着材として、上記細孔を有する多孔体を用いて、アンモニアの固定化及び脱離を行うことができる。
【0028】
請求項9の発明は、請求項7に記載の熱回収式加熱装置において、前記アンモニア吸着材は、1次粒径が50μm以下である物理吸着材である。
【0029】
請求項9に記載の熱回収式加熱装置では、アンモニア吸着材として、上記1次粒径の物理吸着材を用いて、アンモニアの固定化及び脱離を行うことができる。
【0030】
請求項10の発明は、前記化学蓄熱反応器が、加熱対象部品を暖機するために設けられている。
【0031】
請求項10に記載の熱回収式加熱装置では、化学蓄熱反応器が発する熱により、加熱対象部品を加熱して速やかに暖機を行うことができる。
【0032】
請求項11の発明は、前記加熱対象部品がエンジン要素部品である。
【0033】
請求項11に記載の熱回収式加熱装置では、エンジン要素部品を速やかに暖機することができる
【0034】
請求項12の発明は、請求項11に記載の熱回収式加熱装置において、前記エンジン要素部品は、エンジンにおけるクランクシャフトの軸受部に設けられている。
【0035】
例えば0℃程度の低温の条件では、エンジンオイルの高粘度化により、ピストン、クランクシャフト、動弁系における摩擦の増加が燃費悪化の大きな要因となる。
【0036】
請求項12に記載の熱回収式加熱装置では、化学蓄熱反応器が、エンジンにおけるクランクシャフトの軸受部に設けられているので、エンジンの始動時に、外部からの熱供給なしに軸受部を速やかに暖機して、該軸受部のオイルの粘度を低下させることができる。クランクシャフトに比べて熱容量が小さい軸受部を加熱することで、熱量あたりの昇温効率を向上させることができる。また暖機後に軸受部の熱を利用して、化学蓄熱反応器からアンモニアを脱離させてアンモニアバッファに戻すことができる。
【0037】
請求項13の発明は、請求項10に記載の熱回収式加熱装置において、前記加熱対象部品が、車両に搭載される電池を蒸気加熱するための蒸気発生器である。
【0038】
請求項13に記載の熱回収式加熱装置では、化学蓄熱反応器が設けられる加熱対象部品が蒸気発生器であるので、アンモニアと化学蓄熱材との配位反応により発生する熱を利用して、水蒸気を発生させることができる。この水蒸気を、例えば−30℃程度の極低温の条件下にある車両の電池に当てると温度差から凝縮が生じる。この際の凝縮潜熱により、電池を加熱して暖気することができる。このように水蒸気の潜熱を利用することにより、熱伝達効率を向上させることができる。また化学蓄熱反応器で直接電池を加熱するのではなく、水蒸気で加熱するので、水蒸気の凝縮温度が加熱上限となる。これにより、過剰加熱を抑制し、電池の劣化を抑制することができる。
【0039】
請求項14の発明は、請求項10に記載の熱回収式加熱装置において、前記加熱対象部品が、加熱によりアンモニアを発生しディーゼルエンジン用の触媒へアンモニアを供給する第2アンモニアバッファである。
【0040】
請求項14に記載の熱回収式加熱装置では、化学蓄熱反応器が設けられる加熱対象部品が、加熱によりアンモニアを発生する第2アンモニアバッファであるので、化学蓄熱反応器においてアンモニアと化学蓄熱材との配位反応により発生する熱を利用して、第2アンモニアバッファからアンモニアを脱離させることができる。このアンモニアを、第1アンモニア供給装置からディーゼルエンジン用の触媒へ供給することにより、エンジンの始動時から排ガス中のNOxの浄化を効率的に行うことができる。
【0041】
請求項15の発明は、請求項14に記載の熱回収式加熱装置において、前記第2アンモニアバッファには、該第2アンモニアバッファよりも大容量のアンモニア供給源である第2化学蓄熱反応器が接続されている。
【0042】
第2アンモニアバッファにおけるアンモニアの残量は、触媒へアンモニアを供給することで消費されて減少する。この熱回収式加熱装置では、アンモニアの残量が少なくなった第2アンモニアバッファに、より大容量の第2化学蓄熱反応器からアンモニアを供給して補うことができる。このため、より長期にわたって、エンジンの始動時における触媒へのアンモニアの供給を行うことができる。
【発明の効果】
【0043】
以上説明したように、本発明に係る請求項1に記載の熱回収式加熱装置によれば、小型で高出力の蓄熱システムにより、車両始動時の暖機を速やかに行い、かつ暖機後に車両内の熱源に存在する余剰熱を回収して次回の暖機に備えることを可能にすることができる、という優れた効果が得られる。
【0044】
請求項2に記載の熱回収式加熱装置によれば、安定した繰返し作動が可能となる、という優れた効果が得られる。
【0045】
請求項3に記載の熱回収式加熱装置によれば、安定した繰返し作動が可能となる、という優れた効果が得られる。
【0046】
請求項4に記載の熱回収式加熱装置によれば、安定した繰返し作動が可能となる、という優れた効果が得られる。
【0047】
請求項5に記載の熱回収式加熱装置によれば、アンモニアの蒸気圧の上限を制御することができ、かつ高い反応性の確保が可能となる、という優れた効果が得られる。
【0048】
請求項6に記載の熱回収式加熱装置によれば、化学蓄熱反応器での高い熱出力を得ることができる、という優れた効果が得られる。
【0049】
請求項7に記載の熱回収式加熱装置によれば、アンモニア吸着材により、アンモニアの固定化及び脱離を行うことができる、という優れた効果が得られる。
【0050】
請求項8に記載の熱回収式加熱装置によれば、アンモニア吸着材として、細孔を有する多孔体を用いて、アンモニアの固定化及び脱離を行うことができる、という優れた効果が得られる。
【0051】
請求項9に記載の熱回収式加熱装置によれば、アンモニア吸着材として、上記粒径の物理吸着材を用いて、アンモニアの固定化及び脱離を行うことができる、という優れた効果が得られる。
【0052】
請求項10に記載の熱回収式加熱装置によれば、化学蓄熱反応器により加熱対象部品を加熱して速やかに暖機することができる、という優れた効果が得られる。
【0053】
請求項11に記載の熱回収式加熱装置によれば、エンジン要素部品を速やかに暖機することができる、という優れた効果が得られる。
【0054】
請求項12に記載の熱回収式加熱装置によれば、エンジンの始動時にクランクシャフトの軸受部を速やかに暖機して、該軸受部のオイルの粘度を低下させることができる、という優れた効果が得られる。
【0055】
請求項13に記載の熱回収式加熱装置によれば、車両の電池を暖機することができるという優れた効果が得られる。
【0056】
請求項14に記載の熱回収式加熱装置によれば、ディーゼルエンジンの始動時から排ガス中のNOxの浄化を効率的に行うことができる、という優れた効果が得られる。
【0057】
請求項15に記載の熱回収式加熱装置によれば、より長期にわたって、エンジンの始動時における触媒へのアンモニアの供給を行うことができる、という優れた効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】図1から図3は、第1実施形態に係り、図1はエンジンにおけるクランクシャフトの軸受部を暖機するための熱回収式加熱装置を模式的に示す断面図である。
【図2】軸受部の構造を示す拡大分解斜視図である。
【図3】試験例における解析結果を示す線図である。
【図4】図4から図8は、第2実施形態に係り、図4は熱回収式加熱装置及び電池を模式的に示す斜視図である。
【図5】蒸気発生器及び電池を模式的に断面図である。
【図6】化学蓄熱反応器についての時間と熱出力の関係を示す線図である。
【図7】加熱時間と電池温度との関係を示す線図である。
【図8】2種類の電池について、充電率の違いと走行完了率との関係を示す線図である。
【図9】第3実施形態に係る熱回収式加熱装置、第2アンモニアバッファ、第2化学蓄熱反応器及び触媒を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0059】
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づき説明する。
【0060】
[第1実施形態]
図1,図2において、本実施形態に係る熱回収式加熱装置10は、アンモニアバッファ12と、化学蓄熱反応器14と、を有している。この化学蓄熱反応器14は、車両のエンジン16におけるクランクシャフト18の軸受部22に設けられている。この軸受部22は、車両における加熱対象部品としてのエンジン要素部品の一例でる。
【0061】
アンモニアバッファ12は、化学反応媒体としてのアンモニアの固定化及び脱離が可能に構成された、例えばアンモニア吸着器であり、エンジン16の外部に設けられている。このアンモニア吸着器は、例えば平板積層型の熱交換型反応器であり、内部には平板状のアンモニア吸着材が多層に充填されている(図示せず)。アンモニア吸着材は、例えば10nm以下の細孔を有する多孔体であり、アンモニア吸着材の1次粒径は、例えば50μm以下である。アンモニア吸着材としては、例えば活性炭、ゼオライト、シリカゲル、メソポーラスシリカ等が好適である。
【0062】
化学蓄熱反応器14には、化学蓄熱材24が設けられており、アンモニアバッファ12から供給されるアンモニアとの化学反応により発熱すると共に、熱源からの余剰熱によりアンモニアを脱離させアンモニアバッファ12に戻すようになっている。化学蓄熱反応器14は、例えば複数の軸受部22に設けられており、アンモニアバッファ12との間が配管26により接続されている。この配管26には、アンモニアバッファ12から化学蓄熱反応器14へのアンモニアの供給量を調節するバルブ28が設けられている。
【0063】
図2に示されるように、軸受部22は、エンジンブロック側に一体成形された土台部32と、該土台部32に固定される押え部材34との半割り構造とされている。
【0064】
土台部32と押え部材34とには、半円筒形の凹面が形成され、該凹面に沿うように、半割り形状の軸受メタル36,38が夫々設けられている。土台部32には、例えば一対のねじ穴32Aが形成され、押え部材34のうち該穴32Aに対応する位置には、貫通孔34Aが形成されている。この貫通孔34Aにボルト40を通し、土台部32のねじ穴32Aに締結することで、クランクシャフト18が軸受部22に回動自在に支持されるようになっている。
【0065】
化学蓄熱反応器14は、この軸受部22のうち、例えば土台部32における凹面に近い位置に設けられている。具体的には、化学蓄熱反応器14は、土台部32に、凹面に沿った湾曲形状のチャンバを形成し、該チャンバ内に化学蓄熱材24を充填することにより構成されている。
【0066】
化学蓄熱材24としては、例えば金属塩化物が用いられる。この金属塩化物は、アルカリ金属の塩化物、アルカリ土類金属の塩化物、及び遷移金属の塩化物の少なくとも1種である。具体的には、アルカリ金属の塩化物は、LiClである。またアルカリ土類金属の塩化物は、MgCl2 、CaCl2 、SrCl2 、BaCl2の少なくとも1種である。そして遷移金属の塩化物は、MnCl2 、CoCl2 、NiClの少なくとも1種である。
【0067】
化学蓄熱材24としてCaCl2 を用いた場合、1ccあたり14Wで2.4kJの熱量を出力可能である。1つの軸受部22あたりの必要熱出力を50Wとした場合、化学蓄熱反応器14を構成するチャンバの容積は約5ccであり、アンモニアバッファ12を構成するアンモニア吸着器の必要容積は約50ccとなる。従って、チャンバ、アンモニア吸着器及び配管26を含めても、約100cc程度の容積である。
【0068】
(作用)
本実施形態は、上記のように構成されており、以下その作用について説明する。例えば0℃程度の低温の条件では、エンジンオイルの高粘度化により、ピストン(図示せず)、クランクシャフト18、動弁系(図示せず)における摩擦の増加が燃費悪化の大きな要因となる。
【0069】
図1において、本実施形態に係る熱回収式加熱装置10では、このような条件下での車両のエンジン16の始動時に、アンモニアバッファ12と化学蓄熱反応器14との間の配管26に設けられたバルブ28を開放する。アンモニアバッファ12を構成するアンモニア吸着器の内部には、アンモニア吸着材が充填されており、0℃程度の低温であっても、該アンモニア吸着材から、化学反応媒体であるアンモニアを脱離させることができる。このアンモニアが、配管26を通じて、軸受部22に設けられた各々の化学蓄熱反応器14へ、矢印A方向及びB方向に供給される。具体的には、0℃のときに約3気圧(3039hPa)のアンモニアが、化学蓄熱反応器14に供給される。
【0070】
このアンモニアと、化学蓄熱反応器14に充填された化学蓄熱材24との化学反応(配位結合による化学蓄熱反応)により、該化学蓄熱材24(化学蓄熱反応器14)が速やかに発熱する。化学蓄熱反応器14は、エンジン16におけるクランクシャフト18の軸受部22に設けられているので、該軸受部22が速やかに加熱される。具体的には、軸受部22の温度は、例えば1分以内に0℃から30℃程度まで上昇する。軸受部22の熱容量は、クランクシャフト18の熱容量よりも小さく、約1/10である。この軸受部22を加熱することで、熱量あたりの昇温効率を向上させることができる。
【0071】
このように、本実施形態では、エンジン16の始動時に、外部からの熱供給なしに軸受部22を速やかに暖機して、該軸受部22のオイルの粘度を低下させることができる。これにより、クランクシャフト18と軸受部22との間の摩擦を低減することができる。
【0072】
アンモニアバッファ12から化学蓄熱反応器14へのアンモニアの供給量は、該アンモニアバッファ12、化学蓄熱反応器14及び配管26からなる系内におけるアンモニアの保持量により制御することができ、軸受部22の温度が上昇した後の適度なタイミングで閉止される。
【0073】
次に暖機完了後の作用について説明する。エンジン16の暖機後には、軸受部22の温度は例えば70℃程度になっており、余剰熱が大量に存在する。この余剰熱を用いて、化学蓄熱材24からアンモニアを脱離させることができる。
【0074】
具体的には、軸受部22の温度が70℃程度となっているときに、バルブ28を開放する。すると、化学蓄熱材24に配位結合していたアンモニアが、軸受部22の余剰熱により加熱されて該化学蓄熱材24から脱離する。この際に、軸受部22における余剰熱の一部が回収され、化学エネルギーとして蓄熱される。
【0075】
化学蓄熱材24から脱離したアンモニアは、化学蓄熱反応器14とアンモニアバッファ12との間の圧力差によって、該アンモニアバッファ12へ、配管26を通じて矢印C及びD方向に戻り、該アンモニアバッファ12であるアンモニア吸着器のアンモニア吸着材に再び固定される。この状態でバルブ28を閉止することで、次回の暖機に備えることができる。以降同様に、軸受部22の暖機と、暖機後の熱回収とを繰返し行うことができる。
【0076】
このように、本実施形態では、化学蓄熱材24とアンモニアとの配位反応熱を利用することで、高い反応性と大きな蓄熱密度が得られる。具体的には、化学蓄熱反応器14のチャンバ、アンモニアバッファ12におけるアンモニア吸着器及び配管26を含めて、約100cc程度の容積でありながら、効率的で速やかな軸受部22の暖機が可能となる。従って、システムの小型化及び高出力化が可能となる。
【0077】
そしてこのような小型で高出力の蓄熱システムにより、車両始動時の暖機を速やかに行い、かつ暖機完了後に車両内に存在する余剰熱を回収して次回の暖機に備えることができる。更に、化学蓄熱反応器14からのアンモニアの脱離のために、従来利用できなかった大量の余剰熱を利用することができる。
【0078】
また化学蓄熱材24として金属塩化物(アルカリ金属の塩化物、アルカリ土類金属の塩化物、及び遷移金属の塩化物の少なくとも1種)が用いられているので、安定した繰返し作動が可能となる。
【0079】
アンモニアバッファ12として、アンモニア吸着器が用いられるので、アンモニアの蒸気圧の上限を制御することができ、かつ高い反応性の確保が可能となる。またアンモニア吸着器が平板積層型の熱交換型反応器であるので、伝熱律速を最小化し、アンモニアの吸着反応及び脱離反応の速度を速めることができる。このため、化学蓄熱反応器14での高い熱出力を得ることができる。
【0080】
(試験例)
本実施形態の効果を確認するため、本実施形態に係る実施例と、比較例1及び比較例2について、熱伝道と摩擦の解析を行った。比較例1は、軸受部22に対する加熱源を有しないものである。また比較例2は、軸受部22に120Wの電気ヒーター(図示せず)を挿入して、軸受メタル36,38を局所的に120秒間加熱し、該軸受部22に14.4kJの熱量を与えたものである。
【0081】
解析条件は次のとおりである。化学蓄熱反応器14のチャンバにおけるCaCl2 (化学蓄熱材24)については、充填密度=0.7g/cc、熱出力=14W/g、蓄熱量=2.4kJ/gである。また、アンモニア吸着器の容積=5cc(2cc,8cc)である。従って、アンモニア吸着器の容積が5ccの場合、CaCl2 の蓄熱量は、8.4kJとなる。なお、CaCl2 の蓄熱量は、アンモニア吸着器の容積が2ccの場合3.4kJとなり、アンモニア吸着器の容積が8ccの場合13.4kJとなる。
【0082】
解析結果は図3に示されるとおりである。実施例では、アンモニア吸着器の容積が2cc、5cc、8ccの何れであっても、外部からの熱供給なしに、電気ヒーターで加熱した比較例2と同等、又は比較例2よりも優れた摩擦低減効果を有することが確認できた。
【0083】
[第2実施形態]
図4,図5において、本実施形態に係る熱回収式加熱装置20では、化学蓄熱反応器14が、車両に搭載される電池42を蒸気加熱するための蒸気発生器44に設けられている。この電池42は、加熱対象部品の一例である。化学蓄熱反応器14と蒸気発生器44とは、例えば一体構造とされ、小型化されている。蒸気発生器44内には、熱媒体の一例たる水54が入れられており、該蒸気発生器44とアンモニアバッファ12とは、配管26により接続されている。第1実施形態と同様に、配管26にはバルブ28が設けられている。
【0084】
電池42は、例えばハイブリッド車(プラグインタイプも含む)や電気自動車に搭載される車両駆動用の電池である。この電池42は、例えば凝縮容器46内に設けられている。凝縮容器46と蒸気発生器44とは、配管48により接続されている。凝縮容器46の底部には、凝縮した水を蒸気発生器44に戻すための配管50が設けられている。即ち、配管50は、蒸気発生器44に接続されている(図示せず)。
【0085】
なお、電池42と凝縮容器46とを層状に重ねてもよい。また蒸気発生器44に入れられる熱媒体は、水には限られない。
【0086】
他の部分については、第1実施形態と同様であるので、同一の部分には図面に同一の符号を付し、説明を省略する。
【0087】
(作用)
本実施形態は、上記のように構成されており、以下その作用について説明する。電池42の充電率が低い場合、例えば−20〜−30℃程度の極低温の状態では、電池42の性能が十分に発揮され難くなる。
【0088】
図4,図5において、本実施形態に係る熱回収式加熱装置20では、このような条件下でのハイブリッド車や電気自動車等の始動時に、アンモニアバッファ12と化学蓄熱反応器14との間の配管26に設けられたバルブ28を開放する。すると、アンモニアバッファ12から化学蓄熱反応器14へ矢印A方向に供給される。
【0089】
このアンモニアと、化学蓄熱反応器14に充填された化学蓄熱材24との化学反応(配位結合による化学蓄熱反応)により、該化学蓄熱材24(化学蓄熱反応器14)が速やかに発熱する。化学蓄熱材24としてCaCl2 を用いて、例えば熱出力4kW、発熱量600kJを生成し、30K昇温させることができる。化学蓄熱反応器14は、蒸気発生器44に設けられているので、この熱により水54を蒸発させて、水蒸気56を発生させることができる。
【0090】
この水蒸気56は、配管48を通じて凝縮容器46へ矢印E方向に流れて、極低温の条件下にある電池42に当たる。すると、水蒸気56と電池42との温度差から水蒸気56に凝縮が生じる。この際の凝縮潜熱により、外部からの熱供給なしに、電池42を加熱して暖気することができる。これにより、極低温の条件下での電池42の性能を確保することができる。
【0091】
このように水蒸気56の潜熱を利用することにより、熱伝達効率を向上させることができる。また化学蓄熱反応器14で直接電池42を加熱するのではなく、水蒸気56で加熱するので、水蒸気56の凝縮温度(例えば60℃)が加熱上限となる。これにより、過剰加熱を抑制し、電池42の劣化を抑制することができる。
【0092】
凝縮により生じた水58は、配管50を通じて蒸気発生器44へ矢印F方向に戻され、次回の暖機時の水蒸気56の発生のために再利用される。
【0093】
次に暖機完了後の作用について説明する。電池42の暖機後には、車両に搭載されているモータ、トランスアクスル、リアクトル、IGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)等の電気系損失により発生する余剰熱を用いて、化学蓄熱材24からアンモニアを脱離させることができる。この際に、余剰熱の一部が回収され、化学エネルギーとして蓄熱される。
【0094】
化学蓄熱材24から脱離したアンモニアは、化学蓄熱反応器14とアンモニアバッファ12との間の圧力差によって、該アンモニアバッファ12へ、配管26を通じて矢印D方向に戻り、該アンモニアバッファ12であるアンモニア吸着器のアンモニア吸着材に再び固定される。この状態でバルブ28を閉止することで、次回の暖機に備えることができる。以降同様に、電池42の暖機と、暖機後の熱回収とを繰返し行うことができる。
【0095】
(試験例)
本実施形態の効果を確認するため、まず化学蓄熱材24としてCaCl2 を用いた場合の化学蓄熱反応器についての時間と熱出力の関係を求めた。結果は図6に示されるとおりであり、30秒程度で約2kWの熱出力が得られている。
【0096】
次に、この化学蓄熱反応器を用いて、約−20℃の条件下にある電池を蒸気加熱した場合の、該電池の各部の温度変化を測定した。図中、「Min」とは、電池の中心部の温度変化を表し、「Max」とは、電池の表面の温度変化を表している。「AVERAGE」とは、「Min」と「Max」の平均値である。「一次遅れ模擬」とは、「AVERAGE」を、車両搭載状態に合うように一次遅れ要素として模したものである。
【0097】
この「一次遅れ模擬」の温度変化にて、2種類の電池について、充電率の大小と暖機の有無による走行距離の違いを求めた。結果は図8に示されるとおりである。図中、ハッチングの有無により2種類の柱があるが、これらは電池の種類の違いを示している。「SOC90」とは、充電率が90%であることを示し、「SOC20」とは、充電率が20%であることを示している。
【0098】
図8によれば、充電率が90%であれば、暖機の有無にかかわらず、2種類の電池は何れも走行完了率が100%となり、走行距離が長くなることがわかる。一方、充電率が20%の場合、暖機無しの場合には、夫々80%,20%の走行率となってしまう。これに対し、暖機有りの場合、2種類の電池の走行完了率が、夫々100%,90%にまで上昇している。このことから、本実施形態に係る電池暖機により、極低温の条件下でも電池性能を確保できることが確認できた。
【0099】
[第3実施形態]
図9において、本実施形態に係る熱回収式加熱装置30では、化学蓄熱反応器14が、加熱によりアンモニアを発生しディーゼルエンジン用の触媒60へアンモニアを供給する第2アンモニアバッファ62に設けられている。この第2アンモニアバッファ62は、加熱対象部品の一例である。アンモニアバッファ12と化学蓄熱反応器14とは、配管26により接続されて閉じているので、低温作動可能な化学蓄熱材24として潮解性を有するものを利用することができる。第1実施形態において例示した金属塩化物の中では、CaCl2 の潮解性が特に高いが、このような金属塩化物でも化学蓄熱材24として利用することができる。
【0100】
化学蓄熱反応器14と第2アンモニアバッファ62とは、例えば一体構造とされ、小型化されている。触媒60は、例えばアンモニアSCR触媒(選択的触媒還元)であり、ディーゼルエンジンから見て上流側の排気管66と下流側の排気管68との間に直列に接続されている。矢印Hは、排ガスの流れの方向を示している。
【0101】
第2アンモニアバッファ62は、例えば、加熱によりアンモニアを放出可能な熱交換型反応器であり、図示しない化学蓄熱材(例えばBaCl2 )が充填されている。第2アンモニアバッファ62は、アンモニアを触媒60に供給するための配管70により、上流側の排気管66と接続されている。この配管70には、バルブ74が設けられている。
【0102】
第2アンモニアバッファ62には、該第2アンモニアバッファ62よりも大容量のアンモニア供給源である第2化学蓄熱反応器64が、配管72により接続されている。第2アンモニアバッファ62には、図示しない化学蓄熱材(例えばMgCl2 )が充填されている。第2アンモニアバッファ62と第2化学蓄熱反応器64とを比較すると、第2アンモニアバッファ62の方が低容量で、かつ化学蓄熱材の再生温度が低い。
【0103】
他の部分については、第1実施形態と同様であるので、同一の部分には図面に同一の符号を付し、説明を省略する。
【0104】
(作用)
本実施形態は、上記のように構成されており、以下その作用について説明する。ディーゼルエンジン用の触媒60は、100〜150℃での始動が望ましく、−20〜−30℃程度の極低温の状態では性能を発揮し難い。
【0105】
図9において、本実施形態に係る熱回収式加熱装置30では、このような環境化でのディーゼルエンジンの始動時に、バルブ28を開放し、アンモニアバッファ12から化学蓄熱反応器14へアンモニアを供給して、アンモニアと化学蓄熱材24との配位反応により、該化学蓄熱反応器14を発熱させる。化学蓄熱反応器14は、例えば熱出力4kW、発熱量600kJを生成し、30K昇温する。この熱により第2アンモニアバッファ62を加熱すると、該第2アンモニアバッファ62において吸着されていたアンモニアが脱離する。
【0106】
このアンモニアは、バルブ74を開放することにより、配管70を通じて上流側の排気管66へ矢印G方向に流れて、該排気管66から触媒60へ供給される。これにより、触媒60が100℃以上150℃以下の状態であっても、該触媒60により、ディーゼルエンジンの始動後速やかに排ガス中のNOxの浄化を効率的に行うことができる。
【0107】
なお、第2アンモニアバッファ62から大気圧場にある触媒60へアンモニアを放出するためには熱量が必要であり、本実施形態では化学蓄熱反応器14によりこの熱量が供給されるようになっている。第2アンモニアバッファ62は、化学蓄熱反応器14と一体化され熱容量が小さくなっているので、触媒60へのアンモニアの必要供給量に応じた、化学蓄熱反応器14から第2アンモニアバッファ62への最小限の熱供給が可能となる。
【0108】
次に暖機完了後の作用について説明する。また暖機後には、エンジン自体や排気管66,68等の余剰熱を有する熱源が大量に存在する。この熱源の余剰熱を適宜用いて、第2化学蓄熱反応器64からのアンモニアの放出を行いつつ、化学蓄熱反応器14の化学蓄熱材24からアンモニアを脱離させることができる。
【0109】
化学蓄熱材24から脱離したアンモニアは、化学蓄熱反応器14とアンモニアバッファ12との間の圧力差によって、該アンモニアバッファ12へ、配管26を通じて戻り、該アンモニアバッファ12であるアンモニア吸着器のアンモニア吸着材に再び固定される。この状態でバルブ28を閉止することで、次回の暖機に備えることができる。以降同様に、第2アンモニアバッファ62の加熱及び触媒60の暖機と、暖機後の熱回収とを繰返し行うことができる。
【0110】
第2アンモニアバッファ62におけるアンモニアの残量は、触媒60へアンモニアを供給することで消費されて減少する。本実施形態では、暖機完了後の余剰熱を利用して、アンモニアの残量が少なくなった第2アンモニアバッファ62に、より大容量の第2化学蓄熱反応器64からアンモニアを供給して補うことができる。このため、より長期にわたって、エンジン16の始動時における触媒60へのアンモニアの供給を行うことができる。
【0111】
なお第2アンモニアバッファ62の化学蓄熱材(MgCl2 )からアンモニアを脱離させるには、200℃程度の熱が必要である。この熱源として、例えば排気熱を利用することができる。
【0112】
(他の実施形態)
熱回収式加熱装置10,20,30は、上記各実施形態に記載した加熱(暖機)対象、即ち、加熱対象部品の一例たるクランクシャフト18の軸受部22(図1)、蒸気発生器44(図5)及び第2アンモニアバッファ62(図9)だけでなく、他の加熱対象部品に対しても用いることができる。また熱回収式加熱装置10,20,30を、クランクシャフト18の軸受部22以外のエンジン要素部品を暖機するために用いることが可能である。
【0113】
化学蓄熱材24として、金属塩化物が用いられるものとしたが、化学蓄熱材24はこれに限られるものではない。また金属塩化物は、第1実施形態において例示されるものに限られない。
【0114】
アンモニアバッファ12は、アンモニア吸着器でなくてもよい。アンモニアバッファ12がアンモニア吸着器である場合において、該アンモニア吸着器が平板積層型の熱交換型反応器でなくてもよい。またアンモニア吸着器の内部に、アンモニア吸着材を有しない構成であってもよい。アンモニア吸着材については、10nm以下の細孔を有する多孔体に限られず、また1次粒径が50μm以下である物理吸着材でなくてもよい。
【符号の説明】
【0115】
10 熱回収式加熱装置
12 アンモニアバッファ
14 化学蓄熱反応器
16 エンジン
18 クランクシャフト(加熱対象部品、エンジン要素部品)
20 熱回収式加熱装置
22 軸受部
24 化学蓄熱材
26 配管
28 バルブ
30 熱回収式加熱装置
42 電池
44 蒸気発生器(加熱対象部品)
56 水蒸気
60 触媒
62 第2アンモニアバッファ(加熱対象部品)
64 第2化学蓄熱反応器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学反応媒体としてのアンモニアの固定化及び脱離が可能に構成されたアンモニアバッファと、
前記アンモニアバッファから供給されるアンモニアとの化学反応により発熱すると共に熱源からの余剰熱によりアンモニアを脱離させ前記アンモニアバッファに戻す化学蓄熱材が設けられた化学蓄熱反応器と、
を有する熱回収式加熱装置。
【請求項2】
前記化学蓄熱材として、金属塩化物が用いられる請求項1に記載の熱回収式加熱装置。
【請求項3】
前記金属塩化物は、アルカリ金属の塩化物、アルカリ土類金属の塩化物、及び遷移金属の塩化物の少なくとも1種である請求項2に記載の熱回収式加熱装置。
【請求項4】
前記アルカリ金属の塩化物は、LiClであり、
前記アルカリ土類金属の塩化物は、MgCl2 、CaCl2 、SrCl2 、BaCl2の少なくとも1種であり、
前記遷移金属の塩化物は、MnCl2 、CoCl2 、NiClの少なくとも1種である請求項3に記載の熱回収式加熱装置。
【請求項5】
前記アンモニアバッファとして、アンモニア吸着器が用いられる請求項1〜請求項4の何れか1項に記載の熱回収式加熱装置。
【請求項6】
前記アンモニア吸着器は、平板積層型の熱交換型反応器である請求項5に記載の熱回収式加熱装置。
【請求項7】
前記アンモニア吸着器の内部には、アンモニア吸着材が充填されている請求項5又は請求項6に記載の熱回収式加熱装置。
【請求項8】
前記アンモニア吸着材は、10nm以下の細孔を有する多孔体である請求項7に記載の熱回収式加熱装置。
【請求項9】
前記アンモニア吸着材は、1次粒径が50μm以下である物理吸着材である請求項7に記載の熱回収式加熱装置。
【請求項10】
前記化学蓄熱反応器は、加熱対象部品を暖機するために設けられている請求項1〜請求項9の何れか1項に記載の熱回収式加熱装置。
【請求項11】
前記加熱対象部品は、エンジン要素部品である請求項10に記載の熱回収式加熱装置。
【請求項12】
前記エンジン要素部品は、エンジンにおけるクランクシャフトの軸受部である請求項11に記載の熱回収式加熱装置。
【請求項13】
前記加熱対象部品は、車両に搭載される電池を蒸気加熱するための蒸気発生器である請求項10に記載の熱回収式加熱装置。
【請求項14】
前記加熱対象部品は、加熱によりアンモニアを発生しディーゼルエンジン用の触媒へアンモニアを供給する第2アンモニアバッファである請求項10に記載の熱回収式加熱装置。
【請求項15】
前記第2アンモニアバッファには、該第2アンモニアバッファよりも大容量のアンモニア供給源である第2化学蓄熱反応器が接続されている請求項14に記載の熱回収式加熱装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−72558(P2013−72558A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−209492(P2011−209492)
【出願日】平成23年9月26日(2011.9.26)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【Fターム(参考)】