説明

熱変性木材製のスポーツ用品アイテム

本発明は、詳細には卓球ラケットまたはゴルフクラブであるスポーツ用具(1)に関し、スポーツ用具(1)は、柄部分と、柄部分(200)につながるインパクト部分(100)とを有し、インパクト部分(100)は、少なくとも部分的に熱変性された木材から成る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部によるスポーツ用品アイテムに関する。
【背景技術】
【0002】
詳細には卓球またはゴルフにおける、柄部と、柄部につながる打球または打撃部とを有する多くのスポーツ用品アイテムの場合、ヒッティング部の大部分は、木材から成る。これは、部分的にはスポーツ協会の標準規定に起因するが、はるかに重要な理由は、木材に固有の特性、詳細には、重量、表面品質、弾性、および強度にもある。
【0003】
耐用年数期間中のスポーツ用品アイテムの感触は、使用される材料、詳細には、ヒッティング部の設計に使用される材料に大きく左右される。このことは特に木材に当てはまり、その結果、標準規定とも無関係に、スポーツ用品アイテムのヒッティング部の木材を換える従来の試みは、ほとんど受け入れられなかった。
【0004】
さらに、通常、スポーツ用品アイテムは使用者の好みや要求に合わせて調整され、従って、スポーツ用品アイテムを個々に調節することにより、耐用年数期間中の、ある特定の使用者にとってのスポーツ用品アイテムの感触が向上する。しかしながら、木材は、例えば設計の重量や強度に関連した材料によって生じる制限を受ける。さらに、木材の性質が、設計上ヒッティング部の堅牢性を実現することが難しいことを示し、特に、そのスポーツが外での競技が好ましいスポーツである場合には、堅牢性は、耐候性にも関係する。これに加えて、天然材料である木材は、詳細には温度や湿度に関連する特定の境界条件が加工中に維持されることも必要とするという事実がある。さらに、例えば熱帯木材と呼ばれる形状の上等な木材の使用は、少なからぬコスト要因となる。
【0005】
従って、本発明の目的は、請求項1の前提部によるスポーツ用品アイテムを改良して、費用効率的かつ簡単な方法で製造が可能となるような堅牢設計を与えることである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的は、請求項1の特徴により実現される。有利な開発が従属請求項の主題を構成する。
【0007】
本発明によれば、詳細には卓球バットまたはゴルフクラブとして設計されるスポーツ用品アイテムは、柄部と、柄部につながるヒッティング部とを有する。ヒッティング部は、少なくとも部分的に、熱変性した木材から成る。
【0008】
通常、熱変性とは、広まった酸素欠乏雰囲気下で化学薬品を加えることなく温度を上昇させることによって、木材全体にわたって木材の特性を永久に変性させることを意味する。材料特性に対する変性は、とりわけ温度範囲の選択によって決定的に決まる。ここでは、通常、温度は140℃を超える。その理由は、この温度範囲からヘミセルロースの分解が始まるからである。しかしながら、170℃〜230℃が熱変性の好ましい温度範囲である。上記の境界条件に従って変性された木材は、一般的に、とりわけサーモウッドと呼ばれる。
【0009】
この木材は、同種の未処理の木材と比較して、曲げ強度が最大45%増加すると同時に、最大10%の重量の低減があるように変性された材料特性を有する。さらに、環境の影響に対する耐性の向上が実現し、これにより、木材の有利な処理および使用が可能となる。詳細には、熱変性木材は、より少ない程度に膨張および収縮し、平衡水分量は、最大70%低下する。熱処理中に木材の内部応力が低下し、優れた寸法安定性が実現するので、加工の点においても持つべき利点がある。
【0010】
従って、本発明による熱変性木材を使用することにより、耐用年数期間中のスポーツ用品アイテムの感触を個々の要求に合わせて調節すること、従来の木材製の設計と比較してより高い堅牢性を設計に付与すること、および製造コストを低下させることが可能となる。
【0011】
ある有利な開発では、ヒッティング部の外側から見える境界面上に熱変性木材を配置することが提供される。これにより、非常に寸法安定性と堅牢性のある外面が作られ、特に、寸法安定性が向上する。さらに、サーモウッドの使用を柄部にまで適用することを提供することもでき、それによって、プレーに少なからぬ影響を与えるこの部分もまた、熱変性木材の寸法安定性の恩恵を受ける。
【0012】
さらに、スポーツ用品アイテムは、好ましくは全天候性構造を有する。水分吸収の減少や低い膨張および収縮レベルによるサーモウッドの上記の基本的な全天候性により、低い設計費用で、かつ結果的にスポーツ用品アイテムの感触をほとんど変化させない対策を有するスポーツ用品アイテムに全天候性を付与する費用効率的な選択肢が提供される。
【0013】
ある開発においては、スポーツ用品アイテムは、プラスチック膜に完全に包み込まれた中核部を有することを提供しうる。中核部の厚みに対する膜の厚みの比率は、空間における少なくとも2つの互いに直交する方向において1:9より小さい。一方で、これにより、全天候性を提供し、かつ向上させることが可能となる。しかしながら、同時に、例えばヒッティング部のさらなる構成要素の耐久性のある接続を行うための特定の表面品質を作り出させることも同様に可能である。この覆いは、材料特性の為に熱変性木材と併せて特に簡単かつ有利に設けられる。さらに、この覆いによって生じるスポーツ用品アイテムのヒッティング部の特性に対する変性は、ほとんど目立たない。それでもなお、さらなる改良が考えられる。
【0014】
詳細には、ヒッティング部の特性を調節するために、一連のさらなる対策を設けてもよい。例えば、ヒッティング部は、少なくとも部分的に従来の木材で構成されてもよい。さらに、本発明による実施形態は、従来の木材の使用を柄部にまで適用することを除外するものではなく、この適用により、特定の状況においては重量配分が向上し得る。
【0015】
ある開発においては、ヒッティング部は複数の層を有する。これは柄部に関しても同様に考えられる。どちらの場合も、ボールを打つ際に使用するスポーツ用品アイテムの減衰挙動の調節および調整が生じる可能性があり、さらに、この構造によって、ヒッティング部の特性の特定の変性が簡素化される。
【0016】
さらに別の特定の調節選択肢を作り出すため、および設計に関連する調節費用をさらに低減するために、この場合、層の境界面が、空間における少なくとも1つの方向において面平行に配向されることを提供しうる。層の面平行配向は、好ましくはヒッティング部の好ましい反発方向に対して垂直である。
【0017】
特定の調整策は、層構造の場合に特に簡単であると判明しており、そのような対策の一例は、層システムの材料を選択することによるヒッティング部の反発特性の調節である。詳細には、ここでは、異なる度合いの曲げ弾性を有する材料を設けることが考えられる。さらに、例えば、層システムの材料を選択することによって重量を調節することも考えられる。
【0018】
ある有利な開発では、ヒッティング部は少なくとも3つの層を有する。例えば、これには、他の層よりも厚みがあり、基本的に設計の重量および強度を決定するキャリア層が含まれてもよい。さらに、材料選択によって特に減衰挙動を調節することを可能にするために、少なくとも2つのさらに別の層がこのキャリア層と有利に組み合わせられる。
【0019】
さらに、ヒッティング部は、特にその引張強度および低重量で知られる複合材料の層を有することを提供しうる。詳細には、炭素、アラミド、またはガラス繊維の他、例えばチタン等の金属材料も適切であることが分かっている。複合材料により、総重量がほぼ同じであれば、より硬い設計が可能となり、従って、複合材料は、スポーツ用品アイテムの反発特性の個々の調節に大きく寄与する。詳細には、これらの材料の使用は、ヒッティング部に限定されない。例えば、層状ではない形態においても、これらの材料を用いてグリップ部を設けることも考えられる。
【0020】
本発明のさらに別の局面は、柄部と、柄部につながるヒッティング部とを有するスポーツ用品アイテムの重量を低減させる方法を明示することであり、この方法においては、スポーツ用品アイテムは、少なくとも部分的に木材から構成される。
【0021】
この局面は、請求項12による方法に包含され、基本的に木材から成る部分を、同一またはより低レベルの曲げ弾性を有する熱変性木材から成る部分に換えることを提供し、それにより、大幅な重量の低減に加えて、同一またはより高レベルの曲げ強度を持つ設計が得られる。
【0022】
さらに、本発明の着想の元であるさらなる目的は、柄部と、柄部につながるヒッティング部とを有するスポーツ用品アイテムの曲げ強度を向上させる方法を明示することであり、この方法においては、スポーツ用品アイテムは、少なくとも部分的に木材から構成される。
【0023】
これは、本発明によれば、基本的に木材から成るスポーツ用品アイテムの部分を同種の熱変性木材から成る部分に換える請求項13に記載の方法において実現する。
【0024】
本発明のさらに別の目的は、ヒッティング部の材料同士を耐久性を持つように接続することにより、それらが環境の影響に耐性を示すことを有利に保証する方法を提供することである。
【0025】
これは、本発明の請求項14によって実現する。有利な開発が従属請求項の主題を構成する。
【0026】
柄部と、柄部につながるヒッティング部とを有するスポーツ用品アイテムの製造方法は、ヒッティング部が層構造であり、ヒッティング部において熱変性木材を少なくとも部分的に使用する場合に、少なくとも部分的にホットラミネート加工によって、すなわち、時には100℃を超える温度で、層同士が接続されることを規定する。
【0027】
この方法により、スポーツ用品アイテムの層間の耐性、耐久性、および特に全天候性のある接続が可能となり、さらに、この方法は、想定される加熱工程をなくした、あるいはその持続時間を短くしたサーモウッドの使用により大幅に単純化される。
【0028】
ある有利な開発は、ヒッティング部の最上部の被覆層がホットラミネート加工によって付与されることを提供する。詳細には、これにより、耐久性のある接続が生じ、それによって、高度な耐候性要求を満たすことが可能となる。
【0029】
本発明を添付の図面を参照して以下により詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】卓球バットまたはゴルフクラブの形態における本発明によるスポーツ用品アイテムの実施形態例を示す。
【図2】ヒッティング部の可能な層構造例を概略的に示す。
【図3】ヒッティング部の層構造のさらに別の実施形態例を示す。
【図4】ヒッティング部のさらに別の変形例を示す。
【図5】卓球バットの概略構造を示す。
【図6】卓球バットのヒッティング部の層構造のさらに別の実施形態例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
例えば卓球バットまたはゴルフクラブの形態の、本発明によるスポーツ用品アイテム1を図1に示す。これらは、ヒッティング部100と、ヒッティング部につながる柄部200とを有する。本発明によれば、ヒッティング部100は、少なくとも部分的に熱変性木材を用いて構成される。例として、図5には、柄部200において2つの柄外郭構造201および202を有し、ヒッティング部100が柄遷移部220および230を有するベースプレート状である卓球バットの構造を示す。このベースプレートは、同様に柄部200の構成要素である。
【0032】
サーモウッドの上記の特性により、本発明によるスポーツ用品アイテム1の使用、設計、および製造上の様々な利点が生じる。
【0033】
詳細には、従来の木材と比較して、軽量化と同時により堅い設計が実現でき、このことは、通常、製造期間における費用関連の利点にも関係する。このことは、特に、ヒッティング部100の加速度と、打たれるまたは打撃される対象物の加速度との達成可能な比率の点から、重要である。スポーツ用品アイテムの感触の変化は、基本的に意図した改変に限定され、特に、熱変性木材を使用した場合にヒッティング誘導雑音はほぼ同じであるという事実が重要視されるべきである。
【0034】
ある有利な設計では、ヒッティング部100の外側から見える境界面上に熱変性木材を設ける。卓球バットの場合は、これには、通常気泡ゴム状コーティングで覆われる部分も特に有利に含まれる。その結果作られる外面は非常に寸法安定性があり、これにより、ヒッティング部100の内部構造に関する限り、ある程度の設計上の自由がもたらされる。さらに、膨張や収縮のレベルが低く、平衡水分の吸収が低いことにより、ヒッティング部100の特性は、あらゆる環境条件において一定に維持され、その結果、プレー特性がほとんど変化しない。詳細には、このことは、スポーツ用品アイテム1の耐用年数にほぼ相当する期間にも当てはまる。なぜなら、揮発性成分および樹脂は、木材の熱変性中に基本的に除去されているからである。最大70%低減した平衡水分量という形の熱変性木材の撥水性により、耐候性がかなり向上する。従って、サーモウッドをヒッティング部100の外面に配置することにより、気候上の緩衝材が備えられ、これにより、基本的な耐候性も生じる。
【0035】
さらに、ある有利な構造は、スポーツ用品アイテム全体に対して全天候性が付与されることを提供しうる。詳細には、熱変性木材を柄部200に使用することを提供してもよい。
【0036】
さらに、全体的に全天候性である構造とは、分解の結果、気候の影響を受けやすい部分が新しく生じないことを意味する。このことは、全般的に、長い耐用年数を持つスポーツ用品アイテムに貢献する。
【0037】
熱変性木材を用いた全天候性構造により、全天候性を実現するために用いられる追加策が排除されることはない。しかしながら、サーモウッドにより、主として、木材部分における二次的保存料の使用の手間を省くことが可能となる。詳細には、好ましくは上述のようにヒッティング部100がサーモウッドに包み込まれることに加えて、熱変性木材をヒッティング部100の中核部または中央に配置することを提供してもよい。熱変性木材の耐菌性により、殺菌剤に含浸させる必要がなくなる。さらに、例えば熱変性木材部分に耐候性コーティングを塗布することを提供してもよい。熱変性木材の基本的な全天候性とは、コーティングの厚みを従来構造の厚みと比較してかなり薄くできることを意味する。その結果、この保護コーティング層のマイナスの特性、例えば、硬度分布および重量配分の変化が大部分回避され、それによってプレー特性が向上する。さらに、熱変性木材を使用することにより、補助的な耐候性対策への依存が減る。詳細には、例えば保護コーティング層部分における比較的小さな機械的損傷の場合、全天候性はそれでも保証される。全天候性を実現するための添加物は通常ある程度の揮発性を有するが、これは、一方では環境への害という形で現れ、他方ではスポーツ用品アイテム1の耐久性を危うくする。例えばスポーツ用品アイテム1の外面に、熱変性木材を全天候性接着材料およびコーティング材料と併せて使用することにより、その他の耐候性対策が同一である場合に、耐久性の見込みが向上し、この見込みは、詳細には比較的小さな損傷によって著しくは損なわれない。従って、使用される接着材料およびコーティング材料が同様に全天候性構造を有することがさらに提供される。
【0038】
図4の実施形態例により提供されるように、ヒッティング部100の部分を完全に包み込む、例えばPU、PVC、またはPE製の膜115によっても、耐候性を実現することがさらに可能となる。
【0039】
ここで、膜115の厚みは、包み込まれた部分の厚みと比較して無視できる厚みである。好ましくは、1μmから1mmの間で、特に好ましくは、20μmから500μmの間である。これにより、全天候性中核部が作られ、この外側に、好ましくは熱変性木材141および142が付与され、それによって、ヒッティング部の完全な全天候性の覆いが形成される。ここで、中核部150の厚みに対する膜の厚みの比率が、空間における少なくとも2つの互いに直交する方向において1:9より小さいために、中核部150と比較して薄い膜115の結果生じるプレー特性の変化は、ほとんど無視しうる。さらに、これらの特性は、中核部150の構造によって調節できる。その結果は、従来の設計と比較してほぼ同じヒッティング特性を有する優れた全天候性である。
【0040】
さらに、この膜は、ヒッティング部100の耐久性コーティングの形成に役立つことができ、従って、ヒッティング部100に対するさらなる個々の調節のための固着用ベースを形成できる。図1に図示する卓球バットの場合には、詳細には、発泡材料の固着用ベースとしてこの膜を用いる。
【0041】
好ましくは、ヒッティング部100の調節策として、ヒッティング部100が少なくとも部分的に従来の木材を含むことが考えられる。詳細には、熱変性木材は、かなり変性した材料特性を有し、従って、従来の木材と組み合わせることにより、材料特性の多様性がさらにまた大幅に増加する。従って、正確な調節が保証される。具体的には、これにより、反発特性および重量配分も調節することが可能となる。従って、ヒッティング部に限定するよりはむしろ、例えば柄部においても従来の木材の使用が推奨される。
【0042】
図4および図6に既に示したように、図2に図示する実施形態例は、ヒッティング部100が複数の層110〜114から形成されることを提供する。層システムによって力が離れていく好ましい方向を規定することが有利であることが判明している。これは、再び図2に示されており、詳細には、図示される層構造は、力が異なる方向に偏向していることを示す、二つの好ましい方向131および132を規定している。詳細には、力の偏向は、層材料の曲げ弾性によって規定され、従って、これらの層の1つにおいて熱変性木材を使用することにより、例えば、力の偏向を選択的に調節することが可能となり、好ましくは、打たれる対象物の方向に力が増加することが可能となる。図6に図示する卓球バットの場合、それに関連する層は、好ましくは外層112および114である。
【0043】
層112〜114の境界面は、空間120における少なくとも1つの方向において面平行配向を有し、面平行配向120の方向は、ヒッティング部100の好ましい反発方向130に垂直である。柄部200の誘導および固定によるヒッティング部100の力の吸収と同時に、打たれるまたは打撃される対象物上に力が向かう方向が非常に重要である。面平行配向により、層の厚みの助けを受けて、異なる曲げ弾性を持つ複数の部分を作ることが可能となり、これにより、システム全体の固有振動数の領域が変化した結果、併せて、曲げ弾性および曲げ動態の変化が生じる。従って、熱変性木材の層の厚みを変化させることにより、反発特性を好ましい反発方向に調節することが可能である。
【0044】
ある有利な開発では、層システム110〜114の反発特性は、システム用に選択される材料によって調節されることが提供される。詳細には、層の厚みが規定されている場合には、熱変性木材の使用により、通常、いわゆるスプリングバックレベルの増大が起きる。
【0045】
図1に図示する卓球バットの場合、例えば、木材を同種の熱変性木材と交換することを提供してもよい。これにより、ヒッティングの動態が向上し、このことは、向上したスプリングバックレベルの形で測定できる。比較的低い相対密度の木材、例えば、バルサ材は、通常顕著な曲げ弾性を有する。このことは、一般的に同種の熱変性木材にはあまり当てはまらず、従って、軽量な木材を熱変性木材に換えることは、打撃されるまたは打たれる対象物の運動量がより得られることを意味し、それによって、より動的でより強いヒッティングシーケンスが得られる。従って、木材を同種の熱変性木材に換えることが可能であり、熱変性処理の結果、最大10%の質量の低減が可能であるので、今度は、重量の低減がさらに起こる。これは、例えば、適切な材料を選択することによる反発特性の調節に役立つことができる。
【0046】
さらに、例えば、600〜1200kg/mのかさ密度を持つ、高い相対密度の木材、例えば、オーク、ウェンジ、ブラジルシタン、またはエッキを、100〜500kg/mのかさ密度を持つ、より軽量なタイプの熱変性木材、例えば、バルサ、アユース、またはモミに換えることが可能である。従って、熱変性木材の使用により、重量を低下させた設計が可能となる。熱変性木材の曲げ弾性は、かなり高い相対密度を持つ木材の種類と同程度である。従って、例えば、設計がおおよそ同じで、特性が何らかの点で変更されていない場合に、比較的重い木材を、同一またはより高い曲げ強度を持つより軽量の熱変性木材に換えることが可能である。これは、例えば、適切な材料を選択することによる重量配分の調節に役立つことができる。
【0047】
これらの対策により、卓球バットの重量を、硬材の場合には、通常の90〜140gから70〜110gの範囲に減少させ、軟材の場合には、通常の60〜85gから45〜75gの範囲に減少させることが可能である。
【0048】
上述の選択肢は、卓球バットの場合と類似するように、図1に図示するゴルフクラブにも当てはまる。しかしながら、ゴルフクラブの改良における主要な関心は、重量の低減ではないことに注目すべきである。代わりに、ヒッティング部100を熱変性木材で構成することにより、例えばさらに重りを取り付けることでクラブの重心を変化させることができる。これにより、多くの場合、最適な反発表面積を拡大させることが可能となり、このことは、改善された、またはより簡単なヒッティングのコントロールに貢献できる。これは、同様に卓球バットの場合においても考えられることである。
【0049】
さらに別の実施形態例においては、図3に図示するように、層システム110〜114は、少なくとも3つの層を有する。特に、キャリア層110を規定することが有利である。通常その他の層111〜114よりも厚みがあるように設計されるこの層は、基本的にヒッティング部(100)の重量を規定する。卓球に関して言えば、その目的は、この層を可能な限り軽量にすることであり、一方、ゴルフの場合には、それは、重要な役割を果たす達成可能な総合的運動量であり、従って、キャリア層に対する極めて個別な重量調節が想定される。さらなる層をキャリア層に対して面平行に対称的に配置すると有利である。詳細には、打たれるまたは打撃される対象物と、スポーツ用品アイテム1との接触時間は、対象物に影響を与える可能性にとって非常に重要なものである。従って、上述の接触時間を増加させるように設計され、従ってより高度な曲げ弾性を有する層111または112を設けることが推奨される。さらに、より高度な曲げ安定性を持つ材料を有する層111または112を設けることにより、基本的な安定性が向上する。この層は、熱変性木材を有利に含んでいる。
【0050】
図3の実施形態例は、さらに、層111および112に対して対称的に配置される層113および114を示し、従って、合計5つの層が図示されている。これは、ヒッティング部100の2つの面が同一のヒッティング特性を有するべき場合に特に有利である。
【0051】
ある有利な開発では、ヒッティング部100または柄部200が、例えば、炭素、アラミド、ガラス繊維、またはチタンの複合材料を含んでいることを提供しうる。これらの複合材料は、特にその引張強度が知られている。従って、熱変性木材と組み合わせることにより、相対密度の高い木材の曲げ弾性を実現する層を組み合わせることができる。しかしながら、サーモウッド/複合材料層の重量は、置き換えられた木材の重量のごく一部分にしか過ぎず、従って、重量低減の大きな可能性が生まれる。
【0052】
相対密度の高い木材とは、通常、非常に高価な熱帯木材と言われるものであり、これらは、維持可能な基準では通常運用できないことから、この種の木材を熱変性木材に換えることにより、費用関連の利点が生まれ、さらに、資源を維持する助けともなる。熱帯木材層を複合材料が追加されたサーモウッド層に置き換えたとしても、当然費用関連の利点を実現できる。
【0053】
曲げ強度を向上させる、または重量を低減さするための上記の調節選択肢は、本発明によれば、スポーツ用品アイテム1の層状ヒッティング部100に限定されない。従って、例えば、重量の低減方法において、基本的に木材で構成された部分を、基本的に熱変性木材で形成された同一またはより高い曲げ強度を有する部分に置き換えることが一般的に考えられる。これにより、通常、同程度の安定性を持つが重量は低減された設計が生み出される。
【0054】
さらに、曲げ強度を向上させる方法においては、本発明によれば、スポーツ用品アイテムにおいて、基本的に木材で構成された部分を、基本的に同種の熱変性木材で形成された部分に置き換えることを提供しうる。これにより、簡単かつ費用効率的に、強度を向上させることができ、詳細には、設計のより硬い構造を実現できる。例えば、肉厚部分を設ける、または支持部材を用いてスポーツ用品アイテム1を構成するなどの、さらなる設計策の必要がないので、結果的に、設計費用もかなり低減されることが特に言える。
【0055】
さらに、熱変性木材の使用により、層構造を接続するためにホットラミネート加工を用いることが非常に簡単になる。なお、ホットラミネート加工とは、通常、100℃を超える温度で接着材料を溶かすことを意味し、通常、これに一定の圧力をかけて、少なくとも2つの層を有する積層体の構成要素を接続する。
【0056】
使用する木材の熱変性により、含水量が非常に低くなり、かつ、ほぼ完全な揮発性物質および樹脂が無い状態となる。さらに、とりわけ、この木材の内部応力が熱変性中に低下することも事実であるので、この木材は非常に寸法安定性がある。従って、温度が100℃を超える場合にガス放出が生じる傾向が大いに減り、従って、積層体が高度な寸法安定性を持つ簡単なホットラミネート加工が確立される。
【0057】
従って、詳細には、例えば接着材料として該当するプラスチック膜または全天候性樹脂を用いることにより、全天候性の積層接続を生じさせることも可能である。特に有利には、中核部をこの方法でプラスチック膜内にラミネート加工することが可能であり、従って、簡単な方法で、この中核部に耐候性が付与される。
【0058】
しかしながら、最上部の被覆層のホットラミネート加工は、プラスチック膜の使用だけに関係しない。
【0059】
従って、卓球バットの場合には、気泡ゴム状材料に対して非膨張性の全天候性接着接続を用いることも考えられ、従って、コーティング材料の接着接続に対する全天候性が実現できる。
【0060】
従って、本発明によれば、スポーツ用品アイテムのヒッティング特性を使用者の要求に合わせて具体的に調節し、その結果向上させることが可能であり、重量を低減させること、スポーツ用品アイテムが長い耐用年数を持つように頑丈な構造を有すること、および製造の費用効率性を維持できることが可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
柄部(200)と、前記柄部(200)につながるヒッティング部(100)とを有する、詳細には卓球バットまたはゴルフクラブであるスポーツ用品アイテム(1)であって、前記ヒッティング部(100)は、少なくとも部分的に熱変性された木材から成る、スポーツ用品アイテム。
【請求項2】
前記ヒッティング部(100)および/または柄部(200)の少なくとも前記外側から見える境界面は、熱変性木材から成ることを特徴とする、請求項1に記載のスポーツ用品アイテム。
【請求項3】
前記スポーツ用品アイテム(1)が全天候性構造を有することを特徴とする、請求項1または2に記載のスポーツ用品アイテム。
【請求項4】
前記スポーツ用品アイテムがプラスチック膜に完全に包み込まれた中核部を有することを特徴とし、前記中核部の前記厚みに対する前記膜の前記厚みの前記比率は、空間における少なくとも2つの互いに直交する方向において1:9より小さい、請求項1〜3の何れか1項に記載のスポーツ用品アイテム。
【請求項5】
前記ヒッティング部(100)および/または柄部(200)が少なくとも部分的に従来の木材から成ることを特徴とする、請求項1〜4の何れか1項に記載のスポーツ用品アイテム。
【請求項6】
前記ヒッティング部(100)および/または柄部(200)が複数の層を有することを特徴とする、請求項1〜5の何れか1項に記載のスポーツ用品アイテム。
【請求項7】
前記層(110、111、112、113、114)の前記境界面を、空間における少なくとも1つの方向に面平行に配向することを特徴とし、前記層(110、111、112、113、114)の前記面平行配向(120)は、好ましくは、前記ヒッティング部の好ましい反発方向(130)に対して直角を成す、請求項6に記載のスポーツ用品アイテム。
【請求項8】
前記反発特性は、前記層システム(110、111、112、113、114)の前記材料選択によって調節されることを特徴とする、請求項6または7に記載のスポーツ用品アイテム。
【請求項9】
前記重量配分は、前記層システム(110、111、112、113、114)の前記材料選択によって調節されることを特徴とする、請求項6〜8の何れか1項に記載のスポーツ用品アイテム。
【請求項10】
前記ヒッティング部(100)および/または柄部(200)が少なくとも3つの層を有することを特徴とする、請求項6〜9の何れか1項に記載のスポーツ用品アイテム。
【請求項11】
前記ヒッティング部(100)および/または柄部(200)が、詳細には炭素、アラミド、ガラス繊維、またはチタンの複合材料を有することを特徴とする、請求項1〜10の何れか1項に記載のスポーツ用品アイテム。
【請求項12】
柄部(200)と、前記柄部につながるヒッティング部(100)とを有するスポーツ用品アイテムの前記重量を低減させる方法であって、前記スポーツ用品アイテム(1)は、少なくとも部分的に木材で構成されており、基本的に木材から成る部分を、同一またはより低い曲げ弾性を有する熱変性木材から成る部分に置き換えることを特徴とする方法。
【請求項13】
柄部(200)と、前記柄部につながるヒッティング部(100)とを有するスポーツ用品アイテムの前記曲げ強度を向上させる方法であって、前記スポーツ用品アイテム(1)は、少なくとも部分的に木材で構成されており、基本的に木材から成る部分を、同種の熱変性木材から成る部分に置き換えることを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項6〜11の何れか1項に記載のスポーツ用品アイテムを製造する方法であって、前記層(110、111、112、113、114)は、少なくとも部分的にホットラミネート加工によって接続されることを特徴とする方法。
【請求項15】
前記ヒッティング部(100)の最上部の被覆層が、ホットラミネート加工によって付与されることを特徴とする、請求項14に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公表番号】特表2012−514508(P2012−514508A)
【公表日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−544860(P2011−544860)
【出願日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際出願番号】PCT/EP2010/050095
【国際公開番号】WO2010/079191
【国際公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【出願人】(509024396)ティティ‐チューニング センター ゲーエムベーハー (2)
【Fターム(参考)】